説明

推進装置およびこの推進装置を備えたロボット

【課題】大腸内視鏡やその他の機器と組み合わせて利用でき、さらに、一般に、検査目的等に供される既存のシステムを代替可能な推進装置を提供する。
【解決手段】本体2を備え、使用時に、対象表面に摩擦接触を与える外側の付着層を有する少なくとも1つの要素を備えた推進装置1であって、当該要素を、前記付着層を支持する支持層により構成し、支持層と本体2とを相対的に移動させる駆動手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体を備え、装置の使用時の移動に沿って、対象表面に対して摩擦接触する外部の付着層を有する少なくとも一つの要素により構成される推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の推進装置は、人の大腸内で移動可能な、腸の検査や治療介入を行う装置の移動のために用いられている。このような推進装置は、最適な大きさであることが要求され、特に、最大直径は約30mm未満とされる。
【0003】
一方で、発明に係る推進装置は、(より小さな、またはより大きな)他の寸法であってもよく、さらに、他の目的でも用いることができ、例えば、閉鎖領域内や,人または動物の体の一部である消化器官,動脈,鼻内の空洞,または脳内の空洞のように、接近させ難い場所でも用いることができ、さらに、推進力が必要な他の場所でも適切に用いることができる。
【0004】
さらに、発明に係る推進装置は、動物や人の体以外の他の環境、例えば、熱や電力を産出する工場やプラント内にある配管、チューブ、廃棄物システムのように、アクセスし難い場所でも用いることができる。特に、ボイラーの暖房配管は、亀裂やその他の障害の検査をしばしば行う必要があることが知られている。このような配管では、信頼性の高い検査を実行するために、数多くの湾曲部を通過する必要があるため、特有の問題をもたらしうる。
【0005】
以下の詳細な説明では、大腸内視鏡に移動力を与える手段としての実施例に言及しながら発明に係る推進装置の議論を行う。ただし、本発明の範囲は広範に及ぶものであり、特定の実施例に限定されるものではない。このようなその他の実施例は、本発明および添付の特許請求の範囲にも同様に含まれる。
【0006】
冒頭で述べた推進装置は、非特許文献1の博士論文により知られている。この非特許文献1の博士論文では、他に、粘膜付着の応用について研究がなされ、摩擦力を操作することや、大腸内において大腸鏡検査装置に移動のための動作を獲得させることについての研究がなされている。この非特許文献1の博士論文における図2.1では、接続管に配置された複数のシリンダーを相互接続して構成される一組のシリンダーの外周に粘膜付着層を適用したことが示されている。これらシリンダーは、順次、腸内壁に対して、強い摩擦接触と、断続的な摩擦接触の減少とを交互に行う。したがって、摩擦接触が減少された当該シリンダーを、腸内を活動して通過させることができ、これら一組のシリンダーを、反復的にぜん動運動させて腸内を移動させることができる。
【0007】
移動する複数のシリンダーの外側に粘膜付着層を適用することにより、膨張と伸縮を繰り返す複数のバルーンを利用して大腸内を移動する他の推進装置において知られている問題は解決できる。この種の複数のバルーンを利用するするシステムは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等により知られている。複数のバルーンを用いる既存のシステムは、人の苦痛を増大させる原因となるバルーンの膨張を行わないと、腸内壁に対する摩擦力が小さすぎて、腸内において信頼性の高い推進力を得られないという欠点がある。
【0008】
この問題に対処するため、腸内壁を真空化する手段を採用することも、特許文献7、特許文献8等により知られている。
また、腸内壁に対する粘着摩擦をもたらすための他のシステムとして、複数の車輪を用いたものが特許文献9により知られており、さらに、この目的のために、複数のベルトを応用したものが、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3895637号明細書
【特許文献2】米国特許第4676228号明細書
【特許文献3】米国特許第4690131号明細書
【特許文献4】米国特許第5337732号明細書
【特許文献5】米国特許第5398670号明細書
【特許文献6】米国特許第5454364号明細書
【特許文献7】米国特許第5906591号明細書
【特許文献8】米国特許第6309346号明細書
【特許文献9】米国特許第6648814号明細書
【特許文献10】米国特許第6695771号明細書
【特許文献11】米国特許第5562601号明細書
【特許文献12】米国特許第6071234号明細書
【特許文献13】米国特許第6224544号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】博士論文「腸内移動装置」(ドドゥ・ディミトラ著,2006年9月発行,ISBN−10:90−9020968−9およびISBN−13:978−90−9020968−5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の議論から、装置を素早く作動させるために、人や動物の腸内で確実に粘着摩擦をもたらす推進装置が長く待望されていたことが明らかである。常に前提となるのは、腸の損傷を避けることである。そのような信頼性の高い推進装置は、大腸を検査する目的で人や動物の大腸内において大腸内視鏡を移動させる際に特に必要となる。大腸内で大腸内視鏡を移動させる際に生じる問題は、大腸は、一直線ではなく、大腸内で大腸内視鏡を移動させることが困難になる予期しない湾曲部があることである。時には、大腸内において大腸内視鏡の動きがとれなくなったり、大腸を損傷させたりする結果となるおそれがあり、検査を受ける人や動物に激しい苦痛を与えてしまう。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも上記問題の一部を解決しうる推進装置であって、大腸内視鏡やその他の機器と組み合わせて利用でき、さらに、一般に、この目的に供せられる既存のシステムに代替する推進装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
推進装置、およびこの種の推進装置を備えたロボットは、添付の特許請求の範囲における1又は複数の請求項により特徴付けられる。
【0014】
概して、本発明の推進装置は、外側に付着層を有する要素を、前記付着層を支持する支持層により構成し、前記支持層と前記推進装置の本体とを互いに相対的に運動させる駆動手段を備えたことを特徴とする。これにより、付着層を有する支持層によって、推進装置の移動方向に沿って対象に対して所要の摩擦接触を確実に与えることができる。これは、上述の腸管内において特に有用であり、大腸壁との摩擦接触を実現することが困難な条件にある人や動物の大腸内で特に有用である。
【0015】
さらに、推進装置は、十分な範囲において推進要装置を移動させるため、前記支持層を格納する少なくとも1つのリールを備えることが望ましい。
【0016】
リールに格納された支持層として、リールから繰り出されて、人や動物の腸管内の検査時にこの腸管内に残されるものとすることが可能である。しかし、それによって腸内環境が悪化する。よって、腸管内で推進装置を推進させる駆動手段を操作する間、前記支持層を巻き取るためのリールもあることが好ましい。
【0017】
本発明の発明者らは、推進装置の移動方向に沿ってリールを動作させる構造ではなく、支持層のための1つまたは複数のリールに、このリールを本体の外周周りに回転可能とする軸受を組み込むことによって、リールに格納可能な支持層の長さが増加可能であることを発見した。これにより、前記支持層を十分に格納することができ、大腸内視鏡検査に最適な本発明の推進装置が実現される。
【0018】
好ましくは、推進装置は、少なくとも1組のリールを備え、リールの各組は、それぞれ、支持層の繰り出しリールと巻き取りリールにより構成される。より好ましくは、腸内壁に対して分散した力を均一に付与するため、推進装置の長手方向における中心軸周りの各所定位置に、複数のリールの組がそれぞれ配置される。(繰り出しと巻き取りを行う)各リールは、それぞれ、所望の長さと幅または推進装置に要求される直径を具備するために、1つ以上の支持層を運ぶ構成としてもよい。
【0019】
さらに好ましくは、各駆動手段は、推進装置の使用時に、推進装置の本体に対して支持層を移動させるために支持層に牽引力を与える。
さらに好ましくは、各駆動手段は、前記支持層を巻き取る1つまたは複数のリールに接続され、これらリールを駆動しうるように構成されている。
さらに好ましくは、各駆動手段は、個別に決定されるそれぞれの速度で、推進装置の外周に備えうる各支持層を選択的に駆動するように配置されている。これにより、前記各支持層それぞれの速度を正確に制御することで、推進装置の移動方向を制御することができる。
【0020】
本発明の推進装置の好ましい実施形態は、支持層を通過させて案内する少なくとも1つのスリットが設けられた筐体を有し、前記支持層が、当該筐体の近傍、または当該筐体に固定された部品の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0021】
使用後の支持層による腸内環境の汚染を防止する非常に実用的な実施形態は、少なくとも1つの前方スリットおよび少なくとも一つの後方スリットが設けられた筐体に機能を統合し、支持層を、筐体内から前方スリットを通し、筐体の近傍を通過させて後方スリットに案内し、前記後方スリットを通過させて前記筐体内に戻すものである。
特に上記実施形態では、好ましくは、1つまたは複数の支持層を格納する1つまたは複数のリールの組が、筐体における1つまたは複数のスリットの近傍に位置される。
【0022】
本発明の推進装置は、筐体と本体を同一視して好適に一つにまとめることもできる。このようにした場合、通常、1つまたは複数の支持層を格納する各リールは、それぞれ、当該支持層の繰り出し、巻き取りを本発明の推進装置の推進方向に沿って真っ直ぐに行う。
【0023】
一方で、本発明の推進装置の最適な実施形態は、1つまたは複数の支持層を筐体の近傍に案内するように通過させる前方スリットおよび後方スリットを筐体に設け、使用時に、1つまたは複数の支持層を、当該筐体の近傍を案内し、筐体内から1つまたは複数の前方スリットを通過させて、1つまたは複数の後方のスリットに向けて移動させ、筐体内に戻すことを特徴とする。特に、この実施形態では、腸管内や他の適用領域内において、推進装置が伸長方向に移動するのを促進する支持層を大量に格納することが可能になる。
【0024】
以下、本発明の推進装置およびロボットの例示的ないくつかの実施形態および図面を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の推進装置の第1の実施形態である。
【図2】図1に示す推進装置の分解した部品である。
【図3】本発明の推進装置の第2の実施形態である。
【図4】図3に示す推進装置において、筐体を取り外した際の内装部品である。
【図5】推進装置の筐体を部分的に除去した本発明の推進装置の第3の実施形態である。
【図6】複数の本発明の推進装置からなるロボットである。
【図7】本発明の推進装置の第4の実施形態である。
【図8】本発明の推進装置の第5の実施形態である。
【図9】本発明の推進装置の第6の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図において、同じ部品には同じ符号を付して示すものとする。
図1は、装置の筐体としても機能する本体2を備えた本発明の推進装置1の第1の実施形態を示す。
推進装置1は、外周において膜4を案内する複数の部品3を組み合わせて構成されている。本実施形態では、推進装置1の推進方向に沿って対象表面に対して摩擦接触を可能とするために、支持層は、各部品3の外方において付着層を支持する膜4によって構成されている。また、状況に応じて、膜4の代わりに、付着層を支持する手段として適切なベルト等の無端体を用いてもよい。
【0027】
図1の推進装置1の構成要素のいくつかを除いた状態を示す図2の一部に示されるように、推進装置1は、さらに駆動手段9,10を備える。
ウォームホイール10を介して接続されている好適な電動モーター9によって駆動される追加のリール5によって巻き取り可能とするために、膜4を、筐体2の近傍において、本体2の内部のリール6から前端7(図1参照)のスリットを通過させて推進装置1の後端に向けて移動することは、当業者には明確とされる。筐体2の外周において、より多くの膜を移動できるようにする場合、推進装置1の移動方向を制御するために、各膜4の速度制御を選択的に行うことが可能な専用の電動モーターを各膜4に設けてもよい。
【0028】
図3は、本発明の推進装置1の第2の実施形態を示し、推進装置1は、筐体11と一体化されており、この筐体11は、筐体11の近傍に配置される膜4が通過されて案内される少なくとも1つのスリット12,13を有している。
【0029】
図4は、推進装置1が少なくとも1組のリールを有することを明示しており、図示の場合、2組のリール15,16;17,18の各組は、それぞれ、膜4の繰り出しリール15,17および巻き取りリール16,18により構成されている。また、図4では、膜4のリール15,16,17,18が、これらのリールを本体2の外周周りで回転可能とする軸受を備えていることも明示している。リール15,16,17,18は、前記本体の外周の方向に回転可能に取り付けられており、矢印Aで示される本体2の移動方向に対する直交方向において、前記本体の外周周りに、前記リール15,17より膜4を繰り出し、前記リール16,18にその膜4を巻き取ることで、膜4を各リール15,16,17,18に大量に格納できるように配置して構成されている。前記各リールは、複数の膜を格納できるように設計してもよく、この場合、個々のリールにおける各膜は、それぞれ、異なるスリットを通して筐体からの繰り出し、巻き取りが行われる。これらの膜を牽引する力を与える駆動手段は、ステアリング機能を有する推進装置を提供するために、個別に制御可能なようにしてもよい。
【0030】
前記複数の膜を、筐体11の外周の近傍に配置した状態で、上述の直交方向から本体2の移動方向Aに平行な方向を向くように、前記膜4を案内する複数のガイドバー19,20,21,22が設けられている。したがって、前記膜を、筐体11内に設けられている各巻き取りリール16,18に巻き取ることにより、筐体11内の各繰り出しリール15,17から、筐体11における各前方スリット12を通過させて案内し、前記筐体11の近傍を通過させて、各後方スリット13へ案内し、前記各後方スリット13を通過させて筐体11内に戻すことができる。好ましくは、この目的のため、各膜4を繰り出す各繰り出しリール15,17は、それぞれ、筐体11における各前方スリット12の近傍に位置され、これに対して、使用後の各膜を巻き取る各巻き取りリール16,18は、それぞれ、筐体11における各後方スリット13の近傍に位置される。
【0031】
推進装置1の本体2の中心部23には、1つ又は複数の膜を駆動する駆動手段が備えられている。この目的のため、例えば、1つまたは複数のモーターに巻き取りリール16,18を接続するための伝動歯車や、前記巻き取りリール16,18を駆動する他の手段を使用することもできる。前記駆動手段の一部を形成する前記伝動歯車は、符号24により示している。
【0032】
図7は、本発明の推進装置1の第1の実施形態を示し、駆動手段が、筐体内に備えられ、かつ推進装置の本体2の適切な場所の周りに巻かれる牽引ケーブル25により構成されている。図7では、明瞭化のため筐体を図示していない。牽引ケーブル25は、巻き取りリール16,18のいずれか一方に対して、直接あるいは伝動歯車を介して接続されており、さらに、この牽引ケーブル25は、ボーデンケーブル26内を通過されて筐体の外部(図示せず)に導出され、操作のために、推進装置1およびこの筐体から離れた位置へと案内される。ここでは、ボーデンケーブルに代えて、例えば、ホース、カテーテル、牽引ばねのように、柔軟で軸方向に非圧縮な他の適切な案内手段も同様に使用できる。また、複数の牽引ケーブルを使用できるのと同様に、これらの手段を複数使用することも可能である。複数の牽引ケーブルを用いる場合、各牽引ケーブル25は、膜4に個別の牽引力を与える別々の巻き取りリールに接続してもよく、したがって、複数の膜4で総合的に推進装置の移動方向が決定される。
【0033】
図8は、図7に示したものと近似する実施形態を示している。本実施形態は、二方向に伸長自在な1つの牽引ケーブル25、または、巻き取りリール16を2つの反対方向に駆動可能とする2つの牽引ケーブル25のいずれか一方を有している。
【0034】
さらに、図9に示す他の実施形態においても、明瞭化のため、筐体は図示していない。本実施形態は、駆動手段を、伝動歯車29を有する可撓軸28により構成し、この伝動歯車29を、巻き取りリール16,18に接続されている本体2側の対応する歯車30の近傍に配置している。可撓軸28を回転させることで、巻き取りリール16,18に膜(図示せず)を巻き取ることができ、これにより、推進装置1の長手方向における筐体の外周に沿って、膜4が駆動されることによって推進装置1に牽引力が与えられる。
なお、可撓軸に代えて、自在継手構造のチェーン,ねじり剛性を有するチューブ,編組チューブ、または、一般に、長くて柔軟性があり、ねじり剛性を有し、その中心軸周りに回転可能である駆動体等を使用することもできる。
【0035】
図5は、本発明の推進装置1のさらなる実施形態を示し、1つまたは複数の膜4が筐体11の前面から背面に向けて案内されることで、推進装置1が移動するのに伴い、筐体11の外周におけるより多くの部分に、対象内壁に沿って強化された摩擦接触を生じさせることができる。
【0036】
最後に、図6に、互いに反対方向に移動可能な、膜4’ を備えた推進装置1および膜4’’ を備えた推進装置1を組み合わせたものを示す。図6に示すロボットは、独自の電源装置を備えるとき、単純に、予め組み込まれたプログラムにより、または、遠隔制御により、いずれか一方向に移動することができる。
【0037】
さらに、本発明の推進装置は、添付の特許請求の範囲に具体化された本発明の要旨を逸脱しない範囲で、図5の実施形態で示した例と同様に、種々の変更を行うことが可能である。
よって、添付の特許請求の範囲は、当該特許請求の範囲のあらゆる可能性・曖昧性を解決するためのみに用いられる各実施形態に制約されない。
【0038】
本発明の保護範囲を逸脱しない範囲における変更のうち、本発明の推進装置1の実施形態として、筐体11の外周において複数の膜を支持する支持部材であって、押圧手段として構成されることで、膜を筐体11から離れた位置に押圧するものを、挙げることができる。これにより、推進装置の移動に伴い、推進装置の前記複数の膜4と対象の表面の内壁との間の摩擦接触を大きく強化することができる。前記押圧手段は、直径が変動するチューブ内において推進装置を移動する場合にも役立つ。
【0039】
さらに、特に、図3〜図6に示すように、推進装置1は、カメラ等の検査や取扱いに用いる機器や、大腸内視鏡や、他の有用な機器等の機器を受け取るために、本体2を貫いて形成された中央チャンネル31を備えていてもよい。この機器は、例えば、生検チャンネル、1つ以上の光源;1つ以上のアナログまたはデジタルのカメラ(好ましくは、遠隔制御される);超音波プローブ;その他の診断手段;把持鉗子,はさみ,生検鉗子,組織の取り扱いや操作のための他の手段;大腸内視鏡,腸鏡,S状結腸内視鏡,胃内視鏡,十二指腸内視鏡,膀胱鏡,関節鏡,喉頭鏡,尿管鏡,気管支鏡,ファイバースコープ等のようなフレキシブル内視鏡;カテーテル;ガイドワイヤー;無線制御のための送受信装置;無線制御のための電源装置;ボロスコープやビデオスコープのような工業用フレキシブル内視鏡に関するもの等がある。推進装置は、上述の機器を覆うオーバーチューブと効果的に組み合わせて用いることもできる。
【0040】
さらに、好適には、付着層を運ぶ1つあるいは複数の膜4は、乾いた紙のような水を吸収しやすい特性を有する部分から所定距離離して配置される。これにより、付着層を、腸壁への付着に非常に適している粘膜付着層としたとき、層が機能する湿度条件を制御することが可能となる。この方法により、特に、粘膜付着層の粘着力が低下するおそれのある環境に対処することが可能となる。
【0041】
さらに、1つもしくは複数の膜4の複数の孔を利用することにより、または、特有の微細パターンを有する前記複数の膜を備えることにより、複数の膜の粘膜付着力がさらに向上される。
【0042】
さらに、本発明の推進装置は、付着層を粘膜付着層とした場合、粘膜付着層の近傍の湿度条件を切り離す又は制御する手段を有していてもよい。また、例えば、前記層の粘着力を局所的に抑制することができる給水手段のような手段を使用すれば、推進装置の方向制御を有利に行いうる。このため、給水手段は、推進装置の外周周りに分布する粘膜付着層の近傍に、選択的に制御しうる排水口を有する。
【符号の説明】
【0043】
A 矢印
1 推進装置
2 本体
3 部品
4,4’,4’’ 膜
5,6 リール
7 前端
8 後端
9 駆動手段
10 ウォームホイール
11 筐体
12 前方スリット
13 後方スリット
15,17 繰り出しリール
16,18 巻き取りリール
19,20,21,22 ガイドバー
23 中心部
24,29 伝動歯車
25 牽引ケーブル
26 ボーデンケーブル
27 位置
28 可撓軸
30 対応する歯車
31 中央チャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(2)を備え、使用時に、対象表面に摩擦接触をする外側の付着層を有する少なくとも1つの要素を有する推進装置(1)であって、
前記要素を、前記付着層を支持する支持層(4)により構成し、
前記支持層(4)と前記本体(2)とを相対的に運動させる駆動手段(9,10)を備えたこと
を特徴とする推進装置。
【請求項2】
支持層(4)を格納する少なくとも1つのリール(5,6)を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の推進装置。
【請求項3】
駆動手段(9,10)を作動する間、支持層(4)の繰り出しや巻き取りを行う少なくとも1つのリール(5,6)を、本体(2)に格納または支持したこと
を特徴とする請求項1または2に記載の推進装置。
【請求項4】
支持層(4)のための少なくとも1つのリール(15,16,17,18)に、当該リールを本体(2)の外周方向に回転可能とする軸受を備えたこと
を特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項5】
支持層(4)のための繰り出しリール(15,17)および巻き取りリール(16,18)により構成される組(15,16,17,18)を、少なくとも1つ備えたこと
を特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項6】
駆動手段(9,10)が、使用時に、支持層(4)に牽引力を与えるものであること
を特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項7】
駆動手段(9,10)が、使用時に、支持層(4)を巻き取る少なくとも1つのリール(5)を駆動するものであること
を特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項8】
支持層(4)を通過させる少なくとも1つのスリット(12,13)を筐体(11)に設け、
前記支持層(4)を、筐体(11)の近傍に配置したこと
を特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項9】
筐体(11)に、支持層(4)のためのリールを少なくとも1つ格納し、
前記支持層を、筐体(11)に設けられた少なくとも1つのスリット(12,13)を通して、筐体の外表面の近傍に沿って、筐体(11)の前方部分から後方部分に向けて案内するように構成されていること
を特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項10】
筐体(11)が、少なくとも1つの前方スリット(12)および少なくとも1つの後方スリット(13)を備え、
支持層(4)を、筐体(11)から前方スリット(12)を通過させ、筐体(11)の近傍を通って、後方スリット(13)に向けて案内し、前記後方スリット(13)を通過させて筐体(11)内に戻すように構成されていること
を特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項11】
支持層(4)を格納するリールの組における少なくとも1つのリール(15,16,17,18)を、筐体(11)に設けられた少なくとも1つのスリットの近傍に位置させたこと
を特徴とする請求項2〜10のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項12】
本体(2)を、筐体として構成したこと
を特徴とする請求項8〜11のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項13】
本体(2)は、前方スリット(12)および後方スリット(13)を有する筐体(11)内に備え、
これらのスリットを通過させた1つまたは複数の支持層(4)を筐体(11)に沿って案内するように構成され、
1つまたは複数の支持層(4)を、使用時に、筐体(11)内から1つまたは複数の前方スリット(12)を通過させて、1つまたは複数の後方スリット(13)に向けて案内させ、かつ筐体(11)内に戻すように構成されていること
を特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項14】
推進装置であって、
使用時に前記推進装置(1)が対象表面に沿って移動するときに、その対象表面に摩擦接触する外側の付着層を有する少なくとも1つの要素(4)を支持する筐体(11)および,または本体(2)を備え、
前記要素が、前記付着層を支持する支持層(4)により構成され、
支持層(4)を、筐体(11)に設けられた前方スリット(12)および後方スリット(13)との間において、前記筐体の外周に沿って移動可能に構成したこと
を特徴とする推進装置。
【請求項15】
本体(2)が、1つまたは複数の支持層(4)の格納および繰り出しを行う1つまたは複数の第1リール(15,17)を支持し、
1つまたは複数の支持層(4)を、1つまたは複数の前方スリット(12)を通過させて、筐体(11)内から筐体の外側に向けて案内し、
1つまたは複数の支持層(4)を、前記筐体(11)の近傍に位置させ、かつ1つまたは複数の後方スリット(13)を通過させて、1つまたは複数の支持層(4)を巻き取り可能であり、かつ本体(2)により支持された1つまたは複数の第2リールに向けて案内するように構成されていること
を特徴とする請求項14に記載の推進装置。
【請求項16】
1つまたは複数の支持層を駆動する駆動手段を備えたこと
を特徴とする請求項1〜15のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項17】
1つまたは複数の支持層(4)のために、1つまたは複数のリール(16,18)を駆動する駆動手段(24)を備えたこと
を特徴とする請求項2〜16のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項18】
少なくとも2つの支持層(4)を備え、
駆動手段(24)が、前記各支持層(4)を個々の所定速度にて選択的に駆動するように構成されていること
を特徴とする請求項1〜17のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項19】
駆動手段が、本体(2)および,または筐体(11)によって支持されていること
を特徴とする請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項20】
駆動手段が、1つまたは複数の電動モーター(9)を有すること
を特徴とする請求項1〜19のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項21】
駆動手段が、筐体内に設けられた少なくとも1つの牽引ケーブル(25)により構成され、
前記牽引ケーブル(25)は、柔軟で軸方向に非圧縮なガイドチューブ内を通過されて、筐体から離れた位置(27)に向けて案内されるものであり、
前記ガイドチューブは、ボーデンケーブル(26),ホース,カテーテル,牽引ばねの中から選択されたものであること
を特徴とする請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項22】
駆動手段が、可撓軸,自在継手構造のチェーン,ねじり剛性を有するチューブまたは編組チューブ、あるいは、1つまたは複数の支持層(4)のための1つまたは複数のリール(16,18)に対してねじり駆動トルクを与えるための長くて、かつ柔軟なねじり剛性を有する駆動体(28)の中から選択されたものであること
を特徴とする請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項23】
1つまたは複数のリール(15,16,17,18)を、本体(2)の移動方向(A)に対する直交方向に1つまたは複数の支持層(4)の繰り出しや巻き取りを行うために、前記本体(2)の周りを回転可能なように、本体(2)に対して回転可能に取り付け、
前記1つまたは複数の支持層(4)を、前記直交方向から前記本体(2)の移動方向(A)と平行な方向に向けて案内するガイドバー(19,20,21,22)を備え、
1つまたは複数の支持層(4)を、筐体(11)の外周の近傍に位置させたこと
を特徴とする請求項15〜22のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項24】
1つまたは複数の支持層(4)を、前記1つまたは複数の支持層を前記筐体(11)から離れるように押圧する押圧手段により支持していること
を特徴とする請求項1〜23のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項25】
機器を受け取るための中央チャンネル(31)を、本体(2)を貫いて設け、
前記機器が、生検チャンネル、1つ以上の光源、1つ以上のアナログもしくはデジタルのカメラ,超音波プローブ,その他の診断手段、把持鉗子,はさみ,生検鉗子,組織の取り扱いや操作のための他の手段、大腸内視鏡,腸鏡,S状結腸内視鏡,胃内視鏡,十二指腸内視鏡,膀胱鏡,関節鏡,喉頭鏡,尿管鏡,気管支鏡,ファイバースコープのようなフレキシブル内視鏡、カテーテル,ガイドワイヤー,無線制御のための送受信装置,無線制御のための電源装置,または、ボロスコープもしくはビデオスコープのような工業用フレキシブル内視鏡の中から選択されたものであること
を特徴とする請求項1〜24のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項26】
1つまたは複数の支持層(4)に設けられた付着層を、粘膜付着層により構成したこと
を特徴とする請求項1〜25のうちいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項27】
付着層を運ぶ1つまたは複数の支持層(4)を、水を吸収しやすい部分から所定距離離して設けたこと
を特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項28】
支持層が、膜(4)、無端体、ベルトの中から選択されたものであること
を特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項29】
粘膜付着層の粘着力を緩和するための給水手段を備えたこと
を特徴とする請求項26〜28のいずれか1項に記載の推進装置。
【請求項30】
給水手段は、推進装置の方向制御を選択的に制御可能に構成されていること
を特徴とする請求項29に記載の推進装置。
【請求項31】
請求項1〜30のうちいずれか1項に記載の推進装置を少なくとも1つ備えたこと
を特徴とするロボット。
【請求項32】
少なくとも2つの推進装置を有し、
2つの推進装置が、互いに反対方向に移動可能な支持層(4’,4’’)を有すること
を特徴とする請求項31に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−512695(P2012−512695A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542030(P2011−542030)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050752
【国際公開番号】WO2010/071420
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(500292149)テクニッシェ ユニヴァージテート デルフト (14)
【Fターム(参考)】