説明

揚重ジャッキの荷重バランス調整方法および装置、並びにジャッキアップ装置

【課題】揚重ジャッキの分担荷重が吊りロッドの累積誤差により初期設定状態から変動しても、荷重バランスが適正になるように調整できるようにする。
【解決手段】吊上げモジュールを複数台の揚重ジャッキにより吊りロッドを介してジャッキアップする際の前記揚重ジャッキの荷重バランス調整方法である。吊上げモジュールに連結されている各吊りロッドをジャッキアップする揚重ジャッキの分担荷重を検出する。予め記憶された設定分担荷重に対する変動が規定範囲を超えた場合に前記揚重ジャッキ高さを調整して設定分担荷重となるよう調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は揚重ジャッキの荷重バランス調整方法および装置、並びにジャッキアップ装置に係り、大型発電プラントのボイラモジュールを吊りロッドを利用する揚重ジャッキを複数用いて昇降させる際に、ボイラモジュールを荷重バランスがくずれないようにして昇降させるのに好適な揚重ジャッキの荷重バランス調整方法および装置、並びにジャッキアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型吊下げ式ボイラを有する火力発電所は、吊下げ架構となる鉄骨フレームの天端部にボイラ支持用の大梁を設け、この大梁にボイラ構成部品を吊下げた状態で支持するようにしている。この構築には吊上げ施工方式が一般的に採用されている。この工法は、仮設梁や大梁などの支持梁に設置した複数の揚重ジャッキを用い、ボイラ構成部品のモジュールを地上から揚重ジャッキを利用して吊上げながら付帯部品を組みつけていき、最終的に地上から数十メートル上方の大梁に対しスリングロッドなどを用いて吊下げ支持させるものである。このような作業を、ボイラ上部に組み付けられるモジュールから順にボイラ下部に配置されるモジュールまで、モジュール単位に繰り返して行われることにより、ボイラ設備全体が構築される。
【0003】
図5に示すように、重量構造物であるボイラモジュール10の周囲に鉄骨柱12を設置し、この鉄骨柱12の上部に仮設梁14を設ける。この仮設梁14上にセンタホール型揚重ジャッキ16を配設し、ボイラモジュール10を下端に取り付けた吊りロッド18を支持している。
【0004】
前記吊りロッド18は、図6に示しているように、短尺のロッド単体18S同士を軸方向に螺着連結されて長尺化した構成となっている。ロッド単体18Sの構造は、ロッド部20の上端部に少し大径の頭部22を形成したものであり、頭部天頂面に雌ネジ部24が、ロッド部20下端に雄ネジ部26が形成されたものである。各ロッド単体18S同士をネジ結合により連続して接続することにより1本の長い吊りロッド18を形成し、ロッド単体18Sの頭部22を利用してジャッキアップできるようにしている。
【0005】
このような吊りロッド18を昇降させるセンタホール型の揚重ジャッキ16は、上下方向に開口されたセンタホール28に前記吊りロッド18を挿通させた状態で垂下支持してボイラモジュール10を懸吊し、昇降させるものである。この構造を図7に示す。
【0006】
すなわち、センタホール型揚重ジャッキ16は、シリンダ30の内部に油圧により駆動する円筒状のラム32が配置してあるとともに、ラム32の上部とシリンダ30の下部とに、吊りロッド18の軸線と直交した方向にスライドする上部チャック34と下部チャック36が設けてあり、これらのチャック34、36によって吊りロッド18を支持するとともに上方に押し上げ、ボイラモジュール10をジャッキアップするようになっている。
【0007】
ジャッキアップの手順は、図8に示してあるように、まずボイラモジュール10を吊り下げた吊りロッド18を上部チャック34によって支持し(支持ロッドNo.2)、上部チャック34によってボイラモジュール10の荷重を受け止めておく(第1ステージ)。次いで、下部チャック36を開放する。そして、この状態でラム32を作動し、吊りロッド18をロッド単体18Sの長さ分だけ押し上げ、ボイラモジュール10を吊りロッド18を介してジャッキアップする(第2ステージ)。次に、吊りロッド18が1ロッド分上昇したところで下部チャック36を閉じる(第3ステージ)。ラム32を下降させて下部チャック36によって支持部を支持ロッドNo.5に移し、当該支持ロッドNo.5を介して揚重荷重(吊り荷重)を受ける。下部チャック36が吊りロッド18を支持したならば、上部チャック34を開いてラム32をさらに下降させる(第4ステージ)。そして、上部チャック34が今まで支持していた支持ロッドNo.2の1つ下方の支持ロッドNo.3における首部の下まできたならば、再び上部チャック34を閉じて上部チャック34によって吊りロッド18を支持し、下部チャック36を開いて上記の操作を繰り返す。このようにして、吊りロッド18の相互の結合位置がセンタホール型揚重ジャッキ16の上部まで上昇してきたら、上部のロッド単体18Sを取り外す。これらの第1〜第4ステージを順次繰り返し、上端部からロッド単体18Sを回収しつつ、ボイラモジュール10をジャッキアップするようにしている。
【0008】
ところで、上述のようなボイラモジュール10を、センタホール型揚重ジャッキ16により昇降させる場合、複数台のセンタホール型揚重ジャッキ16を用いて行う。モジュール重量にもよるが、例えば定格荷重が200トンのセンタホール型揚重ジャッキ16を20台以上用いて3000トン〜4000トンのモジュールを持ち上げるようにしている。したがって、20台のセンタホール型揚重ジャッキ16の荷重を平均化させて昇降駆動する必要がある。複数台で1つのボイラモジュール10をジャッキアップする際、例えば1列10台のジャッキを2列設けてジャッキアップするようなことが行われる。通常、各ジャッキ列が分担する荷重はそれぞれ異なっているものの、同一列内のジャッキが分担する荷重が平均的になるように設定しつつ、これらが初期分担荷重から変動しないことが必要である。荷重バランスが変動すると、単一のジャッキに過度の荷重が加わるなどの不具合を生じるからである。通常、ボイラモジュール10を最初に地切りしたときの初期状態で、同一列の各センタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重が等しくなるように、ボイラモジュール10と吊りロッド18の接続長さを調節している。
【0009】
しかし、初期設定した状態から、吊りロッド18の上端からロッド単体を順次取り外しながらボイラモジュール10を吊上げてくると、吊りロッド全体の長さが短くなる。そうすると、吊上げロッドの接続累積誤差に起因して、各センタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重が平均的になるように設定した初期値から変動してしまうという問題があった。従来では、このような分担荷重の変動を吊上げ途中で調整することができなかった。
【0010】
また、各センタホール型揚重ジャッキ16の負担している荷重は、そのジャッキ内部に供給する作動油の圧力により求めるようにしていた。しかし、このジャッキアップ作動中の作動油の供給圧力を検知しても、検出値がばらついてしまう問題があった。すなわち、動圧を検出するために精度よく検出することができない問題があったのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、複数のセンタホール型揚重ジャッキを用いてボイラモジュールを吊上げる場合に、モジュールを地切りした初期状態から吊上げていく過程で、揚重ジャッキの分担荷重が吊りロッドの累積誤差により初期設定状態から変動しても、荷重バランスが適正になるように調整できる方法と装置、並びにバランス調整できるジャッキアップ装置を提供することを目的とする。また、各揚重ジャッキの分担荷重の静的圧力を検出して迅速且つ正確に分担荷重に設定調整できるジャッキアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る揚重ジャッキの荷重バランス調整方法は、吊上げモジュールを複数台の揚重ジャッキにより吊りロッドを介してジャッキアップする際の前記揚重ジャッキの荷重バランス調整方法であって、前記吊上げモジュールに連結されている各吊りロッドをジャッキアップする揚重ジャッキの分担荷重を検出し、設定分担荷重に対する変動が規定範囲を超えた場合に前記揚重ジャッキ高さを調整して設定分担荷重となるよう調整することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る揚重ジャッキの荷重バランス調整装置は、吊上げモジュールを複数台の揚重ジャッキにより吊りロッドを介してジャッキアップする際の前記揚重ジャッキの荷重バランス調整装置であって、各揚重ジャッキの据え付け高さを単独で調整可能な調整ジャッキを設けるとともに、前記揚重ジャッキの吊上げ荷重を前記調整ジャッキの油圧力により検出する荷重検出手段を設け、前記揚重ジャッキの設定分担荷重と検出荷重に基づき前記調整ジャッキによる揚重ジャッキの高さ調整を可能とした制御手段を設けてなることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明に係るジャッキアップ装置は、吊上げモジュールを吊りロッドを介してジャッキアップするセンタホール型の揚重ジャッキの下部に、当該揚重ジャッキの据え付け高さを変更できるセンタホール型の高さ調整ジャッキを設けるとともに、高さ調整ジャッキ内油圧室圧力の検出手段と圧油給排手段を設け、検出油圧に基づく前記圧油給排手段による前記高さ調整ジャッキの昇降により前記揚重ジャッキの高さ調整を可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、揚重ジャッキの下部に高さ調整ジャッキを設け、これに作動油の給排を行わせることで、揚重ジャッキの作動油圧の供給制御に影響を与えることなく、その据え付け高さを変更することができるようにしている。特に高さ調整ジャッキの油圧室の圧力を検出して、上部の揚重ジャッキに加わっている負担荷重を検出することができる。この揚重ジャッキの負担荷重を静圧で検出することができるので、検出値がバラつくことはない。
【0016】
そして、本発明では、上記揚重ジャッキを複数用いてモジュールを吊上げする際に、高さ調整ジャッキに設けた荷重検出手段によって静圧にて負担荷重を求め、その上で、設定されている分担荷重との差分を見て、差分が例えば15%以内に収まるように揚重ジャッキ自身の据え付け高さを調整することができる。このような調整を複数の揚重ジャッキごとに行うことで、揚重ジャッキの全体の荷重バランスを調整することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る揚重ジャッキの荷重バランス調整方法および装置、並びにジャッキアップ装置の具体的実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は実施形態に係るジャッキアップ装置を用いたボイラモジュール10を吊上げている状態の説明図である。図1において、ボイラ室を構成するボイラ鉄骨40の上部には、作業床42が形成されており、この作業床42に制御盤や、センタホール型揚重ジャッキ16を駆動するための第1油圧ユニット46が設置してある。そして、ボイラ鉄骨40にはボイラサイド鉄骨フレーム48が設けられ、この支柱50の上端部に設けたジャッキベース52にセンタホール型揚重ジャッキ16を据え付けてボイラモジュール10を昇降させるようにしている。図はボイラモジュール10の片側を吊上げ支持している1つのジャッキのみを示しているが、実施形態では、片側に8台のセンタホール型揚重ジャッキ16を配列し、図示していない他方の片側をやはり8台のセンタホール型揚重ジャッキ16で吊上げ支持するようにしている。
【0018】
ボイラモジュール10は、複数のロッド単体18Sを軸方向に螺着連結した吊りロッド18(図6参照)に支持されながら、昇降されるようになっている。吊りロッド18は、前記センタホール型揚重ジャッキ16のセンタホール28に貫通され、ラム32の上下動と、上下位置に設けたチャック34,36を交互に作動させることにより、上下方向にピッチ移動される。
【0019】
ところで、本発明は、上述したセンタホール型揚重ジャッキ16の下部に、当該センタホール型揚重ジャッキ16の据え付け高さを変更できるセンタホール型の高さ調整ジャッキ54を設けるとともに、高さ調整ジャッキ内油圧室圧力の検出手段である圧力検出器56と、圧油給排手段である第2の油圧ユニット58を設け、検出油圧に基づく前記圧力検出器56による前記高さ調整ジャッキ54の昇降により前記センタホール型揚重ジャッキ16の高さ調整を可能としたことが特徴である。
【0020】
すなわち、個々のセンタホール型揚重ジャッキ16とジャッキベース52との間に高さ調整ジャッキ54を配置し、当該高さ調整ジャッキ54を昇降させることにより、単独でセンタホール型揚重ジャッキ16の据え付け高さを調整できるようにしている。また、このような高さ調整ジャッキ54を設けることにより、センタホール型揚重ジャッキ16に加わる吊上げ荷重の実際値を静圧として検出できるようにしている。
【0021】
図2は高さ調整ジャッキ54の実際の部分断面図である。図示されているように、この高さ調整ジャッキ54は、センタホール60を中央部上下方向に貫通させたラムシリンダ62を有しており、このラムシリンダ62にラム64を装着して構成されている。ラム64を収容しているラムシリンダ62の内部には油圧室66が設けられており、この油圧室66に作動油を給排させることでラム64をシリンダ上面からセンタホール60の軸芯方向に沿って出入できるようになっている。油圧室66に通じる油路にはバルブユニット68が接続されている。バルブユニット68の回路構成は、図1に示しているように、第2油圧ユニット58のポンプ経路に一対の仕切り弁70(70A,70B)を設け、仕切り弁70の間に第2油圧ユニット58のタンク側へ戻り油路を設けたものである。
【0022】
このような高さ調整ジャッキ54は、個々のセンタホール型揚重ジャッキ16の下部に配置されて、両者一体でジャッキアップ装置を構成している。図3に示しているように、センタホール型揚重ジャッキ16はシリンダ30とこれから出入するラム32とが設けられ、ラム32の上端部に上部チャック34を、シリンダ30の底面部に下部チャック36を、それぞれ配置した構造となっている。高さ調整ジャッキ54は、下部チャック36とジャッキベース52との間に介在され、ラム64によりセンタホール型揚重ジャッキ16を押上げ可能とし、ジャッキベース52に対するセンタホール型揚重ジャッキ16の据え付け高さを調整することができるのである。
【0023】
図4はこのような高さ調整ジャッキ54を用いた制御システムの全体構成を示している。上述したジャッキアップ装置は実施形態では16台用いるようにしている。ジャッキベース52上で並んで、分担荷重がほぼ等しい4台のジャッキアップ装置を1つのグループとした4グループに分別し、各ジャッキアップ装置単位の制御管理を行う機器制御盤72、各グループの制御管理を行うローカル制御盤74、全体的な制御管理を行う中央制御盤76を備えている。機器制御盤72は、センタホール型揚重ジャッキ16の昇降ストローク信号をエンコーダ78から入力させると共に、バルブユニット80に昇降のためのバルブ開閉信号を出力する。同時に高さ調整ジャッキ54側の圧力検出器56からの信号を入力し、高さ調整のための信号をバルブユニット68に出力するようにしている。ローカル制御盤74は1つのグループの機器制御盤72との間で制御信号を入出力し、中央制御盤76はそれらを統合的に制御する。なお、ジャッキアップ装置のグループ分別は同じ台数にする必要はなく、分担荷重が等しいもの同士を1つのグループとして分別するようにすることができる。
【0024】
そして、この実施形態では、吊上げるボイラモジュール10を複数台のセンタホール型揚重ジャッキ16により吊りロッド18を介してジャッキアップする際の前記センタホール型揚重ジャッキ16の荷重バランスを調整するようにしている。これは、上述したように、各センタホール型揚重ジャッキ16の据え付け高さを単独で調整可能な高さ調整ジャッキ54を設けておき、前記センタホール型揚重ジャッキ16の吊上げ荷重を前記高さ調整ジャッキ54の油圧室に加わる油圧力を圧力検出器56で検出させている。この検出圧力はセンタホール型揚重ジャッキ16を載せているラム64が受ける圧力であるため、センタホール型揚重ジャッキ16が受けている吊下げ荷重である。高さ調整ジャッキ54が圧力を発生するように、予め高さ調整ジャッキ54のラム64を若干突出させておく必要がある。圧力検出器56の検出信号は機器制御盤72、ローカル制御盤74を通じて中央制御盤76に入力される。したがって、中央制御盤76には管理下にあるセンタホール型揚重ジャッキ16の全ての分担荷重検出信号が入力されることになる。
【0025】
一方、中央制御盤76には、予め初期設定時の分担荷重信号を取り込んでおり、記憶手段に格納している。初期設定時の分担荷重は、ボイラモジュール10を床面から持ち上がった状態、すなわち地切りした段階での初期状態の分担荷重である。これは地切りしたときに、各センタホール型揚重ジャッキ16が分担すべき荷重が平均的になるように調整された値を設定分担荷重として記憶させておくのである。最初の地切りでは、ボイラモジュール10と吊りロッド18との結合位置をナット位置調整などで平均的な分担荷重となるように設定できる。この状態が吊上げ工程において維持されれば各センタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重が過剰・過小となることはない。しかし、吊上げによって吊りロッド18が短くなってくると、ロッド単体18S同士の螺着結合誤差の累積が影響して、センタホール型揚重ジャッキ16ごとの吊りロッド18の長さが変動してくる。これによってセンタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重が初期値からずれてくるのである。そこで、前記センタホール型揚重ジャッキ16の初期における設定分担荷重と、吊上げ途中の圧力検出器56から得られる検出荷重との差分を検出するようにしている。中央制御盤76はその差分を演算し、初期設定分担荷重に対して検出分担荷重が許容範囲(例えば15%)内に収まるように、前記高さ調整ジャッキ54に対し、作動油の給排信号をローカル制御盤74、機器制御盤72を通じてバルブユニット68に開閉信号を送信し、分担している荷重が設定荷重となるようにラム64を出入させてセンタホール型揚重ジャッキ16の高さを調整するのである。あるセンタホール型揚重ジャッキ16の検出荷重が設定分担荷重より高い場合は、吊りロッド18の長さが短くなったことを意味するので、高さ調整ジャッキ54のラム64を下げるように制御する。これによって周辺のセンタホール型揚重ジャッキ16と同じような平均的荷重分担をなさせることができ、吊りロッド18の結合誤差を吸収することが可能となるのである。
【0026】
このように、本実施形態では、上述した制御システム構成において、ボイラモジュール10に連結されている各吊りロッド18をジャッキアップするセンタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重をその下部に設置されている高さ調整ジャッキ54の油圧力により検出し、初期の設定分担荷重に対する変動が規定範囲を超えた場合に前記センタホール型揚重ジャッキ16の高さを高さ調整ジャッキ54によって調整して設定分担荷重となるよう調整し、変動幅を例えば15%以内になるように制御できる。検出するセンタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重は高さ調整ジャッキ54の油圧室66の圧力であるため、静圧として検出することができる。このため、検出値がバラつくことがなく、精度の良い値を得ることができるので、制御性が良好になっている。
【0027】
具体的には、センタホール型揚重ジャッキ16の下にストロークで100mm伸びる高さ調整ジャッキ54を取り付ける。通常、500mmずつ程度の距離を複数台(例えば16台)のセンタホール型揚重ジャッキ16でジャッキアップしている。吊りロッド18は500mm程度のロッド単体18Sのジョイントタイプになっているので、一番初めに荷重を平均化して、ジャッキアップを始めても、例えば100本繋がっていたものが40本になったときの途中の高さまでジャッキアップした時点での荷重バランスを見ると、吊りロッド18の累積誤差で、多少それぞれのバランスが狂っており、荷重が大きくなるジャッキと少なくなるジャッキが出てくる。一連のセンタホール型揚重ジャッキ16はポンプを共通にしているので、各センタホール型揚重ジャッキ16自体は同じように500mmずつジャッキアップするが、それとは別に個々の揚重ジャッキの高さを調整できるジャッキ54を付加し、10〜20mm調整できればよいが、最終的には余裕を見て、100mmの調整ができる高さ調整ジャッキ54を搭載している。
【0028】
また、センタホール型揚重ジャッキ16に加わっている荷重を中央制御盤76で監視しているが、500mmずつジャッキアップするセンタホール型揚重ジャッキ16に入ってくる油の圧力を監視すると、入ってくる分の油(流れている油)はその間のジャッキを稼動により動いている油であるので、荷重が変動して荷重バランスがバラついてしまう。本実施形態では、高さ調整ジャッキ54自体は、油が動いておらず静圧になっているので、圧力変換器で圧力を拾ってそれを電気信号に変換して、操作盤の方に入れて監視し、荷重初期設定値より例えば15%以上になったらセンタホール型揚重ジャッキ16ごとに調整して地切りしたときの初期荷重バランスを保つ機能を持たせているので、センタホール型揚重ジャッキ16に過度・過小の荷重が加わることがなく、バランスよくボイラモジュール10の吊上げができる。
【0029】
なお、初期設定荷重は任意に更新するものとすればよい。ボイラモジュール10の吊上げ工法では、ボイラモジュール10に対して地上で次々に付帯機器を取り付け、できるだけ地上作業工程を多くしようとする。この工程中にジャッキアップするので、各センタホール型揚重ジャッキ16の分担荷重が付帯機器によって変動する。この分担荷重の変動のたびごとに設定分担荷重をリセットして更新するようにすることで最終吊上げ工程での荷重バランスを適正にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は特に火力発電所の構築産業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係るジャッキアップ装置を用いたボイラモジュール10を吊上げている状態の説明図である。
【図2】高さ調整ジャッキの部分断面正面図である。
【図3】ジャッキアップ装置の正面図である。
【図4】高さ調整ジャッキを用いた制御システムの全体構成図である。
【図5】吊りロッドによるボイラモジュールの揚重状態の説明図である。
【図6】吊りロッドとロッド単体の説明図である。
【図7】揚重ジャッキの部分断面図である。
【図8】吊りロッドを用いたジャッキアップ工程の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10………ボイラモジュール、12………鉄骨柱、14………仮設梁、16………センタホール型揚重ジャッキ、18………吊りロッド、18S………ロッド単体、20………ロッド部、22………頭部、24………雌ネジ部、26………雄ネジ部、28………センタホール、30………シリンダ、32………ラム、34………上部チャック、36………下部チャック、40………ボイラ鉄骨、42………作業床、46………第1油圧ユニット、48………ボイラサイド鉄骨フレーム、50………支柱、52………ジャッキベース、54………高さ調整ジャッキ、56………圧力検出器、58………第2油圧ユニット、60………センタホール、62………ラムシリンダ、64………ラム、66………油圧室、68………バルブユニット、70(70A、70B)………仕切り弁、72………機器制御盤、74………ローカル制御盤、76………中央制御盤、78………エンコーダ、80………バルブユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊上げモジュールを複数台の揚重ジャッキにより吊りロッドを介してジャッキアップする際の前記揚重ジャッキの荷重バランス調整方法であって、前記吊上げモジュールに連結されている各吊りロッドをジャッキアップする揚重ジャッキの分担荷重を検出し、設定分担荷重に対する変動が規定範囲を超えた場合に前記揚重ジャッキ高さを調整して設定分担荷重となるよう調整することを特徴とする揚重ジャッキの荷重バランス調整方法。
【請求項2】
吊上げモジュールを複数台の揚重ジャッキにより吊りロッドを介してジャッキアップする際の前記揚重ジャッキの荷重バランス調整装置であって、各揚重ジャッキの据え付け高さを単独で調整可能な調整ジャッキを設けるとともに、前記揚重ジャッキの吊上げ荷重を前記調整ジャッキの油圧力により検出する荷重検出手段を設け、前記揚重ジャッキの設定分担荷重と検出荷重に基づき前記調整ジャッキによる揚重ジャッキの高さ調整を可能とした制御手段を設けてなることを特徴とする揚重ジャッキの荷重バランス調整装置。
【請求項3】
吊上げモジュールを吊りロッドを介してジャッキアップするセンタホール型の揚重ジャッキの下部に、当該揚重ジャッキの据え付け高さを変更できるセンタホール型の高さ調整ジャッキを設けるとともに、高さ調整ジャッキ内油圧室圧力の検出手段と圧油給排手段を設け、検出油圧に基づく前記圧油給排手段による前記高さ調整ジャッキの昇降により前記揚重ジャッキの高さ調整を可能としたことを特徴とするジャッキアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−91454(P2007−91454A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287052(P2005−287052)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)