説明

揮発性有機化合物処理装置

【課題】触媒部の温度が低い場合に多大な予熱能力を必要とせず、VOC濃度が高い場合に触媒や熱交換器を過熱しないVOC処理装置の提供。
【解決手段】送風機(1)の送風量が、始動時において、前記温度センサー(5)により検出された触媒部入口温度を設定最低温度に維持するように徐々に増加するように制御される。また、触媒部(3)の出口と前記熱交換器(4)の入口との間に分岐管路(6)を設け、当該分岐管路(6)に放風弁(7)を介装し、放風弁(7)の放風量が前記温度センサー(5)の出力により制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に含有される揮発性有機化合物(以下、「VOC」という)を触媒反応により処理する揮発性有機化合物処理装置(以下、「VOC処理装置」という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VOC処理装置には、触媒による反応を利用するものがある。最も簡単な処理装置は、送風機と電気式予熱器と触媒部で構成され、揮発性有機化合物を含有する空気(以下、「VOC含有空気」という)は予熱器によって設定最低温度以上に予熱されて触媒部に流入し、触媒部でVOCは空気中の酸素と反応し、排気として大気に放出される。
【0003】
通常、触媒部ではVOCの反応により熱が発生する。上述の最も簡単な処理装置に熱交換器を追加して配設し、反応熱の一部を触媒部から流出する排気から回収し、触媒部に流入するVOC含有空気に与えるようにすると、予熱器における電力消費を削減できる。
【0004】
そのような方式のVOC処理装置の典型的な構成図を図5に示す。
図5において、送風機1から吐出されたVOC含有空気は、熱交換器4の低温側流路L12を通り、電気式予熱器2に流入し、触媒部3でVOCは反応し、その排気は、熱交換器4の高温側流路L13を通って大気に放出される。
熱交換器4では、温度の高い排気(流路L13を流れる排気)の熱の一部が、温度の低いVOC含有空気(流路L12を流れる排気)に与えられる。
【0005】
VOC含有空気は、熱交換器4及び予熱器2によって、触媒部3に入るまでには、触媒部3で所要の処理率が達成できる温度(触媒部温度)にまで予熱されていなければならない。ここで処理率は、触媒部の入口、出口におけるVOC濃度の差を入口におけるVOC濃度で除した値の百分率表示とする。処理率は、触媒部入口におけるVOC含有空気の温度がある値を超えると急激に上昇し、100%に近づく。トルエンなど代表的なVOCにおいては、触媒部温度150〜300℃でほぼ100%の処理率が得られる。
【0006】
図5を参照して上述した従来のVOC処理装置には、解決すべき課題があった。
その課題のひとつは、始動時に特有な課題である。始動時には、触媒部3では温度が低いために反応は起きず、その結果、熱交換器4においてVOC含有空気を予熱できない。
したがって、送風機から供給されるVOC含有空気を、予熱器2が供給する熱だけで触媒部である程度の反応が起きるまで予熱しなければならない。もちろん、VOC処理装置自体もその温度(触媒部作動温度)に暖める必要がある。
そのため、予熱器2としては、触媒部で反応が十分行われ、熱交換器4で相当な熱回収が行えるような運転時に必要な予熱能力よりも、はるかに大きな予熱能力を有するものが必要であった。このことは、VOC処理装置のコストの高騰を招くと共に、VOC処理装置におけるコンパクト化を妨げる原因となっていた。
【0007】
従来のVOC処理装置におけるもうひとつの課題は、何らかの原因で想定される濃度をはるかに超える高濃度のVOC含有空気がVOC処理装置に供給された場合に、触媒部3や熱交換器4が過熱してしまうことである。
この問題は、熱交換器4として温度効率の高い熱交換器が使用される場合に、顕著となる。VOC含有空気のVOC濃度が高くなると、VOCの反応による温度上昇が大きくなり、それに応じて排気の温度が上昇し、熱交換器4ではVOC含有空気がより高い温度にまで予熱される。VOC濃度が過度に高い場合には、予熱器2への電力投入を停止しても、触媒部3入口でのVOC含有空気の温度を設定値に制御できないようになり、ついには触媒部3の許容温度を超えてしまう。そのような場合、触媒部3内の触媒だけでなく、熱交換器4の耐久性に悪影響を及ぼすことになる。
これに対して、より耐熱性のある触媒や熱交換器を採用して対応しようとすれば、いずれもコスト高になってしまう。
【0008】
その他の従来技術として、例えば、工場から排出するVOCを酸化触媒を配置した酸化反応装置によって酸化分解させる技術が存在する(例えば特許文献1参照)。
しかし、係る技術(特許文献1)では、装置の特性上、VOC濃度が低いものから高いものまでの広範囲の処理には耐えられない欠点があった。
【特許文献1】国際公開公報WO98/44298
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、予熱器の能力が小さくて済むVOC処理装置の提供を目的としている。
また本発明は、VOC濃度が想定を超えて高い場合であっても、触媒や熱交換器を過熱しないVOC処理装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のVOC処理装置(図1の10)は、VOCを含有するVOC含有空気を吸入し送風する送風機(1)と、この空気を加熱する熱交換器(4)と、当該熱交換器(4)から流出する揮発性有機化合物を含有する空気を予熱する予熱器(2)と、当該予熱器(2)から流出する予熱されたVOC含有空気に含有されるVOCを反応させる触媒部(3)とで構成され、前記熱交換器(4)においては、当該触媒部(3)から流出する排気の熱を回収し、前記送風機(1)から吐出され前記VOC含有空気に与えるようにしたVOC処理装置(10)において、前記触媒部(3)に流入するVOC含有空気の温度(以下、「触媒部入口温度」という)を検出するための温度センサー(5)を配設し、始動時に、前記温度センサー(5)により検出された触媒部入口温度を設定最低温度に維持するように、前記送風機(1)の送風量が徐々に増加する制御を行う様に構成されていることを特徴としている(請求項1)。
本明細書において、設定最低温度とは、触媒部(3)で所要の処理率が得られる触媒部入口温度として設定された温度を意味している。
また本明細書において、設定最高温度とは、触媒部(3)で反応が進む範囲における温度であって、触媒部(3)や熱交換器(4)が過熱しない上限の温度として設定された温度を意味している。
【0011】
また、本発明のVOC処理装置(10)は、VOC含有空気を吸入し送風する送風機(1)と、この空気を加熱する熱交換器(4)と、当該熱交換器(4)から流出する揮発性有機化合物を含有する空気を予熱する予熱器(2)と、当該予熱器(2)から流出する予熱されたVOC含有空気に含有されるVOCを反応させる触媒部(3)とで構成され、前記熱交換器(4)においては、当該触媒部(3)から流出する排気の熱を回収し、前記送風機(1)から吐出され前記VOC含有空気に与えるようにしたVOC処理装置(10)において、触媒部入口温度を検出するための温度センサー(5)を配設するとともに、前記触媒部(3)の出口と前記熱交換器(4)の高温側入口との間に排気の一部を前記熱交換器(4)を迂回して大気に放風するための分岐管路(6)を配設し、当該分岐管路(6)にはその放風量を調整するための放風弁(7)を配設し、その放風量が前記温度センサー(5)の出力により制御されることを特徴としている(請求項2)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送風機(1)の送風量は始動時において、設定送風量(例えば、定格での送風量)に比べかなり少なく設定され、その後、温度センサー(5)により検出された触媒部入口温度を設定最低温度以上にするべく徐々に増加するように制御される。
熱交換器(4)においては送風量にほぼ比例して熱回収が行われ、その熱によってVOC含有空気が予熱器(2)に流入する前に予熱されるので、送風量が徐々に増えていっても、小さい能力の予熱器(2)で、VOC含有空気を触媒部(3)で反応が進む温度にまで予熱でき、反応を維持することができる。
そして、予熱器(2)の能力が非常に小さくても良いため、VOC処理装置(10)装置の低コスト化や、装置のコンパクト化が可能になる。
【0013】
また、本発明によれば、触媒部入口温度を検出するための温度センサー(5)を配設するとともに、前記触媒部(3)の出口と前記熱交換器(4)の入口との間に排気の一部を前記熱交換器(4)を迂回して大気に放風するための分岐管路(6)を配設し、当該分岐管路(6)にはその放風量を調整するための放風弁(7)を配設し、その放風量が前記温度センサー(5)の出力により制御されるようにしたので、VOC濃度が想定値を超える場合においても、触媒部入口温度が設定最高温度を超え過ぎない様に制御することが可能になり、触媒部(3)や熱交換器(4)の過熱を防止することができる。
なお、予熱器(2)を停止しても、放風弁(7)を開き、触媒部(3)の排気の一部を前記熱交換器(4)を迂回して放風しない限り、VOC濃度が高くなるにつれて、触媒部入口温度がついには設定最高温度を超えてしまうということに注意すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す。
図1において、図5と同様な部材には同様な符号を付して説明している。
【0015】
図1において、全体を符号10で示すVOC処理装置は、図示しないインバータ制御モータによって駆動される送風機1と、電熱線11を使用した直接加熱方式の予熱器2と、セラミックハニカムに白金系触媒を担持させた触媒(図示せず)を内蔵する触媒部3と、熱交換器4(例えばプレート形式の熱交換器)と、触媒部入口3Iに配設した温度センサー5(例えば、熱電対温度センサー)と、触媒部3と熱交換器4との間に配設した分岐管6と、分岐管6に配設した放風弁7(例えば、バタフライ弁を備えた放風弁)と、制御装置8とで構成されている。
【0016】
図1で示すVOC処理装置10の作動について、具体的に数値を用いて説明する。
一例として、完全に反応した場合すなわち処理率100%において、50℃の温度上昇が得られるVOC含有空気が0℃で送風機1によりVOC処理装置10内に供給され、触媒部入口3Iでの温度が200℃で100%の処理率が得られる場合を扱う。取り扱いを簡単にするため、VOC含有空気と排気の比熱は同一で、温度によらず一定とする。
【0017】
熱交換器がない場合は、100%の処理率を実現するためには、予熱器で少なくとも200℃の予熱が必要である。一方、温度効率が高い熱交換器を使用して熱回収を行えば、定常状態では、予熱器による予熱なしでも、100%の処理率を実現できる場合がある。
熱交換器の温度効率ηは、熱交換器4の入口における排気温度をT1、熱交換器4の出口での排気温度をT2、熱交換器4の入口におけるVOC含有空気の温度をt1、熱交換器4の出口でのVOC含有空気の温度をt2とすれば、次式で定義される。
η=(t2−t1)/(T1−t1)
=(T1−T2)/(T1−t1)
【0018】
いま、熱交換機の温度効率を80%とすると、熱交換器高温側入口における排気温度T1と熱交換器低温側出口におけるVOC含有空気の温度t2との間に成り立つ関係式T1=t2+50℃と、上記の熱交換器の温度効率の定義式において、熱交換器4の高温側出口における排気温度T2=50℃、熱交換器4の低温側入口におけるVOC含有空気の温度t1=0℃を代入して得られる式を連立して解くと、t2=200℃、T1=250℃が得られる。t2=200℃は、触媒部で100%の処理率が得られるVOC含有空気の予熱温度に等しいことから、80%以上の温度効率の熱交換器を使用すれば、定常運転においては、熱交換器による予熱だけで、完全処理時の温度上昇が50℃のVOC含有空気を完全に処理できることがわかる。
同様な計算から、温度効率が50%の熱交換器の場合には、完全処理時の温度上昇が200℃のVOC濃度以上の濃度でないと、予熱器による予熱が必要となることも導かれる。
【0019】
VOC処理装置10の始動時において、熱交換器4の入口におけるVOC含有空気の温度t1が0℃、触媒部入口3Iでの設定最低温度が200℃であり、送風機1の送風量が一定(定格送風量)である場合、その送風量(定格送風量)のVOC含有空気を200℃上昇させることのできる能力の予熱器2が必要となる。
それに対して、例えば、送風機1の送風量を定格の10%まで減少することができれば、理論上は予熱器2の予熱能力は10分の1(定格送風量の20℃の温度上昇に相当)で済むことになる。
【0020】
同様に、送風機1の送風量を定格送風量の25%まで減少することが出来れば、送風機1の定格送風量について、送風量が一定(定格送風量)の場合に必要な予熱温度上昇200℃の25%、すなわち50℃の温度上昇に相当する予熱能力を有する予熱器2を用いれば、どんなにVOC濃度が薄いVOC含有空気であっても、熱交換器4の入口における温度t1が0℃でも、触媒部入口3Iでの温度を設定最低温度(200℃)まで昇温させて、反応部3で処理できることになる。
定格送風量について200℃の温度上昇に相当する予熱能力を必要とすることに比較して、定格送風量について50℃の温度上昇に相当する予熱能力を有する予熱器2を用意すれば済むことは、相当なコスト節減になることは確実である。
【0021】
送風機1の風量は、例えば、駆動モータをインバータ制御型とすることで容易に可変制御することが出来る。送風機1の駆動モータをインバータ制御型とすることによるコスト増は、予熱器2の予熱能力を大幅に小さくできることによるコスト削減により、十分カバーできる。
さらに、予熱器2のサイズを大幅に小さくすることができるため、VOC処理装置10全体としてのサイズ縮小や、重量軽減のメリットが非常に大きくなる。
【0022】
上述した送風機1の送風量の制御について、図2のフローチャートをも参照して説明する。
図2のフローチャートで示す制御(送風機1の送風量の制御)は、例えばVOC処理装置10の始動時の様に、触媒部3の温度が低い場合を想定している。係る場合においては、分岐管6に設けられた放風弁7は閉鎖されており、予熱器2は作動している(ステップS0)。
【0023】
図2において、先ず、送風機1からの送風量を許容最小量(例えば、定格送風量の25%)にする(ステップS1)。図1を参照して説明した様にVOC処理装置10を運転すれば、予熱器2で予熱されて、センサー5で計測される触媒部入口温度は上昇する(ステップS2)。
触媒部入口温度が設定最低温度(例えば200℃)に昇温するまでステップS3の「No」のループを繰り返し、触媒部入口温度が設定最低温度以上に昇温したならば(ステップS3がYes)、送風機1の送風量を増加する(ステップS4)。そして、送風量が設定送風量(例えば、送風機1の定格送風量)に到達したか否かを判断する(ステップS5)。送風機1の送風量が設定送風量に達していない場合には(ステップS5がNo)、ステップS3以降を繰り返す(ステップS5がNoのループ)。
【0024】
ステップS5が「No」のループでは、触媒部入口温度が設定最低温度まで昇温しているので、触媒部3で反応が行われている。ステップS5が「No」のループを繰り返すことにより、送風機1の送風量は増加する。
送風機1の送風量が設定送風量に到達したならば(ステップS5がYes)、予熱器2を停止して(ステップS6)、作動始動時の制御を終了する。
【0025】
次に、再び図1において、放風弁7の作用について説明する。
放風弁7の作用についての説明は、極めてまれな想定ではあるが、予想されたVOC濃度をはるかに超える濃度のVOC含有空気が、VOC処理装置10に供給される場合において、過熱を回避するための制御に関する。
【0026】
触媒部3で完全に反応すれば100℃温度上昇する濃度のVOC含有空気が、図1のVOC処理装置10に供給される場合について検討する。この場合、予熱器2は作動しない。
熱交換器4の温度効率を上述と同様に80%とすると、触媒部入口温度は400℃となる。そして、触媒部3で100℃昇温すれば、触媒部3の出口における排気温度は500℃に達する。
係る高温は、触媒部3内の触媒や熱交換器4を過熱して、その耐久性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0027】
ここで、放風弁7を開放して、分岐管6を流れる(触媒部3の)排気の割合を50%として、熱交換器4に流入させる(触媒部3の)排気の割合を50%とすれば、熱交換器4の出口におけるVOC含有空気の温度t2の上昇は、理論的には200℃にすることができる。なお、上記の計算において、簡単化のため、熱交換器の温度効率は排気流量によらないと仮定しているが、結果が一般性を失うことにはならない。
VOC含有空気の温度t1が0℃であれば、VOC含有空気の温度t2、すなわち触媒部入口温度は200℃となり、設定最低温度に一致する。したがって、触媒部3内の触媒や熱交換器4における過熱を防止して、反応を継続できる。なお、この場合の触媒部出口での排気温度は300℃である。
【0028】
放風弁7の作用について、図3のフローチャートをも参照して説明する。
図3のフローチャートで示す制御では、触媒部3内の触媒や熱交換器4における過熱が問題となる場合を想定している。その様な想定において、予熱器2は作動しておらず、送風機1の送風量は設定送風量となっており、放風弁7の弁開度は0%(放風弁全閉)となっている(ステップS10)。
センサー5により触媒部入口温度を計測し(ステップS11)、計測された触媒部入口温度が設定最高温度以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0029】
触媒部入口温度が設定最高温度以上であれば(ステップS12がYes)、触媒部3内の触媒や熱交換器4が過熱する可能性があると判断して、放風弁7の弁開度を増加して、分岐管6を流れる触媒部3からの排気の流量を増加する(ステップS13)。これにより、熱交換器4側の排気流量を減少して、熱交換器4におけるVOC含有空気の温度上昇を抑える。
そして、ステップS15に進む。
【0030】
触媒部入口温度が設定最高温度よりも低温であれば(ステップS12がNo)、放風弁7の弁開度を減少して、触媒部3からの排気が熱交換器4側を流れる量を増加する(ステップS14)。
そして、運転が終了か否かを判定し(ステップS15)、運転を継続するのであれば、ステップS11以下を繰り返す(ステップS15がNoのループ)。
【0031】
図3で示す制御は、VOC含有空気中のVOC濃度が濃く過熱の可能性がある場合の制御である。それに対して、図4では、VOC含有空気中のVOC濃度が薄い場合の制御を示している。
VOC含有空気中のVOC濃度が薄くなる場合を想定している図4の制御において、ステップS20では、放風弁7は閉鎖した状態(全閉)となっており、送風機1の送風量は設定送風量であり、予熱器2は作動していない(予熱器OFF)。
次にセンサー5により触媒部入口温度を計測し(ステップS21)、計測された触媒部入口温度が設定最低温度(例えば200℃)以下であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0032】
触媒部入口温度が設定最低温度よりも高温であれば(ステップS22がNo)、予熱器2をOFFにする(ステップS23)。そして、運転が終了か否かを判定し(ステップS24)、運転を継続するのであればステップS21に戻る(ステップS24がNo)。
【0033】
触媒部入口温度が設定最低温度以下であれば(ステップS22がYes)、予熱器2を作動して、VOC含有空気が設定最低温度以上まで昇温する様に予熱する(ステップS24)。VOC含有空気を設定最低温度以上まで昇温するのに必要な予熱量については、制御装置8内の図示しない記憶装置(メモリ)等に記憶された表や関係式等から演算することが可能である。
そして、センサー5により触媒部入口温度を計測し(ステップS26)、計測された触媒部入口温度が設定最低温度以下であるか否かを判定する(ステップS27)。
ステップS27で触媒部入口温度が設定最低温度よりも高温であれば(ステップS27がNo)、ステップS24に進み、運転が終了か否かを判定する。
【0034】
ステップS27で、計測された触媒部入口温度が設定最低温度以下の場合(ステップS27がYes)は、VOC含有空気中のVOC濃度が非常に薄く、予熱器2を作動するのみではVOC含有空気を200℃まで昇温出来ないので、送風機1からの送風量を減少する(ステップS28)。
そして、センサー5により触媒部入口温度を計測し(ステップS29)、計測された触媒部入口温度が設定最低温度以下であるか否かを判定する(ステップS30)。
【0035】
ステップS30で触媒部入口温度が設定最低温度以下であれば(ステップS30がYes)、その時点における送風機1からの送風量が、送風機1の最小送風量(送風機1の送風量の許容最小値:送風量がゼロの場合を含む)よりも多いか否かを判定する(ステップS31)。送風機1からの送風量が最小送風量よりも多い場合には(ステップS31がYes)、送風量をさらに減少するべく、ステップS28に戻る。
ステップS31において、送風機1からの送風量が最小送風量以下である場合(ステップS31がNo)は、予熱器2をOFFにして、送風機1からの送風量を最小(ゼロを含む)にしても、触媒部入口温度が設定最低温度以下になってしまうということである。係る事態が生じた場合には、「異常」と判断して、VOC処理装置10を停止する(ステップS32)。
【0036】
送風量を減少して触媒部入口温度が設定最低温度よりも高温となれば(ステップS30がNo)、送風量を増加する(ステップS33)。
そして、センサー5により触媒部入口温度を計測し(ステップS34)、計測された触媒部入口温度が設定最低温度以下であるか否かを判定する(ステップS35)。
【0037】
ステップS35で触媒部入口温度が設定最低温度以下であれば(ステップS35がYes)、ステップS28に戻り、送風機1からの送風量を減少する。
触媒部入口温度が設定最低温度よりも高温であれば(ステップS35がNo)、送風量が設定送風量に達しているか否かを判定する(ステップS36)
送風量が設定送風量に達していなければ(ステップS36がNo)、ステップS33に戻り、送風量を増加する。
一方、送風量が設定送風量に達していれば(ステップS36がYes)、ステップS23に戻り、予熱器2をOFFにする。
【0038】
すなわち、図4で示す制御では、触媒部入口温度が設定最低温度よりも低い場合(ステップS22がYes)には、先ず、予熱器2により加熱し、予熱器2で加熱しても触媒部入口温度が設定最低温度よりも低い場合(ステップS27がYes)には、送風量を減少する(ステップS28)。
予熱器2により加熱し且つ送風量を減少することにより、触媒部入口温度が設定最低温度よりも高くなれば(ステップS30がNo)、先ず、送風量を増加して設定送風量に戻す処理(ステップS36がNoのループ)を行う。そして、触媒部入口温度が設定最低温度よりも高くなり且つ送風量が設定送風量に戻れば(ステップS36がYes)、予熱器2による加熱を終了する(ステップS23)。
【0039】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態のブロック図。
【図2】図1の実施形態における制御を示すフローチャート。
【図3】図1の実施形態における別の制御を示すフローチャート。
【図4】図1の実施形態の変形例を示すブロック図。
【図5】従来のVOC処理装置のブロック図。
【符号の説明】
【0041】
1・・・送風機
1A・・・ブロワ
2・・・予熱器
3・・・触媒部
3I・・・触媒部入口
4・・・熱交換器
5・・・温度センサー
6・・・分岐管
7・・・放風弁
8・・・制御装置
10・・・VOC処理装置
11・・・電熱線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含有する空気を吸入し送風する送風機と、この空気を加熱する熱交換器と、当該熱交換器から流出する揮発性有機化合物を含有する空気を予熱する予熱器と、当該予熱器から流出する予熱された揮発性有機化合物を含有する空気に含有される揮発性有機化合物を反応させる触媒部とで構成され、前記熱交換器においては、当該触媒部から流出する排気の熱を回収し、前記送風機から吐出され前記揮発性有機化合物を含有する空気に与えるようにした揮発性有機化合物処理装置において、前記触媒部に流入する揮発性有機化合物を含有する空気の温度を検出するための温度センサーを配設し、始動時に、前記温度センサーにより検出された触媒部に流入する揮発性有機化合物を含有する空気の温度を設定最低温度に維持するように、前記送風機の送風量が徐々に増加する制御を行う様に構成されていることを特徴とする揮発性有機化合物処理装置。
【請求項2】
揮発性有機化合物を含有する空気を吸入し送風する送風機と、この空気を加熱する熱交換器と、当該熱交換器から流出する揮発性有機化合物を含有する空気を予熱する予熱器と、当該予熱器から流出する予熱された揮発性有機化合物を含有する空気に含有される揮発性有機化合物を反応させる触媒部とで構成され、前記熱交換器においては、当該触媒部から流出する排気の熱を回収し、前記送風機から吐出され前記揮発性有機化合物を含有する空気に与えるようにした揮発性有機化合物処理装置において、触媒部に流入する揮発性有機化合物を含有する空気の温度を検出するための温度センサーを配設するとともに、前記触媒部の出口と前記熱交換器の高温側入口との間に排気の一部を前記熱交換器を迂回して大気に放風するための分岐管路を配設し、当該分岐管路にはその放風量を調整するための放風弁を配設し、その放風量が前記温度センサーの出力により制御されることを特徴とする揮発性有機化合物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−72707(P2009−72707A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244652(P2007−244652)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(594187563)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(393026733)株式会社ソフィアプレシジョン (9)
【Fターム(参考)】