説明

携帯型照明器具の保持装置

【課題】携帯型照明器具を外部部材に対して強固に固定できる携帯型照明器具の保持装置を提供する。
【解決手段】光を照射した状態で携帯可能な携帯型照明器具2の本体3に取り付けられて、携帯型照明器具を外部部材に着脱自在に保持させる携帯型照明器具の保持装置1であって、本体に外装されるバンド部材10と、本体を挟んでバンド部材の反対側位置に配置して、本体に外装したバンド部材の一端が固定されて他端が係合された装置本体20と、装置本体に螺合して回転操作により本体側へ移動可能なネジ送り部材と、ネジ送り部材の本体側の端部に設けられて、本体への押圧面を備えた押圧体40と、装置本体に支持されて外部部材に着脱可能な着脱部50と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯型照明器具を外部部材に着脱自在に保持させる携帯型照明器具の保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、携帯用照明器具を保持しつつヘルメット等に着脱可能な照明具ホルダーが開示されている。特許文献1の照明具ホルダでは、基盤に連結された帯状のベルトを携帯用照明器具に巻き付けて該ベルトの両端部を面ファスナーで接合することで携帯用照明器具を基盤に固定した上で、基盤の裏面の面ファスナーをヘルメットに貼り付けた面ファスナーに接合させて、携帯用照明器具をヘルメットに装着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−12725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の照明具ホルダでは、基盤の面ファスナーをヘルメットの面ファスナーに対して圧着したり引き離したりすることを繰り返すと、二つの面ファスナー同士の接合力が弱まるという問題があった。このような場合には、携帯用照明器具が目標位置に光を照射しているにもかかわらずヘルメット等の外部部材から落下することが懸念されていた。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、携帯型照明器具を外部部材に対して強固に固定できる携帯型照明器具の保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る携帯型照明器具の保持装置は、光を照射した状態で携帯可能な携帯型照明器具の本体に取り付けられて、前記携帯型照明器具を外部部材に着脱自在に保持させる携帯型照明器具の保持装置であって、前記本体に外装されるバンド部材と、前記本体を挟んで前記バンド部材の反対側位置に配置して、前記本体に外装した前記バンド部材の一端が固定されて他端が係合された装置本体と、前記装置本体に螺合して回転操作により前記本体側へ移動可能なネジ送り部材と、前記ネジ送り部材の前記本体側の端部に設けられて、前記本体への押圧面を備えた押圧体と、前記装置本体に支持されて前記外部部材に着脱可能な着脱部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記着脱部は磁石で形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ネジ送り部材の前記本体側とは反対側の端部に、前記磁石を連結したことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3において、前記磁石の周囲に第1の弾性部材を巻着して、該第1の弾性部材を前記磁石の吸着面から突出させたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記バンド部材の他端に前記装置本体に係合可能な係止部材を設けて、前記装置本体に前記係止部材を係合するための係合操作部材を前記係止部材に一体形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記押圧面を円弧状に形成し、該押圧面に、前記本体に圧接可能な第2の弾性部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る携帯型照明器具の保持装置によれば、ネジ送り部材を回転操作して押圧体を携帯型照明器具の本体側へ移動させると、携帯型照明器具の本体を、バンド部材で外装した上でバンド部材の反対側位置から前記押圧体の押圧面で押圧して装置本体に保持できる。したがって、携帯型照明器具の本体が押圧体の押圧力によって装置本体に強固に支持された上で、携帯型照明器具を装置本体に支持された着脱部で外部部材に固定できる。
請求項2の発明によれば、着脱部を磁石の磁力で引き付けられる金属材料で形成された外部部材に吸着させて固定でき、着脱部を磁力に逆らって外部部材から引っ張るだけで外部部材から取り外すことができる。したがって、着脱部を外部部材に対して容易に着脱できる。
請求項3の発明によれば、磁石を外部部材に着脱させることに加えてネジ送り部材を回転操作するための操作部として用いることができる。
請求項4の発明によれば、第1の弾性部材は、磁石の吸着面が外部部材に吸着する前に外部部材に押し付けられて密着することで、第1の弾性部材を外部部材に対する滑り止めとして作用させることができる。加えて、第1の弾性部材が磁石と外部部材との間に介在して磁石が外部部材に衝突することを防止することで、外部部材が傷付くことを抑制できる。
請求項5の発明によれば、係合操作部材を用いることで係止部材に触れることなく係止部材を装置本体の係合位置に移動させることができる。これにより、係止部材を前記係合位置に係合させる操作が容易になる。
請求項6の発明によれば、第2の弾性部材は、本体に圧接して密着することで本体に対する滑り止めとして作用する。加えて、第2の弾性部材は本体に圧接するときに弾性変形することで本体に加わる衝撃荷重を吸収する。これにより、本体が損傷することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の保持装置を充電式懐中電灯に取り付けるときの説明図である。
【図2】充電式懐中電灯を取り付ける前の同保持装置の概略縦断面図である。
【図3】同保持装置を取り付けた充電式懐中電灯の全体斜視図である。
【図4】充電式懐中電灯を取り付けた同保持装置の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図1ないし図4を参照しつつ説明する。本実施形態の保持装置1は、携帯可能な充電式懐中電灯2の握り部3に取り付けられて、充電式懐中電灯2を、建築工事現場の鉄骨や倉庫に設置されたスチール製の収納棚等に対して着脱自在に保持させるものである。充電式懐中電灯2は、照明部4に収容されたLEDによって目標位置に光を照射する。なお、充電式懐中電灯2は本発明の携帯型照明器具の一例であり、握り部3は本発明の携帯型照明器具の本体の一例であり、建築工事現場の鉄骨やスチール製の収納棚等は外部部材の一例である。
【0015】
保持装置1は、バンド部材10と、装置本体20と、送りネジ30と、押圧体40と、永久磁石50とを備えている。本実施形態のバンド部材10は、帯状のナイロン織布で可撓性を有する。バンド部材10は、図3及び図4に示すように、握り部3の周面へ外装するために用いられる。
【0016】
装置本体20は側面視略門型の支持部材21を備えて、この支持部材21は、図1に示すように、左側部21Aと、右側部21Bと、上部21Cとを有する。左側部21Aと右側部21Bとの間には押圧体収容部22が固定されている。図2に示すように、押圧体収容部22は装置本体20の下側を開放した状態で押圧体40を取り巻くように形成されている。さらに、図2及び図4に示すように、装置本体20の正面視であって押圧体収容部22の左右の外側で左側部21Aと右側部21Bとの間には棒部材B1、B2が連結されている。図4に示すようにバンド部材10が握り部3の周面へ外装された状態では、装置本体20は握り部3を挟んでバンド部材10の反対側位置に配置される。
【0017】
バンド部材10の固定端は、棒部材B2に沿って折り返された後にバンド部材10に縫い付けられている。バンド部材10の開放端には、フック状の係止部材11と係合操作部材12とが設けられている。係止部材11と係合操作部材12とは、一枚の板金を折り曲げ加工することによって一体に形成されている。係止部材11は棒部材B1に係合可能である。係合操作部材12は、係止部材11の基端部から係止部材11とは反対側へ折り曲げられて延設されている。係止部材11の基端部には貫通孔13が開口し、係合操作部材12には貫通孔13と対向する位置に貫通孔14が開口する。バンド部材10の開放端は、両貫通孔13、14に通されて折り返された後にバンド部材10に縫い付けられている。なお、バンド部材10の固定端は本発明のバンド部材の一端の一例であり、バンド部材10の開放端は本発明のバンド部材の他端の一例である。
【0018】
また図2及び図4に示すように支持部材21の上部21Cには貫通孔23が形成されて、ナットNが貫通孔23に同軸で外嵌されて上部21Cの内部に配置されている。送りネジ30には、その鉛直方向Yに螺旋形状のネジ部31が形成されている。送りネジ30のネジ部31はナットNと螺合する。送りネジ30を水平回転操作してネジ部31がナットNに案内されると、図2及び図4に示すように送りネジ30は前記鉛直方向Yへ移動可能となる。なお、送りネジ30は本発明のネジ送り部材の一例である。
【0019】
押圧体40は送りネジ30の下端に連結されている。押圧体40は上記の押圧体収容部22の内部に収容される。押圧体40はその下端に押圧面41を備えている。この押圧面41は、筒状の握り部3に圧接させるために円弧状に形成されている。加えて、弾性部材42が押圧面41に沿って接着されている。ここでは弾性部材42は合成ゴムによって構成されている。なお、弾性部材42は本発明の第2の弾性部材の一例である。
【0020】
永久磁石50は上記の鉄骨や収納棚等に吸着させるもので円盤状とされている。この永久磁石50は、有底で上面が開口する金属製の円筒状の磁石ホルダ51の内部に収容されている。また、弾性部材52が永久磁石50と磁石ホルダ51の内周面との間に挟み込まれることで、弾性部材52が永久磁石50の周囲に巻着される。図2及び図4に示すように、弾性部材52の端面は永久磁石50の吸着面50Aよりも突出している。この弾性部材52は上記の弾性部材42と同様に合成ゴムによって構成されている。加えて、永久磁石50には、下面に開口して上面に向けて凹設された切込凹部Hが形成されている。なお、永久磁石50は本発明の着脱部の一例であり、弾性部材52は本発明の第1の弾性部材の一例である。
【0021】
磁石ホルダ51の内底面には送りネジ係止孔53が開口する。送りネジ30のネジ部31が送りネジ係止孔53に挿通された後に、送りネジ30の頭部32は送りネジ係止孔53に係止されて切込凹部Hに入り込む。これにより、永久磁石50は磁石ホルダ51を介して前記頭部32と連結されると共に磁石ホルダ51及び送りネジ30を介して装置本体20に支持される。
【0022】
次に、充電式懐中電灯2を保持装置1を用いて建築工事現場の鉄骨等に着脱する方法を説明する。図1に示すように保持装置1を握り部3に近づけた後に、図1、図3及び図4に示すように、バンド部材10を、手(図示せず。)で係合操作部材12を持って棒部材B2を支点として棒部材B1側へ回転移動させることで、バンド部材10を押圧体40とは反対側における握り部3の外周に外装させて、さらに係止部材11を棒部材B1に係合させる。続いて永久磁石50が収容された磁石ホルダ51を手で持って送りネジ30を水平回転させることで、押圧体40を鉛直方向Yの握り部3側へ移動させる。これにより、図4に示すように弾性部材42を握り部3の外周に圧接して密着させる。以上のようにして充電式懐中電灯2は押圧体40とバンド部材10との間に挟まれて装置本体20に保持される。
【0023】
その後に永久磁石50の吸着面50Aを鉄骨等に近づけるだけで、吸着面50Aが磁力によって鉄骨等に引き付けられる。このとき弾性部材52の端面が吸着面50Aよりも突出しているため、弾性部材52は、吸着面50Aが鉄骨等に吸着する前に永久磁石50と鉄骨等との間に介在して鉄骨等に押し付けられて密着する。吸着面50Aは磁力によって鉄骨等に密着固定されるため、充電式懐中電灯2は、照明部4を目標位置に向けて屈曲させることで鉄骨等から落下することを防ぎながら光を目標位置に照射し続けることができる。また、永久磁石50を磁力に逆らって鉄骨等から引っ張るだけで、吸着面50Aを鉄骨等から取り外すことができる。
【0024】
<本実施形態の効果>
本実施形態の保持装置1では、送りネジ30を水平回転操作して押圧体40を充電式懐中電灯2の握り部3側へ移動させると、握り部3の外周をバンド部材10で外装した上でバンド部材10の反対側から押圧面41の弾性部材42で押圧して装置本体20に保持できる。したがって、握り部3が押圧体41の押圧力によって装置本体20に強固に支持された上で、充電式懐中電灯2を装置本体20に支持された永久磁石50で建築工事現場の鉄骨や倉庫に設置されたスチール製の収納棚等に固定できる。
【0025】
また、永久磁石50を、その磁力で引き付けられる建築工事現場の鉄骨等に吸着させて固定でき、永久磁石50を磁力に逆らって前記鉄骨等から引っ張るだけで該鉄骨等から取り外すことができる。したがって、永久磁石50を前記鉄骨等に対して容易に着脱できる。
【0026】
さらに、永久磁石50は、磁石ホルダ51を介して送りネジ30の頭部32に連結されているため、永久磁石50を上記の鉄骨等に着脱させることに加えて送りネジ30を水平回転操作するための操作部として用いることができる。
【0027】
さらに加えて、弾性部材52は、永久磁石50の吸着面50Aが鉄骨等に吸着する前に鉄骨等に押し付けられて密着することで、弾性部材52を鉄骨等に対する滑り止めとして作用させることができる。これに加えて、弾性部材52が永久磁石50と鉄骨等との間に介在して永久磁石50が鉄骨等に衝突することを防止することで、鉄骨等が傷付くことを抑制できる。
【0028】
また、係止部材11を装置本体20の棒部材B1に係合させるために係合操作部材12を用いることで係止部材11に触れることなく係止部材11を棒部材B1に移動させることができる。これにより、係止部材11を棒部材B1に係合させる操作が容易になる。
【0029】
さらに、弾性部材42は、握り部3の外周に圧接して密着することで握り部3に対する滑り止めとして作用する。加えて、弾性部材42は握り部3に圧接するときに弾性変形することで握り部3に加わる衝撃荷重を吸収する。これにより、握り部3が損傷することを防止できる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。上述した実施形態では、装置本体20に保持された充電式懐中電灯2を、装置本体20に支持された永久磁石50で鉄骨等に着脱可能としたが、これに代えて充電式懐中電灯2を装置本体20に支持された係止用フック等で鉄骨等に着脱可能としてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では永久磁石50は磁石ホルダ51を介して送りネジ30と連結したが、これに代えて磁石ホルダ51を設けずに永久磁石50を送りネジ30の頭部32と溶接等で直結してもよい。さらに、上述した実施形態では係止部材11と係合操作部材12とを一枚の板金を用いて一体に形成したが、これに代えて両部材11、12をそれぞれ別部材で形成した上で接合して一体にしてもよい。加えて、上述した実施形態では弾性部材52を永久磁石50の周囲に巻着したが、弾性部材52を永久磁石の周囲に設けずに永久磁石を磁石ホルダ51の内部に嵌着させてもよい。さらに加えて、本発明を交流電源に接続された懐中電灯に適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1・・保持装置、2・・充電式懐中電灯、3・・握り部、10・・バンド部材、11・・係止部材、12・・係合操作部材、20・・装置本体、30・・送りネジ、40・・押圧体、41・・押圧面、42・・弾性部材、50・・永久磁石、50A・・吸着面、52・・弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射した状態で携帯可能な携帯型照明器具の本体に取り付けられて、前記携帯型照明器具を外部部材に着脱自在に保持させる携帯型照明器具の保持装置であって、
前記本体に外装されるバンド部材と、
前記本体を挟んで前記バンド部材の反対側位置に配置して、前記本体に外装した前記バンド部材の一端が固定されて他端が係合された装置本体と、
前記装置本体に螺合して回転操作により前記本体側へ移動可能なネジ送り部材と、
前記ネジ送り部材の前記本体側の端部に設けられて、前記本体への押圧面を備えた押圧体と、
前記装置本体に支持されて前記外部部材に着脱可能な着脱部と、
を備えたことを特徴とする携帯型照明器具の保持装置。
【請求項2】
前記着脱部は磁石で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の携帯型照明器具の保持装置。
【請求項3】
前記ネジ送り部材の前記本体側とは反対側の端部に、前記磁石を連結したことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯型照明器具の保持装置。
【請求項4】
前記磁石の周囲に第1の弾性部材を巻着して、該第1の弾性部材を前記磁石の吸着面から突出させたことを特徴とする請求項2又は3に記載の携帯型照明器具の保持装置。
【請求項5】
前記バンド部材の他端に前記装置本体に係合可能な係止部材を設けて、前記装置本体に前記係止部材を係合するための係合操作部材を前記係止部材に一体形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型照明器具の保持装置。
【請求項6】
前記押圧面を円弧状に形成し、該押圧面に、前記本体に圧接可能な第2の弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の携帯型照明器具の保持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−119266(P2012−119266A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270495(P2010−270495)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)