説明

換気システム及びその方法

【課題】 室内に充満する空気を効率的に排気して、天井面に発生する結露を抑制することができる。
【解決手段】 天井に勾配を付した建物12とし、前記天井の頂点側の側面から当該側面に沿って下方の床に向けて送風する給気手段14と、前記天井の頂点から排気する排気手段16とを備え、前記頂点側の側面から床に沿って対面する前記天井の最下点側の側面を上昇して、前記天井の勾配に沿って下方から上方に流れる室内空気の循環経路を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の換気システム及びその方法に関し、特に、室内で発生する蒸気等を効率良く排気して、天井面に発生する結露の抑制を図った換気システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高断熱化及び高気密化に伴い、建物内では結露あるいはカビ等が発生しやすい環境となっている。特に、食品工場や厨房では、調理器具から蒸気や熱が発生して室内が高温多湿になり、加熱調理室では微生物が繁殖しやすく、作業環境も良好ではない。そして釜などの調理器具から発生した蒸気が室内に滞留すると、加熱調理室の天井面に蒸気が付着して、カビなどの微生物発生源となると共に、室温が上昇して微生物が増殖しやすくなる。また、室温の上昇によって、作業環境が悪化するだけでなく、従業者の発汗によっても微生物が発生するので衛生水準も低下する。このため、衛生管理水準及び作業環境の向上を考慮して、空気循環を促進する種々の換気システムが提案されている。
【0003】
このような換気システムとしてフード装置を設置した特許文献1,特許文献2に示すシステムが知られている。特許文献1に示すフード装置は、フードの外周部から下方にエアを給気することによりエアカーテンを形成し、蒸気や熱を室内に拡散するのを防止している。また、特許文献2に示すフード装置は、フード吸引口に向けたエアノズルからエアを噴射することで、フード外側面回りの蒸気をフード内に吸引するようにしている。
【特許文献1】特開平8−94140号公報
【特許文献2】特開2002−317985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フード装置による吸引ではフードから外れた蒸気等に対して完全に吸引することができず、室内に拡散してしまうおそれがある。さらに、特に外気との温度差が大きい冬場では、拡散した蒸気によって室内で結露が発生しやすい条件となる。そうすると天井面の結露が成長して水滴となり落下して、室内に配置した釜などの調理器具に混入して食品を汚染してしまう問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善し、室内に充満する空気を効率的に排気して、天井面に発生する結露を抑制することができる換気システム及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る換気システムは、天井に勾配を付した建物とし、前記天井の頂点側の側面から当該側面に沿って下方の床に向けて送風する給気手段と、前記天井の頂点から排気する排気手段とを備え、前記頂点側の側面から床に沿って対面する前記天井の最下点側の側面を上昇して、前記天井の勾配に沿って下方から上方に流れる室内空気の循環経路を形成したことを特徴としている。
【0007】
この場合において、ブロック毎に区分けした前記建物をブロック単位で給排気する制御部を備えてなることを特徴としている。また、前記天井の最下点側に、当該天井の下方から上方に勾配を沿って流れる温風を送風する結露抑制手段を備えてなることを特徴としている。
【0008】
前記給気手段は、床に沿って給気する給気口を前記建物の側面下方に形成すると良い。
本発明に係る換気方法は、建物の天井に勾配を付して、室内の空気を循環させて、室内を循環した空気を前記天井の勾配に沿って空気を上昇させて前記天井の頂点から排気することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成による本発明に係る換気システム及びその方法によれば、建物の天井に勾配を付して形成された天井懐をフード装置と見なし、前記天井の頂点側の側面から当該側面に沿って下方の床に向けて送風する給気手段と、前記天井の頂点から排気する排気手段とを備え、前記頂点側の側面から床に沿って対面する前記天井の最下点側の側面を上昇して、前記天井の勾配に沿って下方から上方に流れる室内空気の循環経路を形成した構成としているので、循環空気と共に調理器具から発生する蒸気および熱が室内に充満または滞留することなく外部へ排出することが可能となる。
【0010】
また、室内をブロック毎に区分けして、ブロック単位で給気及び排気を制御しているので、室内の換気が必要な箇所に限定して換気することができ、換気システムの運転の低コスト化を図ることができる。
【0011】
さらに、勾配を付した天井に温風を下方から上方に流している。これにより、温風の浮力による上昇が天井面に沿って起こり、天井面全体へ行き渡り、天井面全体に発生する結露を抑制することができる。
【0012】
また、給気手段の給油口を側面下方に形成したことにより、調理器具からの排熱等と混合しにくくなり効率的な排気が行える。さらに濡れた床面の乾燥も同時に行うことができ床での微生物の増殖を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る換気システム及びその方法の実施形態を添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では換気システムを食品工場あるいは厨房を設置対象として説明するが、設置対象はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は実施形態に係る換気システムの構成概略を示す図である。図示のように、換気システム10は、天井18に勾配を付した建物12としている。実施形態に係る天井18は、建物12の両側面12a,12b側が勾配の頂点とし、建物12の中央が天井の最下点となるように勾配を形成している。
【0015】
この建物12の両側面12a,12b側で天井18の頂点となる側面12a,12bに沿って下方の床12cに向けて送風する給気手段14a,14bを設置している。給気手段14は図示しない送風ファンによって外部の空気を室内に通気している。
【0016】
一方、天井18の頂点には排気手段16を設置してある。排気手段16は、天井18の頂点であって、側面に形成した前記給気手段14の上部に形成してある。排気手段16は図示しない排気ファンによって室内の空気を外部に吸引するように構成している。また、建物12内には、食品を製造するための釜などの調理器具20が複数設置されている。
【0017】
上記構成による換気方法を以下説明する。前記給気手段14は、実施形態では建物12の対向する側面12a,12bに形成してあり、側面12a,12bに沿って下方の床12c面に向けて給気している。給気された空気は、側面12a,12bから床12c面によって流れる。さらに床12c面に沿って建物中央側に流れ、建物12中央に設けた壁12dまで達し、壁12dに沿って上昇する。
【0018】
壁12dの上部に達した循環空気は、天井の最下点から、天井18の勾配に沿って上方に流れる。このように実施形態では室内を循環する空気の循環経路を形成している。天井18の頂点には排気手段16が形成してあり、室内を循環した空気を外部に排出している。このとき、調理器具20から上方に発生する熱、蒸気等は室内を循環する空気と混ざり合い、天井18の勾配に沿って上昇し、排気手段18によって循環空気と共に外部へ排出される。
【0019】
図1に示す天井18の勾配から建物上方のハッチング部分に相当する天井懐22は、建物内を包含するフード装置と見なせる。このとき天井面はすべて勾配を付しており、室内に調理器具20から発生する熱、蒸気が滞留する部分が無くなる。したがって、フードの斜面に沿って循環空気を効果的に外部へ排出することが可能となる。
【0020】
ところで、天井18には調理器具20からの上昇する蒸気が当たるため、蒸気が天井18に付着して結露する可能性がある。この場合には水滴が勾配に沿って下方に流れ、天井18の最下点側に設置した水受け24で結露水を受けて室外に排水している。また、天井18の材質に親水性部材を用いることで結露した水が天井18に拡散するため、水滴が勾配に沿って流れている間に落下することを防止することができる。
【0021】
図2は実施形態に係る換気システムの第1変形例を示す構成概略図である。図1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図示のように、換気システムの第1変形例は、建物の天井に勾配を付して、天井18の頂点及び最下点が建物側面に接続するように形成している。また、天井18の頂点側の側面から床に向けて給気し、天井18の最下点側の側面を上昇して天井18の勾配を下方から上方に流れる循環経路を形成している。
【0022】
図3は実施形態に係る換気システムの第2変形例を示す構成概略図である。図1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図示のように、第2変形例では、天井18の勾配をW字状に形成することもできる。この場合、天井18上部の凸部に排気手段16A,16B,16Cを形成する。また、天井18下部の凹部に給気手段14A、14Bを形成する。これにより、給気手段14A、14Bによって図示の矢印に示すような空気循環が起こり、空気循環と調理器具20の蒸気が混ざり合い、天井18の勾配に沿って天井18上部に設置した排気手段16A,16B,16Cから排気することができる。
【0023】
図4は実施形態に係る換気システムの第3変形例であり、給気した空気が床面を沿って流れることを示す構成概略図である。図1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図示のように、第3変形例では、給気手段14の給気口15を床近くまで下げる構成としている。これにより、給気手段14から給気された空気と調理器具20からの湯気及び排熱とは離間しているため、物理的に混合しにくくなり、より効率の良い排気が可能となる。
【0024】
また、給気手段14から給気された空気が床面に沿って天井の最下点側に流れるようにしたため、床面が濡れた状態であっても、床面の乾燥を同時に行うことができる。特に日中の運転後、調理器具20を洗浄及び床面の清掃をした後は床が濡れた状態であるため、運転後も引き続き換気運転を行うことで床面の乾燥が促進され、床面での微生物の増殖を抑制することができる。
【0025】
図5は実施形態に係る換気システムの平面を模式的に示した図である。図示のように、室内の側部に設置した調理器具20a,20bと給気手段14aの配置の関係から給気手段14aからの給気が調理器具20a,20bの熱や蒸気と混合する可能性がある。そうすると混合した空気が作業者に向かって流れて作業性が悪くなることがある。釜などの調理器具20の配置は作業性、設置スペースを考慮して設置場所が決められているので配置換えが困難な場合もある。
【0026】
そこで、例えば調理器具20a,20bに形成したスペースに優先的に空気を流すように給気手段14aからの吹き出し風速や位置を変更するように制御可能な制御部26を形成している。これにより、給気と熱や蒸気が混合した空気を作業者に向かって流れるのを防止することができる。また、建物をブロック毎に区画して、ブロック毎に給気手段14及び排気手段16を構築し、このブロック毎に制御部26で給排気を制御可能に形成する。これにより、建物の一部、例えば、図4に示す点線で囲った部分Eで調理器具20が使用される場合には、給気手段14aの一部と、排気手段16cのみを可動させることでブロック単位での運転が可能となる。よって、給気及び排気運転コストの低減を図ることができる。
【0027】
図6は実施形態に係る換気システムの結露抑制手段を示す構成概略図である。なお、図1と同一の構成には同一符号を付してその説明を省略する。図示のように、図1の実施形態と異なる構成は、天井18の材質に断熱性の高い高断熱部材30を用いている。これにより、天井18の表面温度を天井18近傍の空気温度に近づけるようにしている。このため、通常の運転では、調理器具20からの蒸気と室内を循環する空気との混合空気が天井18に沿って流れても、一瞬結露が発生することがあっても、蒸気が少なくなれば結露は即座に消失する。
【0028】
しかし、外気との温度差が大きくなる冬場においては、給気手段14によって室内に給気される外部空気の温度が低い場合、その空気が調理器具20から発生する蒸気と混ざることで、空気中の水分が飽和に達し天井18に接して結露が発生する可能性がある。
【0029】
そこで、天井18の最下点側に形成してある水受け24近傍に送風部32を設置している。この送風部32から勾配に沿って温風を流すことで天井18に結露した水滴を乾燥させることができる。また、天井18で結露する状態の空気に温風を混ぜることで、その空気の絶対湿度を低下させて、天井18での結露を抑制することが可能となる。
【0030】
なお、天井18の下方から温風を吹き出す場合、温風の吹き出し風速に加えて、温風の浮力による上昇が天井18に起こる。そのため、天井18面全体に拡散して温風を行き渡らせることができる。さらに、冬期の運転開始時における室内の結露が発生しやすい場合には、調理運転開始前に暖気運転として、給気手段14で室内に給気し排気手段16で排出する循環経路を形成する。ここで勾配に沿って温風を流して、天井18の温度を高くさせる。または、送風部32のみ運転し、天井18に温風を流して、天井18全体の温度を高くする。その後、調理運転に入り、通常の換気運転を行う。これにより、結露の発生を抑制した状態で調理運転が可能となる。
【0031】
また、温風を発生させるための加熱手段として、調理器具20の加熱源として用いられているものが蒸気の場合、その主管の一部から温熱を取得して温風を発生させる送風部32とすることができる。これにより、新たに加熱手段を設ける必要がなく、システムの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る換気システムの構成概略を示す図である。
【図2】実施形態に係る換気システムの第1変形例を示す構成概略図である。
【図3】実施形態に係る換気システムの第2変形例を示す構成概略図である。
【図4】実施形態に係る換気システムの第3変形例であり、給気した空気が床面を沿って流れることを示す構成概略図である。
【図5】実施形態に係る換気システムの平面を模式的に示した図である。
【図6】実施形態に係る換気システムの結露の抑制を示す構成概略図である。
【符号の説明】
【0033】
10………換気システム、12………建物、14………給気手段、15………給気口、16………排気手段、18………天井、20………調理器具、22………天井懐、24………水受け、26………制御部、30………高断熱部材、32………送風部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に勾配を付した建物とし、前記天井の頂点側の側面から当該側面に沿って下方の床に向けて送風する給気手段と、前記天井の頂点から排気する排気手段とを備え、前記頂点側の側面から床に沿って対面する前記天井の最下点側の側面を上昇して前記天井の勾配に沿って下方から上方に流れる室内空気の循環経路を形成したことを特徴とする換気システム。
【請求項2】
ブロック毎に区分けした前記建物をブロック単位で給排気する制御部を備えてなることを特徴とする請求項1記載の換気システム。
【請求項3】
前記天井の最下点側に、当該天井の下方から上方に勾配を沿って流れる温風を送風する結露抑制手段を備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の換気システム。
【請求項4】
前記給気手段は、床に沿って給気する給気口を前記建物の側面下方に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の換気システム。
【請求項5】
建物の天井に勾配を付して、室内の空気を循環させて、室内を循環した空気を前記天井の勾配に沿って上昇させて、前記天井の頂点から排気することを特徴とする換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−177617(P2006−177617A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371665(P2004−371665)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)