説明

搬送装置

【課題】搬送容器の底部に搬送ベルトとの摩擦によって傷が形成されるなどの問題がなく、かつ一度搬送を停止しても、速やかに搬送を開始することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送容器wの下方からエアaを噴出して、上記搬送容器を搬送方向に向けて搬送するエア噴出手段10、11他を有し、かつ上記搬送容器を載置可能な搬送ベルトを上記搬送方向に向けて走行可能に設けた搬送装置とした。搬送装置は、内部がエアを充填したプレナム室10となっている両端部を閉塞した矩形筒状の筺体1が搬送方向に沿って配設され、かつこの筺体1の上部にトップチェーン2を走行させる2つの軌道が設けられると共に、各軌道がそれぞれ2本のレールによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、飲料充填前の缶、ペットボトルなどの軽量の飲料用容器を搬送するのに適した搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料用容器の生産工場や飲料生産工場等においては、製造ラインに沿って各生産工程間に搬送装置が設けられており、この搬送装置では、走行可能な搬送ベルトが備えられて、この搬送ベルト上に載置された飲料用容器などの搬送容器が搬送ベルトとともに移動するようになっている。
【0003】
ところが、この搬送ベルトを備えた搬送装置では、各生産工程において不具合などが生じた場合に生産工程の作業が停止または遅延すると、この作業停止などが生じた生産工程に搬送容器を導入する直前の搬送ベルトから搬送容器が同生産工程に搬送されないにも拘わらず、この直前の搬送ベルトには搬送容器が上流側から搬送されてしまう。
このため、直前の搬送ベルトは、当該搬送ベルトの走行により、下流側において滞留している搬送容器に次々後続の搬送容器が衝突して、複数本の搬送容器が互いの間隔が狭くなって詰めた状態で配置された後に、漸く停止する。従って、これらの詰めた状態で配置された搬送容器は、それぞれ後続の容器との衝突によって、凹みや傷が入るなどの問題がある上に、搬送ベルトが停止までの間の搬送ベルトとの摩擦により、容器底部にも傷が形成され、或いは表面加工が剥離されるなどの問題もある。
【0004】
これに対して、このような生産工程間に、搬送容器を下方から噴出するエアによって搬送方向に向けて搬送するエア噴出手段を有する搬送装置を設けた場合には、搬送ベルトとの摩擦による傷の形成などの心配もなく、搬送容器を搬送することができる。また、エアの噴出の停止などにより、下流側において、搬送容器が後続の搬送容器と接触しても、搬送ベルトの走行による衝突とは異なって衝撃が最小限に抑えられる。このため、搬送容器の傷の形成も最小限のものとすることができる。
しかしながら、このエア噴出手段を設けた搬送装置でも、図5に示すように、搬送容器wに鍔部w1などが備えられている場合には、後続容器の衝突力により、この鍔部w1同士が重なり合った姿勢で搬送容器wは停止してしまうことがある。
【0005】
すると、再度、エアaの噴出を開始しても、鍔部w1が上側に重なった一方の搬送容器wの重量が、鍔部w1が下側に重なった他方の搬送容器wに作用することによる重量増加によって、さらには、一方の搬送容器wの重なっている鍔部w1側が上方に傾斜することによるエアの逃げ道となる隙間の形成によって、搬送容器wを浮上させることができないという問題がある。
【0006】
なお、上述の搬送装置以外に、例えば、特許文献1に示すように、2条の搬送ベルト間に吸引溝路を形成した搬送装置があり、この搬送装置は、この吸引溝路から外気を吸引しつつ2条の搬送ベルトを搬送方向に向けて走行させることによって、搬送容器wを2条の搬送ベルトに吸着させた状態で搬送するものの、上述の搬送ベルトと同様に、生産工程において搬送容器の搬送の停止などが生じると、後続の容器との接触の問題に加えて、吸引手段と搬送ベルトとの停止タイミングのズレなどによる搬送容器の搬送ベルトとの摩擦などの問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2004−73088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、搬送容器の底部に搬送ベルトとの摩擦によって傷が形成されるなどの問題がなく、かつ一度搬送を停止しても、速やかに搬送を開始することができる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、搬送容器の下方からエアを噴出して、上記搬送容器を搬送方向に向けて搬送するエア噴出手段を有し、かつ上記搬送容器を載置可能な搬送ベルトを上記搬送方向に向けて走行可能に設けたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、上記搬送ベルトは、少なくとも2条以上設けられ、かつ各々が上記搬送方向に沿って配設されており、上記エア噴出手段は、上記搬送方向上方に向けてエアを噴出するエア噴出口が上記搬送ベルト間に設けられていることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の搬送装置において、上記搬送ベルトは、2条設けられるとともに、当該2条の搬送ベルトによる上記エア噴出口を挟む幅全長が上記搬送容器の底部より大きく形成されていることを特徴としている。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の上記エア噴出口が上記搬送方向に向けて連続的に多数設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送容器の両側部をガイドするガイド手段が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし5のいずれかに記載の搬送装置によれば、エア噴出手段によって搬送容器の下方から噴出するエアにより、搬送容器を搬送方向に向けて搬送することができる。このため、搬送を停止する際にも、搬送ベルトの走行による搬送容器同士の衝突や搬送容器の搬送ベルトとの摩擦による傷の形成を阻止できる。
さらには、搬送容器は、搬送を停止した際に、当該搬送容器が備えている鍔部同士が重なって搬送ベルト上に載置されていても、搬送ベルトを走行させることによって、鍔部同士の重なりを解除することができる。従って、一度搬送を停止しても、速やかに搬送を開始して、エア噴出手段によるエアの噴出により搬送容器を搬送することができる。
【0015】
その際、請求項2に記載の搬送装置によれば、エア噴出手段によって、搬送ベルトの走行による影響を何ら受けることなく、搬送ベルト間のエア噴出口からエアを噴出できるため、搬送容器を安定的に搬送することができ、請求項3に記載の搬送装置によれば、2条の搬送ベルトの走行によって安定的に搬送容器を搬送方向に移動させつつ、この移動する搬送容器に搬送ベルト間のエア噴出口から搬送方向上方に向けてエアを噴出することによって搬送容器を推進移動させることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、搬送方向に向けて連続的に多数設けられたエア噴出口から噴出するエアによって、搬送方向に向けて均一的な搬送を行うことができ、また、請求項5に記載の発明によれば、ガイド手段によって搬送容器の傾きを防止して、安定的に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る搬送装置について、図1〜図4を用いて説明する。
本実施形態の搬送装置は、内部がエアを充填したプレナム室10となっている両端部を閉塞した矩形筒状の筺体1が搬送方向に沿って配設され、かつこの筺体1の上部にトップチェーン2を走行させる2つの軌道が設けられると共に、各軌道がそれぞれ2本のレール12によって構成されている。
【0018】
この筺体1は、矩形筒状のケーシング31内に固定されるとともに、このケーシング31が支持部材19によって床上に支持されることにより、水平に配設されており、プレナム室10に加圧空気を供給するファン18を備えた圧縮空気供給手段11が接続されている。
また、筺体1は、上記軌道間に位置する上部中央が搬送方向の全長に亘って開口しており、かつこの開口による縁部に全長に亘ってそれぞれ垂直板13a、13bが一体に設けられることにより、ノズル13が構成されている。
このノズル13には、垂直板13a、13b間に、垂直板13a、13bと直交方向に垂直かつ進行方向に角度を有するように配設された仕切り板14が開口の全長に等間隔に多数枚配設され、かつ各仕切り板14の両端部が垂直板13a、13bと一体に設けられている。これにより、ノズル13には、仕切り板14間に多数のエア噴出口が設けられている。
【0019】
他方、トップチェーン2には、矩形平板状の各トッププレート(搬送ベルト)20の裏面中央部に2本の脚部21が設けられるとともに、各脚部21が隣接するトッププレート20の脚部21と連結されて構成される2本のチェーン22が備えられている。また、トップチェーン2は、各トッププレート20のチェーン22を間に挟んだ両端部がそれぞれレール12によって走行自在に支持されている。
これにより、上記軌道上を走行自在に設けられている2本のトップチェーン2は、2条のトッププレート20の幅全長が搬送容器wの幅よりも大きくなるように構成されており、上記トッププレート20は、ノズル13を跨いだ搬送容器wの底部を支持可能に設けられている。
【0020】
そして、ケーシング31の上記搬送方向の両端部には、それぞれ2枚のスプロケット33a、33bが軸32によって回転可能に固定されており、この軸32には、図示されない回転駆動手段が接続されている。
これにより、トップチェーン2は、スプロケット33a、33a間およびスプロケット33b、33b間にそれぞれ巻き回されて無端環状に構成されており、各トップチェーン2は、脚部21間に噛合するスプロケット33a、33bの回転によって、搬送方向に走行可能に設けられている。
さらに、ケーシング31の下部には、回転ローラ34が上記搬送方向に沿って等間隔に複数設けられており、各回転ローラ34は、トップチェーン2のトッププレート20の表面を支持可能に設けられている。
【0021】
さらに、ケーシング31の上記搬送方向に沿って延在する両側部には、それぞれ搬送容器wの両側部をガイドするガイド手段4が搬送方向に向けて等間隔に複数設けられており、各ガイド手段4は、ケーシング31に固定された固定板42と、この固定板42に支持されて、上記搬送方向に直交する方向に配設された軸44と、この軸44の搬送容器w側の先端部に備えられたパッド43とを有している。
そして、この軸44は、その外周にネジが切られており、固定板42の貫通孔を挿通し、かつ固定板42を挟む両側にそれぞれ設けられたナット45と螺合して、水平に支持されている。
【0022】
次いで、上記搬送装置を用いて、搬送容器wとして350ml缶を搬送している際の作用について説明する。
まず、搬送容器wの搬送時には、圧縮空気供給手段11からファン18の回転によって、プレナム室10に圧縮空気が供給されるとともに、このプレナム室10からノズル13の各エア噴出口から搬送方向斜め上方に圧縮空気が噴出することにより、搬送容器wが浮上している状態で、搬送方向に向けて進行する。
このため、多数の搬送容器wが次々に上流側から下流側に向けて一列に搬送される。
【0023】
そして、搬送装置の下流側の生産工程において不具合が生じて、作業が停止または遅延している場合に、ノズル13からの圧縮空気の噴出を停止させると、搬送容器wの進行が漸次遅くなり、最後には停止してトッププレート20上に載置される。その際に、搬送容器wは、通常進行するトッププレート20上から幅方向に外れやすいものの、ガイド手段4のパッド43に接触することにより、トッププレート20上に押し戻される。
【0024】
また、特に、生産工程直前の搬送装置の下流側において、搬送容器wは、互いの間隔が狭くなって詰めた状態で配置され、缶の鍔部w1などが重なった状態になりやすい。
そこで次ぎに、この搬送装置を起動させる際に、回転駆動手段によって軸32を介してスプロケット33a、33bを回転させることにより、トップチェーン2をレール12上を走行させる。
これにより、搬送容器wは、缶の鍔部w1などが重なっている場合にも、重なりが解除されつつトップチェーン2とともに搬送方向に向けて移動することにより、正規の姿勢でトッププレート20上に載置される。
【0025】
このため、回転駆動手段を作動させた直後からノズル13からの圧縮空気の噴出を再開して、正規の姿勢でトッププレート20に載置された時点で搬送容器wを浮上させて、搬送方向に向けて進行させる。これにより、速やかに搬送容器wの搬送を再開する。
【0026】
以上の構成からなる搬送装置によれば、トッププレート20間に設けられたノズル13のエア噴出口から搬送方向上方に向けて噴出するエアにより、搬送容器wを搬送方向に向けて搬送することができる。このため、搬送を停止する際にも、搬送ベルトを用いた場合などと異なって、搬送容器同士の衝突や搬送ベルトとの摩擦による傷の形成を阻止できる。
さらには、搬送容器wは、当該搬送容器が備えている鍔部w1同士が重なってトッププレート20上に載置されていても、トッププレート20を走行させることによって、鍔部w1同士の重なりを解除することができる。従って、一度搬送を停止しても、速やかに搬送を開始して、ノズル13のエア噴出口から噴出するエアにより搬送容器wを搬送することができる。
【0027】
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、トッププレート20が3条設けられていてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の搬送装置の全体概略正面図である。
【図2】図1の腰部拡大図である。
【図3】要部平面図である。
【図4】要部縦断面図である。
【図5】従来の搬送装置による問題を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 筺体
2 トップチェーン
4 ガイド手段
10 プレナム室
11 圧縮空気供給手段
12 レール
13 ノズル
13a 垂直板
14 仕切り板
18 ファン
19 支持部材
20 トッププレート(搬送ベルト)
21 脚部
22 チェーン
31 ケーシング
32 軸
33a 33b スプロケット
34 回転ローラ
42 固定板
43 パッド
44 軸
45 ナット
a エア
w 搬送容器
w1 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送容器の下方からエアを噴出して、上記搬送容器を搬送方向に向けて搬送するエア噴出手段を有し、かつ
上記搬送容器を載置可能な搬送ベルトを上記搬送方向に向けて走行可能に設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
上記搬送ベルトは、少なくとも2条以上設けられ、かつ各々が上記搬送方向に沿って配設されており、
上記エア噴出手段は、上記搬送方向上方に向けてエアを噴出するエア噴出口が上記搬送ベルト間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
上記搬送ベルトは、2条設けられるとともに、当該2条の搬送ベルトによる上記エア噴出口を挟む幅全長が上記搬送容器の底部より大きく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記エア噴出口は、上記搬送方向に向けて連続的に多数設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記搬送容器の両側部をガイドするガイド手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−274789(P2009−274789A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125956(P2008−125956)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)