説明

搬送装置

【課題】走行経路に沿って移動自在な搬送用走行体を駆動チエン側のプッシャーで引っ掛けて推進させる形式の搬送装置において、作業区間内を走行する搬送用走行体の脈動現象を防止すること。
【解決手段】搬送用走行体1にドッグ10が設けられ、駆動チエン6には、前記ドッグ10と係合して前記搬送用走行体1を推進させるプッシャー13が設けられた搬送装置であって、前記搬送用走行体1には、ほぼその全長にわたって連続する被制動面12が設けられ、搬送用走行体1に支持された被搬送物Wに対して作業を行なうために前記走行経路中に設定された作業区間には、走行経路方向に複数の制動装置9が前記被制動面12の全長Lより長くない間隔で配設され、各制動装置9には、前記被制動面12に当接する制動体14aと、この制動体14aを前記被制動面12に押圧して搬送用走行体1に走行抵抗を付与する付勢手段15aが設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路に沿って移動自在な搬送用走行体を駆動チエン側のプッシャーで引っ掛けて推進させる形式の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送装置は、オーバーヘッドトロリーコンベヤや台車利用のフロアーコンベヤなどにおいて知られている通り、走行経路に沿って移動自在な搬送用走行体にドッグが設けられ、前記走行経路に沿って移動する駆動チエンには、前記ドッグと係合して前記搬送用走行体を推進させるプッシャーが設けられた搬送装置であって、駆動チエンの走行経路を搬送用走行体の走行経路から離して、そのプッシャーを搬送用走行体側のドッグから外すことにより、搬送用走行体の駆動を解除してフリーにすることができるものである。従って、駆動チエンを停止させないで搬送用走行体を停止させたり、ストレージすることができるだけでなく、他の駆動手段により異なる速度や搬送用走行体間の間隔を変えて走行させることができる。尚、この種の搬送装置では、仮に下り勾配の走行経路においても重力で搬送用走行体がプッシャーより先に進むようなことがないように、プッシャーの後ろ側に位置する逆止用ドッグが併設されるが、前側の被動用ドッグと後ろ側の逆止用ドッグとの間の間隔は、プッシャーの走行経路方向の厚さよりも広くなるので、駆動チエン側のプッシャーに対して搬送用走行体は走行方向前後に遊びがある。
【0003】
尚、特許文献1は、後述する本発明の課題解決手段の一構成要件に使用される制動装置に転用できる構成の減速装置が記載されているので、参考までに例示している。この特許文献1に開示された構成は、駆動チエン側のプッシャーから切り離されてフリーになった搬送用走行体(搬送用トロリー)を所定位置に減速停止させるためのものであり、本発明の技術思想とは全くことなることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−69425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような搬送装置において、搬送用走行体の走行経路中に、搬送用走行体に支持された被搬送物に対し部品の取付けなどを行なう作業区間が設けられている場合、例えば搬送用走行体に支持された自動車の車体にインパクトドライバーなどの電動工具で部品をボルト止めする作業区間が設けられている場合、その作業区間内を走行する搬送用走行体は、被搬送物に対する作業の繰り返しによって、走行抵抗を受けたり受けなかったりするか又は、走行方向の作用力を受けたり受けなかったりすることになる。この結果、搬送用走行体が、駆動チエン側の前記プッシャーとの間の前後方向の遊びの範囲内で、プッシャーに対する先行移動とプッシャーと一体に前進移動する状態とを繰り返す脈動現象を起こすことになり、この搬送用走行体の脈動現象によって、被搬送物の表面に工具で傷をつけてしまうなど、正常な作業の遂行に支障を来す恐れがあった。換言すれば、この種の搬送装置を作業区間内での被搬送物の搬送に利用する場合に考えられる上記のような問題点に関して、従来、これを解決するための対策は全く考えられていなかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る搬送装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、走行経路に沿って移動自在な搬送用走行体1にドッグ10が設けられ、前記走行経路に沿って移動する駆動チエン6には、前記ドッグ10と係合して前記搬送用走行体1を推進させるプッシャー13が設けられた搬送装置であって、前記搬送用走行体1には、ほぼその全長にわたって連続する被制動面12が設けられ、搬送用走行体1に支持された被搬送物Wに対して作業を行なうために前記走行経路中に設定された作業区間WAには、走行経路方向に複数の制動装置9が前記被制動面12の全長Lより長くない間隔Dで配設され、各制動装置9には、前記被制動面12に当接する制動体14aと、この制動体14aを前記被制動面12に押圧して搬送用走行体1に走行抵抗を付与する付勢手段15aが設けられた構成になっている。尚、特許文献1に開示された構成は、駆動チエン側のプッシャーから切り離されてフリーになった搬送用走行体(搬送用トロリー)を所定位置に減速停止させるためのものであり、本発明の技術思想とは全くことなることは明白である。
【0007】
尚、請求項2に記載のように、前記搬送用走行体1が、走行方向に適当間隔おきに配置された複数のトロリー2a〜2dでガイドレール5から吊り下げられたロードバー3と、このロードバー3の下側で吊り下げられた被搬送物支持用ハンガー4とを備えると共に、前記トロリー2a〜2dの内、先頭のトロリー2aに前記ドッグ10が設けられている場合、前記ロードバー3の左右両側面を前記被制動面12に形成し、前記各制動装置9は、前記ロードバー3を左右両側から挟持する左右一対の制動体14a,14bを備えた構成とするのが望ましい。
【0008】
又、制動体14a,14bとしては、特許文献1に記載されたような、搬送用走行体1側の被制動面12に摺接する制動面を備えたブロック体であっても良いが、請求項3に記載のように、固定支軸(垂直支軸17)にブッシュ18dを介して自転可能に支承されたローラー18から成る制動体が望ましい。
【0009】
又、請求項4に記載のように、前記各制動装置9には、走行経路方向の上手側が支軸(垂直支軸24)により揺動自在に軸支されると共に、遊端側が前記付勢手段15a,15bにより前記被制動面12側へ付勢された、走行経路方向に長い可動アーム16を設け、この可動アーム16に前記制動体14a,14bを取り付けることができる。この場合、請求項5に記載のように、前記付勢手段15a,15bは、前記可動アーム16を前記被制動面12の側へ押圧するスプリング27から構成し、前記可動アーム16の被制動面12側への揺動限位置を決めるストッパー28を、揺動限位置調整自在に設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、駆動チエン側のプッシャーに引っ掛けられて作業区間内を走行する搬送用走行体は、常に少なくとも1つの制動装置の制動体が被制動面に圧接していることにより制動力(走行抵抗)を受けている。従って、搬送用走行体が支持する被搬送物に作業者側から多少の外力が作用しても、この搬送用走行体側のドッグが駆動チエン側のプッシャーから前方に離れることがない程度に、この搬送用走行体側の被制動面に対する前記制動体の圧接力、即ち、搬送用走行体に対する制動力を設定して構成しておくことにより、従来生じていたような搬送用走行体(被搬送物)の前後方向の脈動を防止することができる。この結果、当該脈動が原因で生じていた問題点、例えば作業者が取り扱う電動工具によって被搬送物(自動車の車体など)の表面に傷を付けてしまったり、当該脈動によって作業能率が低下するなど、正常な作業の遂行が妨げられるというような問題点が解消できる。
【0011】
尚、搬送用走行体が、走行方向に適当間隔おきに配置された複数のトロリーでガイドレールから吊り下げられたロードバーと、このロードバーの下側で吊り下げられた被搬送物支持用ハンガーとを備えた構造であって、前記トロリーの内、先頭のトロリーに前記ドッグが設けられている場合、請求項2に記載の構成によれば、ロードバーをそのまま利用して全長にわたって連続する左右一対の被制動面を形成できるので、実施例が容易であると同時に、当該ロードバーを左右両側から挟持する左右一対の制動体で制動力を作用させるので、付与する制動力で搬送用走行体が横向きに傾くこともなく、正立姿勢に保持しながら確実に制動させ、脈動を防止できる。
【0012】
又、請求項3に記載の構成によれば、搬送用走行体側の被制動面や制動体表面を磨耗させたり、摺接音や磨耗粉の発生を伴うことがなく、しかも必要な制動力は、ブッシュによるローラーの回転抵抗で確実に得ることができる。
【0013】
更に、請求項4に記載の構成によれば、搬送用走行体側の被制動面に対して直角方向に制動体を直線的に横動自在に構成する場合よりも、構造が簡単であるにもかかわらず、制動体を搬送用走行体側の被制動面に対して遠近方向に円滑に移動自在に構成することができると共に、梃子作用を利用して付勢手段の付勢力を強力に制動体に付与することができ、使用する付勢手段自体の付勢力も小さくすることができる。特に請求項5に記載の構成によれば、ストッパーによる可動アームの被制動面側への揺動限位置の調整により、被制動面に対する制動体の押圧力、即ち、搬送用走行体に対する制動力を容易に且つ微細に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】搬送装置の作業区間全体を示す概略側面図である。
【図2】1つの搬送用走行体と1つの制動装置を示す側面図である。
【図3】A図は制動装置の側面図、B図は制動体の詳細を示す縦断側面図である。
【図4】制動装置の一部横断平面図である。
【図5】搬送装置の要部の縦断正面図である。
【図6】搬送装置の要部の縦断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、1は搬送用走行体であって、4つのトロリー2a〜2dによって吊り下げられたロードバー3と、このロードバー3の下側で中間前後2つのロードトロリー2b,2cによって吊り下げられた被搬送物支持用ハンガー4とから構成されている。5は搬送用走行体1の走行経路を構成するガイドレールであって、搬送用走行体1の4つのトロリー2a〜2dが移動可能に係合している。6は駆動チエンであって、循環経路を構成するガイドレール7にトロリー8を介して移動可能に吊り下げられ、図外の駆動手段により当該ガイドレール7に沿って循環移動するものであるが、その循環経路中の搬送用走行体駆動経路部分のガイドレール7が搬送用走行体1のガイドレール5の上側に当該ガイドレール5と平行に架設されている。
【0016】
搬送用走行体1の走行経路中には、そのハンガー4に支持された被搬送物(自動車の車体)Wに対して部品取付けなどを行う直線状の作業区間WAが設定されており、この作業区間WA内には、搬送用走行体1の走行経路方向に、搬送用走行体1のロードバー3の全長Lより長くない(全長Lとほぼ同一か又は少し短い)間隔Dで複数の制動装置9が併設されている。
【0017】
図2、図5、及び図6に示すように、搬送用走行体1のロードバー3は、ハンガー4の前後両端を吊り下げる中間前後2つのロードトロリー2b,2cを連結する中央ロードバー単体3a、先頭トロリー2aとロードトロリー2bとを連結する前側ロードバー単体3b、後端トロリー2dとロードトロリー2cとを連結する後ろ側ロードバー単体3c、先頭トロリー2aと同一向きに固定されて当該先頭トロリー2aから前方に少し突出する先端部ロードバー単体3d、及び後端トロリー2dと同一向きに固定されて当該後端トロリー2dから後方に少し突出する後端部ロードバー単体3eから構成されたもので、従来周知のように、搬送用走行体1の走行経路(ガイドレール5)中の水平カーブ経路部や上り下りの勾配経路部においても搬送用走行体1が、そのロードバー3の各単体3a〜3e間に構成された関節部や各トロリー2a〜2dとの間の関節部での折れ曲がりを伴いながら走行できるように構成されている。又、先頭トロリー2aには、前側にあって後方下方にのみ傾倒自在な被動用ドッグ10と、後ろ側にあって前方下方にのみ傾倒自在な逆止用ドッグ11とが設けられている。
【0018】
搬送用走行体1のロードバー3は、その全長にわたって同一幅のもので、その左右両側面は、搬送用走行体1が直線状の作業区間WA内を走行するとき、ロードバー3の全長にわたって直線状に連続する被制動面12を形成している。この被制動面12は、駆動チエン6によらないで搬送用走行体1を推進させる場合の摩擦駆動面としても利用できるもので、例えばロードバー3を左右両側から挟むように並設された摩擦駆動用ローラーとバックアップローラー、及び摩擦駆動用ローラーを回転駆動するモーターから構成された摩擦駆動装置を利用することにより、搬送用走行体1を摩擦駆動により推進させることができる。
【0019】
駆動チエン6には、下端部が搬送用走行体1における先頭トロリー2aの被動用ドッグ10と逆止用ドッグ11との間に嵌合するプッシャー13が、長さ方向適当間隔おきに下向きに突設されている。尚、この駆動チエン6を支持案内するトロリー8は、プッシャー13の前後両側に位置するセンターリンクに取り付けられるが、プッシャー13間の間隔が長いときには、プッシャー13間の位置にもトロリー8が配設される。
【0020】
制動装置9は、図3〜図6に示すように、直線状の作業区間WAを走行する搬送用走行体1のロードバー3の移動経路の左右両側に配置された左右一対の制動体14a,14bと、これら左右一対の制動体14a,14bをそれぞれロードバー3の移動経路側へ付勢する付勢手段15a,15bから構成されている。左右一対の制動体14a,14bは、それぞれロードバー3の移動経路の左右両側に配置された可動アーム16の中間位置に固定されて下向きに突出する垂直支軸17に自転可能に支承されたローラー18から構成されている。このローラー18は、ローラー本体18aの周囲にウレタン樹脂などの合成樹脂製環状体18bが外嵌固着されると共に、ローラー本体18のボス部18cにブッシュ18dが圧入固定されたもので、このブッシュ18dが前記垂直支軸17に、その下端から上向きに嵌合され、当該垂直支軸17の下端の小径螺軸部17aに受け座板17bを介してナット17cが螺嵌締結されている。従って、垂直支軸17に固定された受け座板17b上で支持されたローラー18は、ブッシュ18dと垂直支軸17との間の摩擦抵抗に打ち勝つ回転力を受けることにより当該垂直支軸17の周りに自転することができる。
【0021】
搬送用走行体1の各トロリー2a〜2dを支持案内するガイドレール5は、各トロリー2a〜2dの左右両側に軸支された車輪を各別に支持案内する左右一対の溝形レール5a,5bから成るもので、このガイドレール5の各制動装置9が配設される位置には、溝形レール5a,5bの外側垂直面に前後一対の取付け座19a,19bが固着され、この前後一対の取付け座19a,19bに制動装置9の左右一対の基板20の前後両端部がボルト21により取り付けられている。この基板20には、前後方向一対の水平張出板22,23が固着突設され、一方の水平張出板22には垂直支軸24の上端部が固着され、この垂直支軸24に可動アーム16の一端部、即ち、搬送用走行体1の走行経路方向の上手側の端部が水平揺動自在に支承され、他方の水平張出板23には、垂直板25が下向きに固着突設されている。
【0022】
可動アーム16の遊端部(垂直支軸24で軸支される側とは反対側の端部)には、前記基板20側の垂直板25とほぼ平行に対面する垂直板26が上向きに固着突設され、この両垂直板25,26間に介装された圧縮コイルスプリング27とストッパー28とから前記付勢手段15a,15bが構成されている。ストッパー28は、圧縮コイルスプリング27の中心位置で両垂直板25,26間を横断貫通するボルト28aと、基板20側の垂直板26の外側で当該ボルト28aに螺嵌させた位置調整ナット28bとから構成され、垂直板25を介して圧縮コイルスプリング27の押圧力を受けることによりロードバー3の移動経路側への揺動する可動アーム16の揺動限位置を決めるものであるが、前記位置調整ナット28bの位置調整により、当該可動アーム16の揺動限位置を左右内外方向に調整することができる。而して、制動装置9の左右一対のローラー18間に搬送用走行体1のロードバー3が進入していないとき、図4に仮想線で示すように、両ローラー18の周囲の一部分がロードバー3の移動経路内に入り込んでいるように、ストッパー28の位置調整ナット28bの位置が調整されている。
【0023】
上記構成によれば、先頭トロリー2aの被動用ドッグ10と逆止用ドッグ11との間に嵌合する駆動チエン6のプッシャー13が被動用ドッグ10を引っ掛けて移動することにより、搬送用走行体1が走行経路(ガイドレール5)に沿って走行せしめられるのであるが、この搬送用走行体1が図1に示す直線状の作業区間WA内を走行している間は、各搬送用走行体1のロードバー3に対して必ず少なくとも1つの制動装置9が作用することになる。
【0024】
具体的には、制動装置9における左右一対の制動体14a,14bであるローラー18間に、付勢手段15a,15bの圧縮コイルスプリング27の付勢力に抗してこれら両ローラー18を外側へ押し退けながらロードバー3が進入し、ロードバー3が両ローラー18間から脱出するまでの間、ローラー18が圧縮コイルスプリング27の付勢力によりロードバー3の左右両側面である被制動面12に圧接しながら、その被制動面12との間の摩擦抵抗で、ブッシュ18dと垂直支軸24との間の摩擦抵抗に抗して回転することになる。このとき、ロードバー3側には、両ローラー18の回転抵抗(ブッシュ18dと垂直支軸24との間の摩擦抵抗)が走行抵抗として作用するので、駆動チエン6側のプッシャー13は、この制動装置9における両ローラー18から与えられる走行抵抗に抗して搬送用走行体1を前進駆動することになり、この制動装置9から与えられる走行抵抗より大きな外力を前進方向に受けない限り、駆動チエン6側のプッシャー13で前進駆動される搬送用走行体1が、当該プッシャー13と逆止用ドッグ11との間の遊びの範囲内で、当該プッシャー13から被動用ドッグ10が前方に離れるように先行移動する恐れはない。換言すれば、作業区間WA内を走行する搬送用走行体1のハンガー4で支持される被搬送物Wに対して行う作業によって搬送用走行体1に作用する程度の外力では、先に述べたように搬送用走行体1が前後に脈動を起こす恐れがなくなり、当該搬送用走行体1の前後方向の脈動が原因となる問題点が解消する。
【0025】
搬送用走行体1が走行して、1つの制動装置9の両ローラー18間からロードバー3が前方に脱出しても、それとほぼ同時に、又はその時点より以前に、当該搬送用走行体1のロードバー3は次の制動装置9の両ローラー18間に進入して、同じように走行抵抗を受けることになるので、搬送用走行体1が作業区間WA内から退出するまで、上記の脈動防止作用を継続して受けることになる。又、各制動装置9におけるロードバー3に対する両ローラー18の押圧力は、ストッパー28の位置調整ナット28bの調整により、可動アーム16の揺動限位置をロードバー3の移動経路内に深く入り込ませることにより大きくなり、逆に浅くすれば小さくなるので、最適の制動力が得られるように、ストッパー28の位置調整ナット28bを調整すれば良い。
【0026】
尚、前後の制動装置9間の間隔Dがロードバー3の全長Lより短い場合、1つの搬送用走行体1のロードバー3に前後2つの制動装置9が同時に作用する時間帯が生じるが、搬送用走行体1に与えられる走行抵抗が倍加するだけであり、駆動チエン6のプッシャー13から与えられる推力は十分に大きいので、全く問題はない。従って、搬送用走行体1側のガイドレール5と駆動チエン6側のガイドレール7とを一体に連結するヨーク材29などの存在により、例えばロードバー3の全長Lとほぼ等しい等間隔で制動装置9を配設することができなくとも、前後に隣り合う2つの制動装置9間の間隔Dがロードバー3の全長Lより長くならないように各制動装置9を配設しさえすれば、所期の目的は達成できる。
【0027】
本発明は、走行経路に沿って敷設されたガイドレール上で支持された台車を、この台車の下側で移動する駆動チエンのプッシャーで推進させる台車式のフロアーコンベヤにも適用実施することができる。この場合、台車の側面を被制動面とすることもできるし、台車底部に全長にわたって連続する被制動面を形成する棒状部材を付設することもできる。又、本発明を実施する場合、制動体としては、上記実施例に示したローラータイプのものに限定されず、回転しないブロック材で構成することもできる。更に付勢手段として、空気圧や油圧などで付勢力を与える流体圧シリンダーを利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の搬送装置は、自動車組立てラインにおいて、自動車の車体を吊り下げて搬送するチエンコンベヤ形式のオーバーヘッドコンベヤ、特に駆動チエン側から搬送用走行体を切り離し可能に構成されるオーバーヘッドコンベヤとして活用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送用走行体
2a〜2d,8 トロリー
3 ロードバー
4 ハンガー
5 搬送用走行体のガイドレール
6 駆動チエン
7 駆動チエンのガイドレール
9 制動装置
10 被動用ドッグ
11 逆止用ドッグ
12 被制動面
13 プッシャー
14a,14b 制動体
15a,15b 付勢手段
16 可動アーム
17,24 垂直支軸
18 ローラー
18a ローラー本体
18b 合成樹脂製環状体
18c ボス部
18d ブッシュ
20 基板
22,23 水平張出板
25,26 垂直板
27 圧縮コイルスプリング
28 ストッパー
28a ボルト
28b 位置調整ナット
L ロードバーの全長
D 制動装置間の間隔
W 被搬送物
WA 直線状の作業区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って移動自在な搬送用走行体にドッグが設けられ、前記走行経路に沿って移動する駆動チエンには、前記ドッグと係合して前記搬送用走行体を推進させるプッシャーが設けられた搬送装置であって、前記搬送用走行体には、ほぼその全長にわたって連続する被制動面が設けられ、搬送用走行体に支持された被搬送物に対して作業を行なうために前記走行経路中に設定された作業区間には、走行経路方向に複数の制動装置が前記被制動面の全長より長くない間隔で配設され、各制動装置には、前記被制動面に当接する制動体と、この制動体を前記被制動面に押圧して搬送用走行体に走行抵抗を付与する付勢手段が設けられている、搬送装置。
【請求項2】
前記搬送用走行体は、走行方向に適当間隔おきに配置された複数のトロリーでガイドレールから吊り下げられたロードバーと、このロードバーの下側で吊り下げられた被搬送物支持用ハンガーとを備えると共に、前記トロリーの内、先頭のトロリーに前記ドッグが設けられ、前記ロードバーの左右両側面が前記被制動面に形成され、前記各制動装置は、前記ロードバーを左右両側から挟持する左右一対の制動体を備えている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記各制動装置の制動体が、固定支軸にブッシュを介して自転可能に支承されたローラーから構成されている、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記各制動装置には、走行経路方向の上手側が支軸により揺動自在に軸支されると共に、遊端側が前記付勢手段により前記被制動面側へ付勢された、走行経路方向に長い可動アームを備え、この可動アームに前記制動体が取り付けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記可動アームを前記被制動面の側へ押圧するスプリングから構成され、前記可動アームの被制動面側への揺動限位置を決めるストッパーが、揺動限位置調整自在に設けられている、請求項4に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269906(P2010−269906A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123831(P2009−123831)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)