説明

携帯型電気治療装置

本発明は、特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する電気治療装置について開示するものである。この装置は、少なくとも1つのディジタルCnp波形を保存するメモリと、対象に印加するべく少なくとも1つのディジタルCnp波形をアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、を備える。メモリと通信するプロセッサが、オペレータの入力に応答して機能し、少なくとも1つのディジタルCnp波形をディジタル/アナログコンバータに直接出力することよってプロセッサをバイパスするようにメモリを調節する。この電気治療装置は、様々な臨床上における生理的、神経的、および行動的な状態を変更する対象の電気治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気治療に関し、特に、脊椎動物及び無脊椎動物の様々な臨床上における生理的、神経的、および行動的状態を変化させるのに使用される特別に設計された低周波数のパルス化磁場を生成する携帯型電気治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な研究から、磁気刺激によって、動物の行動的、細胞的、および生理的機能に影響を付与可能であることが明らかになっている。弱い磁場は、細胞のイオン流束における変化から、動物の順応および学習能力の改変、さらには、人間における治療行為にまで及ぶ様々な生物学的効果を有している。
【0003】
組織に対する低周波数磁場の照射効果のメカニズムを説明する理論には、いつかのものが存在している。例えば、低周波数磁場の照射効果を電流の誘発によるものであるとする理論が存在している。また、弱い磁場が、組織内の磁鉄鉱粒子によって検出され、この検出により、生理的な効果がもたらされるとする理論も存在している。ただし、この磁鉄鉱に基づいたメカニズムは、広範に支持されてはいない(すなわち、「Bioelectromagnetics」(17巻、123〜130頁、1996年)において、Prato,F.S.、Kavaliers,M.、およびCarson,J.L.L.は、「磁場がカタツムリ(Cepaea nemoralis:モリノオウシュウマイマイ)にもたらす行動的な特徴は、磁鉄鉱や誘発電流によるものではないであろう」と述べている)。
【0004】
極めて低い周波数(Extremely Low Frequency:ELF)の磁場は、組織内において、ほとんど減衰しない物理的因子であり、このため、その検出が可能であると共に、その検出を生理的プロセスに結合可能であれば、これを使用することによって、内生的プロセスを変化させることが可能である。ターゲットである特定の生理的プロセスを磁場を使用して変化させ、これにより、磁場を使用して様々な神経的および生理的な状態および行動を治療/改変できるように、磁場を時変信号として設計可能であることが既に提示されている。すなわち、Thomas他に付与された米国特許第6,234,953号明細書には、このような低周波数の磁気パルスを使用して生理的、神経的、および行動的疾患を治療する方法が開示されており、この内容は、本引用によって、本明細書に包含される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波を生成して対象を刺激する装置についても周知である。例えば、Koren他に付与された米国特許第6,312,376号明細書には、信号生成器とセレクタとを含む電磁波生成装置が開示されている。セレクタは、チャネルセレクト入力に応答し、選択されたチャネル上に、信号生成器のプロセッサによって生成された数学的に導出された波形を印加する。そして、この生成波形が、電磁装置に印加され、この結果、この電磁装置を装着している対象に対して、生成された電磁波形が照射される。なお、この装置は満足できるものではあるが、さらなる改善が望ましい。
【0006】
Edwards他によるPCT特許出願公開第96/11723号(WO 96/11723)明細書には、方形波形の様々なシーケンスの実装を実現するべく、パルス幅、持続時間、デューティサイクルおよび周波数、実行順序、変更テーブル、ならびに様々なカウンタなどの波形パラメータを保存する電磁治療装置が開示されている。動作の際には、マイクロプロセッサが、これらの動作パラメータをインポートし、対応するディジタル値のシーケンスを生成する。そして、集合的に方形波形を構成するこれらのディジタル値が、波形生成器によって電流に変換された後に誘導子に印加されることにより、磁場が生成される。このEdwards他による装置においては、それぞれのディジタル値をリアルタイムに生成するべく、マイクロプロセッサによる複数の命令の実行を必要としている。従って、これを実行する際に、マイクロプロセッサは、生成するディジタル値ごとに、いくつかのサイクルにわたって占有されることになり、この結果、これらの値を生成し得る周波数の観点において、マイクロプロセッサは制限されることになる。従って、このEdwardsの装置は、この設計のために、本質的に、そのマイクロプロセッサのクロック速度をはるかに下回る周波数を有する波形の生成に制限されており、この制限を克服するために、格段に高速の(従って、高価な)マイクロプロセッサを必要としている。また、このEdwardsの装置の場合には、変更テーブルに反映されている特定のパラメータ値にセッションカウンタが到達した後にのみ、波形特性の変化を再計算している。従って、この装置の場合には、この間における方形波形の生成に制限されており、絶えずカウンタと変更テーブルを比較することにサイクルが消費され、結果的に生成される波形の周波数が、さらに制限されることになる。
【0007】
従って、脊椎動物及び無脊椎動物の様々な生理的、神経的、および行動的な状態を変更するのに使用される特定の低周波数のパルス化磁場を生成する新しい携帯型電気治療装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する電気治療装置が提供され、この装置は、
少なくとも1つのディジタルCnp波形を保存するメモリと、
対象に印加するべく、少なくとも1つのディジタル波形をアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、
メモリと通信状態にあるプロセッサであって、オペレータの入力に応答して機能し、少なくとも1つのディジタルCnp波形をディジタル/アナログコンバータに直接出力することによってプロセッサをバイパスするようにメモリを調節するプロセッサと、
を備える。
【0009】
本発明の別の態様によれば、特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する携帯型電気治療装置が提供され、この装置は、
小型のハウジングを含むコントローラであって、ハウジングは、その上部にオペレータの制御手段とインタフェースを具備し、その内部に処理回路を収容しており、処理回路は、複数のディジタルCnp波形を保存するメモリと、対象に印加するべく、ディジタルCnp波形の中の選択された1つをアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、メモリと通信状態にあるプロセッサであって、オペレータの制御手段を介して入力された命令に応答して機能し、ディジタルCnp波形の中の選択された1つをディジタル/アナログコンバータに直接出力することによってプロセッサをバイパスするようにメモリを調節するプロセッサと、を含む、コントローラと、
このコントローラに接続されたコイルの少なくとも1つの組であって、これらのコイルは、対象に装着され、アナログCnp波形に応答して機能することによってCnp波形を対象に印加する、コイルの少なくとも1つの組と、
を備える。
【0010】
好ましくは、メモリは、インタフェースを介してコントローラに接続されたコンピュータによって遠隔地からプログラム可能である。また、好ましくは、プロセッサは、ディジタル/アナログコンバータに対する選択されたディジタルCnp波形の出力を制御するのに使用される動作パラメータを保存しており、プロセッサも、遠隔地からプログラム可能である。
【0011】
好ましくは、処理回路は、コイルへの出力に先立って、アナログCnp波形を増幅するべくディジタル/アナログコンバータに接続された増幅器をさらに含んでいる。一形態においては、コイルの組は、ヘッドコイル(Head Coil)の組を含んでいる。そして、この場合には、ディジタルCnp波形は、これらのヘッドコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、浅いものから深いものまでの脳刺激が提供されるように、構成されている。別の形態においては、コイルの組は、ラップコイル(Wrap Coil)の組を含んでいる。そして、この場合には、ディジタルCnp波形は、これらのラップコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、局所化された深い組織への照射が提供されるように、構成されている。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する携帯型電気治療装置が提供され、この装置は、
小型のハウジングを含むコントローラであって、ハウジングは、その上部にユーザの制御手段とインタフェースを具備し、その内部に処理回路を収容しており、処理回路は、複数のディジタルCnp波形を保存するメモリと、対象に印加するべく、ディジタルCnp波形の中の選択された1つをアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、メモリと通信するプロセッサであって、オペレータの制御手段を介して入力された命令に応答して機能し、ディジタルCnp波形の中の選択された1つをディジタル/アナログコンバータに直接出力することによってプロセッサをバイパスするようにメモリを調節するプロセッサと、を含むコントローラと、
コントローラに接続されたコイルであって、対象によって装着され、アナログCnp波形に応答して機能することによってCnp波形を対象に印加するコイルと、
を備える。従って、本発明によれば、低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を対象に供給する携帯型の電気治療装置が提供される。従来、低周波数のパルス化磁場を生成するには、コンピュータに接続され、熟練した技術者による操作を要する、高価であって、大きく、かつ、重量のある装置を使用する必要があった。本発明による装置によれば、別途のコンピュータに接続することなしに、容易に操作可能な携帯型の動作が提供され、この装置は、技術者でない人々も使用可能である。
【0013】
また、本発明によれば、メモリ内に保存されているディジタルCnp波形が、プロセッサの制御下において、プロセッサを通じることなしに、ディジタル/アナログコンバータに直接伝達されているため、高速に、かつ、優れた分解能で、アナログCnp波形を生成することができるという利点も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照し、さらに詳しく説明することとする。
【0015】
まず、図1を参照すれば、本発明による特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する携帯型電気治療装置の図が示されており、この装置には、総体として参照符号10が付与されている。図示のごとく、この携帯型電気治療装置10は、マイクロプロセッサに基づいたコントローラ12と、このコントローラに接続可能な複数のコイルと、を含んでいる。この実施例においては、これらのコイルには、ヘッドコイルのペア14と、ラップコイルのペア16と、が含まれている。ただし、ラップコイルについては、図示を容易にするべく、1つのみが示されている。後述するように、ヘッドコイル14によれば、この携帯型電気治療装置によって生成されるCnp波形を対象の脳組織に対して印加することができる。一方、ラップコイル16によれば、この携帯型電気治療装置によって生成されるCnp波形を対象のその他の領域に印加し、これにより、組織を刺激することができる。これらのラップコイル16は、対象の組織に対するCnp波形の印加を円滑に実行するべく、対象の身体上にラップコイルを正しく配置するために対象に装着されるホルダ内に収容されている。この図には、対象の膝に隣接してラップコイル16を配置する膝ラップコイルホルダ18が、例示を目的として示されている。なお、以上においては、ヘッドコイルとしてコイルのペアを図示し、かつ、複数のラップコイルについて説明しているが、当業者であれば、これらの代わりに、1つのコイルを両方の態様で使用することも可能であることを理解するであろう。
【0016】
コントローラ12には、出力ジャック32を具備する小型の携帯型ハウジング30が含まれており、この出力ジャックに、ヘッドコイル14またはラップコイル16のプラグを挿入してコントローラ12を有効にし、これらのコイルを駆動する。また、ハウジング30には、RS−232シリアルインタフェース34も含まれており、コントローラ12は、このインタフェースによって、リモートコンピュータ(図示されてはいない)と接続可能である。後述するように、このハウジング30上には、制御手段とインジケータとが提供されており、オペレータは、これらにより、所望の方式で電気治療装置10を操作することができる。また、電源コード40が、ハウジング30から延長しており、これによって、従来の110VのAC電源からコントローラ12に電源を供給可能である。
【0017】
図2および3は、ハウジング30内の回路50を示している。図2に示されているように、この回路は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力(I/O)メモリ、フラッシュプログラムメモリ、およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)を有する中央処理装置(CPU)52を含んでいる。そして、このCPU52は、シリアルインタフェース34、制御手段およびインジケータ、ならびにシリアルEEPROMのペア54aおよび54bと通信している。また、高分解能のディジタル/アナログコンバータ(DAC)56が、EEPROM54aおよび54b、ならびに位相および利得制御手段に応答して機能するデュアルチャネル高電流増幅器58と通信している。そして、この増幅器58は、アナログ出力をジャック32(従って、コイル)に供給している。また、ヒューズを有する電源62が、AC電源から入力電力を取得し、適切なDC電力を回路50に供給している。
【0018】
次に、図3を参照すれば、回路50の詳細が示されている。電源62は、従来タイプのものであり、全波整流器62aと、一連の電圧調整器62b、62c、および62dとがそれぞれ含まれている。これらの電圧調整器は、回路50に電力を供給するのに必要なDC電圧を供給している。
【0019】
EEPROM54aおよび54bは、RS232コンバータ54を介して、シリアルインタフェース34に接続されている。それぞれのEEPROM54aおよび54bは、異なるディジタルCnp波形テーブルを保存している。なお、これらのディジタルCnp波形テーブルは、リモートコンピュータから、シリアルインタフェース34を介してEEPROM54aおよび54bに事前に読み込まれている。これらのディジタルCnp波形テーブルは、高分解能のディジタル/アナログ変換を使用してアナログCnp波形にアセンブルされる正負の10進値を、その特徴としている。なお、これらのディジタルCnp波形テーブルデータは、この携帯型電気治療装置10が、Thomas他に付与された米国特許第6,234,953号明細書に記述されているものに類似したCnp波形を生成するように、選択されており、この明細書の内容は、本引用により、本明細書に包含される。具体的には、このディジタルCnp波形テーブルデータは、結果的に生成されるアナログCnp波形が、ヘッドコイル14が使用された際には、浅いものから深いものまでの脳刺激を提供すると共に、ラップコイル16が使用された際には、局所化された深い組織への照射を提供するように、選択されている。
【0020】
増幅器58は、チャネルのペアを含んでおり、このそれぞれのチャネルは、2つの増幅段を具備している。そして、それぞれの増幅段は、入力増幅器72a、72bと、出力増幅器72c、72dとを含んでいる。この増幅器58は、コイルを駆動するのに十分な電流を供給し、8cm(コイル間においては、16cm)において、ピーク値が100マイクロテスラの磁束密度を具備するCnp波形を供給するのに十分な磁場密度を提供している。そして、この増幅器58のデュアルチャネルにより、複数のコイル構成の同位の(または、異相の)動作を可能にしている。
【0021】
ハウジング30上の制御手段は、電気カード40に隣接するハウジング30の一端のパネル上に、電源オン/オフスイッチ70を含んでいる。そして、プッシュボタン36が、インジケータ38aおよび38bに隣接するハウジング30の反対側の端部のパネル上に配置されている。オペレータは、このプッシュボタンスイッチ36により、電気治療装置10から出力する所望のCnp波形を選択したり、後述するように、ディジタルCnp波形テーブルのダウンロードを起動することができる。そして、このプッシュボタンスイッチ36に隣接する端部パネル上には、位相スイッチ72および利得制御スイッチ74も提供されている。位相スイッチ72により、増幅器58の出力チャネルの1つの極性を反転させることができる。一方、利得制御スイッチ74により、5〜1の範囲で増幅器58の利得を制御する。
【0022】
CPU52内のEEPROMは、ポイント数、潜伏期(Latency period)、および不応期(Refractory period)などのディジタルCnp波形のいくつかの動作パラメータを保存している。ポイント数とは、出力アナログCnp波形を生成するのに使用されるディジタルCnp波形テーブル内のポイントの数を指定することによって、携帯型電気治療装置10によって生成されるCnp波形のサイズを決定するものである。潜伏期とは、連続的なポイント間における持続時間を規定するものであり、不応期とは、反復するCnp波形間における時間を規定するものである。これらのディジタルCnp波形の動作パラメータは、シリアルインタフェース34とRS232コンバータ54とを介して、リモートコンピュータからCPU52のEEPROMにダウンロードされる。
【0023】
次に、図1〜4を参照し、携帯型電気治療装置10の動作について説明することとする。なお、ここでは、ディジタルCnp波形テーブルと動作パラメータが、既にEEPROMに読み込み済みであり、対象を刺激するために使用するコイルが、対象の適切な場所に装着されているものと仮定している。まず、コントローラ12の電源を投入すると、CPU52は、その変数、ポインタ、およびレジスタを初期化し(ステップ100)、次いで、シリアルインタフェース34とDAC56とを初期化する(ステップ102)。そして、オペレータが、スイッチ36を押下することによって、Cnp波形を生成するべくコントローラ12を調節すると(ステップ104)、CPU52は、Cnp波形を生成するのに使用するEEPROM54a、54bを選択する(ステップ106および108)。また、CPU52は、増幅器80a、80bを介して、選択されたEEPROMと関連付けられているインジケータ38a、38bを点灯し、選択されたディジタルCnp波形テーブルに関する視覚的なフィードバックをオペレータに提供する。次いで、CPU52は、そのEEPROM内に保存されているディジタルCnp波形の動作パラメータを読み込む(ステップ110)。これに続いて、CPU52は、EEPROM54a、54bを調節して、ディジタルCnp波形テーブルデータがCPU52を通過することのないように、ディジタルCnp波形テーブルをDAC56に転送する。すると、DAC56が、このディジタルCnp波形テーブルを、増幅器58に印加するアナログ信号(すなわち、Cnp波形)に変換する。そして、増幅器58が、このDACの出力を増幅し、出力ジャック34を介して、出力アナログCnp波形をコイルに供給する(ステップ112)。このCnp波形生成プロセスは、不応期パラメータによって規定されているように継続される。そして、このプロセスにおいて、オペレータがスイッチ36を再度押下すると、CPU52は、内部に保存されているディジタルCnp波形テーブルを出力するようにもう一方のEEPROMを調節し、前述の段階が、再実行されることになる(ステップ114および116)。なお、有利なことに、このスイッチ36は、波形の終了点まで待つのではなく、スイッチ36が押下された際に即座に応答できるように、割り込みラインを介してCPU52に接続されている。
【0024】
以上のことからわかるように、Cnp波形の生成の際に、ディジタルCnp波形テーブルが、CPU52のタイミング制御下において、EEPROM54a、54bからDAC56に直接転送され、CPUを通過していないため、多くのCPU命令サイクルを省くことができる。これは、シリアルディジタルCnp波形テーブルデータをCPU内に読み取った後に、このシリアルディジタルCnp波形テーブルデータをDAC56に書き込む必要性が回避されているという事実によるものである。なお、当然のことながら、CPU52は、Cnp波形を生成していない期間においては、EEPROM54a、54bおよびDAC56に対して読み取りおよび書き込み動作を行う能力を具備している。このデータ転送方法によれば、速度が向上し、この結果、出力Cnp波形の時間分解能が微細なものになる。
【0025】
ステップ104において、オペレータが、スイッチ36を操作して、リモートコンピュータからディジタルCnp波形テーブルデータを受信するように、コントローラ12を調節した場合には、CPU52は、EEPROM54aおよび54bならびにシリアルインタフェースを初期化し、リモートコンピュータからのディジタルCnp波形テーブルの入力を待つことになる(ステップ120および122)。そして、リモートコンピュータから上書き命令を受信すると、CPU52は、選択されたEEPROM54a、4bから適切なディジタルCnp波形テーブルを消去し、リモートコンピュータに対して通知する(ステップ124および126)。そして、CPUは、別のディジタルCnp波形テーブルの受信を待つことになる(ステップ128)。そして、ディジタルCnp波形テーブルをリモートコンピュータから受信したら、CPUは、選択されたEEPROMに、そのディジタルCnp波形テーブルを書き込む(ステップ130)。
【0026】
オペレータが、更新済みのディジタルCnp波形動作パラメータを受信するように、コントローラ12を調節した場合には、CPU52は、ディジタルCnp波形動作パラメータの入力について、リモートコンピュータを監視する。なお、このディジタルCnp波形動作パラメータの入力は、文字ストリングの形態であって、CPU52内にシリアルに読み込まれ、ストリングバッファ内に保存される。そして、ディジタルCnp波形の動作パラメータデータのすべての受信が完了したら、CPU52は、その新しいディジタルCnp波形動作パラメータを自身のEEPROM内に保存する。
【0027】
なお、コントローラ12には、AC電源から電力を供給するものとして示しているが、当業者であれば、図2および3に示されている充電可能な電源、ACアダプタ、またはその他の電源をコントローラに装着することも可能であることを理解するであろう。例えば、電池を採用したコントローラ12の場合には、消耗した(または、使用不能な)電池に起因するEEPROMパラメータの破壊を究極的に防止するべく、電池電力検出回路、ソフトウェア、およびユーザに対して電力の状態を通知するインジケータを内蔵することが有用であろう。また、コントローラ12は、必ずしも遠隔地からプログラム可能である必要はない。この場合には、EEPROM54aおよび54bは、関係するディジタルCnp波形テーブルによって事前にプログラムされることになり、シリアルインタフェース34は、不要である。
【0028】
当業者であれば、装置の動作情報を表示するべく、LCDモジュールなどの英数字ディスプレイをコントローラ12に接続することを想起するであろう。この結果、このようなディスプレイを使用して、有効なパターンパラメータ、パターンの名称、及びその不応期のいずれかを(例えば、ブリンクする「*」などを使用することによって)ユーザに表示することができる。また、このディスプレイによってパターンインジケータLED38aおよび38bを置き換えることにより、不必要な電力消費を低減したり、電池の電力状態について通知することも可能である。
【0029】
また、必要に応じて、増幅器58の出力をバランスさせるバランス制御手段を回路50に提供することも可能である。このようなバランス制御手段は、中央リードが接地された2つの出力増幅器72c、72dの入力に挿入された可変ポテンショメータの形態であってよく、この結果、このポテンショメータを調節することにより、一方の出力増幅器の利得が低減し、もう一方の出力増幅器の利得が増大することになる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、当業者であれば、添付の請求項によって定義されている本発明の精神と範囲を逸脱することなしに、変形や変更を加えることが可能であることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による携帯型電気治療装置の図である。
【図2】図1の携帯型電気治療装置のブロック図である。
【図3A】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図3B】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図3C】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図3D】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図3E】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図3F】図1の携帯型電気治療装置の概略図である。
【図4】図1の携帯型電気治療装置によって実行される段階を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する電気治療装置であって、
少なくとも1つのディジタルCnp波形を保存するメモリと、
対象に印加するべく、前記少なくとも1つのディジタルCnp波形をアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、
前記メモリと通信するプロセッサであって、オペレータの入力に応答して機能し、前記少なくとも1つのディジタルCnp波形を前記ディジタル/アナログコンバータに直接出力することによって前記プロセッサをバイパスするように前記メモリを調節するプロセッサと、
を備える電気治療装置。
【請求項2】
前記メモリは、複数のディジタルCnp波形を保存し、前記プロセッサは、オペレータの入力に応答して機能し、前記ディジタルCnp波形の中の選択された1つを出力するように前記メモリを調節する請求項1に記載の電気治療装置。
【請求項3】
前記アナログCnp波形を増幅するべく前記ディジタル/アナログコンバータに接続された増幅器と、前記アナログCnp波形を前記対象に印加するべく前記増幅器に接続されたコイルのペアと、を更に有する請求項2に記載の電気治療装置。
【請求項4】
前記コイルのペアは、ヘッドコイルの組を含み、前記ディジタルCnp波形は、前記ヘッドコイルが対象に装着された際に、前記アナログCnp波形によって、浅いものから深いものまでの脳刺激が提供されるように、構成されている請求項3に記載の電気治療装置。
【請求項5】
前記コイルのペアは、ラップコイルの組を含み、前記ディジタルCnp波形は、前記ラップコイルが対象に装着された際に、前記アナログCnp波形によって、局所化された深い組織への照射が提供されるように、構成されている請求項3に記載の電気治療装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記ディジタル/アナログコンバータに対する前記選択されたディジタルCnp波形の出力を制御するのに使用される動作パラメータを保存する請求項3に記載の電気治療装置。
【請求項7】
前記動作パラメータは、潜伏期と不応期の中の少なくとも1つを含んでいる請求項6に記載の電気治療装置。
【請求項8】
前記メモリは、遠隔地からプログラム可能である請求項6に記載の電気治療装置。
【請求項9】
前記動作パラメータは、遠隔地からプログラム可能である請求項8に記載の電気治療装置。
【請求項10】
特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する携帯型電気治療装置であって、
小型のハウジングを含むコントローラであって、前記ハウジングは、その上部にユーザの制御手段とインタフェースとを具備し、その内部に処理回路を収容しており、前記処理回路は、
複数のディジタルCnp波形を保存するメモリと、
対象に印加するべく、前記ディジタルCnp波形の中の選択された1つをアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、
前記メモリと通信するプロセッサであって、オペレータの制御手段を介して入力された命令に応答して機能し、前記ディジタルCnp波形の中の選択された1つを前記ディジタル/アナログコンバータに直接出力することによって前記プロセッサをバイパスするように前記メモリを調節するプロセッサと、
を含む、コントローラと、
前記コントローラに接続されたコイルの少なくとも1つの組であって、前記対象に装着され、前記アナログCnp波形に応答して機能することによって前記対象に前記Cnp波形を印加するコイルの少なくとも1つの組と、
を備える携帯型電気治療装置。
【請求項11】
前記メモリは、前記インタフェースを介して前記コントローラに接続されたコンピュータによって遠隔地からプログラム可能である請求項10に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記ディジタル/アナログコンバータに対する前記選択されたディジタルCnp波形の出力を制御するのに使用される動作パラメータを保存する請求項11に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記インタフェースを介して前記コントローラに接続されているコンピュータによって遠隔地からプログラム可能である請求項12に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項14】
前記コイルへの出力に先立って、前記アナログCnp波形を増幅するべく前記ディジタル/アナログコンバータに接続された増幅器をさらに備える請求項13に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項15】
前記コイルの組は、ヘッドコイルの組を含み、前記ディジタルCnp波形は、前記ヘッドコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、浅いものから深いものまでの脳刺激が提供されるように、構成されている請求項14に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項16】
前記コイルの組は、ラップコイルの組を含んでおり、前記ディジタルCnp波形は、前記ラップコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、局所化された深い組織への照射が提供されるように、構成されている請求項14に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項17】
前記動作パラメータは、潜伏期および不応期のうちの少なくとも1つを含んでいる請求項13に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項18】
特別に設計された低周波数のパルス化磁場(Cnp波形)を生成する携帯型電気治療装置であって、
小型のハウジングを含むコントローラであって、前記ハウジングは、その上部にユーザの制御手段とインタフェースとを具備し、その内部に処理回路を収容しており、前記処理回路は、
複数のディジタルCnp波形を保存するメモリと、
対象に印加するべく、前記ディジタルCnp波形の中の選択された1つをアナログCnp波形に変換するディジタル/アナログコンバータと、
前記メモリと通信するプロセッサであって、オペレータの制御手段を介して入力された命令に応答して機能し、前記ディジタルCnp波形の中の選択された1つを前記ディジタル/アナログコンバータに直接出力することによって前記プロセッサをバイパスするように前記メモリを調節するプロセッサと、
を含む、コントローラと、
前記コントローラに接続されたコイルであって、対象に装着され、前記アナログCnp波形に応答して機能することによって前記Cnp波形を前記対象に印加するコイルと、
を備える携帯型電気治療装置。
【請求項19】
前記メモリは、前記インタフェースを介して前記コントローラに接続されたコンピュータによって遠隔地からプログラム可能である請求項18に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記ディジタル/アナログコンバータに対する前記選択されたディジタルCnp波形の出力を制御するのに使用する動作パラメータを保存する請求項19に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記インタフェースを介して前記コントローラに接続されたコンピュータによって遠隔地からプログラム可能である請求項20に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項22】
前記コイルへの出力に先立って、前記アナログCnp波形を増幅するべく前記ディジタル/アナログコンバータに接続された増幅器をさらに備える請求項21に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項23】
第2のコイルをさらに備え、該第2のコイルは、ヘッドコイルであり、前記ディジタルCnp波形は、前記ヘッドコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、浅いものから深いものまでの脳刺激が提供されるように、構成されている請求項22に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項24】
第2のコイルをさらに備え、該第2のコイルは、ラップコイルであり、前記ディジタルCnp波形は、前記ラップコイルが対象に装着された際に、結果的に生成されるアナログCnp波形によって、局所化された深い組織への照射が提供されるように、構成されている請求項22に記載の携帯型電気治療装置。
【請求項25】
前記動作パラメータは、潜伏期および不応期のうちの少なくとも1つを含んでいる請求項21に記載の携帯型電気治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−507058(P2006−507058A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554108(P2004−554108)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001819
【国際公開番号】WO2004/047920
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505194284)フラレックス セラピューティクス インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】