説明

搬送用具

【課題】 不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておくことができるようにする。使用のための操作を容易にする。
【解決手段】 強靱な布材により人の少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる袋体1からなり、袋体1の開口部2の縁辺に袋体1に収容された人を移動させる作業に携わる関係者が手を差込み袋体1の一部を掴むための窓4が開口されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に人を腰掛け姿勢のまま移動させる搬送用具に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、緊急時に怪我人等を移動させるものとして、強化繊維が織込まれた強靱な布により形成されたシート状の担架が提供されてきている。シート状の担架は、不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておけるため利便性が高いものの、人を横たわらせた伸身状態で移動させることから、怪我人ではない高齢者や身体障害者の移動には不向きである。怪我人ではない高齢者や身体障害者の移動には、担架の代用として腰掛けた椅子等がよく使用されている。即ち、移動される人にとっては、腰掛け姿勢の方が楽なことが多いためである。
【0003】
このため、シート状の担架の利便性を保持し、しかも人を腰掛け姿勢のまま移動させることのできる搬送用具の開発が要望されている。
【0004】
従来、シート状の担架の利便性を保持して人を腰掛け姿勢のまま移動させることのできる搬送用具としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】 実用新案登録第3069591号公報
特許文献1には、人が載せられるシート状の本体部と、本体部を椅子形に屈曲させた形状に保形するベルトとからなる搬送用具が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る搬送用具では、不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておけるという利便性が保持されるものの、ベルトを用いて本体部を椅子形に屈曲させる組立作業が要求されるため、使用のための操作が面倒であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておくことができるとともに、使用のための操作が容易な搬送用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係る搬送用具は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1では、強靱な布材により人の少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる袋体からなり、袋体の開口部の縁辺に袋体に収容された人を移動させる作業に携わる関係者が手を差込み袋体の一部を掴むための窓が開口されている。
【0009】
この手段では、シート状ではなく人の少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる袋体とすることで、組立作業を不要にしている。また、袋体を強靱な布材で形成することで、固定的な形状となることを避けている。
【0010】
また、請求項2では、請求項1の搬送用具において、窓は少なくとも間隔を介して4個設けられていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、間隔を介して窓を4個設けることで、関係者2人が両手で袋体の一部を掴んで人を移動させることができる。
【0012】
また、請求項3では、請求項1または2の搬送用具において、袋体は開口部から内部に向けて横幅が拡開する奥広がりの形状であることを特徴とする。
【0013】
この手段では、袋体を奥広がりの形状とすることで、袋体に収容された人を内部に閉込めるような格好となる。
【0014】
即ち、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの搬送用具において、袋体は開口部に沿った縁辺に補強布が取付けられていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、袋体の開口部の縁辺に補強布が設けられることで、収容された人の荷重による袋体の開口部の縁辺の破損が防止される。
【0016】
また、請求項5では、請求項4の搬送用具において、補強布は棒材を挿通可能な筒形に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、補強布が筒形に形成されることで、棒材を挿入して人が収容された袋体を支持することができる。
【0018】
また、請求項6では、請求項1〜6のいずれかの搬送用具において、袋体は開口部の拡開を阻止するためのベルトが設けられていることを特徴とする。
【0019】
この手段では、袋体の開口部にベルトが設けられることで、袋体の開口部の拡開が阻止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る搬送用具は、シート状ではなく人の少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる袋体とすることで、組立作業を不要にしているため、使用のための操作が容易である効果がある。また、袋体を強靱な布材で形成することで、固定的な形状となることを避けているため、不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておくことができる効果がある。
【0021】
さらに、請求項2として、間隔を介して窓を4個設けることで、関係者2人が両手で袋体の一部を掴んで人を移動させることができるため、少ない関係者て人を安定的に移動させることができる効果がある。
【0022】
さらに、請求項3として、袋体を奥広がりの形状とすることで、袋体に収容された人を内部に閉込めるような格好となるため、移動の際に人が袋体から転落するおそれがなくなって安全性が高くなる効果がある。
【0023】
さらに、請求項4として、袋体の開口部の縁辺に補強布が設けられることで、収容された人の荷重による袋体の開口部の縁辺の破損が防止されるため、袋体が強化される効果がある。
【0024】
さらに、請求項5として、補強布が筒形に形成されることで、棒材を挿入して人が収容された袋体を支持することができるため、多数の関係者での人の移動に好適となる効果がある。
【0025】
さらに、請求項6として、袋体の開口部にベルトが設けられることで、袋体の開口部の拡開が阻止されるため、移動の際に人が袋体から転落するおそれがなくなって安全性が高くなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る搬送用具を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図4は、本発明に係る搬送用具を実施するための最良の形態の第1例を示すものである。
【0028】
第1例は、移動させる人A収容するための袋体1を主要部として構成されている。
【0029】
袋体1は、強化繊維が織込まれる等した強靱な布材で形成され、座面11,背もたれ面12,両側面13によって、人Aの少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる容積を囲んでいる。なお、座面11,背もたれ面12は、共通の連続した布材とされている。座面11,背もたれ面12座面11,背もたれ面12袋体1の開口部2は、図1に示すように、座面11,背もたれ面12,両側面13に縁辺によって縦長のほぼ方形に展開される。ただし、座面11,背もたれ面12,両側面13が布材の縫着等で連結されていることから、開口部2が常に方形に保形されているということではない。座面11,背もたれ面12の角度xは、90度以上に設定されている。両側面13は、内部へ向けて角度y,zで広がるように傾斜されている。従って、袋体1は、開口部2から内部に向けて横幅a,bが拡開する奥広がりの形状となっている。
【0030】
袋体1の開口部2の縁辺には、帯形の布材が重ね縫着される等して、補強布3が取付けられている。補強布3は、前述の開口部2の方形の展開のくせ付けをしている。
【0031】
袋体1の開口部2の両側面13の補強布3には、長さ調整可能なバックル付きのバンドが取付けられている。
【0032】
袋体1の開口部2の両側面13の補強布3近くには、間隔を介して片側2個で両側4個の窓4は開口されている。この窓4は、手を差込んで補強布3を握ることのできる大きさに設定されている。
【0033】
第1例によると、図2に示すように、移動される人Aが袋体1の内部に首から膝まで収容されて、伸身ではなく腰掛け姿勢をとることができる。従って、人Aに窮屈な姿勢を強いることにはならない。そして、前述の横幅a,bの関係から袋体1が奥広がりの形状であるため、袋体1に収容された人Aを内部に閉込めるような格好となる。
【0034】
人Aを移動させるには、図3に示すように、袋体1の両側面13横に移動させる作業に携わる関係者Bが対面して2名が配置され、関係者Bが両手で窓4を介して補強布3を握って開口部2を上向きにした袋体1とともに人Aを持上げることになる。従って、少ない関係者Bで人Aを安定的に移動させることができる。このとき、移動される人Aが特別に窮屈に感じるようなことはない。また、補強布3によって袋体1が強化されているため、収容された人Aの荷重による袋体1の開口部2の縁辺の破損が防止される。
【0035】
図3に示す移動では、袋体1の形状から人Aが内部に閉込められたような格好となっているため、人Aが袋体1から転落するおそれがなく高い安全性が確保される。また、バンド5を連結して開口部2が拡開されるのを阻止することで、より高い安全性を確保することができる。
【0036】
なお、移動される人Aが腰掛け姿勢で足先から頭までの長さが短くなっているため、持上げた関係者Bとともに狭いエレベータの内部等にもそのまま入ることができ、階段の上下の移動も容易となる。
【0037】
第1例は、主要部である袋体1が布材であるため、不要時に小さく折畳んで適当な場所に収納しておくことができる。そして、必要時には、袋体1を展開させるだけで特別な組立作業が不要であるため、使用のための操作が容易である。
【0038】
なお、第1例については、図4に示すように、不要時に収納せずに車椅子Cの座席の座部,背もたれ部に袋体1を裏返すようにしてカバー材等として使用することもできる。このとき、バンド5を車椅子Cの座席の背もたれ部に回して連結することにより、車椅子Cに確実にセットして不測の離脱を阻止することができる。
【0039】
図4に示した使用例によると、車椅子Cの使用者(人A)が車椅子Cから降りて移動しなければならないときに、袋体1をそのまま表返して使用者に被せるようにして使用者を内部に収容して前述の移動を実行することができる。
【0040】
図5は、本発明に係る搬送用具を実施するための最良の形態の第2例を示すものである。
【0041】
第2例は、第1例の補強布5を棒材6を挿通可能な筒形としてある。
【0042】
第2例によると、棒材5を補強布5に挿通して人Aが収容された袋体1を支持することができるため、多数の関係者での人Aの移動に好適となる。
【0043】
以上、図示した各例の外に、袋部1を人Aの頭から脹脛まで収容する大きさとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る搬送用具は、人以外の物品等の移動に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】 本発明に係る搬送用具を実施するための最良の形態の第1例の斜視図である。
【図2】 図1により移動される人の姿勢を示す簡略図であり、(A)に側面図が示され、(B)に正面図が示されている。
【図3】 図1の簡略化した使用状態図である。
【図4】 図1の収納例を示す図である。
【図5】 本発明に係る搬送用具を実施するための最良の形態の第2例の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 袋部
2 開口部
3 補強布
4 窓
5 バンド
6 棒材
A 人(移動される)
B 関係者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強靱な布材により人の少なくとも首から膝までを腰掛け姿勢で収容することのできる袋体からなり、袋体の開口部の縁辺に袋体に収容された人を移動させる作業に携わる関係者が手を差込み袋体の一部を掴むための窓が開口されている搬送用具。
【請求項2】
請求項1の搬送用具において、窓は少なくとも間隔を介して4個設けられていることを特徴とする搬送用具。
【請求項3】
請求項1または2の搬送用具において、袋体は開口部から内部に向けて横幅が拡開する奥広がりの形状であることを特徴とする搬送用具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの搬送用具において、袋体は開口部に沿った縁辺に補強布が取付けられていることを特徴とする搬送用具。
【請求項5】
請求項4の搬送用具において、補強布は棒材を挿通可能な筒形に形成されていることを特徴とする搬送用具。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれかの搬送用具において、袋体は開口部の拡開を阻止するためのベルトが設けられていることを特徴とする搬送用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−11779(P2009−11779A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201304(P2007−201304)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(504287642)
【出願人】(504287996)
【Fターム(参考)】