搬送面の清掃装置及び清掃方法
【課題】物品又は資材の搬送面の清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にする。
【解決手段】清掃装置は、搬送要素(R)の上側に配置された清掃具(10)を有する。清掃具は、搬送面(S)に接触する清掃面(11)を有する。清掃装置は、搬送路の搬送方向(D)と逆方向(E)の牽引力(T)を清掃具に与える牽引装置(6,7)を有する。清掃具は、搬送路の作動時に清掃面と搬送要素との接触を維持する自重(P)を有し、清掃面と搬送面との接触・離間と、清掃面及び搬送面の相対変位(V1,V2,V3)とにより、搬送面を清掃する。
【解決手段】清掃装置は、搬送要素(R)の上側に配置された清掃具(10)を有する。清掃具は、搬送面(S)に接触する清掃面(11)を有する。清掃装置は、搬送路の搬送方向(D)と逆方向(E)の牽引力(T)を清掃具に与える牽引装置(6,7)を有する。清掃具は、搬送路の作動時に清掃面と搬送要素との接触を維持する自重(P)を有し、清掃面と搬送面との接触・離間と、清掃面及び搬送面の相対変位(V1,V2,V3)とにより、搬送面を清掃する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面の清掃装置及び清掃方法に関するものであり、より詳細には、物品又は資材を搬送するためのローラコンベア、ベルトコンベア等の搬送装置の清掃作業を省力化、省略化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にする清掃装置及び清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、建材、樹脂成形品、紙製品等の製造プロセス又は加工プロセスにおいては、未硬化、反応過程又は湿潤状態の原料、半製品、中間製品等が製造・加工装置の搬送ライン上を搬送される。搬送ラインを構成する搬送路は、ローラコンベア、ベルトコンベア等の連続搬送装置によって形成される。
【0003】
例えば、多数の搬送ローラを並列に配置してなるローラ群によって食品、建材等の原料、中間製品等を搬送する製造装置系においては、原料、粉体、塵埃、液体、粘性物質等が汚れ又は汚染物質としてローラ表面に付着する。このため、ローラ表面を定期的に清掃し、ローラ表面に付着した汚れ又は汚染物質を適切に除去する必要があるが、この種の清掃作業は、ウエスや、スクレーパー等を用いて作業者が各ローラを手作業で拭き取る人為的作業に依存していた。
【0004】
例えば、特開2007-55741号公報には、スクレープ部材と、スクレープ部材に取付けられた把手とから構成されるスクレーパーが記載されている。スクレープ部材は、ローラ表面の輪郭に相応する概ね円弧状の接触面を有し、手作業でローラコンベアのローラ表面を掃除する清掃用具として使用される。使用において、スクレープ部材の接触面は、ローラ表面に面接触し、ローラ表面に付着した汚れを掻き取り又は掻き落とす。
【0005】
このような清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実に清掃作業を完了することを意図した清掃装置が、例えば、実開昭60-117323号公報、特開昭55-70620号公報、特開2002-28580号公報に記載されている。
【0006】
実開昭60-117323号公報には、回転駆動式ブラシローラをベルトコンベアのローラと平行に配置した構成を有するコンベアベルトの清掃装置が記載されている。コンベアベルトに付着した汚れ又は汚染物質は、高速回転するブラシローラに植毛された多数のブラシによって除去される。
【0007】
特開昭55-70620号公報には、ローラコンベアの上方に移動可能に配置された管体と、管体の下側に取り付けられた回転中空板と、管体に接続された吸引ポンプとから構成されるローラコンベアの清掃装置が記載されている。中空板は、管体を介して吸引ポンプと連通するとともに、ローラの表面に接触してローラ表面の汚れを除去する回転駆動式ブラシを有する。管体は、ローラコンベアに対して全体的に移動し、中空板は、ブラシを高速回転させながら管体に沿って移動し、ローラ表面の塵埃等を吸引除去する。
【0008】
特開2002-28580号公報には、ローラコンベアの下側に配置されたレール上を走行する台車と、台車に取付けられた昇降装置と、昇降装置に取付けられた清掃機とから構成されたローラコンベアの清掃装置が記載されている。清掃装置は、清掃すべきローラの直下まで台車を移動させた後、昇降装置によって清掃機を上昇させ、清掃機の清掃布をローラの下面に当接せしめる。清掃布は、回転中のローラの外周面(下面)に接触し、ローラ外周面の付着物等を拭き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2007-55741号公報
【特許文献2】日本国実開昭60-117323号公報
【特許文献3】日本国特開昭55-70620号公報
【特許文献4】日本国特開2002-28580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、清掃具(特許文献1)によって手作業でローラ表面を清掃する作業は、多大な労力及び時間を要する作業であるので、製造・加工施設の省力化及び自動化の観点より望ましくなく、しかも、比較的長時間に及ぶ清掃作業の間は、製造・加工プロセスを中断する必要が生じるので、製造・加工の効率性向上の観点からも改善の必要がある。
【0011】
これに対し、回転駆動式ブラシ(特許文献2及び3)や、移動式清掃機(特許文献4)を用いた上記清掃装置によれば、清掃作業を省力化し且つ自動化し、迅速且つ確実に清掃作業を完了することが可能となり、手作業の清掃作業における前述の課題を解決し得るかもしれない。
【0012】
しかし、回転駆動式ブラシ(特許文献2及び3)によって搬送路全域のローラ又はベルトを清掃するには、ブラシを回転駆動する駆動装置又はその動力伝達経路をブラシと共に移動させる必要があり、極めて複雑且つ大掛かりな清掃ブラシ用移動装置を搬送路に配設する必要が生じる。
【0013】
他方、ローラコンベアの下側にレールを配置し、昇降装置及び清掃機をレールによって移動させて清掃布を回転中のローラに接触せしめる方式の清掃装置(特許文献4)によれば、回転駆動装置等又はその動力伝達経路の移動に伴う問題は、解消するかもしれない。
【0014】
しかしながら、この構成の清掃装置は、昇降装置及び清掃機を搬送路の方向に移動させる走行駆動機構と、清掃機を昇降させる昇降駆動機構とを要するので、装置構造が複雑化するばかりでなく、2つの駆動機構を制御する2系統の制御系が必要とされる。
【0015】
また、一般に、搬送路の下側の領域には、搬送装置を構成する各種装置類、部品、部材等が配置されるので、搬送路全長に亘るレール帯域(清掃機走行帯域)を搬送路の下側に確保することは困難である。しかも、搬送路の下側の領域は、極めて維持管理し難い。従って、レール及び清掃機等の設備・機器を搬送路の直下に配置することは、装置の維持管理・保全上の観点からも望ましくない。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物品又は資材の搬送装置の清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にするとともに、回転駆動装置、走行駆動機構及び昇降駆動機構等の複雑な駆動機構を備えず、しかも、搬送面の上側に配置した清掃具によって搬送面を清掃することができる搬送面の清掃装置及び清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成すべく、本発明は、物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素に接触して、搬送要素を清掃する搬送面の清掃装置において、
前記搬送要素(R)上に載置され、前記搬送面(S)に接触する清掃面(11)を有する清掃具(10)と、
前記搬送装置の搬送方向(D)と逆方向(E)の牽引力(T)を前記清掃具に与える牽引装置(6,7)とを有し、
前記清掃具は、前記搬送装置の作動時に前記清掃面と前記搬送面との接触を維持する重量(P)を有することを特徴とする搬送面の清掃装置を提供する。
【0018】
本発明の清掃装置によれば、搬送装置の作動時に搬送面上に載置された清掃具は、その重量によって清掃面と搬送要素との接触状態を維持する。牽引装置の牽引力が減少又は消失すると、清掃具は、搬送要素から清掃具に伝達する搬送動力によって搬送方向に移動する。即ち、清掃具は、搬送装置の搬送動力により受動的に搬送面上を前進する。牽引装置の牽引力が増大すると、清掃具は、搬送要素から清掃具に伝達する搬送動力に抗して搬送面上を逆走する。搬送面は、このような前進及び逆走の間、清掃面と搬送面との接触及び離間と、清掃面及び搬送面の相対変位とにより、清掃面によって清掃される。
【0019】
本発明は又、物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素を清掃具の清掃面によって清掃する搬送面の清掃方法において、
清掃面(11)を有する清掃具(10)を前記搬送要素(R)上に載置し、前記清掃面を前記清掃具の重量によって前記搬送面(S)に接触せしめて、前記搬送装置の搬送動力(F)を前記清掃具に伝達し、
前記搬送面の移動速度(V1)と前記清掃具の移動速度(V2,V3)との速度差による該搬送面及び清掃面の相対変位と、前記清掃面と前記搬送面との接触及び離間とにより、前記搬送面を清掃することを特徴とする搬送面の清掃方法を提供する。
【0020】
本発明の清掃方法によれば、清掃具の清掃面と搬送面との接触によって、搬送装置の搬送動力が清掃具に伝達し、清掃具は、搬送面上を移動する。搬送面は、清掃面及び搬送面の相対変位と、清掃面及び搬送面の接触及び離間とにより、清掃される。
【0021】
かくして、本発明の上記構成によれば、清掃具は、搬送装置の搬送動力と清掃具の重量とを利用して比較的広範に搬送面を清掃することできるので、手作業に依存しない省力的又は自動的な清掃作業を迅速且つ確実に遂行することができる。また、本発明の上記構成によれば、清掃装置自身が必要とする能動的動力は、牽引装置の牽引力のみであるにすぎず、従って、清掃装置は、複雑な駆動機構を要しない。更に、本発明の上記構成によれば、清掃具は、搬送路の上側に配置され、搬送路の上面に接触するので、搬送路の下側に配置される装置類、部品、部材等と干渉せず、従って、清掃装置の維持管理・保全も比較的容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の清掃装置及び清掃方法によれば、物品又は資材の搬送装置の清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にするとともに、回転駆動装置、走行駆動機構及び昇降駆動機構等の複雑な駆動機構を備えず、しかも、搬送面の上側に配置した清掃具によって搬送面を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る清掃装置の原理を説明するための概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す清掃具を備えた清掃装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】図3は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す正面図である。
【図4】図4は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す側面図である。
【図5】図5は、図3に示すI−I線における清掃ユニットの断面図である。
【図6】図6は、図3に示すII−II線における清掃ユニットの断面図である。
【図7】図7は、清掃具の底面図である。
【図8】図8は、L形支承具を備えた索条支承装置の構成を示す側面図である。
【図9】図9は、鉤形支承具を備えた索条支承装置の構成を示す側面図である。
【図10】図10は、索条支承装置及び位置センサの位置関係及び作動形態を示す正面図である。
【図11】図11は、清掃ユニット、ストッパ及び位置センサの位置関係を示す正面図であり、清掃ユニットが初期位置近傍まで逆走した状態が示されている。
【図12】図12は、清掃ユニット、ストッパ及び位置センサの位置関係を示す正面図であり、清掃具を上昇位置(待機位置)まで上昇させた状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好適な実施形態によれば、清掃具(10)は、高い剛性を有する剛性板(13)と、剛性板の下側に延在する柔軟な清掃部材(12)とから構成される。搬送装置の作動時に清掃部材と搬送要素(R)との面接触又は線接触を維持するように作用する荷重が、剛性板から清掃部材に与えられる。好ましくは、清掃部材は、吸水性を有する素材からなる。
【0025】
所望により、洗浄液が搬送面に供給される。洗浄液を搬送面に供給する洗浄液供給手段、搬送面を積極的に乾燥させる通風手段又は強制乾燥手段、搬送面の余剰の液分を迅速に吸収する液体吸収手段等を清掃具に配設しても良い。
【0026】
好ましくは、清掃装置は、搬送方向と平行に搬送面の上方域に配置された案内部材(5)と、案内部材に対して清掃具を移動可能に懸吊する懸吊機構(3,4)とを有し、清掃具を搬送装置の搬送方向に案内するように構成される。更に好ましくは、懸吊機構は、案内部材に移動可能に支持された走行機構(4)と、走行機構と清掃具とを連結するリンク機構(3)とから構成される。
【0027】
本発明の更に好適な実施形態によれば、牽引装置(6,7)は、牽引力(T)を清掃具に伝達する索条(6)と、索条を巻き取り又は繰り出すウインチ(7)とを有し、索条は、案内部材に沿って延び、懸吊機構を介して清掃具に連結される。好ましくは、牽引装置と清掃具との間の中間位置で索条を中間支持する索条支承装置(53,54)が案内部材に間隔を隔てて配置される。更に好ましくは、索条支承装置を制御するために清掃具の位置を検出する位置検出手段(55)が更に設けられ、索条支承装置は、位置検出手段によって検出された清掃具の位置に基づいて索条を適宜支承する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、牽引装置は、清掃具が搬送方向前方に所定距離だけ移動した後に牽引力によって清掃具を搬送装置上の初期位置(X1)まで逆走させ、しかる後、牽引力の全部又は一部を上向きの力に転換して清掃具を上昇させ、清掃具を搬送面上方の待機位置に復帰させる。清掃具の上昇により、非清掃時に物品又は資材を搬送するための搬送用空間(Q)が清掃具の下側に確保される。
【0029】
好ましくは、走行部材の牽引方向の移動を阻止する制動手段(59)が案内部材に配設される。走行機構と清掃具とを連結する上記リンク機構は、走行部材が制動手段によって移動を阻止された状態でリンク機構に作用する牽引力によって上方に回動し、清掃具を上昇させる。
【0030】
本発明の更に好ましい実施形態において、清掃装置は、牽引力を制御するために清掃具の位置を検出する位置検出手段(56,57,58)と、牽引手段が清掃具に与える牽引力を位置検出手段の検出結果に基づいて制御する制御手段(C/U)とを有する。例えば、牽引装置は、牽引力の解放又は低下により、清掃具を搬送方向(D)に移動させ、牽引力の付加又は増大により、搬送方向と逆の方向(E)に清掃具を移動させる。即ち、清掃具の移動は、牽引力の制御に相応又は応答する。
【実施例1】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施例に係る清掃装置の原理を説明するための概略断面図である。図1(A)には、清掃装置の清掃具をローラコンベア装置の搬送動力によって搬送方向に移動させる状態が示されている。図1(B)には、清掃具をローラコンベア装置の搬送動力に抗して逆方向に移動させる状態が示されている。
【0033】
図1には、搬送路を構成するローラコンベア装置のローラRが示されている。各ローラRは、搬送対象の物品又は資材(図示せず)に面接触又は線接触する上側搬送面Sを有する。清掃装置を構成する清掃具10がローラR上に載置され、清掃具10の下側に位置する清掃面11がローラRに接触する。本例において、清掃具10は、全体的に概ね平板状又は平版状の形態を有する。清掃具10の底面は、底面視において概ね方形の外形を有する。清掃具10の底面の搬送方向寸法は、少なくとも2つのローラR(例えば、5〜10本のローラR)に跨がることができる寸法に設定される。清掃具10の底面の路幅方向寸法は、概ね搬送路の幅方向寸法(ローラRの長さ相当)よりも若干小さい寸法に設定される。
【0034】
清掃具10は、清掃面11を有する清掃部材12と、清掃部材12の上側に配置された剛性板13とから構成される。本実施例の清掃部材12は、比較的厚い柔軟な吸水性材料、例えば、厚地の織布、不織布、フェルト部材、多孔質材料、スポンジ材料、或いは、布状に成形した繊維集合体等からなる。剛性板13は、高剛性の金属板、例えば、樹脂被覆鋼板からなる。清掃面11は、清掃具10の自重PによってローラRの搬送面Sに押圧され、搬送面Sに密接する。清掃面11は、清掃部材12の変形により、長さLの範囲で清掃面11に面接触する。長さLの範囲は、ローラRの軸線方向に延びる帯状帯域である。清掃部材12が硬く、長さLの寸法が極端に小さい場合には、清掃部材12は、清掃面11に実質的に線接触する。ローラRの搬送面Sに付着した汚れ又は汚染物質は、清掃部材12の吸水性と、清掃面11及び搬送面Sの相対変位と、相対変位により生じる清掃面11及び搬送面Sの接触/離間とによって清掃部材12に移行し、ローラRから除去される。
【0035】
清掃具10をその自重Pによりローラコンベア装置上に載置した状態が図1(A)に示されている。ローラRのトルクは、清掃面11及び搬送面Sの面接触又は線接触により、搬送動力Fとして清掃具10に伝達する。清掃具10の自重Pは、搬送動力Fに対する抗力Uとして搬送方向Dと逆の方向に作用する。抗力Uは、搬送動力Fを打ち消す方向に作用するが、搬送動力Fが抗力Uに打ち勝ち、清掃具10の運動は、概ね搬送動力Fによって支配される。この結果、清掃具10は矢印D方向(搬送方向)にゆっくりと移動する。なお、清掃具10の自重Pは、剛性板13の質量によって概ね決定されるが、剛性板13の質量が不足して清掃面11が搬送面Sから浮遊又は離間し易い傾向がある場合には、適当な質量の錘14(仮想線で示す)が付加的に清掃具10の適所、例えば、剛性板13の上面に配設される。
【0036】
図1(B)に示すように、搬送方向Dと逆方向の牽引力Tを清掃具10に加え、清掃具10をローラコンベア装置の搬送動力に抗して逆走方向Eに移動させると、牽引力Tは搬送動力Fを打ち勝ち、清掃面11及び搬送面Sは、互いに逆方向に相対変位する。なお、牽引力Tは、後述する牽引用の索条(金属ケーブル、ワイヤ等)によって剛性板13に加えられる。
【0037】
図1の部分拡大図に示すように、抗力U及び/又は牽引力Tにより、ローラRの周速V1と、清掃具10の移動速度V2、V3との速度差(V1−V2)又は(V1−V3)が発生する結果、搬送面S及び清掃面11は相対変位する。この相対変位は、図1(B)に示す如く清掃具10を搬送方向Dと逆の方向Eに牽引する場合に殊に顕著に生じる。このような相対変位により、清掃面11は搬送面Sを拭き取り、或いは、搬送面Sに摩擦接触し又は擦過し、従って、搬送面Sの汚れ又は汚染物質は確実に除去される。
【0038】
図2は、図1に示す清掃具10を備えた清掃装置の全体構成を示す正面図である。図3及び図4は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す正面図及び側面図である。図5及び図6は、図3に示すI−I線及びII-II線における断面図であり、図7は、清掃具10の底面図である。
【0039】
図2(A)は、清掃具10を有する清掃ユニット1を搬送方向Dに移動させて各ローラRを清掃する清掃過程を示す正面図である。図2(B)は、清掃ユニット1を搬送方向Dと逆の方向Eに移動させて各ローラRを清掃する清掃過程を示す正面図である。図2(A)には、非清掃時(待機時)の清掃ユニット1の状態(待機位置)が破線で示されている。図2(B)には、清掃すべき搬送路の末端部に到達した清掃ユニット1の状態(折り返し位置)が破線で示されている。搬送装置1は、図2(A)に示す初期位置X1と、図2(B)に示す最前進位置X2との間で移動する。
【0040】
図2に示す如く、清掃装置は、ローラコンベア装置C上に配置された可搬式清掃ユニット1と、清掃ユニット1を懸吊するI形又はH型断面のトロリービーム5と、トロリービーム5に沿って延びる金属製ケーブル又はワイヤ等の索条6と、索条6を繰り出し又は巻き取る電動ウインチ7とから構成される。トロリービーム5は搬送方向Dと平行に延びる。清掃ユニット1は、清掃具10を可動リンク機構3及び可搬トロリー装置4によってトロリービーム5から懸吊した構成を有する。トロリービーム5は清掃ユニット1をローラコンベア装置Cの搬送方向Dに移動可能に支持する。索条6及び電動ウインチ7は清掃ユニット1を搬送方向Dと反対の方向(逆走方向E)に牽引する。
【0041】
図3〜図7には、清掃ユニット10の構造が示されている。
【0042】
清掃ユニット1は、図4〜図7に示すように搬送路の垂直中心線Z−Z(図4)及び水平中心線Y−Y(図5、図6)に対して左右対称の構造を有する。水平中心線Y−Yは、搬送方向D及び逆走方向Eと平行である。
【0043】
図3に示すように、清掃具10の剛性板13は、上方に曲げ成形した前縁部14a及び後縁部14bを有する高剛性の金属板からなる。清掃具10の清掃部材12は、剛性板13の下側に配置された柔軟な吸水性ウェブからなる。清掃部材12の前縁部15a及び後縁部15bは、清掃部材12自身の可撓性により上方に曲げ変形し、金属製帯板16及びボルト・ナット組立体17によって前縁部14a及び後縁部14bの上側面14cに堅固に留め付けられる。
【0044】
可動リンク機構3を剛性板13に連結するための前後一対の垂直ブラケット18a、18bが、図3に示す如く、剛性板13の上面に固定される。図4及び図5に示すように、一対の前側ブラケット18a及び一対の後側ブラケット18bは夫々、垂直中心線Z−Z及び水平中心線Y−Yに対して対称に配置される。可動リンク機構3は、図3に示す如く、前後一対のリンク部材30a、30bを有する。一対の前側リンク部材30a及び一対の後側リンク部材30bは、垂直中心線Z−Z及び水平中心線Y−Yに対して対称に配置される。搬送路の幅方向(搬送方向と直交する方向)に延びる水平な枢軸31a、31bが、ブラケット18a、18bの上端部を貫通するとともに、リンク部材30a、30bの下端部を貫通する。リンク部材30a、30b及びブラケット18a、18bは、枢軸31a、31bの軸線を中心に枢動可能に相互連結される。枢軸31a、31bを取り外し又は解体することより、清掃具10を比較的容易に撤去し又は交換することができる。
【0045】
図3及び図4に示すように、可動リンク機構3は、索条6の先端部を係留するための係留部材32を備える。係留部材32は、可動リンク機構3の中間レベルに配置された連結部材33に固定される。連結部材33は、後側の左右のリンク部材30bを相互連結するように各リンク部材30bに直角に固定され、左右のリンク部材30bの間に水平に延在する。
【0046】
図3に示す如く、リンク部材30a、30bの上端部は、前後一対の垂直ブラケット41a、41bによって可搬トロリー装置4に連結される。一対の前側ブラケット41a及び一対の後側ブラケット41bは、図4に示すように、垂直中心線Z−Zに対して対称に配置される。可搬トロリー装置4は、剛性板13と概ね同等の長さを有する細長い水平基板40を有する。ブラケット41a、41bの上端部は、水平基板40の前端部及び後端部に一体的に固定される。搬送路の幅方向に延びる水平な枢軸34a、34bが、ブラケット41a、41bの下端部を貫通するとともに、リンク部材30a、30bの上端部を貫通する。リンク部材30a、30b及びブラケット41a、41bは、枢軸34a、34bの軸線を中心に枢動可能に相互連結される。
【0047】
水平基板40の前端部上面には、ブラケット43aが固定され、ブラケット43aは、複数(一対)の車輪42aを複数(一対)の水平支軸44aによって回転可能に支持する。水平基板40の後端部上面にも又、ブラケット43bが固定される。ブラケット43bは、複数(一対)の車輪42bを複数(一対)の水平支軸44bによって回転可能に支持する。ブラケット43a、43b及び車輪42a、42bは、図4に示すように、トロリービーム5の両側に対をなして配置される。両側の車輪42a、42bは、トロリービーム5の下側フランジ51上を転動する。
【0048】
索条6を転向するためのプーリ47が水平基板40の下側に配置される。プーリ47は、搬送路の幅方向に延びる水平支軸46によって回転可能に支承される。水平支軸46は、水平基板40の中央部から垂下する左右一対のブラケット45によって支持される。図3に示す如く、索条6は、係留部材32から斜め上方且つ前方に延び プーリ47によって後方に転向し、トロリービーム5の下側面に沿って後方に延びる。
【0049】
図2に示す如く、索条6の基端部(後端部)は、電動ウインチ7のドラム部71に巻き掛けられる。トロリービーム5には、索条6を中間支持する索条支承装置53、54が所定間隔を隔てて配置される。清掃ユニット1の位置又は姿勢を検出する位置センサ55〜57及び姿勢センサ58がトロリービーム5の所定位置に配置される。複数の位置センサ55は、互いに間隔を隔ててトロリービーム5に配置される。位置センサ55は、索条支承装置53、54の作動を制御するために清掃ユニット1の位置を検出する位置検出手段を構成する。位置センサ56は、トロリービーム5の前端部分に配置され、清掃ユニット1の最前進位置X2(折り返し位置)を検出する。位置センサ57は、トロリービーム5の後端部分に配置され、清掃ユニット1の回収動作時(最終動作時)の減速位置を検出する。姿勢センサ58は、清掃ユニット1の回収動作時に清掃具10の上昇位置を検出する。位置センサ56、57、58は、牽引力Tを制御するために清掃具10の位置を検出する位置検出手段を構成する。
【0050】
図8及び図9は、索条支承装置53、54の構成を示す側面図である。図8(A)及び図9(A)には、支承具53c、54cの上昇位置(退避位置)が示され、図8(B)及び図9(B)には、支承具53c、54cの降下位置(支承位置)が示されている。
【0051】
索条支承装置53、54は、アクチュエータ53a、54a及び支承具53c、54cを有する。アクチュエータ53a、54aは、トロリービーム5の上面に固定され、支承具53c、54cの基端部がアクチュエータ53a、54aの回転駆動軸53b、54bに固定される。支承具53c、54cは、回転駆動軸53b、54bの回転により、回転駆動軸53b、54bの軸線を中心に回動し、図8(A)及び図9(A)に実線で示す上昇位置(退避位置)と、図8(B)及び図9(B)に実線で示す降下位置(支承位置)とに選択的に移動する。
【0052】
図8に示す支承具53cは、回転駆動軸53bに連結された円形断面の金属製L形ロッドからなり、降下位置(支承位置)において索条6の脱落を阻止する一対の円形鍔53dが支承具53cの支承軸部分53eに取付けられる。索条6は、支承具53cの降下直後には、支承軸部分53eの上方に位置するが、清掃ユニット1が支承具53cから離間するにつれて下方に撓み、図8(C)に示すように円形鍔53dの間で支承軸部分53eに支受される。図9に示す支承具54cは、鉤形に成形された金属製帯板からなり、降下位置(支承位置)において索条6を鉤形部分54eに受入れる。索条6は、清掃ユニット1が支承具54cから離間するにつれて下方に撓み、図9(C)に示すように鉤形部分54eに支受される。
【0053】
図2において、索条支承装置53は、支承具53cによって索条6を支承する降下位置(支承位置)に位置し、索条支承装置54は、支承具54cによって索条6を支持する降下位置(支承位置)、或いは、支承具54cを上方に回動した上昇位置(退避位置)に位置する。なお、本実施例は、2種類の索条支承装置53、54を採用したものであるが、同一又は同種の索条支承装置のみを使用しても良く、或いは、多種・多様な構造の索条支承装置を使用しても良い。また、図2に示す索条支承装置53、54の位置及び位置関係は、あくまで例示であり、これに限定されるものではなく、索条6を適切に支承できる限り、索条支承装置の位置又は位置関係を適当に変更することができる。
【0054】
図10は、索条支承装置53及び位置センサ55の位置関係及び作動形態を示す正面図である。
【0055】
各々の索条支承装置53と対応する位置センサ55が各索条支承装置53の搬送方向前方に配置される。位置センサ55は、清掃ユニット1の水平基板40と接触可能又は近接可能な位置に配置された接触感知型又は非接触感知型の検知部55aを備える。検知部55aの検出信号は、破線で示す制御信号線を介して清掃装置の制御ユニットC/U内の制御部に入力される。制御ユニットC/U内の駆動部は、破線で示す制御信号線を介して索条支承装置53のアクチュエータ53aに接続される。
【0056】
清掃ユニット1は、図10(A)に示すように、ローラRの回転によってローラコンベア装置C上を搬送方向Dに移動する。図10(A)には、水平基板40が位置センサ55の検知部55aに接触又は近接する位置まで前進した状態が示されている。この時点では、索条支承装置53は、上昇位置(退避位置)に位置している。
【0057】
検知部55aは水平基板40の衝合又は接近を感知し、制御ユニットC/Uは、内蔵タイマーを起動し、所定時間(タイマー設定時間)経過後にアクチュエータ53aを作動して、支承具53cを降下位置(支承位置)に回動せしめる。
【0058】
図10(B)には、支承具53cが降下位置(支承位置)に位置する状態が示されている。プーリ47から後方に延びる索条6は、支承具53cの支承軸部分53eによって支承される。清掃ユニット1と電動ウインチ7との間に延びる索条6は、支承具53cによって中間支持されるので、索条6の支点間距離が短縮する。このため、自重による索条6の下方変位(撓み)は抑制される。
【0059】
図10は、清掃ユニット1が搬送方向Dの方向に移動する過程に生じる索条支承装置53の作動形態であるが、清掃ユニット1が図1(B)に示す如く搬送方向Dと逆の方向(逆走方向E)に移動する際にも又、検知部55aは水平基板40の衝合又は接近を感知する。制御ユニットC/Uは、検知部55aによって水平基板40の到達を検出すると、内蔵タイマーを起動し、所定時間(タイマー設定時間)経過後にアクチュエータ53aを作動して、水平基板40が支承具53cに到達する前に支承具53cを上昇位置(退避位置)に回動せしめる。
【0060】
なお、アクチュエータ53aの作動のタイミングは、清掃ユニット1の移動速度と、索条支承装置53及び検知部55aの位置関係とによって決定される。従って、タイマーの設定時間をゼロに設定し、或いは、タイマーを使用せず、検知部55a及び水平基板40の接触又は近接の後に直ちにアクチュエータ53aを作動するように条件設定することも可能である。
【0061】
また、図10は、索条支承装置53及び位置センサ55の位置関係及び作動形態に関するものであるが、索条支承装置54及び位置センサ55の位置関係及び作動形態も、図10に示すものと実質的に同じであり、図10及びその説明における符号「53」を符号「54」に読み替えることにより、全く同じ説明を適用し得るので、重複する説明の記載については、省略する。
【0062】
図2(B)に示すように清掃ユニット1が搬送路上を逆走方向Eに移動すると、清掃ユニット1は、トロリービーム5の後端部(初期位置X1)付近に配置された位置センサ57及びストッパ59に段階的に接近し又は衝合する。位置センサ57の検知部が水平基板40に接触又は近接すると、制御ユニットC/U(図10、図11)は、位置センサ57の検出結果に基づいて電動ウインチ7の巻き取り速度を減速し、この結果、水平基板40は、緩慢な動作でストッパ59に衝合する。
【0063】
図11及び図12は、清掃ユニット1、ストッパ59及び位置センサ58の位置関係を示す正面図である。
【0064】
図11には、水平基板40がストッパ59に衝合した状態が示されている。電動ウインチ7が索条6を更に巻き取ると、ストッパ59が水平基板40の更なる後退を阻止するので、リンク部材30a、30bは、索条6の牽引力Tによって枢軸34a、34b廻りに上方に回動する。電動ウインチ7の巻き取り速度が減速しているので、リンク部材30a、30bはゆっくりと上昇する。
【0065】
リンク部材30bの上端部には、上方に突出する舌状片39が固定されており、リンク部材30a、30bが図12に示す上昇位置(図12に示す待機位置)まで上昇すると、舌状片39は、位置センサ58の検知部58aに接触又は近接し、制御ユニットC/Uは、位置センサ58の検出結果に基づいて電動ウインチ7の駆動モータMを停止させる。この結果、清掃具10は、図12に示すように上昇位置(待機位置)に保持され、清掃具10の下側には、物品又は資材W(仮想線で示す)をローラコンベア装置Cによって移送可能な搬送空間Qが確保される。なお、柔軟な清掃部材12は、図12に破線で示すように若干下方に撓むが、清掃具10の上昇位置(待機位置)のレベルは、このような清掃部材12の撓みによっても所望の搬送空間Qを確保し得るようなレベルに設定される。
【0066】
次に、このように構成された清掃装置の作動について概略的に説明する。
【0067】
ローラコンベア装置Cによる物品又は資材の搬送時には、清掃ユニット1は、図12に示す待機位置において待機する。清掃工程を開始するには、ローラコンベア装置Cの作動状態(ローラRの回転駆動状態)において、電動ウインチ7のドラム71を繰り出し方向に回転させれば良い。
【0068】
清掃ユニット1は、ドラム71からの索条6の繰り出しにより、図11に示す如く清掃具10をローラR上に降下させ、清掃面11は、清掃具10の自重PによってローラRに押圧され、ローラRの搬送面S(図1)に接触する。制御ユニットC/Uは、位置センサ57の検知部が水平基板40に接触又は近接した状態にある間、電動ウインチ7の繰り出し速度を比較的低速に設定し、従って、清掃具10は、ローラR上にゆっくりと降下する。清掃具10がローラRの搬送面Sに密接すると、ローラRのトルクが搬送動力F(図1、図2)として清掃具10に伝達し、清掃ユニット1は、非常に緩慢な速度で前進し始める。制御ユニットC/Uは、位置センサ57の検知部が水平基板40から離間すると、電動ウインチ7の繰り出し速度を上昇させる。清掃ユニット1は、清掃具10に伝達したローラRのトルク(搬送動力F)により、図10及び図2(A)に示すように搬送方向(D方向)にゆっくりと移動する。
【0069】
清掃ユニット1が各位置センサ55の検出位置を通過すると、対応する索条支承装置53、54の支承具53c、54cが制御ユニットC/Uの制御下に降下し、索条6は、図2(A)に示すように中間支持される。索条6の撓みが支承具53c、54cによって規制されるので、索条6が下方に撓んでローラRに接触するのを確実に阻止することができる。
【0070】
図2(B)に破線で示すように清掃ユニット1が最前進位置X2(折り返し位置)に到達し、トロリー装置4の水平基板40が位置センサ56に接触又は近接すると、制御ユニットC/Uは、電動ウインチ7のドラム71を巻き取り方向に作動せしめる。制御ユニット1は、電動ウインチ7の牽引力Tによって矢印E方向に自走する。清掃ユニット1が位置センサ55の位置を通過すると、対応する索条支承装置53、54の支承具53c、54cが制御ユニットC/Uの制御下に上昇する。清掃ユニット1が初期位置X1の近傍まで逆走して位置センサ57及びストッパ59に段階的に接近又は衝合すると、清掃ユニット1の減速動作と、清掃具10の上昇・待機動作(図11、図12)とが段階的に実行される。位置センサ58が清掃具10の上昇・待機を検出すると、一連の清掃工程が完了する。
【0071】
前述の如く、このような清掃ユニット1の往復動の結果、ローラRの搬送面S(図1)の汚れ又は汚染物質は、清掃部材12の吸水性と、清掃面11及び搬送面Sの接触/離間と、清掃面11及び搬送面Sの相対変位とによって清掃部材12に移行し、ローラRから除去される。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0073】
例えば、上記実施例は、ローラコンベア装置の搬送面を清掃する清掃装置として本発明の構成を採用した構成のものであるが、ベルトコンベア装置の清掃装置として本発明の構成を採用しても良い。
【0074】
また、清掃時における搬送装置の搬送速度、ローラの回転速度、索条の牽引速度(巻き取り速度)等は、搬送装置及び清掃装置の具体的な構成に相応して任意に設定変更することができる。また、清掃装置の制御方式についても、電気制御式、電子制御式、空圧制御式、油圧制御式等の任意の制御方式を採用し得るものである。
【0075】
更には、搬送面に接触する清掃部材として、天然繊維、化学繊維又は合成樹脂等を素材とする織布、不織布、フェルト、多孔質材料、スポンジ材料、繊維集合体等の任意の材料を搬送面の性状等に相応して適宜選択することができる。清掃部材として、複数の材料を積層した複合材料を使用し、或いは、表面に微細なエンボス、起毛、凹凸、窪み、突起等を有する材料を採用しても良い。
【0076】
また、上記実施例の清掃装置は、清掃部材12の吸水性と、清掃面及び搬送面の接触/離間と、清掃面及び搬送面の相対変位又は摩擦とによって搬送面の汚れ又は汚染物質を除去するように構成したものであるが、水、洗剤等の洗浄液を搬送面に噴霧、噴射又は射出するノズル等の給液手段を清掃ユニットに設けるとともに、搬送面を積極的に乾燥させる送風機等の通風手段又は強制乾燥手段を清掃ユニットに配設しても良い。所望により、搬送面の液分を迅速に吸収する液体吸収材料を清掃ユニットに更に設けても良い。このような清掃装置によれば、搬送面に付着した汚れ又は汚染物質を水や洗剤等で洗浄した後、通風乾燥させて搬送面の水分を除去するとともに、液体吸収材料によって搬送面の余剰水分を吸収し、これにより、搬送面の洗浄・乾燥を迅速に行うことが可能となる。
【0077】
加えて、上記実施例においては、ケーブル、ワイヤ、ロープ等の索条を牽引装置の牽引部材として使用しているが、チェーン等の線状部材を牽引部材として使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ローラコンベア、ベルトコンベア等の搬送要素(ローラ、コンベアベルト等)の搬送面を清掃する清掃装置及び清掃方法に適用される。本発明の構成は殊に、食品、建材、樹脂成形品、紙製品等の製造プロセス又は加工プロセスにおいて未硬化、反応過程又は湿潤状態の原料、半製品、中間製品等を搬送する搬送路に関し、搬送面に付着した汚れ又は汚染物質を除去する清掃装置及び清掃方法に好ましく適用し得るものである。
【0079】
本発明の清掃装置は、搬送装置の搬送動力を利用し、装置本体の移動及び駆動を牽引力により制御するように構成したものであり、清掃部を回転駆動させる複雑な駆動装置等を要しない。また、本発明の清掃装置は、比較的安価に製造することができ、しかも、様々な種類、設計又はサイズの搬送装置に適応することができる。更には、本発明の装置を用いた清掃作業は、複雑な駆動装置の使用を要しないので、簡便、効率的且つ省力的である。従って、本発明に係る清掃装置及び清掃方法の実用的価値は、顕著である。
【符号の説明】
【0080】
1 清掃ユニット
3 可動リンク機構
4 可搬トロリー装置(走行機構)
5 トロリービーム(案内部材)
6 索条(牽引装置)
7 電動ウインチ(牽引装置)
10 清掃具
11 清掃面
12 清掃部材
13 剛性板
14 錘
53、54 索条支承装置
55、56、57 位置センサ(位置検出手段)
58 姿勢センサ
59 ストッパ(制動手段)
C ローラコンベア装置(搬送装置)
R ローラ(搬送要素)
S 上側搬送面
D 搬送方向
E 逆走方向
F 搬送動力
P 清掃具の自重
U 抗力
T 牽引力
V1 ローラの周速
V2、V3 清掃具の移動速度
C/U 制御ユニット(制御手段)
W 物品又は資材
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面の清掃装置及び清掃方法に関するものであり、より詳細には、物品又は資材を搬送するためのローラコンベア、ベルトコンベア等の搬送装置の清掃作業を省力化、省略化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にする清掃装置及び清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、建材、樹脂成形品、紙製品等の製造プロセス又は加工プロセスにおいては、未硬化、反応過程又は湿潤状態の原料、半製品、中間製品等が製造・加工装置の搬送ライン上を搬送される。搬送ラインを構成する搬送路は、ローラコンベア、ベルトコンベア等の連続搬送装置によって形成される。
【0003】
例えば、多数の搬送ローラを並列に配置してなるローラ群によって食品、建材等の原料、中間製品等を搬送する製造装置系においては、原料、粉体、塵埃、液体、粘性物質等が汚れ又は汚染物質としてローラ表面に付着する。このため、ローラ表面を定期的に清掃し、ローラ表面に付着した汚れ又は汚染物質を適切に除去する必要があるが、この種の清掃作業は、ウエスや、スクレーパー等を用いて作業者が各ローラを手作業で拭き取る人為的作業に依存していた。
【0004】
例えば、特開2007-55741号公報には、スクレープ部材と、スクレープ部材に取付けられた把手とから構成されるスクレーパーが記載されている。スクレープ部材は、ローラ表面の輪郭に相応する概ね円弧状の接触面を有し、手作業でローラコンベアのローラ表面を掃除する清掃用具として使用される。使用において、スクレープ部材の接触面は、ローラ表面に面接触し、ローラ表面に付着した汚れを掻き取り又は掻き落とす。
【0005】
このような清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実に清掃作業を完了することを意図した清掃装置が、例えば、実開昭60-117323号公報、特開昭55-70620号公報、特開2002-28580号公報に記載されている。
【0006】
実開昭60-117323号公報には、回転駆動式ブラシローラをベルトコンベアのローラと平行に配置した構成を有するコンベアベルトの清掃装置が記載されている。コンベアベルトに付着した汚れ又は汚染物質は、高速回転するブラシローラに植毛された多数のブラシによって除去される。
【0007】
特開昭55-70620号公報には、ローラコンベアの上方に移動可能に配置された管体と、管体の下側に取り付けられた回転中空板と、管体に接続された吸引ポンプとから構成されるローラコンベアの清掃装置が記載されている。中空板は、管体を介して吸引ポンプと連通するとともに、ローラの表面に接触してローラ表面の汚れを除去する回転駆動式ブラシを有する。管体は、ローラコンベアに対して全体的に移動し、中空板は、ブラシを高速回転させながら管体に沿って移動し、ローラ表面の塵埃等を吸引除去する。
【0008】
特開2002-28580号公報には、ローラコンベアの下側に配置されたレール上を走行する台車と、台車に取付けられた昇降装置と、昇降装置に取付けられた清掃機とから構成されたローラコンベアの清掃装置が記載されている。清掃装置は、清掃すべきローラの直下まで台車を移動させた後、昇降装置によって清掃機を上昇させ、清掃機の清掃布をローラの下面に当接せしめる。清掃布は、回転中のローラの外周面(下面)に接触し、ローラ外周面の付着物等を拭き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2007-55741号公報
【特許文献2】日本国実開昭60-117323号公報
【特許文献3】日本国特開昭55-70620号公報
【特許文献4】日本国特開2002-28580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、清掃具(特許文献1)によって手作業でローラ表面を清掃する作業は、多大な労力及び時間を要する作業であるので、製造・加工施設の省力化及び自動化の観点より望ましくなく、しかも、比較的長時間に及ぶ清掃作業の間は、製造・加工プロセスを中断する必要が生じるので、製造・加工の効率性向上の観点からも改善の必要がある。
【0011】
これに対し、回転駆動式ブラシ(特許文献2及び3)や、移動式清掃機(特許文献4)を用いた上記清掃装置によれば、清掃作業を省力化し且つ自動化し、迅速且つ確実に清掃作業を完了することが可能となり、手作業の清掃作業における前述の課題を解決し得るかもしれない。
【0012】
しかし、回転駆動式ブラシ(特許文献2及び3)によって搬送路全域のローラ又はベルトを清掃するには、ブラシを回転駆動する駆動装置又はその動力伝達経路をブラシと共に移動させる必要があり、極めて複雑且つ大掛かりな清掃ブラシ用移動装置を搬送路に配設する必要が生じる。
【0013】
他方、ローラコンベアの下側にレールを配置し、昇降装置及び清掃機をレールによって移動させて清掃布を回転中のローラに接触せしめる方式の清掃装置(特許文献4)によれば、回転駆動装置等又はその動力伝達経路の移動に伴う問題は、解消するかもしれない。
【0014】
しかしながら、この構成の清掃装置は、昇降装置及び清掃機を搬送路の方向に移動させる走行駆動機構と、清掃機を昇降させる昇降駆動機構とを要するので、装置構造が複雑化するばかりでなく、2つの駆動機構を制御する2系統の制御系が必要とされる。
【0015】
また、一般に、搬送路の下側の領域には、搬送装置を構成する各種装置類、部品、部材等が配置されるので、搬送路全長に亘るレール帯域(清掃機走行帯域)を搬送路の下側に確保することは困難である。しかも、搬送路の下側の領域は、極めて維持管理し難い。従って、レール及び清掃機等の設備・機器を搬送路の直下に配置することは、装置の維持管理・保全上の観点からも望ましくない。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物品又は資材の搬送装置の清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にするとともに、回転駆動装置、走行駆動機構及び昇降駆動機構等の複雑な駆動機構を備えず、しかも、搬送面の上側に配置した清掃具によって搬送面を清掃することができる搬送面の清掃装置及び清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成すべく、本発明は、物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素に接触して、搬送要素を清掃する搬送面の清掃装置において、
前記搬送要素(R)上に載置され、前記搬送面(S)に接触する清掃面(11)を有する清掃具(10)と、
前記搬送装置の搬送方向(D)と逆方向(E)の牽引力(T)を前記清掃具に与える牽引装置(6,7)とを有し、
前記清掃具は、前記搬送装置の作動時に前記清掃面と前記搬送面との接触を維持する重量(P)を有することを特徴とする搬送面の清掃装置を提供する。
【0018】
本発明の清掃装置によれば、搬送装置の作動時に搬送面上に載置された清掃具は、その重量によって清掃面と搬送要素との接触状態を維持する。牽引装置の牽引力が減少又は消失すると、清掃具は、搬送要素から清掃具に伝達する搬送動力によって搬送方向に移動する。即ち、清掃具は、搬送装置の搬送動力により受動的に搬送面上を前進する。牽引装置の牽引力が増大すると、清掃具は、搬送要素から清掃具に伝達する搬送動力に抗して搬送面上を逆走する。搬送面は、このような前進及び逆走の間、清掃面と搬送面との接触及び離間と、清掃面及び搬送面の相対変位とにより、清掃面によって清掃される。
【0019】
本発明は又、物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素を清掃具の清掃面によって清掃する搬送面の清掃方法において、
清掃面(11)を有する清掃具(10)を前記搬送要素(R)上に載置し、前記清掃面を前記清掃具の重量によって前記搬送面(S)に接触せしめて、前記搬送装置の搬送動力(F)を前記清掃具に伝達し、
前記搬送面の移動速度(V1)と前記清掃具の移動速度(V2,V3)との速度差による該搬送面及び清掃面の相対変位と、前記清掃面と前記搬送面との接触及び離間とにより、前記搬送面を清掃することを特徴とする搬送面の清掃方法を提供する。
【0020】
本発明の清掃方法によれば、清掃具の清掃面と搬送面との接触によって、搬送装置の搬送動力が清掃具に伝達し、清掃具は、搬送面上を移動する。搬送面は、清掃面及び搬送面の相対変位と、清掃面及び搬送面の接触及び離間とにより、清掃される。
【0021】
かくして、本発明の上記構成によれば、清掃具は、搬送装置の搬送動力と清掃具の重量とを利用して比較的広範に搬送面を清掃することできるので、手作業に依存しない省力的又は自動的な清掃作業を迅速且つ確実に遂行することができる。また、本発明の上記構成によれば、清掃装置自身が必要とする能動的動力は、牽引装置の牽引力のみであるにすぎず、従って、清掃装置は、複雑な駆動機構を要しない。更に、本発明の上記構成によれば、清掃具は、搬送路の上側に配置され、搬送路の上面に接触するので、搬送路の下側に配置される装置類、部品、部材等と干渉せず、従って、清掃装置の維持管理・保全も比較的容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の清掃装置及び清掃方法によれば、物品又は資材の搬送装置の清掃作業を省力化又は自動化し、迅速且つ確実な清掃作業を可能にするとともに、回転駆動装置、走行駆動機構及び昇降駆動機構等の複雑な駆動機構を備えず、しかも、搬送面の上側に配置した清掃具によって搬送面を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る清掃装置の原理を説明するための概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す清掃具を備えた清掃装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】図3は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す正面図である。
【図4】図4は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す側面図である。
【図5】図5は、図3に示すI−I線における清掃ユニットの断面図である。
【図6】図6は、図3に示すII−II線における清掃ユニットの断面図である。
【図7】図7は、清掃具の底面図である。
【図8】図8は、L形支承具を備えた索条支承装置の構成を示す側面図である。
【図9】図9は、鉤形支承具を備えた索条支承装置の構成を示す側面図である。
【図10】図10は、索条支承装置及び位置センサの位置関係及び作動形態を示す正面図である。
【図11】図11は、清掃ユニット、ストッパ及び位置センサの位置関係を示す正面図であり、清掃ユニットが初期位置近傍まで逆走した状態が示されている。
【図12】図12は、清掃ユニット、ストッパ及び位置センサの位置関係を示す正面図であり、清掃具を上昇位置(待機位置)まで上昇させた状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好適な実施形態によれば、清掃具(10)は、高い剛性を有する剛性板(13)と、剛性板の下側に延在する柔軟な清掃部材(12)とから構成される。搬送装置の作動時に清掃部材と搬送要素(R)との面接触又は線接触を維持するように作用する荷重が、剛性板から清掃部材に与えられる。好ましくは、清掃部材は、吸水性を有する素材からなる。
【0025】
所望により、洗浄液が搬送面に供給される。洗浄液を搬送面に供給する洗浄液供給手段、搬送面を積極的に乾燥させる通風手段又は強制乾燥手段、搬送面の余剰の液分を迅速に吸収する液体吸収手段等を清掃具に配設しても良い。
【0026】
好ましくは、清掃装置は、搬送方向と平行に搬送面の上方域に配置された案内部材(5)と、案内部材に対して清掃具を移動可能に懸吊する懸吊機構(3,4)とを有し、清掃具を搬送装置の搬送方向に案内するように構成される。更に好ましくは、懸吊機構は、案内部材に移動可能に支持された走行機構(4)と、走行機構と清掃具とを連結するリンク機構(3)とから構成される。
【0027】
本発明の更に好適な実施形態によれば、牽引装置(6,7)は、牽引力(T)を清掃具に伝達する索条(6)と、索条を巻き取り又は繰り出すウインチ(7)とを有し、索条は、案内部材に沿って延び、懸吊機構を介して清掃具に連結される。好ましくは、牽引装置と清掃具との間の中間位置で索条を中間支持する索条支承装置(53,54)が案内部材に間隔を隔てて配置される。更に好ましくは、索条支承装置を制御するために清掃具の位置を検出する位置検出手段(55)が更に設けられ、索条支承装置は、位置検出手段によって検出された清掃具の位置に基づいて索条を適宜支承する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、牽引装置は、清掃具が搬送方向前方に所定距離だけ移動した後に牽引力によって清掃具を搬送装置上の初期位置(X1)まで逆走させ、しかる後、牽引力の全部又は一部を上向きの力に転換して清掃具を上昇させ、清掃具を搬送面上方の待機位置に復帰させる。清掃具の上昇により、非清掃時に物品又は資材を搬送するための搬送用空間(Q)が清掃具の下側に確保される。
【0029】
好ましくは、走行部材の牽引方向の移動を阻止する制動手段(59)が案内部材に配設される。走行機構と清掃具とを連結する上記リンク機構は、走行部材が制動手段によって移動を阻止された状態でリンク機構に作用する牽引力によって上方に回動し、清掃具を上昇させる。
【0030】
本発明の更に好ましい実施形態において、清掃装置は、牽引力を制御するために清掃具の位置を検出する位置検出手段(56,57,58)と、牽引手段が清掃具に与える牽引力を位置検出手段の検出結果に基づいて制御する制御手段(C/U)とを有する。例えば、牽引装置は、牽引力の解放又は低下により、清掃具を搬送方向(D)に移動させ、牽引力の付加又は増大により、搬送方向と逆の方向(E)に清掃具を移動させる。即ち、清掃具の移動は、牽引力の制御に相応又は応答する。
【実施例1】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施例に係る清掃装置の原理を説明するための概略断面図である。図1(A)には、清掃装置の清掃具をローラコンベア装置の搬送動力によって搬送方向に移動させる状態が示されている。図1(B)には、清掃具をローラコンベア装置の搬送動力に抗して逆方向に移動させる状態が示されている。
【0033】
図1には、搬送路を構成するローラコンベア装置のローラRが示されている。各ローラRは、搬送対象の物品又は資材(図示せず)に面接触又は線接触する上側搬送面Sを有する。清掃装置を構成する清掃具10がローラR上に載置され、清掃具10の下側に位置する清掃面11がローラRに接触する。本例において、清掃具10は、全体的に概ね平板状又は平版状の形態を有する。清掃具10の底面は、底面視において概ね方形の外形を有する。清掃具10の底面の搬送方向寸法は、少なくとも2つのローラR(例えば、5〜10本のローラR)に跨がることができる寸法に設定される。清掃具10の底面の路幅方向寸法は、概ね搬送路の幅方向寸法(ローラRの長さ相当)よりも若干小さい寸法に設定される。
【0034】
清掃具10は、清掃面11を有する清掃部材12と、清掃部材12の上側に配置された剛性板13とから構成される。本実施例の清掃部材12は、比較的厚い柔軟な吸水性材料、例えば、厚地の織布、不織布、フェルト部材、多孔質材料、スポンジ材料、或いは、布状に成形した繊維集合体等からなる。剛性板13は、高剛性の金属板、例えば、樹脂被覆鋼板からなる。清掃面11は、清掃具10の自重PによってローラRの搬送面Sに押圧され、搬送面Sに密接する。清掃面11は、清掃部材12の変形により、長さLの範囲で清掃面11に面接触する。長さLの範囲は、ローラRの軸線方向に延びる帯状帯域である。清掃部材12が硬く、長さLの寸法が極端に小さい場合には、清掃部材12は、清掃面11に実質的に線接触する。ローラRの搬送面Sに付着した汚れ又は汚染物質は、清掃部材12の吸水性と、清掃面11及び搬送面Sの相対変位と、相対変位により生じる清掃面11及び搬送面Sの接触/離間とによって清掃部材12に移行し、ローラRから除去される。
【0035】
清掃具10をその自重Pによりローラコンベア装置上に載置した状態が図1(A)に示されている。ローラRのトルクは、清掃面11及び搬送面Sの面接触又は線接触により、搬送動力Fとして清掃具10に伝達する。清掃具10の自重Pは、搬送動力Fに対する抗力Uとして搬送方向Dと逆の方向に作用する。抗力Uは、搬送動力Fを打ち消す方向に作用するが、搬送動力Fが抗力Uに打ち勝ち、清掃具10の運動は、概ね搬送動力Fによって支配される。この結果、清掃具10は矢印D方向(搬送方向)にゆっくりと移動する。なお、清掃具10の自重Pは、剛性板13の質量によって概ね決定されるが、剛性板13の質量が不足して清掃面11が搬送面Sから浮遊又は離間し易い傾向がある場合には、適当な質量の錘14(仮想線で示す)が付加的に清掃具10の適所、例えば、剛性板13の上面に配設される。
【0036】
図1(B)に示すように、搬送方向Dと逆方向の牽引力Tを清掃具10に加え、清掃具10をローラコンベア装置の搬送動力に抗して逆走方向Eに移動させると、牽引力Tは搬送動力Fを打ち勝ち、清掃面11及び搬送面Sは、互いに逆方向に相対変位する。なお、牽引力Tは、後述する牽引用の索条(金属ケーブル、ワイヤ等)によって剛性板13に加えられる。
【0037】
図1の部分拡大図に示すように、抗力U及び/又は牽引力Tにより、ローラRの周速V1と、清掃具10の移動速度V2、V3との速度差(V1−V2)又は(V1−V3)が発生する結果、搬送面S及び清掃面11は相対変位する。この相対変位は、図1(B)に示す如く清掃具10を搬送方向Dと逆の方向Eに牽引する場合に殊に顕著に生じる。このような相対変位により、清掃面11は搬送面Sを拭き取り、或いは、搬送面Sに摩擦接触し又は擦過し、従って、搬送面Sの汚れ又は汚染物質は確実に除去される。
【0038】
図2は、図1に示す清掃具10を備えた清掃装置の全体構成を示す正面図である。図3及び図4は、図2に示す清掃ユニットの構造を示す正面図及び側面図である。図5及び図6は、図3に示すI−I線及びII-II線における断面図であり、図7は、清掃具10の底面図である。
【0039】
図2(A)は、清掃具10を有する清掃ユニット1を搬送方向Dに移動させて各ローラRを清掃する清掃過程を示す正面図である。図2(B)は、清掃ユニット1を搬送方向Dと逆の方向Eに移動させて各ローラRを清掃する清掃過程を示す正面図である。図2(A)には、非清掃時(待機時)の清掃ユニット1の状態(待機位置)が破線で示されている。図2(B)には、清掃すべき搬送路の末端部に到達した清掃ユニット1の状態(折り返し位置)が破線で示されている。搬送装置1は、図2(A)に示す初期位置X1と、図2(B)に示す最前進位置X2との間で移動する。
【0040】
図2に示す如く、清掃装置は、ローラコンベア装置C上に配置された可搬式清掃ユニット1と、清掃ユニット1を懸吊するI形又はH型断面のトロリービーム5と、トロリービーム5に沿って延びる金属製ケーブル又はワイヤ等の索条6と、索条6を繰り出し又は巻き取る電動ウインチ7とから構成される。トロリービーム5は搬送方向Dと平行に延びる。清掃ユニット1は、清掃具10を可動リンク機構3及び可搬トロリー装置4によってトロリービーム5から懸吊した構成を有する。トロリービーム5は清掃ユニット1をローラコンベア装置Cの搬送方向Dに移動可能に支持する。索条6及び電動ウインチ7は清掃ユニット1を搬送方向Dと反対の方向(逆走方向E)に牽引する。
【0041】
図3〜図7には、清掃ユニット10の構造が示されている。
【0042】
清掃ユニット1は、図4〜図7に示すように搬送路の垂直中心線Z−Z(図4)及び水平中心線Y−Y(図5、図6)に対して左右対称の構造を有する。水平中心線Y−Yは、搬送方向D及び逆走方向Eと平行である。
【0043】
図3に示すように、清掃具10の剛性板13は、上方に曲げ成形した前縁部14a及び後縁部14bを有する高剛性の金属板からなる。清掃具10の清掃部材12は、剛性板13の下側に配置された柔軟な吸水性ウェブからなる。清掃部材12の前縁部15a及び後縁部15bは、清掃部材12自身の可撓性により上方に曲げ変形し、金属製帯板16及びボルト・ナット組立体17によって前縁部14a及び後縁部14bの上側面14cに堅固に留め付けられる。
【0044】
可動リンク機構3を剛性板13に連結するための前後一対の垂直ブラケット18a、18bが、図3に示す如く、剛性板13の上面に固定される。図4及び図5に示すように、一対の前側ブラケット18a及び一対の後側ブラケット18bは夫々、垂直中心線Z−Z及び水平中心線Y−Yに対して対称に配置される。可動リンク機構3は、図3に示す如く、前後一対のリンク部材30a、30bを有する。一対の前側リンク部材30a及び一対の後側リンク部材30bは、垂直中心線Z−Z及び水平中心線Y−Yに対して対称に配置される。搬送路の幅方向(搬送方向と直交する方向)に延びる水平な枢軸31a、31bが、ブラケット18a、18bの上端部を貫通するとともに、リンク部材30a、30bの下端部を貫通する。リンク部材30a、30b及びブラケット18a、18bは、枢軸31a、31bの軸線を中心に枢動可能に相互連結される。枢軸31a、31bを取り外し又は解体することより、清掃具10を比較的容易に撤去し又は交換することができる。
【0045】
図3及び図4に示すように、可動リンク機構3は、索条6の先端部を係留するための係留部材32を備える。係留部材32は、可動リンク機構3の中間レベルに配置された連結部材33に固定される。連結部材33は、後側の左右のリンク部材30bを相互連結するように各リンク部材30bに直角に固定され、左右のリンク部材30bの間に水平に延在する。
【0046】
図3に示す如く、リンク部材30a、30bの上端部は、前後一対の垂直ブラケット41a、41bによって可搬トロリー装置4に連結される。一対の前側ブラケット41a及び一対の後側ブラケット41bは、図4に示すように、垂直中心線Z−Zに対して対称に配置される。可搬トロリー装置4は、剛性板13と概ね同等の長さを有する細長い水平基板40を有する。ブラケット41a、41bの上端部は、水平基板40の前端部及び後端部に一体的に固定される。搬送路の幅方向に延びる水平な枢軸34a、34bが、ブラケット41a、41bの下端部を貫通するとともに、リンク部材30a、30bの上端部を貫通する。リンク部材30a、30b及びブラケット41a、41bは、枢軸34a、34bの軸線を中心に枢動可能に相互連結される。
【0047】
水平基板40の前端部上面には、ブラケット43aが固定され、ブラケット43aは、複数(一対)の車輪42aを複数(一対)の水平支軸44aによって回転可能に支持する。水平基板40の後端部上面にも又、ブラケット43bが固定される。ブラケット43bは、複数(一対)の車輪42bを複数(一対)の水平支軸44bによって回転可能に支持する。ブラケット43a、43b及び車輪42a、42bは、図4に示すように、トロリービーム5の両側に対をなして配置される。両側の車輪42a、42bは、トロリービーム5の下側フランジ51上を転動する。
【0048】
索条6を転向するためのプーリ47が水平基板40の下側に配置される。プーリ47は、搬送路の幅方向に延びる水平支軸46によって回転可能に支承される。水平支軸46は、水平基板40の中央部から垂下する左右一対のブラケット45によって支持される。図3に示す如く、索条6は、係留部材32から斜め上方且つ前方に延び プーリ47によって後方に転向し、トロリービーム5の下側面に沿って後方に延びる。
【0049】
図2に示す如く、索条6の基端部(後端部)は、電動ウインチ7のドラム部71に巻き掛けられる。トロリービーム5には、索条6を中間支持する索条支承装置53、54が所定間隔を隔てて配置される。清掃ユニット1の位置又は姿勢を検出する位置センサ55〜57及び姿勢センサ58がトロリービーム5の所定位置に配置される。複数の位置センサ55は、互いに間隔を隔ててトロリービーム5に配置される。位置センサ55は、索条支承装置53、54の作動を制御するために清掃ユニット1の位置を検出する位置検出手段を構成する。位置センサ56は、トロリービーム5の前端部分に配置され、清掃ユニット1の最前進位置X2(折り返し位置)を検出する。位置センサ57は、トロリービーム5の後端部分に配置され、清掃ユニット1の回収動作時(最終動作時)の減速位置を検出する。姿勢センサ58は、清掃ユニット1の回収動作時に清掃具10の上昇位置を検出する。位置センサ56、57、58は、牽引力Tを制御するために清掃具10の位置を検出する位置検出手段を構成する。
【0050】
図8及び図9は、索条支承装置53、54の構成を示す側面図である。図8(A)及び図9(A)には、支承具53c、54cの上昇位置(退避位置)が示され、図8(B)及び図9(B)には、支承具53c、54cの降下位置(支承位置)が示されている。
【0051】
索条支承装置53、54は、アクチュエータ53a、54a及び支承具53c、54cを有する。アクチュエータ53a、54aは、トロリービーム5の上面に固定され、支承具53c、54cの基端部がアクチュエータ53a、54aの回転駆動軸53b、54bに固定される。支承具53c、54cは、回転駆動軸53b、54bの回転により、回転駆動軸53b、54bの軸線を中心に回動し、図8(A)及び図9(A)に実線で示す上昇位置(退避位置)と、図8(B)及び図9(B)に実線で示す降下位置(支承位置)とに選択的に移動する。
【0052】
図8に示す支承具53cは、回転駆動軸53bに連結された円形断面の金属製L形ロッドからなり、降下位置(支承位置)において索条6の脱落を阻止する一対の円形鍔53dが支承具53cの支承軸部分53eに取付けられる。索条6は、支承具53cの降下直後には、支承軸部分53eの上方に位置するが、清掃ユニット1が支承具53cから離間するにつれて下方に撓み、図8(C)に示すように円形鍔53dの間で支承軸部分53eに支受される。図9に示す支承具54cは、鉤形に成形された金属製帯板からなり、降下位置(支承位置)において索条6を鉤形部分54eに受入れる。索条6は、清掃ユニット1が支承具54cから離間するにつれて下方に撓み、図9(C)に示すように鉤形部分54eに支受される。
【0053】
図2において、索条支承装置53は、支承具53cによって索条6を支承する降下位置(支承位置)に位置し、索条支承装置54は、支承具54cによって索条6を支持する降下位置(支承位置)、或いは、支承具54cを上方に回動した上昇位置(退避位置)に位置する。なお、本実施例は、2種類の索条支承装置53、54を採用したものであるが、同一又は同種の索条支承装置のみを使用しても良く、或いは、多種・多様な構造の索条支承装置を使用しても良い。また、図2に示す索条支承装置53、54の位置及び位置関係は、あくまで例示であり、これに限定されるものではなく、索条6を適切に支承できる限り、索条支承装置の位置又は位置関係を適当に変更することができる。
【0054】
図10は、索条支承装置53及び位置センサ55の位置関係及び作動形態を示す正面図である。
【0055】
各々の索条支承装置53と対応する位置センサ55が各索条支承装置53の搬送方向前方に配置される。位置センサ55は、清掃ユニット1の水平基板40と接触可能又は近接可能な位置に配置された接触感知型又は非接触感知型の検知部55aを備える。検知部55aの検出信号は、破線で示す制御信号線を介して清掃装置の制御ユニットC/U内の制御部に入力される。制御ユニットC/U内の駆動部は、破線で示す制御信号線を介して索条支承装置53のアクチュエータ53aに接続される。
【0056】
清掃ユニット1は、図10(A)に示すように、ローラRの回転によってローラコンベア装置C上を搬送方向Dに移動する。図10(A)には、水平基板40が位置センサ55の検知部55aに接触又は近接する位置まで前進した状態が示されている。この時点では、索条支承装置53は、上昇位置(退避位置)に位置している。
【0057】
検知部55aは水平基板40の衝合又は接近を感知し、制御ユニットC/Uは、内蔵タイマーを起動し、所定時間(タイマー設定時間)経過後にアクチュエータ53aを作動して、支承具53cを降下位置(支承位置)に回動せしめる。
【0058】
図10(B)には、支承具53cが降下位置(支承位置)に位置する状態が示されている。プーリ47から後方に延びる索条6は、支承具53cの支承軸部分53eによって支承される。清掃ユニット1と電動ウインチ7との間に延びる索条6は、支承具53cによって中間支持されるので、索条6の支点間距離が短縮する。このため、自重による索条6の下方変位(撓み)は抑制される。
【0059】
図10は、清掃ユニット1が搬送方向Dの方向に移動する過程に生じる索条支承装置53の作動形態であるが、清掃ユニット1が図1(B)に示す如く搬送方向Dと逆の方向(逆走方向E)に移動する際にも又、検知部55aは水平基板40の衝合又は接近を感知する。制御ユニットC/Uは、検知部55aによって水平基板40の到達を検出すると、内蔵タイマーを起動し、所定時間(タイマー設定時間)経過後にアクチュエータ53aを作動して、水平基板40が支承具53cに到達する前に支承具53cを上昇位置(退避位置)に回動せしめる。
【0060】
なお、アクチュエータ53aの作動のタイミングは、清掃ユニット1の移動速度と、索条支承装置53及び検知部55aの位置関係とによって決定される。従って、タイマーの設定時間をゼロに設定し、或いは、タイマーを使用せず、検知部55a及び水平基板40の接触又は近接の後に直ちにアクチュエータ53aを作動するように条件設定することも可能である。
【0061】
また、図10は、索条支承装置53及び位置センサ55の位置関係及び作動形態に関するものであるが、索条支承装置54及び位置センサ55の位置関係及び作動形態も、図10に示すものと実質的に同じであり、図10及びその説明における符号「53」を符号「54」に読み替えることにより、全く同じ説明を適用し得るので、重複する説明の記載については、省略する。
【0062】
図2(B)に示すように清掃ユニット1が搬送路上を逆走方向Eに移動すると、清掃ユニット1は、トロリービーム5の後端部(初期位置X1)付近に配置された位置センサ57及びストッパ59に段階的に接近し又は衝合する。位置センサ57の検知部が水平基板40に接触又は近接すると、制御ユニットC/U(図10、図11)は、位置センサ57の検出結果に基づいて電動ウインチ7の巻き取り速度を減速し、この結果、水平基板40は、緩慢な動作でストッパ59に衝合する。
【0063】
図11及び図12は、清掃ユニット1、ストッパ59及び位置センサ58の位置関係を示す正面図である。
【0064】
図11には、水平基板40がストッパ59に衝合した状態が示されている。電動ウインチ7が索条6を更に巻き取ると、ストッパ59が水平基板40の更なる後退を阻止するので、リンク部材30a、30bは、索条6の牽引力Tによって枢軸34a、34b廻りに上方に回動する。電動ウインチ7の巻き取り速度が減速しているので、リンク部材30a、30bはゆっくりと上昇する。
【0065】
リンク部材30bの上端部には、上方に突出する舌状片39が固定されており、リンク部材30a、30bが図12に示す上昇位置(図12に示す待機位置)まで上昇すると、舌状片39は、位置センサ58の検知部58aに接触又は近接し、制御ユニットC/Uは、位置センサ58の検出結果に基づいて電動ウインチ7の駆動モータMを停止させる。この結果、清掃具10は、図12に示すように上昇位置(待機位置)に保持され、清掃具10の下側には、物品又は資材W(仮想線で示す)をローラコンベア装置Cによって移送可能な搬送空間Qが確保される。なお、柔軟な清掃部材12は、図12に破線で示すように若干下方に撓むが、清掃具10の上昇位置(待機位置)のレベルは、このような清掃部材12の撓みによっても所望の搬送空間Qを確保し得るようなレベルに設定される。
【0066】
次に、このように構成された清掃装置の作動について概略的に説明する。
【0067】
ローラコンベア装置Cによる物品又は資材の搬送時には、清掃ユニット1は、図12に示す待機位置において待機する。清掃工程を開始するには、ローラコンベア装置Cの作動状態(ローラRの回転駆動状態)において、電動ウインチ7のドラム71を繰り出し方向に回転させれば良い。
【0068】
清掃ユニット1は、ドラム71からの索条6の繰り出しにより、図11に示す如く清掃具10をローラR上に降下させ、清掃面11は、清掃具10の自重PによってローラRに押圧され、ローラRの搬送面S(図1)に接触する。制御ユニットC/Uは、位置センサ57の検知部が水平基板40に接触又は近接した状態にある間、電動ウインチ7の繰り出し速度を比較的低速に設定し、従って、清掃具10は、ローラR上にゆっくりと降下する。清掃具10がローラRの搬送面Sに密接すると、ローラRのトルクが搬送動力F(図1、図2)として清掃具10に伝達し、清掃ユニット1は、非常に緩慢な速度で前進し始める。制御ユニットC/Uは、位置センサ57の検知部が水平基板40から離間すると、電動ウインチ7の繰り出し速度を上昇させる。清掃ユニット1は、清掃具10に伝達したローラRのトルク(搬送動力F)により、図10及び図2(A)に示すように搬送方向(D方向)にゆっくりと移動する。
【0069】
清掃ユニット1が各位置センサ55の検出位置を通過すると、対応する索条支承装置53、54の支承具53c、54cが制御ユニットC/Uの制御下に降下し、索条6は、図2(A)に示すように中間支持される。索条6の撓みが支承具53c、54cによって規制されるので、索条6が下方に撓んでローラRに接触するのを確実に阻止することができる。
【0070】
図2(B)に破線で示すように清掃ユニット1が最前進位置X2(折り返し位置)に到達し、トロリー装置4の水平基板40が位置センサ56に接触又は近接すると、制御ユニットC/Uは、電動ウインチ7のドラム71を巻き取り方向に作動せしめる。制御ユニット1は、電動ウインチ7の牽引力Tによって矢印E方向に自走する。清掃ユニット1が位置センサ55の位置を通過すると、対応する索条支承装置53、54の支承具53c、54cが制御ユニットC/Uの制御下に上昇する。清掃ユニット1が初期位置X1の近傍まで逆走して位置センサ57及びストッパ59に段階的に接近又は衝合すると、清掃ユニット1の減速動作と、清掃具10の上昇・待機動作(図11、図12)とが段階的に実行される。位置センサ58が清掃具10の上昇・待機を検出すると、一連の清掃工程が完了する。
【0071】
前述の如く、このような清掃ユニット1の往復動の結果、ローラRの搬送面S(図1)の汚れ又は汚染物質は、清掃部材12の吸水性と、清掃面11及び搬送面Sの接触/離間と、清掃面11及び搬送面Sの相対変位とによって清掃部材12に移行し、ローラRから除去される。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0073】
例えば、上記実施例は、ローラコンベア装置の搬送面を清掃する清掃装置として本発明の構成を採用した構成のものであるが、ベルトコンベア装置の清掃装置として本発明の構成を採用しても良い。
【0074】
また、清掃時における搬送装置の搬送速度、ローラの回転速度、索条の牽引速度(巻き取り速度)等は、搬送装置及び清掃装置の具体的な構成に相応して任意に設定変更することができる。また、清掃装置の制御方式についても、電気制御式、電子制御式、空圧制御式、油圧制御式等の任意の制御方式を採用し得るものである。
【0075】
更には、搬送面に接触する清掃部材として、天然繊維、化学繊維又は合成樹脂等を素材とする織布、不織布、フェルト、多孔質材料、スポンジ材料、繊維集合体等の任意の材料を搬送面の性状等に相応して適宜選択することができる。清掃部材として、複数の材料を積層した複合材料を使用し、或いは、表面に微細なエンボス、起毛、凹凸、窪み、突起等を有する材料を採用しても良い。
【0076】
また、上記実施例の清掃装置は、清掃部材12の吸水性と、清掃面及び搬送面の接触/離間と、清掃面及び搬送面の相対変位又は摩擦とによって搬送面の汚れ又は汚染物質を除去するように構成したものであるが、水、洗剤等の洗浄液を搬送面に噴霧、噴射又は射出するノズル等の給液手段を清掃ユニットに設けるとともに、搬送面を積極的に乾燥させる送風機等の通風手段又は強制乾燥手段を清掃ユニットに配設しても良い。所望により、搬送面の液分を迅速に吸収する液体吸収材料を清掃ユニットに更に設けても良い。このような清掃装置によれば、搬送面に付着した汚れ又は汚染物質を水や洗剤等で洗浄した後、通風乾燥させて搬送面の水分を除去するとともに、液体吸収材料によって搬送面の余剰水分を吸収し、これにより、搬送面の洗浄・乾燥を迅速に行うことが可能となる。
【0077】
加えて、上記実施例においては、ケーブル、ワイヤ、ロープ等の索条を牽引装置の牽引部材として使用しているが、チェーン等の線状部材を牽引部材として使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ローラコンベア、ベルトコンベア等の搬送要素(ローラ、コンベアベルト等)の搬送面を清掃する清掃装置及び清掃方法に適用される。本発明の構成は殊に、食品、建材、樹脂成形品、紙製品等の製造プロセス又は加工プロセスにおいて未硬化、反応過程又は湿潤状態の原料、半製品、中間製品等を搬送する搬送路に関し、搬送面に付着した汚れ又は汚染物質を除去する清掃装置及び清掃方法に好ましく適用し得るものである。
【0079】
本発明の清掃装置は、搬送装置の搬送動力を利用し、装置本体の移動及び駆動を牽引力により制御するように構成したものであり、清掃部を回転駆動させる複雑な駆動装置等を要しない。また、本発明の清掃装置は、比較的安価に製造することができ、しかも、様々な種類、設計又はサイズの搬送装置に適応することができる。更には、本発明の装置を用いた清掃作業は、複雑な駆動装置の使用を要しないので、簡便、効率的且つ省力的である。従って、本発明に係る清掃装置及び清掃方法の実用的価値は、顕著である。
【符号の説明】
【0080】
1 清掃ユニット
3 可動リンク機構
4 可搬トロリー装置(走行機構)
5 トロリービーム(案内部材)
6 索条(牽引装置)
7 電動ウインチ(牽引装置)
10 清掃具
11 清掃面
12 清掃部材
13 剛性板
14 錘
53、54 索条支承装置
55、56、57 位置センサ(位置検出手段)
58 姿勢センサ
59 ストッパ(制動手段)
C ローラコンベア装置(搬送装置)
R ローラ(搬送要素)
S 上側搬送面
D 搬送方向
E 逆走方向
F 搬送動力
P 清掃具の自重
U 抗力
T 牽引力
V1 ローラの周速
V2、V3 清掃具の移動速度
C/U 制御ユニット(制御手段)
W 物品又は資材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素に接触して、搬送要素を清掃する搬送面の清掃装置において、
前記搬送要素上に載置され、前記搬送面に接触する清掃面を有する清掃具と、
前記搬送装置の搬送方向と逆方向の牽引力を前記清掃具に与える牽引装置とを有し、
前記清掃具は、前記搬送装置の作動時に前記清掃面と前記搬送面との接触を維持する重量を有することを特徴とする搬送面の清掃装置。
【請求項2】
前記清掃具を前記搬送方向に案内すべく、前記搬送要素の上方域に該搬送方向と平行に配置された案内部材と、該案内部材に対して前記清掃具を移動可能に懸吊する懸吊機構とを有することを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記懸吊機構は、前記案内部材に移動可能に支持された走行機構と、該走行機構と前記清掃具とを連結するリンク機構とから構成されることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記牽引装置は、牽引力を前記清掃具に伝達する索条と、該索条を巻き取り又は繰り出すウインチとを有し、前記索条は、前記案内部材に沿って延び、前記懸吊機構を介して前記清掃具に連結されることを特徴とする請求項2又は3に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記索条を中間支持する索条支承装置が前記案内部材に間隔を隔てて配置されることを特徴とする請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記懸吊機構の牽引方向の移動を阻止する制動手段が前記案内部材に配設され、前記懸吊機構は、前記制動手段によって移動を阻止された状態で前記牽引力によって上方に回動し、前記清掃具を上昇させるように構成されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記清掃具の位置を検出する位置検出手段と、前記牽引手段が前記清掃具に与える牽引力を前記位置検出手段の検出結果に基づいて制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6に記載の清掃装置。
【請求項8】
前記清掃具は、高い剛性を有する剛性板と、該剛性板の下側に延在し且つ吸水性を有する柔軟な清掃部材とから構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項9】
前記搬送路の作動時に前記清掃部材と前記搬送路構成要素との面接触を維持するための荷重が、前記剛性板から前記清掃部材に与えられることを特徴とする請求項8に記載の清掃装置。
【請求項10】
前記搬送要素は、ローラコンベア又はベルトコンベアのローラ又はコンベアベルトからなり、前記ローラ又はコンベアベルトの上面は、前記搬送面を構成し、前記清掃具は、前記上面に密接するように変形する柔軟な清掃部材を有し、該清掃部材は、前記上面の周速又は移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による前記清掃面と前記上面との相対変位と、前記清掃面と前記上面との接触及び離間とにより、前記ローラ又はコンベアベルトを清掃することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項11】
物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素を清掃具の清掃面によって清掃する搬送面の清掃方法において、
清掃面を有する清掃具を前記搬送要素上に載置し、前記清掃面を前記清掃具の重量によって前記搬送面に接触せしめて、前記搬送装置の搬送動力を前記清掃具に伝達し、
前記搬送面の移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による該搬送面及び清掃面の相対変位と、前記清掃面と前記搬送面との接触及び離間とにより、前記搬送面を清掃することを特徴とする搬送面の清掃方法。
【請求項12】
前記搬送装置の搬送方向と逆方向の牽引力によって前記清掃具を牽引して前記清掃具の移動を制御することを特徴とする請求項11に記載の清掃方法。
【請求項13】
前記牽引力の解放又は低下により、前記清掃具を前記搬送方向に移動させ、前記牽引力の付加又は増大により、前記搬送方向と逆の方向に前記清掃具を移動させることを特徴とする請求項12に記載の清掃方法。
【請求項14】
前記清掃具を搬送方向前方に所定距離だけ移動せしめた後、前記牽引力によって前記清掃具を初期位置まで逆走させるとともに、前記牽引力の全部又は一部を上向きの力に転換して前記清掃具を上昇させて、該清掃具をその待機位置に復帰させることを特徴とする請求項12又は13に記載の清掃方法。
【請求項15】
非清掃時に前記清掃具を前記搬送要素の上方域に上昇させて、前記物品又は資材の搬送用空間を前記清掃具の下側に形成することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項16】
前記清掃具の位置を検出して、牽引力を前記清掃具に伝達するための索条を支承し又は解放することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項17】
前記搬送面に洗浄液を供給することを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項18】
前記搬送要素は、ローラコンベア又はベルトコンベアのローラ又はコンベアベルトからなり、前記ローラ又はコンベアベルトの上面は、前記搬送面を構成し、前記清掃具は、前記上面に密接するように変形する柔軟な清掃部材を有し、該清掃部材は、前記上面の周速又は移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による前記清掃面と前記上面との相対変位と、前記清掃面と前記上面との接触及び離間とにより、前記ローラ又はコンベアベルトを清掃することを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項19】
前記清掃具は、高い剛性を有する剛性板と、該剛性板の下側に延在し且つ吸水性を有する柔軟な清掃部材とから構成されることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項1】
物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素に接触して、搬送要素を清掃する搬送面の清掃装置において、
前記搬送要素上に載置され、前記搬送面に接触する清掃面を有する清掃具と、
前記搬送装置の搬送方向と逆方向の牽引力を前記清掃具に与える牽引装置とを有し、
前記清掃具は、前記搬送装置の作動時に前記清掃面と前記搬送面との接触を維持する重量を有することを特徴とする搬送面の清掃装置。
【請求項2】
前記清掃具を前記搬送方向に案内すべく、前記搬送要素の上方域に該搬送方向と平行に配置された案内部材と、該案内部材に対して前記清掃具を移動可能に懸吊する懸吊機構とを有することを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記懸吊機構は、前記案内部材に移動可能に支持された走行機構と、該走行機構と前記清掃具とを連結するリンク機構とから構成されることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記牽引装置は、牽引力を前記清掃具に伝達する索条と、該索条を巻き取り又は繰り出すウインチとを有し、前記索条は、前記案内部材に沿って延び、前記懸吊機構を介して前記清掃具に連結されることを特徴とする請求項2又は3に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記索条を中間支持する索条支承装置が前記案内部材に間隔を隔てて配置されることを特徴とする請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記懸吊機構の牽引方向の移動を阻止する制動手段が前記案内部材に配設され、前記懸吊機構は、前記制動手段によって移動を阻止された状態で前記牽引力によって上方に回動し、前記清掃具を上昇させるように構成されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記清掃具の位置を検出する位置検出手段と、前記牽引手段が前記清掃具に与える牽引力を前記位置検出手段の検出結果に基づいて制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6に記載の清掃装置。
【請求項8】
前記清掃具は、高い剛性を有する剛性板と、該剛性板の下側に延在し且つ吸水性を有する柔軟な清掃部材とから構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項9】
前記搬送路の作動時に前記清掃部材と前記搬送路構成要素との面接触を維持するための荷重が、前記剛性板から前記清掃部材に与えられることを特徴とする請求項8に記載の清掃装置。
【請求項10】
前記搬送要素は、ローラコンベア又はベルトコンベアのローラ又はコンベアベルトからなり、前記ローラ又はコンベアベルトの上面は、前記搬送面を構成し、前記清掃具は、前記上面に密接するように変形する柔軟な清掃部材を有し、該清掃部材は、前記上面の周速又は移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による前記清掃面と前記上面との相対変位と、前記清掃面と前記上面との接触及び離間とにより、前記ローラ又はコンベアベルトを清掃することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項11】
物品又は資材を搬送するための搬送面を有する搬送装置の搬送要素を清掃具の清掃面によって清掃する搬送面の清掃方法において、
清掃面を有する清掃具を前記搬送要素上に載置し、前記清掃面を前記清掃具の重量によって前記搬送面に接触せしめて、前記搬送装置の搬送動力を前記清掃具に伝達し、
前記搬送面の移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による該搬送面及び清掃面の相対変位と、前記清掃面と前記搬送面との接触及び離間とにより、前記搬送面を清掃することを特徴とする搬送面の清掃方法。
【請求項12】
前記搬送装置の搬送方向と逆方向の牽引力によって前記清掃具を牽引して前記清掃具の移動を制御することを特徴とする請求項11に記載の清掃方法。
【請求項13】
前記牽引力の解放又は低下により、前記清掃具を前記搬送方向に移動させ、前記牽引力の付加又は増大により、前記搬送方向と逆の方向に前記清掃具を移動させることを特徴とする請求項12に記載の清掃方法。
【請求項14】
前記清掃具を搬送方向前方に所定距離だけ移動せしめた後、前記牽引力によって前記清掃具を初期位置まで逆走させるとともに、前記牽引力の全部又は一部を上向きの力に転換して前記清掃具を上昇させて、該清掃具をその待機位置に復帰させることを特徴とする請求項12又は13に記載の清掃方法。
【請求項15】
非清掃時に前記清掃具を前記搬送要素の上方域に上昇させて、前記物品又は資材の搬送用空間を前記清掃具の下側に形成することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項16】
前記清掃具の位置を検出して、牽引力を前記清掃具に伝達するための索条を支承し又は解放することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項17】
前記搬送面に洗浄液を供給することを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項18】
前記搬送要素は、ローラコンベア又はベルトコンベアのローラ又はコンベアベルトからなり、前記ローラ又はコンベアベルトの上面は、前記搬送面を構成し、前記清掃具は、前記上面に密接するように変形する柔軟な清掃部材を有し、該清掃部材は、前記上面の周速又は移動速度と前記清掃具の移動速度との速度差による前記清掃面と前記上面との相対変位と、前記清掃面と前記上面との接触及び離間とにより、前記ローラ又はコンベアベルトを清掃することを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の清掃方法。
【請求項19】
前記清掃具は、高い剛性を有する剛性板と、該剛性板の下側に延在し且つ吸水性を有する柔軟な清掃部材とから構成されることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の清掃方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−144045(P2011−144045A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249240(P2010−249240)
【出願日】平成22年11月7日(2010.11.7)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月7日(2010.11.7)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
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