説明

搬送装置の給油装置

【課題】潤滑オイルをチェーンに安定して給油する。
【解決手段】リフロー装置は、基板を搬送するチェーンと、チェーンを走行させる上部レール10Bと、上部レール10Bの上方に設けられた給油装置90とを備える。上部レール10Bの内面側には溝部14が設けられる。溝部とチェーン82との間にはチェーン82の上部を支持する上部キー材30が配置される。上部レール10Bの上部キー材30の上方に対応した位置には、潤滑オイルを通過させる給油孔16が穿設される。給油装置90から滴下された潤滑オイルは、上部レール10Bの給油孔16を通過して上部キー材30の上面部に塗布される。上部キー材30の上面部に塗布された潤滑オイルは、その上面部から側面部を伝わってチェーン82に給油される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のはんだ付けを行うはんだ付け装置の基板搬送等に使用される搬送装置の給油措置に関する。詳しくは、チェーンと給油部との間に伝達部材を設けることで、オイルを安定的かつ確実にチェーンに給油するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板と電子部品とのはんだ付けを行う場合には、一般にはんだ付け装置が利用される。はんだ付け装置には、一般的にリフロー方式とフロー方式に大別できる。リフロー方式のはんだ付け装置では、基板を搬送する搬送装置と、トンネル状のリフロー装置本体(マッフル)とを備えている。リフロー装置本体の内部には、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンとが設けられている。メタルマスクによってソルダ―ペーストをプリント基板に印刷し、電子部品を載置した後に、予備加熱ゾーンおよび本加熱ゾーンでは、搬送装置によって搬送された基板に対して熱風を吹き付けて、ソルダ―ペーストのはんだを溶融させて基板の電極に電子部品等を固着させる。冷却ゾーンでは、予備加熱ゾーンおよび本加熱ゾーンで加熱された基板を冷却してはんだを固化させる。このような一連の処理により、プリント基板のはんだ付けが行われる。
【0003】
ここで、予備加熱ゾーンおよび本加熱ゾーンにおいてはヒータにより炉内が高温状態とされるため、これらのゾーンを走行する搬送装置には高温環境に対する耐熱性や耐熱強度を有するブッシュ付チェーンが使用される。ブッシュ付チェーンはリフロー装置本体の内部に敷設されており、図示しない駆動用モータの回転力が伝達されたスプロケットの回転によりリフロー装置本体の内部を走行して基板を搬送する。このとき、ブッシュ付チェーンの走行の円滑化を図るために、ブッシュ付チェーンには耐熱性の潤滑オイルが定期的に給油される。
【0004】
潤滑オイルの給油方法としては、例えば、ブッシュ付チェーンの上方に自動給油装置を設け、ブッシュ付チェーンの上方からチェーンのローラ部にのみ潤滑油を給油するリフロー装置が開示されている(特許文献1参照)。また、他の方法としては、チェーンの上方にオイル供給部を設け、供給部とチェーンが接触しない間隔をあけて、オイルをチェーンに液面を連続して供給するリフロー炉が開示されている(特許文献2参照)。これらの潤滑オイルの給油方法によれば、安定して潤滑オイルをブッシュ付チェーンに給油することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−157630号公報
【特許文献2】特開平11−222310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されるリフロー炉では以下のような問題がある。
【0007】
(1)特許文献1に開示されるリフロー装置では、ブッシュ付チェーンのローラ部にのみ潤滑オイルを直接的に給油するので、潤滑オイルがローラ部の一部に片寄って給油されてしまう場合等があり、潤滑オイルがローラ部の全体に均一に塗布できない場合があった。この場合には、潤滑オイルのローラ部への給油が不十分となるため、ローラ部とスプロケット等との摩擦抵抗等により安定した走行が確保できないという問題がある。
【0008】
(2)特許文献2に開示されるリフロー装置では、潤滑オイルを給油する供給部のノズルをブッシュ付チェーンに近接させる必要があるため、潤滑オイルがブッシュ付チェーンだけでなく供給部側のノズルにも付着してしまう場合があり、潤滑オイルを安定して給油できず、給油不良が発生してしまう場合がある。
【0009】
(3)また、フロー方式のはんだ付け装置では、あらかじめ溶融しているはんだを上方に向けて噴流させ、噴流面にプリント基板を接触させてはんだ付けを行う装置であって、上述のリフロー装置と同様な搬送装置を有しているため、同様の問題を抱えている。さらに、はんだ付け装置に拘わらずに、この種の搬送装置においても同様の問題を抱えている。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、潤滑オイルをチェーンに安定して給油することを搬送装置の給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る搬送装置の給油装置は、搬送用チェーンと、給油孔を有してチェーンの上方に設けられ、チェーンを基板の搬送方向に沿って走行させるレール部と、レール部の上方に設けられ、レール部の給油孔を通過させてチェーンにオイルを給油する給油部と、チェーンとレール部との間に設けられた伝達部材とを備え、給油部は、給油部から滴下されるオイルを伝達部材を介してチェーンに給油するものである。
【0012】
本発明において、給油部からオイルが滴下されると、滴下されたオイルは、レール部に穿設された給油孔を通過し、チェーンとレール部との間に設けられた伝達部材上に流れ落ちる。伝達部材上に流れ落ちたオイルは、伝達部材の周面を伝わって下方側のチェーンの全体に給油される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オイルを伝達部材を介してチェーンに給油するため、オイルをチェーンに均一かつ確実に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るリフロー装置の構成例を示す図である。
【図2】給油装置および搬送装置の構成例を示す斜視図である。
【図3】給油装置および搬送装置の構成例を示す平面図である。
【図4】給油装置および搬送装置のA−A線に沿った断面図である。
【図5】搬送装置の要部の構成例を示す断面図である。
【図6】搬送装置のB−B線に沿った断面図である。
【図7】給油装置および搬送装置のC−C線に沿った断面図である。
【図8】給油装置および搬送装置の要部の構成例を示す断面図である(その1)。
【図9】給油装置および搬送装置の要部の構成例を示す断面図である(その2)。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る上部キー材の構成例を示す図である(その1)。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る上部キー材の構成例を示す図である(その2)。
【図12】給油孔の他の構成例を示す図である(その1)。
【図13】給油孔の他の構成例を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一例としてリフロー装置に適用される搬送装置の給油装置に発明を実施した場合の最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<1.第1の実施の形態>
[リフロー装置の構成例]
まず、本発明の一実施形態に係るリフロー装置100の概略構成について説明する。図1は、リフロー装置100の構成の一例を示している。図1に示すように、リフロー装置100は、リフロー装置本体40と搬送装置80と給油装置90とヒータ50とファン60とモータ62とを備えている。リフロー装置本体40は、搬入口40aと搬出口40bとを有するトンネル状の匡体であって、搬入口40aから搬出口40bに至る搬送経路に沿って予備加熱ゾーンZ1と本加熱ゾーンZ2と冷却ゾーンZ3とが設けられている。
【0016】
搬送装置80は、リフロー装置本体40内の搬送経路に沿ってプリント基板70を搬送するものであり、無端状のブッシュ付きチェーン82(以下チェーン82という)とスプロケット86とを有している。チェーン82は、図示しない駆動用モータの回転力が伝達された4個のスプロケット86によって張架された状態で、リフロー装置本体40のトンネル内の搬送経路、リフロー装置本体40の側方および下方を周回するように敷設されている。なお、搬送装置80については後述する。
【0017】
給油装置90は、リフロー装置本体40の搬入口40a付近(搬送経路の上流側)に設けられ、走行するチェーン82に潤滑オイルを給油してチェーン82の走行の安定化を図るものである。給油装置90についても後述する。
【0018】
ヒータ50、ファン60およびモータ62は、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2のそれぞれに設置され、搬送装置80の上下方向のそれぞれに対向して配置されている。ヒータ50は、リフロー装置本体40内部の気体を加熱させて高温の熱風を生成する。ファン60は、例えばシロッコファンからなり、モータ62の駆動により回転駆動してヒータ50によって加熱された熱風をプリント基板70の上下方向から吹き付ける。これにより、プリント基板70のはんだが溶融され、プリント基板70の電極に電子部品等が固着される。なお、本例では、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2に設置されるヒータ50、ファン60およびモータ62は、同一の構成のものを用いている。
【0019】
冷却部52は、例えば冷却部材とファンとモータ等を有し、冷却ゾーンZ3に設置されている。冷却部52は、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2で加熱されたプリント基板70を冷却して溶融したはんだを固化する。
[搬送装置の構成例]
次に、搬送装置80の構成の一例について説明する。図2は、搬送装置80および給油装置90の構成の要部の一例を示している。図3は、搬送装置80の平面構成の一例を示している。図4は、図3に示す搬送装置80をA−A線に沿って切断した断面図であり、図5は、その一方側の搬送レール10の要部を示している。図6は、図3に示す搬送装置80をB−B線に沿って切断した断面図を示している。
【0020】
搬送装置80は、図2〜図6に示すように、搬送レール(レール部)10とチェーン82と下部キー材20と上部キー材30とを有している。搬送レール10は、図3に示すように、プリント基板70の幅方向の両端部のそれぞれを支持するために、対向して配置された一対の搬送レール10,10で構成され、リフロー装置本体40の長手方向(搬送方向H)に沿うようにして敷設されている。搬送レール10には、例えばアルミニウム等の金属材料が用いられる。一対の搬送レール10,10は、図4に示すように、互いに対向する側が開口した側面略コの字形状をなし、チェーン82の下方に設けられた下部レール10Aとチェーン82の上方に設けられた上部レール10Bとを有している。
【0021】
下部レール10Aの上部レール10Bと対向した内面部には、下部キー材20を取り付けるための溝部12が搬送レール10の長手方向に沿って形成されている。図5に示すように、溝部12の幅W1は、下部キー材20の幅W2と略同一に選定され、その深さD1は下部キー材20の上面にチェーン82を載置したときにチェーン82を構成する内プレート82aの下端が下部レール10Aの内面部に接触しないような深さとされる。
【0022】
なお、本例では、各下部キー材20は、図6に示すように、プリント基板70の搬送経路H1に対して上流側において、固定されており、下流側は自由端となっている。具体的には下部キー材20に設けられたストッパー23が、溝部12の凹部11に挿入されることで、固定されるようにしている。これは、熱によって下部キー材20が膨張した場合に、下部キー材20が、搬送方向側に伸張するように構成するためである。これによって、チェーン82の走行方向と下部キー材20の伸張方向とが一致するため、下部キー材20の伸張がチェーン82の走行によってストレスを受けることないため、下部キー材20の伸張がチェーン82の走行に支障を来たすことがない。下流側を固定し、上流側を自由端とした場合には、チェーン82の走行によって下部キー材20に固定側を基点とした振動が発生し、その結果、下部キー材20の自由端が搬送経路内に持ち上がる力を受け、チェーン走行に支障をきたしたり、熱によって、下部キー材20は搬送方向と反対側に伸張する一方でチェーン82は搬送方向に走行しているので、下部キー材20の伸張に伴って下部キー材にストレスが加わり、搬送経路内に下部キー材20が膨らんでしまい、チェーン82の走行を阻害するというような、下部キー材20の伸張がチェーン82の走行に影響を及ぼす場合がある。
【0023】
上部レール10Bの下部レール10Aと対向した内面部には、上部キー材30を取り付けるための溝部14が搬送レール10の長手方向に沿って形成されている。図5に示すように、溝部14の幅W3は、上部キー材30の幅W4よりも若干広くなるように選定され、溝部14と上部キー材30との間に隙間A1ができるように構成される。溝部14の深さD2は、上部キー材30をチェーン82のブッシュ82c上に配置したときに上部キー材30の上面と溝部14の溝上面との間に若干の隙間A2ができるように選定される。
【0024】
チェーン82は、図5に示すように、一対の内プレート82a,82aと一対の外プレート82b,82bとブッシュ82cとピン82dと保持ピン84eとを有している。2枚の内プレート82a,82aはブッシュ82cを介して圧入して結合されている。ピン82dは、ブッシュ82cの内側に挿入され、ピン82dの両端でかつ内プレート82a,82aの外側のそれぞれには外プレート82b,82bが圧入して結合されている。保持ピン84eは、プリント基板70を保持するものであり、互いに対向する搬送レール10側に配置された外プレート82bのプレート面に突出して設けられている。プリント基板70は、保持ピン84上に載置されて搬送方向Hに沿って搬送される。なお、本例では、一組のチェーン82を示しているが、実際には、内プレート82aおよびブッシュ82cを有する複数の内リンクと、外プレート82bおよびピン82dを有する複数の外リンクとが交互に連結されて構成される。
【0025】
下部キー材20は、図2〜図6に示すように、長尺の柱状体であって、例えばステンレス(SUS)等の耐食性、耐熱性に優れた金属材料から構成されている。下部キー材20は、溝部12に嵌め込まれ、下部キー材20の上部側が溝部12から露出した状態とされ、走行するチェーン82のブッシュ82cをその上面部でスライド可能に支持する。また、下部キー材20は、溝部12に対して隙間なく嵌め込まれ、搬送方向Hおよびこれに直交する方向に移動しないように溝部12に固定されている。下部キー材20の幅W4は、ブッシュ82cの長手方向の長さと略同一に選定される。なお、下部キー材20は、支持部材の一例を構成している。
【0026】
下部キー材20は、図6に示すように、複数のキー材20A,20B,20C,20Dに分割されて構成され、隣接するキー材20A,20B、キー材20B,20C、キー材20C,20Dがストッパー23を凹部11に挿入し、所定の間隔X1を隔てて溝部12に嵌め込まれている。これは、例えば下部キー材20の材質に基づく膨張により下部キー材20が伸張する場合があるので、隣接する下部キー材20間にある程度のクリアランスを持たせておく必要があるからである。したがって、間隔X1は、下部キー材20の膨張率等に基づいて選定される。なお、図6では、隣接するキー材を離間させた例を便宜上キー材20B,20Cのみ示している。
【0027】
下部キー材20の長手方向の両端部のそれぞれには、その上面部から下方に向かって傾斜したテーパー部22が設けられている。具体的には、キー材20Aの搬入口40a側の端部にはテーパー部22aが設けられ、キー材20Dの搬出口40b側の端部にはテーパー部22dが設けられている。これらのテーパー部22a,22dは、リフロー装置本体40のトンネル内部および外部にチェーン82を円滑に搬送するためのガイド部として機能する。また、キー材20Bのキー材20Cと対向した端部にはテーパー部22bが設けられ、キー材20Cのキー材20Bと対向した端部にはテーパー部22cが設けられている。これらのテーパー部22b,22cは、リフロー装置本体40のトンネル内部でチェーン82を円滑に搬送するためのガイド部として機能する。
【0028】
上部キー材30は、下部キー材20と同様に、長尺の柱状体であって、例えばステンレス(SUS)等の耐食性、耐熱性に優れた金属材料から構成されている。上部キー材30は、溝部14とチェーン82とで構成される空間部に挿入され、自重によりチェーン82のブッシュ82c上に載置される。このとき、図5に示すように、上部キー材30の周面と溝部14の溝周面との間には隙間A1が設けられると共に、上部キー材30の上面と溝部14の溝上面との間には隙間A2が設けられ、上部キー材30は遊びを有した状態で溝部14に配置される。すなわち、上部キー材30は、隙間A1,A2を介して上下左右に移動可能に溝部14に配置される。
【0029】
また、上部キー材30は、図6に示すように、複数のキー材30A,30B,30Cに分割されて構成されている。これは、上部キー材30を分割することで溝部14に円滑に取り付けるためである。ここで、複数のキー材30A,30B,30Cは、下部キー材20およびチェーン82を取り付けた後に、溝部14とチェーン82とで構成される空間部に順次に挿入することで取り付けが行われる。そのため、溝部14の搬出口40b側の他端には、先に挿入した上部キー材30(キー材30C)が溝部14の搬出口40b側から落下または飛び出ないようにするための止め部38が設けられている。なお、本例では、上部キー材30を3本で構成した例を示しているが、これに限定されることはない。
【0030】
キー材30Aの搬入口40a側の端部には、図6に示すように、その下面部から外側上方に向かって傾斜したテーパー部32が設けられている。このテーパー部32は、チェーン82の進入口を広く確保して、チェーン82をリフロー装置本体40の内部に円滑に搬送するためのガイド部として機能する。
【0031】
上部キー材30(キー材30A)の搬入口40a側の端部30aは、図6に示すように、下部キー材20(キー材20A)の搬入口40a側の端部20aよりも距離X2だけ搬送方向Hの下流側にずれた位置に設けられている。これは、キー材20Aの端部20aとキー材30Aの端部30aとを同一位置とした場合には、キー材20Aとキー材30Aと間の進入口が狭くなってしまうため、搬入口40aから搬入されるチェーン82がキー材20A,30Aに接触して噛み込み、チェーン82の走行が停止してしまう場合があるからである。上部キー材30(キー材30A)と下部キー材20(キー材20A)とをずらして配置することで、進入口の開口が広くなり、搬入口40aから搬入されるチェーン82を下部キー材20でガイドしてから、上部キー材30でチェーン82をガイドするので、チェーン82の噛み込みを防止でき、安定したチェーン82の走行を確保できる。
【0032】
[給油装置および搬送装置の構成例]
図7、図3に示す給油装置90および搬送装置80のC−C線に沿った断面図を示し、図8はその要部を示している。図9は、チェーン82の振動により上下移動する上部キー材30の動作例を示している。なお、図7の構成において上記図4および図5に示した構成と同様の構成については説明を省略する。また、図7では便宜上一方の搬送レール10にのみ給油装置90を設置した例を示している。
【0033】
図1、図7および図8に示すように、給油装置90は、上部レール10Bの上方であって、かつ、上部レール10Bの搬入口40a側の端部に設置され、上部キー材30を介してチェーン82に潤滑オイルを給油する。給油装置90は、2本の搬送レール10のそれぞれに設置される。ここで、給油装置90を搬送レール10の搬入口40aの端部に設置するのは、リフロー装置100の稼働中では炉内が高温状態となり、チェーン82の走行中に給油した潤滑オイルが揮発してしまうので、チェーン82が炉内を走行する前に潤滑オイルをチェーン82に給油しておく必要があるからである。
【0034】
給油装置90は、図7に示すように、容器92と配管94とノズル96とを備えている。容器92は、上端および下端が閉塞された円筒形状をなし、その内部にはチェーン82の走行を安定化させるための所定量の潤滑オイルが収容されている。配管94は、一端が容器92の下端部に連通されると共に他端がノズル96の上端部に連通され、取付板金110を介して上部レール10Bの上面部に取り付けられている。ノズル96は、上部レール10Bの後述する給油孔16の直上に設けられ、その先端部が給油孔16とは若干離間して設けられている。ノズル96の内径は、本例の場合、給油孔16の孔径と略同一に選定される。ノズル96は、容器92から供給される潤滑オイルを上部レール10Bの給油孔16を介して上部キー材30の上面部30dに滴下する。
【0035】
給油装置90のノズル96の直下の上部レール10Bには、図7に示すように、平面視円形状の給油孔16が穿設されている。給油孔16は、上部レール10Bの長手方向に直交する方向に貫通すると共にその下端側が上部レール10Bに形成された溝部14に連通しており(図5、図8参照)、給油装置90からの潤滑オイルを溝部14に配置されている上部キー材30上に滴下する。給油孔16の孔径W5は、図3に示すように、上部キー材30の幅W4よりも若干大きくなるように選定され、給油装置90からの潤滑オイルを確実かつ円滑に滴下することができるようになっている。
【0036】
上部キー材30は、図8に示すように、溝部14に配置されることでその上部側が給油孔16の内部に入り込んだ状態となっており、給油装置90から給油される潤滑オイルをその上面部30dで受けて、この受けた潤滑オイルを上部キー材30の上面部30dから側面部30eを伝わせて上部キー材30の下面側のチェーン82のブッシュ82cに給油する伝達部材として機能する。一方、下部キー材20は、チェーン82のブッシュ82cの上部周面82c1から流れ落ちてくる潤滑オイルをその上面部20dで受けて潤滑オイルを貯留する保持部材として機能する。
【0037】
[潤滑オイルのチェーンへの給油の動作例]
次に、潤滑オイルをチェーン82に給油する場合の潤滑オイルの流れの一例について図7〜図9を参照して説明する。図7および図8に示すように、給油装置90のノズル96から潤滑オイルが滴下されると、滴下された潤滑オイルは上部レール10Bの給油孔16を通過して上部キー材30の上面部30dに流れ落ちる。上部キー材30の上面部30dに流れ落ちた潤滑オイルは、上部キー材30の上面部30dから側面部30eを伝わってチェーン82のブッシュ82cの端部に給油される。
【0038】
また、上部キー材30はチェーン82の走行中の振動に伴って上下に振動するので、この振動に応じて、図9に示すように、上部キー材30の下面部30fとチェーン82のブッシュ82cの上部周面82c1との間には隙間Mが生じる。これにより、ブッシュ82cの端部に給油された潤滑オイルは、隙間Mから上部キー材30とブッシュ82cと間に入り込み、ブッシュ82cの上部周面82c1の全体に塗れ広がる。これにより、上部キー材30の下面部30fをスライド走行するチェーン82と上部キー材30との摩擦抵抗を少なくできる。
【0039】
ブッシュ82cの上側に塗れ広がった潤滑オイルは、その自重によりブッシュ82cの周面を伝わって下部キー材20の上面部20dに流れ落ち、この上面部20dで貯留される。これにより、下部キー材20の上面部20dをスライド走行するチェーン82と下部キー材20との摩擦抵抗を少なくできる。
【0040】
[搬送装置(キー材)の組み立て例]
次に、搬送装置80の組み立ての一例について図2〜図6を用いて説明する。まず、下部キー材20を上部レール10Bの溝部12の所定位置に嵌め込む。このとき、上述したように、隣接する下部キー材20,20同士は、所定の間隔X1を隔てて溝部14に嵌め込む。続けて、下部キー材20の上面部20dに、連結していない状態のチェーン82を下部キー材20をガイドとして取り付けた後に、4箇所のスプロケット86にチェーン82を張架させた状態でチェーン82を連結する。
【0041】
次に、上部キー材30を、チェーン82の上部と搬送レール10の溝部14との間に形成される空間部に搬入口40a側から挿入する。上部キー材30は、複数本に分割されているので、これらを順次、空間部に挿入して行く。溝部14の搬出口40b側には、止め部38が設けられているので、先に挿入した上部キー材30が止め部38によって停止するまで上部キー材30を押し込む。このようにして、搬送装置80を構成することができる。
【0042】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、潤滑オイルを上部キー材30を介してチェーン82に給油するため、潤滑オイルをチェーン82のブッシュ82cに直接給油する場合と比べて、潤滑オイルをチェーン82のブッシュ82cに均一に塗布することができる。これにより、チェーン82と上部キー材30との摩擦抵抗を少なくすることができ、チェーン82を安定して走行させることができると共に、チェーン82と上部キー材30との摩擦による金属粉の発生を抑制することができる。また、上部キー材30を溝部14とチェーン82との間に上下移動可能に配置することで、チェーン82の走行時の上下振動によりできる隙間Mを介して潤滑オイルをチェーン82の全体に塗布でき、少量の潤滑オイルでもチェーン82の走行の安定化を図ることができる。さらに、給油装置90のノズル96を上部レール10Bの上面部とは所定の間隔を隔てて配置しているので、ノズル96への潤滑オイルの付着を防止でき、潤滑オイルの給油不良を回避することができる。
【0043】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、上部キー材30の変形例について説明する。なお、その他のリフロー装置100の構成は、上記第1の実施の形態と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置80の上部キー材34の構成の一例を示している。図10に示すように、上部キー材34は、給油孔16の下方に位置した部位の側面形状が截頭角錐台をなしており、上面部34cに連続するテーパー部34bを有している。このようなテーパー部34bを設けることにより、給油装置90から滴下された潤滑オイルを効率的かつ円滑にチェーン82のブッシュ82cに給油することができる。
【0045】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置80の他の上部キー材36の構成の一例を示している。図11に示すように、上部キー材36は、給油孔16の下方に位置した部位の側面形状が三角形状をなしており、上部から下部に向かって傾斜したテーパー部36aを有している。このようなテーパー部34aを設けることにより、給油装置90から滴下された潤滑オイルを効率的かつ円滑にチェーン82のブッシュ82cに給油することができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、上述した実施の形態では、上部キー材30と下部キー材20の双方を用いて、潤滑オイルを円滑かつ安定的にチェーン82に給油させていたが、これに限定されることはなく、上部キー材30のみを用いてチェーン82に潤滑オイルを給油するようにしても良い。
【0047】
なお、上記実施例においては、上部キー材30はチェーン82の走行を安定させるために、溝部14に対して隙間Mを介して取り付けられる構成であるが、この構成に限定されるものではなく、上部キー材30を溝部14に固定されるようにしても良い。また、本例の場合、給油孔16の孔径とノズル96の内径は、略同一に選定される場合につき説明したが、図12及び図13に示すように、ノズル96側の開口部はノズル96の内径よりも大となし、上部キー材30側の開口部はノズル96側の開口部よりも小となるように、例えば図12に示すように階段状の開口17や図13に示すようにテーパー状の開口18となしても良い。このようにすると、給油装置90のノズル96から供給される潤滑オイルが上部レール10Bの上面への付着を防止できるとともに、上部キー材30を介して確実にチェーン82に潤滑オイルを給油することができる。
【0048】
以上は一例としてリフロー装置に適用される搬送装置の給油装置に本発明を実施した場合について説明したが、フロー方式のはんだ付け装置や同様の搬送装置においても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・搬送レール、10B・・・上部レール、14・・・溝部、16・・・給油孔、20・・・下部キー材、30・・・上部キー材、80・・・搬送装置、82・・・ブッシュ付きチェーン、90・・・給油装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用チェーンと、
給油孔を有して前記チェーンの上方に設けられ、前記チェーンを前記基板の搬送方向に沿って走行させるレール部と、
前記レール部の上方に設けられ、前記レール部の前記給油孔を通過させて前記チェーンにオイルを給油する給油部と、
前記チェーンと前記レール部との間に設けられた伝達部材とを備え、
前記給油部は、前記給油部から滴下される前記オイルを前記伝達部材を介して前記チェーンに給油する
ことを特徴とする搬送装置の給油装置。
【請求項2】
前記チェーンの下部を支持すると共に、前記給油部から前記チェーンに給油されて下方に流れ落ちる前記オイルを貯留する支持部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置の給油装置。
【請求項3】
前記レール部は、前記伝達部材が配置される位置に溝部を有し、
前記伝達部材は、前記レール部の前記溝部と前記チェーンの上部との間に隙間を介して移動可能に配置された
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置の給油装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−106852(P2012−106852A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258595(P2010−258595)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)