説明

携帯型燃料電池

【課題】適用する電子機器の意匠の自由度を損ねることなく、高い発電性能を有する携帯型燃料電池を提供する。
【解決手段】携帯型燃料電池は、かまぼこ形の筐体100を有し、内部に発電部10と、燃料タンク20と、回路基板30とを備える。また、筐体100は、かまぼこ形にラウンドした表面および側面に多数の通気孔101が設けられる。発電部10は、外気が触れる必要のあるカソード面を上ケース側に向け、アノード面を燃料タンク20側に向ける。これにより、カソード面は、通気孔101を通じて、空気(酸素や二酸化炭素)を取り込むとともに、水蒸気や排ガスを外部に排出する。通気孔101を有する面がかまぼこ形にラウンドしているため、電子機器の底面に設けられても、机との間に必ず隙間が空き、カソード面が必ず外気に触れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯型電子機器に用いられる携帯型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯型電子機器向けの電源として、DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)などの燃料電池の開発が進められている。特に発電効率の向上が1つの課題となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、DMFCは、周囲の空気と、内部に蓄えたメタノールとの化学反応により電力を得るメカニズムであるため、ユニットのカソード面が確実に外気に触れる必要がある。しかしながら、ノート型パーソナルコンピュータをはじめとする携帯型の電子機器にあっては、筐体の意匠などの都合もあり、電池は筐体の底部に備えられることが多く、外気に触れにくい配置になってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2002−313402公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の携帯型燃料電池では、電子機器の底部に設けた場合、通気性の低下から発電効率が低下するという問題があった。
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、適用する電子機器の意匠の自由度を損ねることなく、高い発電性能を有する携帯型燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明は、燃料と空気を反応させて起電力を発生させてその電力を出力する携帯型燃料電池において、曲面部分を有し、その曲面部分に通気孔を設けた筐体と、通気孔を設けた曲面部分にカソード面を対向させて筐体内に搭載され、起電力を発生する発電手段とを具備して構成するようにした。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように、この発明では、筐体の曲面部分に通気孔を設け、この面に発電手段のカソード面を対向させて発電手段を筐体内に搭載するようにしている。
したがって、この発明によれば、上記曲面部分が電子機器の下部になっても、カソード面が通気孔を通じて外気と触れることができるので、高い発電性能を発揮できるとともに、電子機器の下部で利用することもできるので、適用する電子機器の意匠の自由度を損ねることのない携帯型燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる携帯型燃料電池の構成を示すものである。この携帯型燃料電池は、かまぼこ形の筐体100を有し、内部に発電部10と、燃料タンク20と、回路基板30とを備えている。また筐体100は、図2に示すように、かまぼこ形にラウンドした表面および側面に多数の通気孔101が設けられた上ケース102と、これと対を為して、発電部10、燃料タンク20および回路基板30を収納する下ケース103とからなる。
【0008】
発電部10は、燃料タンク20に蓄えられるメタノールを取り込み、内部に備えるセルで、上記メタノールと取り込んだ空気とを反応させ、起電力を得る。この起電力は、回路基板30に出力される。回路基板30は、上記起電力を整流し、所定の電圧の電力をコネクタ31を通じて外部に出力する。なお、下ケース103には、コネクタ31を外部に露出させるためのコネクタ口104が設けてある。
【0009】
下ケース103内には、その底面に燃料タンク20と、回路基板30が並べて配置される。そしてこれらの上に発電部10が載置される。回路基板30の少なくとも四隅には、スペーサ32が設けられ、回路基板30とスペーサ32を合わせた外形が燃料タンク20の厚みと同じになるようになっており、これにより、下ケースを水平面上においた場合に、燃料タンク20およびスペーサ32を介した回路基板30上に発電部10を載置した発電部10が水平になる。
【0010】
また発電部10は、外気が触れる必要のあるカソード面11を上ケース102側に向け、アノード面12を燃料タンク20側に向ける。これにより、カソード面11は、通気孔101を通じて、空気(酸素や二酸化炭素)を取り込むとともに、水蒸気や排ガスを外部に排出する。
【0011】
図3に、上記携帯型燃料電池を電子機器に搭載した例を示す。この図に示す電子機器は、ノート型パーソナルコンピュータをイメージしたものであって、本体の底面の端部に収納されている。上記携帯型燃料電池は、通気孔101を有する面がかまぼこ形にラウンドしているため、電子機器の底面に設けられても、机の天板などとの間に必ず隙間が空き、カソード面11が必ず外気に触れることができる。また図1に示すように、側面にも通気孔101が設けられているので、こちらからも外気に触れることができる。また電子機器の底部に搭載することができるので、電子機器の意匠の自由度を損なうことがない。
【0012】
次に、この発明の第2の実施形態に係わる携帯型燃料電池について説明する。図4にその構成を示す。第2の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図4に示すような筐体120を備える。この筐体120は、図1に示した筐体100がかまぼこ形の上ケース102を備えていたのに対して、平面形状となっており、その面に通気孔101が多数設けられている。また通気孔101が設けられた面には、脚105が設けられている。この脚105は、上ケース102に別個に取り付けたものでもよく、また上ケース102と一体成形されたものであってもよい。
【0013】
このような構成とすることで、第2の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図5に示すように机上に置かれた場合に、脚105によって通気孔101が設けられた面と机との間に隙間が空き、通気孔101を通じてカソード面11が必ず外気に触れることができる。この形状の携帯型燃料電池も、図3に示すように電子機器の底部に搭載することができ、電子機器の意匠の自由度を損なうことがない。
【0014】
次に、この発明の第3の実施形態に係わる携帯型燃料電池について説明する。図6にその構成を示す。第3の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図6に示すような筐体130を備える。この筐体130は、図1に示した筐体100がかまぼこ形に突出する上ケース102を備えていたのに対して、中央部が凹み四隅が隆起した形状となっており、その面に通気孔101が多数設けられている。
【0015】
このような構成とすることで、第3の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図7に示すように机上に置かれた場合に、隆起した四隅が脚となって通気孔101が設けられた面と机との間に隙間が空き、通気孔101を通じてカソード面11が必ず外気に触れることができる。この形状の携帯型燃料電池も、図3に示すように電子機器の底部に搭載することができ、電子機器の意匠の自由度を損なうことがない。
【0016】
次に、この発明の第4の実施形態に係わる携帯型燃料電池について説明する。図8にその構成を示す。第4の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図8に示すような筐体140を備える。この筐体140は、図1に示した筐体100が1列のかまぼこ形の上ケース102を備えていたのに対して、2列にかまぼこ形に隆起した形状となっており、その面に通気孔101が多数設けられている。
【0017】
このような構成とすることで、第4の実施形態に係わる携帯型燃料電池は、図9に示すように机上に置かれた場合に、かまぼこ形の形状であることより通気孔101が設けられた面と机との間に隙間が空き、通気孔101を通じてカソード面11が必ず外気に触れることができる。この形状の携帯型燃料電池も、図3に示すように電子機器の底部に搭載することができ、電子機器の意匠の自由度を損なうことがない。
【0018】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0019】
その一例として例えば、上記実施の形態では、発電部10のカソード面11が対向する筐体に通気孔101を設けるようにした。すなわち、通気孔101を設けたスリット面を1枚としたが、図10の断面図に示すように、2枚のスリット面を適当な間隙を設けて配置するようにしてもよい。またこの場合、2枚のスリット面にそれぞれ設けられた通気孔101が発電部10方向に並ばないようにする。これにより、通気孔101を通じて内部に異物が侵入しにくくなり、また異物が発電部10に直接到達することを防止できる。
【0020】
また上記実施の形態では、筐体の通気孔を設けた曲面部分は、1列または2列のかまぼこ形としたが、これに限定されるものではなく、波状の曲面や不規則な曲面であってもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係わる携帯型燃料電池の第1の実施の形態の構成を示す図。
【図2】図1に示した携帯型燃料電池の内部の構成を示す図。
【図3】図1に示した携帯型燃料電池を電子機器に搭載させた状態を示す図。
【図4】この発明に係わる携帯型燃料電池の第2の実施の形態の構成を示す図。
【図5】図4に示した携帯型燃料電池の断面を示す図。
【図6】この発明に係わる携帯型燃料電池の第3の実施の形態の構成を示す図。
【図7】図6に示した携帯型燃料電池の断面を示す図。
【図8】この発明に係わる携帯型燃料電池の第4の実施の形態の構成を示す図。
【図9】図7に示した携帯型燃料電池の断面を示す図。
【図10】スリット面を2層にした場合の断面構造を示す図。
【符号の説明】
【0022】
10…発電部、11…カソード面、12…アノード面、20…燃料タンク、30…回路基板、31…コネクタ、32…スペーサ、100…筐体、101…通気孔、102…上ケース、103…下ケース、104…コネクタ口、105…脚、120…筐体、130…筐体、140…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気を反応させて起電力を発生させてその電力を出力する携帯型燃料電池において、
曲面部分を有し、その曲面部分に通気孔を設けた筐体と、
前記通気孔を設けた曲面部分にカソード面を対向させて前記筐体内に搭載され、前記起電力を発生する発電手段とを具備することを特徴とする携帯型燃料電池。
【請求項2】
前記筐体は、前記曲面部分を凸面で形成したことを特徴とする請求項1に記載の携帯型燃料電池。
【請求項3】
前記筐体は、前記曲面部分をかまぼこ形の凸面で形成したことを特徴とする請求項2に記載の携帯型燃料電池。
【請求項4】
前記筐体は、前記曲面部分を複数のかまぼこ形の凸面で形成したことを特徴とする請求項2に記載の携帯型燃料電池。
【請求項5】
前記筐体は、前記曲面部分を凹面で形成したことを特徴とする請求項1に記載の携帯型燃料電池。
【請求項6】
燃料と空気を反応させて起電力を発生させてその電力を出力する携帯型燃料電池において、
平面部分を有し、その平面部分に通気孔を設けるとともに、部分的に隆起した脚を設けた筐体と、
前記通気孔を設けた平面部分にカソード面を対向させて前記筐体内に搭載され、前記起電力を発生する発電手段とを具備することを特徴とする携帯型燃料電池。
【請求項7】
さらに、前記通気孔を設けた面と前記カソード面との間に、通気孔を設けた面部材を間隙を設けて備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の携帯型燃料電池。
【請求項8】
前記面部材の通気孔を設けていない面を、前記筐体の通気孔と前記カソード面との間に配置したことを特徴とする請求項7に記載の携帯型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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