説明

搬送ラインへの鋼材受渡し装置

【課題】円形断面や角形断面の鋼材をコンベア上から搬送ライン上にスムースに移載することができる鋼材受渡し装置を提供する。
【解決手段】無端チエーン11に適宜間隔で爪12が突設され該爪に鋼材2を係合させることで該鋼材を該鋼材の幅方向に移送させるセパレートコンベア10と、該セパレートコンベアの終端部側スプロケット軸14の上部位置に固設した鋼材受渡部材20と、該鋼材受渡部材に支持された鋼材2を搬送ライン60上に移載する平行移載機構40とからなり、鋼材受渡部材20にはセパレートコンベアによって移送されてきた鋼材2を滑降させる下向き傾斜面23が形成され、該下向き傾斜面の下端には滑降した鋼材2を受け止める受材部24が形成され、該受材部に受け止められた鋼材2が平行移載機構40によって下方から掬い上げられ搬送ライン60上に移載されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形断面や角形断面の鋼材を搬送ラインに受渡しするための鋼材受渡し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に鋼管や丸棒鋼などの円形断面の鋼材を搬送ラインに受渡しする中継移送装置が示され、同特許文献の第5図、第6図には回転アーム(平行移載機構)により鋼材を受渡しする装置も従来技術として図示説明されている。
また、特許文献2には、ローラーコンベア上の鋼材を回転アームに掬い上げて移送台上に移載する鋼材の受渡し装置が図示説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−66853号公報
【特許文献2】特開昭50−78061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に示された中継移送装置は、鋼材を斜面に転動移送させるものであるので、用途が丸棒鋼などの円形断面の鋼材に限られるという問題がある。また、引用文献2に示された鋼材の受け渡し装置では、回転アームの回転を邪魔しないように移送台の下部空間が空いていなければならない構造であった。このため、チェーンコンベアによって移送されてきた鋼材を回転アームによって掬い上げてローラーコンベア上に移載しようとすると、該チェーンコンベアのスプロケット軸と回転アームとが干渉することが避けられないという問題がある。
本発明はこのような従来技術の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した鋼材受渡し装置の発明は、無端チエーンに適宜間隔で爪が突設され該爪に鋼材を係合させることで該鋼材を該鋼材の幅方向に移送させるセパレートコンベアと、該セパレートコンベアの終端部側スプロケット軸の上部位置に固設した鋼材受渡部材と、該鋼材受渡部材に支持された鋼材を搬送ライン上に移載する平行移載機構とからなり、前記鋼材受渡部材には前記セパレートコンベアによって移送されてきた鋼材を滑降させる下向き傾斜面が形成され、該下向き傾斜面の下端には滑降した鋼材を受け止める受材部が前記終端部側スプロケット軸から離間した位置となるように形成され、該受材部に受け止められた鋼材が前記平行移載機構によって下方から掬い上げられ搬送ライン上に移載されるようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、上記鋼材受渡し装置において、下向き傾斜面を滑降する鋼材をその滑降が始まる際に受け止める鋼材受止レバーを設け、該レバーを緩やかに下降させることで該鋼材を受材部に軟着地させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セパレートコンベアのスプロケット軸と平行移載機構との干渉が避けられ、無端チエーンに過大な負荷が掛かることなく鋼材を平行移載機構によって搬送ライン上にスムースに移載することができる。また、その移載に際して鋼材に加わる衝撃を緩和することができ、鋼材に損傷を与えたり、大きな騒音を出すおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る鋼材受渡し装置の実施形態を示した平面図。
【図2】図1の鋼材受渡し装置のA−A線断面拡大図。
【図3】図2の要部の拡大図。
【図4】図3の作動状態図。
【図5】図4のさらなる作動状態図。
【図6】図5のさらなる作動状態図。
【図7】本発明に係る鋼材受渡し装置における平行移載機構の縦断面図。
【図8】図7の平行移載機構のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の実施形態を図面に従い説明する。図1、図2において、1は圧延工程、熱処理工程等における円形断面や角形断面の鋼材2を矢印の方向に搬送するために設けられたチェーンコンベア、3は該チェーンコンベア1の一端のスプロケット軸、3aはスプロケットである。4は該チェーンコンベアによって搬送されてきた鋼材2を停止させるため台フレーム5に設けられたストッパで、該ストッパには鋼材2が衝突することにより作動するスイッチが設けられ、該スイッチが作動すると該チェーンコンベアの駆動が自動停止されるようにしている。該ストッパ4は鋼材2のサイズ、形状に合わせて位置調整ができるように台フレーム5に取り付けられる。なお、チェーンコンベア1の駆動源は図示省略する。
【0010】
また、図3にも示すように、10は無端チエーン11に適宜間隔で爪12を突設してなるセパレートコンベア、13は該セパレートコンベアの始端部側スプロケット軸、14は終端部側スプロケット軸で、該無端チエーン11を該軸13のスプロケット13aと該軸14のスプロケット14aに巻掛することで該無端チエーン11が台フレーム5上に張設される。このため、該無端チエーン11を図示省略した駆動源により回動させ、爪12を矢印の方向に移動させると、前記ストッパ4によって停止されていた鋼材2に該爪12が係合し、該鋼材2が一本づつ分離して該台フレーム5上に乗せられ、該台フレーム5上を矢印の方向(鋼材の幅方向であってほぼ水平方向)に移送せられる。
【0011】
20は据付台21上に固定することにより前記終端部側スプロケット軸14の上部位置に固設された鋼材受渡部材で、該鋼材受渡部材は上縁部に緩やかな傾斜(仰角が約2度)の上向き傾斜面22が形成され、該上向き傾斜面22に続くように伏角が約30度の下向き傾斜面23が形成され、該下向き傾斜面23の下端にはV形受材部24が形成され、該V形受材部24は前記終端部側スプロケット軸14からは離間した位置となるようにしている。そして、爪12に押されてセパレートコンベア10上を一本づつ移送されてきた鋼材2がさらに該爪12によって押されることで該上向き傾斜面22を上り、該上向き傾斜面を上り詰めた鋼材2は下向き傾斜面23を自重で滑降し得るようにしている。
【0012】
また、30は据付台21に設けた支軸31に回転自在に枢着された鋼材受止レバー、32は該鋼材受止レバーを回転動させる流体圧シリンダである。該鋼材受止レバー30は終端部側スプロケット軸14との干渉を避けるために側面U字形に形成されている。そして該鋼材受止レバー30を回転動させることにより該鋼材受止レバーの先端部33が前記V形受材部24より上方に出没し得るようにしている。このため、下向き傾斜面23を滑降する鋼材2がその滑降が始まる際に図4に示したように該鋼材受止レバー30の先端部33内面によって受け止められる。そして、流体圧シリンダ32を作動させ該鋼材受止レバー30を緩やかに下降させることで図5に示したように該鋼材2がV形受材部24に軟着地し得るようにしている。
【0013】
また、40はV形受材部24にある鋼材2を搬送ライン60に移載するために設けられた平行移載機構である。該平行移載機構40は、図7、図8に示したように、据付台21上に固設された軸受41に回転軸42を回転自在に支持し、該回転軸42に回転アーム43の基端をキーを介して固定し、該回転アーム43の先端部に設けられた軸受44に軸45を貫挿し、該軸45にサドル46をキーを介して固設すると共に、該軸45の一端にスプロケット47を固着し、さらに据付台21に固設された固定部材48に回転軸42と同芯状なるようにスプロケット49をボルト止めして固設し、スプロケット47とスプロケット49にローラーチェーン50を巻掛してなる。51はローラーチェーン50に所要張力を与えるために設けたテンションローラである。なお、回転軸42の駆動源は図示省略する。また、サドル46の上面には鋼材2を安定して乗せるためにV形溝が形成されている。また、搬送ライン60はローラーテーブルからなり、鋼材2を図1の矢印方向(鋼材の長手方向)に搬送し得るものである。
【0014】
このため、回転軸42が駆動され回転アーム43が図6に矢印で示した方向に回転すると、サドル46がV形受材部24に受け止められていた鋼材2を下方から掬い上げ、該鋼材2を搬送ライン60上に移載させる。このとき、サドル46は軸45に固設されていて該軸45はスプロケット47、ローラーチェーン50、スプロケット49を介して固定部材48に連繋しているので、回転アーム43が回転してもサドル46は回転することなく常に水平に保たれ、該サドル46上に乗せた鋼材2をスムースに搬送ライン60のローラーテーブル上に移載することができる。
【0015】
このように、この鋼材受渡し装置では、鋼材受渡部材20を設け、鋼材2がV形受材部24に受け止められるようにしたことにより、該V形受材部24の下部空間が空くので、サドル46が終端部側スプロケット軸14と干渉することなく該鋼材2を掬い上げ得るように平行移載機構40を配設することができる。なお、鋼材2が下向き傾斜面23を滑降し始めたら無端チエーン11を一時停止させることで、爪12と該鋼材2との干渉は避けることができる。そして該鋼材2をサドル46によってV形受材部24から掬い上げたところで、無端チエーン11を再駆動し、次の鋼材2を下向き傾斜面23より滑降させる。こうして、鋼材2をV形受材部24に受け止めることで、無端チエーン11に鋼材2の重量(過大な負荷)が掛かることなく、該鋼材2を終端部側スプロケット軸14から離れた位置に支持することができる。
【0016】
なお、下向き傾斜面23は鋼材2が自重で滑降し得る30度程度の傾斜にする。そして、滑降する鋼材2に過大な衝撃が加わらないようにするため、鋼材受止レバー30を設け、滑降が始まる際に該鋼材2を該鋼材受止レバー30により受け止め、該レバーを緩やかに下降させることで、該鋼材がV形受材部24そっと静かに乗り、鋼材を傷つけるおそれがないと共に、騒音の発生が防止される。
また、この鋼材受渡し装置は、鋼材を回転させることなく移載でき、円形断面や角形断面など鋼材の形状を問わずに使用でき汎用性が高い利点がある。
【符号の説明】
【0017】
2 鋼材
10 セパレートコンベア
11 無端チエーン
12 爪
14 終端部側スプロケット軸
20 鋼材受渡部材
22 上向き傾斜面
23 下向き傾斜面
24 受材部
30 鋼材受止レバー
32 流体圧シリンダ
40 平行移載機構
43 回転アーム
46 サドル
60 搬送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端チエーンに適宜間隔で爪が突設され該爪に鋼材を係合させることで該鋼材を該鋼材の幅方向に移送させるセパレートコンベアと、該セパレートコンベアの終端部側スプロケット軸の上部位置に固設した鋼材受渡部材と、該鋼材受渡部材に支持された鋼材を搬送ライン上に移載する平行移載機構とからなり、前記鋼材受渡部材には前記セパレートコンベアによって移送されてきた鋼材を滑降させる下向き傾斜面が形成され、該下向き傾斜面の下端には滑降した鋼材を受け止める受材部が前記終端部側スプロケット軸から離間した位置となるように形成され、該受材部に受け止められた鋼材が前記平行移載機構によって下方から掬い上げられ搬送ライン上に移載されるようにしたことを特徴とする搬送ラインへの鋼材受渡し装置。
【請求項2】
下向き傾斜面を滑降する鋼材をその滑降が始まる際に受け止める鋼材受止レバーを設け、該レバーを緩やかに下降させることで該鋼材を受材部に軟着地させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載した搬送ラインへの鋼材受渡し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−215382(P2010−215382A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65640(P2009−65640)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】