説明

搬送ローラーのクリーニング機構およびプリンター

【課題】記録媒体の印刷面に接触する搬送ローラーに付着したインクを紙送り性能に影響を及ぼさず、定期的に除去すること。
【解決手段】クリーニング機構21は、印刷位置Aの下流側にある排紙従動ローラー14Bの上方に一端を延ばした状態で旋回可能に支持され、他端が上向きに付勢されたクリーニングレバー22を備える。ロール紙交換用の開口4に取り付けられた開閉蓋5を閉じた状態では、排紙従動ローラー14Bの下流側に配置されたカッター19の固定刃17および可動刃18により、クリーニングレバー22が、付勢力に逆らって排紙従動ローラー14Bに接触しない位置に保持される。開閉蓋5を開き始めると、プラテンユニット20に搭載された可動刃18が移動し、固定刃17がクリーニングレバー22から離れるため、クリーニングレバー22が排紙従動ローラー14Bに接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の印刷面に接触する位置にある搬送ローラーに付着したインクを除去するためのクリーニング機構、および、これを備えたプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に向けてインクを吐出して印刷を行うプリンターにおいて、印刷ヘッドの下流側に、印刷後の記録媒体を挟み込んで排出口に向けて搬送する搬送ローラー対を配置したものがある。このような構成では、搬送ローラー対の一方のローラーが印刷面に接触するように配置されているため、乾ききらないインクが印刷面からローラー面に転写されて堆積してしまう。ローラー面に堆積したインクは、記録媒体に再転写されて印刷面を汚すおそれがある。そこで、ローラー面に溝を形成することにより、インクの堆積および再付着を抑制したものがある。また、クリーニング部材を設けて、ローラー面に堆積したインクを除去するためのクリーニングを行うものがある。
【0003】
特許文献1には、印刷面に接触するローラーとして、溝付きの拍車を用いたプリンターが開示されている。このプリンターには、拍車と常時接触しながら回転するクリーニングローラーが設けられ、拍車が回転するときには、同時にクリーニングローラーによってインクを除去することができる。また、このプリンターでは、記録媒体の厚さ等に応じて拍車を退避させる動作を行っているが、拍車が移動するときには、クリーニングローラーも拍車に追従して移動する。よって、クリーニングローラーが拍車の退避動作を阻害することがなく、紙送り性能に影響を及ぼすことなくクリーニングを行うことができる。
【0004】
また、特許文献2には、CDやDVDなどの特殊な被記録物をプリンター内にセットするためのトレーの前端にクリーニング部材を設けたプリンターが開示されている。このプリンターでは、トレーを挿入すると、インクが付着した排紙従動ローラーとクリーニング部材とが接触してローラーからインクが除去される。このような構成では、トレーの出し入れのタイミングでクリーニングが行われるため、紙送り性能に影響を及ぼすことなくクリーニングを行うことができる。また、クリーニング部材はトレー側に設けられているため、除去されたインクをトレーと共にプリンター外に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−182983号公報
【特許文献2】特許第4407566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、拍車(搬送ローラー)の回転中にクリーニングローラーを拍車に常に接触させているため、記録媒体の搬送中は常にクリーニングが行われており、拍車から除去したインクが記録媒体の搬送中にクリーニングローラーに堆積してゆく。しかしながら、特許文献1では、クリーニングローラーに堆積したインクを除去する方法については提案されておらず、クリーニングローラーに堆積したインクが記録媒体の搬送中に拍車に再付着して印刷面を汚すおそれがある。
【0007】
また、特許文献2の構成では、トレーを出し入れするときにクリーニングが行われるため、CDやDVDなどの特殊な被記録物に印刷しない限りはクリーニングが行われない。従って、CDやDVDなどの特殊な被記録物に印刷しないユーザーが特許文献2のプリンターを使用する場合には、必要な頻度でクリーニングが行われないおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、記録媒体の印刷面に接触する位置にある搬送ローラーに付着したインクを紙送り性能に影響を及ぼさずに、且つ、ユーザーに負担をかけずに適切なタイミングで除去してプリンター外へ排出することが可能な搬送ローラーのクリーニング機構、および、このようなクリーニング機構を備えるプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、記録媒体に向けてインクが吐出される印刷位置を経由する前記記録媒体の搬送経路における前記印刷位置の下流側において、前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーに付着したインクを除去するためのクリーニング機構であって、
前記搬送ローラーに接触するクリーニング位置と、前記搬送ローラーに接触しない退避位置に移動可能なクリーニング部材を有し、
当該クリーニング部材は、
前記印刷位置に向けて繰り出される前記記録媒体を収納する収納部を開閉するための開閉カバーが開き始める動作に連動して、前記搬送ローラーに接触するクリーニング位置に移動し、
前記開閉カバーが閉じる動作に連動して、前記搬送ローラーに接触しない退避位置に移動することを特徴としている。
【0010】
本発明は、このように、開閉カバーを開くとクリーニング部材と搬送ローラーとが接触するため、開閉カバーを開け閉めするタイミング、例えば、記録媒体を交換するタイミングでクリーニングを実行できる。従って、ユーザーがクリーニングの実行頻度を管理しなくても、少なくとも記録媒体を使い切る毎にクリーニングを行うことができる。よって、ユーザーに意識させることなく、必要な頻度でクリーニングを行うことができる。また、開閉カバーを閉めるとクリーニング部材が搬送ローラーに接触しないため、通常の搬送動作中にクリーニングが行われることはない。よって、搬送性能(紙送り性能)に影響を及ぼさずにクリーニングを行うことができる。更に、クリーニングの実行時には開閉カバーが開くため、搬送ローラーから除去されたインクカスを円滑に外部に排出できる。
【0011】
本発明において、前記搬送ローラーのローラー面に溝を形成し、前記クリーニング部材における前記搬送ローラーとの接触面には、前記溝に対応する凸部を形成することが望ましい。このようにすれば、印刷面とローラーとの接触面積を小さくしてインクの付着を抑制できる。また、溝内に堆積したインクをかき出して除去することができる。
【0012】
また、本発明において、前記クリーニング部材を前記クリーニング位置側に付勢する付勢部材を有し、前記搬送経路における前記搬送ローラーの下流側には、可動刃と、当該可動刃の側に付勢された固定刃を備えるカッターが設けられ、前記可動刃は、前記開閉カバーが閉じる動作に連動して前記固定刃の側に移動し、前記固定刃を介して前記クリーニング部材を前記付勢部材の付勢力に逆らって前記退避位置に位置決めしている状態を形成し、前記開閉カバーが開き始める動作に連動して前記固定刃から離れる方向に移動し、前記クリーニング位置への前記クリーニング部材の移動を妨げない位置に前記固定刃を移動可能にした構成にすることができる。このように、カッターを利用してクリーニング部材を動かすように構成すれば、別途クリーニング部材を動かすための機構を設ける必要がなくなる。よって、クリーニング機構の構成を簡素化でき、部材点数を削減できると共に、設置スペースを小さくできる。
【0013】
ここで、前記クリーニング部材を、前記搬送ローラーと交差する回転軌跡に沿って旋回可能に支持されたクリーニングレバーとし、当該クリーニングレバーに、前記開閉カバーが開閉するときの前記固定刃の移動軌跡と交差する位置に延びている操作片を形成しておき、前記開閉カバーが閉じる動作に連動して、前記固定刃を介して前記操作片を移動させることにより、前記クリーニングレバーを前記退避位置側に旋回させる構成にすることができる。このような旋回レバーを用いれば、クリーニング機構の構成を簡素化できる。
【0014】
次に、本発明のプリンターは、
記録媒体を収納する収納部と、
当該収納部を開閉する開閉カバーと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体に向けてインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体を前記印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送経路に沿って搬送すると共に、前記印刷位置の下流側において前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーを備える搬送手段と、
上記のクリーニング機構とを有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明のプリンターは、
記録媒体を収納する収納部と、
当該収納部を開閉する開閉カバーと、
前記収納部の上方に配置されているプラテンユニットと、
前記プラテンユニットのプラテン面に対峙するように配置され、前記収納部から繰り出される前記記録媒体に向けてインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体を前記印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送経路に沿って搬送すると共に、前記印刷位置の下流側において前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーを備える搬送手段と、
請求項3または4に記載の搬送ローラーのクリーニング機構とを有し、
前記開閉カバーは下端を中心として旋回可能に支持され、
前記開閉カバーの上端は前記プラテンユニットの前端部分に連結され、
前記プラテンユニットは、前記開閉カバーが開き始める動作に連動して、前記収納部の上方から前記開閉カバーの開き方向に引き出され、
前記プラテンユニットに前記可動刃が搭載されていることを特徴としている。
【0016】
本発明のプリンターは、このような構成により、開閉蓋を開き始める動作に連動してカッターの可動刃を動かし、クリーニング部材をクリーニング位置に移動させることができる。また、開閉蓋を閉じるときには逆向きに可動刃を動かし、クリーニング部材を退避位置に戻して保持させることができる。
【0017】
このとき、前記開閉カバーの閉じ位置では、前記プラテンユニットの前端部分と、当該開閉カバーによって開閉される記録媒体交換用の開口の縁によって前記記録媒体の排出口が規定されており、前記搬送ローラーは、前記排出口に向けて前記記録媒体を挟み込んで搬送するローラー対における従動ローラーであり、前記ローラー対における駆動ローラーは、前記プラテンユニットに搭載されている構成にすることができる。このような構成では、開閉カバーが開き始めてクリーニング部材が従動ローラーに接触した状態が形成されるのと同時に、駆動ローラーが従動ローラーから離れて従動ローラーが回転自在になる。従って、開閉蓋を開けたときにクリーニングを実行可能にすることができる。
【0018】
この場合に、前記従動ローラーは、前記クリーニング部材が従動ローラーに接触した状態が形成された後、更に開閉カバーを大きく開けるときに、前記プラテンユニットのプラテン面に沿ってセットされている前記記録媒体との接触によって回転するように構成されていることが望ましい。このような構成では、開閉カバーを開けるときに自動的にクリーニングが行われ、ユーザーがクリーニングを意識的に行う必要がない。よって、ユーザーに意識させずに、確実にクリーニングを行うことができる。
【0019】
本発明において、前記搬送ローラーにおける前記記録媒体との接触面にテフロン(登録商標)加工が施されていることが望ましい。これにより、搬送ローラーへのインクの付着を抑制できる。また、搬送ローラーからインクをかき落としやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、開閉カバーを開け閉めするタイミングでクリーニングを行うことができる。従って、ユーザーがクリーニングの頻度を管理しなくても、少なくとも記録媒体を使い切る毎にクリーニングを行うことができる。よって、ユーザーに意識させることなく、必要な頻度でクリーニングを行うことができる。また、開閉カバーを閉めるとクリーニング部材が搬送ローラーに接触しないため、通常の搬送動作中にクリーニングが行われることはない。よって、搬送性能(紙送り性能)に影響を及ぼさずにクリーニングを行うことができる。更に、クリーニングの実行時には開閉カバーが開くため、搬送ローラーから除去されたインクカスを円滑に外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るプリンターの主要部分の断面構成を示す説明図(開閉蓋を閉じた状態)である。
【図2】本発明に係るプリンターの主要部分の断面構成を示す説明図(開閉蓋を途中位置まで閉けた状態)である。
【図3】本発明に係るクリーニング機構の断面構成を示す説明図である。
【図4】クリーニング機構を斜め上方からみた斜視図である。
【図5】クリーニング機構を斜め下方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したクリーニング機構を備えるプリンターの実施の形態を説明する。
【0023】
図1、図2は本発明のプリンターの主要部分の断面構成を示す説明図であり、図1は開閉蓋を閉じた状態、図2は開閉蓋を途中位置まで開けた状態である。プリンター1は、ロール紙から繰り出される長尺状の記録紙に印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2の内部に形成されたロール紙収納部3(収納部)を備えている。プリンターケース2の前面中央部分には、ロール紙装填用の開口4が形成されている。開口4には開閉蓋5(開閉カバー)が取り付けられており、開閉蓋5の上方には記録紙排出ガイド6が配置されている。
【0024】
図1に示すように開閉蓋5を閉じると、記録紙排出ガイド6と開口4の上縁部分との間に記録紙排出口7が形成される。開閉蓋5は、プリンターケース2の前面に沿って起立している閉じ位置5Aから、下端を中心として前方に倒れた開き位置5B(図1において破線5Bで示した位置)まで開けることができる。開閉蓋5を開けると、ロール紙収納部3にロール紙8をその回転軸線が横向きになる状態で投入することができる。
【0025】
ロール紙収納部3の真上には、プラテン9を搭載したプラテンフレーム10が配置されている。プラテンフレーム10の後端にはテンションローラー11が取り付けられている。ロール紙8から繰り出される記録紙Pは、プラテン9の上面によって規定される印刷位置Aを経由する搬送経路B(図1において一点鎖線で示した経路)に沿って、記録紙排出口7に向けて送り出される。すなわち、記録紙Pは、ロール紙8におけるプリンター後方側の部位から繰り出され、繰り出しローラー12および、これよりもプリンター後方および上方に位置しているテンションローラー11を介して、ロール紙収納部3の上方および後方側の部位からプリンター前方に向けて引き出される。そして、テンションローラー11から前方に向けて引き出される記録紙Pは、プラテン9の上面に沿って前方に引き出され、記録紙排出口7からプリンター前方に引き出される。
【0026】
プラテン9の後側には、紙送り駆動ローラー13Aが配置されており、この紙送り駆動ローラー13Aには、紙送り従動ローラー13Bが下側から圧接されている。プラテン9の前側には、排紙駆動ローラー14Aが配置されており、この排紙駆動ローラー14Aには、上側から排紙従動ローラー14B(搬送ローラー/従動ローラー)が圧接されている。プリンター1における記録紙搬送機構(搬送手段)は、上記の繰り出しローラー12およびテンションローラー11によって記録紙Pに所定の張力を付与しながら搬送経路Bに沿って記録紙Pを送り出すと共に、ローラー13A、13Bおよびローラー14A、14Bからなる2組の搬送ローラー対を同期して回転させることにより、プラテンの前側および後側の2箇所の位置で記録紙Pを搬送するように構成されている。
【0027】
プラテン9の真上には、印刷ヘッド15が搭載されたヘッドキャリッジ16がキャリッジガイド軸に沿ってプリンター幅方向に往復移動可能な状態に配置されている。印刷ヘッド15はインクジェットヘッドであり、そのノズル面は一定のギャップでプラテン9の上面に対峙している。印刷ヘッド15から、印刷位置Aを通る記録紙Pの表面に向けてインクを吐出することにより印刷を行う。印刷位置Aを通過したのち、排紙駆動ローラー14A、排紙従動ローラー14Bの間を通過した記録紙Pは、固定刃17および可動刃18を備えるカッター19によって幅方向に切断され、記録紙排出口7から排出される。
【0028】
プラテン9、紙送り従動ローラー13B、排紙駆動ローラー14A、並びに、カッター19の可動刃18およびその駆動機構は、プラテンフレーム10に搭載されて、一体となって移動するプラテンユニット20を構成している。プラテンユニット20の後端には上述したようにテンションローラー11が搭載されており、その前端には記録紙排出ガイド6が取り付けられている。プラテンユニット20は、6節リンク機構を中心に構成されたプラテン支持機構(図示省略)により、水平な姿勢を保ったまま移動可能に支持されている。
【0029】
記録紙排出ガイド6の下側には開閉蓋5の上端が連結されている。プラテンユニット20は、開閉蓋5を閉じたときには、プラテン9が印刷ヘッド15による印刷位置Aを規定している閉じ位置20A(図1に示す位置)にある。不図示のロックを解除して記録紙排出ガイド6を手前側に引くと、図2に示すように、プラテンユニット20がプリンター前方側に引き出され、開閉蓋5はその下端を中心としてプリンター前方側に開き始める。
【0030】
開閉蓋5が閉じ位置5Aから開き位置5Bに向かって倒れるときには、プラテンユニット20は、ほぼ水平な移動軌跡に沿ってプリンター前方側に引き出された後、円弧状の移動軌跡に沿って更にプリンター前方側に移動しながら下降する。また、開閉蓋5を閉じ位置5Aに向けて閉じるときには、同じ移動軌跡に沿って逆向きに移動する。プラテン支持機構は、プラテンユニット20をこのような移動軌跡に沿って移動可能に支持している。
【0031】
プラテンユニット20が上記のような移動軌跡に沿って移動すると、移動中に、開閉蓋5の上端が連結されている記録紙排出ガイド6の下端部分から、開閉蓋5の下端が連結されているプリンター本体フレームの底板の前端付近までの距離が変動する。そこで、本実施形態では、開閉蓋5として、2つの蓋部材をスライド可能に連結したものを用いている。これにより、開閉蓋5は、閉じ位置5Aと開き位置5Bの間を移動するときには、その上端と下端の間の距離の変動に追従して直線状態を保ったまま伸縮しつつ、下端を中心として旋回する。
【0032】
(クリーニング機構)
印刷ヘッド15の下流側に配置された排紙従動ローラー14Bは、記録紙Pの印刷面に接触して回転するため、印刷面に吐出された乾き切らないインクが排紙従動ローラー14Bのローラー面に付着して堆積してしまう。そこで、印刷ヘッド15の下流側には、排紙従動ローラー14Bに付着したインクを除去するためのクリーニング機構21が設けられている。クリーニング機構21は、図1、図2に示すように、一端を排紙従動ローラー14Bの上部に伸ばした状態で旋回可能に支持されているクリーニングレバー22(クリーニング部材)と、このクリーニングレバー22の他端を上向きに付勢している引張りコイルばね23(付勢部材)を備えている。
【0033】
図3はクリーニング機構の断面構成を示す説明図であり、図3(a)は開閉蓋が閉じてクリーニングレバーが後述する退避位置にある状態、図3(b)は開閉蓋が開き始めてクリーニングレバーが後述するクリーニング位置にある状態を示している。プリンターケース2に形成されたロール紙装填用の開口4の上縁部分の内側には、プリンター本体フレーム(図示省略)に支持された状態で、クリーニング機構21の支持フレーム24が配置されている。支持フレーム24は、プリンターケース2の前面に沿って上下方向に延びている前フレーム24aと、前フレーム24aの内側から排紙従動ローラー14Bの上部に向かって横向きに延びている上フレーム24bを備えている。クリーニングレバー22は、上フレーム24bの下側に設けられている支持軸25によって回転自在に支持されている。クリーニングレバー22における前フレーム24aの側に延びた前端部分にはフックが形成されており、このフックと、前フレーム24aの上端に形成されたフックとの間に、引張りコイルばね23が掛け渡されている。
【0034】
図4、図5はクリーニング機構の斜視図であり、図4は斜め上方からみた斜視図、図5は斜め下方から見た斜視図である。これらの図に示すように、排紙従動ローラー14Bの一端側および他端側には、周溝26(溝)を一定ピッチで形成したローラー面27A、27Bが、所定の軸方向長さにわたって設けられている。ローラー面27A、27Bは、記録紙Pの左端寄りの部分および右端寄りの部分に接触して回転し、排紙駆動ローラー14Aとの間に記録紙Pを挟みこんで搬送する部分である。ローラー面27A、27Bにはテフロン(登録商標)加工などの表面処理が施されており、インクの付着が抑制されると共に、堆積したインクをかき落としやすい表面仕上げとなっている。本実施形態では、クリーニングレバー22として、ローラー面27Aの上部に延びているクリーニングレバー22Aと、ローラー面27Bの上部に延びているクリーニングレバー22Bの2本を設けている。
【0035】
クリーニングレバー22Aにおけるローラー面27Aの上部に延びている後端部分22aは、ローラー面27Aに対応する幅広な形状となっている。後端部分22aにおけるローラー面27Aと対峙する側の面は、周溝26の溝方向と同じ方向に延びている多数の凸部28が周溝26に対応するピッチで多数形成された凹凸面となっている。そして、もう1つのクリーニングレバー22Bおよびローラー面27Bは、その配置を除いては、クリーニングレバー22Aおよびローラー面27Aと同一の構成となっている。
【0036】
図2、図3(b)に示すように、引張りコイルばね23の付勢力によってクリーニングレバー22(22A、22B)の前端部分が上昇し、クリーニングレバー22(22A、22B)が図3(c)に示す矢印C方向に旋回すると、クリーニングレバー22(22A、22B)の後端部分22aがローラー面27A、27Bに接触した状態が形成される。このとき、クリーニングレバー22(22A、22B)の凸部28と、ローラー面27A、27Bの周溝26が噛み合った状態となる。従って、この状態で排紙従動ローラー14Bを回転させると、ローラー面27A、27Bに堆積したインクがクリーニングレバー22A、22Bの後端部分22aによってかき取られる。また、このとき、凸部28によって周溝26内に堆積したインクがかき出される。
【0037】
開閉蓋5が閉じ位置5Aにあるときには、図1、図3(a)に示すように、クリーニングレバー22(22A、22B)は、引張りコイルばね23の付勢力に逆らって、各後端部分22aがローラー面27A、27Bと接触していない退避位置22(1)に保持されている。一方、開閉蓋5を開き始めると、退避位置22(1)への保持状態が解消されるため、クリーニングレバー22(22A、22B)は、図2、図3(b)に示すように、引張りコイルばね23による付勢方向に旋回し、各後端部分22aがローラー面27A、27Bと接触しているクリーニング位置22(2)に移動する。このように、開閉蓋5が閉じたときにクリーニングレバー22A、22Bを退避位置22(1)へ移動させて保持させ、開閉蓋5を開き始めるときに保持状態を解消する機能は、以下に説明するように、クリーニング機構21の下側に設けられた記録紙切断用のカッター19によって実現されている。
【0038】
図3(a)に示すように、クリーニング機構21における前フレーム24aの下端部分は、プリンター後方に向かって屈曲して延びており、その先端と排紙従動ローラー14Bとの間には、上述したカッター19の固定刃17および可動刃18が配置されている。可動刃18は、刃先18aを上向きにして、記録紙Pが通過する搬送経路Bの下側に配置されている。一方、固定刃17は、刃先17aを下向きにして搬送経路Bの上側に配置されている。カッター19は、プラテンユニット20の側に搭載された駆動機構によって可動刃18を固定刃17に向けて進退動させることにより、記録紙Pを切断する構成である。本実施形態では、固定刃17と排紙従動ローラー14Bの間に、クリーニングレバー22(22A、22B)に形成された操作片22bが配置されている。
【0039】
図1、図3(a)は、開閉蓋5が閉じ位置5Aにあり、可動刃18の刃先18aを固定刃17の刃先17aよりも下側に下降させた状態である。可動刃18における記録紙Pの通過範囲から外れた位置には、可動刃18の刃先18aよりも上方に延びている固定刃押圧片18bが形成されている。ここで、固定刃17と可動刃18は、固定刃17が搬送方向の上流側(排紙従動ローラー14Bの側)、可動刃18が搬送方向の下流側(記録紙排出口7の側)に配置されており、固定刃17は、刃先部分を可動刃18の側(搬送方向の下流側)に向けて付勢した状態で取り付けられている。開閉蓋5が閉じ位置5Aにあるときには、プラテンユニット20が閉じ位置20Aにあるため、プラテンユニット20に搭載された可動刃18は、少なくとも固定刃押圧片18bの部分が固定刃17に当接して、固定刃17を付勢力に逆らって排紙従動ローラー14Bの側に押圧している。
【0040】
すなわち、開閉蓋5を閉じたときには、固定刃17が付勢力に逆らって操作片22b側に移動し、更に、固定刃17を介して操作片22bまでも排紙従動ローラー14B側に移動した状態に位置決めされる。これにより、クリーニングレバー22A、22Bが引張りコイルばね23の付勢力に逆らって退避位置22(1)まで旋回した状態が形成される。なお、この状態では、固定刃17に可動刃18を押し付けた状態が形成されているため、可動刃18を上下動させて記録紙Pを切断することができる。
【0041】
一方、開閉蓋5を開き始めると、プラテンユニット20がプリンター前方側に引き出されるため、図2、図3(b)に示すように、可動刃18が固定刃17から離れる。このため、固定刃17が刃先17aをプリンター前方に向けて傾斜させた姿勢に戻り、固定刃17が操作片22bから離れる。これにより、固定刃17によって旋回位置が決まっていたクリーニングレバー22A、22Bが、引張りコイルばね23による付勢方向に旋回してクリーニング位置22(2)まで戻る。従って、排紙従動ローラー14Bのローラー面27A、27Bにクリーニングレバー22A、22Bの後端部分22aが接触した状態が形成される。
【0042】
また、開閉蓋5を開き始めるとき、すなわち、プラテンユニット20をプリンター前方側に引き出し始めるときには、プラテンユニット20に搭載された排紙駆動ローラー14Aが排紙従動ローラー14Bから離れる。これにより、排紙従動ローラー14Bは回転可能となる。そして、クリーニングレバー22A、22Bがローラー面27A、27Bに接触した後、更に開閉蓋5を開いてゆくと、排紙従動ローラー14Bの下側にセットされている記録紙Pが、プラテンユニット20と共にほぼ水平に引き出される。このとき、引き出される記録紙Pと排紙従動ローラー14Bとの接触により、排紙従動ローラー14Bが従動回転する。よって、このとき、クリーニングレバー22A、22により、堆積したインクが、排紙従動ローラー14Bのローラー面27A、27Bからかき落とされる。かき落とされたインクカスは、記録紙Pの上に落下して記録紙Pと共にプリンター前方側に引き出されるため、自動的にプリンター内部から除去される。このようにして、開閉蓋5の動きに連動して排紙従動ローラー14Bのクリーニングが行われる。
【0043】
開閉蓋5を閉じるときにも、同様に排紙従動ローラー14Bのクリーニングが行われる。すなわち、開閉蓋5を閉じるときには、プラテンユニット20がプリンター後方側に戻り、このとき、記録紙Pをプラテン面に沿ってセットしたプラテン9が排紙従動ローラー14Bの下を通過する。よって、この記録紙Pとの接触により、排紙従動ローラー14Bが開閉蓋5を開くときとは逆向きに従動回転し、クリーニングが行われる。更に、開閉蓋5を閉じた後には、次の印刷に備えて記録紙Pの予備搬送が行われるため、開閉蓋5を閉じる際のクリーニングによって記録紙Pの上に落下したインクカスは、予備搬送により記録紙排出口7から排出される記録紙Pと共に、自動的にプリンター1から排出される。
【0044】
以上のように、本実施形態のプリンター1におけるクリーニング機構21は、開閉蓋5を開き始める操作、および、閉じる操作に連動してクリーニングを行うことができるので、例えば、ロール紙8を交換するタイミングで、自動的に排紙従動ローラー14Bのクリーニングを行うことができる。従って、ユーザーがクリーニングの頻度を管理しなくても、少なくともロール紙8を使い切る毎にクリーニングを行うことができる。また、プリンター1では、開閉蓋5を開け閉めするときは通常の搬送動作は行われないため、通常の搬送動作中にクリーニングが行われることはない。よって、クリーニングによって搬送性能(紙送り性能)が低下することはない。更に、かき落とされたインクカスが載った記録紙Pを開閉蓋5の開閉動作に連動して外部に排出できるため、インクカスを円滑に外部に排出できる。
【0045】
(改変例)
(1)上記実施形態では、カッター19によりクリーニングレバー22を退避位置22(1)に移動させて保持させる構成としていたが、カッターを設ける必要のないプリンターにおいては、プラテンユニット20に操作片22bと接触可能な位置に延びている操作部材を搭載して、この操作部材によって直接操作片22bを押圧してクリーニングレバー22を旋回させることができる。例えば、操作部材を排紙駆動ローラー14Aに連結して、排紙駆動ローラー14Aが排紙従動ローラー14Bから離れると、クリーニングレバー22の保持状態が解消されるように構成することも可能である。
【0046】
(2)上記実施形態では、クリーニング部材として旋回式のクリーニングレバー22を用いていたが、他の構成のクリーニング部材を用いることもできる。例えば、上下方向にスライド可能なクリーニング部材を排紙従動ローラー14Bの上方に配置して、これを下向きに付勢しておく。そして、このクリーニング部材の下側に傾斜案内面を形成し、プラテンユニット20に上向きに延びる操作部材を搭載しておくことが考えられる。このようにすると、プラテンユニット20が閉じ位置20Aに戻るときには、プラテンユニット20に搭載した操作部材が、排紙従動ローラー14B側に戻るときに傾斜案内面に当接してクリーニング部材を上方に押し上げるので、クリーニング部材が排紙従動ローラー14Bから離れる。また、開閉蓋5が開き始めてプラテンユニット20が閉じ位置20Aから引き出されるときには、操作部材がクリーニング部材の下降を妨げない位置に引き出される。これにより、クリーニング部材が下降して排紙従動ローラー14B側に接触する。よって、クリーニングレバー22と同様に、開閉蓋の開閉操作に連動してクリーニングを行うことができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、排紙従動ローラー14Bのローラー面27A、27Bに周溝26を形成してインクの付着を抑制しているが、溝の形状は周溝に限定されない。例えば、ローラー面27A、27Bに排紙従動ローラー14Bの軸線方向に延びる溝を形成し、クリーニングレバー22の後端部分22aには、この溝と平行に延びる直線状の凸部を形成することが考えられる。
【符号の説明】
【0048】
1…プリンター、2…プリンターケース、3…ロール紙収納部(収納部)、4…開口、5…開閉蓋(開閉カバー)、5A…閉じ位置、5B…開き位置、6…記録紙排出ガイド、7…記録紙排出口、8…ロール紙、9…プラテン、10…プラテンフレーム、11…テンションローラー、12…繰り出しローラー、13A…紙送り駆動ローラー、13B…紙送り従動ローラー、14A…排紙駆動ローラー、14B…排紙従動ローラー(搬送ローラー/従動ローラー)、15…印刷ヘッド、16…ヘッドキャリッジ、17…固定刃、17a…刃先、18…可動刃、18a…刃先、18b…固定刃押圧片、19…カッター、20…プラテンユニット、20A…閉じ位置、21…クリーニング機構、22、22A、22B…クリーニングレバー(クリーニング部材)、22(1)…退避位置、22(2)…クリーニング位置、22a…後端部分、22b…操作片、23…引張りコイルばね(付勢部材)、24…支持フレーム、24a…前フレーム、24b…上フレーム、25…支持軸、26…周溝(溝)、27A…ローラー面、27B…ローラー面、28…凸部、A…印刷位置、B…搬送経路、P…記録紙(記録媒体)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けてインクが吐出される印刷位置を経由する前記記録媒体の搬送経路における前記印刷位置の下流側において、前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーに付着したインクを除去するためのクリーニング機構であって、
前記搬送ローラーに接触するクリーニング位置と、前記搬送ローラーに接触しない退避位置に移動可能なクリーニング部材を有し、
当該クリーニング部材は、
前記印刷位置に向けて繰り出される前記記録媒体を収納する収納部を開閉するための開閉カバーが開き始める動作に連動して、前記搬送ローラーに接触するクリーニング位置に移動し、
前記開閉カバーが閉じる動作に連動して、前記搬送ローラーに接触しない退避位置に移動することを特徴とする搬送ローラーのクリーニング機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬送ローラーのローラー面には溝が形成されており、
前記クリーニング部材における前記搬送ローラーとの接触面には、前記溝に対応する凸部が形成されていることを特徴とする搬送ローラーのクリーニング機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記クリーニング部材を前記クリーニング位置側に付勢する付勢部材を有し、
前記搬送経路における前記搬送ローラーの下流側には、可動刃と、当該可動刃の側に付勢された固定刃を備えるカッターが設けられ、
前記可動刃は、
前記開閉カバーが閉じる動作に連動して前記固定刃の側に移動し、前記固定刃を介して前記クリーニング部材を前記付勢部材の付勢力に逆らって前記退避位置に位置決めしている状態を形成し、
前記開閉カバーが開き始める動作に連動して前記固定刃から離れる方向に移動し、前記クリーニング位置への前記クリーニング部材の移動を妨げない位置に前記固定刃を移動可能にすることを特徴とする搬送ローラーのクリーニング機構。
【請求項4】
請求項3において、
前記クリーニング部材は、前記搬送ローラーと交差する回転軌跡に沿って旋回可能に支持されたクリーニングレバーであり、
当該クリーニングレバーには、前記開閉カバーが開閉するときの前記固定刃の移動軌跡と交差する位置に延びている操作片が形成されており、
前記開閉カバーが閉じる動作に連動して、前記固定刃を介して前記操作片を移動させることにより、前記クリーニングレバーを前記退避位置側に旋回させることを特徴とする搬送ローラーのクリーニング機構。
【請求項5】
記録媒体を収納する収納部と、
当該収納部を開閉する開閉カバーと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体に向けてインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体を前記印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送経路に沿って搬送すると共に、前記印刷位置の下流側において前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーを備える搬送手段と、
請求項1ないし4のいずれかの項に記載の搬送ローラーのクリーニング機構とを有することを特徴とするプリンター。
【請求項6】
記録媒体を収納する収納部と、
当該収納部を開閉する開閉カバーと、
前記収納部の上方に配置されているプラテンユニットと、
前記プラテンユニットのプラテン面に対峙するように配置され、前記収納部から繰り出される前記記録媒体に向けてインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記収納部から繰り出される前記記録媒体を前記印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送経路に沿って搬送すると共に、前記印刷位置の下流側において前記記録媒体の印刷面に接触して回転する搬送ローラーを備える搬送手段と、
請求項3または4に記載の搬送ローラーのクリーニング機構とを有し、
前記開閉カバーは下端を中心として旋回可能に支持され、
前記開閉カバーの上端は前記プラテンユニットの前端部分に連結され、
前記プラテンユニットは、前記開閉カバーが開き始める動作に連動して、前記収納部の上方から前記開閉カバーの開き方向に引き出され、
前記プラテンユニットに前記可動刃が搭載されていることを特徴とするプリンター。
【請求項7】
請求項6において、
前記開閉カバーの閉じ位置では、前記プラテンユニットの前端部分と、当該開閉カバーによって開閉される記録媒体交換用の開口の縁によって前記記録媒体の排出口が規定されており、
前記搬送ローラーは、前記排出口に向けて前記記録媒体を挟み込んで搬送するローラー対における従動ローラーであり、
前記ローラー対における駆動ローラーは、前記プラテンユニットに搭載されていることを特徴とするプリンター。
【請求項8】
請求項7において、
前記従動ローラーは、
前記クリーニング部材が従動ローラーに接触した状態が形成された後、更に開閉カバーを大きく開けるときに、前記プラテンユニットのプラテン面に沿ってセットされている前記記録媒体との接触によって回転することを特徴とするプリンター。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかの項において、
前記搬送ローラーにおける前記記録媒体との接触面にテフロン(登録商標)加工が施されていることを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245717(P2011−245717A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120210(P2010−120210)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】