説明

搬送装置、及び、画像形成装置

【課題】湾曲ガイド部材に対して搬送方向上流側に設置された上流側ガイド部材に段差が形成されていても、段差の位置を記録媒体の後端が通過するときに、記録媒体の後端が上流側ガイド部材に強く突き当たって「後端はね音」が生じることのない、搬送装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】湾曲ガイド部材19Cの湾曲搬送面W側において記録媒体Pに近づく方向に突出するとともに湾曲搬送面Wの湾曲形状とは異なる湾曲対向面31bが形成された突出部材31と、突出部材31の湾曲対向面31bを記録媒体Pに対して近づく位置と遠ざかる位置との間で移動させる移動手段46と、が設置されている。そして、移動手段46は、記録媒体Pの後端が上流側ガイド部材19Aの段差の位置を通過する前に、突出部材31の湾曲対向面31bを記録媒体Pに対して遠ざかる位置から近づく位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体を搬送する搬送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関し、特に、段差を有する搬送経路の下流側に湾曲ガイド部材が設置された搬送装置、及び、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、記録媒体を搬送するための搬送装置において、記録媒体を湾曲させながらその搬送を案内する湾曲ガイド部材(湾曲した案内路)を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような画像形成装置では、記録媒体の後端がガイド部材等に強く突き当たって耳障りな衝撃音(このような衝突音を「後端はね音」という。)が発生する問題が知られている。
そして、このような問題を解決するために、特許文献1には、後端はね音が生じる位置に回動可能なガイド部材を設置して、記録媒体の後端がそのガイド部材に衝突する前にガイド部材を回動させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置は、複数のガイド部材(ガイド板)をつなぎ合わせて記録媒体の搬送経路を形成する場合に、そのつなぎ合わせの部分に段差が生じてしまい、その段差の位置を記録媒体の後端が通過するときに、記録媒体の後端がガイド部材に強く突き当たって「後端はね音」が生じていた。
特に、このような問題は、画像形成装置の小型化等を目的として、この段差の位置よりも搬送方向下流側の位置に、記録媒体を湾曲させながら搬送する湾曲ガイド部材が設けられている場合には、その湾曲ガイド部材によって湾曲した状態の記録媒体の後端が、段差の位置を通過した直後に、ガイド部材(上流側ガイド部材)に非常に強く突き当たってしまうために、顕著なものとなっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、湾曲ガイド部材に対して搬送方向上流側に設置された上流側ガイド部材に段差が形成されていても、段差の位置を記録媒体の後端が通過するときに、記録媒体の後端が上流側ガイド部材に強く突き当たって「後端はね音」が生じることのない、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる搬送装置は、記録媒体を搬送する搬送装置であって、記録媒体に対向して当該記録媒体を湾曲させながら当該記録媒体の搬送を案内する湾曲ガイド部材と、前記湾曲ガイド部材に対して記録媒体の搬送方向上流側の位置に配設されて、記録媒体に対向して当該記録媒体の搬送を案内するとともに、前記湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体における凸状に湾曲した表面に対向する搬送面側に段差を有する上流側ガイド部材と、前記湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体における凹状に湾曲した表面に対向する湾曲搬送面側において記録媒体に近づく方向に突出するとともに、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面の湾曲形状とは異なる湾曲形状にて形成された湾曲対向面を具備した突出部材と、前記突出部材の前記湾曲対向面を、前記湾曲搬送面を越えて記録媒体に近づく位置と、前記湾曲搬送面を越えずに記録媒体から遠ざかる位置と、の間で移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段は、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させるものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記突出部材は、前記近づく位置に移動した状態で、前記湾曲対向面における搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から前記段差までの距離が、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面における搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から前記段差までの距離に比べて、大きくなるように形成されたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記突出部材は、前記近づく位置に移動した状態で、前記湾曲対向面における曲率が、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面における曲率に比べて、大きくなるように形成されたものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記突出部材は、その一部に前記湾曲対向面が形成された回転部材であって、前記移動手段は、前記回転部材を回転させることで、前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させるものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項4に記載の発明において、前記回転部材は、その回転方向が記録媒体の搬送方向に沿うように記録媒体の搬送タイミングに合わせて回転するとともに、前記湾曲対向面における周速度が記録媒体の搬送速度と同等になるように回転するものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記移動手段は、搬送される記録媒体の厚さ又は坪量が所定値以上の場合にのみ、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させるものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、搬送される記録媒体の搬送位置を検知する検知手段を備え、前記移動手段は、前記検知手段の検知結果に基いて、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させるものである。
【0013】
また、この発明の請求項8記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の搬送装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、湾曲ガイド部材に対して搬送方向上流側に設置された上流側ガイド部材に段差が形成されていても、湾曲ガイド部材の湾曲搬送面から突出する突出部材を移動可能に設けるとともに、突出部材の湾曲対向面の形状を湾曲搬送面とは異なるように形成して、記録媒体の後端が段差の位置を通過する直前に突出部材の湾曲対向面を記録媒体に近づく位置に移動させている。これにより、段差の位置を記録媒体の後端が通過するときに、記録媒体の後端が上流側ガイド部材に強く突き当たって「後端はね音」が生じる不具合が軽減される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置に設置された搬送装置を示す構成図である。
【図3】図2の搬送装置において、突出部材が記録媒体に近づく位置に移動した状態を示す図である。
【図4】突出部材を示す斜視図である。
【図5】突出部材が湾曲ガイド部材に設置された状態を示す斜視図である。
【図6】突出部材が回転している状態を示す図である。
【図7】湾曲搬送面の湾曲開始位置から段差までの距離が変化したときの、段差の近傍における音圧レベルの時間変動を示すグラフである。
【図8】湾曲搬送面の湾曲開始位置から段差までの距離と、後端はね音の音圧レベルと、の関係を示すグラフである。
【図9】従来の搬送装置を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2における搬送装置を示す構成図である。
【図11】図10の搬送装置において、突出部材が記録媒体に近づく位置に移動した状態を示す図である。
【図12】図10の搬送装置に設置された突出部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0017】
実施の形態1.
図1〜図9にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機の装置本体、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写部(画像形成部)、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12〜14は転写紙等の記録媒体Pが収納された給紙部、17、18は転写部7に向けて記録媒体Pを搬送するレジストローラ(レジストローラ対)、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、を示す。
【0018】
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0019】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、画像形成部としての転写部7で、レジストローラ17、18により搬送された記録媒体P上に転写される。
【0020】
一方、転写部7(画像形成部)に搬送される記録媒体Pは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部12、13、14のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給紙部12が選択されたものとする。)。
そして、給紙部12に収納された記録媒体Pの最上方の1枚が、搬送経路Kの位置に向けて搬送される。
【0021】
その後、記録媒体Pは、複数の搬送ローラが配設された搬送経路Kを通過して、レジストローラ17、18の位置に達する。そして、レジストローラ17、18の位置に達した記録媒体Pは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。
【0022】
そして、転写工程後の記録媒体Pは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達した記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着された記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
なお、本実施の形態1における画像形成装置1は、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)が、550mm/sに設定されている。
【0023】
次に、図2〜図6にて、本実施の形態1において特徴的な搬送装置30について詳述する。
図2及び図3を参照して、搬送装置30には、搬送ローラ15、16(搬送ローラ対)の位置からレジストローラ17、18(レジストローラ対)の位置に至る記録媒体Pの搬送経路において、記録媒体Pのオモテ面(画像形成面)側には第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとがそれぞれ搬送経路に沿って設けられ、記録媒体Pのウラ面(非画像形成面)側には第3ガイド板19Cが設けられている。そして、第2ガイド板19Bはその一部の搬送面が凹状に湾曲するように形成され、第3ガイド板19Cはその一部の搬送面(湾曲搬送面Wである。)が凸状に湾曲するように形成されている。そして、第3ガイド板19Cにおける湾曲搬送面Wの位置には突出部材31が設けられ、第2ガイド板19Bにおける搬送方向下流側の位置にはフォトセンサ40(検知手段)が設けられている。
【0024】
この搬送装置30によって、記録媒体P上に画像を形成する画像形成部としての転写部7(感光体ドラム5と転写ローラとの対向位置である。)に向けて記録媒体Pが搬送されることになる。
詳しくは、給紙部から搬送経路Kを経て搬送ローラ15、16の位置に達した記録媒体Pは、さらにガイド板19A〜19Cに案内されながら、レジストローラ17、18の位置に搬送される。そして、レジストローラ17、18の位置に搬送された記録媒体Pは、その先端が、回転駆動が停止されたレジストローラ17、18に突き当たることによってスキュー補正(斜行補正)がされた後に、感光体ドラム5上の画像にタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望の画像が転写されることになる。
【0025】
ここで、本実施の形態1における搬送装置30には、記録媒体Pに対向して記録媒体Pを湾曲させながら記録媒体Pの搬送を案内する湾曲ガイド部材(湾曲搬送経路)が設置されている。本実施の形態1では、第2ガイド板19Bの一部(凹状に湾曲した搬送面が形成された部分である。)と、第3ガイド板19Cの一部(湾曲搬送面Wが形成された部分である。)と、が湾曲ガイド部材として機能することになる。
また、本実施の形態1における搬送装置30には、湾曲ガイド部材に対して上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側である。)の位置に配設されて、記録媒体Pに対向して記録媒体Pの搬送を案内するとともに、湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体Pにおける凸状に湾曲した表面(画像形成面である。)に対向する搬送面側に段差(図2中、破線で囲んだ部分である。)を有する上流側ガイド部材(上流側搬送経路)が設置されている。本実施の形態1では、第1ガイド板19Aと、第2ガイド板19Bの一部(凹状に湾曲した搬送面が形成された部分に対して上流側の部分である。)と、第3ガイド板19Cの一部(湾曲搬送面Wが形成された部分に対して上流側の部分である。)と、が上流側ガイド部材として機能することになる。そして、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの接続部分に段差が形成されている。
【0026】
詳しくは、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとは、それぞれ、板厚が1.0mm程度の板金であって、双方のガイド板19A、19Bをスポット溶接、カシメ等によってつなぎ合わせて、その部分が1つに繋がった略平板状のガイド部材となるように形成している。このようなガイド部材19A、19B(上流側ガイド部材)には、2つのガイド板のつなぎ合わせの部分に、第1ガイド板19Aの板厚(1.0mm程度である。)分の段差が形成されることになる。
【0027】
このように複数のガイド板(ガイド部材)をつなぎ合わせて1つのガイド部材を一体的に形成することで、かえってガイド部材のコストを低廉化することができる。特に、大型のガイド部材を形成する場合や、比較的複雑な形状のガイド部材を形成する場合には、上述したメリットが大きくなる。
また、本実施の形態1では、双方のガイド板19A、19Bの接続部分において、第2ガイド板19Bを第1ガイド板19Aよりも記録媒体Pから遠い側に配設して、双方のガイド板19A、19Bの段差を記録媒体Pから遠ざかる方向に形成しているため、記録媒体Pの先端が段差に引っ掛かってジャム(紙詰まり)が生じる不具合を抑止することができる。すなわち、段差を記録媒体Pに近づく方向に形成したとき(双方のガイド板19A、19Bの接続部分において、第2ガイド板19Bが第1ガイド板19Aよりも記録媒体Pに近い側に配設されたときである。)には、記録媒体Pの先端が段差に引っ掛かってジャム(紙詰まり)が生じやすくなる。
【0028】
また、本実施の形態1における搬送装置30は、段差を有する上流側ガイド部材19A、19Bに対して下流側(記録媒体Pの搬送方向下流側である。)の位置に、段差を有するガイド部材19A、19Bに対向する側が凸状に湾曲するように記録媒体Pを湾曲させながら搬送を案内する湾曲ガイド部材(湾曲搬送経路)が設置されている。上述したように、本実施の形態1では、主として、第2ガイド板19Bの一部と第3ガイド板19Cの一部とが、湾曲ガイド部材として機能している。
この湾曲ガイド部材19B、19Cを設けることにより、給紙部から画像形成部7への記録媒体Pの搬送経路を比較的短く形成することができるので、画像形成装置1の小型化が達成される。
【0029】
ここで、突出部材31は、湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体Pにおける凹状に湾曲した表面(非画像形成面である。)に対向する湾曲搬送面W側において、記録媒体Pに近づく方向に突出するように形成されている。さらに、突出部材31は、第3ガイド板19C(湾曲ガイド部材)の湾曲搬送面Wの湾曲形状とは異なる湾曲形状にて形成された湾曲対向面31bを具備している。
さらに、本実施の形態1における搬送装置30には、突出部材31の湾曲対向面31bを、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置と、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wを越えずに記録媒体Pから遠ざかる位置と、の間で移動させる移動手段(ステッピングモータ46)が設置されている。
【0030】
具体的に、図2〜図6を参照して、突出部材31は、その一部に湾曲対向面31bが形成された回転部材(カム状部材)であって、回転軸部31aを中心にしてステッピングモータ46によって図2の矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。詳しくは、突出部材31の回転軸部31aに設置されたギア31c(図5を参照できる。)は、ステッピングモータ46のモータ軸に設置された駆動ギア(不図示である。)に噛合していて、ステッピングモータ46から駆動力を受けて突出部材31が回転駆動されることになる。
【0031】
そして、このステッピングモータ46が移動手段として機能して、記録媒体Pの後端が段差(図2の破線で囲んだ部分である。)の位置を通過する前(直前のタイミングである。)に、突出部材31の湾曲対向面31bが、湾曲搬送面Wを越えずに記録媒体Pから遠ざかる位置(図2の位置である。)から湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置(図3の位置である。)に移動されることになる。
【0032】
具体的に、検知手段としてのフォトセンサ40によって、記録媒体Pの先端(搬送位置)が検知されると、その情報が制御部45に送られて、記録媒体Pの搬送方向の長さ、記録媒体Pの搬送速度、等から、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する時間が算出される。そして、その算出された時間(記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する時間であって、予め算出されてデータ化されている。)よりも所定時間だけ早く、ステッピングモータ46の稼働が開始されて、突出部材31が図2の位置から図3の位置に移動される。
なお、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前には必ず図3の状態(湾曲対向面31bが記録媒体Pに対向した状態である。)になるように、上述した突出部材31の回転制御は、ステッピングモータ46の応答時間(フォトセンサ40の検知がされてから回転始動するまでに要する時間)や回転速度や回転角度等の、その他の条件も加味しておこなわれている。
【0033】
ここで、図2及び図3を参照して、突出部材31は、湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置に移動した状態(図3の状態である。)で、湾曲対向面31bにおける搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から段差までの距離M1(段差から湾曲部までの距離)が、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wにおける搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から段差までの距離M0(段差から湾曲部までの距離)に比べて、大きくなるように形成されている(M1>M0)。具体的に、本実施の形態1では、距離M0が30mmになるように第3ガイド板19Cが形成されていて、距離M1が50mmになるように突出部材31(湾曲対向面31b)が形成されている。
また、突出部材31は、湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置に移動した状態(図3の状態である。)で、湾曲対向面31bにおける曲率(湾曲部の曲率)が、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wにおける曲率(湾曲部の曲率)に比べて、大きくなるように形成されている。具体的に、本実施の形態1では、第3ガイド板19Cにおける湾曲搬送面Wの半径が50mm(曲率は、1/50mmとなる。)となるように形成されていて、突出部材31における湾曲対向面31bの半径が30mm(曲率は、1/30mmとなる。)となるように形成されている。なお、湾曲搬送面Wにおける曲率(1/50mm)は、厚紙を通紙した場合であっても、後述する「摺動音」が小さくて、良好な搬送性を得ることができるように設定された値である。また、湾曲部の曲率と、段差から湾曲部までの距離と、は相関関係があり、湾曲部の曲率が大きくなると段差から湾曲部までの距離も大きくなる。
なお、図2、図3等において、突出部材31等の視認を容易とするために、上述した距離M0、M1や湾曲部の曲率等の寸法関係の通りには図示されていない。
【0034】
このように、記録媒体Pの後端が段差を通過するまでは段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が小さくなり、記録媒体Pの後端が段差を通過する直前に段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が大きくなるように制御しているのは、段差で生じる「後端はね音」が段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が大きいほど小さくなり、湾曲部において記録媒体Pが摺動する際に生じる「摺動音」が段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が小さいほど小さくなるためである。
すなわち、本実施の形態1では、記録媒体Pの後端が段差を通過する直前に、段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が大きくなるように制御しているため、段差の位置を記録媒体Pの後端が通過するときに記録媒体Pの後端が第2ガイド板19Bに強く突き当たって大きな「後端はね音」が生じてしまう不具合を軽減することができる。また、記録媒体Pの後端が段差を通過する直前までは、段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が小さくなるように制御しているため、湾曲部において記録媒体Pが摺動して生じる「摺動音」を小さくすることができる。
なお、これらの「後端はね音」や「摺動音」については、後で図7〜図9を用いて、実験結果に基いてさらに詳しく説明する。
【0035】
以下、このように構成された搬送装置30における、突出部材31(移動手段46)の動作について詳述する。
まず、図2に示すように、湾曲搬送面Wの位置(突出部材31が突出可能に設置されている位置である。)を記録媒体Pの先端が通過するときには、突出部材31は湾曲搬送面Wを越えない位置に退避している。すなわち、このとき、記録媒体Pは、曲率が1/50mmの湾曲搬送面Wに沿って湾曲されながら搬送されることになる。これにより、記録媒体Pの先端が比較的緩やかな曲率で湾曲されることになるために、記録媒体Pのコシによって湾曲ガイド部材に記録媒体Pが強く摺接して大きな「摺動音」が発生する不具合が抑止される。
その後、フォトセンサ40(検知手段)によって、記録媒体Pの先端が光学的に検知されると、その検知情報が制御部45に送られる。そして、記録媒体Pの後端が第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの段差を通過する直前に、制御部45によってステッピングモータ46が制御されて、突出部材31が回転軸部31aを中心に図3の位置(湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置である。)に回転駆動される。
【0036】
これにより、記録媒体Pの後端が第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの段差を通過するときには、図3に示すように、段差から湾曲部までの距離M1や湾曲部の曲率が大きくなって、湾曲部(突出部材31)と記録媒体Pとの接触部を支点とした記録媒体Pの後端までの自由長が長くなり、記録媒体Pの後端が段差を通過するときに第2ガイド板19Bの側に向けて移動するエネルギーが減少されるため(コシが弱くなるため)、段差の位置を記録媒体Pの後端が通過するときに記録媒体Pの後端が第2ガイド板19Bに強く突き当たって「後端はね音」が生じる不具合が軽減される。
【0037】
ここで、図4に示すように、本実施の形態1では、1つの突出部材が幅方向(図2及び図3の紙面垂直方向である。)にわたって形成されているのではなく、複数の突出部材31(本実施の形態1では3つの突出部材31である。)が幅方向に分割して形成されている。詳しくは、回転軸部31a上に、複数の突出部材31が互いに間隔を空けて幅方向に並設されている。
また、図5に示すように、第3ガイド板19C(湾曲ガイド部材)は、このような複数の突出部材31に対応する位置に、複数の突出部材31の移動(図2及び図3にて説明した回転移動である。)を可能にするための複数の開口19C1が形成されている。
このように、複数の突出部材31を幅方向に分割して形成することで、第3ガイド板19Cの開口19C1も幅方向に分割して形成されることになるので、記録媒体Pの先端が第3ガイド板19Cの開口19C1の位置を通過するとき(図2の状態である。)に、記録媒体Pの先端(主として、先端における幅方向両端部の角部である。)が第3ガイド板19Cの開口19C1に引っ掛かってジャム(紙詰まり)が生じる不具合や搬送性が低下する不具合が抑止される。すなわち、1つの突出部材31を幅方向にわたって形成する場合には、第3ガイド板19Cの開口も幅方向にわたって1つ形成されることになるので、記録媒体Pの先端が第3ガイド板19Cの開口の位置を通過するときに、記録媒体Pの先端が第3ガイド板19Cの開口に引っ掛かってジャム(紙詰まり)が生じたり搬送性が低下したりする可能性が高くなってしまう。
なお、このような効果を確実なものにするため、第3ガイド板19Cに形成する複数の開口19C1(複数の突出部材31)は、装置本体1で搬送可能な種々のサイズの記録媒体Pにおける幅方向両端部の角部の位置に対して、いずれのものとも重ならないようにレイアウトされることが好ましい。
【0038】
また、本実施の形態1において、紙厚センサ48(検出手段)によって検出された記録媒体Pの厚さ(坪量)の大きさに応じて、突出部材31(移動手段46)の回転制御をおこなうことができる。詳しくは、搬送される記録媒体Pの厚さ(坪量)が所定値以上の場合にのみ、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に、突出部材31が図2の位置から図3の位置に移動するように、ステッピングモータ46(移動手段)を制御することができる。
具体的に、図2、図3等を参照して、紙厚センサ48(検出手段)によって検出された記録媒体Pの厚さが坪量208g/m2以上に相当するものである場合にのみ、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に突出部材31を図3の位置に移動させる。これに対して、紙厚センサ48(検出手段)によって検出された記録媒体Pの厚さが坪量208g/m2未満に相当するものである場合(薄紙が通紙される場合である。)には、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前であっても突出部材31を図2の位置に退避させたままにする(突出部材31の移動はおこなわない)。
これは、本願発明者がおこなった実験から、厚さ(坪量)の小さな記録媒体Pが通紙される場合には、記録媒体Pの剛性(コシ)がもともと低くて、記録媒体Pの後端が段差を通過した直後に第2ガイド板19Bの側に向けて移動するエネルギーが小さくなり、発生する「後端はね音」も小さくなるためである。さらに、厚さ(坪量)の小さな記録媒体Pが通紙される場合には、記録媒体Pの剛性(コシ)がもともと低いため、湾曲部の形状(曲率)が変化してしまうと、シワや折れが生じやすくなってしまうためである。そのため、このような場合には、突出部材31の移動制御をおこなわない方が、装置本体1の省エネルギー化やステッピングモータ46の長寿命化を達成できるとともに、記録媒体Pにシワや折れが生じる不具合が防止されることになる。
なお、紙厚センサ48は、記録媒体Pの紙厚を光学的に直接的に検出する検出手段であって、例えば、図2等に示すように搬送ローラ15、16の上流側の位置に設置することができる。
【0039】
また、本実施の形態1において、突出部材31(回転部材)は、その回転方向が記録媒体Pの搬送方向に沿うように記録媒体の搬送タイミングに合わせて回転させるとともに、湾曲対向面31bにおける周速度が記録媒体Pの搬送速度と同等になるように回転させることができる。
詳しくは、突出部材31(回転部材)は、図2の位置から図3の位置に回転移動するときに、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)に合わせて、その周速度が同等になるように図6(A)の状態を経て等速度で図の反時計方向に回転移動する。そして、突出部材31(回転部材)が図3の位置に移動したタイミングで、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過すると、その後に、突出部材31は、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)に合わせて、その周速度が同等になるように図6(B)の状態を経て等速度で図の反時計方向に回転移動して、図2の位置に戻って回転停止する。
このように、突出部材31が記録媒体Pの搬送速度とほぼ等速度で搬送方向に沿うように回転することで、記録媒体Pの搬送が促進されて記録媒体Pの搬送性が向上するとともに、記録媒体Pが突出部材31の湾曲対向面31bに摺動して生じする「摺動音」を小さくすることができる。
【0040】
以下、図7〜図9にて、本実施の形態1において、上述した「後端はね音」が低減される効果を確認するために、本願発明者がおこなった実験について説明する。
図7は、第3ガイド板119Cの湾曲搬送面の湾曲開始位置から段差までの距離M0(段差から湾曲部までの距離)が変化したときの、段差の近傍における音圧レベルの時間変動を示すグラフである。また、図8は、第3ガイド板119Cの湾曲搬送面の湾曲開始位置から段差までの距離M0(横軸)と、後端はね音の音圧レベル(縦軸)と、の関係を示すグラフである。これらのいずれの実験結果も、図9に示す従来の搬送装置130(突出部材30等が設置されていない点を除き、本実施の形態1のものとほぼ同等に構成されている。)を用いて、記録媒体Pとして180K紙を通紙して、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの段差(図9の破線で囲んだ部分である。)から30cm離れた位置に設置されたマイク140(記録媒体Pの幅方向中央部に対応する位置に設置されている。)で音圧レベルを測定したものである。
また、図7(A)は段差から湾曲部までの距離M0が40mmに設定され、湾曲部の半径が50mm(曲率が1/50mm)に設定されたときの実験結果であり、図7(B)は段差から湾曲部までの距離M0が50mmに設定され、湾曲部の半径が40mm(曲率が1/40mm)に設定されたときの実験結果であり、図7(C)は段差から湾曲部までの距離M0が60mmに設定され、湾曲部の半径が30mm(曲率が1/30mm)に設定されたときの実験結果である。そして、図7(A)〜(C)において、音圧レベルが最大となる部分A1〜A3が「後端はね音」に相当し、その前のタイミングで音圧レベルが高くなっている部分B1〜B3が「摺動音」に相当する。そして、図8における「◆」印は、図7(A)〜(C)において「後端はね音」に相当する部分A1〜A3をプロットしたものである。
【0041】
図7(A)〜(C)、図8に示す実験結果から、湾曲部の曲率が1/50mm、1/40mm、1/30mmと大きくなり、段差から湾曲部までの距離M0が40mm、50mm、60mmと大きくなるにつれて、「後端はね音」が91dB、86dB、82dBと小さくなることがわかる。また、これに反して、「摺動音」が大きくなってしまうことがわかる。
このようなことから、本実施の形態1では、記録媒体Pの後端が段差を通過する直前までは段差から湾曲部までの距離M0や湾曲部の曲率が小さくなり、記録媒体Pの後端が段差を通過する直前に段差から湾曲部までの距離や湾曲部の曲率が大きくなるように、突出部材31(移動手段46)を制御している。これにより、大きな「摺動音」を生じさせることなく、「後端はね音」の発生を効果的に軽減することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態1においては、第3ガイド板19C(湾曲ガイド部材)に対して搬送方向上流側に設置された第1ガイド板19A(上流側ガイド部材)に段差が形成されていても、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wから突出する突出部材31を移動可能に設けるとともに、突出部材31の湾曲対向面31bの形状を湾曲搬送面Wとは異なるように形成して、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に突出部材31の湾曲対向面31bを記録媒体Pに近づく位置に移動させている。これにより、段差の位置を記録媒体Pの後端が通過するときに、記録媒体Pの後端が第2ガイド板19B(上流側ガイド部材)に強く突き当たって「後端はね音」が生じる不具合を軽減することができる。
【0043】
実施の形態2.
図10〜図12にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図10は、実施の形態2における搬送装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。また、図11は、突出部材34が記録媒体Pに近づく位置に移動した状態を示す図であって、前記実施の形態1における図3に相当する図である。また、図12は、突出部材34が一体的に構成された突出部ユニット33を示す斜視図である。
本実施の形態2における搬送装置30は、突出部材やそれを移動する移動手段の構成が、前記実施の形態1のものと相違する。
【0044】
図10及び図11を参照して、本実施の形態2における搬送装置30も、前記実施の形態1のものと同様に、第1ガイド板19A、第2ガイド板19B、第3ガイド板19C、突出部材、移動手段、フォトセンサ40(検知手段)、紙厚センサ48、等で構成されている。
そして、本実施の形態2においても、第2ガイド板19Bの一部と第3ガイド板19Cの一部とが湾曲ガイド部材として機能して、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bの一部と第3ガイド板19Cの一部とが上流側ガイド部材として機能している。そして、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの接続部分に段差が形成されている。
【0045】
ここで、本実施の形態2における突出部材34は、移動手段の1つとして機能するラックギア35とともに、突出部ユニット33に一体的に形成されている(図12をも参照できる)。そして、ラックギア35に噛合するピニオンギア36を回転駆動するステッピングモータ49によって、突出部材34(突出部ユニット33)は、記録媒体Pの後端が段差(図10の破線で囲んだ部分である。)の位置を通過する前(直前のタイミングである。)に、その湾曲対向面34aが、湾曲搬送面Wを越えずに記録媒体Pから遠ざかる位置(図10の位置である。)から湾曲搬送面Wを越えて記録媒体Pに近づく位置(図11の位置である。)に移動されることになる。
【0046】
詳しくは、まず、図10に示すように、湾曲搬送面の位置(突出部材34が突出可能に設置されている位置である。)を記録媒体Pの先端が通過するときには、突出部材34は湾曲搬送面を越えない位置に退避している。このとき、記録媒体Pは、曲率が1/50mmの湾曲搬送面に沿って湾曲されながら搬送されることになる。これにより、記録媒体Pの先端が比較的緩やかな曲率で湾曲されることになるために、記録媒体Pのコシによって湾曲ガイド部材に記録媒体Pが強く摺接して大きな「摺動音」が発生する不具合が抑止される。
その後、フォトセンサ40(検知手段)によって、記録媒体Pの先端が光学的に検知されると、その検知情報が制御部45に送られる。そして、記録媒体Pの後端が第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの段差を通過する直前に、制御部45によってステッピングモータ49が制御されて、ラックギア35に噛合するピニオンギア36の反時計方向の回転によって、突出部材34(突出部ユニット33)が図11の位置(湾曲搬送面を越えて記録媒体Pに近づく位置である。)にスライド移動される。このように、本実施の形態2では、ラックギア35、ピニオンギア36、ステッピングモータ49が、突出部材34を移動する移動手段として機能することになる。
【0047】
これにより、記録媒体Pの後端が第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bとの段差を通過するときには、図11に示すように、段差から湾曲部までの距離M1や湾曲部の曲率が大きくなって、湾曲部(突出部材34)と記録媒体Pとの接触部を支点とした記録媒体Pの後端までの自由長が長くなり、記録媒体Pの後端が段差を通過するときに第2ガイド板19Bの側に向けて移動するエネルギーが減少されるため(コシが弱くなるため)、段差の位置を記録媒体Pの後端が通過するときに記録媒体Pの後端が第2ガイド板19Bに強く突き当たって「後端はね音」が生じる不具合が軽減される。
その後、記録媒体Pの後端が段差を通過した後に、制御部45によってステッピングモータ49が制御されて、ラックギア35に噛合するピニオンギア36の時計方向の回転によって、突出部材34(突出部ユニット33)が図10の位置(湾曲搬送面を越えずに記録媒体Pから遠ざかる位置である。)にスライド移動される(ホームポジションに移動される)。
【0048】
ここで、図12に示すように、本実施の形態2でも、1つの突出部材が幅方向(図10及び図11の紙面垂直方向である。)にわたって形成されているのではなく、複数の突出部材34(本実施の形態2では3つの突出部材34である。)が幅方向に分割して形成されている。詳しくは、複数の突出部材34(湾曲対向面34a)が互いに間隔を空けて幅方向に並設されている。
また、図示は省略するが、第3ガイド板19C(湾曲ガイド部材)は、このような複数の突出部材34に対応する位置に、複数の突出部材34の移動(図10及び図11にて説明したスライド移動である。)を可能にするための複数の開口が形成されている。
このように、複数の突出部材34を幅方向に分割して形成することで、第3ガイド板19Cの開口も幅方向に分割して形成されることになるので、前記実施の形態1のものと同様に、記録媒体Pの先端が第3ガイド板19Cの開口に引っ掛かってジャムが生じる不具合や搬送性が低下する不具合が抑止される。
【0049】
また、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、紙厚センサ48によって検出された記録媒体Pの厚さ(坪量)の大きさに応じて、突出部材34(移動手段35、36、49)の制御をおこなうことができる。詳しくは、搬送される記録媒体Pの厚さ(坪量)が所定値以上の場合にのみ、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に、突出部材34が図10の位置から図11の位置に移動するように、ステッピングモータ49(移動手段)を制御することができる。
具体的に、図10、図11を参照して、紙厚センサ48(検出手段)によって検出された記録媒体Pの厚さが坪量208g/m2以上に相当するものである場合にのみ、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に突出部材34(突出部ユニット33)を図11の位置に移動させる。これに対して、紙厚センサ48(検出手段)によって検出された記録媒体Pの厚さが坪量208g/m2未満に相当するものである場合(薄紙が通紙される場合である。)には、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前であっても突出部材34(突出部ユニット33)を図10の位置に退避させたままにする(突出部材34の移動はおこなわない)。
このような場合であっても、前記実施の形態1で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
ここで、本実施の形態2における搬送装置30においては、ステッピングモータ49によって回転されるピニオンギア36の回転角度を微調整して、突出部材34が湾曲搬送面から突き出す突出量を可変することもできる。この場合、湾曲搬送面から突き出す突出部材34の突出量に応じて、段差から湾曲部までの距離M1を微調整することができることになる。
そして、紙厚センサ48(検出手段)の検出結果に基いて、突出部材34における突出量(段差から湾曲部までの距離M1)を可変することで、通紙される記録媒体Pの厚さ(坪量)に応じて「後端はね音」の発生を効率的に低減することができる。これは、「後端はね音」の大きさが、通紙される記録媒体Pの厚さ(坪量)にある程度関係することによるものである。
具体的に、紙厚センサ48によって記録媒体Pの厚さが大きいと検知された場合には、記録媒体Pの厚さが小さいと検知された場合に比べて、突出部材34における突出量が大きくなるように(段差から湾曲部までの距離M1が大きくなるように)可変制御される。
【0051】
なお、上述した可変制御をおこなう際に、紙厚センサ48によって直接的に検出される記録媒体Pの紙厚(厚さ)に基いておこなわずに、検出手段によって直接的に検出される記録媒体Pの坪量に基いて上述した可変制御をおこなうこともできるし、検出手段によって間接的に検出される記録媒体Pの厚さ又は坪量に基いて上述した可変制御をおこなうこともできる。これは、記録媒体Pの厚さと坪量とには相関関係があるためである。また、記録媒体Pの厚さ又は坪量を間接的に検出する検出手段としては、ユーザーが装置本体1の操作パネル(不図示である。)に入力した記録媒体Pについての情報等に基いて間接的に検知するものを用いることもできる。
【0052】
また、紙厚センサ48(検出手段)によって検出される記録媒体Pの紙厚や坪量に基いて突出部材34の突出量の可変制御をおこなわずに、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)が可変される画像形成装置においては、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)に応じて、突出部材34における突出量(段差から湾曲部までの距離M0)を可変できるように構成することもできる。具体的に、記録媒体Pの搬送速度が速い場合には、記録媒体Pの搬送速度が遅い場合に比べて、突出部材34における突出量(段差から湾曲部までの距離M0)が大きくなるように可変制御することができる。
これは、記録媒体Pの搬送速度が速くなるほど、記録媒体Pの後端が段差を通過した直後に第2ガイド板19Bの側に向けて移動するエネルギーが大きくなって、「後端はね音」の程度が大きくなることに基いたものである。
所定の画像形成装置において、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)が可変される場合としては、通常の搬送速度で記録媒体Pが通紙される「通常モード」に加えて、定着装置20においておこなわれる定着工程において定着画像の定着性を確保するために通常の搬送速度よりも遅い搬送速度で記録媒体Pが通紙される「低速モード」が選択可能な場合等がある。そして、記録媒体Pの搬送速度の検出は、ユーザーが装置本体1の操作パネル(不図示である。)に入力した「通常モード」や「低速モード」についての情報に基いて間接的におこなってもよいし、不図示の搬送駆動モータ(搬送ローラ15、16等を回転駆動する速度可変型の駆動モータである。)の入力電流の変化等から直接的におこなってもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、第3ガイド板19C(湾曲ガイド部材)に対して搬送方向上流側に設置された第1ガイド板19A(上流側ガイド部材)に段差が形成されていても、第3ガイド板19Cの湾曲搬送面Wから突出する突出部材34を移動可能に設けるとともに、突出部材34の湾曲対向面34aの形状を湾曲搬送面Wとは異なるように形成して、記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前に突出部材34の湾曲対向面34aを記録媒体Pに近づく位置に移動させている。これにより、段差の位置を記録媒体Pの後端が通過するときに、記録媒体Pの後端が第2ガイド板19B(上流側ガイド部材)に強く突き当たって「後端はね音」が生じる不具合を軽減することができる。
【0054】
なお、前記各実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される搬送装置30に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、前記各実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される搬送装置30に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置である。)に設置される搬送装置であって、湾曲ガイド部材や段差を有する上流側ガイド部材が設置された搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、前記各実施の形態では、レジストローラ17、18に対して搬送方向上流側の位置に配設された搬送装置30に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の位置に設置された搬送装置であっても、湾曲ガイド部材や段差を有する上流側ガイド部材が設置された搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、前記各実施の形態では、第1ガイド板19Aと第2ガイド板19Bの一部とが段差を有する上流側ガイド部材として機能して、第3ガイド板19Cの一部が湾曲ガイド部材として機能するように構成したが、段差を有する上流側ガイド部材と湾曲ガイド部材との構成はこれに限定されることなく、これとは異なるガイド板の組み合わせがされた搬送装置であっても、湾曲ガイド部材が設置されて、その上流側に段差を有する上流側ガイド部材が設置された搬送装置(例えば、湾曲ガイド部材が湾曲ガイド板のみで形成され、上流側ガイド部材が上流側ガイド板のみで形成された搬送装置である。)であれば、本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、前記各実施の形態では、レジストローラ17、18の近傍に配設されたフォトセンサ40によって、記録媒体Pの先端を光学的に検知したタイミングをトリガーとして、予め求められた記録媒体Pの後端が段差の位置を通過する直前のタイミングによって突出部材31、34を記録媒体Pに近づく位置に移動させている。
これに対して、記録媒体Pを検知するフォトセンサを突出部材31、34よりも上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側である。)に配設して、記録媒体Pの先端を光学的に検知してから所定時間(フォトセンサの位置から段差の位置に至る搬送距離と、記録媒体Pの搬送速度と、から算出される時間+αである。)が経過した後に、突出部材31、34を記録媒体Pに近づく位置に移動させることもできる。
さらには、記録媒体Pを検知するフォトセンサを給紙部の位置に配設して、給紙部における給紙動作が開始されてから所定時間(給紙部の位置から段差の位置に至る搬送距離と、記録媒体Pの搬送速度と、から算出される時間+αである。)が経過した後に、突出部材31、34を記録媒体Pに近づく位置に移動させることもできる。
そして、これらの場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
15、16 搬送ローラ、
17、18 レジストローラ、
19A 第1ガイド板(上流側ガイド部材)、
19B 第2ガイド板、
19C 第3ガイド板(湾曲ガイド部材)、
19C1 開口、
30 搬送装置、
31 突出部材(回転部材)、
31a 回転軸部、 31b 湾曲対向面、 31c ギア、
33 突出部ユニット
34 突出部材、
34a 湾曲対向面、
35 ラックギア(移動手段)、 36 ピニオンギア(移動手段)、
40 フォトセンサ(検知手段)、
46、49 ステッピングモータ(移動手段)、
48 紙厚センサ、
W 湾曲搬送面、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2007−276951号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送装置であって、
記録媒体に対向して当該記録媒体を湾曲させながら当該記録媒体の搬送を案内する湾曲ガイド部材と、
前記湾曲ガイド部材に対して記録媒体の搬送方向上流側の位置に配設されて、記録媒体に対向して当該記録媒体の搬送を案内するとともに、前記湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体における凸状に湾曲した表面に対向する搬送面側に段差を有する上流側ガイド部材と、
前記湾曲ガイド部材によって湾曲された記録媒体における凹状に湾曲した表面に対向する湾曲搬送面側において記録媒体に近づく方向に突出するとともに、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面の湾曲形状とは異なる湾曲形状にて形成された湾曲対向面を具備した突出部材と、
前記突出部材の前記湾曲対向面を、前記湾曲搬送面を越えて記録媒体に近づく位置と、前記湾曲搬送面を越えずに記録媒体から遠ざかる位置と、の間で移動させる移動手段と、
を備え、
前記移動手段は、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記突出部材は、前記近づく位置に移動した状態で、前記湾曲対向面における搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から前記段差までの距離が、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面における搬送方向上流側においてその湾曲形状が開始する位置から前記段差までの距離に比べて、大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記突出部材は、前記近づく位置に移動した状態で、前記湾曲対向面における曲率が、前記湾曲ガイド部材の前記湾曲搬送面における曲率に比べて、大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記突出部材は、その一部に前記湾曲対向面が形成された回転部材であって、
前記移動手段は、前記回転部材を回転させることで、前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記回転部材は、その回転方向が記録媒体の搬送方向に沿うように記録媒体の搬送タイミングに合わせて回転するとともに、前記湾曲対向面における周速度が記録媒体の搬送速度と同等になるように回転することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記移動手段は、搬送される記録媒体の厚さ又は坪量が所定値以上の場合にのみ、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
搬送される記録媒体の搬送位置を検知する検知手段を備え、
前記移動手段は、前記検知手段の検知結果に基いて、記録媒体の後端が前記段差の位置を通過する前に前記突出部材の前記湾曲対向面を前記遠ざかる位置から前記近づく位置に移動させることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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