説明

搬送装置

【課題】装置の大型化を防ぎつつ、長い距離を高速で搬送できる搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送装置20は、プレス機にワークを搬送する。この搬送装置20は、基部31と、基端側で基部31に回転可能かつ上下にスライド可能に連結される従動アーム32と、基端側で基部31に回転可能に連結される第1駆動アーム33と、基端側で第1駆動アーム33に回転可能に連結されるとともに、先端側で従動アーム32に回転可能に連結される第2駆動アーム35と、従動アーム32の先端側に設けられてワークを把持する把持装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。詳しくは、プレス機にワークを搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス機が複数並んだプレスラインでは、プレス機同士の間でワークを搬送する搬送装置が設けられる。この搬送装置は、例えば、スコットラッセル機構を用いており、ワークを把持する把持装置と、この把持装置を直線近似運動させるスコットラッセル機構と、このスコットラッセル機構を昇降させる昇降装置と、を備える(特許文献1参照)。
このような搬送装置では、ワークをプレス機から取り出したり投入したりする際、昇降装置により、スコットラッセル機構全体を昇降させる。
【特許文献1】特許2732351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ワークの搬送距離が長くなると、スコットラッセル機構を大型化する必要がある。この場合、スコットラッセル機構を昇降させる昇降装置も大型化する必要があり、設備構成が複雑化するため、コスト高となる。また、スコットラッセル機構や昇降装置を大型化しても、このような大型の装置を高速で作動させることは困難であり、サイクルタイムを低減できず、プレスラインの生産性が低下する。
【0004】
そこで、スコットラッセル機構を用いた搬送装置の代わりに、ベルトコンベア等の移送手段を別途設け、このベルトコンベアにワークを載せて搬送する方法が提案されている。この手法によれば、搬送装置を大型化することなく、ワークの搬送距離を長くできる。
しかしながら、ワークのベルトコンベアとの載せ替え回数が増加して、時間のロスが発生し、ワークを高速で搬送することができない。
【0005】
本発明は、装置の大型化を防ぎつつ、長い距離を高速で搬送できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、プレス機にワークを搬送する搬送装置(例えば、後述の搬送装置20)であって、基部(例えば、後述の基部31)と、基端側で前記基部に回転可能かつ上下にスライド可能に連結される従動アーム(例えば、後述の従動アーム32)と、基端側で前記基部に回転可能に連結される第1駆動アーム(例えば、後述の第1駆動アーム33)と、基端側で前記第1駆動アームに回転可能に連結されるとともに、先端側で前記従動アームに回転可能に連結される第2駆動アーム(例えば、後述の第2駆動アーム35)と、前記従動アームの先端側に設けられて前記ワークを把持する把持装置(例えば、後述の把持装置21)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第1駆動アームと基部との成す角度を調整することにより、把持装置を水平移動できる。さらに、第2駆動アームを設け、この第2駆動アームと第1駆動アームとの成す角度を調整することにより、把持装置を昇降できる。したがって、第1駆動アームと基部との成す角度を調整するとともに、第2駆動アームと第1駆動アームとの成す角度を調整することにより、把持装置を任意の位置に移動でき、ワークの搬送経路の自由度を向上できる。
また、このように把持装置のみを昇降できるので、装置全体を昇降させる必要がなくなり、装置の構成を簡素化できる。その結果、装置が大型化するのを防いで、従来に比べて、長い距離を高速で搬送できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1駆動アームと基部との成す角度を調整することにより、把持装置を水平移動できる。さらに、第2駆動アームを設け、この第2駆動アームと第1駆動アームとの成す角度を調整することにより、把持装置を昇降できる。したがって、第1駆動アームと基部との成す角度を調整するとともに、第2駆動アームと第1駆動アームとの成す角度を調整することにより、把持装置を任意の位置に移動でき、ワークの搬送経路の自由度を向上できる。
また、このように把持装置のみを昇降できるので、装置全体を昇降させる必要がなくなり、装置の構成を簡素化できる。その結果、装置が大型化するのを防いで、従来に比べて、長い距離を高速で搬送できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送装置が適用されたプレスライン1の概略構成を示す図である。
プレスライン1は、タンデムプレスラインであり、ワーク2を加工する複数台のプレス機10と、これらプレス機10の間でワーク2を搬送する複数台の搬送装置20と、を備える。
【0010】
各プレス機10は、ワーク2の下側に配置された下型11と、この下型11に対向して配置された上型12と、下型11に対して上型12を接近、離隔させる昇降機構13と、この昇降機構13を制御する図示しない制御装置と、を有する。
以上のプレス機10は、制御装置により上型12を下型11に接近させることで、ワーク2をプレス加工する。
【0011】
各搬送装置20は、ワーク2を把持する把持装置21と、この把持装置21を移動させる一対のスコットラッセル機構30(図2参照)と、を備える。なお、本実施形態では、一対のスコットラッセル機構30により把持装置21を移動したが、これに限らず、1つのスコットラッセル機構により把持装置を移動してもよい。
把持装置21は、バキュームカップ等を備えた吸着保持手段であり、ワーク2の表面を吸引して保持する。
【0012】
この搬送装置20は、把持装置21でワーク2を把持した状態で、一対のスコットラッセル機構30により把持装置21を図1中実線A〜Dで示す経路に沿って移動させることにより、ワーク2を搬送する。
例えば、図1中実線Bの経路では、ピックアップポイントPにおいて、把持装置21によりワーク2を保持し、大きくリフトして、アドバンス動作に移行し、大きくダウンして、ワークを解放する。その後、小さくリフトして、リターン動作に移行し、小さくダウンして、再びピックアップポイントPに戻る。
【0013】
図2は、搬送装置20のスコットラッセル機構30の概略構成を示す図である。図3は、スコットラッセル機構30の斜視図である。
以下、一対のスコットラッセル機構30のうちの一方について説明するが、他方も同様の構成である。
【0014】
スコットラッセル機構30は、基部31と、基端側で基部31に連結される従動アーム32と、従動アーム32の先端側同士を連結しかつ把持装置21を支持する連結アーム38と、基端側で基部31に連結される第1駆動アーム33と、第1駆動アーム33と従動アーム32とを連結する第2駆動アーム35と、第1駆動アーム33と基部31との成す角度を調整する第1駆動装置36と、第2駆動アーム35と第1駆動アーム33との成す角度を調整する第2駆動装置37と、連結アーム38を回動する第3駆動装置39と、を有する。
【0015】
第1駆動アーム33は、基端側の連結軸Wで基部31に連結される。
第2駆動アーム35は、円盤状であり、中心で第1駆動アーム33に回転可能に連結されるとともに、周縁部で従動アーム32に回転可能に連結される。これにより、第2駆動アーム35は、一端側の連結軸Xで第1駆動アーム33に回転可能に支持されるとともに、他端側の連結軸Yで従動アーム32に回転可能に連結される。
【0016】
従動アーム32は、基端側の連結軸Vで基部31に回転可能かつ上下にスライド可能に連結される。上述の把持装置21は、従動アーム32の先端側の連結軸Zで連結される。
また、連結軸Yは、従動アーム32の長さ方向の中央に位置している。
【0017】
以上のスコットラッセル機構30によれば、第1駆動装置36で駆動して、第1駆動アーム33と基部31との成す角度を調整することにより、把持装置21をスコットラッセル平行運動つまり水平移動させる。さらに、第2駆動装置37で駆動して、第2駆動アーム35と第1駆動アーム33との成す角度を調整することにより、把持装置21を昇降させる。また、第3駆動装置39を駆動することにより、把持装置21の姿勢を調整する。
【0018】
例えば、第1駆動装置36を駆動させずに第2駆動装置37のみを駆動して、第2駆動アーム35を図2中矢印Q方向に回転させると、従動アーム32の先端は、図2中矢印Rで示すように、リフト幅Tで移動する。
【0019】
したがって、第1駆動装置36の駆動と第2駆動装置37の駆動とを組み合わせることにより、従動アームの先端の把持装置21は、図4中実線で示す軌跡で移動する。
【0020】
図5は、把持装置21の軌跡と上型12との関係を示す図である。図6は、把持装置21の軌跡と下型11との関係を示す図である。
図6中実線A1、B1は、把持装置21の軌跡つまり搬送モーションである。図6に示すように、把持装置21は、下型11に干渉せずに搬送する。
【0021】
一方、上型12の図5中左側下端部には、突起部121が設けられている。
図5中破線A2、B2は、上型12に対する把持装置21の軌跡つまり搬送モーションである。この搬送モーションは、把持装置21と上下にスライドする上型12との位置関係を、上型12の位置を基準として示したものである。
【0022】
図5に示すように、上型12の左側下端部には突起部121が設けられているので、把持装置21を図6中実線A1で示す搬送モーションで移動させた場合、図5中破線A2で示すように、干渉点S1おいて、把持装置21が上型12に干渉する。
しかしながら、第2駆動装置37を駆動することにより、把持装置21の搬送モーションを変更して実線A3として、把持装置21と上型12が干渉するのを防止できる。
【0023】
また、図6に示すように、上型12の右側端部には突起部が設けられていないので、把持装置21を図6中実線B1で示す搬送モーションで移動させた場合、図5中破線B2で示すように、干渉点S2と搬送モーションとの間に隙間があるので、干渉に対する余裕がある。
そこで、第2駆動装置37を駆動することにより、把持装置21の搬送モーションを変更して実線B3として、より高速で把持装置を移動させることができる。
【0024】
ところで、以上の搬送装置20では、第2駆動アーム35の位置は、1つの従動アーム32の姿勢に対して、2種類存在する。
図7は、従動アーム32、第1駆動アーム33、および第2駆動アーム35の位置関係を示す模式図である。
すなわち、図7に示すように、連結軸Yに対する連結軸Xの相対位置は、相対位置α、相対位置βの2種類存在する。したがって、ワーク2を把持する動作をする場合には相対位置αを採用し、ワークを解放する動作をする場合には、相対位置βを採用するなど、相対位置αと相対位置βとを交互に繰り返すこともできる。
しかしながら、相対位置αと相対位置βとを交互に繰り返すと第2駆動装置37の制御が複雑になる、という問題がある。また、相対位置βでは、ワークの搬送完了後に連結軸Xがプレス機10に接近する、という問題がある。そこで、本実施形態では、相対位置βを採用する。
【0025】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1駆動装置36で第1駆動アーム33と基部31との成す角度を調整することにより、把持装置21を水平移動できる。さらに、第2駆動アーム35を設け、第2駆動装置37で第2駆動アーム35と第1駆動アーム33との成す角度を調整することにより、把持装置21を昇降できる。したがって、第1駆動アーム33と基部31との成す角度を調整するとともに、第2駆動アーム35と第1駆動アーム33との成す角度を調整することにより、把持装置21を任意の位置に移動でき、ワーク2の搬送経路の自由度を向上できる。
このように把持装置21のみを昇降できるので、装置全体を昇降させる必要がなくなり、搬送装置20の構成を簡素化できる。その結果、装置が大型化するのを防いで、従来に比べて、長い距離を高速で搬送できる。
【0026】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、第2駆動アーム35Aの構造が第1実施形態と異なる。
すなわち、本実施形態では、第2駆動アーム35Aは、長尺状であり、一端で第1駆動アーム33に回転可能に連結されるとともに、他端で従動アーム32に回転可能に連結される。
本実施形態によれば、上述の(1)と同様の効果がある。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、連結軸Wおよび連結軸Xを駆動軸としたが、これに限らない。すなわち、連結軸V、連結軸W、連結軸X、および連結軸Yのうち、いずれか2つを駆動軸とすればよい。
また、連結軸Yを従動アーム32の長さ方向の中央に設けたが、これに限らず、搬送作業に適した作動範囲を得るために、その他の位置に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置が適用されたプレスラインの概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係る搬送装置のスコットラッセル機構の概略構成を示す図である。
【図3】前記実施形態に係るスコットラッセル機構の斜視図である。
【図4】前記実施形態に係るスコットラッセル機構の動作を説明するための図である。
【図5】前記実施形態に係るプレスラインのプレス機の把持装置の軌跡と上型との関係を示す図である。
【図6】前記実施形態に係るプレスラインのプレス機の把持装置の軌跡と下型との関係を示す図である。
【図7】前記実施形態に係る従動アーム、第1駆動アーム、および第2駆動アームの位置関係を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る搬送装置のスコットラッセル機構の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
20 搬送装置
21 把持装置
31 基部
32 従動アーム
33 第1駆動アーム
35、35A 第2駆動アーム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機にワークを搬送する搬送装置であって、
基部と、
基端側で前記基部に回転可能かつ上下にスライド可能に連結される従動アームと、
基端側で前記基部に回転可能に連結される第1駆動アームと、
基端側で前記第1駆動アームに回転可能に連結されるとともに、先端側で前記従動アームに回転可能に連結される第2駆動アームと、
前記従動アームの先端側に設けられて前記ワークを把持する把持装置と、
を備えることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−208935(P2009−208935A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55510(P2008−55510)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】