説明

搬送物の位置決め装置

【課題】搬送物を変位させたのち、正確に基本位置に戻すことができる搬送物の位置決め装置を得る。
【解決手段】搬送物の位置決め装置10は、下ブロック12と中間体80と上ブロック120とを含む。中間体80は、リテーナ82とボール90とで構成され、リテーナ82から下ブロック12内の可動空間108および上ブロック120内の可動空間170に向かって、軸部材100が延びるように形成される。下ブロック12と軸部材100との間に第1のバネ部材110が取り付けられ、上ブロック120と軸部材100との間に第2のバネ部材140が取り付けられる。上ブロック120、リテーナ82、下ブロック12は、互いにスライドするように変位することができる。下ブロック12と軸部材100の対向部に第1の磁石対22を形成し、上ブロック120と軸部材100の対向部に第2の磁石対24を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送物の位置決め装置に関し、特にたとえば、ローラコンベアなどで搬送されてきた搬送物を所定の位置に固定し、さらに固定した搬送物の位置を微調整することができる搬送物の位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ローラコンベアなどで搬送されてきた搬送物を所定の位置に固定する場合、図17に示すように、ローラコンベアのローラ間に配置された複数の位置決め装置1上に搬送物2を載置して持ち上げることにより、搬送物2が固定される。ここで、搬送物2をさらに正確な位置に固定するために、位置決め装置1が、所定の範囲で水平方向に移動可能に形成されている。
【0003】
位置決め装置1は、図18に示すように、下ブロック3を含み、下ブロック3は、取付フランジ3aとロックシリンダ3bとを含む。ロックシリンダ3bには、環状の窪み部が形成され、この窪み部にロックピストン3cがスライド移動可能に嵌め込まれる。ロックピストン3cは、コイルバネ3dによってロックシリンダ3bに向かって付勢されている。ロックシリンダ3b上にはボール当て板3eが配置され、このボール当て板3e上に中間体4が載置される。
【0004】
中間体4は、円環状に形成されたリテーナ4aを含み、リテーナ4aに形成された複数の保持孔にボール4bが嵌め込まれる。これらのボール4bが、ボール当て板3e上で回転することにより、リテーナ4aがボール当て板3eの面に平行移動することができる。リテーナ4aの中央部から両側に向かって、軸部材4cが延びるように形成される。
【0005】
中間体4上には、上ブロック5が取り付けられる。上ブロック5は、天板5aと、天板5aを受ける天板受台5bとを含む。さらに、天板受台5bには、ボール当て板5cが取り付けられ、ボール当て板5cが中間体4のボール4b上に載置される。したがって、ボール4bが回転することにより、上ブロック5は、下ブロック3と平行に移動することができる。
【0006】
軸部材4cとロックシリンダ3bとの間、および軸部材4cと天板受台5bとの間には、バネ部材6が取り付けられる。バネ部材6は、図19に示すように、ステンレス鋼などを円錐状に巻回したコイルバネとして形成される。このバネ部材6が取り付けられることにより、下ブロック3と上ブロック5とが重なり合い、軸部材4cが下ブロック3および上ブロック5の中央部に配置されて、安定した基本位置となる。
【0007】
このような構成とすることにより、図17の矢印に示すように、位置決め装置1の上ブロック5は、軸部材4cの可動範囲内で基本位置の周囲に変位可能となる。したがって、位置決め装置1上に搬送物2が載置された状態で、たとえばエアシリンダなどで搬送物2を押すことにより、軸部材4cの可動範囲内で搬送物2の位置を調整することができる。ここで、図20に示すように、下ブロック3内における軸部材4cの可動範囲と上ブロック5内における軸部材4cの可動範囲の合計が、位置決め装置1全体で得られる変位量となる。そのため、下ブロック3内における軸部材4cの可動範囲および上ブロック5内における軸部材4cの可動範囲が小さくても、位置決め装置1全体として、大きい変位量を得ることができる。また、ロックシリンダ3b内に圧縮空気を送り込むことにより、ロックピストン3cを変位させて軸部材4cに形成されたフランジ部に押し当てることにより、軸部材4cを任意の位置で固定することができる。したがって、搬送物2を所望の位置に変位させた後に、その位置を固定することができる(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/069303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような位置決め装置に用いられているバネ部材は、円錐状に巻回されたものであり、軸部材が基本位置から大きく変位した場合には、バネ部材の変形は大きく、基本位置に戻ろうとする力は大きい。しかしながら、軸部材が基本位置の近傍で変位した場合には、バネ部材の変形は小さく、基本位置に戻ろうとする力は小さい。そのため、搬送物を所定の位置に変位させたのち、基本位置に戻そうとしたとき、正確に基本位置で停止せず、基本位置の近傍で停止してしまう場合がある。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、搬送物を変位させたのち、正確に基本位置に戻すことができる搬送物の位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、平面を有する下ブロックと、下ブロックの平面上でスライド可能に形成される中間体と、下ブロックの平面と平行な向きにおいて中間体に対してスライド可能に形成される上ブロックと、中間体から下ブロック側および上ブロック側に延びるように形成される軸部材と、下ブロックと軸部材の対向部に形成されて互いに引き付け合う第1の磁石対と、上ブロックと軸部材の対向部に形成されて互いに引き付け合う第2の磁石対とを含み、下ブロック内および上ブロック内には、中間体の動きにともなって動く軸部材の可動範囲を規制する可動空間が形成され、上ブロックと軸部材とが所定の位置関係にあるときに第1の磁石対が相互に重なり合う位置に配置され、下ブロックと軸部材とが所定の位置関係にあるときに第2の磁石対が相互に重なり合う位置に配置される、搬送物位置決め装置である。
このような搬送物の位置決め装置において、中間体は、ボールと、ボールを保持する保持孔が形成されたリテーナとで構成され、保持孔に保持されたボールが下ブロックの平面上に配置され、かつボール上に上ブロックが載置された構成とすることができる。
互いに引き付け合う磁石対は、その間隔が小さいほど引き付け合う力が大きい。そのため、磁石対が相互に重なり合う位置関係になったとき、最も安定した状態となる。つまり、上ブロックと軸部材とが所定の位置関係となり、下ブロックと軸部材とが所定の位置関係となったときに、最も安定した状態となる。ここで、位置決め装置の基本位置における上ブロック、軸部材、下ブロックの位置関係を最も安定した所定の位置関係としておくことにより、位置決め装置を正確に基本位置に戻すことができる。
【0012】
さらに、下ブロックと中間体とを所定の位置関係に保持するための第1のバネ部材と、中間体と上ブロックとを所定の位置関係に保持するための第2のバネ部材とを含む構成としてもよい。
ここで、第1のバネ部材および第2のバネ部材は、円錐状に巻回されたコイルバネで構成され、中間体の一方面側において軸部材と下ブロックとの間にコイルバネが嵌め込まれ、中間体の他方面側において軸部材と上ブロックとの間にコイルバネが嵌め込まれる構成とすることができる。
バネ部材を用いることにより、上ブロック、軸部材、下ブロックが所定の位置から大きく変位したとき、バネ部材の大きい変位により、所定の位置に戻そうとする力が働く。上ブロック、軸部材、下ブロックが所定の位置に近づくと、第1および第2の磁石対の引き付け合う力によって、確実に所定の位置に引き戻される。
【0013】
また、軸部材の端部に形成されて可動空間内で移動するフランジ部と、下ブロック内において可動空間に向かって往復運動可能に形成されるピストン部材とを含み、可動空間に向かってピストン部材を移動させることによりフランジ部にピストン部材が押し付けられるようにしてもよい。
軸部材の端部にフランジ部を形成し、下ブロックに形成されたピストン部材をフランジ部に押し付けることができる構成とすることにより、中間体の動きがロックされ、上ブロックもロックされる。したがって、上ブロックに載置された搬送物を一定の位置に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、上ブロックと軸部材、および下ブロックと軸部材にそれぞれ磁石対を形成することにより、これらの部材の基本位置において、対向する磁石が最も強く引き付け合い、上ブロック、軸部材、下ブロックを正確に基本位置に戻すことができる。対向する磁石が十分大きく、上ブロック、軸部材、下ブロックが基本位置から変位したときに、磁石の引き付け合う力のみで基本位置に戻す力がある場合、磁石の力だけを利用することができる。
上ブロック、軸部材、下ブロックが基本位置から変位したとき、対向する磁石が大きく離れて、基本位置に戻す力が弱い場合、基本位置に戻すためのバネ部材を併用することができる。この場合、上ブロック、軸部材、下ブロックが大きく変位したとき、バネ部材が大きく変形するため、基本位置から大きく変位したところでは、バネ部材の力によって基本位置に戻ろうとする力が働く。そして、基本位置に近づいて、バネ部材による力が弱くなったとき、磁石の引き付け合う力によって、上ブロック、軸部材、下ブロックが、正確に基本位置に引き戻される。
【0015】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はこの発明の搬送物の位置決め装置の一例を示す平面図であり、図2はその側面図である。位置決め装置10は、下ブロック12を含む。下ブロック12は、図3に示すように、取付フランジ14を含む。取付フランジ14は、図4(A)(B)に示すように、アルミニウムなどで円板状に形成され、中央部に円形の凹部16が形成される。凹部16の外周側には、4つのボルト用孔18が形成され、さらにその外周側に別の4つのボルト用孔20が形成される。内周側のボルト用孔18は、後述のロックシリンダをボルトで固定するためのものであり、外周側のボルト用孔20は、位置決め装置10をボルトによりローラベアリングのローラ間などに取り付けるためのものである。また、凹部16の中央部には、たとえば円形の磁石22aが形成される。磁石22aは、たとえば取付フランジ14に埋め込むことによって固定される。
【0017】
取付フランジ14上には、ロックシリンダ30が取り付けられる。ロックシリンダ30は、図5(A)(B)に示すように、アルミニウムなどで円環状に形成される。ロックシリンダ30の一方面側には、取付フランジ14のボルト用孔18に対応する位置に、雌ねじが形成されたねじ孔32が形成される。ロックシリンダ30の中央部には、円形の貫通孔34が形成される。貫通孔34の外周側において、ロックシリンダ30の一方面に、環状の窪み部36が形成される。窪み部36の内部には段差36aが形成され、内周側が浅く、外周側が深く形成されている。ロックシリンダ30の側面から窪み部36に向かって、圧縮空気を送り込むための1つの空気孔38が形成される。
【0018】
ロックシリンダ30の他方面の内周側には、外周縁部より低くなった環状の平面部40が形成される。平面部40は、ロックシリンダ30の他方面の外周縁部の内側から貫通孔34まで連続して形成される。さらに、貫通孔34に面した内壁の一端側には、後述の第1のバネ部材を受けるためのバネ受け部42が形成される。バネ受け部42は、貫通孔34に面した内壁に形成された溝42aと、溝の一端側から突き出した突出し部42bとで構成される。ロックシリンダ30の一方面側の貫通孔34と窪み部36との間において、突出し部42bは、窪み部36の外側端部より低くなるように形成される。取付フランジ14とロックシリンダ30とは、ボルト44をボルト用孔18およびねじ孔32に通すことにより固定される。
【0019】
ロックシリンダ30の窪み部36内には、ピストン部材としてのロックピストン50が嵌め込まれる。ロックピストン50は、図6(A)(B)に示すように、円環状に形成される。ロックピストン50の中央部には、円形の貫通孔52が形成される。ロックピストン50の一方面側において、貫通孔52の周囲に、複数の円形の有底孔54が形成される。これらの有底孔54形成部の内周側から貫通孔52の内側に向かって突き出すように、突出し部56が形成される。突出し部56上において、貫通孔52に面した内壁に、Oリングを嵌めるための内溝58が形成される。さらに、ロックシリンダ30の外周壁には、Oリングを嵌めるための外溝60が形成される。
【0020】
ロックピストン50は、ロックシリンダ30の窪み部36に嵌め込まれる。このとき、ロックピストン50の突出し部56は、ロックシリンダ30の突出し部42bの下に重なるように配置される。また、ロックピストン50の内溝58には、Oリング62が嵌め込まれ、外溝60には、別のOリング64が嵌め込まれる。これらのOリング62,64によって、ロックシリンダ30の窪み部36の内壁とロックピストン50との間の隙間が埋められる。なお、ロックシリンダ30の窪み部36の外周側は深くなっているため、この部分に空隙部66が形成され、この空隙部66に空気孔38が連結される。さらに、ロックピストン50の有底孔54には、コイルバネ68が嵌め込まれ、ロックピストン50が取付フランジ14側からロックシリンダ30の窪み部36側に向かって付勢される。
【0021】
ロックシリンダ30の他方面の平面部40には、ボール当て板70が取り付けられる。ボール当て板70は、図7(A)(B)に示すように、ステンレス鋼などで円環状に形成され、その両面は平面状に形成される。このボール当て板70が平面部40に取り付けられることによって、ロックシリンダ30の外周端とボール当て板70とが同一平面となるように形成される。
【0022】
下ブロック12の上には、中間体80が配置される。中間体80は、リテーナ82を含む。リテーナ82は、図8(A)(B)に示すように、超高分子ポリエチレンなどによって、円環状に形成される。リテーナ82の中央部には円形の窪みが形成されることによって、薄肉部84が形成される。この薄肉部84の中央部には、貫通孔86が形成される。また、薄肉部84の周囲には、貫通した複数の保持孔88が形成される。このリテーナ82は、薄肉部84が形成された窪みが上になるようにして、ボール当て板70上に配置される。
【0023】
リテーナ82の保持孔88には、ステンレス鋼などで形成されたボール90が嵌め込まれ、このボール90がボール当て板70の平面上に配置される。ボール90は、保持孔88の内径とほぼ同じ外径となるように形成される。したがって、ボール90が回転することにより、リテーナ82は、ボール当て板70の平面上でスライドするようにして移動することができる。
【0024】
リテーナ82の中央部から両面側に向かって、軸部材100が形成される。軸部材100は、図9および図10に示すような2つの軸片102および軸片104を組み合わせることにより形成される。これらの軸片102,104は、たとえばステンレス鋼などで形成される。一方の軸片102の一端側には、図9(A)(B)に示すように、鍔状のフランジ部102aが形成される。また、軸片102の他端側の外周部に、他の部分より細くなった括れ部102bが形成される。この括れ部102bの外径は、リテーナ82の貫通孔86の直径と同じとなるように形成される。さらに、軸片102の他端には、ねじ孔102cが形成される。また、フランジ部102aには、2つの貫通孔104cが形成される。フランジ部102aの中央部には、たとえば円形の磁石24aが形成される。磁石24aは、たとえばフランジ部102aに埋め込むことによって形成される。
【0025】
また、図10(A)(B)に示すように、他方の軸片104の一端側には、鍔状のフランジ部104aが形成され、他端には、ねじ孔104bが形成される。軸片104の外径は、リテーナ82の貫通孔86の直径より大きく形成される。さらに、フランジ部104aには、2つの貫通孔104cが形成される。フランジ部104aの中央部には、たとえば円形の磁石22bが形成される。磁石22bは、たとえばフランジ部104aに埋め込むことによって形成される。
【0026】
リテーナ82の上面側において、一方の軸片102の括れ部102bが、リテーナ82の貫通孔86に嵌め込まれる。そして、リテーナ82の下面側から、他方の軸片104を組み合わせることによって、リテーナ82の両側に延びる軸部材100が形成される。なお、軸片102,104の組み合わせは、ねじ孔102c,104bに雄ねじ106をねじ込むことによって行なわれる。
【0027】
軸片104のフランジ部104aは、ロックピストン50の突出し部56の下部において、取付フランジ14の凹部16部分に配置される。そして、フランジ部104aの外径は、ロックピストン50の突出し部56の内径より大きく形成される。それにより、軸部材100が下ブロック12から抜けないようになっている。さらに、フランジ部104aの外径は、凹部16の内径より小さく形成される。また、軸片104の外径は、ロックシリンダ30の貫通孔34の直径およびロックピストン50の貫通孔52の直径より小さく形成される。それにより、軸片104およびフランジ部104aが移動できる可動空間108が形成され、この可動空間108における軸部材100(軸片104およびフランジ部104a)の可動範囲内で、リテーナ82がボール当て板70上をスライドするように移動することができる。
【0028】
ロックシリンダ30のバネ受け部42と軸部材100との間には、第1のバネ部材110が取り付けられる。第1のバネ部材110は、図11(A)(B)に示すように、ステンレス鋼などの線材を円錐状に巻回したコイルバネとして形成される。この第1のバネ部材110の大径側端部が、ロックシリンダ30のバネ受け部42に配置され、小径側端部が、リテーナ82の下面において、軸部材100に配置される。この第1のバネ部材110によって、軸部材100は、ロックシリンダ30の貫通孔34の中央部に保持される。このとき、取付フランジ14の中央部に形成された磁石22aと軸片104のフランジ部104aに形成された磁石22bとが、相互に対向して重なるように配置される。ここで、2つの磁石22a,22bは、互いに引き付け合うように、N極とS極とが向き合うように配置される。これらの磁石22a,22bが、第1の磁石対22を構成する。
【0029】
中間体80上には、上ブロック120が配置される。上ブロック120は、天板受台122を含む。天板受台122は、図12に示すように、アルミニウムなどによって、円環状に形成される。天板受台122の一方面側の中央部に円形の凹部124が形成され、その中央部に円形の貫通孔126が形成される。また、天板受台122の他方面側において、その外周端を周回する壁部128が形成される。この壁部128の内側において、段差130が形成され、段差130の内周側に平面部132が形成される。平面部132は、段差130から貫通孔126まで連続して形成される。貫通孔126の内側において、ロックシリンダ30のバネ受け部42と同様に、溝134aと突出し部134bとからなるバネ受け部134が形成される。また、天板受台122の凹部124形成面側において、その外周部から外側に突出する鍔状部136が形成される。
【0030】
天板受台122の平面部132には、図7に示すような円環状のボール当て板70が取り付けられる。このボール当て板70によって、段差130における高低差がなくなり、壁部128の内側が同一平面となる。このボール当て板70が、ボール90上に載置される。したがって、ボール90が回転することにより、天板受台122がリテーナ82に対してスライドするように移動することができる。
【0031】
天板受台122のバネ受け部134と軸部材100との間には、第2のバネ部材140が取り付けられる。第2のバネ部材140は、第1のバネ部材110と同様に、ステンレス鋼などの線材を円錐状に巻回したコイルバネとして形成される。この第2のバネ部材140の大径側端部が、天板受台122のバネ受け部134に配置され、小径側端部が、リテーナ82の上面において、軸部材100に配置される。この第2のバネ部材140によって、軸部材100は、天板受台122の貫通孔126の中央部に保持される。
【0032】
天板受台122上には、天板150が載置される。天板150は、図13(A)(B)に示すように、ステンレス鋼などによって円板状に形成される。天板150の一方面側の外周端には、壁部152が形成される。壁部152の内周面には、溝154が形成される。壁部152の一部に、切り欠き部156が形成される。天板150の一方面側の中央部には、たとえば円形の磁石24bが形成される。磁石24bは、たとえば天板150に埋め込むことによって形成される。天板150は、天板受台122の上に載置されると、天板受台122の鍔状部136の下面に天板150の溝154が配置される。この鍔状部136と溝154の両方にかかるようにして、リング状の留め輪160が嵌め込まれ、天板150が天板受台122に固定される。第2のバネ部材140によって軸部材100が天板受台122の貫通孔126の中央部に保持されるとき、軸片102に形成された磁石24aと天板150の形成された磁石24bとが、相互に対向して重なり合うように配置される。ここで、2つの磁石24a,24bは、互いに引き付け合うように、N極とS極とが向き合うように配置される。これらの磁石24a,24bが、第2の磁石対24を構成する。
【0033】
軸片102のフランジ部102aは、天板受台122の凹部124部分に配置される。そして、フランジ部102aの外径は、天板受台122の突出し部134bの内径より大きく形成される。それにより、軸部材100が上ブロック120から抜けないようになっている。さらに、フランジ部102aの外径は、凹部124の内径より小さく形成される。また、軸片102の外径は、天板受台122の貫通孔126の直径より小さく形成される。それにより、軸片102およびフランジ部102aが移動できる可動空間170が形成され、この可動空間170における軸部材100(軸片102およびフランジ部102a)の可動範囲内で、天板受台122がリテーナ82に対してスライドするように移動することができる。つまり、天板受台122は、ロックシリンダ30の平面部40に取り付けられたボール当て板70の平面と平行な向きにスライドすることができる。
【0034】
この位置決め装置10を用いて、ローラコンベアなどで搬送されてきた搬送物を持ち上げることにより、搬送物がローラコンベアから切り離される。この状態で、たとえばエアシリンダなどで搬送物を押して、その位置を微調整する場合、図14に示すように、ボール90が回転して、リテーナ82がロックシリンダ30上に配置されたボール当て台70上をスライドするように移動する。それと同時に、ボール90上に載置されたボール当て板70を有する天板受台122も、リテーナ82に対してスライドするように移動する。
【0035】
このように、この位置決め装置10では、ロックシリンダ30などからなる下ブロック12と、リテーナ82などからなる中間体80との間でスライドするように変位し、中間体80と天板受台122などからなる上ブロック120との間でスライドするように変位するため、これらの変位量の合計が、位置決め装置10全体で得られる変位量となる。そのため、たとえば天板150の基本位置から15mmの範囲内で位置調整を行なう場合、下ブロック12内の可動空間108内および上ブロック120内の可動空間170内における軸部材100の移動範囲は、それぞれ基本位置である中心部から7.5mmであればよい。
【0036】
このように、下ブロック12内の可動空間108および上ブロック120内の可動空間170の範囲は、位置決め装置10の最大調整範囲の半分であればよいため、最大調整範囲で可動空間を確保しなければならない従来の位置決め装置に比べて、下ブロック12、中間体80および上ブロック120を小型化することができる。さらに、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140も、最大調整範囲の半分の変位に対応して軸部材100を保持すればよいため、これらのバネ部材110,140も小型化することができる。
【0037】
位置決め装置10を小型化することができるため、たとえばローラコンベアのローラ間に位置決め装置10を配置する場合においても、ローラ間隔の狭いローラコンベアに対応することができる。さらに、クリーンルームなどで使用される場合、各部品はステンレス鋼やアルミニウムなどの高価な材料で形成されるが、小型化することにより、これらの材料の使用量を少なくすることができる。そのため、安価に位置決め装置10を作製することができる。また、この位置決め装置10を従来の位置決め装置と同様の大きさとすれば、従来の位置決め装置の調整量の2倍の調整量を得ることができる。
【0038】
さらに、ロックシリンダ30に形成された空気孔38に圧縮空気を送り込むことにより、空隙部66に圧縮空気が入り、ロックピストン50がコイルバネ68に抗して、可動空間108に向かって押し下げられる。それにより、ロックピストン50の突出し部56が軸片104のフランジ部104aに押し付けられ、軸部材100がロックされる。それにより、リテーナ82もロックされ、ボール90が回転しなくなって、上ブロック120もロックされる。このようにして、位置決め装置10上に載置された搬送物は固定される。そして、空隙部66に入った空気を抜くことにより、コイルバネ68の力でロックピストン50がフランジ部104aから離れ、軸部材100は変位可能となる。そのため、軸部材100は、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140の働きにより、基本位置である中心部に保持される。
【0039】
このように、この発明の位置決め装置10は、小型でありながら、大きい範囲で位置調整を行なうことができる。さらに、小型化することにより、製造コストを低減することができる。また、ロックピストンを形成することにより、任意の位置で搬送物を固定することができる。
【0040】
さらに、空隙部66から圧縮空気を排除することにより、コイルバネ68によってロックピストン50が押し上げられ、軸部材100のロックが解除される。それにより、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140の復元力によって、上ブロック120、中間体80および下ブロック12が基本位置に戻る。ここで、これらの基本位置の近傍においては、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140の変形が小さいため、復元力は小さくなる。しかしながら、基本位置の近傍においては、第1の磁石対22を構成する磁石22a,22bが近接し、第2の磁石対24を構成する磁石24a,24bも近接する。そのため、第1の磁石対22の引き付け合う力および第2の磁石対24の引き付け合う力が大きくなり、上ブロック120、中間体80および下ブロック12が正確に基本位置に引き戻される。このように、下ブロック12の取付フランジ14と中間体80の軸部材100に第1の磁石対22を形成し、上ブロック120の天板150と中間体80の軸部材100に第2の磁石対24を形成することにより、上ブロック120、中間体80および下ブロック12を確実に基本位置に戻すことができる。
【0041】
なお、図15および図16に示すように、大きい磁石22a,22b,24a,24bを用いて、搬送物の位置調整を行なったときに、磁石22a,22bの一部が重なり合い、磁石24a,24bの一部が重なり合う状態であれば、第1の磁石対22および第2の磁石対24の引き付け合う力が大きく、上ブロック120、中間体80および下ブロック12を基本位置に引き戻す力が働く。そのため、このような力が十分に大きければ、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の搬送物の位置決め装置の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す位置決め装置の側面図である。
【図3】図1に示す位置決め装置の内部構造を示す図解図である。
【図4】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられる取付フランジを示す平面図であり、(B)は図4(A)の線B−Bにおける断面図解図である。
【図5】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられるロックシリンダを示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図6】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられるロックピストンを示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図7】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられるボール当て板を示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図8】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられるリテーナを示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図9】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられる軸部材を構成する一方の軸片を示す断面図解図であり、(B)はその平面図である。
【図10】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられる軸部材を構成する他方の軸片を示す断面図解図であり、(B)はその平面図である。
【図11】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられる第1のバネ部材および第2のバネ部材を示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図12】図1に示す位置決め装置に用いられる天板受台を示す断面図解図である。
【図13】(A)は図1に示す位置決め装置に用いられる天板を示す平面図であり、(B)はその端面図解図である。
【図14】図1に示す位置決め装置が変位したときの様子を示す図解図である。
【図15】この発明の搬送物の位置決め装置の他の例の内部構造を示す図解図である。
【図16】図15に示す位置決め装置が変位したときの様子を示す図解図である。
【図17】位置決め装置を用いて搬送物を位置決めした様子を示す図解図である。
【図18】従来の位置決め装置の一例を示す図解図である。
【図19】(A)は図18に示す従来の位置決め装置に用いられるバネ部材を示す平面図であり、(B)はその断面図解図である。
【図20】図18に示す従来の位置決め装置が変位したときの様子を示す図解図である。
【符号の説明】
【0043】
10 搬送物の位置決め装置
12 下ブロック
14 取付フランジ
22 第1の磁石対
24 第2の磁石対
30 ロックシリンダ
50 ロックピストン
66 空隙部
70 ボール当て板
80 中間体
82 リテーナ
90 ボール
100 軸部材
102a フランジ部
104a フランジ部
106 可動空間
110 第1のバネ部材
120 上ブロック
122 天板受台
140 第2のバネ部材
150 天板
170 可動空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を有する下ブロック、
前記下ブロックの前記平面上でスライド可能に形成される中間体、
前記下ブロックの前記平面と平行な向きにおいて前記中間体に対してスライド可能に形成される上ブロック、
前記中間体から前記下ブロック側および前記上ブロック側に延びるように形成される軸部材、
前記下ブロックと前記軸部材の対向部に形成されて互いに引き付け合う第1の磁石対、および
前記上ブロックと前記軸部材の対向部に形成されて互いに引き付け合う第2の磁石対を含み、
前記下ブロック内および前記上ブロック内には、前記中間体の動きにともなって動く前記軸部材の可動範囲を規制する可動空間が形成され、
前記上ブロックと前記軸部材とが所定の位置関係にあるときに前記第1の磁石対が相互に重なり合う位置に配置され、
前記下ブロックと前記軸部材とが所定の位置関係にあるときに前記第2の磁石対が相互に重なり合う位置に配置される、搬送物位置決め装置。
【請求項2】
前記中間体は、ボールと、前記ボールを保持する保持孔が形成されたリテーナとで構成され、
前記保持孔に保持された前記ボールが前記下ブロックの前記平面上に配置され、かつ前記ボール上に前記上ブロックが載置された、請求項1に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項3】
前記下ブロックと前記中間体とを所定の位置関係に保持するための第1のバネ部材、および
前記中間体と前記上ブロックとを所定の位置関係に保持するための第2のバネ部材を含む、請求項1または請求項2に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1のバネ部材および前記第2のバネ部材は、円錐状に巻回されたコイルバネで構成され、
前記中間体の一方面側において前記軸部材と前記下ブロックとの間に前記コイルバネが嵌め込まれ、前記中間体の他方面側において前記軸部材と前記上ブロックとの間に前記コイルバネが嵌め込まれる、請求項3に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項5】
前記軸部材の端部に形成されて前記可動空間内で移動するフランジ部と、前記下ブロック内において前記可動空間に向かって往復運動可能に形成されるピストン部材とを含み、前記可動空間に向かって前記ピストン部材を移動させることにより前記フランジ部に前記ピストン部材が押し付けられる、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の搬送物の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−132369(P2010−132369A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307236(P2008−307236)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(599143508)
【Fターム(参考)】