説明

揺動抑制装置

【課題】ベース体に相対変位可能に支持された可動体の揺動を、これらの相対変位速度が小さい場合でも抑制できる揺動抑制装置を提供する。
【解決手段】揺動抑制装置は、可動体1、ベース体2、イナーシャ・マス9および駆動メカニズム10を有する。イナーシャ・マス9は可動体1に慣性力を作用する。駆動メカニズム10は、ベース体2とイナーシャ・マス9を機械的に連結し、可動体1とベース体2との相対変位量に応じて移動させて相対変位が慣性力により抑制されるようにイナーシャ・マス9を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータ・ビークルなどの揺動を抑制する揺動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の揺動抑制装置としては、自動車に使用され、車体と車輪の間にスプリングとダンパーとを並列配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、別の従来の揺動抑制装置としては、船体に設けた各水中翼の左右端にそれぞれ独立駆動される補助翼を取り付け、高度センサ、慣性センサ、翼角センサを用いて電気的に補助翼の挙動を制御するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2005−126037号公報
【特許文献2】特開平06−286687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の揺動抑制装置にあっては、スプリングの固有値やダンパーの特性値を決めるのが難しい場合がある上、ウォータ・ビークルのように上下変位は大きいものの相対変位速度が小さい場合には十分なダンピング・フォースが得られないという問題がある。
一方、特許文献2に記載の従来の揺動抑制装置にあっては、センサ、マイクロ・コンピュータ、アクチュエータなどの電子制御装置が必要なため、非常に高価になるだけでなく、補助翼に対する水の流れが小さいと必要なコントロール力が得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、ベース体に揺動可能に支持された可動体の揺動を、これらの相対変位速度が小さい場合でも抑制できるとともに、より安価に製造可能な揺動抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため本発明による揺動抑制装置は、ベース体と、このベース体に対し揺動可能に支持した可動体と、この可動体に慣性力を作用可能なイナーシャ・マスと、ベース体とイナーシャ・マスを機械的に連結し、可動体とベース体との相対変位量に応じて移動させて相対変位が慣性力により抑制されるようにイナーシャ・マスを駆動する駆動メカニズムとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の揺動抑制装置にあっては、可動体がベース体に対し揺動した場合、これらの相対変位量に応じて駆動メカニズムがイナーシャ・マスを機械的に移動させることで、その慣性力を可動体に作用させ、揺動を抑制する。イナーシャ・マスの機械的移動による慣性力を利用するので、ベース体と可動体の相対変位速度が小さい場合でも可動体の揺動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明にかかる実施例1の揺動抑制装置の側面図であって、(a)は可動体とベース体とが中立位置にある状態を、また(b)はこれらが中立位置からさらに離間した状態を、また(c)はこれらが中立位置からさらに近付いた状態を、それぞれ示す図である。
【図2】 本発明にかかる実施例2の揺動抑制装置の正面図であって、(a)は可動体とベース体とが中立位置にある状態を、また(b)はこれらが中立位置から同図中時計回り方向に揺動した状態を、また(c)はこれらが中立位置からさらに反時計回り方向へ揺動した状態を、それぞれ示す図である。
【図3】 本発明にかかる実施例3の揺動抑制装置の側面図である。
【図4】 実施例3の一部を拡大した断面平面図である。
【図5】 本発明にかかる実施例4の揺動抑制装置の側面図である。
【図6】 本発明にかかる実施例5の揺動抑制装置の側面図である。
【図7】 本発明にかかる実施例6の揺動抑制装置の側面図である。
【図8】 本発明にかかる実施例7の揺動抑制装置の正面図である。
【図9】 本発明にかかる実施例8の揺動抑制装置を示す図であって、(a)はその全体を示す平面図、また(b)は(a)においてx−x線に沿ってみた一部側面図である。
【図10】 本発明にかかる実施例9の揺動抑制装置を示す図であって、(a)はその全体を示す平面図、また(b)は(a)においてx−x線に沿ってみた一部側面図である。
【図11】 本発明にかかる実施例10の揺動抑制装置を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
なお、以下の実施例で同じ構成部分については同じ番号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0009】
図1(a)〜(c)に示すように、本実施例1の揺動抑制装置では、可動体1を、地上や海上などに置いたベース体2に複数のスプリング3を介して相対変位可能に支持し、後述のメカニズムにより可動体1の揺動を抑制する。本実施例では、たとえば可動体1はキャビンや荷物室からなる直方体形状に形成する一方、ベース体2は四角の平板状に形成して、4個のスプリング3で可動体1を弾性支持する。
【0010】
ベース体2の一方の側には、ベース体2から上方へ伸びるピラー4を取り付け、その頂上部には第1ピボット7を設ける。
一方、可動体1の図中右側側面端部には第2ピボット6を介して連結リンク5の一方の端部を取り付け、その他端部を第1ピボット7に取り付けて、可動体1を第1ピボット回りに連結リンク5を介して揺動可能とすることで、可動体1がベース体2に対し相対変位可能としてある。
【0011】
連結リンク5の他端部には、ビーム8の中央部を、ビーム8が連結リンク5と角度をなすようにして、一体的に固着する。ビーム8の中央部も第1ピボット7に取り付けて、ビーム8をピラー4に対し揺動可能とする。
【0012】
ビーム8の一端部には第1イナーシャ・マス9aを、またビーム8の他端部には第2イナーシャ・マス9bを固着する。第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マスとは、同じ質量の重量ブロックで構成し、かつそれぞれの第1ピボット7からの距離も同じとなるように設定する。したがって、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9b自体は、可動体1が揺動していない静的位置にあるときは、揺動トルクをスプリング3に作用することはない。なお、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとは、本発明のイナーシャ・マスに相当する。また、ピラー4、連結リンク5、第1ピボット7、第2ピボット6は、本発明の駆動メカニズム10を構成する。
【0013】
以上のように構成した実施例1の揺動抑制装置の作用につき、以下に説明する。
図1(a)は、可動体1にもベース体2にも外力が作用しておらず、可動体1が中立状態の静的位置にある場合を示す。この状態では、可動体1はスプリング3に荷重を均等に作用させるように設定している限り可動体1はベース体2に対し平行となって、水平に維持されている。
【0014】
これに対し、可動体1とベース体2とのうちの少なくとも一方に外力が加わって可動体1がベース体2に対し上下動する場合が生じる。この場合の挙動を次に説明する。
【0015】
図1(b)は、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から図中上方向に移動してこれらが離間するように外力が作用した結果、スプリング3が伸びた状態を示す。このとき、可動体1がベース体2に対し上方側へと変位しているので、可動体1に第2ピボット6を介して取り付けた連結リンク5が、ベース体2のピラー4の第1ピボット7を中心点として時計回り方向に揺動する。連結リンク5のこの揺動は、連結リンク5に固着したビーム8を第1ピボット7回りに矢印R1で示す時計回り方向へ回転させる。
【0016】
ビーム8が時計回り方向に回転すると、ビーム8の両端部に取り付けた第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとによる慣性力が、ビーム8、連結リンク5、可動体1を介してスプリング3を押し縮める方向に作用する。この結果、可動体1のベース体2に対する離間運動は抑制され、可動体1は中立位置へ復帰しようとする。
【0017】
図1(c)は、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から下方向に移動してこれらが近づくように外力が作用した結果、スプリング3が縮んだ状態を示す。このとき、可動体1がベース体2に対し下方側へと変位しているので、可動体1に第2ピボット6を介して取り付けた連結リンク5が、ベース体2のピラー4の第1ピボット7を中心点として反時計回り方向に揺動する。連結リンク5のこの揺動は、連結リンク5に固着したビーム8を第1ピボット7回りに矢印R2で示す時計回り方向へ回転させる。
【0018】
ビーム8が反時計回り方向に回転すると、ビーム8の両端部に取り付けた第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとによる慣性力が、ビーム8、連結リンク5、可動体1を介してスプリング3を伸ばす方向に作用する。この結果、可動体1のベース体2に対する近接運動は抑制され、可動体1は中立位置へ復帰しようとすることになる。
【0019】
なお、可動体1がベース体2に対し時計回り方向あるいは反時計回り方向へ傾斜するように外力が働いた場合も、上記同様に、可動体1の変位が連結リンク5の第1ピボット7回りの揺動を生じさせる結果、連結リンク5に固着したビーム8が揺動し、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとにより生じる慣性力がスプリング3に作用する。これにより、可動体1はこの揺動が抑制され、中立状態へ復帰するようになる。
【0020】
以上のように、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとによる慣性力は、可動体1の揺動の大きさを減少させるとともに、揺動の周期を適当な長さに伸ばすことが可能となる。この揺動周期は、イナーシャ・マス9(第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9b)の質量の大きさと、可動体1およびベース体2の相対変位とイナーシャ・マス9の変位との比と、を選ぶことでコントロールすることができる。
【0021】
上記実施例1の揺動抑制装置の効果につき、以下に説明する。
実施例1の揺動装置にあっては、可動体1の揺動に応じて変位するイナーシャ・マス9を用いることで、可動体1のベース体2に対する相対変位、揺動を安価な装置で、抑制することができる。この揺動抑制は可動体1とベース体2との相対変位速度が小さい場合でも抑制できる。また、可動体1の固有振動数をゆっくりしたものに変えることが可能である。したがって、可動体1に人が乗る場合には快適な乗り心地が確保され、可動体1に荷物が載せられる場合には荷崩れしにくく、荷物の破損等も防ぎやすくなる。
【実施例2】
【0022】
次に、実施例2の揺動抑制装置につき以下に説明する。
実施例2の揺動抑制装置では、図2(a)〜(c)に示すように、ベース体1の前後端にそれぞれピラー4を取り付け、これらの頂上部には第3ピボット20を設ける(図2(a)〜(c)は正面図なので後方のピラー4と第3ピボット20は前方のピラー4と第3ピボット20に隠れて見えない)。
【0023】
前後の第3ピボット20には、可動体1の前後面の幅方向中央で高さ方向の高い位置において、可動体1が前後の第3ピボット20を結ぶ揺動軸回りに揺動可能に取り付ける。可動体1の下側には可動体1より幅・長さが大きい底部1aを設け、この底部の四隅とベース体2との間に4本のスプリング3を配置して可動体1を弾性支持する。
【0024】
ピラー4の第3ピボット20の下方部分には、第4ピボット22を設け、第1揺動リンク21の上端部を揺動可能に取り付ける。第1揺動リンク21の下端部にはビーム8の中央部を、ビーム8と第1揺動リンク21とが角度をなすようにして互いに一体的に固着する。ビーム8の両端部には、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マスをそれぞれ取り付ける。
【0025】
可動体1の前後面の下方には、第5ピボット24を介して第2揺動リンク23の一端部を取り付けるとともに、第2揺動リンク23の他端部を、第6ピボット25を介してビーム8の中央部および第1揺動リンク21の下端部に取り付ける。したがって、第1揺動リンク21と第2揺動リンク23とは、第6ピボット25で連結されてL字状形状をなし、可動体1の第3ピボット20回りの揺動に応じて第1揺動リンク21と第2揺動リンク23とがなす角度を変えるようになる。第1揺動リンク21、第2揺動リンク23、第4ピボット22、第5ピボット24、および第6ピボット25は、本発明の駆動メカニズム11を構成する。
【0026】
以上のように構成した実施例2の揺動抑制装置の作用につき、以下に説明する。
図2(a)は、可動体1にもベース体2にも外力が作用しておらず、可動体1が中立状態の静的位置にある場合を示す。この状態では、可動体1はスプリング3に荷重を均等に作用させるように設定している限り可動体1はベース体2に対し平行となって、水平に維持されている。
【0027】
これに対し、可動体1とベース体2とのうちの少なくとも一方に外力が加わって可動体1がベース体2に対し上下動する場合が生じる。この場合の挙動を次に説明する。
【0028】
図2(b)は、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から前後の第3ピボット20を結ぶ揺動軸回りに矢印R3で示す時計回り方向へ揺動するように外力が作用した結果、同図中左側のスプリング3が伸び、右側のスプリング3が縮んだ状態を示す。このとき、可動体1に取り付けた第5ピボット24がピラー4に対し離間する方向(中立位置より同図中左側かつ上方側)へ変位しているので、第5ピボット24に取り付けた第2揺動リンク23が、第6ピボット25を介して第1揺動リンク21を第4ピボット22回りに時計回り方向へ揺動させる(したがって、第1揺動リンク21と第2揺動リンク23とがなす角度は増加する)。
【0029】
この第1揺動リンク21の時計回り方向への揺動により、第1揺動リンク21に固着したビーム8は、第6ピボット25回りに時計回り方向R3へ揺動する。この結果、ビーム8の両端部に設けた第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとによる慣性力が、ビーム8、第2揺動リンク23、第5ピボット24を介して可動体1に、前後の第3ピボット20を結ぶ軸を揺動軸とする反時計回り方向へ作用する。これにより、左側のスプリング3は縮む方向に、また右側のスプリング3は伸びる方向に慣性力が作用して、可動体1を図2(a)に示す中立位置に復帰させるようにする。
【0030】
図2(c)は、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から前後の第3ピボット20を結ぶ揺動軸回りに矢印R4で示す反時計回り方向へ揺動するように外力が作用した結果、同図中左側のスプリング3が縮み、右側のスプリング3が伸びた状態を示す。このとき、可動体1に取り付けた第5ピボット24がピラー4に対し近接する方向(中立位置より同図中右側かつ下方側)へ変位しているので、第5ピボット24に取り付けた第2揺動リンク23が、第6ピボット25を介して第1揺動リンク21を第4ピボット22回りに反時計回り方向へ揺動させる(したがって、第1揺動リンク21と第2揺動リンク23とがなす角度は減少する)。
【0031】
この第1揺動リンク21の反時計回り方向への揺動により、第1揺動リンク21に固着したビーム8は、第6ピボット25回りに反時計回り方向R4へ揺動する。この結果、ビーム8の両端部に設けた第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとによる慣性力が、ビーム8、第2揺動リンク23、第5ピボット24を介して可動体1に、前後の第3ピボット20を結ぶ軸を揺動軸とする時計回り方向へ作用する。これにより、左側のスプリング3は伸びる方向に、また右側のスプリング3は縮む方向に慣性力が作用して、可動体1を図2(a)に示す中立位置に復帰させるようにする。
【0032】
以上の説明から分かるように、実施例2の揺動抑制装置は、実施例1の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
すなわち、実施例1の場合に比べて、実施例2の揺動抑制装置では、可動体1のベース体2に対する揺動角・揺動速度を、第3ピボット20、第4ピボット22、第5ピボット24、第6ピボット25の位置関係で決まるレバー比に応じてより増大させてビーム8を揺動させ、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを揺動させることが可能となる。これにより同じ慣性力の大きさを得るのに、その増大分、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bの質量を小さくすることができる。ただし、実施例2の揺動抑制装置では、実施例1の場合と異なり、可動体1がベース体2に対し平行な状態を保ったままの上下動運動自体は不可能であり、あくまでも可動体1の第3ピボット20の揺動軸回わりの揺動運動の抑制を行うことになる。
【実施例3】
【0033】
次に、実施例3の揺動抑制装置につき以下に説明する。
実施例3の揺動抑制装置では、図3および図4に示すように、ベース体2の図中右端部から上方へ突出させたピラー4の上方には、可動体1側に歯をむけたラック4aを設ける。ラック4aには、ピニオン30を噛み合わせ、このピニオン30がラック4aに沿って上下動可能とする。ピニオン30にはその回転中心を通るシャフト30aを設け、シャフト30aを、リテーナ34のコ字状部材37の両側部分に軸受35で回転可能に支持する。シャフト30aの両端側部分は、コ字状部材37の両側部分のそれぞれの外側に配置した一対のブラケット33に軸受36で回転自在に支持する。なお、リテーナ34は、コ字状部材37に支持されてラック4aの背面に当接しながら回転することで上下動可能なローラ36を有する。このローラ36は、ラック4aとピニオン30との噛み合いを良好に保つもので、例えばゴム製とする。
【0034】
ピニオン30の一方の端部にはハブ部30bを形成してあり、ホイール31のハブ部31bを図示しないボルトで取り付ける。ホイール31の内周面とハブ部31bとの間は3本のスポーク部31aで連結し、ホイール31とピニオン30が一体回転するように構成する。なお、ホイール31は本発明のイナーシャ・マスに相当する。
【0035】
一方、ブラケット33のピニオン30とは反対側の端部はそれぞれ可動体1の一方の面に固着する。ラック部4a、ピニオン30、リテーナ34、ブラケット33は、本発明の駆動メカニズム12を構成する。
その他の構成は実施例1と同様に構成する。
【0036】
上記のように構成した実施例3の揺動抑制装置の作用につき、以下に説明する。
図3は、可動体1にもベース体2にも外力が作用しておらず、可動体1が中立状態の静的位置にある場合を示す。この状態では、可動体1はスプリング3に荷重を均等に作用させるように設定している限り可動体1はベース体2に対し平行となって、水平に維持されている。
【0037】
一方、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から上方向に移動してこれらが離間するように外力が作用し、スプリング3が伸びた状態をあるとき、可動体1がベース体2に対し上方側へと変位しているので、可動体1にブラケット33を介して取り付けたピニオン30が、ベース体2のピラー4のラック4aに沿って上方移動する。このピニオン30の上方移動は、ピニオン30の図中時計回り方向の回転により生じるので、このピニオン30の回転はシャフト30a、ハブ部30b、31b、スポーク部31aを介してホイールを時計回り方向へ回転させる。
【0038】
ホイール1が回転させられると、その慣性力が、スポーク部31a、ハブ部30b、31b、シャフト30a、ピニオン30、ブラケット33を介して可動体1に、これを下方へ押しスプリング3を縮めるように作用し、可動体1を中立位置へと復帰させようとする。
【0039】
他方、可動体1がベース体2に対して上記中立状態の位置から下方向に移動してこれらが近接するように外力が作用し、スプリング3が縮んだ状態をあるとき、可動体1がベース体2に対し下方側へと変位しているので、可動体1にブラケット33を介して取り付けたピニオン30が、ベース体2のピラー4のラック4aに沿って下方移動する。このピニオン30の下方移動は、ピニオン30の図中反時計回り方向の回転により生じるので、このピニオン30の回転はシャフト30a、ハブ部30b、31b、スポーク部31aを介してホイールを反時計回り方向へ回転させる。
【0040】
ホイール1が回転させられると、その慣性力が、スポーク部31a、ハブ部30b、31b、シャフト30a、ピニオン30、ブラケット33を介して可動体1に、これを上方へ押しスプリング3を伸びるように作用し、可動体1を中立位置へと復帰させようとする。
【0041】
また、左側と右側とのスプリング3のうち一方が縮み他方が伸びるように外力が作用して可動体1がベース体2に対し揺動した場合にあっても、可動体1の姿勢・変位に応じてピニオン30が回転し、ホイール31を回転させる。この結果、ホイール31の慣性力により可動体1は中立位置に復帰するようにその揺動が抑制される。
【0042】
以上の説明から分かるように、実施例3の揺動抑制装置においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例4】
【0043】
図5に示すように、実施例4の揺動抑制装置は、実施例3の揺動抑制装置において、ホイール31の代わりに第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bとを用い、スポーク部31aの代わりにビーム8を用いる。ラック部4a、ピニオン30、リテーナ34、ブラケット33は、本発明の駆動メカニズム13を構成する。
その他の構成部分は実施例3と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0044】
したがって、実施例4の揺動抑制装置にあっても、実施例3の場合と同様に作用する結果、実施例1および実施例3と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0045】
図6は実施例5の揺動抑制装置を示し、ウォータ・ビークルに適用してそのピッチング方向の揺動を抑制するようにしたものである。
実施例5の揺動抑制装置では、可動体としてのキャビン41を、ベース体としてのフロート42に前方の2本のスプリング3fと後方の2本のスプリング3rで弾性支持する。なお、図中、Wは海面を示す。
【0046】
キャビン41の前方位置でフロート42の前方部分の上面からは、前方ピラー4fを左右でピボット4Aを介して上方へ伸ばすとともに、キャビン41の後方位置でフロート42の後方部分の方面からは、左右の後方ピラー4rを左右で上方に伸ばす。前方ピラー4fには実施例1と同様の構成からなる揺動抑制装置10Aを設け、後方ピラー4rには実施例1と同様の構成からなる揺動抑制装置10Bを設ける。これら揺動抑制装置10A、10Bの具体的構成につき、以下に説明する。
【0047】
前方左右のピラー4fの上方部分には第1前方側ピボット7fをそれぞれ設け、この回りに左右のビーム8を回転自在に取り付ける。また、ビーム8の両端部には第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを固着する。これらビーム8、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bとは、前後方向に延びるピッチ面上で揺動するように配置する。ビーム8の揺動中心部分にはこれと角度をなして前後方向に延びる前方側連結リンク5fの一端部を固着し、その他端部をキャビン41の前方部分左右に設けた前方側ピボット6fに揺動自在に取り付ける。
【0048】
後方左右のピラー4rも同様に、これらの上方部分には第1後方側ピボット7rをそれぞれ設け、この回りに左右のビーム8を回転自在に取り付ける。また、ビーム8の両端部には第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを固着する。これらビーム8、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bとは、前後方向に延びるピッチ面上で揺動するように配置する。ビーム8の揺動中心部分には角度をなして前後方向に延びる後方側連結リンク5rの一端部を固着し、その他端部をキャビン41の前方部分左右に設けた後方側ピボット6rに揺動自在に取り付ける。
【0049】
なお、キャビン41をフロート42に対し揺動運動可能とするため、前方側ピラー4fがフロート42の前方に設けたピボット4Aを介して揺動可能とすることにより上記揺動運動時での位置関係の変化に対応するようにする。ピボット4Aは後方側ピラー4rでもよく、またピボット4Aに代えて前後方側ピボット6f、6rの一方側とキャビン41との間を揺動可能なシャックルで連結するようにしてもよい。また、前後方側ピボット6f、6rの一方がキャビン41に設けたガイド溝に沿って移動可能となるようにしてもよい。
一方、ビーム8、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bは前方側シャフト、後方側シャフトの両方にそれぞれ設けたが、それぞれの一方に設けるようにしてもてもよい。後者の場合、左右の重量バランスを取るようにウォータ・ビークル全体での重量配置を考慮する必要がある。
【0050】
上記実施例5の揺動装置にあっては、以下のように作用する。
図6に示すように、外力が作用して前方側スプリング3fが縮み後方側スプリング3rが伸びてキャビン41がフロート42に対して反時計回り方向へピッチングした場合、前方側のビーム8とこれに固着した第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bとは、図中矢印R5で示す時計回り方向へ揺動させられる。この結果、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bによる慣性力は、ビーム8、前方側連結リンク5f、前方側ピボット6fを介して反時計回り方向へキャビン41に作用し前方側スプリング3fを伸ばして元の状態に復帰しようとする。
【0051】
一方、後方側のビーム8とこれに固着した第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bとは、図中矢印R6で示す時計回り方向へ揺動させられる。この結果、第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bによる慣性力は、ビーム8、後方側連結リンク5r、後方側ピボット6rを介して反時計回り方向へキャビン41に作用し後方側スプリング3rを縮めて元の状態に復帰しようとする。
【0052】
このようにキャビン41のフロート42に対する揺動運動は、揺動抑制装置10A,10Bによりその大きさが小さくなるように、また周期がより長くなるように抑制されて中立位置へ復帰する方向へコントロールされることになる。
【0053】
以上の説明から分かるように、実施例5の揺動抑制装置では、キャビン41がフロート42に対しピッチング方向へ揺動した場合でも、その揺動の大きさを小さくし、かつ周期がゆっくりなるように抑制することができる。したがって、乗り心地の良いウォータ・ビークルを提供することができる。この場合、キャビン41、フロート42間の相対変位が小さくても、イナーシャ・マスを利用しているので、揺動抑制を容易に行うことができる。しかも、電子制御等を使用することもないので、安価な装置で済む。
【実施例6】
【0054】
図7に示すように、実施例6の揺動抑制装置は、実施例5と同様にウォータ・ビークルに適用してそのピッチング方向の揺動を抑制するようにしたものである。
実施例6の揺動抑制装置では、可動体としてのキャビン51を、ベース体としてのフロート52に前方の2本のスプリング3fと後方の2本のスプリング3rで弾性支持する。なお、図中、Wは海面を示す。
【0055】
フロート52の中央部分には、この上面の左右からピラー4を上方へ伸ばして、その上方に第3ピボット20を設ける。左右の第3ピボット20間には図示しない揺動軸を配置して、この揺動軸にキャビン51の上方中央部を取り付ける。したがって、キャビン51はフローと52に対し揺動軸回りにピッチング揺動可能となる。キャビン51の下面には幅広の底部51aを形成し、これとフロート52間に前方側スプリング3fと後方側スプリング3rを2本ずつ配置する。キャビン51とフロート52との間には実施例2の揺動抑制装置と同様の構成のイナーシャ・マス付き駆動メカニズム11Aを設ける。この駆動メカニズム11Aは、以下のように構成する。
【0056】
すなわち、ピラー4の第3ピボット20の下方には第4ピボット22を設けて、第1揺動リンク21の一端部を取り付け、この他端部は第6ピボット25を介して第2揺動リンク23の一端部と連結する。第2揺動リンク23の他端部はキャビン51の図中右下側位置で左右に設けた第5ピボット24に取り付ける。第2揺動リンク23には角度をなしてビーム8の中央部分を固着して一体的に揺動するようにしてある。ビーム8の両端部には、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bをそれぞれ固着する。
【0057】
なお、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを有するビーム8は、左右のピラー4の両方に設けてもよく、あるいはそれらのうちの一方だけに設けてもよい。
【0058】
上記のように構成した実施例6の揺動抑制装置では、キャビン51が第3ピボット20間の揺動軸回りに反時計方向へ揺動して前方側スプリング3fが縮み後方側スプリング3rが伸びるように外力が作用すると、第5ピボット24が図中右上方向に移動するので、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを有するビーム8は、図中矢印R7で示す反時計回り方向へ移動させられる。この結果、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bによる慣性力は、ビーム8、第2揺動リンク23、第5ピボット24を介してキャビン51に、ピッチング面で時計回り方向へ作用し、前方側スプリング3fを伸ばし後方側スプリング3rを縮めるようにして中立位置へ復帰しようとする。
【0059】
以上から分かるように、実施例6の揺動抑制装置にあっても、キャビン51がフロート52に対しピッチング方向へ揺動した場合でも、その揺動の大きさを小さくし、かつ周期がゆっくりなるように抑制することができる。したがって、乗り心地の良いウォータ・ビークルを提供することができる。この場合、キャビン51、フロート52間の相対変位が小さくても、イナーシャ・マスを利用しているので、揺動抑制を容易に行うことができる。しかも、電子制御等を使用することもないので、安価な装置で済む。また、実施例2の場合と同様、第3ピボット20、第4ピボット22、第5ピボット24、第6ピボット25の位置関係で決まるレバー比を利用することにより、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bの質量を小さく抑えることができる。
【実施例7】
【0060】
図8に示すように、実施例7の揺動抑制装置は、実施例5、6と同様にウォータ・ビークルに適用するが、この実施例ではそのローリング方向の揺動を抑制するようにしたものである。
実施例6の揺動抑制装置では、可動体としてのキャビン61を、ベース体としての2個の平行配置したフロート62、63に、前後左側の2本のスプリング3Lと前後右側の2本のスプリング3Rで弾性支持する。なお、図中、Wは海面を示す。また、図8は正面図であるから、図中の左右と実際の左右は逆になるが、ここでは図中の左右を用いる。
【0061】
キャビン61は互いに離間した左右のフロート62、63の中間位置に配置され、その底部61aとフロート62、63との間にそれぞれスプリング3L、3Rを配置する。キャビン61の図中左側と左側フロート62との間、またキャビン61の右側部分と右側フロート63との間には、それぞれ実施例1と同様に構成した左側のイナーシャ・マス付き駆動メカニズム11B、右側のイナーシャ・マス付き駆動メカニズム11Cを配置する。
【0062】
すなわち、左側のイナーシャ・マス付き駆動メカニズム11B、右側のイナーシャ・マス付き駆動メカニズム11Cでは、左右のフロート62、63にはそれぞれ前後の2本のピラー4L、4Rを上方へ伸ばしそれらの頂上部に第7ピボット65L、65Rを設ける。第1ピボット65L、65Rにはそれぞれ左右側連結リンク64L、64Rの一端部を揺動自在に取り付ける。左右側連結リンク64L、64Rの他端部は第1ピボット66L、66Rを介してキャビン61の左右側面に固定し幅方向へ突出させた左右のブラケット61L、61Rにそれぞれ連結する。左右の連結リンク64L、64Rにはそれぞれビーム8の中央部を固着し第1ピボット66L、66R回りに一体的に揺動するようにしてある。ビーム8の両端部には、第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マスを固着し、これらが幅方向の面、すなわちローリング面上で揺動するようにしている。
【0063】
上記構成の実施例7の揺動抑制装置にあっては、図8に示すように、外力が作用してキャビン61がフロート62、63に対して反時計回り方向に揺動し、図中左側のスプリング3Lが縮み右側のスプリング3Rが伸びた場合には、左側のブラケット61Lが第1ピボット66Lを押し下げる結果、左側連結リンク64Lが第7ピボット65Lの回りに図中矢印R8で示すように、時計回り方向へ揺動する。このとき、ビーム8を介して第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bも時計回り方向へ揺動させられるので、このとき生じた慣性力は連結リンク64Lを第7ピボット65L回りに反時計回り方向に揺動させるように作用する。したがって、第1ピボット66Lで連結されたブラケット61Lは上方へ持ち上げられキャビン61にこれを時計回り方向に揺動させようとする力が働く。
【0064】
一方、このとき、右側のブラケット61Rが第1ピボット66Rを押し上げる結果、右側連結リンク64Rが第7ピボット65Rの回りに図中矢印R9で示すように、時計回り方向へ揺動する。このとき、ビーム8を介して第1イナーシャ・マス9a、第2イナーシャ・マス9bも時計回り方向へ揺動させられるので、このとき生じた慣性力は連結リンク64Rを第7ピボット65R回りに反時計回り方向に揺動させるように作用する。したがって、第1ピボット66Rで連結されたブラケット61Rは下方へ押し下げられキャビン61にこれを時計回り方向に揺動させようとする力が働く。
【0065】
以上から分かるように、実施例7の揺動抑制装置にあっても、キャビン61が両脇にある左右のフロート62に対しローリング方向へ揺動した場合でも、その揺動の大きさを小さくし、かつ周期がゆっくりなるように抑制することができる。したがって、乗り心地の良いウォータ・ビークルを提供することができる。この場合、キャビン61、フロート62間の相対変位が小さくても、イナーシャ・マスを利用しているので、揺動抑制を容易に行うことができる。しかも、電子制御等を使用することもないので、安価な装置で済む。
【実施例8】
【0066】
図9(a)、(b)に示すように、実施例8の揺動抑制装置は、実施例5〜8と同様にウォータ・ビークルに適用するが、この実施例ではそのピッチング方向とローリング方向の両方の揺動を抑制するようにしたものである。
実施例8の揺動抑制装置では、可動体としてのキャビン71を、ベース体としての3個の三角配置したフロート72A、72B、72Cに、これら各フロートに設けたスプリング3a、3b、3cで弾性支持する。なお、図中、Wは海面を示す。
【0067】
フロート72Bとフロート72Cはキャビン71の後方で、かつ幅方向に離間させて平行配置する。フロート72Aは、キャビン71の前方で、かつフロート72Bとフロート72Cとの中間を通って前後に延びる中心線C1上に配置し、全部のフロートで上方からみて三角形となるように配置する。
【0068】
フロート72Aの両側面とキャビン71の前方両幅方向端部との間は、一対のフロントリンク74aで上下方向へ揺動可能に連結する。同様に、左後方のフロート72Bの内側側面の前後位置のピボットから内側前方へ伸ばした一対のリアレフトリンク74bにてキャビン71の左後方部分にピボットを介して上下方向へ揺動可能に連結する。また、同様に、右後方のフロート72Cの内側側面の前後位置のピボットから内側前方へ伸ばした一対のリアライトリンク74cにてキャビン71の右後方部分にピボットを介して上下方向へ揺動可能に連結する。
【0069】
また、図9(b)に示すように、フロート72A、72B、72Cの上面にはそれぞれスプリング3a、3b、3cの下部を取り付け、これらの上部にはキャビン71からそれぞれ前方、左後方、右後方へ伸びしたブラケット73A、73B、73Cを連結する。これらのブラケットは中心線C1、左後方線C2、右後方線C3上に設け、左後方線C2、右後方線C3が中心線C1に交点O(キャビン71の重心に一致させても良い)で交わるようにする。
【0070】
さらに、フロート72A、72B、72Cには、それぞれイナーシャ・マスとしてのホイール31を駆動可能な駆動メカニズム12A、12B、12Cを設ける。これら駆動メカニズム12A、12B、12Cは、実施例3のものと同様に構成する。
【0071】
すなわち、各フロート72、72B、72Cの上面には、ラック部4a付きピラー4を設けて、このラック部4aにブラケット73A、73B、73Cと一体の支持部プレート75に回転自在に支持したピニオン30を噛み合わせる。なお、ピニオン30は見やすくするため図示を省略しているが実施例3と同様のリテーナで保持する。
【0072】
なお、フロート72A、72B、72Cのそれぞれのホイール31は、中心線C1、左後方線C2、右後方線C3にそれぞれ平行な面上で回転するように配置する。
【0073】
上記のように構成した実施例8の揺動抑制装置では、キャビン71がフロート72A、72B、72Cに対して揺動すると、ホイール31がピニオン30により回転され、その慣性力をブラケット73A、73B、73Cを介してスプリング3a、3b、3cおよびキャビン71へ作用し、中立位置へ復帰するように作用する。
【0074】
以上から分かるように、実施例8の揺動抑制装置にあっても、キャビン71がその周りにある3個のフロート72、72B、72Cに対しローリング方向、ピッチング方向へ揺動した場合でも、その揺動の大きさを小さくし、かつ周期がゆっくりなるように抑制することができる。したがって、乗り心地の良いウォータ・ビークルを提供することができる。この場合、キャビン71、フロート72、72B、72C間の相対変位が小さくても、イナーシャ・マスを利用しているので、揺動抑制を容易に行うことができる。しかも、電子制御等を使用することもないので、安価な装置で済む。
【実施例9】
【0075】
図10(a)、(b)に示すように、実施例9の揺動装置は、実施例8の揺動装置におけるホイール31に代えて第1イナーシャ・マス9aと第2イナーシャ・マス9bを用い、これらを両端に固着するビーム8を利用した、実施例4と同様の駆動メカニズム13A、13B、13Cを用いたものである。
キャビン71の底部にはステム76を介してその下方に水中浮力体75を設け、この浮力によりキャビン71の重量の大部分を受け持つようにしたものである。他の構成部分は実施例8と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0076】
上記のように構成した実施例9の揺動抑制装置にあっても、実施例9と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
なお、図10(c)に示すように、実施例4と同様の駆動メカニズム13において、イナーシャ・マス9をビーム8の片側につけることによって、重力によるその復元力を利用することでスプリング3を省略するようにしてもよい。
【実施例10】
【0077】
図11は、実施例10の揺動抑制装置を示す。この揺動抑制装置は実施例3の揺動抑制装置と同様の揺動抑制装置を有しておら、さらに発電機81をベース体2に設置してある。ホイール31の外周には周方向に沿って溝が形成され、発電機81の円盤状の入力部外周の溝との間にベルト82をかけ渡してある。その他の構成部分は実施例3と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0078】
上記のように構成した実施例10の揺動抑制装置にあっては、実施例3と同様に作用することで可動体1のベース体2に対する揺動をホイール31の回転により生じる慣性力で抑制することができる。また、このホイール31の回転中はベルト82を介して発電機81を駆動して発電することが可能である。この発電で得た電力は図示しないバッテリにチャージしたりあるいはライト等補助電気器具への供給電力への補助として使ったりすることができる。なお、この場合、発電時ホイール31の回転エネルギが電気エネルギに変換されることによって、揺動に対するダンパー機能も発揮できる。
【0079】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0080】
たとえば、ピラーやフロートの数や形状などは目的に応じて適宜変更することができる。
また、スプリングはコイルスプリングに限られず、他のスプリング、たとえばリーフスプリングなどでも良い。
【0081】
さらに、乗員や荷物の配置状況によっては、中立位置での可動体(キャビンや荷物室など)が傾くときがありうるが、そのときは、各スプリングへの荷重等を調整することで水平に保つようにすればよい。
【0082】
また、上記実施例では、スプリングを用いて可動体(キャビンや荷物室など)の中立位置の位置決めやこの中立位置への復帰性を高めているが、本発明では必ずしも可動体とベース体との間にスプリングは必要とせず、イナーシャ・マスを利用した振り子の重力による復元力のみでベース体に対する可動体の揺動を抑制することができる。
【0083】
また、実施例10での発電機81の駆動にはベルト82を用いたが、これに代えて歯車組等の動力伝達装置を用いても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の揺動抑制装置は、可動体がベース体に対し弾性支持されて揺動可能なものであれば、ウォータ・ビークルに限られることなく、他のビークルやビークル以外のものにも適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 可動体
2 ベース体
3、3、3b、3c、3f、3r、3L,3R スプリング
4 ピラー
5 連結リンク
6 第2ピボット
7 第1ピボット
8 ビーム
9、9a、9b イナーシャ・マス
10、10A,10B、11、11A、11B、11C、12、12A、12B、2c、13、13A、13B、13C 駆動メカニズム
20 第3ピボット
21 第1揺動リンク
22 第4ピボット
23 第2揺動リンク
24 第5ピボット
25 第6ピボット
30 ピニオン
31 ホイール
33 ブラケット
34 リテーナ
41、51、61、71 キャビン
42、52、62、63、72A、72B、72C フロート
73A、73B、73C ブラケット
75 水中浮力体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体と、
該ベース体に対し揺動可能に支持された可動体と、
該可動体に慣性力を作用可能なイナーシャ・マスと、
前記ベース体と前記イナーシャ・マスを機械的に連結し、前記可動体と前記ベース体との相対変位量に応じて移動させて該相対変位が慣性力により抑制されるように前記イナーシャ・マスを駆動する駆動メカニズムとを備えた揺動抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の揺動抑制装置において、
前記駆動メカニズムは、前記ベース体に設けられたピラーと、一端部が前記可動体に揺動可能に連結され他端部が前記ピラーにピボットを介して揺動可能に連結された連結リンク部材と、
を有し、
前記連結リンクが前記イナーシャ・マスに連結されて該イナーシャ・マスが前記ピボットの回りに揺動可能であること、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項3】
前記駆動メカニズムは、前記ベース体に設けられて上方へ伸ばされたピラーと、第1揺動リンクと、第2揺動リンクと、
を有し、
前記第1リンクの一端部は前記ピラーに揺動可能に連結し、
前記第2リンクの一端部は前記可動体に揺動可能に連結し、
前記第1リンクと前記第2揺動リンクの他端部同士を揺動可能に連結して、
前記可動体を前記ピラーに揺動可能に支持するとともに、
前記イナーシャ・マスは前記第1揺動リンクと前記第2揺動リンクの一方に連結して前記第1揺動リンクと前記第2揺動リンクの一方の変位に応じて移動するようにしたこと、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項4】
請求項1に記載の揺動抑制装置において、
前記駆動メカニズムは、前記ベース体に設けられて上方へ伸ばされラックが設けられたピラーと、
前記可動体に設けられ前記ラックと噛み合いながら前記可動体の変位に応じて回転することで前記ラックに沿って移動可能なピニオンと、
前記ピニオンと前記ラックとの噛み合いを維持するリテーナと、
を有し、
前記イナーシャ・マスは前記ピニオンと連結され、該ピニオンの回転運動に応じて移動すること、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の揺動抑制装置において、
前可動体は、前記ベース体にスプリングを介して弾性支持したこと、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の揺動抑制装置において、
前記イナーシャ・マスは、前記リンク部材に連結されたホイールか重量ブロックのいずれかであること、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の揺動抑制装置において、
前記ベース体はフロートであり、
前記可動体はキャビンと荷物室のうちの少なくとも一方であること、
を特徴とする揺動抑制装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の揺動抑制装置において、
前記駆動メカニズムは発電機を駆動し発電可能であること、
を特徴とする揺動抑制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−37427(P2011−37427A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144253(P2010−144253)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(510177740)