説明

携帯式ラベル貼付け機

【課題】インキローラの芯材であるピンによって印版が損傷するのを防止できる携帯式ラベル貼付け機を提供する。
【解決手段】携帯式台紙無しラベル貼付け機は、退避部材62によって、インキローラが取り外されたピン66を印版64から退避させる。すなわち、退避部材62を操作レバー5に一体化させ、操作レバー5の操作開始位置において退避部材62をローラアーム60に押圧当接させることにより、ローラアーム60をコイルスプリング70の付勢力に抗して揺動させて、ピン66を印版64から退避させる。よって、携帯式台紙無しラベル貼付け機によれば、台紙無しラベル3の繰り出しテスト時等において、印版64がピン66によって損傷するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯式ラベル貼付け機に係り、特に携帯式ラベル貼付け機の印字装置に改良を施した携帯式ラベル貼付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1等に開示された携帯式ラベル貼付け機を用いて、各種商品やその他の被貼付け体にラベルを貼り付け、商品の価格やその他必要な情報を表示することが行われている。
【0003】
前記携帯式ラベル貼付け機の使用にあたっては、帯状のラベルをロール状に巻回した状態で、携帯式ラベル貼付け機に備えられたラベルホルダーなどのラベル保持部に装填して保持するとともに、このラベルホルダーからラベルを帯状に繰り出して、携帯式ラベル貼付け機内に挿通し、移送ないし印字可能な状態に装填している。
【0004】
携帯式ラベル貼付け機に装填するラベルとしては、帯状のラベル基材と、このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層と、ラベル基材の表面に設けた剥離剤層と、を有する一方、台紙を持たない台紙無しラベル(いわゆるノンセパ(登録商標)型のラベル)がある。台紙無しラベルは、台紙を持たないことから省資源にも寄与している。特許文献2には、台紙無しラベルを使用する携帯式ラベル貼付け機が開示されている。
【0005】
特許文献1、2等に開示された携帯式ラベル貼付け機は、特許文献3等に開示された印字装置を備えている。この印字装置は、携帯式ラベル貼付け機の操作レバーの先端に取り付けられた印字器と、この印字器のゴム製の印版にインキを塗布するインキローラとを有している。インキローラは、ローラアームの先端に回動自在に設けられ、ローラアームは、携帯式ラベル貼付け機本体を構成する側板に揺動自在に取り付けられている。また、ローラアームは、コイルスプリング等の付勢部材によって、印字器に向けて付勢されており、この付勢力によってインキローラが印版に押圧当接されている。
【0006】
上記の如く構成された印字装置によれば、操作レバーを操作すると、印字器がラベルに向けて移動され、印字器の印版がラベルに押し付けられてラベルに文字等の情報が印字される。また、印字器の前記移動動作に連動して、ローラアームが印字器の移動エリアから前記付勢部材の付勢力に抗して退避する。この退避動作中にインキローラが印版上を転動し、インキローラから印版にインキが塗布される。
ところで、このような携帯式ラベル貼付け機では、ローラアームからインキローラを取り外して、ラベルの繰り出しテストを実施したい場合がある。
【0007】
図12の如く、インキローラ112は、ローラアーム100の先端部に回動自在に取り付けられており、ローラアーム100の基端部に取り付けられているコイルスプリング104の付勢力によって印版108に当接されている。
図13の如く、ローラアーム100からインキローラ(不図示)を取り外すと、インキローラの回転軸である金属製のピン102が露出し、このピン102がコイルスプリング104の付勢力によって、印字器106の印版108に押圧当接される。この状態で、操作レバー110を操作してラベル(不図示)の繰り出しテストを実施すると、ピン102が印版108上を擦るように移動するので、ゴム製の印版108が損傷するという虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−274282号公報
【特許文献2】特開平8−133259号公報
【特許文献3】特開2011−173284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、インキローラの回転軸であるピンによって印版が損傷するのを防止できる携帯式ラベル貼付け機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、貼付け機本体と、前記貼付け機本体に回動自在に取り付けられた操作レバーと、前記操作レバーの回動操作によって動作する印字器と、前記操作レバーの回動操作によって前記印字器の印版にインキを塗布するインキローラと、前記インキローラを、ピンを介して回動自在に支持するとともに前記貼付け機本体に揺動自在に取り付けられたローラアームと、前記ローラアームを付勢して前記インキローラを前記印版に押し付ける付勢部材と、を有する携帯式ラベル貼付け機において、前記インキローラが取り外された前記ピンを、前記付勢部材の付勢力に抗して前記印版から退避させる退避部材を備えたことを特徴とする携帯式ラベル貼付け機を提供する。
【0011】
本発明によれば、インキローラが取り外されたピンを、退避部材によって印版から退避させたので、ラベルの繰り出しテスト時等において、印版がピンによって損傷するのを防止できる。
【0012】
本発明の前記退避部材は、前記操作レバーに備えられるとともに該操作レバーの操作開始位置において前記ローラアームに押圧当接され、該ローラアームを前記付勢部材の付勢力に抗して揺動させることにより、前記ピンを前記印版から退避させることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、退避部材を操作レバーに一体化させて、操作レバーの操作開始位置において退避部材をローラアームに押圧当接させることにより、ローラアームを付勢部材の付勢力に抗して揺動させて、ピンを印版から退避させる。これにより、簡単な構成でピンを印版から退避させることできる。
【0014】
本発明の前記印版に対する前記ピンの退避量は、該ピンに前記インキローラが装着された際に、該インキローラを前記印版に前記付勢部材の付勢力によって押し付けることが可能な量に設定されていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、印版から退避しているピンにインキローラが装着されると、インキローラは付勢部材の付勢力によって印版に押し付けられるので、携帯式ラベル貼付け機の通常動作(ラベル貼着動作)を問題無く行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インキローラの回転軸であるピンによって印版が損傷するのを防止できる携帯式ラベル貼付け機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の携帯式ラベル貼付け機の側面図
【図2】同、ラベルホルダー及びプラテンユニットを開放した状態の側面図
【図3】同、一方の側板を取り除いた状態の概略側面図
【図4】同、プラテンユニット及び台紙無しラベル分離装置の分解斜視図
【図5】同、プラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置、移送ローラ及び押付けエレメントの斜視図
【図6】同、台紙無しラベルを装填した状態のプラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置、移送ローラ及び押付けエレメントの斜視図
【図7】同、プラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置を開放した状態の斜視図
【図8】同、プラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置を開放した状態の縦断面図
【図9】同、台紙無しラベルを装填した状態のプラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置、移送ローラ、押付けエレメント及び移送用無端ベルトの、分離爪片部分における縦断面図
【図10】同、台紙無しラベルを装填した状態のプラテンユニットにおける台紙無しラベル分離装置、移送ローラ、押付けエレメント及び移送用無端ベルトの、逆転防止片部分における縦断面図
【図11】本発明の印字器、ローラアーム、及びインキローラの回転軸の位置関係を示した側面図
【図12】従来の印字器、ローラアーム、及びインキローラの位置関係を示した側面図
【図13】従来の印字器、ローラアーム、及びインキローラの回転軸の位置関係を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、インキローラが取り外されたピンを退避部材によって印版から退避させることにより、ラベルの繰り出しテスト時等において、印版がピンによって損傷するのを防止できる携帯式ラベル貼付け機を実現した。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を携帯式台紙無しラベル貼付け機1に適用した場合の実施例について図1ないし図11に基づいて説明する。なお、台紙を備えたラベルを使用する携帯式ラベル貼付け機にも本発明を適用できる。
【0020】
図1は、携帯式台紙無しラベル貼付け機1の側面図、図2は、同、ラベルホルダー4、及びプラテンユニット6を開放した状態の側面図、図3は、同、一方の側板2を取り除いた状態の概略側面図、図4は、プラテンユニット6及び台紙無しラベル分離装置9の分解斜視図である。
【0021】
携帯式台紙無しラベル貼付け機1は、貼付け機本体を構成する左右(紙面表裏)一対の側板2、台紙無しラベル3のラベルホルダー4、操作レバー5、プラテンユニット6、印字器7、貼付けローラ8、台紙無しラベル分離装置9、インキローラ48、及びローラアーム60(図11)を有する。
【0022】
図1の如く、左右一対の側板2には、操作者が握持するグリップ10が一体的に備えられる。また、このグリップ10の近傍には、操作レバー5が配置され、この操作レバー5は、図3のレバー軸11の周り回動自在に取り付けられることにより、グリップ10に対して近づく方向、及び離れる方向に動作される。
【0023】
操作レバー5は、コイルスプリング12などの付勢部材を介してグリップ10に接続され、コイルスプリング12の付勢力によって、グリップ10に対して離れる方向に付勢されている。
【0024】
操作者は、グリップ10及び操作レバー5を片手で握持し、コイルスプリング12の付勢力に抗して操作レバー5をグリップ10に向けて回動操作する。これにより、携帯式台紙無しラベル貼付け機1内のプラテンユニット6、及び図1の印字器7が駆動される。そして、操作レバー5の握持操作を解放することによって、携帯式台紙無しラベル貼付け機1の貼付けローラ8による図3の台紙無しラベル3の貼付け操作が行われる。
【0025】
帯状の台紙無しラベル3は、ロール状に巻回されてラベルホルダー4に保持されるとともに、操作レバー5の回動操作に連動するプラテンユニット6によって印字器7の方向に繰り出される。そして、台紙無しラベル3は、プラテンユニット6の先端部でプラテンユニット6から分離され、貼付けローラ8によって被貼付け体(図示せず)に貼り付けられる。台紙無しラベル3には、台紙無しラベル3の長手方向に直交する方向に所定ピッチで移送用スリット3Aが形成されている。この移送用スリット3Aは、プラテンユニット6を移送される際に、切断分離ユニット(図示せず)によって切断される。この切断動作によって、帯状の台紙無しラベル3から単葉のラベル片3Bが分離され、ラベル片3Bが前記被貼付け体に貼り付けられる。
【0026】
ラベルホルダー4は、側板2の上面に設けられたホルダー軸13の周りに側板2に対して開閉回動可能とした断面半円弧状のホルダーカバー14、ホルダーカバー14の内部に設けられたラベル保持軸15、及び側板2への固定用フック16を有し、ラベル保持軸15にロール状の台紙無しラベル3が装填される。
【0027】
プラテンユニット6は、ラベルホルダー4から帯状に繰り出された台紙無しラベル3を移送するものであり、プラテンフレーム17、移送ローラ18、及び押付けエレメント19を有している。また、移送ローラ18から移送されてきた台紙無しラベル3は、台紙無しラベル分離装置9によって移送ローラ18から分離される。
【0028】
プラテンフレーム17は、側板2に設けたプラテン開閉軸20の周りに回動可能に配置される。そして、プラテンユニット6は、台紙無しラベル3が移送不良、いわゆるジャムリを起こしたときや保守点検などのときに側板2に対しその全体が開閉されるようになっている。
【0029】
プラテンフレーム17は、駆動ギア21及び従動コロ22と、これら駆動ギア21及び従動コロ22の周りに掛け回した移送用無端ベルト23とを備えており、駆動ギア21が移送ローラ18のローラギア24に係合される。
【0030】
移送用無端ベルト23は、移送ローラ18によって移送されてくる台紙無しラベル3をさらに移送可能であって、その表面は、台紙無しラベル3の裏面(糊面)が接触されるため、非粘着性の物性を有するシリコーン、或いはフッ素系のゴム材から構成されるか、又は剥離剤などが塗布されている。また、このプラテンユニット17に組み込まれた移送用無端ベルト23は、印字器7による台紙無しラベル3への押印動作の受け台ともなるもので、その内側には印字器7に対向して受圧用プレート23A(図8)が配置されている。
【0031】
なお、プラテンフレーム17の先端側の左右には、図3の如く一対の係脱軸25が突出されている。この係脱軸25は、側板2に設けられた開閉用つまみ26に連動してつまみ軸27の周りに回動する開閉用係脱片28の係脱用凹部28Aに係脱される。ただし、つまみ軸27には任意のバネ材(図示せず)が設けられており、このバネ材によって開閉用係脱片28が係脱軸25に係合する方向に付勢されている。
すなわち、開閉用つまみ26は、係脱軸25に係脱する開閉用係脱片28を操作して、プラテンユニット6と開閉用係脱片28とを互いに係脱可能としている。
移送ローラ18は、プラテンフレーム17に設けられたローラ軸29の周りに移送方向に所定ピッチで回転可能に配置されている。
【0032】
操作レバー5のレバー軸11の下方部に延びる連結アーム30の連結軸31に、移送回動用爪32が往復動可能に取り付けられており、この移送回動用爪32が移送ローラ18におけるローラギア24の側面に放射状に設けられた複数個の移送用突起33にそれぞれに係脱される。
【0033】
なお、連結軸31には、連結ガイドプレート34が取り付けられており、連結ガイドプレート34の左右先端部の連結突起35が、プラテンフレーム17の底部におけるガイド溝36内に往復摺動可能に嵌め込まれ、操作レバー5の握持及びその解放に伴う連結軸31及び移送回動用爪32の往復作動を保証している。
【0034】
かくして、操作レバー5をグリップ10とともに握持及び解放することにより、連結アーム30、移送回動用爪32及びローラギア24などを介してローラ軸29の周りに移送ローラ18を所定ピッチだけ回転して台紙無しラベル3を移送可能とするとともに、移送ローラ18のローラギア24と駆動ギア21との連結係合により移送用無端ベルト23を回転させて台紙無しラベル3をその上面に移送する。
【0035】
さらに移送ローラ18は、その中央円周溝37の左右に所定ピッチで左右一対の移送用爪38が突出され、移送用爪38の外周側に左右一対の外周円周溝39が備えられている。この移送用爪38は台紙無しラベル3の移送用スリット3Aに係脱される。移送用爪38が、移送用スリット3Aに係合して移送ローラ18が所定量回動することにより、台紙無しラベルがラベル片3B毎に間欠移送される。
【0036】
また、操作レバー5は図3の如く、その先端側に二股状のヨーク部5Aを有し、このヨーク部5Aに図1の印字器7が取り付けられている。また、ヨーク部5Aの先端部には、図11に示すローラアーム60に当接される退避部材62が一体的に備えられている。なお、ローラアーム60及び退避部材62については後述する。
【0037】
図5は、プラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9、移送ローラ18及び押付けエレメント19の斜視図、図6は、台紙無しラベル3を装填した状態のプラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9、移送ローラ18及び押付けエレメント19の斜視図、図7は、プラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9を開放した状態の斜視図、図8は、プラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9を開放した状態の縦断面図である。
【0038】
押付けエレメント19は、移送ローラ18に台紙無しラベル3を押し付けるためのものであり、エレメントフレーム40と、上下左右二対のバックアップローラ41と、バックアップローラ41の間で中央に位置するバックアップリング42と、ねじりコイルバネ43及び左右一対の板バネ44と、を有する。
【0039】
ねじりコイルバネ43及び左右一対の板バネ44は、プラテンユニット6が開閉用係脱片28から離脱したときに、移送ローラ18と押付けエレメント19とを互いに離反させる付勢部材として機能し、押付けエレメント19から移送ローラ18を離反させ、その間に台紙無しラベル3を挿通可能とする間隙45(図3)を形成可能とする。
【0040】
ただし、プラテンフレーム17は、係脱軸25と開閉用係脱片28との係合により、ねじりコイルバネ43及び板バネ44の付勢力に抗して側板2に取り付けられる。
【0041】
なお、エレメントフレーム40は、プラテンフレーム17の外壁面に設けたエレメント軸46の周りにプラテンフレーム17に対して回動可能に連結されており、プラテンユニット6において押付けエレメント19に対してプラテンフレーム17を相対的に開閉可能としている。また、エレメントフレーム40は、バックアップローラ41及びバックアップリング42を取り付ける上下一対の回転軸47を有する。
【0042】
バックアップローラ41及びバックアップリング42は、台紙無しラベル3の裏面(糊面)が接触移送されるため、非粘着性の物性を有するシリコーン、或いはフッ素系のゴム材から構成されるか、剥離剤などが塗布されているもので、台紙無しラベル3を移送ローラ18側に押し付け可能である。
【0043】
また、バックアップローラ41及びバックアップリング42は、台紙無しラベル3の糊面に線接触するため、糊面との粘着力を極力小さくすることができるとともに、所定のバネ弾性を持った押付けが可能である。
【0044】
バックアップローラ41は、移送ローラ18の移送用爪38の外周部の外周円周溝39に接触回転するとともに、バックアップリング42が、移送ローラ18の移送用爪38の内周部の中央円周溝37に接触回転することにより、移送ローラ18と押付けエレメント19との間に台紙無しラベル3を挟持しつつ、また、移送用爪38が台紙無しラベル3の表面側からその移送用スリット3Aに係合し移送ローラ18の回転によって台紙無しラベル3を移送用無端ベルト23上に送り出す。
【0045】
ねじりコイルバネ43は、移送ローラ18と押付けエレメント19との間において、間隙45から側方にずれた位置に設けられたバネ取付け軸(図示せず)に取り付けられており、プラテンフレーム17(プラテンユニット6)全体を押付けエレメント19に対して常時開放方向(図3)に付勢する。
【0046】
板バネ44は、移送ローラ18とは反対側のエレメントフレーム40の背面に取り付けられており、操作レバー5のレバー軸11部分に当接して、ねじりコイルバネ43と協動して、プラテンフレーム17(プラテンユニット6)全体を押付けエレメント19に対して常時開放方向(図3)に付勢する。
【0047】
印字器7は、操作レバー5における二股状のヨーク部5Aの先端部側に取り付けられている。印字器7は、操作レバー5の回動操作によってプラテンユニット6に向けて移動され、その移動中に印字器7の印版64(図11)にインキローラ48(図1)からインキが塗布される。そして、プラテンユニット6の移送用無端ベルト23の上面に移送されてきた台紙無しラベル3(ラベル片3B)に、印版64が押し付けられることによって、ラベル片3Bに所定の情報が印字される。
【0048】
図11には、操作レバー5の操作開始位置において、インキローラ48(図1)を回転軸である金属製のピン66から取り外した図が示されている。ピン66は、ローラアーム60の一端に回動自在に取り付けられており、ローラアーム60の他端は軸68の周りに揺動自在に取り付けられている。また、軸69にはコイルスプリング(付勢部材)70が装着され、コイルスプリング70の付勢力によってローラアーム60は、図11において反時計周り方向に回動付勢されている。この付勢力によって、インキローラ48(図1)が印版64に押し付けられ、印版64にインキが塗布される。なお、図11では、ローラアーム60が退避部材62に押されて、時計周り方向に所定量回動されていることから、ピン66が印版64から退避した位置に配置されている。
【0049】
図2の如く貼付けローラ8は、側板2の先端下方部に位置し、プラテンユニット6における移送用無端ベルト23の先端部分で移送用無端ベルト23から剥離されたラベル片3Bを、携帯式台紙無しラベル貼付け機1全体の貼付け操作に伴って、貼付けローラ8によるラベル片3Bを被貼付け体に貼り付ける。
【0050】
すなわち、貼付けローラ8は、側板2の端部(図1中、左端下方端部)に位置するとともに、その円周部の一部が側板2の外部に露出しており、側板2の外部に排出するようにプラテンユニット6及びその移送用無端ベルト23を通って側板2の外部に移送されてきたラベル片3Bを、貼付けローラ8を被貼付け体に打ち付けるようにして回転させることにより、被貼付け体に貼り付け可能とする。
図4に示すように、台紙無しラベル分離装置9は、プラテンユニット6のプラテンフレーム17に回動可能に設けた分離爪エレメント49を有する。
【0051】
分離爪エレメント49は、移送ローラ18と移送用無端ベルト23との間に配置されるとともに、押付けエレメント19によって移送ローラ18に押し付けられていた台紙無しラベル3を移送ローラ18から確実に分離可能とし、移送ローラ18と移送用無端ベルト23との間において台紙無しラベル3を移送ローラ18から移送用無端ベルト23に移行させる。
【0052】
具体的に、分離爪エレメント49は、左右一対の回動アーム50及びその間の横断アーム51を有する爪エレメント本体52と、横断アーム51から移送ローラ18に向かって突出形成した左右一対の分離爪片53と、分離爪片53に対してほぼ直角方向に分離爪片53の間に形成した逆転防止片54と、回動アーム50の基部に弾性的に形成した爪エレメント係合片55と、を有する。
分離爪エレメント49は、プラテンユニット6のプラテンフレーム17においてこれをその周りに回動可能な回動突起56を回動アーム50の先端部に有する。
【0053】
すなわち、プラテンフレーム17におけるローラ軸29近傍には、回動用凹部57が形成され、この回動用凹部57に回動突起56が係合し、この回動突起56の周りにおいて、分離爪エレメント49が、移送ローラ18から台紙無しラベル3を分離可能な第1の姿勢(図5及び図6を参照)と、移送ローラ18から離脱し、移送ローラ18の周りにおける台紙無しラベル3の状態を確認可能な第2の姿勢(図7及び図8を参照)との間に、回動可能である。
【0054】
図9は、台紙無しラベル3を装填した状態のプラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9、移送ローラ18、押付けエレメント19及び移送用無端ベルト23の、分離爪片53部分における縦断面図、図10は、台紙無しラベル3を装填した状態のプラテンユニット6における台紙無しラベル分離装置9、移送ローラ18、押付けエレメント19及び移送用無端ベルト23の、逆転防止片54部分における縦断面図である。
【0055】
図10に示すように、逆転防止片54は、移送ローラ18の中央円周溝37に移送用爪38と同じ所定ピッチで形成した逆転防止凹部58それぞれに係脱可能である。
【0056】
爪エレメント係合片55は、プラテンフレーム17に形成した爪エレメント係脱孔部59に弾性的に係脱可能であって、分離爪エレメント49の上記第2の姿勢を解除可能にロックする。
【0057】
既述のように、移送ローラ18の移送用爪38を台紙無しラベル3の移送用スリット3Aに係脱可能としているとともに、分離爪エレメント49の分離爪片53は、移送ローラ18の外周円周溝39の部位、ないしは、外周円周溝39と押付けエレメント19におけるバックアップローラ41との間に臨むことができるようにしているとともに、分離爪片53の先端部は、移送用爪38と移送用スリット3Aとの係合部位より上流側に位置可能としている。
【0058】
こうした構成の携帯式台紙無しラベル貼付け機1、及び台紙無しラベル分離装置9において、開閉用つまみ26を操作し、開閉用係脱片28の係脱用凹部28Aと係脱軸25との間の係合を解除することにより、プラテンユニット6を側板2に対して開放すると、板バネ44を介してレバー軸11ないしは側板2からの反力を受けて、ねじりコイルバネ43が押付けエレメント19から移送ローラ18部分を離反させ、移送ローラ18と押付けエレメント19との間が最大限に開いて間隙45が形成される。
【0059】
したがって、移送ローラ18の円周部における中央円周溝37、移送用爪38及び外周円周溝39と、押付けエレメント19のバックアップローラ41及びバックアップリング42との間に形成される間隙45の部分に台紙無しラベル3の先頭部を挿通することができる。
【0060】
次いで、プラテンユニット6を図1の状態に閉鎖して、開閉用係脱片28の係脱用凹部28Aと係脱軸25とを係合させ、操作レバー5及びグリップ10を何回か握持して、台紙無しラベル3の移送用スリット3Aに移送用爪38を係合させれば、台紙無しラベル3の移送を可能として装填を完了する。
【0061】
プラテンユニット6を閉鎖した状態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1において、操作レバー5及びグリップ10を握持することにより、印字器7が移送用無端ベルト23上の台紙無しラベル3に印字を行うとともに、移送回動用爪32が移送ローラ18におけるローラギア24の移送用突起33から隣接する(図3中、右側の)移送用突起33側に移行し、次いで操作レバー5の解放によって、移送回動用爪32がこの移送用突起33を前方に(図3中、左方向に)回動させて、移送ローラ18を所定ピッチで回動して台紙無しラベル3を移送する。
【0062】
さらに、移送ローラ18に係合している駆動ギア21が回動することにより移送用無端ベルト23を回動させて、その上面の台紙無しラベル3を側板2の外方に送り出し可能とする。
【0063】
移送用無端ベルト23の先頭部(下流側)において側板2の外方に送り出された台紙無しラベル3のラベル片3Bを貼付けローラ8により所定の被貼付け体に貼り付けることができる。
【0064】
なお、上述した、操作レバー5及びグリップ10の握持により、移送回動用爪32が移送ローラ18におけるローラギア24の移送用突起33から隣接する(図3中、右側の)移送用突起33側に移行する際、図10に示すように、分離爪エレメント49の逆転防止片54が、移送ローラ18の逆転防止凹部58に係合しているので、移送ローラ18が図10中、反時計方向には回動(逆転)することが無く、移送ローラ18による台紙無しラベル3の安定した移送を保証している。
【0065】
もちろん、操作レバー5及びグリップ10の解放により移送ローラ18が時計方向(移送方向)に回動する際に、逆転防止片54は次の逆転防止凹部58に移行して係合する。
【0066】
さらに、台紙無しラベル分離装置9により、移送ローラ18における左右一対の外周円周溝39と台紙無しラベル3との間には、分離爪エレメント49の左右一対の分離爪片53がそれぞれ位置しているので(第1の姿勢)、移送ローラ18の移送用爪38と係合して分離爪片53の部分まで移送されてきた台紙無しラベル3は、その表面側が分離爪片53の底面に接触しつつ、移送用爪38から台紙無しラベル3の移送用スリット3Aが離脱する結果、移送用爪38から強制的に分離され、移送用無端ベルト23上に移行することになる。
【0067】
移送ローラ18のローラギア24と、移送用無端ベルト23の駆動ギア21との係合回転により、移送用無端ベルト23上の台紙無しラベル3はさらに従動コロ22方向に向かって移送される。
【0068】
また、移送ローラ18と移送用無端ベルト23との間において台紙無しラベル3がジャミングしたり、或いは、その周りの部品や機構への糊の付着などを除去清掃する作業その他のためにメンテナンスが必要なったりしたときには、図7及び図8に示すように、台紙無しラベル分離装置9における分離爪エレメント49(回動アーム50)を回動突起56の周りに上方へ引っ張り上げるように回動開放して、移送ローラ18と移送用無端ベルト23との間から退避させて第2の姿勢とする。すなわち、分離爪エレメント49を簡単にその作動位置から解除して、移送ローラ18の周りにおける台紙無しラベル3の状態を確認可能とするとともに、糊が付着した部分の必要な清掃その他の作業を行うことができる。
【0069】
かくして、上述のような簡単な構成の台紙無しラベル分離装置9により、移送ローラ18における台紙無しラベル3の移送、及びその移送用無端ベルト23への移行を確実に行うことができるとともに、必要時には、内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0070】
ところで、実施の形態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1は、図11に示したように、退避部材62によって、インキローラ48が取り外されたピン66を印版64から退避させている。
【0071】
すなわち、退避部材62を操作レバー5に一体化させて、図11に示す操作レバー5の操作開始位置において退避部材62をローラアーム60に押圧当接させることにより、ローラアーム60をコイルスプリング70の付勢力に抗して時計周り方向に揺動させて、ピン66を印版64から退避させている。また、操作レバー5の操作開始位置から操作レバー5が回動操作されると、印字器7は図11において下方に移動するが、前記回動操作に連動してローラアーム60が退避部材62に押されてさらに時計周り方向に揺動する。このため、前記回動操作の全範囲において、ピン66は印版64に接触しない。
したがって、実施の形態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1によれば、台紙無しラベル3の繰り出しテスト時等において、印版64がピン66によって損傷するのを防止できる。
【0072】
また、実施の形態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1では、印版64に対するピン66の退避量を、インキローラ48が未装着時には、前述したように、退避部材62がローラアーム60に当接してピン66が印版64に当接しない量に設定するとともに、ピン66にインキローラ48が装着された際には、インキローラ48を印版64にコイルスプリング70の付勢力によって押し付けることが可能な量に設定する。
【0073】
これにより、実施の形態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1によれば、印版64から退避しているピン66にインキローラ48が装着されると、インキローラ48はコイルスプリング70の付勢力によって印版64に押し付けられるので、携帯式台紙無しラベル貼付け機1の通常動作(ラベル貼着動作)を問題無く行うことができる。
【0074】
なお、実施の形態の携帯式台紙無しラベル貼付け機1では、退避部材62を操作レバー5に一体的に設けたが、これに限定されるものでは無く、別体の退避部材によってピン66を印版64から退避させてもよい。しかしながら、部品点数を削減する観点、及び操作レバー5の全回動範囲においてピン66を印版64に確実に接触しない構造とするためには、退避部材62を操作レバー5に一体的に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
1 携帯式台紙無しラベル貼付け機
2 左右一対の側板
3 台紙無しラベル
3A 台紙無しラベル3の移送用スリット
3B 台紙無しラベル3の単葉のラベル片
4 ラベルホルダー
5 操作レバー
5A 操作レバー5の二股状のヨーク部
6 プラテンユニット
7 印字器
8 貼付けローラ
9 携帯式台紙無しラベル貼付け機1の台紙無しラベル分離装置
10 グリップ
11 レバー軸
12 コイルスプリング
13 ホルダー軸
14 ホルダーカバー
15 ラベル保持軸
16 固定用フック
17 プラテンフレーム
18 移送ローラ
19 押付けエレメント
20 プラテン開閉軸
21 駆動ギア
22 従動コロ
23 移送用無端ベルト
23A 移送用無端ベルト23内方の受圧用プレート
24 ローラギア
25 係脱軸
26 開閉用つまみ
27 つまみ軸
28 開閉用係脱片
28A 開閉用係脱片28の係脱用凹部
29 ローラ軸
30 連結アーム
31 連結軸
32 移送回動用爪
33 移送ローラ18の移送用突起
34 連結ガイドプレート
35 連結突起
36 プラテンフレーム17の底部におけるガイド溝
37 中央円周溝
38 左右一対の移送用爪
39 左右一対の外周円周溝
40 エレメントフレーム
41 上下左右二対のバックアップローラ
42 バックアップリング
43 ねじりコイルバネ
44 左右一対の板バネ
45 移送ローラ18と押付けエレメント19との間の間隙
46 エレメント軸
47 上下一対の回転軸
48 インキローラ
49 分離爪エレメント
50 左右一対の回動アーム
51 横断アーム
52 爪エレメント本体
53 左右一対の分離爪片
54 逆転防止片
55 左右一対の爪エレメント係合片
56 左右一対の回動突起
57 左右一対の回動用凹部
58 逆転防止凹部
59 爪エレメント係脱孔部
60 ローラアーム
62 退避部材
64 印版
66 ピン
68 軸
70 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付け機本体と、
前記貼付け機本体に回動自在に取り付けられた操作レバーと、
前記操作レバーの回動操作によって動作する印字器と、
前記操作レバーの回動操作によって前記印字器の印版にインキを塗布するインキローラと、
前記インキローラを、ピンを介して回動自在に支持するとともに前記貼付け機本体に揺動自在に取り付けられたローラアームと、
前記ローラアームを付勢して前記インキローラを前記印版に押し付ける付勢部材と、を有する携帯式ラベル貼付け機において、
前記インキローラが取り外された前記ピンを、前記付勢部材の付勢力に抗して前記印版から退避させる退避部材を備えたことを特徴とする携帯式ラベル貼付け機。
【請求項2】
前記退避部材は、前記操作レバーに備えられるとともに該操作レバーの操作開始位置において前記ローラアームに押圧当接され、該ローラアームを前記付勢部材の付勢力に抗して揺動させることにより、前記ピンを前記印版から退避させる請求項1に記載の携帯式ラベル貼付け機。
【請求項3】
前記印版に対する前記ピンの退避量は、該ピンに前記インキローラが装着された際に、該インキローラを前記印版に前記付勢部材の付勢力によって押し付けることが可能な量に設定されている請求項1、又は2に記載の携帯式ラベル貼付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−75706(P2013−75706A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217543(P2011−217543)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】