揺すり込み沈下対策地盤および揺すり込み沈下対策地盤の造成方法
【課題】 固化材ミルクの消費量を抑制するとともに、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法を提供する。
【解決手段】 揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層S12には、複数の杭式改良体1が造成されている。杭式改良体1は、非液状化層S12を超えて基盤層S11に到達している。隣接する杭式改良体1同士の間には、深さ方向に離間する複数の補強改良体2が形成されている。補強改良体2は、隣接する杭式改良体1同士を繋げている。
【解決手段】 揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層S12には、複数の杭式改良体1が造成されている。杭式改良体1は、非液状化層S12を超えて基盤層S11に到達している。隣接する杭式改良体1同士の間には、深さ方向に離間する複数の補強改良体2が形成されている。補強改良体2は、隣接する杭式改良体1同士を繋げている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地下水位以浅の地中構造物の周辺等における非液状化層構造物周辺領域を備える地盤に揺すり込み沈下対策を施して造成する揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位が高く飽和状態にある液状化層では、地震時に地盤が繰り返し変形を受けることによって水圧が上昇し、地盤におけるせん断抵抗力が失われることによって液状化現象が発生する。その一方、地下水位が低く、地下水位以浅にある緩い砂地盤では、地盤の間隙中に水分が存在するものの、不飽和状態となっているため、地震時に繰り返し変形が与えられたとしても、水圧が上昇しにくくなっている。水圧が上昇しなければ、土圧が有効応力として作用することから、地盤のせん断抵抗力が保たれるので、液状化現象は発生しない。したがって、地下水位よりも浅い位置における砂地盤は、非液状化層となっている。
【0003】
このような非液状化層では、液状化現象が発生しないものの、地中構造物や建屋の周辺の領域(以下「非液状化層構造物周辺領域」という)では、揺すり込み沈下の発生が問題となっている。非液状化層構造物周辺領域における沈下の原因は主に2つに大別される。その1つは、地震によって地盤に繰り返しせん断力が生じることによる地盤の体積収縮であり、もう1つは、地盤と地中構造物との相対水平変位によるすべり沈下である。揺すり込み沈下は、構造物の周囲においてその現象が確認されており、上記2つの原因が複合して生じる沈下現象である。
【0004】
揺すり込み沈下の発生メカニズムは、液状化による地盤沈下とは明らかに異なる。このため、揺すり込み沈下対策としては、地震時に累積ひずみによる体積収縮を生じさせないように地盤のせん断剛性を高めるとともに、地盤と近接する構造物との応答差をなくし、相対水平変位を抑制するように非液状化層構造物周辺領域を改良することが必要と考えられる(非特許文献1参照)。
【0005】
地下水位以浅の非液状化層構造物周辺領域(以下「改良対象領域」ともいう)の改良形式として特化した技術は特に開示されていないが、揺すり込み沈下の発生メカニズムを考慮すると、たとえば改良対象領域の全体をセメントなどの固化材によって固化させて改良体を造成する方法がある。揺すり込み沈下が発生する主な理由は、地震発生前の初期剛性が、地震後における載荷と除荷を繰り返し受ける繰り返し荷重により低下し、地盤が軟化することで地盤の変形量が大きくなり、土粒子の再配列が生じやすくなることと考えられる。また、地盤の変形量が大きくなることにより、構造物と地盤との間の相対水平変位が大きくなって構造物と地盤との間に生じた隙間に土が滑り込むことによりさらに沈下量が増大する。そこで、地盤を全面改良して初期剛性を高めることにより、繰り返し荷重を受けた後の地盤の剛性の低下量を小さくすることができ、沈下の抑制を図ることができる。
【0006】
ところが、改良領域の全体を固化させる工法では、固化材を大量に必要としたり、工期の長期化を招いたりするなどの問題がある。また、改良領域の全体を改良する全面改良に対して、改良領域の一部を効率的に改良する部分固化を行うことも考えられる。この部分固化では、改良領域の一部に地盤改良体を造成する工法がある。この工法では、地盤の一部を固化させるのみであるので、固化材の使用量を少なくするとともに、工期の短縮を図ることができる。
【0007】
地盤改良体を造成する際には、深層混合処理工法や薬液注入工法が用いられる。このうち、薬液注入工法は、一般的には土中水を薬液に置換する工法であるため、地下水位以浅にある改良対象領域に適用することは適切でない。したがって、地盤改良体を造成する際には、深層混合処理工法を用いることが考えられる。
【0008】
深層混合処理工法には、撹拌用の重機を用いて撹拌を行う機械式撹拌工法や固化材ミルクを地盤内で高圧噴射して撹拌を行う高圧噴射撹拌工法などがある。また、地盤の一部を深層混合処理工法によって固化させる工法として、従来、次のものが知られている。たとえば、固化材ミルクを地盤と混合撹拌して地盤改良体を平面格子状に配置して造成する。この平面格子状の地盤改良体は、側面視して壁状に形成される。この地盤改良体によって地震時における地盤のせん断変形を抑制し、地下水および土の移動を抑制する(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。さらには、格子状地盤改良体を単独で造成するだけでなく、杭基礎構造と併用して用いる工法も知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−265455号公報
【特許文献2】特開2008−50787号公報
【特許文献3】特開2001−342637号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】石丸真,河井正:重力場模型振動台実験による底面が固定された剛な構造物近傍地盤の地震時沈下メカニズムの把握,地盤工学ジャーナル,Vol.4,No.4,369-380.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
揺すり込み沈下対策地盤を造成するにあたり、改良対象領域の全体を固化させる工法は、揺すり込み沈下を防止する対策として最も確実な工法ではある。ところが、改良対象領域の全体の固化材ミルクを注入して改良対象領域の全体を固化させていることから、大量の固化材ミルクを要するという問題があった。また、施工の際には、地盤内に注入する固化材ミルクの量と同量以下のスライムが地上に排出されるため、排出されたスライムの処理や運搬の手間が掛かるという問題もあった。
【0012】
一方、上記特許文献1〜3に開示された地盤の一部に格子状地盤改良体を造成する工法では、固化材ミルクや薬剤の使用量を抑制できる。さらには、固化材ミルクの使用量が少なくなるため、排出されるスライムの量も少なくなり、スライムの処理や運搬に掛かる手間を軽減することができる。
【0013】
しかし、上記特許文献1〜3に開示された格子状地盤改良体を造成する工法においては、地盤改良体をラップさせて連続的に造成することで壁体を構築している。このため、固化材ミルクのロスが生じるという問題は依然として残されているので、さらに固化材ミルクの消費量の抑制を図る余地がある。
【0014】
他方、改良対象領域の全体を固化させて全体改良体を造成する場合、構造物と全体改良体との剛性の差は小さくなるものの、未改良地盤と全体改良体との剛性の差は非常に大きくなっている。このため、全体改良体に対して地震動が壁の垂直方向に入力された場合、全体改良体と未改良地盤との揺れ方が大きく異なり、相対水平変位が大きく異なってしまう。したがって、全体改良体と未改良地盤との間に隙間が生じるなどして、沈下の進行を進めてしまう可能性があるという問題があった。
【0015】
そこで、本発明の課題は、固化材ミルクの消費量を抑制するとともに、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決した本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤は、基盤層と、基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策地盤であって、地盤における非液状化層構造物周辺領域から基盤層に到達する深さまで複数の杭式改良体が打設されて、隣接する杭式改良体同士の間に補強体が形成されており、補強体は、隣接する杭式改良体同士を繋げていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤においては、非液状化層構造物周辺領域に杭式改良体が打設されており、杭式改良体同士の間に補強体が形成されている。このため、非液状化層構造物周辺領域におけるせん断剛性が高められているので、揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。また、杭式改良体同士の間に補強体が形成されていることにより、非液状化層構造物周辺領域の全体を固化させる場合よりも、杭式改良体および補強体を形成するための固化材ミルクの消費量を抑制することができる。
【0018】
さらに、壁状配置のように杭式改良体を深度方向にすべてラップさせることなく、補強体を形成しているので、固化材ミルクのロスを小さくすることができる。他方、杭式改良体および補強体を用いる本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤では、非液状化層構造物周辺領域の全体を固化させる場合よりも、非液状化層構造物周辺領域と未改良地盤との間での地震の応答差が小さくなる。このため、非液状化層構造物周辺領域と未改良地盤との間での相対水平変位が小さくなるので、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。
【0019】
ここで、補強体は、隣接する杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されている態様とすることができる。
【0020】
このように、補強体が、隣接する杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されていることにより、杭式改良体を効率的に補強することができ、補強体を形成するための固化材ミルクの消費量をさらに抑制することができる。
【0021】
また、複数の補強体として、最上層に配置された上層補強体と、最下層に配置された下層補強体とを備え、非液状化層における上層補強体と地表面との間の厚さおよび下層補強体と基盤層との間の厚さが、それぞれ非液状化層の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、非液状化層における上層補強体と下層補強体との間の深さ方向の厚さが、非液状化層の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されている態様とすることができる。
【0022】
このように、非液状化層構造物周辺領域における上層補強体と地表面との間の厚さおよび下層補強体と基盤層との間の厚さが、それぞれ非液状化層構造物周辺領域の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、非液状化層における上層補強体と下層補強体との間の深さ方向の厚さが、非液状化層構造物周辺領域の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されていることにより、非液状化層構造物周辺領域のせん断剛性を高めることができる。その結果、揺すり込み沈下の抑制効果をさらに高いものとすることができる。
【0023】
さらに、深さ方向に離間して形成された複数の補強体は、地表面に近づくにつれて、体積が大きく形成されている態様とすることができる。
【0024】
このように、複数の補強体が、地表面に近づくにつれて、つまり、地盤に作用するせん断変形が大きい深度で、体積が大きく形成されていることにより、非液状化層構造物周辺領域のせん断剛性を高めることができる。よって、揺すり込み沈下の抑制効果をさらに高いものとすることができる。
【0025】
また、複数の杭式改良体は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置されている態様とすることができる。
【0026】
このように、複数の杭式改良体の配置位置は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置とすることができる。
【0027】
他方、上記課題を解決した本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成方法は、基盤層と、基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策を施すにあたり、地盤における非液状化層構造物周辺領域から基盤層に到達する深さまで杭式改良体を複数打設し、隣接する杭式改良体同士の間に、杭式改良体同士を繋げる補強体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法によれば、固化ミルクの消費量を抑制するとともに、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。
【図2】揺すり込み沈下対策地盤の平面図である。
【図3】揺すり込み沈下対策地盤の造成工程を示す工程図である。
【図4】揺すり込み沈下対策地盤の他の例の平面図である。
【図5】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【図6】解析に用いた揺すり込み沈下対策地盤の側断面のモデルの図であり、(a)は、補強改良体を設けない状態、(b)は、補強改良体を設けた状態を示す図である。
【図7】(a)〜(c)とも、せん断ひずみ抑制効果を示すグラフである。
【図8】(a)は供試体が礫の場合に繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を示すグラフ、(b)は供試体が砂の場合に繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を示すグラフである。
【図9】砂分主体の供試体に対して様々なせん断応力で繰り返し載荷を行った実験の結果を示すグラフである。
【図10】第2の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。
【図11】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【図12】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図、図2は、その平面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1は、基盤層S11を備えており、基盤層S11の上方には非液状化層S12が位置している。基盤層S11は、構造物の支持層ともなり、地震が発生した際にも液状化が起こり難い堅固な地盤である。
【0032】
また、非液状化層S12は、地下水位以浅の砂質土などからなり、地震が発生した際に揺すり込み沈下が発生しやすい地盤である。非液状化層S12には、地中構造物である共同溝Mが形成されている。共同溝Mは、図2に示すように、略水平方向に沿って形成されている。
【0033】
さらに、図1に示すように、非液状化層S12に形成された共同溝Mの周辺における非液状化層構造物周辺領域である非液状化層構造物周辺領域Rには、複数の杭式改良体1が打設されている。杭式改良体1は、上方から非液状化層S12を超えて、その下層における基盤層S11まで到達している。杭式改良体1は、基盤層S11に根入れされているのが好ましいが、その根入れ深さは、わずかでも問題ない。また、図2に示すように、複数の杭式改良体1のうちの4本は、平面視して正方形の角部となる位置に配置されている。このように、隣接する4本が平面視して正方形の角部となる位置に配置された状態で複数の杭式改良体1が打設されている。
【0034】
非液状化層S12に設けられた複数の杭式改良体1における隣接する杭式改良体1同士の間には、本発明の補強体である補強改良体2が形成されている。補強改良体2は、図1に示すように、隣接する杭式改良体1同士の間で高さ方向に離間して複数形成されている。本実施形態では、隣接する杭式改良体1同士の間の5個の補強改良体2が形成されている。
【0035】
杭式改良体1を平面視した際の径は、たとえばφ2.2mとされている。また、隣接する杭式改良体1同士の間の距離は、たとえば1mとされている。さらに、補強改良体2を平面視した際の径は、たとえばφ1.8mとされている。また、補強改良体2は、隣接する杭式改良体1における杭中心を結ぶ最短の線分の中心位置に配置されている。このため、図2に示すように、補強改良体2は、隣接する杭式改良体1同士を繋げている。
【0036】
次に、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成方法について説明する。図3は、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成工程を模式的に示す工程図である。揺すり込み沈下対策地盤を造成する際には、まず、非液状化層S12を貫通して基盤層S11に到達する杭式改良体1を造成し、杭式改良体1の杭間地盤に補強改良体2を造成する。以下、その手順について説明する。
【0037】
揺すり込み沈下対策地盤S1を造成する際には、杭式改良体1を造成する。杭式改良体1は、たとえば深層混合処理工法によって造成することができ、ここではいわゆる高圧噴射撹拌工法によって造成する。高圧噴射撹拌工法では、杭式改良体1を造成する位置に噴射ノズルを挿入し、噴射ノズルの側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ノズルを回転させながら徐々に引き上げていく。
【0038】
こうして、噴射ノズルを揺すり込み沈下対策地盤S1の地表位置まで引き上げることにより、杭式改良体1を造成する位置に、円筒状の固化材ミルクと地盤との混合体が形成される。この混合体における固化材ミルクが固化することにより、杭式改良体1が造成される。同様の手順によって複数の杭式改良体1を造成したら、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2を形成する。補強改良体2の形成にあたっても、杭式改良体1を造成する場合と同様に深層混合処理工法、ここでは高圧噴射撹拌工法を用いることができる。
【0039】
補強改良体2を造成する際には、図3(a)に示すように、隣接する杭式改良体1同士の中間位置に噴射ロッド10を挿入する。このときの噴射ロッド10の挿入位置は、隣接する杭式改良体1同士の間におけるそれぞれの杭中心を結ぶ線分の中心位置またはその近傍位置とされており、噴射ロッド10の先端部には、固化材ミルクの噴射口が形成されている。このとき、噴射ロッド10における噴射口の位置が、補強改良体2を形成する深さ位置となるように噴射ロッド10を挿入する。噴射ロッド10を挿入したら、杭式改良体1を造成する場合と同様に、噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。
【0040】
それから、補強改良体2の厚さ分だけ噴射ロッド10を引き上げたら、噴射ロッド10における噴射口からの固化材ミルクの噴射を一旦停止する。次に、その上方の補強改良体2を形成する位置まで噴射ロッド10を引き上げる。このため、揺すり込み沈下対策地盤S1における補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存することとなるので、その分、固化材ミルクの消費量を抑制することができる。
【0041】
その後、図3(b)に示すように、次の補強改良体2を形成する位置から、再び噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。こうして、上方における補強改良体2を順次形成していくことができる。
【0042】
さらには、図3(c)に示すように、さらに上方に噴射ロッド10を移動させて、噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。また、図1に示す他の杭式改良体1の間に対しても、同様の手順によって固化材ミルクの高圧噴射を行う。さらには、補強改良体2における上方の地表面には、別途補強処理を施す。この補強処理には、セメント安定処理などを用いるのが好適である。その後、噴射ノズルから噴射された固化材ミルクが固化することにより、杭式改良体1および補強改良体2が形成され、揺すり込み沈下対策地盤S1が造成される。
【0043】
以上の構成を有する本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1においては、せん断剛性が高くなっている。ところで、地震が発生すると、杭式改良体1および補強改良体2が造成されてない非液状化層における構造物周辺の領域では、揺すり込み沈下が発生することがある。揺すり込み沈下は、非液状化層におけるせん断剛性が低く、さらには地中構造物と非液状化層との間における相対水平変位の大きさに基づくすべり沈下によって生じるものである。したがって、非液状化層におけるせん断剛性を高くすることや相対水平変位を小さくすることによって揺すり込み沈下を抑制することができる。
【0044】
この点、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1においては、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2が形成され、補強改良体2によって杭式改良体1がつながっているため、隣接する杭式改良体1同士を一体化することができる。したがって、地震時のせん断変形に対する剛性を大幅に高めることができるので、せん断変形を好適に防止することができる。
【0045】
このとき、せん断剛性を高める杭式改良体1および補強改良体2では、補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存する。このため、非液状化層S12の全体を改良して改良体を形成する場合と比較して、固化材ミルクの消費量を低減させることができる。
【0046】
さらに、揺すり込み沈下対策地盤S1では、非液状化層S12における非液状化層構造物周辺領域Rに杭式改良体1および補強改良体2を造成している。このため、非液状化層構造物周辺領域Rでは、共同溝Mとの水平相対変位が未改良領域よりも小さくなっている。したがって、その分すべり沈下を抑制することができ、揺すり込み沈下の抑制に寄与することができる。さらに、揺すり込み沈下対策地盤S1の非液状化層構造物周辺領域Rにおける補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存していることから、揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層構造物周辺領域Rの周囲の未改良部分との間の水平相対変位も小さくなっている。このため、揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層構造物周辺領域Rとその周囲の未改良部分との間でもすべり沈下による揺すり込み沈下の抑制に寄与することができる。
【0047】
また、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2を形成することにより、確実な施工を行うことができるとともに、隣接する杭式改良体1同士の幅が広い場合でも、隣接する杭式改良体1同士を容易に一体化することができる。
【0048】
さらには、高圧噴射撹拌工法によって固化材ミルクの噴射と噴射ロッド10の引き抜きを繰り返して行いながら杭式改良体1および補強改良体2を造成している。このため、改良範囲を部分的に調整することができる。また、部分噴射によって補強改良体2を形成することができるので、全面的な改良を施す場合よりも改良率の低減を図ることができ、固化材の消費量の低減を図ることができる。さらには、固化材ミルクの噴射を部分的に行うことにより、スライムの発生を抑制することができ、建設廃棄物の発生の抑制に寄与することができる。
【0049】
また、杭式改良体1および補強改良体2の配置については、図2に示すように、隣接する杭式改良体1の杭中心を結ぶ最短の線分の中心に配置する形態以外の形態とすることもできる。たとえば、図4に示すように、平面視して正方形の角部となる配置された4本の杭式改良体1における図心(中央位置)に補強改良体2を形成する態様とすることができる。あるいは、図5に示すように、平面視して千鳥に配置された多数の杭式改良体1のうちの3本の杭式改良体1の中央位置に補強改良体2を形成する態様とすることもできるし、図示はしないが、正三角形の角となる配置とすることもできる。さらには、図2、図4、図5に示す態様等を組み合わせて形成することもできる。
【0050】
次に、本発明者らは、補強改良体2の配置条件について、次の地震応答解析を行い、杭式改良体および杭間地盤からなる改良地盤のせん断変形量について検討した。解析では、図6(a)に示すように、非液状化層S12と基盤層S11とを想定した地盤モデルを用いた。この地盤モデルでは、非液状化層S12および基盤層S11に対して、杭間距離Lとなる3本の杭式改良体1を配置する例を想定した。また、図6(b)に示すように、非液状化層S12における杭間地盤に未改良部に2本の補強改良体2A,2Bを配置する例を想定した。このうち、上層補強改良体2Aは、複数の補強改良体の最上層に配置し、下層補強改良体2Bは複数の補強改良体の最下層に配置した。
【0051】
ここで、地表面から上層補強改良体2Aまでの上層領域における深度方向の厚さを上層厚h1とし、上層補強改良体2Aと下層補強改良体2Bとの間の中層領域における深度方向の厚さを中層厚h2とする。また、下層補強改良体2Bと基盤層S11との間における下層領域の深度方向の厚さ下層厚h3とする。この地盤モデルを用いて、杭式改良体3におけるせん断変形抑制効果を求めた。また、非液状化層S12の層厚は、非液状化層厚Hとしている。
【0052】
せん断変形抑制効果を評価するために、上層領域、中層領域、および下層領域におけるそれぞれのせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)を求めた。ここで、γmaxは、杭式改良体に補強改良体が追加された場合の杭間地盤に発生するせん断ひずみ値であり、γmax(無補強)は、杭式改良体のみの場合の杭間地盤に発生するせん断ひずみ値である。したがって、せん断ひずみ比とは、杭式改良された杭間地盤に補強体が入ることで抑制される地震時のせん断ひずみの低減率となる。このせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が低いほど、せん断変形抑制効果が高く、せん断変形の発生が抑制されていることを意味する。
【0053】
地震応答解析では、非液状化層厚Hを一定とし、上層厚h1、中層厚h2、下層厚h3を適宜変更しながら、上層領域、中層領域、および下層領域におけるそれぞれのせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)を求めた。その結果を、上層領域および下層領域について、それぞれ図7(a)、(b)、(c)に示す。また、地震応答解析の結果から、非液状化層厚Hに対する杭間地盤の深さ方向の厚さ(上層厚h1、中層厚h2、下層厚h3)の割合が、揺すり込み沈下抑制に効果的になるように補強改良体の配置を定めた。すなわち、補強改良体の深度方向の離隔は、ここで定める距離で設定した場合、全面改良に比べて改良体積を制限しながらも全体の耐震性能を損なわない形状であり、せん断剛性を高めて揺すり込み沈下抑制に合理的となるものである。
【0054】
ここで、揺すり込み沈下の特性に関する実験の結果について説明する。実験では、地下水位より浅部に存在する非液状化層を模擬して供試体を作成し、これらの供試体に対して地震力を想定した繰り返し荷重を与えた。供試体としては、礫の供試体と砂の供試体とを用いた。そして、繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を計測した。その結果を図8に示す。図8(a)には、供試体が礫の場合を示し、(b)には、供試体が砂の場合を示す。
【0055】
図8に示すように、供試体が礫である場合には、繰り返し荷重によって生じる一定幅のひずみ振幅が生じるが、供試体全体の堆積収縮(沈下)は一定値に収束する。供試体が砂である場合でも、供試体が礫である場合と同様に、繰り返し荷重によって一定幅のひずみ振幅が生じている。しかし、供試体が礫である場合とは異なり、繰り返し回数に伴ってひずみが累積していき、供試体全体の堆積収縮(沈下)が収束しない。
【0056】
このように、砂質地盤では、地下水位より浅部の非液状化層において、地震力が作用した際、繰り返し加重によって累積ひずみが生じ、液状化が発生しないものの、地盤沈下が生じることがある。この地盤沈下が揺すり込み沈下である。
【0057】
杭式改良体1を用いた揺すり込み沈下の抑制では、全面改良と比較して改良率が高くないことから、地盤を全面改良するほどの効果を望むことはできないが、地盤に発生する累積ひずみを許容し得る範囲に抑制することはできる。そこで、杭式改良体1によって現実的に抑制可能な累積ひずみ量と、この累積ひずみ量を実現するための改良地盤の目標性能を検討した。
【0058】
図9は、様々なせん断応力で繰り返し載荷を行った実験の結果を示すグラフである。図9に示すグラフは、所定の累積ひずみεに達するときの載荷回数(繰り返し回数)を調べた結果を示している。
【0059】
仮に、一般的に揺すり込み沈下で発生する累積ひずみを数%であるとした場合、この範囲の累積ひずみを与え得るせん断応力比SRdを約50%低減できれば、累積ひずみを1%以下に低減することができる。応力とひずみとの関係は、繰り返し載荷の初期せん断の段階においては線形関係であることから、50%の応力を低減するために、地盤のせん断応力比SRdを50%低減すればよい。図9に示すグラフでは、たとえば載荷回数が約20回のときに累積ひずみε=5%が発生する場合、せん断応力比SRd≒0.4である。ここからせん断応力比SRdを50%低減すると、累積ひずみε<1%に低減することができる。よって、地盤に作用するせん断ひずみを50%低減することにより、揺すり込み沈下のリスクを大幅に低減することができる。したがって、せん断応力比SRdが50%以下となることを目標として、杭式改良体1の間を結合する補強改良体3の配置を検討している。
【0060】
図7(a)に示すように、上層領域では、杭間地盤の上層厚h1が非液状化層厚Hの2〜3割のときに、せん断ひずみ発生比を50%程度に抑えることができる。また、図7(b)に示すように、下層領域では、杭間地盤の下層厚h3が非液状化層厚Hの3〜4割のときに、せん断ひずみ発生比を50%程度に抑えることができる。上層領域と下層領域とにおける非液状化層厚Hに対する比率の相違は、基盤層から離れる上層領域の方が、せん断変形が大きいことから、上層領域で補強改良体2を密に入れる必要があることに起因するものである。この結果から、上層厚h1と下層厚h3とが、非液状化層厚Hの2〜4割程度となるように、補強改良体2A,2Bの造成間隔を設定することが好適となることが分かる。
【0061】
また、上層補強改良体2Aと下層補強改良体2Bとの間の中層領域では、図7(c)に示すように、中層厚h2が小さくなるほど、せん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が小さくなり、せん断変形の抑制効果が高くなる。ここで、中層厚h2が非液状化層厚Hの3割以下の場合、せん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が小さくなる割合が減少し、せん断変形抑制効果の大きな増加が期待できない。このことから、中層層h2については、非液状化層厚Hの3割程度になるように、補強改良体2A,2Bを設けるのが最も合理的となる。
【0062】
次に、杭式改良体3同士の間に形成する補強改良体の数について検討する。いま、補強改良体の数をnとし、補強改良体の厚さを一律tとする。この場合、下記(1)式が成立する。
H=h1+h2+h3+n・t ・・・(1)
【0063】
ここで、中層厚h2については、中層領域が複数形成される場合には、その合計厚さとする。このとき、上層厚h1、中層厚h2、および下層厚h3をすべて非液状化層厚Hの20%とすると、(1)式は、(2)式で表すことができる。
H=0.2H+0.2H+0.2H+n・t ・・・(2)
【0064】
非液状化層厚Hは、揺すり込み対策地盤によって予め既定値となっているので、補強改良体の数および厚さはどちらか一方が決まることによって決まることとなる。たとえば、補強改良体の厚さtを0.1Hとすると、補強改良体の数nは4となる。こうして、補強改良体を好適に形成することができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。図9に示すように、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2は、上記第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1と同様、基盤層S21と非液状化層S22とを備えており、非液状化層S22には複数の杭式改良体3が造成されている。
【0066】
複数の杭式改良体3のうちの4本は、図2に示す第1の実施形態における杭式改良体1と同様、平面視して正方形の角部となる位置に配置されている。また、隣接する杭式改良体3同士の間には、高さ方向に離間して配置された4個の補強改良体4A〜4Dが形成されている。
【0067】
このうち、第1補強改良体4Aは、非液状化層S22における地表面に露出する形で形成されている。第1補強改良体4Aの下層として第2補強改良体4Bが形成され、第2補強改良体4Bの下層として第3補強改良体4Cが形成されている。さらに、第3補強改良体4Cの下層として第4補強改良体4Dが形成されている。
【0068】
ここで、第1補強改良体4A〜第4補強改良体4Dの深さ方向の厚さを比較すると、第1補強改良体4Aの厚さである第1層厚さt1がもっとも厚くされており、次に、第2補強改良体4Bの厚さである第2層厚さt2厚くされている。続いて、第3補強改良体4Cの厚さである第3層厚さt3が厚くされており、第4補強改良体4Dの厚さである第4層厚さt4がもっとも薄くされている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0069】
次に、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2の作用について説明する。本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2では、複数の杭式改良体3を補強改良体4A〜4Dによって一体化している。このため、上記第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2では、補強改良体4A〜4Dでは、配置されている位置が深いほど、その厚さが薄くされている。
【0070】
一般に、非液状化層S22では、地表面に近いほど杭式改良体3におけるせん断変形量が大きくなる。また、深さが深い位置になるほどせん断変形量は小さくなる。このように、杭式改良体3のせん断変形量が大きい地表面付近での第1補強改良体4Aが厚く、杭式改良体3のせん断変形量が小さい深い位置での第4補強改良体4Dが薄くされていることにより、固化材ミルクの消費量を抑制しながら、効率よく杭式改良体3のせん断変形を抑制し、これによって揺すり込み沈下対策地盤S2のせん断剛性を高めることができ、もって揺すり込み沈下を効果的に防止することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、杭式改良体1および補強改良体2を。いずれも高圧噴射撹拌工法によって形成しているが、他の深層混合処理工法、たとえば機械式撹拌工法などで形成することもできる。もちろん、その他の地盤改良工法を用いることもできる。
【0072】
たとえば、杭式改良体について、2軸機械式撹拌によって造成することができる。この場合、図11に示すように、小径の杭式改良体1同士の間に比較的大径の補強改良体2を形成する態様とすることができる。このような場合、補強改良体2については高圧噴射撹拌工法によって形成する。こうして、揺すり込み沈下対策地盤を造成する態様とすることもできる。
【0073】
他方、杭式改良体や補強改良体については適宜の改良径とすることができる。ここで、高圧噴射撹拌工法では、噴射ロッドの仕様や噴射圧力や固化材ミルクの注入量を調整することにより、改良径を調整することが可能である。このため、図12に示すように、小径、たとえばφ2m以下の杭式改良体1と、大径、たとえばφ5mの補強改良体2を形成する場合でも、1本の噴射ロッドによる高圧噴射撹拌工法によって造成が可能となる。もちろん、大径の杭式改良体1と小径の補強改良体2を形成する場合でも、同様に1本の噴射ロッドによる高圧噴射撹拌工法によって造成が可能となる。
【0074】
また、上記実施形態では、補強改良体2を杭式改良体1に食い込ませるようにして補強改良体2と杭式改良体1とを一体化しているが、補強改良体2を杭式改良体1に接円させて補強改良体2と杭式改良体1とを一体化させる態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では杭式改良体1および補強改良体2を形成して揺すり込み沈下対策地盤S1を造成するようにしているが、杭式改良体1などの杭などが予め造成されている場合には、その周囲に補強改良体2を形成することによって揺すり込み沈下対策地盤を造成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1,3…杭式改良体
2,4…補強改良体
4A…第1補強改良体
4B…第2補強改良体
4C…第3補強改良体
4D…第4補強改良体
4X…上層補強改良体
4Y…下層補強改良体
10…噴射ロッド
S1,S2…揺すり込み沈下対策地盤
S11,S21…基盤層
S12,S22…非液状化層
M…共同溝(地中構造物)
R…非液状化層構造物周辺領域
【技術分野】
【0001】
地下水位以浅の地中構造物の周辺等における非液状化層構造物周辺領域を備える地盤に揺すり込み沈下対策を施して造成する揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位が高く飽和状態にある液状化層では、地震時に地盤が繰り返し変形を受けることによって水圧が上昇し、地盤におけるせん断抵抗力が失われることによって液状化現象が発生する。その一方、地下水位が低く、地下水位以浅にある緩い砂地盤では、地盤の間隙中に水分が存在するものの、不飽和状態となっているため、地震時に繰り返し変形が与えられたとしても、水圧が上昇しにくくなっている。水圧が上昇しなければ、土圧が有効応力として作用することから、地盤のせん断抵抗力が保たれるので、液状化現象は発生しない。したがって、地下水位よりも浅い位置における砂地盤は、非液状化層となっている。
【0003】
このような非液状化層では、液状化現象が発生しないものの、地中構造物や建屋の周辺の領域(以下「非液状化層構造物周辺領域」という)では、揺すり込み沈下の発生が問題となっている。非液状化層構造物周辺領域における沈下の原因は主に2つに大別される。その1つは、地震によって地盤に繰り返しせん断力が生じることによる地盤の体積収縮であり、もう1つは、地盤と地中構造物との相対水平変位によるすべり沈下である。揺すり込み沈下は、構造物の周囲においてその現象が確認されており、上記2つの原因が複合して生じる沈下現象である。
【0004】
揺すり込み沈下の発生メカニズムは、液状化による地盤沈下とは明らかに異なる。このため、揺すり込み沈下対策としては、地震時に累積ひずみによる体積収縮を生じさせないように地盤のせん断剛性を高めるとともに、地盤と近接する構造物との応答差をなくし、相対水平変位を抑制するように非液状化層構造物周辺領域を改良することが必要と考えられる(非特許文献1参照)。
【0005】
地下水位以浅の非液状化層構造物周辺領域(以下「改良対象領域」ともいう)の改良形式として特化した技術は特に開示されていないが、揺すり込み沈下の発生メカニズムを考慮すると、たとえば改良対象領域の全体をセメントなどの固化材によって固化させて改良体を造成する方法がある。揺すり込み沈下が発生する主な理由は、地震発生前の初期剛性が、地震後における載荷と除荷を繰り返し受ける繰り返し荷重により低下し、地盤が軟化することで地盤の変形量が大きくなり、土粒子の再配列が生じやすくなることと考えられる。また、地盤の変形量が大きくなることにより、構造物と地盤との間の相対水平変位が大きくなって構造物と地盤との間に生じた隙間に土が滑り込むことによりさらに沈下量が増大する。そこで、地盤を全面改良して初期剛性を高めることにより、繰り返し荷重を受けた後の地盤の剛性の低下量を小さくすることができ、沈下の抑制を図ることができる。
【0006】
ところが、改良領域の全体を固化させる工法では、固化材を大量に必要としたり、工期の長期化を招いたりするなどの問題がある。また、改良領域の全体を改良する全面改良に対して、改良領域の一部を効率的に改良する部分固化を行うことも考えられる。この部分固化では、改良領域の一部に地盤改良体を造成する工法がある。この工法では、地盤の一部を固化させるのみであるので、固化材の使用量を少なくするとともに、工期の短縮を図ることができる。
【0007】
地盤改良体を造成する際には、深層混合処理工法や薬液注入工法が用いられる。このうち、薬液注入工法は、一般的には土中水を薬液に置換する工法であるため、地下水位以浅にある改良対象領域に適用することは適切でない。したがって、地盤改良体を造成する際には、深層混合処理工法を用いることが考えられる。
【0008】
深層混合処理工法には、撹拌用の重機を用いて撹拌を行う機械式撹拌工法や固化材ミルクを地盤内で高圧噴射して撹拌を行う高圧噴射撹拌工法などがある。また、地盤の一部を深層混合処理工法によって固化させる工法として、従来、次のものが知られている。たとえば、固化材ミルクを地盤と混合撹拌して地盤改良体を平面格子状に配置して造成する。この平面格子状の地盤改良体は、側面視して壁状に形成される。この地盤改良体によって地震時における地盤のせん断変形を抑制し、地下水および土の移動を抑制する(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。さらには、格子状地盤改良体を単独で造成するだけでなく、杭基礎構造と併用して用いる工法も知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−265455号公報
【特許文献2】特開2008−50787号公報
【特許文献3】特開2001−342637号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】石丸真,河井正:重力場模型振動台実験による底面が固定された剛な構造物近傍地盤の地震時沈下メカニズムの把握,地盤工学ジャーナル,Vol.4,No.4,369-380.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
揺すり込み沈下対策地盤を造成するにあたり、改良対象領域の全体を固化させる工法は、揺すり込み沈下を防止する対策として最も確実な工法ではある。ところが、改良対象領域の全体の固化材ミルクを注入して改良対象領域の全体を固化させていることから、大量の固化材ミルクを要するという問題があった。また、施工の際には、地盤内に注入する固化材ミルクの量と同量以下のスライムが地上に排出されるため、排出されたスライムの処理や運搬の手間が掛かるという問題もあった。
【0012】
一方、上記特許文献1〜3に開示された地盤の一部に格子状地盤改良体を造成する工法では、固化材ミルクや薬剤の使用量を抑制できる。さらには、固化材ミルクの使用量が少なくなるため、排出されるスライムの量も少なくなり、スライムの処理や運搬に掛かる手間を軽減することができる。
【0013】
しかし、上記特許文献1〜3に開示された格子状地盤改良体を造成する工法においては、地盤改良体をラップさせて連続的に造成することで壁体を構築している。このため、固化材ミルクのロスが生じるという問題は依然として残されているので、さらに固化材ミルクの消費量の抑制を図る余地がある。
【0014】
他方、改良対象領域の全体を固化させて全体改良体を造成する場合、構造物と全体改良体との剛性の差は小さくなるものの、未改良地盤と全体改良体との剛性の差は非常に大きくなっている。このため、全体改良体に対して地震動が壁の垂直方向に入力された場合、全体改良体と未改良地盤との揺れ方が大きく異なり、相対水平変位が大きく異なってしまう。したがって、全体改良体と未改良地盤との間に隙間が生じるなどして、沈下の進行を進めてしまう可能性があるという問題があった。
【0015】
そこで、本発明の課題は、固化材ミルクの消費量を抑制するとともに、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決した本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤は、基盤層と、基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策地盤であって、地盤における非液状化層構造物周辺領域から基盤層に到達する深さまで複数の杭式改良体が打設されて、隣接する杭式改良体同士の間に補強体が形成されており、補強体は、隣接する杭式改良体同士を繋げていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤においては、非液状化層構造物周辺領域に杭式改良体が打設されており、杭式改良体同士の間に補強体が形成されている。このため、非液状化層構造物周辺領域におけるせん断剛性が高められているので、揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。また、杭式改良体同士の間に補強体が形成されていることにより、非液状化層構造物周辺領域の全体を固化させる場合よりも、杭式改良体および補強体を形成するための固化材ミルクの消費量を抑制することができる。
【0018】
さらに、壁状配置のように杭式改良体を深度方向にすべてラップさせることなく、補強体を形成しているので、固化材ミルクのロスを小さくすることができる。他方、杭式改良体および補強体を用いる本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤では、非液状化層構造物周辺領域の全体を固化させる場合よりも、非液状化層構造物周辺領域と未改良地盤との間での地震の応答差が小さくなる。このため、非液状化層構造物周辺領域と未改良地盤との間での相対水平変位が小さくなるので、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。
【0019】
ここで、補強体は、隣接する杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されている態様とすることができる。
【0020】
このように、補強体が、隣接する杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されていることにより、杭式改良体を効率的に補強することができ、補強体を形成するための固化材ミルクの消費量をさらに抑制することができる。
【0021】
また、複数の補強体として、最上層に配置された上層補強体と、最下層に配置された下層補強体とを備え、非液状化層における上層補強体と地表面との間の厚さおよび下層補強体と基盤層との間の厚さが、それぞれ非液状化層の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、非液状化層における上層補強体と下層補強体との間の深さ方向の厚さが、非液状化層の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されている態様とすることができる。
【0022】
このように、非液状化層構造物周辺領域における上層補強体と地表面との間の厚さおよび下層補強体と基盤層との間の厚さが、それぞれ非液状化層構造物周辺領域の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、非液状化層における上層補強体と下層補強体との間の深さ方向の厚さが、非液状化層構造物周辺領域の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されていることにより、非液状化層構造物周辺領域のせん断剛性を高めることができる。その結果、揺すり込み沈下の抑制効果をさらに高いものとすることができる。
【0023】
さらに、深さ方向に離間して形成された複数の補強体は、地表面に近づくにつれて、体積が大きく形成されている態様とすることができる。
【0024】
このように、複数の補強体が、地表面に近づくにつれて、つまり、地盤に作用するせん断変形が大きい深度で、体積が大きく形成されていることにより、非液状化層構造物周辺領域のせん断剛性を高めることができる。よって、揺すり込み沈下の抑制効果をさらに高いものとすることができる。
【0025】
また、複数の杭式改良体は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置されている態様とすることができる。
【0026】
このように、複数の杭式改良体の配置位置は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置とすることができる。
【0027】
他方、上記課題を解決した本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成方法は、基盤層と、基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策を施すにあたり、地盤における非液状化層構造物周辺領域から基盤層に到達する深さまで杭式改良体を複数打設し、隣接する杭式改良体同士の間に、杭式改良体同士を繋げる補強体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る揺すり込み沈下対策地盤およびその造成方法によれば、固化ミルクの消費量を抑制するとともに、非液状化層構造物周辺領域やその周囲の地盤における揺すり込み沈下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。
【図2】揺すり込み沈下対策地盤の平面図である。
【図3】揺すり込み沈下対策地盤の造成工程を示す工程図である。
【図4】揺すり込み沈下対策地盤の他の例の平面図である。
【図5】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【図6】解析に用いた揺すり込み沈下対策地盤の側断面のモデルの図であり、(a)は、補強改良体を設けない状態、(b)は、補強改良体を設けた状態を示す図である。
【図7】(a)〜(c)とも、せん断ひずみ抑制効果を示すグラフである。
【図8】(a)は供試体が礫の場合に繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を示すグラフ、(b)は供試体が砂の場合に繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を示すグラフである。
【図9】砂分主体の供試体に対して様々なせん断応力で繰り返し載荷を行った実験の結果を示すグラフである。
【図10】第2の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。
【図11】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【図12】揺すり込み沈下対策地盤のさらに他の例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図、図2は、その平面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1は、基盤層S11を備えており、基盤層S11の上方には非液状化層S12が位置している。基盤層S11は、構造物の支持層ともなり、地震が発生した際にも液状化が起こり難い堅固な地盤である。
【0032】
また、非液状化層S12は、地下水位以浅の砂質土などからなり、地震が発生した際に揺すり込み沈下が発生しやすい地盤である。非液状化層S12には、地中構造物である共同溝Mが形成されている。共同溝Mは、図2に示すように、略水平方向に沿って形成されている。
【0033】
さらに、図1に示すように、非液状化層S12に形成された共同溝Mの周辺における非液状化層構造物周辺領域である非液状化層構造物周辺領域Rには、複数の杭式改良体1が打設されている。杭式改良体1は、上方から非液状化層S12を超えて、その下層における基盤層S11まで到達している。杭式改良体1は、基盤層S11に根入れされているのが好ましいが、その根入れ深さは、わずかでも問題ない。また、図2に示すように、複数の杭式改良体1のうちの4本は、平面視して正方形の角部となる位置に配置されている。このように、隣接する4本が平面視して正方形の角部となる位置に配置された状態で複数の杭式改良体1が打設されている。
【0034】
非液状化層S12に設けられた複数の杭式改良体1における隣接する杭式改良体1同士の間には、本発明の補強体である補強改良体2が形成されている。補強改良体2は、図1に示すように、隣接する杭式改良体1同士の間で高さ方向に離間して複数形成されている。本実施形態では、隣接する杭式改良体1同士の間の5個の補強改良体2が形成されている。
【0035】
杭式改良体1を平面視した際の径は、たとえばφ2.2mとされている。また、隣接する杭式改良体1同士の間の距離は、たとえば1mとされている。さらに、補強改良体2を平面視した際の径は、たとえばφ1.8mとされている。また、補強改良体2は、隣接する杭式改良体1における杭中心を結ぶ最短の線分の中心位置に配置されている。このため、図2に示すように、補強改良体2は、隣接する杭式改良体1同士を繋げている。
【0036】
次に、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成方法について説明する。図3は、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の造成工程を模式的に示す工程図である。揺すり込み沈下対策地盤を造成する際には、まず、非液状化層S12を貫通して基盤層S11に到達する杭式改良体1を造成し、杭式改良体1の杭間地盤に補強改良体2を造成する。以下、その手順について説明する。
【0037】
揺すり込み沈下対策地盤S1を造成する際には、杭式改良体1を造成する。杭式改良体1は、たとえば深層混合処理工法によって造成することができ、ここではいわゆる高圧噴射撹拌工法によって造成する。高圧噴射撹拌工法では、杭式改良体1を造成する位置に噴射ノズルを挿入し、噴射ノズルの側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ノズルを回転させながら徐々に引き上げていく。
【0038】
こうして、噴射ノズルを揺すり込み沈下対策地盤S1の地表位置まで引き上げることにより、杭式改良体1を造成する位置に、円筒状の固化材ミルクと地盤との混合体が形成される。この混合体における固化材ミルクが固化することにより、杭式改良体1が造成される。同様の手順によって複数の杭式改良体1を造成したら、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2を形成する。補強改良体2の形成にあたっても、杭式改良体1を造成する場合と同様に深層混合処理工法、ここでは高圧噴射撹拌工法を用いることができる。
【0039】
補強改良体2を造成する際には、図3(a)に示すように、隣接する杭式改良体1同士の中間位置に噴射ロッド10を挿入する。このときの噴射ロッド10の挿入位置は、隣接する杭式改良体1同士の間におけるそれぞれの杭中心を結ぶ線分の中心位置またはその近傍位置とされており、噴射ロッド10の先端部には、固化材ミルクの噴射口が形成されている。このとき、噴射ロッド10における噴射口の位置が、補強改良体2を形成する深さ位置となるように噴射ロッド10を挿入する。噴射ロッド10を挿入したら、杭式改良体1を造成する場合と同様に、噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。
【0040】
それから、補強改良体2の厚さ分だけ噴射ロッド10を引き上げたら、噴射ロッド10における噴射口からの固化材ミルクの噴射を一旦停止する。次に、その上方の補強改良体2を形成する位置まで噴射ロッド10を引き上げる。このため、揺すり込み沈下対策地盤S1における補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存することとなるので、その分、固化材ミルクの消費量を抑制することができる。
【0041】
その後、図3(b)に示すように、次の補強改良体2を形成する位置から、再び噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。こうして、上方における補強改良体2を順次形成していくことができる。
【0042】
さらには、図3(c)に示すように、さらに上方に噴射ロッド10を移動させて、噴射ロッド10の側方から固化材ミルクを高圧で噴射するとともに、噴射ロッド10を回転させながら徐々に引き上げていく。また、図1に示す他の杭式改良体1の間に対しても、同様の手順によって固化材ミルクの高圧噴射を行う。さらには、補強改良体2における上方の地表面には、別途補強処理を施す。この補強処理には、セメント安定処理などを用いるのが好適である。その後、噴射ノズルから噴射された固化材ミルクが固化することにより、杭式改良体1および補強改良体2が形成され、揺すり込み沈下対策地盤S1が造成される。
【0043】
以上の構成を有する本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1においては、せん断剛性が高くなっている。ところで、地震が発生すると、杭式改良体1および補強改良体2が造成されてない非液状化層における構造物周辺の領域では、揺すり込み沈下が発生することがある。揺すり込み沈下は、非液状化層におけるせん断剛性が低く、さらには地中構造物と非液状化層との間における相対水平変位の大きさに基づくすべり沈下によって生じるものである。したがって、非液状化層におけるせん断剛性を高くすることや相対水平変位を小さくすることによって揺すり込み沈下を抑制することができる。
【0044】
この点、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1においては、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2が形成され、補強改良体2によって杭式改良体1がつながっているため、隣接する杭式改良体1同士を一体化することができる。したがって、地震時のせん断変形に対する剛性を大幅に高めることができるので、せん断変形を好適に防止することができる。
【0045】
このとき、せん断剛性を高める杭式改良体1および補強改良体2では、補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存する。このため、非液状化層S12の全体を改良して改良体を形成する場合と比較して、固化材ミルクの消費量を低減させることができる。
【0046】
さらに、揺すり込み沈下対策地盤S1では、非液状化層S12における非液状化層構造物周辺領域Rに杭式改良体1および補強改良体2を造成している。このため、非液状化層構造物周辺領域Rでは、共同溝Mとの水平相対変位が未改良領域よりも小さくなっている。したがって、その分すべり沈下を抑制することができ、揺すり込み沈下の抑制に寄与することができる。さらに、揺すり込み沈下対策地盤S1の非液状化層構造物周辺領域Rにおける補強改良体2同士の間には、深さ方向に所定間隔を空けて未改良部分が残存していることから、揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層構造物周辺領域Rの周囲の未改良部分との間の水平相対変位も小さくなっている。このため、揺すり込み沈下対策地盤S1における非液状化層構造物周辺領域Rとその周囲の未改良部分との間でもすべり沈下による揺すり込み沈下の抑制に寄与することができる。
【0047】
また、隣接する杭式改良体1同士の間に補強改良体2を形成することにより、確実な施工を行うことができるとともに、隣接する杭式改良体1同士の幅が広い場合でも、隣接する杭式改良体1同士を容易に一体化することができる。
【0048】
さらには、高圧噴射撹拌工法によって固化材ミルクの噴射と噴射ロッド10の引き抜きを繰り返して行いながら杭式改良体1および補強改良体2を造成している。このため、改良範囲を部分的に調整することができる。また、部分噴射によって補強改良体2を形成することができるので、全面的な改良を施す場合よりも改良率の低減を図ることができ、固化材の消費量の低減を図ることができる。さらには、固化材ミルクの噴射を部分的に行うことにより、スライムの発生を抑制することができ、建設廃棄物の発生の抑制に寄与することができる。
【0049】
また、杭式改良体1および補強改良体2の配置については、図2に示すように、隣接する杭式改良体1の杭中心を結ぶ最短の線分の中心に配置する形態以外の形態とすることもできる。たとえば、図4に示すように、平面視して正方形の角部となる配置された4本の杭式改良体1における図心(中央位置)に補強改良体2を形成する態様とすることができる。あるいは、図5に示すように、平面視して千鳥に配置された多数の杭式改良体1のうちの3本の杭式改良体1の中央位置に補強改良体2を形成する態様とすることもできるし、図示はしないが、正三角形の角となる配置とすることもできる。さらには、図2、図4、図5に示す態様等を組み合わせて形成することもできる。
【0050】
次に、本発明者らは、補強改良体2の配置条件について、次の地震応答解析を行い、杭式改良体および杭間地盤からなる改良地盤のせん断変形量について検討した。解析では、図6(a)に示すように、非液状化層S12と基盤層S11とを想定した地盤モデルを用いた。この地盤モデルでは、非液状化層S12および基盤層S11に対して、杭間距離Lとなる3本の杭式改良体1を配置する例を想定した。また、図6(b)に示すように、非液状化層S12における杭間地盤に未改良部に2本の補強改良体2A,2Bを配置する例を想定した。このうち、上層補強改良体2Aは、複数の補強改良体の最上層に配置し、下層補強改良体2Bは複数の補強改良体の最下層に配置した。
【0051】
ここで、地表面から上層補強改良体2Aまでの上層領域における深度方向の厚さを上層厚h1とし、上層補強改良体2Aと下層補強改良体2Bとの間の中層領域における深度方向の厚さを中層厚h2とする。また、下層補強改良体2Bと基盤層S11との間における下層領域の深度方向の厚さ下層厚h3とする。この地盤モデルを用いて、杭式改良体3におけるせん断変形抑制効果を求めた。また、非液状化層S12の層厚は、非液状化層厚Hとしている。
【0052】
せん断変形抑制効果を評価するために、上層領域、中層領域、および下層領域におけるそれぞれのせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)を求めた。ここで、γmaxは、杭式改良体に補強改良体が追加された場合の杭間地盤に発生するせん断ひずみ値であり、γmax(無補強)は、杭式改良体のみの場合の杭間地盤に発生するせん断ひずみ値である。したがって、せん断ひずみ比とは、杭式改良された杭間地盤に補強体が入ることで抑制される地震時のせん断ひずみの低減率となる。このせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が低いほど、せん断変形抑制効果が高く、せん断変形の発生が抑制されていることを意味する。
【0053】
地震応答解析では、非液状化層厚Hを一定とし、上層厚h1、中層厚h2、下層厚h3を適宜変更しながら、上層領域、中層領域、および下層領域におけるそれぞれのせん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)を求めた。その結果を、上層領域および下層領域について、それぞれ図7(a)、(b)、(c)に示す。また、地震応答解析の結果から、非液状化層厚Hに対する杭間地盤の深さ方向の厚さ(上層厚h1、中層厚h2、下層厚h3)の割合が、揺すり込み沈下抑制に効果的になるように補強改良体の配置を定めた。すなわち、補強改良体の深度方向の離隔は、ここで定める距離で設定した場合、全面改良に比べて改良体積を制限しながらも全体の耐震性能を損なわない形状であり、せん断剛性を高めて揺すり込み沈下抑制に合理的となるものである。
【0054】
ここで、揺すり込み沈下の特性に関する実験の結果について説明する。実験では、地下水位より浅部に存在する非液状化層を模擬して供試体を作成し、これらの供試体に対して地震力を想定した繰り返し荷重を与えた。供試体としては、礫の供試体と砂の供試体とを用いた。そして、繰り返し荷重を与えた際の軸ひずみの時間変化を計測した。その結果を図8に示す。図8(a)には、供試体が礫の場合を示し、(b)には、供試体が砂の場合を示す。
【0055】
図8に示すように、供試体が礫である場合には、繰り返し荷重によって生じる一定幅のひずみ振幅が生じるが、供試体全体の堆積収縮(沈下)は一定値に収束する。供試体が砂である場合でも、供試体が礫である場合と同様に、繰り返し荷重によって一定幅のひずみ振幅が生じている。しかし、供試体が礫である場合とは異なり、繰り返し回数に伴ってひずみが累積していき、供試体全体の堆積収縮(沈下)が収束しない。
【0056】
このように、砂質地盤では、地下水位より浅部の非液状化層において、地震力が作用した際、繰り返し加重によって累積ひずみが生じ、液状化が発生しないものの、地盤沈下が生じることがある。この地盤沈下が揺すり込み沈下である。
【0057】
杭式改良体1を用いた揺すり込み沈下の抑制では、全面改良と比較して改良率が高くないことから、地盤を全面改良するほどの効果を望むことはできないが、地盤に発生する累積ひずみを許容し得る範囲に抑制することはできる。そこで、杭式改良体1によって現実的に抑制可能な累積ひずみ量と、この累積ひずみ量を実現するための改良地盤の目標性能を検討した。
【0058】
図9は、様々なせん断応力で繰り返し載荷を行った実験の結果を示すグラフである。図9に示すグラフは、所定の累積ひずみεに達するときの載荷回数(繰り返し回数)を調べた結果を示している。
【0059】
仮に、一般的に揺すり込み沈下で発生する累積ひずみを数%であるとした場合、この範囲の累積ひずみを与え得るせん断応力比SRdを約50%低減できれば、累積ひずみを1%以下に低減することができる。応力とひずみとの関係は、繰り返し載荷の初期せん断の段階においては線形関係であることから、50%の応力を低減するために、地盤のせん断応力比SRdを50%低減すればよい。図9に示すグラフでは、たとえば載荷回数が約20回のときに累積ひずみε=5%が発生する場合、せん断応力比SRd≒0.4である。ここからせん断応力比SRdを50%低減すると、累積ひずみε<1%に低減することができる。よって、地盤に作用するせん断ひずみを50%低減することにより、揺すり込み沈下のリスクを大幅に低減することができる。したがって、せん断応力比SRdが50%以下となることを目標として、杭式改良体1の間を結合する補強改良体3の配置を検討している。
【0060】
図7(a)に示すように、上層領域では、杭間地盤の上層厚h1が非液状化層厚Hの2〜3割のときに、せん断ひずみ発生比を50%程度に抑えることができる。また、図7(b)に示すように、下層領域では、杭間地盤の下層厚h3が非液状化層厚Hの3〜4割のときに、せん断ひずみ発生比を50%程度に抑えることができる。上層領域と下層領域とにおける非液状化層厚Hに対する比率の相違は、基盤層から離れる上層領域の方が、せん断変形が大きいことから、上層領域で補強改良体2を密に入れる必要があることに起因するものである。この結果から、上層厚h1と下層厚h3とが、非液状化層厚Hの2〜4割程度となるように、補強改良体2A,2Bの造成間隔を設定することが好適となることが分かる。
【0061】
また、上層補強改良体2Aと下層補強改良体2Bとの間の中層領域では、図7(c)に示すように、中層厚h2が小さくなるほど、せん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が小さくなり、せん断変形の抑制効果が高くなる。ここで、中層厚h2が非液状化層厚Hの3割以下の場合、せん断ひずみ比γmax/γmax(無補強)が小さくなる割合が減少し、せん断変形抑制効果の大きな増加が期待できない。このことから、中層層h2については、非液状化層厚Hの3割程度になるように、補強改良体2A,2Bを設けるのが最も合理的となる。
【0062】
次に、杭式改良体3同士の間に形成する補強改良体の数について検討する。いま、補強改良体の数をnとし、補強改良体の厚さを一律tとする。この場合、下記(1)式が成立する。
H=h1+h2+h3+n・t ・・・(1)
【0063】
ここで、中層厚h2については、中層領域が複数形成される場合には、その合計厚さとする。このとき、上層厚h1、中層厚h2、および下層厚h3をすべて非液状化層厚Hの20%とすると、(1)式は、(2)式で表すことができる。
H=0.2H+0.2H+0.2H+n・t ・・・(2)
【0064】
非液状化層厚Hは、揺すり込み対策地盤によって予め既定値となっているので、補強改良体の数および厚さはどちらか一方が決まることによって決まることとなる。たとえば、補強改良体の厚さtを0.1Hとすると、補強改良体の数nは4となる。こうして、補強改良体を好適に形成することができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤の側断面図である。図9に示すように、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2は、上記第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1と同様、基盤層S21と非液状化層S22とを備えており、非液状化層S22には複数の杭式改良体3が造成されている。
【0066】
複数の杭式改良体3のうちの4本は、図2に示す第1の実施形態における杭式改良体1と同様、平面視して正方形の角部となる位置に配置されている。また、隣接する杭式改良体3同士の間には、高さ方向に離間して配置された4個の補強改良体4A〜4Dが形成されている。
【0067】
このうち、第1補強改良体4Aは、非液状化層S22における地表面に露出する形で形成されている。第1補強改良体4Aの下層として第2補強改良体4Bが形成され、第2補強改良体4Bの下層として第3補強改良体4Cが形成されている。さらに、第3補強改良体4Cの下層として第4補強改良体4Dが形成されている。
【0068】
ここで、第1補強改良体4A〜第4補強改良体4Dの深さ方向の厚さを比較すると、第1補強改良体4Aの厚さである第1層厚さt1がもっとも厚くされており、次に、第2補強改良体4Bの厚さである第2層厚さt2厚くされている。続いて、第3補強改良体4Cの厚さである第3層厚さt3が厚くされており、第4補強改良体4Dの厚さである第4層厚さt4がもっとも薄くされている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0069】
次に、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2の作用について説明する。本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2では、複数の杭式改良体3を補強改良体4A〜4Dによって一体化している。このため、上記第1の実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S1と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態に係る揺すり込み沈下対策地盤S2では、補強改良体4A〜4Dでは、配置されている位置が深いほど、その厚さが薄くされている。
【0070】
一般に、非液状化層S22では、地表面に近いほど杭式改良体3におけるせん断変形量が大きくなる。また、深さが深い位置になるほどせん断変形量は小さくなる。このように、杭式改良体3のせん断変形量が大きい地表面付近での第1補強改良体4Aが厚く、杭式改良体3のせん断変形量が小さい深い位置での第4補強改良体4Dが薄くされていることにより、固化材ミルクの消費量を抑制しながら、効率よく杭式改良体3のせん断変形を抑制し、これによって揺すり込み沈下対策地盤S2のせん断剛性を高めることができ、もって揺すり込み沈下を効果的に防止することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、杭式改良体1および補強改良体2を。いずれも高圧噴射撹拌工法によって形成しているが、他の深層混合処理工法、たとえば機械式撹拌工法などで形成することもできる。もちろん、その他の地盤改良工法を用いることもできる。
【0072】
たとえば、杭式改良体について、2軸機械式撹拌によって造成することができる。この場合、図11に示すように、小径の杭式改良体1同士の間に比較的大径の補強改良体2を形成する態様とすることができる。このような場合、補強改良体2については高圧噴射撹拌工法によって形成する。こうして、揺すり込み沈下対策地盤を造成する態様とすることもできる。
【0073】
他方、杭式改良体や補強改良体については適宜の改良径とすることができる。ここで、高圧噴射撹拌工法では、噴射ロッドの仕様や噴射圧力や固化材ミルクの注入量を調整することにより、改良径を調整することが可能である。このため、図12に示すように、小径、たとえばφ2m以下の杭式改良体1と、大径、たとえばφ5mの補強改良体2を形成する場合でも、1本の噴射ロッドによる高圧噴射撹拌工法によって造成が可能となる。もちろん、大径の杭式改良体1と小径の補強改良体2を形成する場合でも、同様に1本の噴射ロッドによる高圧噴射撹拌工法によって造成が可能となる。
【0074】
また、上記実施形態では、補強改良体2を杭式改良体1に食い込ませるようにして補強改良体2と杭式改良体1とを一体化しているが、補強改良体2を杭式改良体1に接円させて補強改良体2と杭式改良体1とを一体化させる態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では杭式改良体1および補強改良体2を形成して揺すり込み沈下対策地盤S1を造成するようにしているが、杭式改良体1などの杭などが予め造成されている場合には、その周囲に補強改良体2を形成することによって揺すり込み沈下対策地盤を造成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1,3…杭式改良体
2,4…補強改良体
4A…第1補強改良体
4B…第2補強改良体
4C…第3補強改良体
4D…第4補強改良体
4X…上層補強改良体
4Y…下層補強改良体
10…噴射ロッド
S1,S2…揺すり込み沈下対策地盤
S11,S21…基盤層
S12,S22…非液状化層
M…共同溝(地中構造物)
R…非液状化層構造物周辺領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤層と、前記基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策地盤であって、
前記地盤における前記非液状化層構造物周辺領域から前記基盤層に到達する深さまで複数の杭式改良体が打設されて、隣接する杭式改良体同士の間に補強体が形成されており、
前記補強体は、隣接する前記杭式改良体同士を繋げていることを特徴とする揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項2】
前記補強体は、隣接する前記杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されている請求項1に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項3】
前記複数の補強体として、最上層に配置された上層補強体と、最下層に配置された下層補強体とを備え、
前記非液状化層における前記上層補強体と地表面との間の厚さおよび前記下層補強体と前記基盤層との間の厚さが、それぞれ前記非液状化層の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、前記非液状化層における前記上層補強体と前記下層補強体との間の深さ方向の厚さが、前記非液状化層の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されている請求項2に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項4】
前記深さ方向に離間して形成された複数の前記補強体は、地表面に近づくにつれて、体積が大きく形成されている請求項2または請求項3に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項5】
複数の前記杭式改良体は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項6】
基盤層と、前記基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策を施すにあたり、
前記地盤における前記非液状化層構造物周辺領域から前記基盤層に到達する深さまで杭式改良体を複数打設し、
隣接する前記杭式改良体同士の間に、前記杭式改良体同士を繋げる補強体を形成することを特徴とする揺すり込み沈下対策地盤の造成方法。
【請求項1】
基盤層と、前記基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策地盤であって、
前記地盤における前記非液状化層構造物周辺領域から前記基盤層に到達する深さまで複数の杭式改良体が打設されて、隣接する杭式改良体同士の間に補強体が形成されており、
前記補強体は、隣接する前記杭式改良体同士を繋げていることを特徴とする揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項2】
前記補強体は、隣接する前記杭式改良体同士の間で、深さ方向に離間して複数形成されている請求項1に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項3】
前記複数の補強体として、最上層に配置された上層補強体と、最下層に配置された下層補強体とを備え、
前記非液状化層における前記上層補強体と地表面との間の厚さおよび前記下層補強体と前記基盤層との間の厚さが、それぞれ前記非液状化層の深さ方向の厚さの20%〜40%の距離に設定され、前記非液状化層における前記上層補強体と前記下層補強体との間の深さ方向の厚さが、前記非液状化層の深さ方向の厚さの30%以下の距離に設定されている請求項2に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項4】
前記深さ方向に離間して形成された複数の前記補強体は、地表面に近づくにつれて、体積が大きく形成されている請求項2または請求項3に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項5】
複数の前記杭式改良体は、それぞれ平面視して正方形もしくは正三角形の角部に配置され、またはそれぞれ平面視して千鳥に配置されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の揺すり込み沈下対策地盤。
【請求項6】
基盤層と、前記基盤層の上層における地下水位以浅の非液状化層に含まれ、地中構造物の周辺における非液状化層構造物周辺領域とを備える地盤に揺すり込み沈下対策が施された揺すり込み沈下対策を施すにあたり、
前記地盤における前記非液状化層構造物周辺領域から前記基盤層に到達する深さまで杭式改良体を複数打設し、
隣接する前記杭式改良体同士の間に、前記杭式改良体同士を繋げる補強体を形成することを特徴とする揺すり込み沈下対策地盤の造成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−144954(P2012−144954A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6198(P2011−6198)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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