説明

搬送システム、搬送車装置、並びに自動清掃装置及び方法

【課題】例えば半導体装置製造用の各種基板などを搬送する搬送車が、クリーンルーム内を走行する搬送システムにおいて、走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃するようにする。
【解決手段】搬送システム(100)は、クリーンルーム内に敷かれた走行レール(1)と、走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するためのビークル(2)と、走行レールの所定箇所に設けられ、ビークルを清掃するための清掃部(3)と、定期又は不定期に、ビークルが清掃部を走行するように、ビークルを制御する走行制御部(5)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板などを搬送する搬送車が、クリーンルーム内を走行する、搬送システムの技術分野に関する。本発明は更に、このような搬送システムに含まれる搬送車装置、清掃装置、並びに搬送車を自動的に清掃する装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送システムとしては、クリーンルーム内の床上を走行レールなしで荷搬送台車等の搬送車が走行するシステムと、クリーンルーム内の天井等に敷かれた走行レールを、所謂ビークル等の搬送車が走行するシステムとがある。特にクリーンルーム内では発塵は少ない程よい。このため従来から、例えば、特許文献1では、クリーンルームの内外を搬入出する荷搬送台車の中継エリアにエアシャワーを設け、荷搬送台車を清掃する技術が提案されている。また、例えば特許文献2でも、エアシャワーにより荷搬送台車をエアシャワーで清掃する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−35128号公報
【特許文献2】特開昭60−137462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クリーンルーム内の天井等に敷かれた走行レールをビークル等の搬送車が走行するシステムの場合、走行レール及びビークルの車輪等の接触面から、走行に伴って大なり小なり塵が生じる。また、搬送車が積載機械を有する場合は、該積載機械の部位から塵が生じる。搬送車は、長時間或いは長期間に亘って高速走行されるビークルの場合、微量の塵の蓄積により、発塵が顕在化しかねないという技術的問題点がある。これに対して、特許文献1に開示された技術では、走行レールに取り付けられたビークルを清掃することは困難或いは不可能であるという技術的問題点がある。このため伝統的には、ビークルのメインテナンス時における付随作業として、走行レールから取り外されたビークルに付着した塵を除去する作業が行われたりしているが、確実に或いは効率的に塵を清掃することは困難である。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃可能である搬送システムと、該搬送システムを構成する搬送車装置、並びに自動清掃装置及び方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送システムは上記課題を解決するために、クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、該走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、前記走行レールの所定箇所に設けられており、前記搬送車を清掃するための清掃手段と、定期又は不定期に、前記搬送車を前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御手段とを備える。
【0007】
本発明の搬送システムによれば、通常の搬送作業の際には、クリーンルーム内において、例えば半導体基板等である被搬送物は、例えばビークルである走行レールを走行する搬送車によって、搬送される。このような走行は、リニアモータや、サーボモータ等のその他のモータにより行われる。クリーンルーム内には本来的には塵は非常に少ないが、このような走行レール上における高速走行が、長時間或いは長期間に亘って続けて行われると、搬送車と走行レール又はその付近との接触等によって、搬送車を構成する材料や、走行レール又はその付近を構成する材料から、大なり小なり塵が発生する。従って、仮に何らの清掃も行われないとすると、クリーンルームの基本的な機能が、当該搬送システムの存在によって害されることになりかねない。
【0008】
しかるに本発明によれば、例えばエアシャワー等である、搬送車を清掃するための清掃手段が、走行レールの所定箇所に設けられている。そして、搬送作業が例えば所定期間や所定回数だけ行われると、搬送車の走行・停止や走行経路などを、無線若しくは有線で制御可能なコントローラ又は搬送車に内蔵されたコントローラなどの、走行制御手段の制御下で、搬送車は、定期又は不定期に、清掃手段が設けられた所定箇所へと走行する。すると、該所定箇所へ走行されたことを検知して自動的に、又は走行されたことを認識した操作者による手動操作によって、清掃手段による清掃を実施すれば、搬送車から発生する塵を清掃除去できる。従って、清掃手段が設けられた所定箇所への走行を、搬送車の搬送に伴って発生する塵による悪影響が顕在化する以前に、毎度行うようにすれば、かかる塵による悪影響が顕在化する事態を未然防止できる。
【0009】
以上のように本発明の搬送システムによれば、例えば走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃できる。特に、清掃を行う際に、走行レールから搬送車を外す手間もなく、メインテナンス時に清掃作業を合わせて行う手間もない。しかも、走行レールの所定箇所に清掃手段があるので、走行制御手段により搬送車をそこまで導く際の制御は、比較的単純化できる。更に、所定箇所において、清掃手段により自動的に清掃を行うようにすることも可能なので、実践上極めて有利である。
【0010】
本発明に係る搬送システムの一態様では、前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御手段を更に備える。
【0011】
この態様によれば、搬送車が、清掃手段が設けられた所定箇所へと走行すると、例えば、エアシャワーが自動的にオンされ、更に所定時間だけ清掃が継続されるなど、例えば清掃手段に内蔵されたコントローラや、走行制御手段を構成するコントローラと兼用のコントローラなどから構成される、清掃制御手段によって、清掃作業が自動的に行われるようにできる。このため、無人化を促進し、塵による悪影響が顕在化するのを確実に阻止することが可能となる。但し、例えばエアシャワーのオン・オフを手動操作によって行ってもよく、その場合にも、上述した塵の清掃除去という本願独自の効果は相応に得られえる。
【0012】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記所定箇所は、前記走行レールにおける前記被搬送物を搬送するための搬送経路から分岐している分岐経路に位置する。
【0013】
この態様によれば、例えばエアシャワーである清掃手段は、搬送経路から分岐している分岐経路に位置する。このため、例えば排気ダクト、吸気口、駆動機構或いは動力源などを備える清掃手段の存在が、クリーンルーム内に、典型的には半導体製造装置などの他の装置を配置する際における妨げになる事態を効果的に防止できる。
【0014】
尚、このような分岐経路としては、搬送経路の一部から分岐して搬送経路の他の部分へと合流する、いわば並列の一方通行の経路であってもよいし、搬送経路の一部から分岐して該一部へ再び戻る、いわば行き止まりの往復経路であってもよい。
【0015】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記走行制御手段は、一定時間若しくは一定走行時間毎に、一定走行距離毎に、又は一定搬送回数毎に、前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する。
【0016】
この態様によれば、例えば、時間又は前記搬送車の走行時間を計測するタイマ手段を有する走行制御手段による制御下で、搬送車は、一定時間、一定走行時間、或いは一定走行距離毎に、清掃手段の設けられた所定箇所へ走行する。或いは、例えば搬送車の走行距離を計測する計測手段を有する走行制御手段による制御下で、搬送車は、一定走行距離毎に、清掃手段の設けられた所定箇所へ走行する。或いは、例えば搬送車の搬送回数をカウントするカウント手段を有する走行制御手段による制御下で、搬送車は、一定搬送回数毎に、清掃手段の設けられた所定箇所へ走行する。尚、ここにいう、一定時間、一定走行時間、一定走行距離、又は一定搬送回数は、予め実験的・経験的に或いはシミュレーションにより、塵による悪影響が顕在化する以前に清掃が行われる時間間隔、走行時間間隔、走行距離間隔又は搬送回数間隔として、実際の清掃に先んじて設定される。但し、要求されるクリーン度や塵の存在状況などの個別事情を勘案して、例えば要求されるクリーン度に応じて可変に設定されてもよい。これらの結果、塵による悪影響を顕在化させる前に、搬送車の塵を確実に清掃除去できる。
【0017】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記清掃手段は、エアーを前記搬送車に吹きかけるエアシャワーを有する。
【0018】
この態様によれば、清掃手段が有するエアシャワーにより、エアーを搬送車に吹きかけることによって、搬送車に付着した塵を効率良く清掃除去できる。尚、空気以外の気体や液体を利用して、清掃してもかまわない。
【0019】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記走行制御手段は、前記搬送車に内蔵されているコントローラを含む。
【0020】
この態様によれば、コントローラが内蔵されているので、搬送車は、自発的に清掃手段が設けられた所定箇所へと走行する。特に複数の搬送車が存在する場合にも、個々の搬送車が自らを管理制御して、確実に所定箇所へ走行することになる。よって、システム構成を複雑化させることなく、定期又は不定期の清掃を確実且つ簡単に行うことが可能となり、実践上極めて有利である。
【0021】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記走行制御手段は、前記走行レール又は前記走行レールに敷かれた有線の若しくは無線の制御ラインを介して、前記走行手段を制御するコントローラを含む。
【0022】
この態様によれば、コントローラによる遠隔制御によって、搬送車は、清掃手段が設けられた所定箇所へと走行する。特に複数の搬送車が存在する場合にも、一つのコントローラで各搬送車を統括的に管理制御して、確実に所定箇所へ走行することになる。よって、システム構成を複雑化させることなく、定期又は不定期の清掃を確実且つ簡単に行うことが可能となり、実践上極めて有利である。
【0023】
本発明に係る搬送システムの他の態様では、前記走行制御手段は、前記清掃手段が前記搬送車を清掃した履歴を格納する格納手段を備え、該格納された履歴に基づいて、前記搬送車を制御する。
【0024】
この態様によれば、メモリ等の格納手段に格納された、搬送車を清掃した履歴に基づいて、確実な頻度にて、或いは漏れや落ちなく、搬送車を清掃することが可能となる。
【0025】
本発明に係る搬送車装置は上記課題を解決するために、クリーンルーム内に敷かれた走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、定期又は不定期に、前記搬送車を清掃するための清掃手段が設けられている、前記走行レールの所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御手段とを備える。
【0026】
本発明の搬送車装置によれば、搬送車及び走行制御手段を備えるので、上述した本発明の搬送システムに係る清掃手段付の走行レールに、搬送車を取り付ければ、上述した本発明の搬送システムの場合と同様に、例えば走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃できる。特に、清掃を行う際に、走行レールから搬送車を外す手間もなく、メインテナンス時に清掃作業を合わせて行う手間もない。
【0027】
尚、本発明の搬送車装置においても、上述した本発明の搬送システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0028】
本発明に係る自動清掃装置は上記課題を解決するために、クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、該走行レールの所定箇所に設けられており、前記走行レールを走行可能であり且つ被搬送物を搬送する搬送車を清掃するための清掃手段と、定期又は不定期に、前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御手段とを備える。
【0029】
本発明の自動清掃装置によれば、走行レール、清掃手段及び清掃制御手段を備えるので、上述した本発明の搬送車装置に係る搬送車を取り付ければ、上述した本発明の搬送システムの場合と同様に、例えば走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃できる。更に、所定箇所において、清掃手段により自動的に清掃を行えるので、実践上極めて有利である。
【0030】
尚、本発明の自動清掃装置においても、上述した本発明の搬送システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0031】
本発明に係る自動清掃方法は上記課題を解決するために、クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、該走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、前記走行レールの所定箇所に設けられており、前記搬送車を清掃するための清掃手段とを備えた搬送システムにおける清掃方法であって、定期又は不定期に、前記搬送車を前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御工程と、前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御工程とを備える。
【0032】
本発明の自動清掃方法によれば、走行制御工程及び清掃制御工程を備えるので、上述した本発明の自動清掃装置の場合と同様に、例えば走行レールをビークル等の搬送車が走行する際に発生する塵を、確実に或いは効率的に清掃できる。更に、所定箇所において、清掃手段により自動的に清掃を行えるので、実践上極めて有利である。
【0033】
尚、本発明の自動清掃方法においても、上述した本発明の搬送システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0034】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
先ず、本実施形態に係る搬送システムの構成について説明する。ここに図1は、本実施形態に係る搬送システムのブロック図である。
【0036】
図1において、本実施形態に係る搬送システム100は、主に、走行レール1と、ビークル2と、清掃部3と、制御コンピュータ4とを備える。
【0037】
走行レール1は、例えば、走行方向に延びると共にビークル2の車輪が転動する転動面を夫々有する一対のレールを有し、更に該一対のレールの間に走行方向に複数配列された永久磁石を有する。走行レール1は、ビークル2側に設けられたリニアモータが、その上を走行するための走行路であり、ビークル2が走行するための電源信号やその走行を制御するための各種信号がやりとりされる有線の制御線としての機能も有する。走行レール1は、図示しないクリーンルーム内に敷かれている。走行レール1は、図1に示すように、分岐点P1で、被搬送物を搬送する搬送経路から分岐している。この分岐経路は、合流点P2で再び搬送経路と合流するように配されている。走行レール1において分岐経路とされるレールを、特に、分岐レール10とする。
【0038】
ビークル2は、本発明に係る「搬送車」の一例として、リニアモータにより走行レール1に沿って走行し、ホイスト機構やロボットアームなどで保持することによって、半導体装置製造における各種基板などの被搬送物を搬送する。ビークル2には、走行及び保持に関する自らの動作を制御するためのコントローラ11が内蔵されている。
【0039】
清掃部3は、本発明に係る「清掃手段」の一例として、分岐経路に位置し、ビークル2を清掃する。清掃部3は、例えば、図示しない吸排気ダクトや、複数台のエアシャワー8などを備えている。清掃部3は、内部をビークル2が通過する間、エアシャワー8からエアーをビークル2に吹きかける。これによって、ビークル2に付着した塵が除去される。除去された塵は、清掃部3のダクトを介して、クリーンルーム2の外部へ排出されるので、クリーンルーム2内のクリーン度が、清掃によって低下されることは殆どない。
【0040】
制御コンピュータ4は、本発明に係る「走行制御手段」の一例としての走行制御部5と、本発明に係る「清掃制御手段」の一例としての清掃制御部7とを備える。走行制御部5は、リニアモータを駆動制御し、定期又は不定期に、ビークル2が分岐レール10に導かれて清掃部3を走行するようにビークル2を制御する。走行制御部5は、例えば走行レール1に設けられた有線の制御ラインを介して、ビークル2の走行を制御する。また、走行制御部5は、特定のビークル2を制御するために、ビークル2に内蔵されているコントローラ11に対し、無線により制御信号を送ってもよい。これによって、個々のビークル2が管理制御され、確実に、特定のビークル2が清掃部3を走行することを可能にしている。
【0041】
走行制御部5は、ビークル2の走行時間を計時するタイマ6を備えている。このタイマ6の計時によって、走行制御部5は、ビークル2の一定時間或いは一定走行時間毎に、清掃部3を走行するようにビークル2を制御することも可能である。
【0042】
清掃制御部7は、ビークル2が清掃部3を走行する際に、ビークル2を清掃するように、清掃部3の各部を制御する。清掃制御部7は、ビークル2が清掃部3の内部を走行していることを検知すると、エアシャワー8を作動してエアーを噴射させる。なお、エアーを噴射する、エアシャワー8の作動時間、即ち清掃時間は、適宜設定可能である。
【0043】
清掃指示部9は、搬送システム100の操作者によるスイッチ操作により、走行制御部5に対し、ビークル2が清掃部3を走行するように指示信号を出力する。これによって、システム操作者の判断で、不定期に、ビークル2を清掃することが可能である。或いは、このような清掃指示部9からの指示信号の出力は、操作者によるスイッチ制御の助けを借りることなく、例えば予め設定された何らかの条件判断に応じて自動的に行ってもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る搬送システムについて、図1に加えて、図2及び図3を参照して説明する。
(システム操作者の指示に基づく清掃制御処理)
図2は、本実施形態に係る搬送システムの基本的な動作処理を示すフローチャートである。
【0045】
具体的には、図2において、先ず、清掃指示部9から指示信号が出力されたか否かが判定される(ステップS10)。ここで、指示信号が出力されていないと判定された場合には(ステップS10:NO)、システム操作者の要求がないとしてフローが終了される。一方、指示信号が出力されたと判定された場合には(ステップS10:YES)、走行制御部5による制御下で、ビークル2が清掃部3に誘導される(ステップS13)。ビークル2が清掃部3を走行する際には、走行中に又は走行を一旦停止してから、清掃制御部7の制御下で、清掃部3のエアシャワー8が作動し、ビークル2が清掃される(ステップS14)。このようなルーチンは、例えば秒毎、時間毎、日毎など、所望の時間間隔にて実行される。或いは、始業時や終業時などに実行される。このようなルーチンの結果、実際の清掃は、例えば、半年に一度や月に一度行われる。
(計時に基づく清掃制御処理)
図3は、図2で示す基本的な動作処理に加えて、計時に基づいて、定期的にビークル2の清掃を行う動作処理を示すフローチャートである。
【0046】
図3において、先ず、走行制御部5にて、タイマ6の経過時間tが所定時間以上か否かが判定される(ステップS11)。ここで、経過時間tが所定時間以上でないと判定された場合、指示信号の出力が監視されると共に、経過時間の計時が引き続き行われる。一方、経過時間tが所定時間以上と判定された場合には(ステップS11:YES)、清掃指示信号が出力され(ステップS12)、この出力に応答して、ビークル2が清掃部3に誘導され(ステップS13)、ビークル2の清掃が行われる(ステップS14)。この後、タイマ6の経過時間tが零に戻され(ステップS15)、一通りの動作処理が終了される。
【0047】
このように、第1実施形態の搬送システムは、走行レール1の所定箇所に清掃部3を設け、例えばシステム操作者の指示によって不定期に、又は、タイマ6の計時によって定期的に、ビークル2を清掃部3に走行させて、ビークル2を清掃するようにしたから、ビークル2が走行する際に発生する塵を、確実に清掃することができる。また、この清掃の際には、走行レール1からビークル2を取り外す必要がないので、効率的に清掃を行っている。
<第2及び第3の実施形態>
次に、第2及び第3の実施形態に係る搬送システムについて、図4を参照して説明する。
【0048】
図4は、第1実施形態における図1と同趣旨の模式図である。尚、図4において、図1に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は省略する。
【0049】
図4において、本実施形態に係る搬送システムは、上述したタイマ6に替えて、第2実施形態ではセンサ12を、第3実施形態ではメモリ13を使用する点で、上述した第1実施形態の搬送システムと異なる。その他の構成については、第1実施形態の場合と概ね同様である。
【0050】
センサ12は、例えば投光型の赤外線センサであって、搬送経路としての走行レール1の所定箇所に設けられている。センサ12は、ビークル2の通過を検出し、走行制御部5に対し、通過信号を出力する。この出力によって、走行制御部5にて、ビークル2の搬送回数がカウントされる。即ちセンサ12は、搬送回数を検出する搬送回数検出手段として機能する。この算出結果に基づいて、走行制御部5は、ビークル2の一定搬送回数毎に、清掃部3を走行するようにビークル2を制御する。なお、センサ12の搬送回数から、ビークル2の走行距離を算出し、一定走行距離毎にビークル2を制御することも可能である。また、センサ12に代えて、搬送指令回数を、システムコントローラ、即ち本実施形態では制御コンピュータ4でカウントして、搬送回数を求めることもできる。
【0051】
走行制御部5は、清掃部3がビークル2を清掃した履歴を格納するメモリ13を備えている。この履歴を示す情報としては、例えば清掃の日時などである。走行制御部5は、メモリ13に格納された履歴に基づいて、定期的に清掃部3を走行するように、ビークル2を制御する。
(搬送回数に基づく清掃制御処理)
第2実施形態に係る図5は、ビークル2の搬送回数に基づいて、定期的にビークル2の清掃を行う動作処理を示すフローチャートである。
【0052】
図5において、先ず、センサ12から通過信号が出力されたか否かが判定され(ステップS16)、通過信号が出力されていないと判定された場合には(ステップS16:NO)、引き続き通過信号が監視される。一方、通過信号が出力されたと判定された場合には(ステップS16:YES)、ビークル2の搬送回数CNTが「1」プラスされる(ステップS17)。次に、搬送回数CNTが所定回数以上か否かが判定され(ステップS18)、所定回数以上でない場合には(ステップS18:NO)、通過信号出力の判定処理に戻される。一方、搬送回数CNTが所定回数以上と判定された場合には(ステップS18:YES)、ビークル2が清掃部3に誘導され(ステップS13)、ビークル2の清掃が行われる(ステップS14)。この後、搬送回数CNTが零に戻され(ステップS20)、一通りの動作処理が終了される。
【0053】
このように、第2実施形態の搬送システムは、センサ12により、ビークル2の搬送回数をカウントし、このカウント値に基づいて、一定走行距離毎に、又は一定搬送回数毎に、ビークル2を清掃部3に走行させて、ビークル2を清掃するようにしたから、ビークル2が走行する際に発生する塵を、ビークル2の走行に応じた周期で清掃することができる。
(清掃履歴に基づく清掃制御処理)
第3実施形態に係る図6は、清掃履歴に基づいて、定期的にビークル2の清掃を行う動作処理を示すフローチャートであり、図7は、清掃履歴を示すデータの一例を示している。
【0054】
図6において、先ず、メモリ13から最新の清掃履歴が読み出される(ステップS21)。次に、図7に示した如き清掃履歴データ13aが、メモリ13から読み出されて、最新の清掃日時と、制御コンピュータ4の日時情報とが比較される。清掃履歴データ13aは、ビークル2毎に、「前回」、「前々回」、…といった過去における第n(nは自然数)回目の「清掃日時」、個々のビークルの識別番号である「ビークルNo.」、並びに前回行われたクリーニングの圧力の高低又はこの圧力が標準圧力であったことを示す「前回行ったクリーニングレベル」などを示している。該前回の清掃日時、即ち最新の清掃日時から所定時間が経過したか否かが判定される(ステップS22)。ここで、所定時間が経過していないと判定された場合には(ステップS22:NO)、所定時間が経過するまでフローが待機状態とされる。一方、最新の清掃日時から所定時間経過したと判定された場合には(ステップS22:YES)、ビークル2が清掃部3に誘導され(ステップS13)、ビークル2の清掃が行われる(ステップS14)。この後、この清掃が行われた日時がメモリ13に記憶され、即ち清掃履歴データ13aが更新され(ステップS23)、一通りの動作処理が終了される。
【0055】
このように、第3実施形態の搬送システムは、ビークル2の清掃を行う度に、メモリ13に清掃履歴を記憶し、この清掃履歴に基づいて、所定時間毎に、ビークル2を清掃部3に走行させて、ビークル2を清掃するようにしたから、ビークル2が走行する際に発生する塵を、確実な頻度で清掃することができる。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システム、搬送車装置、並びに自動清掃装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る搬送システムの模式図である。
【図2】第1実施形態に係る搬送システムの基本的な動作処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る搬送システムの動作処理を示すフローチャートである。
【図4】第2及び第3の実施形態に係る搬送システムの模式図である。
【図5】第2実施形態に係る搬送システムの動作処理を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係る搬送システムの動作処理を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る清掃履歴データの論理構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0058】
1…走行レール、2…ビークル、3…清掃部、5…走行制御部、6…タイマ、7…清掃制御部、8…エアシャワー、12…センサ、13…メモリ、100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、
該走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、
前記走行レールの所定箇所に設けられており、前記搬送車を清掃するための清掃手段と、
定期又は不定期に、前記搬送車を前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御手段と
を備えたことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記所定箇所は、前記走行レールにおける前記被搬送物を搬送するための搬送経路から分岐している分岐経路に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記走行制御手段は、一定時間若しくは一定走行時間毎に、一定走行距離毎に、又は一定搬送回数毎に、前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記清掃手段は、エアーを前記搬送車に吹きかけるエアシャワーを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記走行制御手段は、前記搬送車に内蔵されているコントローラを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記走行制御手段は、前記走行レール又は前記走行レールに敷かれた有線の若しくは無線の制御ラインを介して、前記走行手段を制御するコントローラを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記走行制御手段は、
前記清掃手段が前記搬送車を清掃した履歴を格納する格納手段を備え、
該格納された履歴に基づいて、前記搬送車を制御する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項9】
クリーンルーム内に敷かれた走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、
定期又は不定期に、前記搬送車を清掃するための清掃手段が設けられている、前記走行レールの所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御手段と
を備えることを特徴とする搬送車装置。
【請求項10】
クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、
該走行レールの所定箇所に設けられており、前記走行レールを走行可能であり且つ被搬送物を搬送する搬送車を清掃するための清掃手段と、
定期又は不定期に、前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御手段と
を備えたことを特徴とする自動清掃装置。
【請求項11】
クリーンルーム内に敷かれた走行レールと、
該走行レールを走行可能であり、被搬送物を搬送するための搬送車と、
前記走行レールの所定箇所に設けられており、前記搬送車を清掃するための清掃手段と
を備えた搬送システムにおける清掃方法であって、
定期又は不定期に、前記搬送車を前記所定箇所へ走行するように前記搬送車を制御する走行制御工程と、
前記搬送車が前記所定箇所へ走行した際に、前記搬送車を清掃するように、前記清掃手段を制御する清掃制御工程と
を備えたことを特徴とする自動清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−214084(P2008−214084A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57639(P2007−57639)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)