説明

搬送材およびその製造方法

【課題】安価に製造でき、しかも十分な衝撃耐久性を備える搬送材を提供する。
【解決手段】無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混合し、この混合繊維をフォーミングマシンに投入してシート状となし、シート状の混合繊維をニードルパンチで不織布シート材3とした後、不織布シート材3を加熱し熱可塑性樹脂繊維を溶融させて無機繊維が固定された構造の搬送材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送材とその製造方法に関し、特に、金属製収納ボックスの内周に沿って配設されて、当該ボックス内に収納された部品の傷付きを防止する等の用途に使用できる搬送材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部品の搬送の用に供するために金属製の収納ボックス(コンテナ)が使用されているが、搬送時の部品の傷付きを防止するため、収納ボックスの内周にはこれに沿って養生用の搬送材が配設される。この搬送材としては従来、ダンボールプラスチックや樹脂板が多用されている。
【0003】
なお、特許文献1には、発泡樹脂シートよりなる壁面養生材を、マグネット付支持板とこれに吸着される金属製ホルダとで挟着支持するようにしたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−213084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ダンボールプラスチックや樹脂板は高価な上に、衝撃耐久性に乏しいため頻繁な交換が必要であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、安価に製造でき、しかも十分な衝撃耐久性を備える搬送材とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の搬送材は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合物で不織布シート材が構成され、不織布シート材の少なくとも表面において、溶融した熱可塑性樹脂繊維によって無機繊維が固定されている。
【0008】
このような搬送材は安価に製造でき、しかも十分な衝撃耐久性を発揮するから養生材として使用した場合に頻繁な交換が不要とある。また、上記搬送材を搬送用コンテナの基材として使用することもできる。
【0009】
電気・電子部品の養生や搬送を行なう場合には、不織布シート材の表面および裏面に帯電防止フィルムが溶着されていることが好ましい。
【0010】
また、不織布シート材の表面ないし裏面の一方にマグネットフィルムが溶着されていると、金属製の収納ボックス内に設置した場合に、マグネットフィルムが収納ボックスの内壁に吸着されて位置決めされるから、接着テープ等で固定する手間を要しない。
【0011】
無機繊維としてはグラスファイバー、カーボンファイバー、バサルトファイバー等が使用でき、その外径は2μm〜15μmの範囲のものが好ましく、9μmのものが最も好ましい。
【0012】
熱可塑性繊維としてはポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレン(PE)等が使用でき、その太さは2dtex〜15dtexの範囲のものが好ましく、8.56dtexのものが最も好ましい。
【0013】
無機繊維と熱可塑性樹脂繊維の混合割合は、全体を100%として質量比で50 (%):50(%)に設定するのが好ましい。
【0014】
本発明の搬送材の製造方法は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混合し、この混合繊維をフォーミングマシンに投入してシート状となし、シート状の混合繊維をニードルパンチで不織布シート材とした後、不織布シート材を加熱し熱可塑性樹脂繊維を溶融させて無機繊維が固定された構造の搬送材を得る。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の搬送材は、安価に製造できるとともに、十分な衝撃耐久性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態における、搬送材の製造工程を示す概略図である。
【図2】本発明の搬送材の製造工程を示す概略図である。
【図3】養生用ケースの展開図である。
【図4】養生用ケースの斜視図である。
【図5】養生用ケースを挿置した収納ボックスの斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態における、搬送材を外壁として使用した搬送用コンテナの斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の搬送材は例えば図1、図2に示す工程で製造される。図1は不織布シート材を製造する工程で、二台のエアレイ式フォーミングマシン1A,1Bを備え、各フォーミングマシン1A,1Bにガラス繊維(GF)とポリプロピレン(PP)繊維(以下、PP繊維という)を50(%):50(%)の質量割合で投入する。シュータ11から投入されたGFとPP繊維の混合繊維は各フォーミングマシン1A,1B内の第1コンベア12によって搬送され(以下、図1中の矢印で示す)、次段の第2コンベア13によって幅方向が均一に揃えられた状態でメインシリンダ14に送られる。
【0018】
メインシリンダ14で解繊され、吹き飛ばされた混合繊維は第3コンベア15上でシート状に積層されて搬送される。そして、フォーミングマシン1Bから排出されてコンベア41,42で搬送されるシート状混合繊維に、フォーミングマシン1Aから排出されたシート状混合繊維が重ねられて、次段のニードルパンチ2へ送られる。シート状混合繊維を二層に重ねるのは、この方が目付の局部的なバラツキを緩和できるからである。二層に積層されたシート状混合繊維は、ニードルパンチ2で繊維同士が交絡させられて不織布シート材3となり、ロール状に巻き取られる。なお、フォーミングマシンとしてはカードフォーミング式のものを使用することもできる。
【0019】
不織布シート材3は図2に示すように加熱工程を経て搬送材とされるが、電気・電子部品の収納や搬送等に使用する場合には、シート材3の両面に帯電防止フィルム4A,4Bが張設される。そしてさらに養生材として使用する場合には、シート材3の一方の面の帯電防止フィルム4A上に更に帯状のマグネットフィルム5が重ねられる。すなわち、図2において、不織布シート材3はロール状態から引き出されるが、この時同時に、その上下面側に帯電防止用フィルム4A,4Bがロール状態から引き出されて重ねられ、さらに下側の帯電防止フィルム4Aの下方に左右二列(一方のみ示す)に一定幅の帯状のマグネットフィルム5がロール状態から引き出されて重ねられる。
【0020】
不織布シート材3に帯電防止フィルム4A,4Bおよびマグネットフィルム5を重ねたものは熱風炉61内へ通される。この通過中に加熱されて、不織布シート材3中のPP繊維が溶融させられ、溶融したPP繊維によってGFが固定されるとともに、上下の帯電防止フィルム4A,4Bおよびマグネットフィルム5が互いに融着させられて搬送材7が形成される。熱風炉61を出た搬送材7は熱プレス62に通されてその表面の毛羽が抑えられるとともに全体の厚みが調整される。そして、最終段の冷却プレス63に通されて、最終的な厚み(例えば3mm〜6mm程度)調整がなされるとともに溶融された搬送材7が冷却され、続いて裁断機10によって所定形状に裁断される。
【0021】
所定形状に裁断された搬送材7は図3に示すように、開放箱体の展開形状になるように底壁を構成する四角形の搬送材71の周囲に側壁を構成する四角形の搬送材72を高周波ウェルダー等によって結合し、これら側壁をマグネットフィルム5が外面にくるように折り曲げて、さらに高周波ウェルダー等によって結合して図4に示すような開放箱状の養生用ケース8とする。
【0022】
養生用ケース8は図5に示すように、例えば金属製の網状収納ボックス(メッシュボックス)Gの内周全面に沿うように挿置される。養生用ケース8は外周のマグネットフィルム5が収納ボックスGの金属網の外壁に吸着されることによって当該ボックスG内に位置決めされる。このような養生用ケース8によって、収納ボックスG内に収納された部品Pの、搬送時の傷付きが防止されるとともに、帯電防止シート4A,4B(図2参照)によって、収納された部品Pが電気・電子部品等であっても静電気による損傷が防止される。
【0023】
(第2実施形態)
上記第1実施形態と同様の工程で製造された搬送材7を、図6に示すように、そのまま外壁に使用して搬送用コンテナHとして使用することができる。すなわち、第1実施形態と同様の工程で製造されて所定形状に裁断された搬送材7を高周波ウェルダー等で結合して、搬送材7を外壁とする開放箱体とし、その対向する側壁の壁面に取っ手91を取り付けるとともに、側壁上縁の全周にコーナ部材92や枠部材93を取り付けて、通い箱的なコンテナHとする。このようなコンテナHは、従来のダンボールプラスチックを使用したものに比して安価であり、かつ耐久性も優れている。
【0024】
なお、帯電防止シートやマグネットフィルムは本発明の搬送材に必ずしも設ける必要はなく、用途に応じて設ければ良い。
【符号の説明】
【0025】
1A,1B…フォーミングマシン、2…ニードルパンチ、3…不織布シート材、4A,4B…帯電防止フィルム、5…マグネットフィルム、61…熱風炉、62…熱プレス、63…冷却プレス、7…搬送材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合物で不織布シート材が構成され、前記不織布シート材の少なくとも表面において、溶融した前記熱可塑性樹脂繊維によって前記無機繊維が固定されていることを特徴とする搬送材。
【請求項2】
前記不織布シート材の表面および裏面に帯電防止フィルムが溶着されている請求項1に記載の搬送材。
【請求項3】
前記不織布シート材の表面ないし裏面の一方にマグネットフィルムが溶着されている請求項1又は2に記載の搬送材。
【請求項4】
前記無機繊維として外径2μm〜15μmのものを使用した請求項1に記載の搬送材。
【請求項5】
前記熱可塑性繊維として太さ2dtex〜15dtexのものを使用した請求項1又は2に記載の搬送材。
【請求項6】
前記無機繊維と熱可塑性樹脂繊維の混合割合を、全体を100%として質量比で50(%):50(%)に設定した請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送材。
【請求項7】
無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混合し、この混合繊維をフォーミングマシンに投入してシート状となし、シート状の混合繊維をニードルパンチで不織布シート材とした後、前記不織布シート材を加熱し前記熱可塑性樹脂繊維を溶融させて前記無機繊維が固定された構造の搬送材を得ることを特徴とする搬送材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56619(P2012−56619A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204271(P2010−204271)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】