説明

推力を反転させる装置を内蔵する航空機ナセル

【課題】本発明の目的は、内部にエンジンが配置され、推力に関与することのできる流が流れることのできる管(16)を区画する航空機のナセルであって、該ナセルは、少なくとも一つのフラップ(34)を備える、推力を減少、無効化、反転させる装置を内蔵し、そのフラップは、推力に関与することのできる流の少なくとも一部分を放射状の開口部(32)の方に偏向させる、少なくとも一つのいわゆる活動位置、及び、該フラップ(34)が推力に関与することのできる流に干渉しない、もう一つのいわゆる休止位置を占めることができ、ナセルの壁は偏向すべき流が内部を流れる管を区画し、その管は少なくとも一つの可動部分を備え、その可動部分は、二つの位置、すなわち、偏向すべき流とフラップ(34)との間に置かれる第一の位置と、フラップ(34)をはずして、該フラップが位置を変化させ、休止位置から活動位置に移ることができる、もう一つの位置を占めることができる航空機のナセルにおいて、各フラップ(34)は、いわゆるフラップ(34)の上端部であり、ナセルの上部分の第一の端部の位置に配置された第一の回転軸線(42)及びいわゆるフラップ(34)の下端部であり、ナセルの下部分の第二の端部の位置に配置された第二の回転軸線(44)を有するジョイント手段(40)を備え、該回転軸線(42、44)はナセルの鉛直中央軸線(26)にほぼ平行であることを特徴とする航空機ナセルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のナセル、さらに詳しく言えば、推進装置によって生成した推力を減少させる、無効にするまたは反転させるために航空機のナセルに備えられた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の推進装置は、一方では、羽根を備えるロータ及び羽根を備えるステータを具備する送風装置、及び、もう一方では、一次管を備えるモータを備えており、その一次管の内部には、空気の流れに沿って、コンプレッサ段、燃焼チャンバ及びタービン段が配置されている。モータは、ナセル内に配置されており、そのナセルは、送風装置の上流に空気取り入れ口を、送風装置のスタータの下流に二次管を備える。
【0003】
一般的には、ナセルは、二つの分岐によって構成されており、その分岐は、二次管内に配置され、各々、12時過ぎと6時前の角度位置に従っている。これらの二つの分岐は、構造要素及び推進装置システムに航空力学流線型を構成しており、一次管をナセルの他の部分に接続している。エンジンが翼面に備えられているとき、翼面に推進装置を固定するマストは、一部分が上方分岐内に配置されており、それによって、一次管を推進装置の他の部分に接続している。
【0004】
騒音を減少させるために、二次管の表面のいくつかの部分は、表面吸音処理被覆材を備える。
【0005】
推進装置は、一般的に推力反転装置を備え、それによって、流の少なくとも一部分を偏向させることができ、その結果、一つまたは複数の可動の物理的障害を利用して、該推進装置によって生成した推力を減少させる、無効化するまたは反転させることができる。
【0006】
特に特許文献1に記載の一実施態様によると、ナセルは、少なくとも一つの可動部分を備え、その部分はナセルの後方に並進移動することができ、それによって、固定部分と少なくとも一つの該可動部分との間に少なくとも一つの放射状の開口部を形成することができ、その開口部に向かって、二次管内を流れる流の少なくとも一部分が偏向されることができる。この実施態様によると、二次管は、可動部分が二次間の内側壁と接触して、可動部分が後方に並進移動するとき該管を塞ぐことができるように、適した形状、特に、肘形に曲がった形状を保有する。この解決法は、推力反転装置の概念を単純化しているとしても、二次管に補足の制約、特に特殊な形状という制約を課すことになり、推進装置の性能を低下させる傾向がある。
【0007】
いわゆる回転ドア式の別の実施態様によると、ナセルは、軸線を中心に回転し、それによって、回転後に放射状の開口部を形成することができるドアと呼ばれる可動部分を備え、該ドアは、二次管内に突出する部分を備えており、それによって、該二次管内で放射状の開口部の方へ流れる流の少なくとも一部分を偏向させることができる障害物を形成する。
【0008】
いわゆるカスケードの別の実施態様によると、ナセルは、少なくとも一つの可動部分を備え、その部分はナセルの後方に並進移動することができ、それによって、固定部分と少なくとも一つの該可動部分との間に少なくとも一つの放射状の開口部を形成することができ、その開口部に向かって、二次管内を流れる流の少なくとも一部分が偏向されることができ、また、その可動部分に対して関節式に接続された、二次管内に備えられたフラップを備え、そのフラップが少なくとも部分的に二次管を塞ぎ、空気流を放射状の開口部の方向へ偏向させることができる広げられた第一の位置と、ナセルの表面に対して押し付けられた、折り曲げられた第二の位置を占めることができる。一般的には、フラップを操作するために連接棒を備えており、連接棒の端部の一方がフラップに、もう一方がエンジンに接続されている。
【0009】
回転ドア式またはカスケード式推力反転器は、下記の理由で、満足できない。
【0010】
これらの形状では、吸音処理被覆材を具備することができるナセルの内側面積が限定される。実際、固定部分及び可動部分(後方フレーム、応力反転など)間の連結区域、すなわち、開転式部品(ドアまたはフラップ)のジョイントがその位置に備えられた区域は、吸音処理被覆材を具備することができない。
【0011】
カスケード反転器の場合、処理されない表面が、ナセルの内側表面の約20%を占めることがある。
【0012】
これらの形状は、また、二次管内を流れる流の位置で、固定部分と可動部分との間に多数の接合があり、カスケード反転器のフラップ用の連接棒などのように流に多数の障害物が存在するので、航空力学的損失が生じる。
【0013】
これらの形状では、また、固定部分と可動部分、特に、流の少なくとも一部分を偏向させるために使用される部分との間の調節が、その可動部分の変形がその位置に応じて変化するという事実から、困難になる。
【0014】
結局、特にカスケード反転器の場合は、多数の回転部品の存在によって、ナセルの周縁部全体にわたり、特にナセルの可動部分に分散した応力を確実に回収するために、ナセルのジョイント、自動制御及び構造補強装置が多数になるため、ナセルの質量が増大することになる。
【0015】
特許文献2は、ナセルの後部にドアを備えることからなる解決法を提案している。この解決法によって、内側表面の吸音処理を向上させることができるが、ナセルの後部の厚さが大きくなることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1515035号
【特許文献2】世界特許第2007/003749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、吸音処理を最適化し、航空力学的性能を損なわず、且つ、搭載質量の増大を制限することのできる、単純な概念の推力反転装置を内蔵する航空機ナセルを提案して、従来技術の問題点を解決することを目的とする。
【0018】
そのため、本発明は、内部にエンジンが配置され、推力に関与することのできる流が流れることのできる管を区画する航空機のナセルであって、該ナセルは、少なくとも一つのフラップを備える、推力を減少、無効化、反転させる装置を内蔵し、そのフラップは、推力に関与することのできる流の少なくとも一部分を放射状の開口部の方に偏向させる、少なくとも一つのいわゆる活動位置、及び、該フラップが推力に関与することのできる流を妨害しない、もう一つのいわゆる休止位置を占めることができ、ナセルの壁は偏向すべき流が内部を流れる管を区画し、その管は少なくとも一つの可動部分を備え、その可動部分は、二つの位置、すなわち、偏向すべき流とフラップとの間に置かれる第一の位置と、フラップをはずして、該フラップが位置を変化させ、休止位置から活動位置に移ることができる、もう一つの位置を占めることができる航空機のナセルにおいて、各フラップは、いわゆるフラップの上端部であり、ナセルの上部分の第一の端部の位置に配置された第一の回転軸線及びいわゆるフラップの下端部であり、ナセルの下部分の第二の端部の位置に配置された第二の回転軸線を有するジョイント手段を備え、該回転軸線はナセルの鉛直中央軸線にほぼ平行であることを特徴とする航空機のナセルを目的とする。
【0019】
その他の特徴及び利点は、添付図面を参照しておこなう本発明の以下の記載から明らかになろう。ただし、それらの記載は、本発明を例示するものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、各々、休止状態、広がる途中及び活動状態の本発明の一実施例による推力反転装置を概略的に図示した側面図である。
【図1B】図1Bは、各々、休止状態、広がる途中及び活動状態の本発明の一実施例による推力反転装置を概略的に図示した側面図である。
【図1C】図1Cは、各々、休止状態、広がる途中及び活動状態の本発明の一実施例による推力反転装置を概略的に図示した側面図である。
【図2】図2は、本発明によるナセルを概略的に図示する横断面図である。
【図3A】図3A及び4Aは、各々、休止状態及び活動状態にある推力反転装置を図示した、図2の線AAによる断面図である。
【図3B】図3B及び4Bは、各々、休止状態及び活動状態にある推力反転装置を図示した、図2の線BBによる断面図である。
【図4A】図4Aは、各々、休止状態及び活動状態にある推力反転装置を図示した、図2の線AAによる断面図である。
【図4B】図3B及び4Bは、各々、休止状態及び活動状態にある推力反転装置を図示した、図2の線BBによる断面図である。
【図5】図5は、推力反転装置の異なる実施例を図示したナセルの横断面図である。
【図6】図6は、推力反転装置の異なる実施例を図示したナセルの横断面図である。
【図7】図7は、推力反転装置の異なる実施例を図示したナセルの横断面図である。
【図8A】図8Aは、本発明による別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図8B】図8Bは、本発明による別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図8C】図8Cは、本発明による別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図8D】図8Dは、本発明による別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図9A】図9Aは、本発明によるまた別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図9B】図9Bは、本発明によるまた別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【図9C】図9Cは、本発明によるまた別の実施例の推力反転装置のその広がる各段階を概略的に図示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
各図面において、航空機ナセルに参照番号10を付し、概略的に図示したナセル内部に配置することのできるエンジンに参照番号12を付した。
【実施例】
【0022】
ナセル10は、前方に、エンジンを通過してナセルの後部で一次出口14に出る一次管と送風装置の後方に備えられ、二次出口18を介して出る二次管16に分かれる空気取り入れ口を備える。したがって、ナセル及びエンジンによって生成した推進装置の推力は、特に一次出口14及び二次出口18から出る流束の放出によって生じる。
【0023】
ナセルは、外側表面20がナセルの外側に流れる流束と接触する第一の壁及び内側表面22が二次管16を区画する第二の壁を備える。
【0024】
二つの分岐24は、一般的に、二次管16内に配置され、該二次管16内に、鉛直面で、各々12時過ぎ及び6時前の角度位置に配置された隔壁を形成する。したがって、ナセルは、軸線26によって具象化される鉛直中央面の区域に補強構造を備える。この補強構造は、また、ナセルを航空機に、さらに詳しく言えば、ナセルを航空機の翼面に接合するマストの係留点として働くように使用される。
【0025】
これらの要素は全部、当業者には公知であるので、これ以上詳細に記載しないが、形状に応じて様々な形をとることができる。
【0026】
ナセルは、推進装置によって生成した推力を減少、無効化または反転させることができる少なくとも一つの装置を備える。そのため、ナセル10は、少なくとも一つの固定部分28と少なくとも一つの可動部分30を備え、その可動部分は、図1Aに図示したように、固定部分28と可動部分30が継ぎ合わせられた第一の位置と、図1B及び1Cに図示したように、放射状の開口部32が固定部分28と可動部分30との間に形成されている第二の位置を占めることができる。
【0027】
一実施態様によると、可動部分30は、ナセルの後部に配置されており、ナセルの縦方向の軸線に沿って並進移動することができ、それによって、並進移動後に放射状の開口部32を形成することができる。一方では、固定部分及び可動部分の間の結合を、もう一方では、固定部分に対する可動部分の並進移動を確実にするために、結合手段及び作動器が備えられる。これらの結合手段及び作動器は、好ましくは、ほぼ12時及び6時の位置に配置されている。作動器及び結合手段がナセルの構造の補強区域に対応する分岐24に位置に備えられているので、この形状によって、応力の回収が容易になり、それによって、この区域以外でのナセルの補強を回避して、搭載質量が増大しないようにすることができる。
【0028】
これらの結合手段及びこれらの作動器は、当業者には公知なので、これ以上詳細に記載することはない。
【0029】
ナセルは、軸線26を含む鉛直中央面に沿ってほぼ対称なので、添付図面には、ナセルの半分だけを図示した。
【0030】
別の実施例によると、ナセルは、前部に単一の固定部分及び後部に単一の可動部分を備えることがあり、ナセルの周縁部全体に開口部が形成される。また別の実施例によると、ナセルは、単一の固定部分と二つの可動部分を備えており、その二つの可動部分は、鉛直平面に沿ってほぼ対称であり、運動学的に接続されているか独立しており、一つの可動部分の並進移動は、もう一つとは無関係である。
【0031】
さらに別の実施例によると、二つ以上の可動部分を考えることもできる。しかしながら、これらの実施例は、ナセルを複雑化し、重量を大きくするので、二つの可動部分を有する実施例が、良好な妥協策となる。
【0032】
記載を単純化するため、下記の記載は、可動部分を備えるナセルの半分に関しておこなわれるものである。
【0033】
固定部分及び可動部分を区画するために、様々な形状を検討することができる。そのように、該固定部分と該可動部分は、相補的な形状を保有し、それによって、ナセルの外側面20及び内側面22の位置で連続性を保証することができる。
【0034】
本発明は、添付図面に記載された運動学、すなわち、放射状開口部32を形成して、二次管をナセルの外側と連通させるための並進移動に限定されるものではない。他の運動学を検討することもできる。
【0035】
推力を減少、無効化、反転する装置は、少なくとも一つのフラップ34を備え、そのフラップは、推力に関与することのできる流の少なくとも一部分を放射状の開口部の方に偏向させる、少なくとも一つのいわゆる活動位置、及び、該フラップが推力に関与することのできる流を妨害しない、もう一つのいわゆる休止位置を占めることができる。補足的に、偏向された流の方向決定手段を備え、それによって、偏向された流を多少とも放射状にナセルの前方へ、または、ナセルの後方へ方向決定する。この方向決定は、例えば、放射状開口部32の上流または下流のナセルの外側面20での空気流の排出のように、フラップ34または付属手段によることがあり、それによって、流をナセルまたは従来技術で使用されるカスケード回路の前方へ、または、後方へ、各々方向決定することができる。
【0036】
これらの方向決定手段は、実施態様に応じて、様々な形状をとることができるので、これ以上詳細に説明することはない。
【0037】
偏向された流の方向決定及び偏向された流の量に応じて、生成した推力/ナセルの縦方向の軸線に沿って偏向された流は後方へ方向決定されるか、無いか、または、前方へ方向決定され、推力の減少、無効化または反転がおこなわれる。
【0038】
以下の説明では、推力の反転とは、推力の減少、無効化または反転を意味する。
【0039】
説明を単純にするために、本発明は、フラップを備える放射状開口部を区画する可動部分に関して記載する。しかしながら、ナセルは、各放射状開口部に一つずつ、複数のフラップを備えることができる。
【0040】
別の実施態様によると、図5、6、7に図示したように、フラップ34は、特に偏向しようとする流の一部分に応じて偏向すべき流が流れる管を多少とも補完する形状をとることができる。図6に図示したように、フラップは、ナセルの外側に突出して、その案内能力を高めることもできる。
【0041】
本発明によると、偏向すべき流がその内部を流れる管を区画する壁は、少なくとも一つの可動部分を備え、その可動部分は、二つの位置、すなわち、偏向すべき流とフラップ34との間に置かれる第一の位置と、フラップを解除して、該フラップが位置を変化させ、休止位置から活動位置に移ることができる、もう一つの位置を占めることができる。
【0042】
この構造によって、複数の機能、すなわち、フラップによって確保された流の少なくとも一部分を偏向させることからなる機能、及び、フラップを被覆する可動部分によって確保された、推力反転装置が活動していないときの流を誘導することを目的とする機能を分離することができる。
【0043】
好ましくは、フラップをはずれるまたは被覆することができる可動部分は、ナセルの可動部分30に対応する。したがって、可動部分には、外側面20に対応する壁及び内側面22に対応する壁の間に空洞部36が備えられており、該空洞部36は、固定部分と接触することができる可動部分30の範囲の位置で塞がれ、且つ、フラップ34を収容するのに適したサイズ及び形状を備える。このように、フラップ34が図2、3A及び3Bに図示したように、休止位置にあるとき、フラップ34は、空洞部36内に配置されており、内側面22に対応する面によって被覆されており、それによって、偏向すべき流から分離されている。活動位置では、可動部分30が、後方へ並進移動した後、そのとき、図1Cに図示したように、フラップをはずれて、推力に関与することのできる流の少なくとも一部分を偏向させる。
【0044】
しかしながら、本発明は、この実施態様に限定されるものではない。したがって、一つの可動部分を放射状の開口部を確実に形成するために、もう一つの可動部分をフラップを休止位置に隠すために備えることができる。しかし、この解決法では、ナセルを複雑にし、搭載質量を増大させることになる。
【0045】
本発明によると、内側面22、特にフラップを被覆する部分は、吸音処理被覆材38を備えることができ、それによって、従来技術のナセルに対して、処理面の表面積を大きくすることができ、航空機によって発生する騒音を減少させるのに役立つ。また、本発明によると、接合部分またはその他によって中断されない、連続した吸音処理被覆材を形成することができ、したがって、被覆材の有効性をかなり増大させることができる。
【0046】
ナセルの可動部分30は、フラップと同じ応力を受けないが、固定部分28とほぼ同じ応力を受けるので、固定部分と可動部分との間で十分な調節ができる。
【0047】
そのうえ、推力反転装置が休止状態にあるとき、どの部品も推力に関与することができる流に干渉することが全く無い。本発明によると、二次管を区画する面、特に、固定部分と可動部分との間で満足できる連続性が得られ、固定部分と可動部分との間で接合部分の数を制限する。この特徴は、ナセルの航空力学的性能を最適化するのに寄与する。
【0048】
さらに、他の利点によると、管の形状及びサイズは、推力反転機能を考慮せずに、求める航空力学的特徴だけを考慮して、特徴付けることができ、これによって、航空力学的特徴と推力反転機能との間の妥協が必要なく、ナセルの構想を単純化することができる。
【0049】
フラップ34は、該フラップのナセル、より詳細には、固定部分28との結合を確実にするジョイント手段40を備える。
【0050】
本発明の特徴によると、これらのジョイント手段40は、フラップ34をナセルの構造の補強区域に対応する分岐24の近傍に結合するように配置され、これによって、この区域の外でナセルを補強することを回避し、搭載質量を増大させないことが可能になる。
【0051】
一実施態様によると、ジョイント手段40は、フラップ34の上端部と呼ばれ、ナセルの上部分の第一の端部の位置に配置された第一の回転軸線42及びフラップ34の下端部と呼ばれ、ナセルの下部分の第二の端部の位置に配置された第二の回転軸線44を備える。この場合、フラップ34は、図1C、2、8D及び9Cに図示したように、調和のとれた曲面になり、それによって、可動部分30内に形成されて空洞部36に収容することができる。
【0052】
好ましくは、回転軸線42及び44は、鉛直中央軸線26にほぼ平行であり、単一の回転軸線だけを形成するように整列しているのが好ましい。
【0053】
一つの回転軸線、または、回転軸線42及び44は、好ましくは、フラップの航空力学的推力の中心に極めて近い位置に配置され、それによって、構造全体のおけるねじり応力を制限する。
【0054】
本発明の一実施態様によると、固定部分28は、鉛直中央軸線26に対してほぼ対称に、上部分に後方への延長部46及び下部分の後方への延長部48を備えており、これらの延長部46及び48は、回転軸線42及び44を支持する。また、一つまたは複数の可動部分は、上部分及び下部分に切れ込みを備え、その形状は固定部分の形状と協働するものである。
【0055】
場合によっては、一つまたは複数のフラップ34の回転運動を確実にすることができる自動制御システムは、一つまたは複数の可動部分30を移動させることができる自動制御システムとは別個であることがある。
【0056】
別の実施態様によると、一つまたは複数のフラップ34の回転及び一つまたは複数の可動部分の移動を単一の自動制御システムによって確実にすることができる。したがって、例として、水圧ジャッキまたはねじジャッキ装置をナセルの上部及び下部分岐24の内部または近傍に搭載して、応力反転の一面によって、一つまたは複数の可動部分30の位置及び一つまたは複数のフラップ34の位置を制御することができる。この解決法によって、搭載質量を制限することができる。
【0057】
また別の実施態様によると、可動部分の並進移動及びナセルの第一の側面の位置に配置された、対応するフラップの回転を制御することを目的とする第一の自動制御システム及び可動部分の並進移動及びナセルの第二の側面の位置に配置された、対応するフラップの回転を制御することを目的とする第二の自動制御システムを備えることができる。このように、二つの可動群の自動制御を分離して、飛行中に時ならぬときに広がることを制限することができる。
【0058】
航空力学平面では、フラップのサイズ及び固定部分を可動部分から分離する切込みの形状は、二次流(二次管を流れる)の出口面積がほぼ一定であり、送風装置の位置でポンプ減少が起こらないように、ある閾値を約±20%越えて変動することがないように決定される。
【0059】
したがって、図8A〜8dに図示したように、固定部分と接触することができる可動部分30の縁部は、凹面の形状を備えることができ、フラップ34が活動位置にあるとき、この凹面がフラップ34の形状と協働する。
【0060】
この構造によると、フラップは、可動部分30が行程の終点に来る前に回転し始めることができ、二次流の出口面積は、フラップが広がる間ある閾値を約±20%越えない範囲で変動する。
【0061】
図9A〜9Cに図示した別の実施例では、固定部分と接触することができる可動部分30の縁部は、凸面の形状を備えることがある。
【0062】
別の特徴によると、本発明の推力反転装置は、例えば、ナセルの放射状開口部の上流に配置されて航空力学的誘導子のような別の推力装置に組み合わせることができる。
【0063】
本発明のまた別の特徴によると、偏向器50を付加して、ナセルの様々な部分の間、及び、特に可動部分が後方へ並進移動するとき固定部分とその可動部分との間の航空力学的連続性を確実にすることができる。
【0064】
本発明のさらに別の特徴によると、ナセルの外側壁と内側壁との間の円錐形が異なることから、ナセルの後部に備えられた可動部分30を並進移動させて、二次流の出口面積の変動を得ることができる。
【0065】
そのように、可動部分30は、複数の機能を保有し、すなわち、放射状開口部を形成し、推力反転フラップを収容し、二次流の出口面積を変動させる。これは、各機能につき特定の装置を備える必要がないことから、搭載質量を減少させることに寄与する。
【0066】
推力反転装置の機能性を、様々な添付図面を参照して、以下に記載する。
【0067】
推力反転装置が休止状態にあるとき、固定部分28及び1つまたは複数の可動部分30は、図1A、3A、3B、8A及び9Bに図示したように、継ぎ合わされている。したがって、ナセルの内側及び外側航空力学線は連続しており、それによって、最適化された航空力学的特性を得ることに寄与する。また、従来技術に反して、いずれの部品も二次管内に突出することがない。
【0068】
推力反転装置の始動のとき、一つまたは複数の可動部分30は後方へ並進移動して、図1B、8B及び9Bに図示したように、各可動部分につき一つ、放射状開口部32を形成する。
【0069】
別の実施態様によると、一つまたは複数のフラップ34は、図8Cに図示したように、対応する可動部分が行程の終点に到達する前に回転し始めることができる。
【0070】
一つまたは複数のフラップが広がった後、これらのフラップは、図1C、4A、4B、8D、9Cに図示したように、二次管内に突出するように配置され、二次流の少なくとも一部分を偏向させる。
【0071】
休止状態に戻るためには、上記の段階を逆の順序で繰り返す。
【符号の説明】
【0072】
16 管
28 固定部分
30 可動部分
32 放射状の開口部
34 フラップ
40 ジョイント手段
42 第一の回転軸線
44 第二の回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエンジンが配置され、推力に関与することのできる流が流れることのできる管(16)を区画する航空機のナセルであって、該ナセルは、少なくとも一つのフラップ(34)を備える、推力を減少、無効化、反転させる装置を内蔵し、そのフラップは、推力に関与することのできる流の少なくとも一部分を放射状の開口部(32)の方に偏向させる、少なくとも一つのいわゆる活動位置、及び、該フラップ(34)が推力に関与することのできる流に干渉しない、もう一つのいわゆる休止位置を占めることができ、ナセルの壁は偏向すべき流が内部を流れる管を区画し、その管は少なくとも一つの可動部分を備え、その可動部分は、二つの位置、すなわち、偏向すべき流とフラップ(34)との間に置かれる第一の位置と、フラップ(34)をはずして、該フラップが位置を変化させ、休止位置から活動位置に移ることができる、もう一つの位置を占めることができる航空機のナセルにおいて、各フラップ(34)は、いわゆるフラップ(34)の上端部であり、ナセルの上部分の第一の端部の位置に配置された第一の回転軸線(42)及びいわゆるフラップ(34)の下端部であり、ナセルの下部分の第二の端部の位置に配置された第二の回転軸線(44)を有するジョイント手段(40)を備え、該回転軸線(42、44)はナセルの鉛直中央軸線(26)にほぼ平行であることを特徴とする航空機ナセル。
【請求項2】
固定部分(28)は、鉛直中央軸線(26)に対してほぼ対称に、上部分に後方への延長部(46)及び下部分の後方への延長部(48)を備えており、これらの延長部(46、48)は、回転軸線(42、44)を支持することを特徴とする請求項1に記載の航空機ナセル。
【請求項3】
上記ナセルは、少なくとも一つの固定部分(28)と少なくとも一つの可動部分(30)を備え、その可動部分は、固定部分(28)と可動部分(30)30が継ぎ合わされた第一の位置と、放射状の開口部(32)が固定部分(28)と可動部分(30)との間に形成されている第二の位置を占めることができる航空機ナセルにおいて、少なくとも一つの該可動部分(30)には、ナセルの外側面(20)に対応する壁及びナセルの内側面(22)に対応する壁の間に空洞部(36)が備えられており、該空洞部(36)は、固定部分と接触することができる可動部分(30)の範囲の位置で塞がれ、且つ、フラップ(34)を収容するのに適したサイズ及び形状を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の航空機ナセル。
【請求項4】
上記の少なくとも一つの固定部分(28)と接触することができる上記の少なくとも一つの可動部分(30)は、凹面の形状を備え、フラップ(34)の形状と協働することを特徴とする請求項3に記載の航空機ナセル。
【請求項5】
上記の少なくとも一つの固定部分(28)と接触することができる上記の少なくとも一つの可動部分(30)は、凸面の形状を備えることを特徴とする請求項3に記載の航空機ナセル。
【請求項6】
ジョイント手段(40)は、フラップの航空力学推力中心のきわめて近傍に配置された少なくとも一つの回転軸線を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の航空機ナセル。
【請求項7】
フラップ(34)は、特に偏向させようとする流の一部分に応じて、偏向すべき流が流れる管と補完的な形状を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の航空機ナセル。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2010−517845(P2010−517845A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547732(P2009−547732)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050102
【国際公開番号】WO2008/107605
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)