説明

搬送装置の制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、搬送時には定速で駆動し、待機時には停止して、搬送物を定間隔で搬送する搬送装置の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の、先行する搬送物と所定距離を維持させるこの種の搬送装置は、先行する搬送物と所定距離以上離隔している場合には定速で駆動し、先行する搬送物と所定距離以上離隔していない場合には停止して先行する搬送物との距離を一定にするようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そして、搬送装置が定速走行する場合、あるいは、停止する場合には、定速始動あるいは停止の信号の後に、モータおよび機構のイナーシャなどのため直線的に加速あるいは減速し、ただちに定速の状態または停止の状態にならない。
【0004】このため、停止指示の直後に再び定速にさせる場合、搬送装置が確実に停止しておらず、低速走行の状態から再び加速することになり、通常時の減速時間より減速時間が短くなって、先行する搬送物と所定距離を保つことができなくなる場合があり、正確に搬送物間の距離を維持できなくなる問題を有している。
【0005】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、正確に搬送物間の距離を維持することができる搬送装置の制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の搬送装置の制御方法は、下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物と上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物が所定距離以上離隔している場合には上流側のコンベヤを定速で駆動し、先行する搬送物と所定距離以上離隔していない場合には前記上流側のコンベヤを停止し、定速と停止との間は加減速して、下流側のコンベヤの搬送物を定間隔にして搬送する搬送装置の制御方法において、前記上流側のコンベヤが定速から停止するまでの減速の途中で再び加速して定速に復帰する場合、この再び加速し定速にする際に、停止までの減速時の途中の速度を所定時間維持した後、再び加速するものである。
【0007】請求項2記載の搬送装置の制御方法は、請求項1記載の搬送装置の制御方法において、上流側のコンベヤは、複数並列に設けられ、下流側のコンベヤは、合流コンベヤで、これらいずれかの上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物と合流された下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物との間隔が所定距離以上離隔していない場合にはこれらすべての上流側のコンベヤを停止させるものである。
【0008】
【作用】請求項1記載の搬送装置の制御方法は、先行する搬送物と所定距離以上離隔している場合には定速で駆動し、先行する搬送物と所定距離以上離隔していない場合には停止し、搬送物を定間隔にして搬送する際に、定速から停止するまでの減速の途中で再び加速して定速に復帰する場合、この再び加速して定速にする際に、停止までの減速時の途中の速度を所定時間維持した後、再び加速することにより、加速を開始する時間が通常の場合と等しくすることができるため、停止した後に加速させた場合と同様に搬送物間の距離を保つことができ、搬送物間の距離を正確に一定にできる。
【0009】請求項2記載の搬送装置の制御方法は、請求項1記載の搬送装置の制御方法において、いずれかの上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物と合流された下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物との間隔が所定距離以上離隔していない場合にはこれらすべての上流側のコンベヤを停止させることにより、上流側のコンベヤが複数並列に設けられ、下流側のコンベヤが合流コンベヤの場合にも対応する。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例の搬送装置を図面を参照して説明する。
【0011】図1および図2において、1は搬送装置で、この搬送装置1は、上流側のコンベヤとしての2本の平行な搬入コンベヤ2a,2bを有し、これら搬入コンベヤ2a,2bの下流には、これら搬入コンベヤ2a,2bからの搬送物を1列に合流させる下流側のコンベヤとしての合流コンベヤ3が設けられ、この合流コンベヤ3の下流には、搬送コンベヤ4が設けられている。
【0012】また、搬入コンベヤ2a,2bは、図示しないたとえばサーボモータにて駆動される低速搬入コンベヤ部5a,5bと、この低速搬入コンベヤ部5a,5bの下流側には、この低速搬入コンベヤ部5a,5bより高速でこの低速搬入コンベヤ部5a,5bとの速度差により搬送物の間隔を設定する同様にたとえばサーボモータにて駆動される高速搬入コンベヤ部6a,6bが設けられている。
【0013】さらに、搬入コンベヤ2a,2b上には、第1の光電センサ7a,7bが配設され、合流コンベヤ3上には、第2の光電センサ8が配設されている。そして、これら第1の光電センサ7a,7bと、第2の光電センサ8との間隔Pは、搬送物間の所定間隔に合わせられている。また、この間隔Pは、高速搬入コンベヤ部6a,6bの第1の光電センサ7a,7bおよび高速搬入コンベヤ部6a,6bの搬送の端部間の距離aと、高速搬入コンベヤ部6a,6bの搬送の端部および合流コンベヤ3の搬送の端部間の距離bと、合流コンベヤ3の搬送の端部および合流コンベヤ3の第2の光電センサ8間の距離cとを加えた距離である。
【0014】また、距離a〔mm〕は、最小搬送物が搬送された場合に、低速搬入コンベヤ部5a,5bと、高速搬入コンベヤ部6a,6bとの速度差により発生する間隔Pmin 〔mm〕より小さくする必要がある。
【0015】ここで、最小搬送物の長さをLmin 、低速搬入コンベヤ部5a,5bの搬送速度をVL し、高速搬入コンベヤ部6a,6bの搬送速度をVH とすれば、Pmin =(VH /VL )×Lmin −Lminである。
【0016】したがって、a>Pminとなり、距離aは、最小搬送物の場合の間隔Pmin より長く設定すればよい。
【0017】また、高速搬入コンベヤ部6a,6bの搬送速度と、合流コンベヤ3の搬送速度が等しいことを原則とすると、距離aおよび距離bを加えた距離は、第1の光電センサ7a,7bがオンして一旦停止した後、再起動した際に、距離aに距離bを加えた距離内で加速が完了し、定速に戻る必要がある。
【0018】なお、図3に示すように、停止時のオーバラン距離をLx 〔mm〕、発進時の遅れ距離をLy 〔mm〕、10ms毎の加速速度量をVG 〔m/min〕、加減速時間をTG 〔ms〕および加減速距離をKG とすると、KG =VH /VGとなり、加減速時間TG は、TG =KG ×10となる。したがって、停止時のオーバラン距離Lx は、Lx =[VH ×{TG /(1000×60)}×1000]÷2=(VH ×TG )/120となる。
【0019】また、高速搬入コンベヤ部6a,6bの遅れ距離Ly は、加減速量が等しい場合にはオーバラン距離Lx に等しく、Lx =Ly となる。
【0020】そして、Lx =Ly であるので、a+b>{(VH ×TG )/120}×2となり、したがって、a+b>(VH ×TG )/60となる。
【0021】次に、上記実施例の動作について説明する。
【0022】まず、搬入コンベヤ2a,2bのそれぞれで搬送物が搬送され、低速搬入コンベヤ部5a,5bと、高速搬入コンベヤ部6a,6bとの速度差により、搬送物間の距離を設定する。そして、いずれか一方の搬入コンベヤ2aの高速搬入コンベヤ部6aの第1の光電センサ7aを搬送物が遮光し、他方の搬入コンベヤ2bの高速搬入コンベヤ部6bの第1の光電センサ7bが搬送物により遮光されると、他方の搬入コンベヤ2bは停止する。なお、他方の搬入コンベヤ2bの停止時には、図示しないサーボモータをサーボロックし、ドリフトを防止する。
【0023】そして、一方の搬入コンベヤ2aからの搬送物が第2の光電センサ8を遮光した後通光すると、他方の搬入コンベヤ2bは再び搬送動作を開始し、搬送物を合流コンベヤ3に搬送する。
【0024】また、搬入コンベヤ2a,2bの加減速は、減速して停止した後に再び加速する場合は、図3に示すように、通常通りの減速を行ない、また、加速の際も通常通りの加速を行なう。
【0025】一方、停止する前の減速中に再び加速する場合は、図4に示すように、減速中の加速の指示がでた時の速度を所定時間、たとえばそのままの状態で減速したら停止したであろう時間まで維持し、その後通常通りの加速を行なう。
【0026】このように、所定時間一定速度を維持することにより、遅れ距離Ly が、オーバラン距離Lx に等しくなる。したがって、図5に示す従来例のように、遅れ距離Ly が、オーバラン距離Lx より小さくなることがなくなり、搬送物と先行する搬送物との距離が所定距離より短くなることを防止できる。
【0027】次に、他の実施例を図6を参照して説明する。
【0028】この図6に示す実施例は、図1に示す搬送装置において、4本の平行な搬入コンベヤ2a,2b,2c,2dを有している。
【0029】また、搬入コンベヤ2a,2b,2c,2dは、低速用のサーボモータ11a ,11b ,11c ,11d にて駆動される低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、この低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dの下流側には、この低速搬入コンベヤ部5a,5bより高速で高速用のサーボモータ12a ,12b ,12c ,12d にて駆動される高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dが設けられている。
【0030】そして、搬入コンベヤ2a,2b,2c,2d上には、第1の光電センサ7a,7b,7c,7dが配設されている。
【0031】そうして、制御は低速用のサーボモータ11a ,11b ,11c ,11d と、高速用のサーボモータ12a ,12b ,12c ,12d とは独立しており、パルスフィードバックは、低速用のサーボモータ11a ,11b ,11c ,11d のみ、高速用のサーボモータ12a ,12b ,12c ,12d にフィードバックされる。
【0032】また、高速用のサーボモータ12a ,12b ,12c ,12d の停止時は、比例制御にてドリフトを防止し、低速用のサーボモータ11a ,11b ,11c ,11d の停止時は、サーボロックにてドリフトを防止する。
【0033】次に、この図6に示す実施例の動作について説明する。
【0034】まず、搬入コンベヤ2a,2b,2c,2dのそれぞれで搬送物が搬送され、それぞれの低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとの速度差により、搬送物間の距離を設定する。そして、たとえばいずれかの搬入コンベヤ2aの高速搬入コンベヤ部6aの第1の光電センサ7aを搬送物が遮光し、他の搬入コンベヤ2b,2c,2dの高速搬入コンベヤ部6b,6c,6dの第1の光電センサ7b,7c,7dが搬送物により遮光されると、他のすべての搬入コンベヤ2b,2c,2dは停止する。なお、他の搬入コンベヤ2b,2c,2dの停止時には、図示しないサーボモータをサーボロックし、ドリフトを防止する。
【0035】そして、搬入コンベヤ2aからの搬送物が第2の光電センサ8を遮光した後通光すると、他方の搬入コンベヤ2b,2c,2dは再び搬送動作を開始し、搬送物を合流コンベヤ3に搬送する。
【0036】また、搬入コンベヤ2a,2bの加減速は、減速して停止した後に再び加速する場合は、図1に示す場合と同様に、通常通りの減速を行ない、また、加速の際も通常通りの加速を行なう。
【0037】一方、停止する前の減速中に再び加速する場合も、図1に示す場合と同様に、減速中の加速の指示がでた時の速度を所定時間、たとえばそのままの状態で減速したら停止したであろう時間まで維持し、その後通常通りの加速を行なう。
【0038】したがって、図1に示す実施例と同様の効果を奏する。
【0039】また、他の実施例を図7を参照して説明する。
【0040】この図7に示す実施例は、図6に示す搬送装置において、低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとを、それぞれ1つのサーボモータ15a ,15b ,15c ,15d にて駆動するもので、低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとは、チェーンによって連動されるようになっている。すなわち、図6に示す構成では低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとを独立しているのに対し、図7に示す構成では低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとをチェーンによって連動させるものである。
【0041】そして、低速搬入コンベヤ部5a,5b,5c,5dと、高速搬入コンベヤ部6a,6b,6c,6dとをチェーンによって連動させ、図6に示す実施例と同様の動作を行なわせる。
【0042】
【発明の効果】請求項1記載の搬送装置の制御方法によれば、先行する搬送物と所定距離以上離隔している場合には定速で駆動し、先行する搬送物と所定距離以上離隔していない場合には停止し、搬送物を定間隔にして搬送する際に、定速から停止するまでの減速の途中で再び速して定速に復帰する場合、この再び加速して定速にする際に、停止までの減速時の途中の速度を所定時間維持した後、再び加速することにより、加速を開始する時間が通常の場合と等しくすることができるため、停止した後に加速させた場合と同様に搬送物間の距離を保つことができ、搬送物間の距離を正確に一定にできる。
【0043】請求項2記載の搬送装置の制御方法によれば、請求項1記載の搬送装置の制御方法に加え、いずれかの上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物と合流された下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物との間隔が所定距離以上離隔していない場合にはこれらすべての上流側のコンベヤを停止させることにより、上流側のコンベヤが複数並列に設けられ、下流側のコンベヤが合流コンベヤの場合にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の搬送装置を示す平面から見た説明図である。
【図2】同上搬送装置を示す側面から見た説明図である。
【図3】同上減速して停止した後に再び加速を行なう場合の動作を示すグラフである。
【図4】同上減速中に再び加速を行なう場合の動作を示すグラフである。
【図5】従来例の減速中に再び加速を行なう場合の動作を示すグラフである。
【図6】他の実施例の搬送装置を示す平面から見た説明図である。
【図7】また他の実施例の搬送装置を示す平面から見た説明図である。
【符号の説明】
1 搬送装置
2a,2b 上流側のコンベヤとしての搬入コンベヤ
下流側のコンベヤとしての合流コンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物と上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物が所定距離以上離隔している場合には上流側のコンベヤを定速で駆動し、先行する搬送物と所定距離以上離隔していない場合には前記上流側のコンベヤを停止し、定速と停止との間は加減速して、下流側のコンベヤの搬送物を定間隔にして搬送する搬送装置の制御方法において、前記上流側のコンベヤが定速から停止するまでの減速の途中で再び加速して定速に復帰する場合、この再び加速して定速にする際に、停止までの減速時の途中の速度を所定時間維持した後、再び加速することを特徴とする搬送装置の制御方法。
【請求項2】 上流側のコンベヤは、複数並列に設けられ、下流側のコンベヤは、合流コンベヤで、これらいずれかの上流側のコンベヤで搬送される後続の搬送物と合流された下流側のコンベヤで搬送される先行する搬送物との間隔が所定距離以上離隔していない場合にはこれらすべての上流側のコンベヤを停止させることを特徴とする請求項1記載の搬送装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【特許番号】特許第3058528号(P3058528)
【登録日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【発行日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−276112
【出願日】平成4年10月14日(1992.10.14)
【公開番号】特開平6−127660
【公開日】平成6年5月10日(1994.5.10)
【審査請求日】平成10年4月6日(1998.4.6)
【出願人】(000103426)オークラ輸送機株式会社 (84)
【参考文献】
【文献】特公 昭61−14047(JP,B2)