説明

携帯式小型エンジン

【課題】耐久性を向上し、エンジン不調を防止すると共に修理コストを低減し、加えて、エアクリーナーのメンテナンス性を向上する。
【解決手段】エアクリーナー3を通した空気を導入し当該空気と燃料の混合気を作るキャブレター4を、当該キャブレター4からの混合気をシリンダ5a内に導入し燃焼させることで当該シリンダ5a内のピストン5bを往復動させるエンジン本体5側に対して、防振手段を介さずに固定することによって、防振動作の影響を受けずに吸気路に変形を生じないようにし、耐久性を向上する。加えて、エアクリーナー3を、エンジン本体5側に対して防振手段12を介し離隔して接続することによって、当該エアクリーナー3を例えばリヤハンドル2等に設置可能とし、メンテナンス性を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯式小型エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動により、エンドレスのソーチェーンを所定の周回軌道で移動させ、対象物を切ることができるチェンソーが知られている(例えば、特許文献1参照)。このチェンソーのエンジン、すなわち携帯式小型エンジンは、ピストンを摺動自在に収容するシリンダを備えたエンジン本体と、このエンジン本体のシリンダ内に連通する吸気口にその一端が接続された通気管(吸気管)と、この通気管の他端にその一端が接続されたキャブレター(気化器)と、このキャブレターの他端にその一端が接続されたエアクリーナー(エアフィルタ)と、を具備し、エアクリーナーで浄化した空気をキャブレターで燃料と混合して混合気を作り、この混合気をエンジン本体のシリンダ内で燃焼させてピストンを往復動させ、このピストンの往復動によりソーチェーンを移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−32939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記チェンソーにあっては、エンジン本体側からの振動をキャブレターに伝達しないように、実際には、エンジン本体とキャブレターとの間の吸気路を例えばゴム部品等の防振手段を用いて構成するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、このようにエンジン本体とキャブレターとの間の吸気路が防振手段を用いて構成されていると、防振動作により吸気路が弾性変形を繰り返し、その変形回数が多いと吸気路に亀裂が生じてしまい、その亀裂から空気を吸引しエンジン不調を招来するという問題があった。実際のところ、このような防振動作により耐久性が足りず、市場では短期間で吸気路の交換が行われていた。そして、エンジン本体とキャブレターとの間の吸気路は、チェンソーの中心部に配置されているのが一般的であるため、交換の際に作業工数を多く要し、修理コストが高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、耐久性が向上されることにより、エンジン不調が防止されると共に修理コストが低減される携帯式小型エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による携帯式小型エンジンは、空気を浄化するためのエアクリーナー(3)と、エアクリーナー(3)を通した空気を導入し当該空気と燃料の混合気を作るキャブレター(4)と、キャブレター(4)からの混合気をシリンダ(5a)内に導入し燃焼させることで当該シリンダ(5a)内のピストン(5b)を往復動させるエンジン本体(5)と、を具備した携帯式小型エンジン(10)において、キャブレター(4)は、エンジン本体(5)側に対して防振手段を介さずに固定され、エアクリーナー(3)は、エンジン本体(5)側に対して防振手段(12)を介し離隔して接続されていることを特徴としている。
【0008】
このような携帯式小型エンジン(10)によれば、エアクリーナー(3)を通した空気を導入し当該空気と燃料の混合気を作るキャブレター(4)が、当該キャブレター(4)からの混合気をシリンダ(5a)内に導入し燃焼させることで当該シリンダ(5a)内のピストン(5b)を往復動させるエンジン本体(5)側に対して、防振手段を介さずに固定されているため、防振動作の影響を受けずに吸気路に変形が生じず、耐久性が向上される。その結果、エンジン不調が防止されると共に修理コストが低減される。加えて、エアクリーナー(3)が、エンジン本体(5)側に対して防振手段(12)を介し離隔して接続されているため、当該エアクリーナー(3)を例えばリヤハンドル(2)等に設置できメンテナンス性を向上できる。
【0009】
ここで、キャブレター(4)とエアクリーナー(3)とは、軟質材から成るブーツ(14)を介して接続されていると、キャブレター(4)より外部側の位置で当該ブーツ(14)により、防振手段(12)による防振動作が吸収される。
【0010】
また、ブーツ(14)は、蛇腹(14a)を有していると、この蛇腹(14a)により、防振手段(12)による防振動作が一層吸収される。
【0011】
ここで、エンジン本体(5)側とキャブレター(4)とは、インシュレータ(8)を介して接続される構成が挙げられる。このようなインシュレータ(8)は、エンジン本体(5)側に対して防振手段を介さずに固定されることになるから、耐久性が向上される。従って、この耐久性が向上されたインシュレータ(8)よりも、キャブレター(4)とエアクリーナー(3)との間の管路(14)の方が亀裂を生じやすい。このようなキャブレター(4)とエアクリーナー(3)との間の管路(14)を交換する場合、一般的に中心側に位置するインシュレータ(8)を交換する場合に比して、外部側のエアクリーナー(3)を取り外せば良く容易に行うことができる。また、このようにキャブレター(4)とエアクリーナー(3)との間の管路(14)の方に亀裂を生じた場合、インシュレータ(8)に亀裂を生じた場合に比して、亀裂を通した外部空気流入によるエンジン性能に及ぼす影響が著しく低減される。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、耐久性を向上でき、エンジン不調を防止できると共に修理コストを低減でき、加えて、エアクリーナーのメンテナンス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯式小型エンジンを採用したチェンソーを示す断面図である。
【図2】図1中の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る携帯式小型エンジンの好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る携帯式小型エンジンを採用したチェンソーを示す断面図、図2は、図1中の要部を示す拡大図である。
【0015】
図1に示すように、チェンソー100は、エンドレスのチェーンに鋸刃を付けたソーチェーン20を、チェンソー本体1から前方(図示左側)に突出するガイドバー30と、チェンソー本体1内のスプロケット(不図示)との外周に掛け渡し、作業者が、左手でフロントハンドル15を握ると共に、右手でリヤハンドル2の把手部2aを握り、エンジン10を駆動させることでスプロケットを回転させ、ソーチェーン20を、スプロケット及びガイドバー30の外周により形成されている略長円状の周回軌道を移動させることによって、道具を前後に引くことなく例えば木材等の対象物を切ることができるものである。
【0016】
このチェンソー100に用いられているエンジン10は、携帯式小型エンジンであり、空気を浄化するためのエアクリーナー3と、このエアクリーナー3を通した空気を導入し当該空気と燃料の混合気を作るキャブレター4と、このキャブレター4からの混合気をシリンダ5a内に導入し燃焼させるエンジン本体5と、を具備している。そして、キャブレター4からの混合気がシリンダ5a内で燃焼(爆発)することによって、シリンダ5a内に配置されたピストン5bが当該シリンダ5a内で往復動し、この往復動するピストン5bにコンロッド6を介して連結されたクランクシャフト7が回転し、この回転運動が前述したスプロケットに伝達されてソーチェーン20が駆動するようになっている。
【0017】
ここで、キャブレター4は、エンジン本体5側に固定されている。具体的には、図1及び図2に示すように、キャブレター4とエンジン本体5との間には、これらを接続するための曲管であるインシュレータ(吸気路)8が配置される。キャブレター4の下流側(内部側)端部は、インシュレータ8の上流側(外部側)端部に合わされ、このインシュレータ8の下流側端部は、シリンダ5aの吸気口に合わせられて当該シリンダ5aに固定されている。また、インシュレータ8の上流側端部は、プレート9に嵌合・固定され、このプレート9は、エンジン本体5を収容するエンジンケース11にボルト固定されている。また、キャブレター4より上流側のステー13は、エンジンケース11にボルト固定され、キャブレター4は、その上流側端部をステー13に当てられ、プレート9との間でインシュレータ8の上流側端部を挟持しつつ、ステー13、キャブレター4及びプレート9を貫通するボルトにより、ステー13及びプレート9へ固定される。こうしてキャブレター4は、エンジン本体5側に固定される。
【0018】
一方、図1に示すように、エンジンケース11の前側の脚部11a及び後側の脚部11bは、例えばゴム等の防振手段12を介してリヤハンドル2に連結されている。このリヤハンドル2の略中央上部には、エアクリーナー3が設けられ、このエアクリーナー3と上記キャブレター4との間には、これらを接続するための曲管であるブーツ14が配置されている。ブーツ14は、例えばゴム等の軟質材より形成され、蛇腹14aを有している。そして、ブーツ14は、その上流側端部が、エアクリーナー3に固定されてクリーナー室の底部を構成すると共に、その下流側端部が、ステー13に固定されている。
【0019】
このような構成を有するチェンソー100においては、キャブレター4が、エンジン本体5側に対して防振手段を介さずに固定されているため、防振動作の影響を受けずに吸気路に変形が生じず、耐久性が向上されている。その結果、エンジン不調が防止されると共に修理コストが低減されている。加えて、エアクリーナー3が、エンジン本体5側に対して防振手段12,12を介し離隔して接続され、具体的には、リヤハンドル2に設置されているため、当該エアクリーナー3のメンテナンス性が向上されている。
【0020】
また、キャブレター4とエアクリーナー3とは、軟質材から成るブーツ14を介して接続されているため、キャブレター4より外部側の位置で当該ブーツ14により、防振手段12による防振動作が吸収されている。
【0021】
また、ブーツ14は、蛇腹14aを有しているため、この蛇腹14aにより、防振手段12による防振動作が一層吸収されている。
【0022】
なお、インシュレータ8は、エンジン本体5側に対して防振手段を介さずに固定されているため、耐久性が向上されている。従って、この耐久性が向上されたインシュレータ8よりも、キャブレター4とエアクリーナー3との間の管路を構成するブーツ14の方が亀裂を生じやすい。このようなブーツ14を交換する場合、チェンソー本体1の中心側に位置するインシュレータ8を交換する場合に比して、外部側のエアクリーナー3を上側から取り外せばブーツ14を容易に上側から脱着できる。また、このようにブーツ14の方に亀裂を生じた場合、インシュレータ8に亀裂を生じた場合に比して、亀裂を通した外部空気流入によるエンジン性能に及ぼす影響を著しく低減できる。
【0023】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、携帯式小型エンジンをチェンソーに適用した例を述べているが、他の動力作業機等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1…チェンソー本体、2…リヤハンドル、3…エアクリーナー、4…キャブレター、5…エンジン本体、5a…シリンダ、5b…ピストン、8…インシュレータ、10…エンジン、11…エンジンケース、12…防振手段、14…ブーツ、14a…蛇腹、100…チェンソー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を浄化するためのエアクリーナー(3)と、前記エアクリーナー(3)を通した空気を導入し当該空気と燃料の混合気を作るキャブレター(4)と、前記キャブレター(4)からの混合気をシリンダ(5a)内に導入し燃焼させることで当該シリンダ(5a)内のピストン(5b)を往復動させるエンジン本体(5)と、を具備した携帯式小型エンジン(10)において、
前記キャブレター(4)は、前記エンジン本体(5)側に対して防振手段を介さずに固定され、
前記エアクリーナー(3)は、前記エンジン本体(5)側に対して防振手段(12)を介し離隔して接続されていることを特徴とする携帯式小型エンジン(10)。
【請求項2】
前記キャブレター(4)と前記エアクリーナー(3)とは、軟質材から成るブーツ(14)を介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の携帯式小型エンジン(10)。
【請求項3】
前記ブーツ(14)は、蛇腹(14a)を有することを特徴とする請求項2記載の携帯式小型エンジン(10)。
【請求項4】
前記エンジン本体(5)側と前記キャブレター(4)とは、インシュレータ(8)を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯式小型エンジン(10)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132931(P2011−132931A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295482(P2009−295482)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)