説明

提灯

【課題】提灯本体とそれを固定する部材との組み立て、分解が簡単で、様々な形態で使用することが出来る提灯。
【解決手段】提灯は、基台2と、この基台2から立設された支柱3と、これら基台2と支柱3とを覆うように張られる筒状の火袋1とを有する。火袋1の下端部に内側に括れた括れ部5を有し、この括れ部5を基台2の周縁9に掛けてその外側に嵌め込み、火袋1の上端部に支柱3の上端に設けた火袋掛13を着脱自在に掛ける支柱掛7を有し、支柱3の中間部にその火袋掛13を上方に弾力を付勢する弾性部材18を設けている。具体的には、支柱3は、基台2から立設された下部支柱10と、この下部支柱10の上端に着脱自在に連結される上部支柱11とを有し、上部支柱11は、その上端に火袋3の支柱掛7を掛ける火袋掛13を有し、火袋3の支柱掛7には、火袋掛13を含む上部支柱11を通す挿入孔20と同火袋掛13を掛けるスリット21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はいわゆる火皿と呼ばれる基台と、この基台から立設された支柱と、これら基台と支柱とを覆うように張られる筒状の火袋とを有する提灯に関する。さらに詳しくは、簡単に組み立て、分解が可能であり、それ故、様々な状態、形態で使用することが可能であり、葬祭用としてはもちろん、照明、広告、装飾等、様々な分野で簡便に使用出来る提灯に関する。
【背景技術】
【0002】
提灯には、床置き形、吊り下げ形、弓張り形等、様々のものがあるが、提灯本体は基本的には共通する構造となっている。竹ひごをで骨組みを作り、その外側に和紙や絹布等を張り、筒状の火袋を作る。この火袋の上下の口部分に輪状の上輪と下輪を取り付けたのが提灯の本体となる。
【0003】
さらに例えば行灯形の盆提灯であれば、ロクロや火皿と呼ばれる基台に上足と呼ばれる2本の支柱を立て、この支柱を覆うように前記の筒状の火袋を嵌め込む。基台は一般的には円板状で中心部に蝋燭や電灯を立てるための突起や孔を有し、下面に下足と呼ばれる通常3本の脚を取り付ている。支柱は火皿の上面に通常は二本立設され、その上端に提灯の上輪を紐で吊り下げ、雲手と呼ばれる横梁で支柱の上端を互いに固定する。提灯の下輪は留め金等で基台に固定する。提灯を分解するときは、この逆の手順で雲手、火袋、支柱、火皿を分離し、火袋を折り畳んで箱等に収納する。
【0004】
また、吊り下げ形の盆提灯では、手板と呼ばれる横棒に提灯の上輪を紐で吊し、手板を天井或いは柱等から吊り下げる。さらに、祭に多く使用される祭提灯では、手板は使わず、上輪を軒や天井から吊り下げて使用する。迎え提灯や携帯用提灯に使用される弓張り形の提灯は、弓状の取っ手の両端に提灯の上輪と下輪を固定して使用する。これらの提灯の場合、下輪の底板が火皿として使用される。
提灯にはこのように様々な形態、があるが基本的に取付形態に違いがあるだけで、提灯本体そのものは、火袋の上下の口に上輪と下輪を取り付けた構造であることに違いは無い。
【0005】
各種の提灯は、歴史的背景があってそれらの設置形態が考案され、発展してきたものであるが、何れも火皿や支柱への取り付け、取り外しが複雑で面倒であるという課題がある。また、床置き形のものは床置き、吊り下げ形のものは吊り下げと、使用形態が限定され、任意の使用形態を選択することが出来なかった。
【特許文献1】特開2003−275090号公報
【特許文献2】特開2002−319302号公報
【特許文献3】特開2001−218670号公報
【特許文献4】特開平9−97504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の提灯が有する課題に鑑み、提灯本体とそれを固定する部材との組み立て、分解が簡単で、様々な形態で使用することが出来、葬祭用としてはもちろん、照明、広告、装飾等、様々な分野で簡便に使用出来る提灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、前記の目的を達成するため、火袋1の上下の口部分に上輪や下輪を設けず、まず火袋1の下の口部分については、内側に括れた括れ部5を設け、この括れ部5を基台2の縁に掛けて固定する。他方、火袋1の上端の口部分には、支柱掛7を設け、この支柱掛7に基台2から立設した支柱3の上端を着脱自在に掛ける。さらに、支柱3の中間部に設けた弾性部材18により、支柱3の上端を上方を弾力的に押し上げ、火袋1にテンションを与え、その形を保つ。
【0008】
すなわち、本発明による提灯は、基台2と、この基台2から立設された支柱3と、これら基台2と支柱3とを覆うように張られる筒状の火袋1とを有する。火袋1の下端部に内側に括れた括れ部5を有し、この括れ部5を基台2の周縁9に掛けてその外側に嵌め込み、火袋1の上端部に支柱3の上端に設けた火袋掛13を着脱自在に掛ける支柱掛7を有し、支柱3の中間部にその火袋掛13を上方に弾力を付勢する弾性部材18を設けている。
【0009】
より具体的には、支柱3は、基台2から立設された下部支柱10と、この下部支柱10の上端に着脱自在に連結される上部支柱11とを有し、この上部支柱11は、その上端に火袋3の支柱掛7を掛ける火袋掛13を有し、前記火袋3の支柱掛7には、火袋掛13を含む上部支柱11を通す挿入孔20と同火袋掛13を掛けるスリット21とを有する。
【0010】
このような本発明による提灯では、火袋1の上下の口部分に上輪や下輪が必要なくなり、火袋1の括れ部5を基台2の周縁9に掛けることで、火袋1を基台2に直接取り付けることが出来る。従って、簡単に組み立てることが出来、逆の手順で簡単に分解することが出来る。
【0011】
さらに、火袋1の上端の口部分に設けた支柱掛7に基台2から立設した支柱3の上端を着脱自在に掛け、支柱3の中間部に設けた弾性部材18により、支柱3の上端を上方を弾力的に押し上げ、火袋1にテンションを与えることにより、火袋1の形を整え、保持することが出来る。
このような提灯は、全てが火袋1の中に収まってしまうので、火袋1が円筒状のものであれば、立てた状態はもとより、横に寝かせた状態で床置き出来る他、支柱3の上端を吊り下げることで、吊り下げ形の提灯としても使用することが出来る。すなわち、目的に応じて様々な状態で使用することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明による提灯では、簡単に組み立て、分解が出来ると共に、その設置形態も任意に選べることが出来るので、葬祭、広告、祭礼等の目的で適宜形態を選んで使用することが出来る。また、表面に施した模様、図柄、文字等が異なる火袋1を幾つか用意しておいて、基台2と支柱3に取り付けることにより、適宜使用目的を変えて使用することが出来る。さらに、基台2に取り付けた支柱3の高さを変えることで、異なる形状の火袋を同じ基台2で使用出来る等、使用形態のバリエーションを多岐にすることも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、火袋1の上下の口部分に上輪や下輪を設けず、火袋1の上下の口部分を基台2と支柱3の上端に直接取り付け、支柱3に設けた弾性部材18により火袋1にテンションを与え、火袋1の形を整えて保持出来るようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0014】
図1と図2に、本発明の一実施例による提灯の全体を示しており、図3〜図6に同実施例による提灯の各部の拡大図を示している。これらの図に示すように、提灯は、火袋1、基台2及び支柱3からなる。
火袋1は、提灯の外形を形成するものである。この火袋1は、型を使って竹ひご等の線材で作った多数の輪を上下に並べて配置するか、或いは型を使って1本につなぎ合わせた線材を上下に螺旋状に配置する等して、骨組みを形成し、その外側に紙や布等を貼ったものである。底部は開口した口になっており、その部分は線材の輪からなる骨組みを密に重ねてある。従って底部4は、その上の部分と同様に、何の力も与えないと円形になっているが、径方向に力を加えると扁平させることが出来る等、可撓性を有する。その底部4の口より上の部分は、底部4の部分より漸次径が大きくなって、外側に曲面をもってふくらみが与えられている。逆に言うと、火袋1の底部4の上の部分は、底部4に向かって下にいくに従って漸次径が細くなり、底部4とその上の部分とが括れた状態の括れ部4となっている。
【0015】
さらにこの火袋1の上端部は、開口した口になっており、その部分は線材の輪からなる骨組みを密に重ねてある。さらにこの火袋1の上端部の口には、円板状の支柱掛7が嵌め込まれ、接着等の手段で固定されている。この支柱掛7の詳細を図4と図5に示している。この支柱掛7は、中心から偏って比較的径の大きな挿入孔20が設けられ、この挿入孔20から支柱掛7の中心に向かってその挿入孔20の径より幅の狭いスリット21が設けられている。
【0016】
図1〜図3に示すように、基台2は、火皿やロクロと呼ばれるもので、火袋の括れ部5に対応し、それと同じかやや小さな寸法を有する板状の部材である。図示の例では、円板形であり、その周縁9は丸く面取りされている。この基台2の下面には3〜4個程度の突起状の脚19が設けられているが、この脚19は提灯の使用目的により、不要であったり、或いはより長い脚が使用される場合もある。
【0017】
基台2の中央からは支柱3が立設されている。この支柱3はパイプ状のもので、基台2からネジ止め等の手段で立設された下部支柱10と、その上端に着脱自在に嵌め込まれた上部支柱11の2段構造となっている。従って、上部支柱11の少なくとも下端部の外径は、下部支柱10の少なくとも上端部の内径より僅かに細くなっている。
【0018】
図6に示すように、下部支柱10の上端部近くには、弾性部材18として圧縮バネが組み込まれている。この弾性部材18は、下部支柱10の上端に嵌め込まれた上部支柱11の下端に当たり、上部支柱11が下方に押し込まれると、その押し込まれた深さに比例した弾力が付勢される。また、この下部支柱10には、提灯の灯としての照明8が取り付けられている。例えば、この照明8は円筒形の蛍光管が発光するタイプのもので、基台2の上に設置された電源部16により点灯等の制御が行われる。この灯としては、別のタイプの照明であってもよく、下部支柱10に取り付けられたものに限らず、基台2に設けたソケットに差し込む形式のもの等であってもよい。
【0019】
図4に示すように、上部支柱11の上端には、火袋3の支柱掛7を着脱自在に掛ける火袋掛13が取り付けられている。この火袋掛13は、ワッシャ等からなるフランジ14を基部に設け、その上に頭部15を設けたピン状のもので、上部支柱11の上端にネジ等の手段で取り付けられている。図5に示すように、上部支柱11の上端の火袋掛13の基部のフランジ14は、火袋1の上端の支柱掛7の挿入孔20より径が小さい。また、その火袋掛13のフランジ14の径は、火袋1の上端の支柱掛7のスリット21の幅より大きく、火袋掛13の軸径は、支柱掛7のスリット21の幅より小さい。
【0020】
次に、このような構成からなる提灯について、基台2と支柱3とに火袋1を取り付ける手順について説明する。
まず予め、図1に示すように、支柱3の下部支柱10から上部支柱11を取り外しておく。この状態で火袋1を上下にやや折り畳み気味にした状態で、下部支柱10を火袋1の底部4からその中に挿入し、続いて火袋1の底部4をやや変形させると共に、基台2をやや斜めに傾けながらその基台2を火袋1の底部4から火袋1の中に挿入する。そして、基台2の周縁9が火袋1の底部の括れ部5に落ち着くようにその姿勢を整える。
【0021】
次に、支柱3の上部支柱11を、火袋1の支柱掛7の挿入孔20を通して同火袋1の中に挿入し、その上部支柱11の下端を下部支柱10の上端に差し込む。続いて上部支柱11を弾性部材18の弾力に抗して押し込むと共に、火袋1を上に伸ばし、火袋掛13の頭部15を支柱掛7の挿入孔20からその上に突出させ、続いて、火袋掛13の軸をスリット21の奥に差し込む。この状態で上部支柱11の押し込みを解除し、弾性部材18の弾力でフランジ14を火袋1の支柱掛7に当て、その弾力で火袋1の支柱掛7を上方につり上げることで、火袋1にテンションを与える。この状態では、火袋1の底部の括れ部5に基台2の周縁9が掛かり、火袋1の支柱掛7に弾性部材18により上方にテンションが与えられるため、火袋1の形を整え、維持することが出来る。
【0022】
この提灯では、脚部19により床置き形の提灯として使用出来る他、火袋1を横にして床に転がしたり、さらには、火袋掛13の頭部を紐で縛って吊り下げる等、吊り下げ形としても使用することが出来る。
火袋1を基台2と支柱3から分解するときは、前記とは逆の手順で行う。すなわち、火袋掛13の軸をスリット21から挿入孔20側に移動させ、火袋1の支柱掛7から支柱3の火袋掛13を外す。その後、火袋1を下方に折り畳み気味にしながら、支柱3の下部支柱10から上部支柱11を抜く。続いて、火袋1の底部4をやや変形させると共に、基台2を火袋1の底部に対してやや斜めにしながら、基台2を火袋1の底部の口から取り出し、支柱3の下部支柱10も取り出す。これにて図1の状態となる。火袋1は縦に折り畳み、基台2から下部支柱10を取り外すとさらにコンパクトに分解することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による提灯の一実施例を示す基台と下部支柱を組み立て、上部支柱と火袋を分解した状態の縦断側面図である。
【図2】本発明による提灯の一実施例を示す基台、支柱及び火袋を組み立てた状態の縦断側面図である。
【図3】本発明による提灯の一実施例を示す基台及び火袋の底部を拡大した要部拡大縦断側面図である。
【図4】本発明による提灯の一実施例を示す支柱と火袋の上端部分を拡大した要部拡大縦断側面図である。
【図5】本発明による提灯の一実施例を示す支柱と火袋の上端部分を拡大した要部拡大平面図である。
【図6】本発明による提灯の一実施例を示す支柱の下部支柱と上部支柱を継ぎ合わせた部分を拡大した要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 火袋
2 基台
3 支柱
5 火袋の括れ部
7 火袋の支柱掛
9 基台の周縁
10 下部支柱
11 上部支柱
13 支柱の火袋掛
18 支柱の弾性部材
20 支柱掛の挿入孔
21 支柱掛のスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(2)と、この基台(2)から立設された支柱(3)と、これら基台(2)と支柱(3)とを覆うように張られる筒状の火袋(1)とを有する提灯において、火袋(1)の下端部に内側に括れた括れ部(5)を有し、この括れ部(5)を基台(2)の周縁(9)に掛けてその外側に嵌め込み、火袋(1)の上端部に支柱(3)の上端に設けた火袋掛(13)を着脱自在に掛ける支柱掛(7)を有し、支柱(3)の中間部にその火袋掛(13)を上方に弾力を付勢する弾性部材(18)を設けたことを特徴とする提灯。
【請求項2】
支柱(3)は、基台(2)から立設された下部支柱(10)と、この下部支柱(10)の上端に着脱自在に連結される上部支柱(11)とを有し、この上部支柱(11)は、その上端に火袋(3)の支柱掛(7)を掛ける火袋掛(13)を有し、前記火袋(3)の支柱掛(7)には、火袋掛(13)を含む上部支柱(11)を通す挿入孔(20)と同火袋掛(13)を掛けるスリット(21)とを有することを特徴とする請求項1に記載の提灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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