説明

掴線具

【課題】作業性良く、短い作業時間で両線体を掴持する掴線具を提供する。
【解決手段】互いに平行な一対の線体16、17を掴持する掴線具であって、内面側に滑り止めエッジ3が設けられた第1壁板8と、第1壁板8に対向し内面側に傾斜ガイド1が設けられた第2壁板7とを有する断面略コ字状の第1チャネル部材5と、内面側に滑り止めエッジ4が設けられた第3壁板10と、第3壁板10に対向し内面側に傾斜ガイド2が設けられた第4壁板9とを有する断面略コ字状の第2チャネル部材6とを備え、第1チャネル部材5と第2チャネル部材6の傾斜ガイド1、2が滑動可能に係合するように第1チャネル部材5と第2チャネル部材6とを組み合わせた状態で、第1チャネル部材5と第2チャネル部材6とを逆方向に移動させたときに、第1壁板8と第4壁板9との間隔及び第3壁板10と第2壁板7との間隔が減少するように、各傾斜ガイド1、2を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な一対の線体を、これら線体に逆方向に作用する張力に抗して掴持する掴線具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線路には、2万V〜3万Vの電圧がかかる高圧架空電線路と約6600Vの電圧がかかる中圧架空電線路と約300V以下の電圧がかかる低圧架空電線路とがある。低圧架空電線路は従来、バインド線により電柱に引き留められていた。
【0003】
図6は、従来の掴線方法を説明するための斜視図である。低圧架空電線路15は、直径約2cmの銅線をゴムにより被覆して構成される。まず、電柱に設けられた碍子18に低圧架空電線路15を巻きつけて折り返し、電線部16及び17を構成する。そして、碍子18から所定距離(例えば14cm)離れた位置から電線部16及び17にバインド線91を電線部長手方向に所定長さ(例えば約24cm)だけペンチで巻きつける。バインド線91の端末91Aは巻きつけたバインド線91に沿わし、端末91Bはねじって押さえ込む。次に、バインド線91から約25cm離してバインド線92を電線部16及び17にペンチで巻きつけ端末92Aをねじって押さえ込む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、バインド線をペンチで電線部に巻きつけるので、作業性が悪く、作業時間も長いという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来例の問題点を解決し得る掴線具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る掴線具は、互いに平行な一対の線体を、これら線体に逆方向に作用する張力に抗して掴持する掴線具であって、内面側に滑り止め部が設けられた第1壁板と、第1壁板に対向し内面側に傾斜ガイド部が設けられた第2壁板とを有する断面略コ字状の第1チャネル部材と、内面側に滑り止め部が設けられた第3壁板と、第3壁板に対向し内面側に傾斜ガイド部が設けられた第4壁板とを有する断面略コ字状の第2チャネル部材とを備え、第1チャネル部材の第2壁板と第2チャネル部材の第4壁板とのそれぞれの傾斜ガイド部が滑動可能に係合するように第1チャネル部材と第2チャネル部材とを組み合わせた状態で、第1チャネル部材と第2チャネル部材とを逆方向に移動させたときに、第1壁板と第4壁板との間隔及び第3壁板と第2壁板との間隔が減少するように、各傾斜ガイド部を構成したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1チャネル部材の第1壁板の内面と第2チャネル部材の第4壁板の外面との間に一方の線体を挟み込み、第2チャネル部材の第3壁板の内面と第1チャネル部材の第1壁板の外面との間に他方の線体を挟み込んだ状態で、両線体に逆方向の張力を作用させると、第1チャネル部材の第2壁板と第2チャネル部材の第4壁板のそれぞれの傾斜ガイド部が互いに滑動して、第1壁板と第4壁板との間隔及び第3壁板と第2壁板との間隔が減少する。
【0008】
従って、一方の線体は第1チャネル部材の第1壁板と第2チャネル部材の第4壁板とにより両側から締め付けられ、他方の線体は第2チャネル部材の第3壁板と第1チャネル部材の第2壁板とにより両側から締め付けられる。その結果、一対の線体を掴線具に収容して両線体を逆方向に引っ張るという簡単な作業により短時間で両線体を掴持することができる。
【0009】
一方の線体を、その張力方向に配置された碍子に巻回して他方の線体と一体に形成すると、架空電線路の引き留め作業に適用することができ、一方の線体に張力を与えると、一方の線体と一体に形成した他方の線体に逆方向の張力が与えられて両線体が締め付けられ、簡単な作業により短時間で架空電線路を引き留めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業性良く、短い作業時間で両線体を掴持する掴線具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本実施の形態に係る掴線具100の外観を示す斜視図であり、図2は掴線具100に設けた一対のチャネル部材5、6の外観を示す斜視図であり、図3(a)及び図3(b)は掴線具100の断面図である。図4(a)及び図4(b)は掴線具100の拡大断面図である。掴線具100は、断面略コ字状の一対のチャネル部材5、6を備える。チャネル部材5は互いに対向する一対の壁板7、8を有し、チャネル部材6は互いに対向する一対の壁板9、10を有する。チャネル部材5に設けられた壁板7の先端から壁板8側に折り曲げられた係合板21が形成され、壁板8の先端から壁板7側に折り曲げられたガイド板23が形成される。チャネル部材6に設けられた壁板9の先端から壁板10側に折り曲げられた係合板22が形成され、壁板10の先端から壁板9側に折り曲げられたガイド板24が形成される。
【0012】
掴線具100は、チャネル部材5の壁板9の内面11とチャネル部材6の壁板7の内面12とを互いに対向させて構成する。低圧架空電線路15は、直径約2cmの銅線をゴムにより被覆して構成され、電柱に設けられた碍子18に巻きつけられる電線部16と碍子18により折り返された電線部17とからなる。
【0013】
ガイド板23の端面と壁板9の外面13とは、電線部16の直径に相当する隙間を空けて構成され、ガイド板24の端面と壁板7の外面14とは、電線部17の直径に相当する隙間を空けて構成される。電線部16はチャネル部材5の壁板8とチャネル部材6の壁板9とにより挟み込むようにして収容され、電線部17はチャネル部材6の壁板10とチャネル部材5の壁板7とにより挟み込むようにして収容される。
【0014】
壁板8の内面19には、電線部16の張力方向A1への滑りを防止するために内面19に対して傾斜する滑り止めエッジ3が長手方向に複数個形成されている。壁板10の内面20には、電線部17の張力方向A2への滑りを防止するために内面20に対して傾斜する滑り止めエッジ4が長手方向に複数個形成されている。滑り止めエッジ3、4は、それぞれ先端が壁板8、10から切り離されて電線部16及び17の外被に喰い込むように、基部及び側部は壁板8、10につながっているようにプレス加工により凹設されている。
【0015】
チャネル部材5の壁板7の内面12に、電線部16の張力方向A1に面して傾斜する傾斜ガイド1が長手方向に複数個形成される。チャネル部材6の壁板9の内面11には、各傾斜ガイド1にそれぞれ滑動可能に係合する複数個の傾斜ガイド2が形成される。傾斜ガイド1、2は、それぞれ先端が壁板7、9から切り離され、基部及び側部25、26が壁板7、9につながっているようにプレス加工により凹設されている。
【0016】
このように構成された掴線具100の動作を説明する。図3(b)は掴線具100の動作を説明するための断面図であり、図5(a)及び図5(b)は掴線具100の動作を説明するための拡大断面図である。
【0017】
まず、碍子18に低圧架空電線路15を巻きつけて折り返す。そして、チャネル部材5の壁板8とチャネル部材6の壁板9との間に電線部16を収容し、チャネル部材6の壁板10とチャネル部材5の壁板7との間に電線部17を収容する。次に、矢印A1方向の張力を電線部16に作用させると矢印A2の逆方向の張力が電線部17に作用する。
【0018】
チャネル部材5は、電線部16に矢印A1方向の張力が作用すると、電線部16の滑りを防止する滑り止め部3により、矢印A1方向に引っ張られる。このため、傾斜ガイド1は傾斜ガイド2に沿って矢印P1方向に滑動する。従って、チャネル部材5の壁板7はチャネル部材6の壁板10に向かって移動して電線部17の外周側面を押し、壁板8はチャネル部材6の壁板9に向かって移動して電線部16の外周側面を押す。
【0019】
一方、チャネル部材6は、電線部17に矢印A2方向の張力が作用するので、滑り止め部4により矢印A2方向に引っ張られる。このため、傾斜ガイド2は傾斜ガイド1に沿って矢印P2方向に滑動する。従って、チャネル部材6の壁板9はチャネル部材5の壁板8に向かって移動して電線部16の外周側面を押し、チャネル部材6の壁板10はチャネル部材5の壁板7に向かって移動して電線部17の外周側面を押す。
【0020】
このように、電線部16はチャネル部材5の壁板8とチャネル部材6の壁板9とにより両側から押し付けられ、電線部17はチャネル部材5の壁板7とチャネル部材6の壁板10とにより両側から押し付けられる。その結果、電線部16,17を収容して電線部16を引っ張るという簡単な作業で低圧架空電線路15を掴持して碍子18に引き留めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、互いに平行な一対の線体を、これら線体に逆方向に作用する張力に抗して掴持する掴線具に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係る掴線具の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る掴線具に設けた一対のチャネル部材の外観を示す斜視図である。
【図3】(a)は本実施の形態に係る掴線具の断面図であり、(b)は掴線具の動作を説明するための断面図である。
【図4】(a)及び(b)は本実施の形態に係る掴線具の拡大断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、本実施の形態に係る掴線具の動作を説明するための拡大断面図である。
【図6】従来の掴線方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1、2傾斜ガイド
3、4滑り止めエッジ
5、6チャネル部材
7、8、9、10 壁板
11、12 内面
13、14 外面
15 低圧架空電線路
16、17 電線部
18 碍子
100 掴線具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な一対の線体を、これら線体に逆方向に作用する張力に抗して掴持する掴線具であって、内面側に滑り止め部が設けられた第1壁板と、第1壁板に対向し内面側に傾斜ガイド部が設けられた第2壁板とを有する断面略コ字状の第1チャネル部材と、内面側に滑り止め部が設けられた第3壁板と、第3壁板に対向し内面側に傾斜ガイド部が設けられた第4壁板とを有する断面略コ字状の第2チャネル部材とを備え、第1チャネル部材の第2壁板と第2チャネル部材の第4壁板とのそれぞれの傾斜ガイド部が滑動可能に係合するように第1チャネル部材と第2チャネル部材とを組み合わせた状態で、第1チャネル部材と第2チャネル部材とを逆方向に移動させたときに、第1壁板と第4壁板との間隔及び第3壁板と第2壁板との間隔が減少するように、各傾斜ガイド部を構成したことを特徴とする掴線具。
【請求項2】
一方の線体は、その張力方向に配置された碍子に巻回されて他方の線体と一体に形成される請求項1記載の掴線具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−254578(P2006−254578A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66449(P2005−66449)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】