説明

搬送装置および記録装置

【課題】 記録装置により記録材料に対して記録処理を施す際に搬送される記録材料などの被搬送物にしわが発生することを防止することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】 長尺帯状の記録材料Sをその長手方向に移動させる移動手段と、移動手段による記録材料Sの移動経路の途中に配置され、記録材料Sの一方面側に気体を供給して、記録材料Sの一部を浮上させる第1エアローラ53と、第1エアローラ53により浮上させられた記録材料Sの少なくとも一部の他方面に対向配置された振動部材31を有し、振動部材31と記録材料Sとの空隙に、進行波を発生させる進行波発生部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、連続用紙などの長尺帯状の被搬送体を搬送する技術に関する。また、本発明は、搬送される被搬送体(記録媒体)に画像やパターンなどを記録する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の搬送ローラにより長尺帯状の記録媒体を搬送する際に、記録媒体にしわが生じると、記録媒体を正確に搬送することができない、という問題が発生する。また、例えばインクジェットプリンタなどの記録装置内において搬送される記録媒体にしわが生じていると、記録媒体に正確に画像等を記録することができない、という問題が発生する。
【0003】
記録媒体にしわが発生することを防止するための技術として、例えば、特開平8‐259068号公報(特許文献1)に開示された張力保持機構が知られている。この特許文献1に開示された張力保持機構は、搬送される記録媒体である連続記録紙を搬送方向とは逆方向に駆動する駆動ローラと、この駆動ローラに記録紙を挟んで圧接されるとともに同一平面上でそれぞれ傾斜した2つの従動ローラとを備える。そして、駆動ローラと従動ローラとにより記録紙に付与する張力を保持することによって記録紙にしわが発生することを防止している。
【0004】
また、例えば特開2003‐81502号公報(特許文献2)には、搬送される記録媒体である連続した記録用紙に摩擦抵抗を付与するための複数のフリクションバーを備える記録装置が開示されている。この記録装置では複数のフリクションバーによる記録用紙の巻き付け長さを調整して記録用紙に付与する張力を一定にすることよって、記録用紙にしわが発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐259068号公報(例えば、図2)
【特許文献2】特開2003‐81502号公報(例えば、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された張力保持機構では、2つの従動ローラが記録紙を挟んで、点接触する状態で駆動ローラに圧接されるため、記録紙に作用する張力が不安定となる。この結果、記録紙にしわが生じるという問題が発生する。
【0007】
また、特許文献2に開示された記録装置では、フリクションバーが正確に位置決めされずに、ミスアライメントの状態で取り付けられていると、記録用紙の幅方向に亘って均等に摩擦力が作用しない。この結果、記録紙にしわが生じるという問題が発生する。
【0008】
本発明の第1の目的は、上述のような点に鑑み、搬送する被搬送物にしわが発生することを防止することができ、正確に被搬送物を搬送することができる搬送装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、上述のような点に鑑み、搬送する記録材料にしわが発生することを防止することができて、記録材料に対して正確に記録処理を施すことができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明(搬送装置)は、長尺帯状の被搬送物をその長手方向に移動させる移動手段と、移動手段による被搬送物の移動経路の途中に配置され、被搬送物の一方面側に気体を供給して、被搬送物の少なくとも一部を浮上させる浮上手段と、浮上手段により浮上させられた被搬送物の少なくとも一部の他方面に対向配置された振動部材を有し、当該振動部材と被搬送物との空隙に、進行波を発生させる進行波発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載される搬送装置において、進行波発生手段が、振動部材と被搬送物との空隙に、移動手段による被搬送物の移動方向とは逆方向に進む進行波を発生させることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載される搬送装置において、振動部材が、移動手段による被搬送物の移動方向と直交する幅方向に亘って設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載される搬送装置において、浮上手段が、被搬送物を湾曲させるように被搬送物の一部を浮上させる手段であって、振動部材が浮上手段により浮上する被搬送物の湾曲形状に沿った形状を有することを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載される搬送装置において、浮上手段が、振動部材と対向する被搬送物の一部を浮上させるとともに、振動部材よりも移動手段による被搬送物の移動方向における下流側において被搬送物の一部を浮上させることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載される搬送装置において、進行波発生手段は、振動部材に設けられた複数の圧電素子と、当該複数の圧電素子によって振動部材にそれぞれ位相の異なる定在波を発生させる振動制御手段とを有することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載される搬送装置において、進行波発生手段が有する振動制御手段は、複数の圧電素子によって振動部材にそれぞれ発生させる定在波の位相差を制御することにより、前記空隙に発生する進行波の進行方向を設定することを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明(記録装置)は、請求項1から請求項7のいずれかに記載される搬送装置を備え、搬送装置によって搬送される被搬送物が長尺帯状の記録材料であり、搬送装置によって搬送される記録材料に対して記録処理を施す記録手段をさらに備えることを特徴とする記録装置。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載される記録装置において、記録手段が、振動部材よりも移動手段による被搬送物の移動方向における下流側にある記録材料に対して記録処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項7のいずれかに係る発明によれば、搬送する被搬送物にしわが発生することを防止することができ、被搬送物を正確に搬送することができる。また、請求項8または請求項9に係る発明によれば、搬送する記録材料にしわが発生することを防止することができて、記録材料に対して正確に記録処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る記録装置の側面図である。
【図3】進行波発生部30を示す側断面図(a)、正面図(b)である。
【図4】記録部2の概略構成図である。
【図5】記録装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1および図2に基づいて説明する。図1はこの発明の実施形態に係る記録装置の平面図であり、図2はその側面図である。なお、便宜上、図1では記録装置のカバーを外した状態を示し、図2ではカバーを点線で示す。
【0021】
このインクジェット記録方式の記録装置1の要部は、記録部2と搬送部5と後述する制御部20とから構成される。また、記録装置1は、記録用紙としての長尺帯状の記録材料Sを、図1および図2において符号矢印Aで示す副走査方向に搬送部5により移動させるとともに、記録部2の記録ヘッド11を、ヘッド移動機構12により副走査方向と直交する、図2において符号矢印Cで示す主走査方向に移動させることにより、記録材料Sに画像を記録し、記録材料Sに対して記録処理を施すものである。なお、記録部2、搬送部5および記録材料Sは本発明の記録手段、搬送装置および被搬送物にそれぞれ相当する。
【0022】
次に、搬送部5について図2を参照して説明する。搬送部5が備えるモータ65は、ロール状の記録材料である第1ロール61を図示時計回りに回転駆動することにより、記録材料Sを巻き出す。第1ロール61から巻き出された記録材料Sはモータ66により図示時計回りに回転駆動される第2ロール62に巻き取られる。この結果、記録材料Sは第1ロール61から第2ロール62に向けて移動する。
【0023】
記録材料Sの移動経路の途中には、第1搬送ローラ51、テンション調整機構63の第1テンションローラ52、第1エアローラ53、第2エアローラ54、テンション調整機構64の第2テンションローラ55および第2搬送ローラ56が、記録材料Sの移動方向における上流側から下流側に向かって順次、配置されている。これらのローラは、記録材料Sがヘッド部10の下方にて副走査方向Aに移動するように記録材料Sを案内するとともに、記録材料Sに対して記録材料Sの長尺方向(副走査方向A)に沿った方向に張力を付与する。なお、モータ65,66、第1搬送ローラ51、テンション調整機構63、テンション調整機構64および第2搬送ローラ56などが本発明の移動手段に相当する。また、第1エアローラ53などが本発明の浮上手段に相当し、この浮上手段は第2エアローラ54を含む構成であっても良い。
【0024】
第1搬送ローラ51、第2搬送ローラ56、第1テンションローラ52および第2テンションローラ55は、それぞれ記録材料Sの移動に伴い図示時計回りに従動回転する従動ローラである。テンション調整機構63は第1テンションローラ52が記録材料Sを押圧する力を調整することにより、記録材料Sに付与する張力を調整する。テンション調整機構64も同様に第2テンションローラ55が記録材料Sを押圧する力を調整することにより、記録材料Sに付与する張力を調整する。
【0025】
第1エアローラ53および第2エアローラ54は、所謂、エア浮上方式のローラであって、記録材料Sの下面に気体(エア)を吹き付けて、記録材料Sを部分的に浮上させるとともに、記録材料Sに張力を付与する。なお、第1エアローラ53および第2エアローラ54は同様の構造を有している。
【0026】
上述のように構成された搬送部5は、モータ65,66をそれぞれ間欠駆動することにより、記録材料Sをヘッド部10の下方において副走査方向Aに向かって間欠移動させる。なお、モータ65,66をそれぞれ連続駆動することにより、記録材料Sをヘッド部10の下方において副走査方向Aに向かって連続移動させても良い。記録材料Sを間欠移動する場合、ヘッド部10の下方に配置された保持台40によって静止状態にある記録材料Sを吸着保持しても良い。
【0027】
図2に示すように、第1エアローラ53の配置位置において、記録材料Sの進行方向が図示上方から右方向(副走査方向A)に90度方向が変わり、記録材料Sに湾曲部が生じる。この湾曲部を挟んで、第1エアローラ53に対向する位置に進行波発生部30の振動部材31が設けられている。
【0028】
次に、第1エアローラ53や進行波発生部30の詳細について図3を参照して説明する。第1エアローラ53は図3(a)に示すように中空の筒状部材であり、例えばその本体は多孔質セラミックス焼結体からなる。また、第1エアローラ53には、図3(b)に示すように第1エアローラ53の両端にそれぞれ設けられた中空軸531を介して気体供給源57が流路接続されている。気体供給源57から第1エアローラ53内の中空部に供給された気体は、第1エアローラ53の本体(外壁)内に形成された多孔を介して記録材料Sの下面に向けて噴射される。記録材料Sの下面に向けて噴射される気体は微細な多数の孔(多孔)から噴射されるため、その流れは均一であり、記録材料Sの下面に作用する気体の圧力は面内において均等となる。
【0029】
上述のように第1エアローラ53は面内均一の圧力で記録材料Sを非接触で支持するとともに、記録材料Sに張力を付与するため、記録材料Sにしわが発生することを抑制することができる。特に、第1エアローラ53が記録材料Sを湾曲状態で支持するため、記録材料Sが矯正されて記録材料Sにしわが発生することを抑制することができる。但し、第1エアローラ53が正確に位置決めされずにミスアライメントの状態で取り付けられた場合や第1エアローラ53本体に形成された多孔が部分的に詰まった場合、記録材料Sの下面に均一な圧力で気体が作用せず、この結果、記録材料Sにしわが発生する可能性がある。このようにエア浮上式の第1エアローラ53を採用したのみでは、しわの発生を十分に防止することができない。
【0030】
そこで、本発明の進行波発生手段に相当する進行波発生部30を搬送部5に設ける。進行波発生部30は図3(a)に示すように記録材料Sの湾曲部に沿った湾曲形状を有する振動部材31を備える。換言すれば、振動部材31は記録材料Sをその進行方向に導くようなガイド形状を有する。また、振動部材31は記録材料Sの幅方向(Y方向)に亘って記録材料Sの表面(上面)に対向する板状部材であり、記録材料Sの湾曲部に対して略平行に、例えば数十μmから数百μmの範囲内の間隔を空けて配置される。振動部材31の湾曲方向(記録材料Sの進行方向)における一方側端部には第1圧電素子32が取り付けられ、他方側端部には第2圧電素子33が取り付けられている。
【0031】
図3(b)に示すように、第1圧電素子32および第2圧電素子33は、振動制御部34とそれぞれ電気的に接続されている。振動制御部34は第1圧電素子32および第2圧電素子33にそれぞれ交流電圧を印加することにより、振動部材31を振動させる。振動部材31の振動により発生する音波が振動部材31と記録材料Sの湾曲部との間(狭い空隙)に放射されると、振動部材31の湾曲形状(ガイド形状)に基づく波面状態により空隙内にエネルギー密度の差が生じる。この結果、空隙内に音響流と呼ばれる直流的な空気の流れが発生する。この音響流は空隙内に斥力と粘性を生じさせる。空隙内に生じた斥力と粘性は空隙に沿って移動する記録材料Sの摩擦抵抗(空隙内の空気との摺動抵抗)を低減する粘性層として作用する。
【0032】
また、振動制御部34により第1圧電素子32および第2圧電素子33にそれぞれ交流電圧を印加すると、振動部材31に交流電圧の位相に整合する定在波が生じる。このとき、振動制御部34により第1圧電素子32および第2圧電素子33にそれぞれ印加する交流電圧の位相をずらすように制御すると、第1圧電素子32の振動により振動部材31に生じる定在波と、第2圧電素子33の振動により振動部材31に生じる定在波とが合成される。この結果、各定在波の位相のずれに応じた進行波が上記空隙内に発生する。例えば、振動制御部34により第1圧電素子32に印加する交流電圧の位相に対して、振動制御部34により第2圧電素子33に印加する交流電圧の位相を半波長だけ遅らせるようにずらすと、図3(a)に示すように記録材料Sの移動方向と反対方向に向かう進行波99が空隙内に発生する。換言すれば、振動制御部34により第1圧電素子32の振動により振動部材31に生じる定在波の位相より、第2圧電素子33の振動により振動部材31に生じる定在波の位相が半波長だけ遅れるように制御すると、図3(a)に示すように記録材料Sの移動方向と反対方向に向かう進行波99が空隙内に発生する。
【0033】
この進行波99は、第1エアローラ53によりエア浮上状態とされ非接触状態で支持されるとともに張力が付与された記録材料Sをその長手方向に軽く引っ張って整えるように、記録材料Sに対して作用する。この結果、記録材料Sにしわが発生することを防止することができる。ここで、「しわが発生することを防止する」とは記録材料Sにしわが全く無い状態にすることではなく、記録材料Sを正確に搬送でき、また、記録材料Sに正確に画像等を記録できれば、記録材料Sに多少のしわが存在することも許容する表現である。
【0034】
第1エアローラ53から記録材料Sの移動方向に記録部2を挟んで配置された第2エアローラ54も、第1エアローラ53と同様に記録材料Sを非接触状態(エア浮上状態)で支持するとともに記録材料Sに張力を付与する。この結果、記録材料Sに対する進行波99による作用が第1エアローラ53から第2エアローラ54にかけて展張された記録部2に及び、画像記録されるべき記録材料Sの部分にしわが発生することを効果的に防止することができる。
【0035】
なお、進行波発生部30により発生させる進行波の向きは、図3(a)に示すように記録材料Sの移動方向の逆方向には限定されない。しわの発生要因や発生状況に応じて、振動制御部34により第1圧電素子32および第2圧電素子33にそれぞれ印加する交流電圧の位相を制御して、進行波の方向を設定しても良い。また、振動部材31に取り付ける圧電素子の個数は2個に限定されず、3個以上の圧電素子を振動部材31に取り付けても良い。
【0036】
図1に戻り、ヘッド部10には、インクジェット方式の記録ヘッド11と、記録ヘッド11に含まれるC色用、M色用、Y色用、およびK色用の4色に対応して多数の吐出ノズルを有する各インクジェットヘッド13と、記録ヘッド11を駆動するための図2に示すヘッド走査部14とが含まれている。複数のインクジェットヘッド13は図示しない配管経路を介して各色のインクを貯留する複数のインクタンク45にそれぞれ流路接続されている。
【0037】
ヘッド走査部14は、図2に示すように、記録ヘッド11を載置するキャリッジ15と、このキャリッジ15を記録材料Sの移動方向と直交する矢印C方向(図1)に往復移動させるリニアモータから成るヘッド移動機構12とを備える。なお、記録ヘッド移動機構12は、モータの回転軸に配設された駆動プーリと従動プーリとの間に巻回されるとともに、キャリッジ15に連結された同期ベルトと、この同期ベルトと並行に配置され、キャリッジ15を水平移動可能に案内する一対のガイド部材とを備えるように構成しても良い。このため、キャリッジ15は、モータの駆動により、記録ヘッド11および記録ヘッド移動機構12とともに、搬送部5の駆動による記録材料Sの移動方向と直交する矢印C方向に往復移動する。
【0038】
図4に示すように記録装置1は外部の画像処理装置8とネットワーク9によって接続されており、当該画像処理装置8内のRIP部80からインクジェットヘッド制御部200に記録対象の画像データRIPDATが送られてくる。インクジェットヘッド制御部200は、画像処理装置8内のRIP部80から送られる画像データRIPDATに基づいて、描画用信号DRAWをヘッド駆動制御部230に与える。また、インクジェットヘッド制御部200は、ヘッドユニットの移動を制御するためのヘッドユニット移動指示信号HSをヘッド走査制御部220に与える。
【0039】
ヘッド走査制御部220は、インクジェットヘッド制御部200から与えられるヘッドユニット移動指示信号HSに基づいて、ヘッド走査部14の記録ヘッド移動機構12を駆動して記録ヘッド11を移動させる。ヘッド駆動制御部230は、インクジェットヘッド制御部200から与えられる描画用信号DRAWに基づいて、記録材料Sに所望の描画(記録)が行われるように、記録ヘッド11に含まれる各インクジェットヘッド13を駆動する。
【0040】
図5は、上述した記録装置1の主要な電気的構成を示すブロック図である。制御部20は、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM71と、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM72と、論理演算を実行するとともに各制御部等を統括的に制御するCPU73を備える。また、制御部20はインクジェット制御部200、ヘッド走査制御部220、ヘッド駆動制御部230および振動制御部34を備える。この制御部20は、インターフェース74を介して、上述したモータ65,66、記録ヘッド1、ヘッド走査部14、第1圧電素子32および第2圧電素子33に接続されている。
【0041】
CPU73は制御部20内においてインクジェット制御部200および振動制御部34を制御し、また、インターフェース74を介してモータ65,66の駆動を制御する。インクジェット制御部200はヘッド走査制御部220およびヘッド駆動制御部230を制御する。ヘッド走査制御部220はインターフェース74を介してヘッド走査部14を制御して記録ヘッド11の矢印C方向(Y方向)への往復移動動作を実行する。ヘッド駆動制御部230はインターフェース74を介して記録ヘッド11を制御して、記録ヘッド11に含まれる各インクジェットヘッド13の駆動動作を実行する。振動制御34はインターフェース74を介して第1圧電素子32および第2圧電素子33による振動動作を制御する。
【0042】
以上のような構成を有する記録装置1により画像を記録する際には、搬送部5の駆動により記録材料Sを間欠的に移動させるとともに、記録材料Sの停止時に、記録ヘッド11を記録材料Sの移動方向と直交する矢印C方向に移動させる。そして、この記録ヘッド11の移動時に、画像データに対応させ、記録ヘッド11における各吐出ノズル42の吐出口44から記録材料Sに向けてインク滴を吐出することにより画像の記録を行う。このとき、保持台40によって静止状態にある記録材料のインク滴が吐出される領域を吸着保持しても良い。
【0043】
記録材料Sに対して画像を記録する際に、インクジェットヘッド制御部200は、画像処理装置8内のRIP部80から送られる画像データRIPDATに基づいて描画用信号DRAWをヘッド駆動制御部230に与えるとともに、記録ヘッド11の移動を制御するためのヘッドユニット移動指示信号HSをヘッド走査制御部220に与える。
【0044】
ヘッド駆動制御部230は、描画用信号DRAWに基づいて記録ヘッド11内の各インクジェットヘッド13を駆動して、各インクジェットヘッド13によるインク滴の吐出動作を実行する。この吐出動作と並行して、ヘッド走査制御部220はヘッドユニット移動指示信号HSに基づいてヘッド走査部14を駆動して、ヘッド走査部14のヘッド移動機構12により記録ヘッド11を主走査方向(矢印C方向)に移動させる。
【0045】
搬送部5により記録材料Sを間欠移動させる際に、進行波発生部30の振動制御部34は第1圧電素子32および第2圧電素子33により振動部材31を振動させることにより、振動部材31と記録材料Sとの間の空間(空隙)に、例えば、記録材料Sの移動方向(進行方向)の逆方向に進む進行波99を発生させる。この進行波99は、記録材料Sをその長手方向に軽く引っ張って整えるように、記録材料Sに対して作用する。このとき、記録材料Sは第1エアローラ53によりエア浮上状態とされ、摩擦抵抗の小さい非接触状態で弾性的に支持されているため、進行波99による上記作用が記録材料Sに十分に伝わる。
【0046】
記録材料Sの幅方向に亘って均等に発生している進行波99により第1エアローラ53により支持された記録材料Sがその幅方向に亘って均等に、その長手方向(進行方向と逆方向)に軽く引っ張られるため、第1エアローラ53により支持された記録材料Sにはしわが発生しない。また、仮に、第1エアローラ53に向かって搬送されてくる記録材料Sに小さなしわが発生していたとしても、進行波99による上記作用によって、しわが伸ばされる。この結果、記録ヘッド11に向かって移動する記録材料Sにしわが発生することを防止することができる。なお、予め搬送部5によって記録材料Sを搬送する際に記録材料Sに生じるしわの状態を把握し、このしわの状態に応じて進行波の進行方向を設定しても良い。具体的には、第1圧電素子32および第2圧電素子33が振動部材31にそれぞれ生じさせる定在波の位相差を振動制御部34により制御して、進行波の進行方向を設定すれば良い。
【0047】
上述のように、本実施形態によると、進行波発生部30が第1エアローラ53により非接触支持された記録材料Sに接触することなく、記録材料Sにしわが発生することを防止することができる。このため、本実施形態によれば、異なる厚さ寸法や幅寸法を有する記録材料Sに対しても、しわが発生することを防止することができる。例えば、上記特許文献1に開示された張力保持機構では、駆動ローラに記録紙(記録材料)を挟んで2つの従動ローラを圧接されて、しわの発生を防止している。しかしながら、この張力保持機構では、記録材料の厚さ寸法が変更されると、記録材料に作用する従動ローラの圧接力が変化して、この結果、記録材料にしわが発生する。このしわの発生を防止するために従動ローラの配置位置を変更し、圧接力を調整する作業が必要となる。また、一般に接触式の複数の搬送ローラにより長尺帯状の記録材料を搬送する際に記録材料の幅が変更されると、しわが発生する場合がある。このしわの発生を防止するために、搬送ローラ間の間隔(スパン)を変更する調整作業が発生する。これに対して本実施形態によれば、記録材料Sの厚さ寸法や幅寸法が変更されても、記録材料Sに作用する進行波の力は変化しないので、調整作業は発生しない。仮に調整作業が必要な場合であっても、第1圧電素子32および第2圧電素子33が振動部材31にそれぞれ生じさせる定在波を振動制御部34により制御するという簡易な手法で対応することができる。
【0048】
なお、上述の実施形態を以下のように変形実施しても良い。
進行波発生部30および第1エアローラ53は記録装置1内に設けられた搬送部5に適用されているが、記録装置以外の処理装置内に設けられた搬送部に適用されても良いし、単に長尺帯状の被搬送物を搬送する搬送装置に適用しても良い。また、搬送部(搬送装置)内において進行波発生部30および第1エアローラ53に相当する機構の配置位置は任意であり、特にしわが発生する可能性が高い箇所や被搬送物に対して何らかの処理を施す処理装置内に配置される場合はその処理箇所よりも搬送方向における上流側に配置すれば良い。また、搬送部(搬送装置)内において進行波発生部30および第1エアローラ53に相当する機構を複数、配置しても良い。
【0049】
上記記録部2は記録材料Sに対して画像を記録して記録処理を施すものであるが、文字や符号などを印字しても良いし、配線パターンなどの所定のパターンを記録するものであっても良い。また、記録部2はインクジェット方式の記録部であるが、例えば電子写真方式やレーザ描画方式などの他の方式による記録部であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 記録装置
2 記録部
5 搬送部
11 記録ヘッド
20 制御部
30 進行波発生部
31 振動部材
32 第1圧電素子
33 第2圧電素子
34 振動制御部
53 第1エアローラ
54 第2エアローラ
99 進行波
S 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の被搬送物をその長手方向に移動させる移動手段と、
移動手段による被搬送物の移動経路の途中に配置され、被搬送物の一方面側に気体を供給して、被搬送物の少なくとも一部を浮上させる浮上手段と、
浮上手段により浮上させられた被搬送物の少なくとも一部の他方面に対向配置された振動部材を有し、当該振動部材と被搬送物との空隙に、進行波を発生させる進行波発生手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載される搬送装置において、
進行波発生手段が、振動部材と被搬送物との空隙に、移動手段による被搬送物の移動方向とは逆方向に進む進行波を発生させることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載される搬送装置において、
振動部材が、移動手段による被搬送物の移動方向と直交する幅方向に亘って設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される搬送装置において、
浮上手段が、被搬送物を湾曲させるように被搬送物の一部を浮上させる手段であって、振動部材が浮上手段により浮上する被搬送物の湾曲形状に沿った形状を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載される搬送装置において、
浮上手段が、振動部材と対向する被搬送物の一部を浮上させるとともに、振動部材よりも移動手段による被搬送物の移動方向における下流側において被搬送物の一部を浮上させることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載される搬送装置において、
進行波発生手段は、振動部材に設けられた複数の圧電素子と、当該複数の圧電素子によって振動部材にそれぞれ位相の異なる定在波を発生させる振動制御手段とを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載される搬送装置において、
進行波発生手段が有する振動制御手段は、複数の圧電素子によって振動部材にそれぞれ発生させる定在波の位相差を制御することにより、前記空隙に発生する進行波の進行方向を設定することを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載される搬送装置を備え、
搬送装置によって搬送される被搬送物が長尺帯状の記録材料であり、
搬送装置によって搬送される記録材料に対して記録処理を施す記録手段をさらに備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載される記録装置において、
記録手段が、振動部材よりも移動手段による被搬送物の移動方向における下流側にある記録材料に対して記録処理を施すことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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