説明

接着用樹脂組成物

【課題】ポリアミド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂の双方に対して接着性に優れたポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜90重量部とポリアミド樹脂55〜10重量部とを合計で100重量部含むと共に、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して相溶化剤0.05〜5重量部を含むポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性に優れるポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、熱的性質、機械的性質、電気的性質等の諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックであるが、溶融粘度が高いために成形加工性に劣り、耐衝撃性も劣るという欠点を有している。そこで、ポリフェニレンエーテル樹脂は、通常、その成形加工性や耐衝撃性の改良を目的として、各種の樹脂を配合した複合樹脂として用いられており、配合樹脂として、スチレン系樹脂を用いたものが提供されている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル樹脂にスチレン系樹脂を配合してなるポリフェニレンエーテル系樹脂であれば、ポリフェニレンエーテル樹脂の成形加工性や耐衝撃性が改善されるが、構造部材としての用途においては、未だ耐衝撃性が十分ではない場合がある。
【0004】
一方、ポリアミド樹脂は耐衝撃性や耐薬品性等に優れることから、二色成形、インサート成形等の方法により、ポリフェニレンエーテル系樹脂の成形品をポリアミド樹脂で被覆することにより、構造部材としての耐衝撃性や耐薬品性等を十分に高めることができる。
【0005】
しかし、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂とは本来接着性がなく、従って、ポリフェニレンエーテル系樹脂の成形品にポリアミド樹脂を被覆させるためには、両層間にポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に優れた接着性を有する接着層を形成する必要がある。
【0006】
従来、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂との複合樹脂組成物については、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂と、これらの相溶化剤とを含む樹脂組成物が多数提案されているが(例えば特許文献1〜3)、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に対して優れた接着性を有し、ポリフェニレンエーテル系樹脂層とポリアミド樹脂層とを十分に強固に接着し得る接着用樹脂組成物についての提案はなされていない。
【0007】
即ち、従来の組成物設計では、ポリアミド樹脂に対する接着性を高めようとするとポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性が劣るものとなり、逆にポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性を高めたものではポリアミド樹脂に対する接着性が劣り、これらの双方に対して優れた接着性を示す接着用樹脂組成物の成分組成の設計は非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−9866号公報
【特許文献2】特開平8−295798号公報
【特許文献3】特開2000−143817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリアミド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂の双方に対して接着性に優れたポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂とこれらの樹脂の相溶化剤とを所定の配合で混合してなる樹脂組成物であれば、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に対して良好な接着性を示すことを見出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
本発明(請求項1)の接着用樹脂組成物は、ポリアミド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性に優れるポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜90重量部とポリアミド樹脂55〜10重量部とを合計で100重量部含むと共に、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して相溶化剤0.05〜5重量部を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項2の接着用樹脂組成物は、請求項1において、ポリフェニレンエーテル系樹脂の海相中にポリアミド樹脂の島相が形成された海島構造を有することを特徴とする
【0014】
請求項3の接着用樹脂組成物は、請求項1又は2において、前記相溶化剤が不飽和酸、不飽和酸無水物及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の接着用樹脂組成物は、請求項3において、前記不飽和酸がマレイン酸であることを特徴とする。
【0016】
請求項5の接着用樹脂組成物は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂25〜85重量%とスチレン系樹脂75〜15重量%とからなる複合樹脂であることを特徴とする。
【0017】
請求項6の接着用樹脂組成物は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤とを予め溶融混練して得られた混合物に前記ポリアミド樹脂を溶融混練してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着用樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に対して優れた接着性を示すため、ポリフェニレンエーテル系樹脂層とポリアミド樹脂層との接着層として本発明の接着用樹脂組成物を介在させることにより、ポリフェニレンエーテル系樹脂の耐衝撃性や耐薬品性をポリアミド樹脂層で補足し、ポリフェニレンエーテル系樹脂本来の熱的性質、機械的性質、電気的性質等の諸特性に優れ、更には耐衝撃性や耐薬品性にも優れる構造部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例において接着性の評価に用いた試験片を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明のポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜90重量部とポリアミド樹脂55〜10重量部とを合計で100重量部含むと共に、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対してポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との相溶化剤0.05〜5重量部を含むことを特徴とする。
【0022】
[作用構造]
本発明の接着用樹脂組成物がポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に良好な接着性を示す作用機構は、次のように考えられる。
【0023】
即ち、本発明の接着用樹脂組成物に含まれる相溶化剤は、組成物中のポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との相溶性の向上を図ると共に、ポリアミド樹脂に対する接着性を確保するポリアミド樹脂へのアンカーとしての機能を果たす。
一方、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対しては、本発明の接着用樹脂組成物中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂が多く含まれ、本発明の接着用樹脂組成物が好ましくはポリフェニレンエーテル系樹脂の海相中にポリアミド樹脂の島相が分散した海島構造をとることにより、このポリフェニレンエーテル系樹脂の海相が被接着材であるポリフェニレンエーテル系樹脂に対して広面積の接着面として機能し、良好な接着性が得られる。
【0024】
[ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本発明において、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂に対して、その流動性や耐衝撃性を改良するためにスチレン系樹脂を配合してなる複合樹脂組成物であることが好ましい。
【0025】
<ポリフェニレンエーテル樹脂>
本発明に係るポリフェニレンエーテル系樹脂に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位を主鎖に有する重合体であって、単独重合体又は共重合体の何れであっても良い。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表し、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのRがともに水素原子になることはない。)
【0028】
及びRとしては、水素原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−、3−若しくは4−メチルペンチル基又はヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基又は1−エチルプロピル基が挙げられる。特に、Rは第1級若しくは第2級の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。Rは水素原子であることが好ましい。
【0029】
好適なポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)等の2,6−ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体等の2,6−ジアルキルフェノール/2,3,6−トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0030】
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。また、特開2005−344065号公報に記載されているような末端基数と銅含有率を規定したポリフェニレンエーテル樹脂も好適に使用できる。
【0031】
ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gのものが好ましく、0.3〜0.6dl/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dl/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が向上する傾向にあり、0.8dl/g以下とすることにより、流動性が向上し、成形加工が容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、この固有粘度の範囲としてもよい。
【0032】
本発明に使用されるポリフェニレンエーテル樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6−ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合することにより製造することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
【0033】
本発明において、ポリフェニレンエーテル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0034】
<スチレン系樹脂>
本発明に係るポリフェニレンエーテル系樹脂に用いられるスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体及びスチレン系グラフト共重合体等が挙げられる。
【0035】
本発明で使用されるスチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS樹脂)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SEPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン・IPN型ゴム共重合体等の樹脂、又は、これらの混合物が挙げられる。さらにシンジオタクティクポリスチレン等のように立体規則性を有するものであってもよい。これらの中でも、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が好ましい。
【0036】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、通常、50,000以上であり、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上であり、また、上限は、通常、500,000以下であり、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。
【0037】
このようなスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
【0038】
本発明において、スチレン系樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0039】
<配合割合>
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂20〜95重量%と、スチレン系樹脂80〜5重量%からなることが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂25〜85重量%と、スチレン系樹脂75〜15重量%からなることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂が20重量%より少ないと、難燃性、荷重撓み温度及び機械的強度が低下する傾向がある。また、ポリフェニレンエーテル樹脂が95重量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の流動性が著しく低下し、成形工程において実用に耐えない場合がある。
【0040】
[ポリアミド樹脂]
本発明で用いられるポリアミド樹脂は、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できるものであり、単独重合体でも共重合体でも良い。具体的には、ラクタムの重縮合物、ジアミンとジカルボン酸との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、又はそれ等の共重合ポリアミド樹脂やブレンド物等である。
【0041】
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、(2,2,4−又は2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナンメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環式、芳香族のジアミンが挙げられる。
【0042】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環式、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。
【0043】
ω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0044】
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6・66共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド6I・6T共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0045】
これらのうち、本発明に好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6及びポリアミド6I・6Tであり、これらと非晶性ポリアミド樹脂を併用することも出来る。
【0046】
本発明で用いるポリアミド樹脂はJIS K6810に準拠して測定した相対粘度が1.5〜7.5のものが好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が1.5未満では機械的強度が低下し、7.5を越えると成形性が低下するので、好ましくない。特に、本発明の接着用樹脂組成物を射出成形に用いる場合は、相対粘度が1.8〜4であることが好ましく、2〜3.5であることがより好ましい。また、本発明の接着用樹脂組成物をフィルム成形等の押出成形に用いる場合は、相対粘度が2.5〜7.5であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。
【0047】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、重合体分子量、熱安定性、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性及び接着性の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。また、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は、重合体分子量、熱安定性、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶化性及び接着性の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。
【0048】
[相溶化剤]
本発明の接着用樹脂組成物において用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との相溶化剤としては、好ましくは、不飽和酸、不飽和酸無水物及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0049】
相溶化剤としては好ましくはマレイン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、ブテニルコハク酸、テトラヒドロフタル酸、及びこれらの無水物、並びにマレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等のこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステルが挙げられ、より好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸である。
これらの相溶化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0050】
[ラジカル発生剤]
本発明の接着用樹脂組成物においては、上述のような相溶化剤と共に、ラジカル発生剤を配合してもよい。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0051】
有機過酸化物の具体例として、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシオクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
【0052】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
【0053】
上記のラジカル発生剤の中では、耐衝撃性の観点から、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤が好ましい。なお、ラジカル発生剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0054】
[配合割合]
本発明の接着用樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜90重量部とポリアミド樹脂55〜10重量部とを合計で100重量部含むと共に、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して相溶化剤0.05〜5重量部を含む。ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が上記下限未満で、ポリアミド樹脂の含有量が上記上限を超えると、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性が劣るものとなり、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が上記上限を超え、ポリアミド樹脂の含有量が上記下限未満では、ポリアミド樹脂に対する接着性が劣るおそれがある。
【0055】
従って、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂とは、好ましくはポリフェニレンエーテル系樹脂50〜90重量部、ポリアミド樹脂50〜10重量部、より好ましくはポリフェニレンエーテル系樹脂60〜90重量部、ポリアミド樹脂40〜10重量部の配合割合とする(ただし、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計で100重量部)。
【0056】
なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂を上記の割合で用いても、ポリフェニレンエーテル系樹脂中のポリフェニレンエーテル樹脂の割合が少ないと、本発明の接着用樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル樹脂含有量が少ないことにより、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性が劣るものとなる場合がある。従って、本発明の接着用樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、前述のポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂)とポリアミド樹脂との合計100重量部中にポリフェニレンエーテル樹脂が35重量部以上、特に45重量部以上含まれることが好ましい。
【0057】
また、相溶化剤の含有量が上記下限未満では、特にポリアミド樹脂に対する接着性が劣るものとなり、上記上限を超えると、樹脂組成物の製造及び成形工程における溶融混練時や高温雰囲気で使用時の熱安定性が低下することにより、接着層としての特性を満足し得なくなる。従って、相溶化剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して0.05〜5重量部、さらに0.05〜3重量部、特に0.1〜2重量部とすることが好ましい。
なお、相溶化剤と共にラジカル発生剤を配合する場合、ラジカル発生剤の配合量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して0.01〜3重量部、特に0.01〜1重量部とすることが好ましい。相溶化剤と共にラジカル発生剤を配合することにより、特にポリアミド樹脂に対する十分な接着性が得られるという効果が奏されるが、その配合量が少な過ぎるとこの効果を十分に得ることができず、多過ぎると、樹脂組成物の製造及び成形工程における溶融混練時や高温雰囲気で使用時の熱安定性が低下することにより、接着層としての特性を満足しにくくなる。
【0058】
[海島構造]
本発明の接着用樹脂組成物は、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂の海相内にポリアミド樹脂の島相が分散した海島構造をとることにより、より一層良好な接着性を得ることができる。
即ち、本発明の接着用樹脂組成物がポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に良好な接着性を示す理由は、前述の如く、ポリアミド樹脂に対しては相溶化剤のアンカー効果であり、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対してはポリフェニレンエーテル系樹脂の海相が接することによる十分な接着面の確保であるため、本発明の接着用樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を海相とし、ポリアミド樹脂を島相とする海島構造をとることが好ましく、そのために、本発明の接着用樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との割合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂リッチでポリフェニレンエーテル系樹脂の海相が形成し易いことが好ましい。
【0059】
[その他の成分]
本発明の接着用樹脂組成物は、その目的を損なわない範囲において、上述のポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂及び相溶化剤(或いは相溶化剤及びラジカル発生剤)以外の各種樹脂添加剤を含有していてもよい。本発明の接着用樹脂組成物が含有し得る各種樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、耐侯性改良剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、補強剤、分散剤、導電剤、耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
【0060】
例えば、本発明の接着用樹脂組成物には、組成物の製造及び成形工程における溶融混練時や使用時の熱安定性を向上させる目的で、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種の熱安定剤を配合することが好ましい。
【0061】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例として、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中で、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0062】
ホスファイト系化合物の具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノ及びジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)等が挙げられ、好ましくは、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0063】
ホスホナイト系化合物の具体例としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、好ましくは、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトである。
【0064】
酸化亜鉛としては、例えば、平均粒子径が0.02〜1μmのものが好ましく、平均粒子径が0.08〜0.8μmのものがより好ましい。
【0065】
ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、酸化亜鉛から選ばれた1種以上の安定剤の配合量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計)100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜3重量部である。安定剤の配合量が0.01重量部未満では、熱安定性の改善効果が小さく、5重量部を超えると金型汚染が発生したり、機械的強度の低下や経済的なデメリットが大きくなり好ましくない。
【0066】
また、本発明においては、成形時の離型性を向上させる目的で、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0067】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0068】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0069】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0070】
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。
【0071】
ポリオレフィン系ワックスとしては、オレフィンの単独重合体及び共重合体等が挙げられる。オレフィンの単独重合体としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等及びこれらの部分酸化物又はこれらの混合物等が挙げられる。オレフィンの共重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、2−メチルブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン等の共重合体、これらのオレフィンと共重合可能なモノマー、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物(無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル等)等の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体が含まれる。オレフィン共重合体は、通常、エチレンと、他のオレフィン及び重合性モノマーから選択された少なくとも1種のモノマーとの共重合体である。これらのポリオレフィンワックスのうち、ポリエチレンワックスが最も好ましい。なお、ポリオレフィンワックスは、線状又は分岐構造であってよい。
【0072】
シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンからなるもの、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部又は全部がフェニル基、水素原子、炭素数2以上のアルキル基、ハロゲン化フェニル基、フルオロエステル基で置換されたシリコーンオイル、エポキシ基を有するエポキシ変性シリコーンオイル、アミノ基を有するアミノ変性シリコーンオイル、アルコール性水酸基を有するアルコール変性シリコーンオイル、ポリエーテル構造を有するポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられ、これらは2種類以上併用してもよい。
【0073】
離型剤の配合量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜6重量部がより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましい。離型剤の配合量を0.01重量部以上とすることにより離型効果がより発揮されやすく、10重量部以下とすることにより、耐熱性や金型汚染、可塑化不良といった問題が発生しにくい傾向にある。
【0074】
また、本発明の接着用樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を用いることができる。難燃剤としては、組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物、アルカリ金属有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物が好適である。本発明で用いるリン酸エステル化合物としては、例えば下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【0075】
【化2】

【0076】
(式中、R1、R2、R3、R4は互いに独立して、置換されていても良いアリール基を示し、Xは他に置換基を有していても良い2価の芳香族基を示す。nは0〜5の数を示す。)
【0077】
一般式(2)においてR1〜R4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またXで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、例えばビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。nが0の場合はリン酸エステルであり、nが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物であっても良い)である。
【0078】
このようなリン酸エステル化合物としては、具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。
かかる成分として好適に用いることができる市販の縮合リン酸エステル化合物としては、例えば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、(株)ADEKAより「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
【0079】
本発明の接着用樹脂組成物中にリン酸エステル系難燃剤を使用する場合の含有量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計)100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、より好ましくは3〜40重量部、特に好ましくは5〜30重量部である。リン酸エステル系難燃剤の含有量が1重量部未満では難燃性改善効果が十分に得られず、50重量部を超えると耐熱性が低下するので好ましくない。
【0080】
本発明で用いられるアルカリ金属塩有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、該アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。
有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。
【0081】
本発明で用いる脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくはフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられ、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくはフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、もしくはアルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、もしくはアルカリ土類金属塩などが挙げられる。より好ましくはパーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。該フルオロアルカン−スルホン酸塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、及びパーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0082】
芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
【0083】
芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4'−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4'−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4'−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0084】
有機スルホン酸金属塩の配合量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計)100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜3重量部、とりわけ好ましくは0.03〜2重量部である。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると充分な難燃性が得られにくく、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。
【0085】
本発明で用いるシリコーン難燃剤は、直鎖状あるいは分岐構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20のアルキル基及び置換アルキル基のような炭化水素又はビニル及びアルケニル基、シクロアルキル基、ならびにフェニル、ベンジルのような芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。ポリオルガノシロキサンは、官能基を含有していなくても、官能基を含有していてもよい。官能基を含有している場合、官能基はメタクリル基、アルコキシ基又はエポキシ基であることが好ましい。
【0086】
また、本発明では燃焼時の滴下防止を目的として、フッ素樹脂を含むことができる。ここでフッ素樹脂としては、フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくは500,000〜10,000,000である。
【0087】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0088】
本発明の接着用樹脂組成物がフッ素樹脂を含有する場合、その含有量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計)100重量部に対し、0.05〜2重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5重量部、とりわけ好ましくは0.1〜1重量部である。フッ素樹脂の配合量が上記下限未満であると充分な滴下防止効果が得られにくく、上記上限を越えると熱安定性、接着性が低下しやすい。
【0089】
また、本発明においては、着色剤を配合してもよい。着色剤としては、熱可塑性樹脂に一般的に用いられる、染料、無機顔料、有機顔料が挙げられる。
【0090】
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、ジフェニルメタン染料、アクリジン染料、シアニン染料、ニトロ染料、ニグロシン等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、べんがら、コバルトブルー等の酸化物顔料、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、硫化亜鉛、カドミウムイエロー等の硫化物顔料、ホワイトカーボン、タルク等の珪酸塩顔料、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、ニトロ顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。これらの中でも、成形品表面へブリードアウトしにくい点から、無機顔料が好ましい。また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良目的のために、ポリアミド樹脂又はポリフェニレンエーテル系樹脂とマスターバッチ化されたものを用いてもよい。
【0091】
着色剤の配合量は、樹脂成分の合計(ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂の合計)100重量部に対して、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部である。特に、酸化チタンは樹脂組成物の変色を防止しやすく、淡い色に着色する上で有効である。
【0092】
[製造方法]
本発明の接着用樹脂組成物の製造に当っては、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、相溶化剤(或いは相溶化剤及びラジカル発生剤)及び必要に応じて添加される各種の樹脂添加剤が均一に混合される方法であればいかなる方法を採用することもできるが、好ましくは溶融混練によるものであり、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練機を使用する方法が挙げられる。溶融混練機としては、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
【0093】
なお、本発明の接着用樹脂組成物の成分中、ポリアミド樹脂と相溶化剤との反応性がポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤との反応性よりも高いために、本発明の接着用樹脂組成物を製造する際の混練手順として、ポリアミド樹脂と相溶化剤との混練を、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤との混練に先立って行うと、ポリアミド樹脂と相溶化剤とが早期に反応して相溶化剤の反応活性がポリアミド樹脂との反応に消費され、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤との反応が進行しなくなるおそれがある。従って、まず、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤とを溶融混練し、得られた混合物にポリアミド樹脂を添加して溶融混練する混練手順を採用することが好ましい。
【0094】
従って、例えば、混練押出機を使用して本発明の接着用樹脂組成物を製造する場合には、好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤と必要に応じて添加される各種の樹脂添加剤とを予め混合して、混練押出機の上流部分に一括投入し、溶融状態で反応させた後、続けて混練押出機の中流部分でポリアミド樹脂を投入して溶融混練し、必要に応じて、下流部分から難燃剤等を投入して樹脂組成物のペレットとする方法を採用することが好ましい。また、別な方法としては、先ず、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤と必要に応じて添加される各種の樹脂添加剤とを予め混合して、混練押出機に一括投入し、溶融状態で反応させてペレット化した後、該ペレットとポリアミド樹脂を混練押出機に投入して溶融反応させ、必要に応じて、下流部分から難燃剤や補強剤等の添加剤を配合し、樹脂組成物のペレットを得る方法を採用することが好ましい。
【0095】
本発明の接着用樹脂組成物を製造する際の溶融混練温度と時間は、樹脂組成物を構成するポリフェニレンエーテル系樹脂、相溶化剤、ポリアミド樹脂の種類及び配合率や混練機の種類などによっても異なるが、通常、混練温度は210〜350℃、好ましくは220〜320℃、さらに好ましくは220〜290℃、混練時間は10分以下が好ましい。この混練温度が高過ぎたり、混練時間が長過ぎたりすると、樹脂組成物の熱劣化が問題となり、接着性の低下を生じることがある。
【0096】
[使用形態]
本発明の接着用樹脂組成物の使用形態としては特に制限はなく、射出成形、押出成形等の通常の成形に使用することができる。また、本発明の接着用樹脂組成物により接着される被接着材としてのポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂としては、それぞれ、本発明の接着用樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂或いはポリフェニレンエーテル系樹脂に含まれるポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂として前述したものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の例で使用した材料、及び接着性の評価法は次の通りである。
【0098】
[材料]
ポリフェニレンエーテル樹脂:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(ポリキシレノールシンガポール社製「PX100L」、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度0.47dl/g)
スチレン系樹脂−1:ハイインパクトポリスチレン(日本ポリスチレン社製「HT478」、重量平均分子量(Mw)200,000、MFR3.2g/10分(200℃、荷重5kgで測定)
スチレン系樹脂−2:ポリスチレン(PSジャパン社製「HF77」、重量平均分子量(Mw)222,000、MFR8.0g/10分(200℃、荷重5kgで測定)
ポリアミド樹脂:ポリアミド6(宇部興産社製「UBEナイロン 1015B」)、相対粘度2.8(JIS K6810に準拠して測定)
相溶化剤:無水マレイン酸(日本油脂社製「クリスタルマンAB」)
安定剤−1:ホスホナイト系熱安定剤(クラリアントジャパン社製「サンドスタブP−EPQ」
安定剤−2:フェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製「ヨシノックスBHT」)
安定剤−3:酸化亜鉛(本荘ケミカル社製「酸化亜鉛2種」)
離型剤:ポリエチレンワックス(三洋化成工業社製「サンワックス151P」)
【0099】
[接着性の評価方法]
<評価用樹脂ペレット>
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物ペレット:ポリフェニレンエーテル樹脂100重量部に対して、スチレン系樹脂−2を67重量部、安定剤−3を0.35重量部、離型剤2.4重量部を、高速回転ミキサーにて均一に混合し、二軸押出機(スクリュウ径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数300rpmの条件にて、溶融混練させて得られたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物ペレット。(以下「PPEペレット」と記す。)
ポリアミド樹脂ペレット:ポリアミド6(宇部興産社製「UBEナイロン 1015B」)(以下「PAペレット」と記す。)
【0100】
<接着用樹脂組成物ペレットの調製>
表1に示す配合の接着用樹脂組成物のペレットを調製した。
表1に示す割合でポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤(無水マレイン酸)と、安定剤−1,2及び離型剤を高速回転ミキサーにて均一に混合し、二軸押出機(スクリュウ径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数300rpmの条件にて、押出機の上流部に投入して溶融反応させた後、押出機の中流部よりポリアミド樹脂を投入して溶融混練させてペレット化した。なお、この時のポリアミド樹脂投入後のシリンダー温度は250℃であった。
【0101】
【表1】

【0102】
<試験片の作製>
実施例及び比較例においては、上記記載の接着用樹脂組成物のペレットと評価用のPPEペレット又はPAペレット(1015B)を120℃で4時間乾燥後、射出ユニットが2機搭載された2層成形機UM-50(PO YUEN製 50トン)を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度100℃で図1に示すJIS K 7161規定タイプの3.0mm厚ウエルド引っ張り試験片1を成形した。
図1の試験片1において、2は接着用樹脂組成物ペレットを用いて成形された試験片、3は相手材(PPEペレット又はPAペレット)を用いて成形された試験片である。
なお、参考例の試験片として、PPEペレットとPAペレット(1015B)を用いて成形された試験片(参考例1)、PAペレット(1015B)を用いて成形された試験片同士(参考例2)、及びPPEペレットを用いて成形された試験片同士(参考例3)も同様に作製した。
【0103】
<引張試験>
ISO527に則って引張試験を実施し、ウエルド強度を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
以上の結果より、次のことが明らかである。
参考例1に示すように、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂とは接着性がない。
ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂と相溶化剤を含んでいても、ポリアミド樹脂の配合量が多すぎる比較例1では、ポリフェニレンエーテル系樹脂の海相が形成されず、この結果、ポリアミド樹脂に対しては接着性に優れるが、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対して接着しない。
樹脂組成物中に相溶化剤を含まない比較例2では、ポリアミド樹脂に対して全く接着せず、また、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対しても接着性は十分とは言えない。
樹脂組成物中にポリアミド樹脂を含まない比較例3では、ポリアミド樹脂に対して接着しない。
【0106】
これに対して、ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤とを含む実施例1〜4では、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との双方に対して優れた接着性を示す。
なお、樹脂成分中のポリフェニレンエーテル樹脂の割合が少ない実施例1では、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性がやや劣るものとなる。これに対して、相溶化剤を含むと共にポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂とを適当な割合で含む実施例2,3では、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリアミド樹脂の双方に対してバランスのよい接着強度が得られる。
【符号の説明】
【0107】
1 試験片
2 接着用樹脂組成物
3 相手材(ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物又はポリアミド樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂に対する接着性に優れるポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂接着用樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜90重量部とポリアミド樹脂55〜10重量部とを合計で100重量部含むと共に、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド樹脂との合計100重量部に対して相溶化剤0.05〜5重量部を含むことを特徴とする接着用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1において、ポリフェニレンエーテル系樹脂の海相中にポリアミド樹脂の島相が形成された海島構造を有することを特徴とする接着用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記相溶化剤が不飽和酸、不飽和酸無水物及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とする接着用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3において、前記不飽和酸がマレイン酸であることを特徴とする接着用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂25〜85重量%とスチレン系樹脂75〜15重量%とからなる複合樹脂であることを特徴とする接着用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶化剤とを予め溶融混練して得られた混合物に前記ポリアミド樹脂を溶融混練してなることを特徴とする接着用樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−7066(P2012−7066A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143854(P2010−143854)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】