説明

接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法

【課題】被測温体の表面に感温部を接触して表面温度を測定する接触式表面温度センサを精度よく比較校正できる接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法を提供する。
【解決手段】接触式表面温度センサ20を校正するための接触式表面温度センサ校正器10で、前記接触式表面温度センサ20の感温部21を当接する基準ブロック11に基準温度センサ30を固定配置すると共に、前記基準ブロック11に接して前記基準ブロック11を加熱して昇温させる加熱源17を設けた加熱ブロック14とは分離可能に前記基準ブロック11を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式温度センサ等の表面温度センサを校正するための接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動又は停止している材料や製品等の被測温物の移動表面の温度を測定するために、この表面に直接接触して表面温度を測定する接触式表面温度センサがある。この接触式表面温度センサの校正に際しては、図12に示すように、接触式表面温度センサ20の感温部21を接触させる表面11Xを有する均熱ブロック11Xと、この均熱ブロック11Xを加熱するヒータ等の加熱源12と、均熱ブロック11X内に挿入された基準温度センサ30Xを備えた接触式表面温度センサ校正器10Xを用いている。
【0003】
この均熱ブロック11Xは、熱伝導率の高い銅製で形成され、基準温度センサ30Xの感温部31Xは測温抵抗体で形成されている。また、基準温度センサ30Xは表面11Xsより下方約10mmの場所に着脱可能に挿入配置されている。
【0004】
そして、この接触式表面温度センサ校正器10Xを用いて、接触式表面温度センサ20の校正を行う場合には、均熱ブロック11Xを加熱源12で加熱して温度を上昇させると共に、基準温度センサ30Xで基準温度を測定する。校正を行う接触式表面温度センサ20の感温部21を均熱ブロック11Xの基準面11Xsの表面に接触させて、接触式表面温度センサ20の出力の温度と基準温度センサ30Xの出力である基準温度とを比較することで、接触式表面温度センサ20の校正を行っている。
【0005】
この校正方法では、均熱ブロック11Xを熱伝導性に優れている銅で形成することで、基準面11Xsの表面と基準温度センサ30Xの感温部31Xがある基準温度計測点との温度差を小さくしている。また、均熱ブロック11Xを加熱源21で直接加熱することで、校正器10Xの構造と温度制御を単純化し、容易に温度管理できるようになっている。
【0006】
更に、基準温度センサ30Xの感温部31Xとして、長期的な温度安定性に優れ、しかも、経年変化による温度変動が小さい測温抵抗体を用いることで、長期間にわたって精度良く接触式表面温度センサ20の校正ができる。
【0007】
また、この基準温度センサ30Xの校正も行う必要があり、この基準温度センサ30Xの校正は、校正器10Xから抜き出して、別の校正器により行っている。この校正器10Xでは、基準温度センサ30Xにシース形の測温抵抗体を用いることで、この基準温度センサ30Xの抜き出し及び挿入を容易にしている。
【0008】
しかしながら、この接触式表面温度センサ校正器10Xでは、均熱ブロック11Xが500℃以上の高温に耐えられない銅製であり、また、基準温度センサ30Xに用いている測温抵抗体では500℃以上の温度を測定できないため、500℃以上の温度における接触式表面温度センサ20の校正ができないという問題がある。
【0009】
この温度センサの校正に関しては、多数の温度センサ(熱電対、抵抗温度計、半導体温度計等)の動作状態を、実際の測定現場で一括して迅速に確認するために、多数の校正される温度センサと基準温度計となる校正用温度センサを、銅、アルミニウム、SUS等の良熱伝導材料で作られ、全体が均熱状態に維持可能な恒温ブロックの収納孔に挿入して、この恒温ブロックを恒温ブロックの外周を囲んだヒーターで加熱して昇温し、このときの校正される温度センサの測温値と校正用温度センサの測温値を対比することで校正を行なう温度センサの校正方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、温度センサの校正範囲をより高い温度範囲まで広げるものとして、校正対象の温度センサ(測温抵抗体)と基準となる基準温度センサ(標準測温体)を、校正炉内の均熱ブロックの挿入孔に挿入して双方の出力温度を比較することにより、校正対象の温度センサの校正を行う校正方法において、均熱ブロックを、銀もしくは銀合金、又は、金もしくは金合金で構成し、熱伝導率を良くすると共に熱容量を大きくして、均熱ブロックの温度を安定化し、比較校正炉の温度を正確に挿入された温度センサに伝えて、校正可能な温度範囲を600℃未満又は1000℃未満まで高精度の比較校正試験を実現できる比較校正方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
しかしながら、これらの比較校正法では、被測温体の表面に接触させる必要がある接触式表面温度センサには適用できず、また、銀や金を用いるため、均熱ブロックの製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−304627公報
【特許文献2】特開平8−136361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被測温体の表面に感温部を接触して表面温度を測定する接触式表面温度センサを精度よく校正できる接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る接触式表面温度センサ校正器は、接触式表面温度センサを校正するための接触式表面温度センサ校正器であって、前記接触式表面温度センサの感温部を当接する基準ブロックに基準温度センサを固定配置すると共に、前記基準ブロックに接して前記基準ブロックを加熱して昇温させる加熱源を設けた加熱ブロックとは分離可能に前記基準ブロックを構成する。
【0015】
この構成によれば、基準温度センサをスポット溶接や接着等を用いて固定配置することにより、基準温度センサを基準ブロックの収納孔又は挿入孔に着脱自在に挿入配置する場合に比べて、基準温度センサと基準ブロックとの間の密着度を著しく増すことができ、この間の熱伝導効率を著しく高めることができるので、基準温度センサで基準ブロックの表面温度を精度よく計測できるようになる。
【0016】
また、基準ブロックを加熱源から分離可能に構成することにより、基準ブロックを小型化して、基準温度センサが固定されたままの基準ブロックを別の校正器に入ることができるようになり、基準温度センサの校正が容易となる。
【0017】
上記の接触式表面温度センサ校正器において、前記基準温度センサの感温部を前記基準ブロックの基準面の表面、又は、表面近傍に固定配置すると、基準ブロックにおいて、表面温度センサを当接させる基準面の表面と基準温度センサの位置との距離が短くなり、例え、熱伝導率の悪い材料で作った基準ブロックであっても、基準面の表面と基準温度センサの感温部との間の温度差を小さくすることができるので、基準面の表面の温度をより精度よく計測できるようになる。つまり、熱伝導率の高い銅に比較して熱伝導率が低くなる耐熱金属においても、基準面の表面の温度を精度よく計測できるようになる。
【0018】
この基準ブロックへの基準温度センサの感温部の固定は、例えば、熱電対の感温部を基準ブロックの表面又は表面近傍(表面下0mm〜5mmの範囲)にスポット溶接したり、接着したりして行う。
【0019】
上記の接触式表面温度センサ校正器において、前記基準温度センサの感温部を前記基準ブロックに固定配置する際に、前記基準面の隣の面である設置面に前記基準温度センサの感温部を埋設または外接させて固定配置すると共に、該設置面に保温ブロックを当接させて配置し、更に、前記基準ブロックの前記設置面、又は、前記保温ブロックの前記設置面に当接する当接面の一方、又は、両方に収納溝を設けて、前記基準温度センサの感温部と該感温部に接続するリード線の一部を収納して構成すると、次のような効果を奏することができる。 この構成によれば、基準面ではなく、基準面の隣の設置面に基準温度センサの感温部を埋設または外接させて固定配置するので、接触式表面温度センサが当接する基準面を平滑な状態にしたまま基準温度センサの固定配置を容易に行える。また、基準面を平滑な状態に維持できるので、より実際の測定状態に近い状態で接触式表面温度センサを基準面に接触させながら校正を行うことができるようになる。
【0020】
また、基準ブロックと保温ブロックの少なく一方に設けた収納溝に、基準温度センサの感温部やリード線の一部を収納するので、基準温度センサの感温部の周囲を基準ブロックと保温ブロックで囲むことができると共に、基準ブロックの設置面と保温ブロックの当接面とを密着させることができるので、両者の間の熱伝導効率を高い状態にすることができる。
【0021】
従って、基準ブロックと保温ブロックの温度を均一化することができ、校正時においては、基準ブロックの熱容量と保温ブロックの熱容量を合わせた大きな熱容量を持つことになり、接触式表面温度センサの接触によって生じる熱移動量の割合を校正器の全体的な熱容量に対して小さくすることができる。その結果、接触式表面温度センサの接触による基準面の表面の温度の変化量を小さくでき、また、熱伝導効率が高いので迅速に接触式表面温度センサの感温部の温度と基準ブロックの温度を均等化できる。その結果、校正精度を高めることができる。
【0022】
また、上記の温度センサ校正器において、基準ブロックをインコネル(INCONEL(登録商標))で形成し、基準温度センサをタイプRの熱電対で形成し、加熱源を電熱ヒータで形成すると、500℃以上の高温域における校正に関して、基準ブロックの材料を500℃以上の高温においても使用できるインコネルにすることで従来技術における銅の基準ブロックでは耐熱性が不足するという問題を解決でき、また、基準温度センサを500℃以上の高温まで測定可能なタイプRの熱電対にすることで、基準温度センサの高温測定が難しいという問題を解決できる。
【0023】
なお、インコネルの熱伝導率は銅の1/25程度と小さいため、表面と基準温度の計測点とで温度差が生じ易くなるが、この問題は、基準温度センサの感温部の設置を基準面の表面又は表面付近への貼り付け(スポット溶接)等の固定配置により解決される。更に、電熱ヒータは、500℃以上でも加熱できるので、500℃以上の高温においても接触式表面温度センサを校正できるようになる。また、電熱ヒータの使用により、電熱ヒータの市販品を使用できる上に、校正器の構造及び温度制御が比較的単純になるので、校正器の製造コストを低くすることができる。
【0024】
そして、上記の目的を達成するための本発明に係る接触式表面温度センサの校正方法は、接触式表面温度センサの校正方法において、上記の接触式表面温度センサ校正器を用いる。これにより、精度良く表面温度センサの校正を行うことができる。
【0025】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る基準温度センサの校正方法は、接触式表面温度センサを校正するための接触式表面温度センサ校正器に配置された基準温度センサの校正方法において、前記接触式表面温度センサ校正器では、前記接触式表面温度センサの感温部を当接する基準ブロックに基準温度センサを固定配置すると共に、前記基準ブロックを加熱して昇温させる加熱源を設けた加熱ブロックとは分離可能に前記基準ブロックを構成し、前記基準温度センサの校正に際して、前記基準ブロックを前記接触式表面温度センサ校正器から分離して、前記基準温度センサが固定配置された前記基準ブロックごと、前記接触式表面温度センサ校正器とは別の温度センサ校正器に入れて前記基準温度センサを校正することを特徴とする。この校正方法によれば、接触式表面温度センサ校正器の基準温度センサの校正を簡便に精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明の接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法によれば、被測温体の表面に感温部を接触して表面温度を測定する接触式表面温度センサを精度よく校正できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の接触式表面温度計センサ校正器の構成を示す、基準ブロックを外した状態の斜視図である。
【図2】図1の接触式表面温度計センサ校正器の構成を示す、基準ブロックを組み入れた状態の斜視図である。
【図3】図1の接触式表面温度計センサ校正器の中央横断面を示す図である。
【図4】図1の接触式表面温度計センサ校正器の中央縦断面を示す図である。
【図5】図1の接触式表面温度計センサ校正器の基準温度センサの校正の様子を示す平面図である。
【図6】図5の接触式表面温度計センサ校正器の基準温度センサの校正の様子を示す横断面図である。
【図7】図1の接触式表面温度計センサ校正器の基準ブロックを示す斜視図である。
【図8】基準ブロックに固定配置した基準温度センサを示す斜視図である。
【図9】第1の保温ブロックを示す斜視図である。
【図10】第2の保温ブロックを示す斜視図である。
【図11】加熱ブロックを示す斜視図である。
【図12】従来技術の接触式表面温度センサの校正の様子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態の温度センサ校正器について図面を参照しながら説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さ等の比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0029】
図1〜図4に示すように、本願発明に係る実施の形態の接触式表面温度センサ校正器10は、接触式表面温度センサ20を校正するための接触式表面温度センサ校正器10であり、接触式表面温度センサ20を接触させる基準ブロック11と、第1保温ブロック12と2つの第2保温ブロック13、13と、加熱ブロック14と、基準ブロック11に固定配置した基準温度センサ30と、加熱ブロック14に挿入される電熱ヒータ(加熱源)17を有して構成される。また、基準ブロック11は、基準ブロック11に接して基準ブロック11を加熱して昇温させる電熱ヒータ17を設けた加熱ブロック14とは分離可能に構成される。
【0030】
図7及び図8に示すように、基準ブロック11は、直方体(例えば、幅14mm、長さ35mm、高さ14mm)に形成され、固定用ネジ15を挿通する固定用貫通穴11aと、固定用ネジ16を螺合する固定用ネジ穴11bと、基準温度センサ30の感熱部(熱電対の接点)31とリード線32の一部を収納する収納溝11e、11fとを設けて構成される。
【0031】
この基準ブロック11においては、上側を表面温度センサ20の感温部21が当接する基準面11sとし、この基準面11sの隣の小さいほうの片側の側面を、基準温度センサ11を固定配置する設置面11cとする。また、この基準面11sの隣の大いほうの両側面を、保温面11d、11dとする。また、基準面11sの裏側となる下面が加熱ブロック14に接触する被加熱面となり、設置面11cの裏側となる側面は放熱面となる。
【0032】
収納溝11e、11fは、接触式表面温度センサ20が接触する基準面11sに隣接する3面11c、11dに設けられる。設置面11cには、基準温度センサ30の感温部31を収納する収納溝11eが設けられるが、できるだけ基準面11sとの距離を短くするために、基準温度センサ30の感温部31が基準面11sの表面又は表面下0mm〜5mm程度の表面近傍に配置できるように、例えば、0.3mm程度の溝である収納溝11eが設けられる。また、保温面11d、11dに対しては、感温部31から延びるリード線32の一部を収納する、例えば、深さ0.5mm〜1.0mm程度の溝である収納溝11fが設けられる。
【0033】
基準温度センサ30は、タイプRの熱電対で形成される。これにより、500℃以上の高温域における校正に関して、基準温度センサ30を500℃以上の高温まで測定可能なタイプRの熱電対にすることで、基準温度センサ30の高温測定が難しいという問題を解決できる。
【0034】
この基準温度センサ30は、図8に示すように、感温部31は設置面11cの収納溝11eに固定配置され、この感温部31から延びるリード線32の一部は、設置面11cの収納溝11eと保温面11dの収納溝11fに収納され、リード線32は校正器10の外部に導かれる。この収納溝11e、11fにより、基準ブロック11が第1保温ブロック12又は第2保温ブロック13と接触する際に隙間ができないようにすることができ、各ブロック間の熱伝導を良好に維持することができる。
【0035】
この構成によれば、基準面11sではなく、基準面11sの隣の設置面11cに基準温度センサ30の感温部31を埋設または外接させて固定配置するので、接触式表面温度センサ20が当接する基準面11sを平滑な状態にしたままで、基準温度センサ30の固定配置を容易に行えるようになる。また、基準面11sを平滑な状態に維持できるので、より実際の測定状態に近い状態で接触式表面温度センサ20の感温部21を基準面11sに接触させながら、接触式表面温度センサ20の校正を行うことができるようになる。
【0036】
基準温度センサ30の感温部31は、スポット溶接、接着等で基準ブロック11の表面又は表面近傍に固定される。この表面近傍としては、例えば、基準面11sの表面から0mm〜5mmの範囲内とする。なお、表面に感温部31を設ける場合には、固定配置した後に、基準面11sと感温部31とが同一平面になるように、基準面11sの表面を感温部31と共に機械加工する。
【0037】
この基準温度センサ30の感温部31を、基準面11sの表面又は表面近傍に配置して、基準面11sの温度と、感温部31が固定配置されている測温点との間の距離を0mm〜5mmの短い距離とすることにより、熱伝導率が銅に比べて低い耐熱金属で基準ブロック11を作成した場合であっても、基準面11sの表面と基準温度センサ30の感温部31との間の温度差を小さくすることができるので、基準面11sの表面の温度を精度よく計測できるようになる。
【0038】
第1保温ブロック12は、基準ブロック11と同じ大きさの直方体(例えば、幅14mm、長さ35mm、高さ14mm)に形成される。この第1保温ブロック12には、接続用の固定用ネジ15を挿通する固定用貫通穴12aと、固定用ネジ16を螺合する固定用ネジ穴12bとが設けられる。
【0039】
また、第2保温ブロック13は、基準ブロック11と第1保温ブロック12を合わせた大きさの直方体(例えば、幅13mm、長さ70mm、高さ14mm)に形成され、2つ用意される。この第2保温ブロック13にも、固定用ネジ15を挿通する固定用貫通穴13aと、固定用ネジ16を挿通する固定用貫通穴13bとが設けられる。
【0040】
また、加熱ブロック14は、基準ブロック11と第1保温ブロック12と2つの第2保温ブロック13、13を図1及び図2のように並べて載置できるように、大きな上側の加熱面14sと電熱ヒータ17が挿入配置される電熱ヒータ用穴14hを有した直方体(例えば、幅40mm、長さ100mm、高さ23mm)に形成される。
【0041】
この電熱ヒータ用穴14hには電熱ヒータ17が挿入配置される。この電熱ヒータ17は、500℃以上でも加熱できるので、500℃以上の高温においても接触式表面温度センサ20を校正できるようになる。また、電熱ヒータ17の使用により、電熱ヒータの市販品を使用できる上に、接触式表面温度センサ校正器10の構造及び温度制御が比較的単純になるので、接触式表面温度センサ校正器10の製造コストを低くすることができる。
【0042】
これらの各ブロック11、12、13、14は、耐熱性に過ぎれ、かつ、熱伝導率も高い、例えば、インコネル(INCONEL(登録商標))718で形成される。このインコネル718はニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金元素を含ませた金属材料であり、500℃以上でも形状を保持できるので、800℃位までの高温用の温度センサ校正器の使用できる。 つまり、500℃以上の高温域における校正に関して、基準ブロック11の材料を500℃以上の高温においても使用できるインコネル718にすることで、従来技術における銅の基準ブロックでは耐熱性が不足するという問題を解決できる。
【0043】
なお、インコネル718の熱伝導率は銅の1/25程度と小さいため、表面と基準温度の計測点とで温度差が生じ易くなるが、この問題は、基準温度センサ30の感温部31の設置位置を基準面11の表面又は表面付近への貼り付け(スポット溶接)等の固定配置により解決される。
【0044】
図2に示すように、これらの基準ブロック11と第1保温ブロック12は2つの第2保温ブロック13、13に挟持される。また、第2保温ブロック13の固定用貫通穴13bを挿通して基準ブロック11の固定用ネジ穴11bと螺合される固定用ネジ16と、第2保温ブロック13の固定用貫通穴13bを挿通して第1保温ブロック12の固定用ネジ穴12bに螺合される固定用ネジ16とにより、結合される。
【0045】
また、固定用ネジ15が、基準ブロック11と第1保温ブロック12と第2保温ブロック13の各々の固定用貫通穴11a、12a、13aに挿入されると共に、加熱ブロック14の固定用ネジ穴14aに螺合されて結合され、各ブロック11、12、13、13、14が一体化される。この固定用ネジ15の締め付けにより、各ブロック11、12、13、14の面同士の接触が密になり、この接触により熱伝導率を向上させることができる。
【0046】
この基準ブロック11の設置面11cに当接面12cが当接するように第1保温ブロック12を配置する。この基準ブロック11の側面である保温面11d、11dと第1保温ブロック12の側面である保温面12d、12dに、第2保温ブロック13の保温面13dを当接させて、加熱ブロック14に載置する。
【0047】
この構成によれば、基準ブロック11側と第1保温ブロック12側の少なく一方に設けた収納溝11eに、基準温度センサ30の感温部31やリード線32の一部を収納するので、基準温度センサ30の感温部31の周囲を基準ブロック11と第1保温ブロック12で囲むことができると共に、基準ブロック11側の設置面11cと第1保温ブロック12側の当接面12cとを密着させることができるので、両者の間の熱伝導効率を高い状態に維持することができる。
【0048】
従って、基準ブロック11と第1保温ブロック12の温度を均一化することができ、校正時においては、基準ブロック11と第1保温ブロック12を合わせた大きな熱容量を持つことになり、接触式表面温度センサ20の接触によって生じる熱移動量の割合を校正器の全体的な熱容量に対して小さくすることができる。その結果、接触式表面温度センサ20の接触による基準面11sの表面の温度の変化量を小さくでき、また、迅速に接触式表面温度センサ20の感温部21の温度と基準ブロック11の温度を均等化できるので、校正精度を高めることができる。
【0049】
更に、基準ブロック11の設置面11cの隣の面11d、11dと、第1保温ブロック12の設置面11cに対面する当接面12cの隣の面12d、12dに接触させて、第2保温ブロック13、13を配置すると共に、これらの基準ブロック11と第1保温ブロック12と第2保温ブロック13、13を、加熱源を備えた加熱ブロック14に載置して構成しているので、接触式表面温度センサ校正器10の全体としての熱容量を大きくできると共に、基準ブロック11に第1保温ブロック12と第2保温ブロック13、13と加熱ブロック14を面接触させることができるので、基準ブロック11を速やかに昇温、降温することができ、また、一定温度に維持することも容易となる。従って、校正精度を高めることができる。その上、接触式表面温度センサ校正器10の全体としての熱容量を確保しながら、基準ブロック11を小型化できるので、この基準ブロック11を収容する基準温度センサ30のための校正器を小型化できる。
【0050】
なお、収納溝11eを、この実施の形態では基準ブロック11に設けたが、第1保温ブロック12に設けることもできる。この場合は、基準温度センサ30の感温部31は基準ブロック11の外側に固定配置され、第1保温ブロック12が設置面11cに当接された時に、第1保温ブロック12に設けた収納溝に収納されることになる。また、収納溝11eを基準ブロック11側と第1保温ブロック12側に半々ずつ設けてもよい。これらの場合でも、リード線31は、基準ブロック11の収納溝11f部分に収納して外部に導くように構成し、基準ブロック11に基準温度センサ30が固定配置された状態のままで基準ブロック11を取り外せるように構成する。
【0051】
上記の構成の接触式表面温度センサ校正器10によれば、表面温度センサ20の感温部21を接触する基準ブロック11に基準温度センサ30を固定配置すると共に、基準ブロック11を加熱して昇温させる加熱源17のある加熱ブロック14とは分離可能に構成しているので、基準温度センサ30を固定配置したことにより、基準温度センサ30を基準ブロック11の収納孔又は挿入孔に挿入する場合に比べて、基準温度センサ30基準ブロック11の間の熱伝導効率を著しく高めることができ、基準ブロック11の表面温度を基準温度センサ30で精度よく計測できるようになる。
【0052】
また、基準ブロック11を加熱源から分離可能に構成することにより、基準ブロック11を小型化できるので、基準温度センサ30が固定された状態のままの基準ブロック11を別の校正器に入ることができるようになり、基準温度センサ30の校正が容易となる。
【0053】
そして、本発明に係る接触式表面温度センサの校正方法は、上記の接触式表面温度センサ校正器10を用いて行う。つまり、上記の接触式表面温度センサ校正器10を保温箱などに入れて熱放出量が少ない状態にして、電熱ヒータ17により加熱ブロック14、基準ブロック11、第1保温ブロック12、第2保温ブロック13、13を加熱して、校正の温度に昇温して維持し、基準面11sの表面に接触式表面温度センサ20の感温部21を接触させて、接触式表面温度センサ20と基準温度センサ30の温度測定値を読み取り、両温度測定値を比較することを、校正の温度を変更しながら繰り返して、基準温度センサ30の温度計測値になるように、接触式表面温度センサ20の温度測定値を校正する。これにより、精度良く表面温度センサ20の校正を行うことができる。
【0054】
また、本発明に係る基準温度センサの校正方法は、上記の接触式表面温度センサ校正器10の基準温度センサ30の校正方法において、図5及び図6に示すように、基準温度センサ30の校正に際して、基準温度センサ30が固定配置された基準ブロック11を、接触式表面温度センサ校正器10とは別の温度センサ校正器40に入れて校正する。
【0055】
この温度センサ校正器40においては、基準ブロック11と温度センサ校正器40の比較校正用温度センサ50の感温部51を均熱ブロック(恒温ブロック)41の内部に挿入して配置して、均熱ブロック41を温度センサ校正40の電気炉等の加熱炉42に入れて、主に放射伝熱Hで均熱ブロック41を加熱昇温し、これにより、均熱ブロック41内に配置された基準ブロック11の感温部31と比較校正用温度センサ50の感温部51を昇温させる。そして、校正のための各温度で、基準温度センサ30の温度測定値と、比較校正用温度センサ50の温度測定値を読み取って比較し、基準温度センサ30を比較校正用温度センサ50で校正する。
【0056】
この基準温度センサ30の校正方法によれば、簡便に接触式表面温度センサ校正器10の基準温度センサ30の校正を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記の接触式表面温度センサ校正器、接触式表面温度センサの校正方法及び基準温度センサの校正方法によれば、被測温体の表面に感温部を接触して表面温度を測定する接触式表面温度センサを精度よく校正できるので、接触式表面温度センサの校正器、及び、その校正方法として利用できる。
【符号の説明】
【0058】
10、10X 接触式表面温度センサ校正器
11 基準ブロック
11c 設置面
11e、11f 収納溝
11s 基準面
12 第1保温ブロック
12c 当接面
13 第2保温ブロック
14 加熱ブロック
14h 電熱ヒータ用穴
14s 加熱面
17 電熱ヒータ
20 接触式表面温度センサ
21 感温部
30 基準温度センサ
31 感温部
32 リード線
40 温度センサ校正器
41 均熱ブロック
42 加熱炉
50 比較校正用温度センサ
51 感温部
H 放射伝熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触式表面温度センサを校正するための接触式表面温度センサ校正器であって、
前記接触式表面温度センサの感温部を当接する基準ブロックに基準温度センサを固定配置すると共に、前記基準ブロックに接して前記基準ブロックを加熱して昇温させる加熱源を設けた加熱ブロックとは分離可能に前記基準ブロックを構成したことを特徴とする接触式表面温度センサ校正器。
【請求項2】
前記基準温度センサの感温部を前記基準ブロックの基準面の表面、又は、表面近傍に固定配置したことを特徴とする請求項1に記載の接触式表面温度センサ校正器。
【請求項3】
前記基準温度センサの感温部を前記基準ブロックに固定配置する際に、前記基準面の隣の面である設置面に前記基準温度センサの感温部を埋設または外接させて固定配置すると共に、該設置面に保温ブロックを当接させて配置し、更に、前記基準ブロックの前記設置面、又は、前記保温ブロックの前記設置面に当接する当接面の一方、又は、両方に収納溝を設けて、前記基準温度センサの感温部と該感温部に接続するリード線の一部を収納したことを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式表面温度センサ校正器。
【請求項4】
接触式表面温度センサの校正方法において、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接触式表面温度センサ校正器を用いることを特徴とする接触式表面温度センサの校正方法。
【請求項5】
接触式表面温度センサを校正するための接触式表面温度センサ校正器に配置された基準温度センサの校正方法において、
前記接触式表面温度センサ校正器では、前記接触式表面温度センサの感温部を当接する基準ブロックに基準温度センサを固定配置すると共に、前記基準ブロックを加熱して昇温させる加熱源を設けた加熱ブロックとは分離可能に前記基準ブロックを構成し、
前記基準温度センサの校正に際して、前記基準ブロックを前記接触式表面温度センサ校正器から分離して、前記基準温度センサが固定配置された前記基準ブロックごと、前記接触式表面温度センサ校正器とは別の温度センサ校正器に入れて前記基準温度センサを校正することを特徴とする基準温度センサの校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−191251(P2011−191251A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59291(P2010−59291)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000117814)安立計器株式会社 (4)
【Fターム(参考)】