説明

携帯機器と連携し、携帯機器のアプリケーションを自動的に起動する車載機器

【課題】携帯機器を車載機器と連携して使用する際に、より少ない操作工数で、より短時間に、所望のアプリケーションの起動処理を完了させる手法を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、情報処理機能を備える携帯機器と通信する車載機器と、前記車両に装備された装置が有する機能を特定するための機能情報を保持すると機能情報保持手段と、を備えるシステムにおいて、携帯機器は、該装備された装置の機能情報保持手段により保持された該機能情報を読み取ることに応じて、該機能情報に対応するアプリケーションをユーザが利用可能なように、該アプリケーションに対応するプログラムを自動的に起動し、該起動した後、該装備された装置との接続を、前記車載機器を介して確立する。こうして、車載装備の所望の機能を実現するためのアプリケーションを起動する操作工数を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯機器と連携して動作可能な車載機器に関し、より具体的には、該携帯機器のアプリケーションを自動的に起動することのできる車載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載機器を遠隔操作する手法が提案されている。下記の特許文献1では、携帯電話機からリモコン用ブルートゥース接続要求を受信すると、その携帯電話機からのリモコンコマンドを受信したことに基づいて、その受信した遠隔操作コマンドによって指定された作動を実行する車載用ナビゲーション装置が記載されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、車載機器をリモコンで操作する際に、受信部を複数に分け、どこの受信部で受信したかに応じて、その操作できる範囲を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303584号公報
【特許文献2】実開平5−59484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近における、携帯機器における高機能化や低価格な車載機器のニーズの高まりを受け、携帯機器を車載機器と連携させて利用するシステムが検討されている。このようなシステムによれば、各種情報処理に必要な機能は携帯機器が提供するため、携帯機器側のアプリケーションを追加ないし更新することで、システム全体の機能を向上させていくことができる。一方、車載機器側では、比較的大型で扱いやすい表示装置や入力装置を備えることで、携帯機器をそのまま用いた場合の、見えにくさや操作しにくさといった課題を解決しつつ、携帯機器側の処理機能によって実現されるサービスを、車両内のユーザに安価に提供することができる。
【0006】
最近の携帯機器に搭載可能なアプリケーションは、その開発環境が進化し、さらにその開発環境自体が広く一般に提供されるようになったことを受けて、急速にその数が増加している。一般的なユーザでも、数十のアプリケーションを利用していることは珍しくなく、一覧メニューや専用のランチャー(アプリ起動用ソフト)等を用いて、適宜必要なアプリケーションを起動して使用している。
【0007】
一方で、前述のとおり、これらのアプリケーションも、車載機器と連動したシステムで使用されることが想定される。特に、車内での使用が想定されることから、より高い操作性が要求される。
【0008】
したがって、この発明は、携帯機器を車載機器と連携して使用する際に、より少ない操作工数で、より短時間に、所望のアプリケーションの起動処理を完了させる手法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一つの側面によると、車両に搭載され、情報処理機能を備える携帯機器と通信する車載機器と、前記車両に装備された装置が有する機能を特定するための機能情報を保持する機能情報保持手段と、を備え、前記携帯機器は、該装備された装置の機能情報保持手段により保持された該機能情報を読み取ることに応じて、該機能情報に対応するアプリケーションをユーザが利用可能なように、該アプリケーションに対応するプログラムを自動的に起動該、該起動した後、該装備された装置との接続を、前記車載機器を介して確立する。
【0010】
この発明によれば、携帯機器によって、所望の車載装備の機能情報を読み取るだけで、自動的に、該読み取った機能を使用するアプリケーションを利用可能な状態にすることができる。たとえば、車両のエアコン(エアーコンディショナー)の機能保持手段には、エアコンの温度設定という機能を特定した情報を保持することができ、携帯機器が、該機能情報を読み取ることに応じて、該エアコンの温度設定のためのプログラムをダイレクトに起動することができる。したがって、所望の装備の所望の機能を使用する際の操作工数を低減することができる。たとえば、携帯機器には様々なアプリケーションが搭載されうるが、その中から、エアコンに関するアプリケーションを選択し、さらに、その中から、温度設定の項目を選択し、というような操作工数を経る必要はない。
【0011】
さらに、アプリケーションの起動には車載機器を介しておらず、車載機器を介した通信は、該アプリケーションを起動した後に実施される。したがって、この観点からも、該アプリケーションの起動を、短時間で行うことができる。起動したアプリケーションは、対応する車載装備と自動的に接続して対応する機能を実現するので、たとえば車載装備との接続を設定したり、接続先の車載装備を指定する必要も無い。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記携帯機器は、前記確立された接続を介して、前記プログラムの実行に必要な該装備された装置に関する情報を、前記車載機器を介して、該装置と通信する。こうして、たとえばエアコンの温度を設定するアプリケーションの場合、該エアコンから現在の温度の設定内容を取得して表示したり、該エアコンに対して新たな温度を設定しなおしたりすることができる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記車両に装備された装置は、エアコン装置、ETC端末装置、カーオーディオ装置、テレビ受信機、カーナビゲーション装置、表示装置、車両を制御するための電子制御装置のうちの任意のものを含む。こうして、車両に搭載された様々な装備の機能について、携帯機器を介して必要なアプリケーションを自動的に起動し、速やかに、該機能を使用して様々な設定や情報の閲覧等を行うことができる。車載装備の機能について、携帯機器のアプリケーションを介して管理や設定を行うことができるので、初期の車載装備に関するコストを低減することができる。また、車載装備の機能追加や、アプリケーションのバージョンアップ等を、容易かつ安価に実現することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記機能情報の読み取りは、該携帯機器と該機能情報保持手段との間で、ICタグによる通信、無線通信、赤外線通信のいずれかの通信を用いて行われる。こうして、機能情報保持手段として、たとえばICタグを用いる場合には、該ICタグを、上記の装備される各装置付近等に設けておけばよい。これにより、所望の装置のICタグに携帯機器を近づけるだけで、該ICタグに保持された機能を使用するアプリケーションを自動的に起動させることができる。
【0015】
本発明のその他の特徴及び利点については、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例に従う、携帯機器と車載機器とが接続された車載処理システムの一形態を示す図。
【図2】この発明の一実施例に従う、携帯機器および車載機器を連携して動作させ、該携帯機器からの情報処理の結果を車載機器上に出力する形態における、携帯機器および車載機器の機能ブロック図。
【図3】この発明の一実施例に従う、携帯機器のアプリケーションの自動起動を行う形態における、携帯機器および車載機器の機能ブロック図。
【図4】この発明の一実施例に従う、機能情報保持手段の配置の一例を示す図。
【図5】この発明の一実施例に従う、アプリケーション自動起動プロセスのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に従う、携帯機器と連携可能なように動作する車載機器を備えた車載処理システムを概略的に示す。
【0018】
携帯機器10は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、およびスマートフォンのような、携帯可能であり、かつ情報処理機能および通信機能を備えた端末である。当然ながら、音声通話機能を備えたものでもよい。
【0019】
携帯機器10は、データを表示するディスプレイ(表示画面)11、音および音声(以下、単に音声と呼ぶ)を出力するスピーカ12、および、携帯機器10に備えられたキー(ボタン)のように、ユーザが携帯機器10に何らかのデータ(信号)を入力するための入力操作部13を備えている。ディスプレイ11は、タッチパネルを構成したものでもよく、この場合、入力操作部13には該タッチパネルも含まれるものとする。
【0020】
携帯機器10は、中央処理装置(CPU)とメモリを有するコンピュータとしての情報処理機能を備えており、図には、それぞれ処理部14および記憶部15として示されている。たとえば入力操作部13によって入力された信号に応じて、記憶部15に記憶されたプログラムが処理部14によって実行され、その情報処理の結果が、ディスプレイ11上に表示され、および(または)スピーカ12を介して音声出力される。
【0021】
また、携帯機器10は、通信機能を備えており、図には、通信部16および車内通信部17として示されている。通信部16は、アンテナを介して外部のネットワーク31に接続し、音声通話またはデータ通信のための信号を送受信する機能を備えている。図には、外部のネットワーク31としてインターネットが示されており、通信部16は、該インターネットを経由して外部のサーバ32に接続し、外部のサーバ32とデータ通信を行うことができる。
【0022】
また、車内通信部17は、車両に搭載される車載機器20の車内通信部27と、所定の無線通信を介して接続し、該車載機器20とデータ通信のための信号を送受信する機能を備えている。該所定の無線通信として、任意の適切な近距離無線通信方式を用いることができ、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)を用いることができる。
【0023】
携帯機器10には、種々のアプリケーション(適用業務)が実装されており、各アプリケーションは、記憶部15に記憶された1または複数のプログラムを実行することによって実現される。この実施形態では、携帯機器10には、車両に装備された所定の装置の所定の機能を使用するためのアプリケーションが実装されており、これについての詳細は後述される。
【0024】
車載機器20は、データを表示する表示画面を有する表示装置21、音および音声を出力するスピーカ22、および、ユーザが該車載機器に何らかのデータ(信号)を入力するための入力装置23を備えている。ここで、入力装置23には、表示装置21の表示画面上に構成されるタッチパネル(タッチパネルディスプレイ)および該車載機器20に備えられた所定のボタンやキーなどが含まれる。表示装置21は、運転者が視認しかつ操作可能なように、たとえば車両のダッシュボードに該タッチパネルディスプレイとボタンやキー等の操作部が組み込まれるように設置されることができる。なお、入力装置23には、マイクロホン(図示せず)を含めることができ、音声データを該マイクロホンを介して入力できるようにしてもよい。
【0025】
車載機器20は、中央処理装置(CPU)とメモリを有するコンピュータである電子制御装置(ECU)を備えており、これらが、図には、それぞれ処理部24および記憶部25として示されている。たとえば、入力装置23によって入力された信号に応じて、記憶部25に記憶されたプログラムが処理部24によって実行され、その情報処理の結果が、表示装置21上に表示され、および(または)スピーカ22を介して音声出力される。
【0026】
携帯機器10に設けられた前述の車内通信部17に対応して、車載機器20には、車内通信部27が設けられており、前述したように、所定の無線通信を介して、両者は接続されることができる。たとえば、車内に携帯機器10を持ち込むことにより、携帯機器10は、車載機器20と、車内通信部17および27を介して通信接続することができる。
【0027】
車載機器20には、車両の走行状態を検出するためのセンサ29が接続されている。この実施形態では、該センサ29は、車速を検出するためのセンサであり、たとえば、車速センサ、加速度センサ、車輪速センサ等によって実現されることができる。センサ29によって検出された車速は、処理部24に渡される。なお、車両が停止しているか否かを検出するときには、上記の車速を検出するセンサに代えて、パーキングブレーキが作動しているか否かを検出するパーキングブレーキセンサを、センサ29として用いてもよい。
【0028】
図2は、図1に示す、携帯機器10と連携した車載機器20を備えるシステムによって実現される基本的な通信形態を説明するために、携帯機器10の処理部14および車載機器10の処理部24を機能ブロックで表したものである。これらの機能は、CPUによって実行される。また、データ処理に用いるメモリ115、211が示されており、これらは、記憶部15および25にそれぞれ実現される。
【0029】
携帯機器10には、種々のアプリケーション(適用業務)が実装されている。アプリケーション実行部111は、たとえばユーザによる何らかの入力操作に応じて所望のアプリケーションを実行する際、対応するプログラムを、たとえば記憶部15の不揮発性メモリ(図示せず)から読み出したり、外部のネットワークから取得することにより、実行する。該プログラムによって処理された結果、出力されるべき表示画面のデータおよび(または)音声のデータが生成される。
【0030】
表示画面は、典型的には、テキスト(文字)および画像などのコンテンツと、ウィンドウ、ダイアログボックス、タスクバー、ボタン、チェックボックス、テキストフィールド等のGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)部品とから構成される。プログラム内で、所望のテキストデータを指定する(テキストデータ自体を記述してもよいし、該テキストデータのファイルを記述してもよい)ことにより、該テキストデータを描画することができる。画像データ(たとえば、JPEGのような画像データ)についても同様である。また、各種のGUI部品は、たとえば該携帯機器10に搭載されるOS(オペレーティング・システム)によって予めライブラリとして提供されて記憶部15に記憶されており、プログラム内で所望のGUI部品を指定することによって、該GUI部品を描画することができる。たとえば、Javaのプログラムにおいては、Buttonクラスをプログラムで定義することにより、ボタンというGUI部品を描画することができる。さらに、プログラム内で音声データのファイルを指定することにより、該音声データの再生を実行することができる。
【0031】
アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内で、指定されたテキストおよび画像のデータを描画する命令があれば、それらの描画命令を表示制御部113に出力する。この命令に応じて、表示制御部113は、該指定されたテキストおよび画像のデータを、たとえば記憶部15や外部のネットワークを介して取得し、これを、VRAMのような表示画面用のメモリ115に出力(描画)する。また、アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内に指定されたGUI部品があれば、その描画命令を表示制御部113に出力する。これに応じて、表示制御部113は、指定されたGUI部品を記憶部15から読み込み、これを、メモリ115に出力(描画)する。さらに、アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内で指定された音声データがあれば、該音声データの再生命令を音声制御部114に出力する。音声制御部114は、指定された音声データのファイルを、たとえば記憶部15や外部のネットワークを介して取得する。
【0032】
送受信制御部117は、携帯機器10のアプリケーションに対し、車載機器20というデバイスのドライバとしての役割を果たすように設けられており、その機能はソフトウェアプログラムによって実現されることができる。より具体的には、送受信制御部117は、メモリ115に格納された一画面分のデータから、車載機器20の表示装置21の画面解像度と同じ解像度を有するビットマップデータ(画面データと呼ぶ)を該メモリ115から切り出すと共に、音声制御部114によって取得された音声データのファイルを受け取り、該画面データおよび音声データのファイルを、車内通信部17を介して車載機器20に送信する。
【0033】
好ましくは、送受信制御部117は、画面データ(表示画面)に関する属性情報を表示制御部113から取得し、これを、該画面データと共に、車内通信部17を介して車載機器20に送信する。属性情報は、車載機器20の表示装置21に画面データを出力するに際して、後述する出力制御部213によって使用される情報である。属性情報には、たとえば、アプリケーション(プログラム)の種類、要求される入力操作の数および種類、表示項目の数、表示項目の色、表示される文字数等を含めることができる。表示制御部113は、前述したように、プログラムを実行することにより出力される描画命令に従って、表示画面を構成するコンテンツやGUI部品をメモリ115に出力するので、送受信制御部117は、表示画面の該属性情報を、表示制御部113からの情報に基づいて取得することができる。
【0034】
こうして、画面データとその属性情報、および音声データが、送受信制御部117から、車内通信部17を介して車載機器20に送信される。車載機器20の車内通信部27は、これらを受け取り、画面データおよび音声データを、一時的にメモリ211に記憶すると共に、属性情報を、出力制御部213に渡す。
【0035】
出力制御部213は、受け取った属性情報と、センサ29により検出された車両の走行状態とに基づいて、受け取った画面データおよび音声データの表示装置21およびスピーカ22への出力形態を制御する。この制御は、たとえば、安全性の観点から行われることができる。たとえば、出力制御部213は、属性情報に基づいて、受け取った画面データが、安全性の観点から決められた所定の条件を満たすかどうかを判断する。該所定の条件を満たすならば、該受け取った画面データを、メモリ211から読み出して、加工することなく、そのまま表示装置21上に出力する。該所定の条件を満たさなければ、該受け取った画面データを、メモリ211から読み出して、該所定の条件を満たす程度にまで加工処理を施し、該加工処理が施された画面データを、表示装置21上に出力する。該所定の条件を満たす程度にまで加工処理を施すことができないと判断した場合には、該画面データの表示装置21上への出力を禁止する。
【0036】
また、出力制御部213は、音声出力が、該所定の条件を満たすかどうかを判断する。該所定の条件を満たすならば、受け取った音声データを、メモリ211から読み出し、そのまま再生して、スピーカ22を介して出力する。該所定の条件を満たさなければ、該所定の条件を満たす時点まで該出力を時間的に遅延させる。該所定の条件を満たすのが困難と判断した場合には、該音声データのスピーカ22を介しての出力を禁止する。
【0037】
該所定の条件には、たとえば、(1)車両の走行状態(センサ29から得られた車速等)に基づく条件、(2)アプリケーション(プログラム)の処理内容(アプリケーションの種類等)に基づく条件、(3)表示内容(項目数、色等)に基づく条件、(4)音声に基づく条件(音声出力のタイミング等)、を含めることができる。このように、出力制御部213を設けることにより、携帯機器のアプリケーションによって提供されるサービスを、車内のユーザはより安心して享受することができる。
【0038】
たとえば、携帯機器10に、ナビゲーションのアプリケーションが実装されている場合、通信部16には、さらに、アンテナを介して、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号(GPS信号)を受信する機能も備えられている。外部のサーバ32を、ナビゲーションのサービスを提供するサーバ(ナビサーバ)とすると、処理部14は、該ナビゲーションのプログラムの実行を介して、受信したGPS信号から現在位置を検出すると共に、該現在位置を示すデータを、通信部16を介してサーバ32に送信することができる。これに応じて、該サーバ32は、該現在位置周辺の地図データを携帯機器10に送信する。処理部14は、通信部16を介して該地図データを受信し、該地図データ上に該現在位置を重畳した表示画面を生成して、メモリ115に格納する。ここで、該メモリ115に記憶される画面データの解像度は十分に大きい。送受信制御部117によって、該メモリから、車載機器21の表示装置21と同じ解像度の画面データが切り出され、その属性情報と共に車載機器20に送られる。こうして、車載機器20の表示装置21上に、自車両周辺の地図データを表示することができる。同様に、携帯機器10のナビゲーションの機能によって目的地までの経路を算出して、車載機器20の表示装置21上に、該目的地までの経路が重畳された地図データを表示させることができる。これらの表示は、たとえば車両の安全性を確保するための所定の条件を満たしているため、車両の運転者は、安心して、該ナビゲーションの機能によって提供される表示画面を表示装置21上で視認することができる。このように、専用のナビゲーション装置を車両に設置していない場合でも、携帯電話のナビゲーション機能を、車両用のナビゲーションとして安全に利用することができる。
【0039】
車載機器20の表示装置21に上記のようにして表示された画面データには、たとえばキー入力やボタン選択などの入力操作を要求する部分が含まれていることがある。この場合、表示装置21のタッチパネルや所定のキー等の入力装置23を介して、ユーザは、入力操作を行うことができる。該入力操作に応じた信号は、車内通信部27を介して携帯機器10に送信される。携帯機器10の送受信制御部117は、車内通信部17を介して該信号を受け取り、必要であればアプリケーション実行部111が解釈可能な形態の信号に変換して、該アプリケーション実行部111に渡す。アプリケーション実行部111は、現在実行中のプログラムに従って、該信号に応じた処理を行う。その結果、新たな表示画面を出力する場合には、前述したような処理を経て、画面データが、その属性情報と共に、再び送受信制御部117から車載機器20へと送信される。
【0040】
このように、アプリケーションのプログラム実行は、携帯機器10で行われるが、その結果として生成される表示画面および音声のデータは、車載機器20の表示装置21およびスピーカ22を介して出力される。このとき、携帯機器10のディスプレイ11およびスピーカ12に対する該表示画面および音声の出力については、禁止するようにしてもよい。たとえば、携帯機器10の処理部14は、車載機器20が接続されたことを検知することにより、表示制御部113および音声制御部114に対し、ディスプレイ11およびスピーカ12への出力を禁止する信号を出力することができる。
【0041】
上記では、携帯機器10と車載機器20の間のデータ通信に関して説明したが、携帯機器10の音声通話機能にも、車載機器20を利用することができる。たとえば、携帯機器10は、車載機器20と接続されたことを検知して、音声通話を行うための音声データの入出力先を、車載機器20に切り換える。そして、携帯機器10によって外部と音声通話の接続がなされたとき、携帯機器10が受信した音声データは、車載機器20に伝えられてスピーカ22を介して出力され、車載機器20の入力装置23に備えられたマイクロホンを介して入力された音声データは、携帯機器10に伝えられて外部に送信される。こうして、車両の乗員は、ハンズフリーで音声通話を行うことができる。なお、音声通話についても、出力制御部213による制御を介してもよい。
【0042】
以上のように、この実施形態では、携帯機器と車載機器が一体的なシステムを構成し、互いに通信可能なようになっており、携帯機器の様々なアプリケーションを実行して、車載機器上でその出力を取得することができる。
【0043】
しかしながら、最近の携帯機器の高機能化や、アプリケーション開発環境の発展により、1つの携帯機器に実装可能なアプリケーション数は増大しつつあり、適宜必要なアプリケーションを選択するにも時間がかかるおそれがある。また、携帯機器に搭載されたアプリケーションを利用して、車両に装備された様々な装置に関する機能を実現することにより、該アプリケーションのバージョンアップも容易かつ安価に行うことができるが、車内での使用を想定すると、該アプリケーションを利用するのに要する操作工数や操作時間をなるべく短縮するのが望ましい。そこで、本願発明は、車両に装備された装置の特定の機能に関して、携帯機器のアプリケーションの起動をより効率的かつ容易に行う手法を実現するものであり、これについて、以下説明する。
【0044】
図3は、この発明の一実施形態に従う、図1〜図2を参照して説明した構成を利用して、上記のアプリケーション起動システムについて、携帯機器10の処理部14および車載機器20の処理部24を、機能ブロックで表したものである。図1および図2と同じブロックには、同じ符号が付されている。なお、図2を参照して説明した、ドライバとしての役割を果たす送受信制御部117は、ここでは、携帯機器10と車載機器20との間でデータ(信号)を通信する際に、必要なデータ形式の変換等を行う。
【0045】
車両には様々な装置が装備されているが、該装備された所定の装置63のそれぞれに対応して、機能情報保持ユニット61が、好ましくは該装置63が装備されている位置付近に、もしくは該装置63が装備されている位置に関連する位置付近に、設けられている。
【0046】
機能情報保持ユニット61は、対応する装置63に備えられている機能を特定するための情報(機能情報と呼ぶ)を保持すると共に、好ましくは、携帯機器10と通信可能なように構成されている。この実施形態では、該機能情報保持ユニット61として、無線ICタグ(無線タグ、ICタグとも呼ばれる)を用いる。無線ICタグは、周知のように、情報(データ)が記憶されたメモリと、その情報を通信するための回路およびアンテナ等が埋め込まれたタグである。
【0047】
携帯機器10には、無線を介して該ICタグに記憶された情報を読み取る機能が備えられており、これが、読みとり部41として表されている。たとえば携帯機器10を無線ICタグの所定範囲内に近づけることにより、該携帯機器10の読みとり部41は、該ICタグに記憶された機能情報を読み取ることができる。
【0048】
この実施形態では、機能情報保持ユニット61にICタグを用いるが、これに限定されるものではなく、機能情報ユニット61は、保持された情報を携帯機器10によって読み取られることができる任意のものによって実現されることができる。たとえば、所定の機能情報に対応する所定の信号を出力するよう構成される信号出力ユニットのようなものも、機能情報ユニット61として用いることができる。この場合、信号と機能情報の間の対応付けは予め決められており、携帯機器10に設けられた信号受信部が、該信号出力ユニットから出力される信号を受信し、該受信した信号に対応する機能情報を判別することができる。
【0049】
また、機能情報保持ユニット61から機能情報を読み取るのに、任意の無線通信方式を用いることができ、たとえば、ブルートゥースや、赤外線を用いたIrDA(Infrared data association)等を用いるようにしてもよい。
【0050】
代替的に、該読み取りに、通信を用いる代わりに、携帯機器10に備えられたカメラを用いてもよい。たとえば、機能情報保持ユニット61としてバーコードを用い、これを、携帯機器10のカメラが読み取るようにしてもよい。この場合、各バーコードと機能情報の間の対応付けは予め決められており、携帯機器10は、該読み取ったバーコードから、対応する機能情報を判別うることができる。
【0051】
機能情報保持ユニット61には、ユーザのよる使用頻度が比較的大きい、すなわち比較的ニーズの高い機能を特定する情報を保持するのが好ましい。後述するように、機能情報保持ユニット61は、該ユニット61によって特定される機能の使用に関してユーザによる操作性を高めるものであるので、このようなニーズの高い機能について該ユニット61を用いることにより、一層の利便性向上を図ることができる。
【0052】
この実施形態では、車両に装備される装置63として、エアコン(エアーコンディショナー)装置、ETC端末装置(ETC車載器)、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置を用いる。さらに、この実施形態では、車両の走行を制御するための電子制御装置(ECU)についても、ここでは、車両に装備される装置63として扱う。たとえば、このような電子制御装置には、車両の動力源(エンジン、モータ、もしくはその両方)を制御するためのECUや、該動力源に関連する様々な機構(アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、バッテリ等)を制御するためのECU等を含めることができる。各装置に対し、無線ICタグが、機能情報保持ユニット61として割り当てられている。
【0053】
ここで、図4の(a)および(b)を参照すると、この実施形態における、これらの各装置の機能情報保持ユニット61すなわち無線ICタグの車両における配置場所の一例が示されている。符号81は、エアコンからの送風口91付近の領域を示し、この領域81内に、エアコン装置用の無線ICタグが設置される(領域81内の任意の場所に設置されることができる)。該領域81内に携帯機器10を近づけると、該携帯機器10は、エアコン装置用の無線ICタグと通信して、該タグに保持された機能情報を読み取ることができる。同様に、符号82は、ETC端末装置91付近の領域を示し、この領域82内に、ETC端末装置用の無線ICタグが設置される。
【0054】
この実施形態では、ダッシュボード36に設けられた表示装置21の近くに、所定の挿入口93が設けられており、ここに、携帯機器10を設置することができるようになっている。符号83は、該挿入口93の周辺の領域であり、ここに、カーナビゲーション装置用の無線ICタグが設置される。カーナビゲーション装置の画面(地図データ等)は表示装置21上に表示されるため、この実施形態では、カーナビゲーション装置用の無線ICタグを、該表示装置21近くに設けている。好ましくは、挿入口93に携帯機器10が設置されたことに応じて、該携帯機器10が該カーナビゲーション装置21用の無線ICタグの機能情報を読み取ることができるように、該無線ICタグは設置される。
【0055】
さらに、符号84は、ダッシュボード36に設けられた収納ボックス94内の領域であり、ここには、カーオーディオ装置用の無線ICタグが設置される。カーオーディオ装置を介して音楽等を聴く場合には、携帯機器10の操作が不要な状態になると考えられるため、この実施形態では、カーオーディオ装置用の無線ICタグを、該収納ボックス94内に設けている。代替的に、カーオーディオ装置用の無線ICタグを、たとえば該オーディオ装置のいずれかのスピーカ付近に設けてもよい。
【0056】
さらに、符号85は、車両のエンジンルームが配置されている領域であり、ここには、前述した、車両の走行を制御するための電子制御装置(ECU)のための無線ICタグが設置される(この場合、該タグは、ボンネットの外部でもよいし、ボンネットの内側すなわちエンジンルーム側に配置してもよい)。車両の走行は、エンジンルーム内の動力源(エンジン、モータ等)によって実現されるため、この実施形態では、該走行を制御する電子制御装置用の無線ICタグを、該エンジンルーム付近に設けている。
【0057】
この実施形態では、各装置の機能情報保持ユニット(無線ICタグ)61には、以下のような機能情報が保持されている。
1)エアコン装置用の無線ICタグ:エアコンの温度および風量設定
2)ETC端末装置用の無線ICタグ:ETC利用履歴の取得
3)カーナビゲーション装置用の無線ICタグ:ナビゲーション機能の開始
4)カーオーディオ装置用の無線ICタグ:携帯機器10に記憶された曲の自動再生
5)車両の走行を制御するための電子制御装置用の無線ICタグ:メンテナンス情報の取得
【0058】
前述したように、機能情報保持ユニット61に保持される情報は、該機能情報保持ユニット61に対応する装置63に備えられている様々な機能のうち、特定の機能を示すデータである。したがって、上記1)の場合、エアコン装置用の無線ICタグには、エアコン装置に備えられている様々な機能のうち、温度および風量設定機能を示すデータが保持されることを示している。
【0059】
上記2)の場合、ETC端末装置用の無線ICタグには、ETC端末装置に備えられている機能のうち、ETC利用履歴を取得する機能を示すデータが保持されている。上記3)の場合、カーナビゲーション装置用の無線ICタグには、ナビゲーション機能を開始する機能を示すデータが保持されている。上記4)の場合、カーオーディオ装置用の無線ICタグには、携帯機器10の所定の記憶領域に記憶された曲の自動再生の機能を示すデータが保持されている。
【0060】
上記5)の場合、車両の走行を制御するための電子制御装置用の無線ICタグには、該電子制御装置の機能のうち、所定のメンテナンス情報(たとえば、バッテリに関するメンテナンス情報等)を取得する機能を示すデータが保持されている。
【0061】
図3に戻り、ユーザは、所望の使用したい機能を示す機能情報保持ユニット61付近に、携帯機器10を近づけることにより、携帯機器10の読み取り部41によって、該機能情報保持ユニット61に保持された機能情報が読み取られる。携帯機器10の記憶部15には、各機能情報保持ユニット61に保持された機能情報により特定される機能を実現するためのプログラムが、予め記憶されている。アプリケーション実行部111は、読み取り部41によって読み取られた機能情報に対応するプログラムを、記憶部15から読み出し、これを実行する。こうして、ユーザは、所望の機能情報保持ユニット61に携帯機器10を近づけるだけで、所望の機能を実現するアプリケーション(プログラム)を自動的に起動させることができる。
【0062】
アプリケーション実行部111によって該プログラムが起動された後、アプリケーション実行部111は、送受信制御部117を介して、車載機器20と通信接続を取るよう指示する。この指示は、起動したプログラムを介して行ってもよいし、該起動したプログラムとは別個のプログラムを介して行ってもよい。この指示に応じて、送受信制御部117は、車内通信部17および27を介して、車載機器20の装置通信部43と通信接続を確立する。装置通信部43は、携帯機器10と、各種の装備された装置63との間の通信のインターフェースを取るよう動作する。したがって、携帯機器10は、対応する装置63と、車載機器20の装置通信部43を介して通信接続を確立することができる。その後、上記の機能情報保持ユニット61の機能情報に対応して起動されたプログラムは、必要に応じて、該装置通信部43を介して、対応する装置63と情報のやりとりを行うことができる。
【0063】
具体例を説明すると、たとえば、ユーザが、エアコン装置63の温度を設定したいと所望する場合、携帯機器10を、領域81(図4)内に設置された無線ICタグ61に近づける。携帯機器10は、該無線ICタグ61から、温度および風量設定という機能情報を読み出し、該機能情報に対応するプログラム、すなわちエアコンの温度および風量設定のためのプログラムを自動的に読み出して起動する。該プログラムは、ユーザが温度および風量を設定することを可能にするプログラムである。該プログラムが起動された後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介してエアコン装置63との間に、通信接続が確立される。該プログラムは、該通信接続を使用して、エアコン装置63から、現在設定されている温度および風量を示すデータを取得し、これを、たとえば温度および風量を変更するための画面と共に、携帯機器10のディスプレイ11上に表示する。ユーザは、現在の温度および風量を確認しつつ、必要に応じて、該画面上で、温度および風量を変更することができる。温度および風量の変更操作が行われたならば、該プログラムは、エアコン装置63宛の該変更内容を示すデータを、送受信制御部117を介して車載機器20に送る。車載機器20の装置通信部43は、該データを、宛先となるエアコン装置63に渡す。エアコン装置63は、該データの受信に応じて、温度および風量の変更を実施する。
【0064】
このように、エアコンの温度ないし風量を変更したいと所望するユーザは、携帯機器10を、エアコンの送風口付近の領域81に近づけるだけで、該変更のためのアプリケーション(プログラム)を自動的に起動させることができ、該起動したアプリケーションを介して、温度ないし風量を変更することができる。ユーザは、携帯機器10に実装されている数十ないし数百のアプリケーションの中から、温度ないし風量変更のアプリケーションを探す必要が無い。
【0065】
また、機能情報保持ユニット61には、対応する装置の有する様々な機能のうち、特定の機能を示すデータが保持されているため、該特定の機能を直接実現するアプリケーションを起動させることができる。したがって、ユーザは、該装置に関する様々な機能のうち、所望の機能に関するアプリケーションを探す必要もない。たとえば、エアコンに関する様々な機能を実現するアプリケーションを起動すると、さらに、特定の機能をそこから探す必要が生じるため、該特定の機能を実現するのに手間がかかる。機能情報保持ユニット61を用いることにより、このような手間を省くことができる。
【0066】
さらに、エアコン装置の送風口91近くにエアコン装置用の機能情報保持ユニット61が設けられ、また、ETC端末装置の近くにETC端末装置用の機能情報保持ユニット61が設けられ、というように、機能情報保持ユニット61は、対応する装置もしくは該装置に関連する位置付近に設けられているため、ユーザは、設置されている機能情報保持ユニット61が、どの装備のどの機能に関するものかを、直感的に把握しやすい。したがって、所望の機能のアプリケーションの自動起動に関し、携帯機器10を近づける場所を直感的に認識することができる。
【0067】
なお、図2を参照して述べた形態では、携帯機器10のアプリケーションからの画面や音声データは、表示制御部113および音声制御部114を介して送受信制御部117に渡された後、車載機器20に送信され、出力制御部213によって、車両の表示装置21ないしスピーカ22に出力される。しかしながら、上記のように、図3を参照して述べた形態、すなわち機能情報ユニット61からの機能情報によって自動的に起動されるアプリケーションからの画面や音声データは、車両の表示装置21もしくはスピーカ22に出力されるのではなく、携帯機器10のディスプレイ11もしくはスピーカ12に出力されるようにしてもよい。この場合、アプリケーション実行部111は、表示制御部113を介してディスプレイ11に画面を表示すると共に、音声制御部114を介してスピーカ12に音ないし音声を出力することとなる。こうすることにより、携帯機器10を、車両に装備された装置63のリモコン端末として用いることができる。そして、車両に表示装置21が装備されていない場合でも(たとえば、カーナビゲーション装置が搭載されていない場合には、表示装置21が装備されていない場合もある)、機能情報ユニット61からの機能情報で自動的に起動されるアプリケーションによって提供される機能を、携帯機器10のディスプレイ11を見ながら操作することができるので、利便性が向上する。
【0068】
しかしながら、代替的に、携帯機器10のディスプレイ11やスピーカ12に代えて、もしくは該ディスプレイ11やスピーカ12に加えて、機能情報ユニット61からの機能情報で自動的に起動されるアプリケーションからの画面ないし音声データを、図2を参照して説明したような手法で、車載機器20の表示装置21ないしスピーカ22に出力するようにしてもよい。こうして表示装置21上に表示された画面やスピーカ22から出力された音声に対し、入力装置23を介してユーザは所定の入力操作を行うことができ、該入力操作に応じた信号(データ)は、車内通信部27を介して携帯機器10に送信される。アプリケーション実行部111は、現在実行中のプログラムに従って、携帯機器10の送受信制御部117を介して受信された該信号に応じた処理を行う。
【0069】
このように、本願発明は、一実施形態では、図2に示すような形態を前提としているものの、車両内に表示装置21が設けられていない他の形態にも適用可能である点に注意されたい。
【0070】
参考までに、上記2)から5)の具体例について、さらに説明する。
【0071】
上記2)について、ユーザが、ETCの利用履歴を参照したいと所望する場合、携帯機器10を、領域82(図4)内に設置された無線ICタグ61に近づける。携帯機器10は、該無線ICタグ61から、ETC利用履歴の取得という機能情報を読み出し、該機能情報に対応するプログラム、すなわちETC利用履歴の取得のためのプログラムを自動的に読み出して起動する。該プログラムは、ETC端末装置92を介してETCの過去の利用履歴を取得し、これをユーザに表示することを可能にするプログラムである。該プログラムが起動された後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介してETC端末装置92との間に、通信接続が確立される。この実施形態では、ETC端末装置92は、たとえば挿入されるETCカードから、ETCの利用履歴を取得する機能を有している。該起動されたプログラムは、該通信接続を使用して、ETC端末装置92によって取得された利用履歴のデータを、該ETC端末装置92から受信し、該利用履歴を表示した画面を、携帯機器10のディスプレイ11上に表示する。こうして、ユーザは、ETCの利用履歴を携帯機器10上で簡単に閲覧することができる。
【0072】
また、上記3)について、ユーザが、ナビゲーション機能を利用したいと所望する場合、携帯機器10を、領域83(図3)内に設置された挿入口93に設置する。この設置により、携帯機器10は、該領域83内の無線ICタグ61から、ナビゲーション機能の開始という機能情報を読み出し、該機能情報に対応するプログラム、すなわちカーナビゲーション装置を起動するためのプログラムを自動的に読み出して起動する。該プログラムが起動された後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介してカーナビゲーション装置(図示せず)との間に、通信接続が確立される。該プログラムは、該通信接続を使用して、カーナビゲーション装置を起動し、表示装置21上の表示をナビゲーション用に切り換えるよう指示する。これに応じて、カーナビゲーション装置は、車両の現在位置を検出し、該現在位置の周辺の地図データを取得し(たとえば、記憶装置25から、もしくは外部のサーバから)、該地図データ上に、該現在位置を示すマークを重畳した画面を、表示装置21上に表示する。こうして、車両に専用のカーナビゲーション装置が搭載されている場合には、ユーザは、該装置を自動的に起動して、現在位置を含む地図データを自動的に表示させることができる。
【0073】
なお、最近の携帯機器においては、前述したようにナビゲーションのアプリケーションが実装されているものもある。この場合にも、本願発明の手法を応用することができる。たとえば、該無線ICタグ61から、ナビゲーション機能の開始という機能情報を読み出したことに応じて、携帯機器10に記憶されたナビゲーションのプログラムを自動的に読み出して起動する。この場合、車両の表示装置21を、前述した車両に装備された装置63と考えることができる。結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介して表示装置21との間に、通信接続が確立される。これにより、表示装置21は、装置通信部43を介して受け取ったデータのみを表示し、他からのデータは表示しないように、切り換えられることができる。該プログラムは、車両の現在位置を検出して、外部のサーバ32から地図データを取得し、該地図データ上に該現在位置を示すマークが重畳された画面データを生成し、これを、車載機器20に送る。車載機器20の装置通信部43は、該画面データを表示装置21上に表示する。表示装置21上に表示された該画面データに対してユーザにより入力操作がなされると、該操作を表すデータは、装置通信部43を介して携帯機器10に送られ、ナビゲーションのプログラムに渡される。なお、この場合、図2を参照して説明した出力制御部213を、装置通信部43と、装置63としての表示装置21との間に設けて、表示装置21上への出力を制御するようにしてもよい。
【0074】
また、上記4)について、ユーザが、携帯機器10に記憶された曲の自動再生機能を利用したいと所望する場合、携帯機器10を、領域84内に設置された無線ICタグ61と通信可能なように、ダッシュボードの収納ボックス94に入れる。携帯機器10は、該無線ICタグ61から、曲の自動再生という機能情報を読み出し、該機能情報に対応するプログラム、すなわち携帯機器10の所定の記憶領域に記憶された曲を読み出して再生するためのプログラムを自動的に読み出して起動する。該プログラムが起動された後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介してカーオーディオ装置(図示せず)との間に通信接続が確立される。該プログラムは、該記憶領域に記憶された曲のデータを読み出して、これを、車載機器20に送信する。車載機器20の装置通信部43は、該受け取った曲のデータを、カーオーディオ装置に渡す。カーオーディオ装置は、該曲のデータの受信に応じて、該曲を再生し、スピーカ22を介して出力する。なお、この場合も、図2を参照して説明した出力制御部213を、装置通信部43と、装置63としてのカーオーディオ装置との間に設けて、スピーカ22への出力を制御するようにしてもよい。こうして、携帯機器10上に記憶された曲等の音声データを、カーオーディオ装置63を介して車両内で自動的に再生することができる。
【0075】
また、上記5)について、ユーザが、メンテナンス情報を取得したいと所望する場合、携帯機器10を、領域85内に設置された無線ICタグ61に近づける。たとえば、車外において、携帯機器10を、ボンネットに配置された無線ICタグ61に近づけることができる。携帯機器10は、該無線ICタグ61から、メンテナンス情報の取得という機能情報を読み出し、該機能情報に対応するプログラム、すなわちメンテナンス情報を取得して、これをユーザに表示するためのプログラムを自動的に読み出して起動する。該プログラムが起動された後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介して、車両の走行を制御するための所定の電子制御装置(図示せず)との間に通信接続が確立される。該電子制御装置は、所定のメンテナンス情報(たとえば、現在のバッテリの充電量や、エンジンオイルのレベル等)を取得する機能を有している。該起動されたプログラムは、車載機器20の装置通信部43を介して、該電子制御装置によって取得されたメンテナンス情報を、該電子制御装置から受信し、これを、携帯機器10のディスプレイ11上に表示する。なお、該電子制御装置によるメンテナンス情報の取得は、携帯機器10からの要求に応じてリアルタイムに実施してもよいし、定期的に調べられて記憶されたものでもよい。こうして、ユーザは、該メンテナンス情報を閲覧して、車両のメンテナンスがどのような状態にあるかを簡単に確認することができる。携帯機器10のディスプレイ11を用いることにより、車外においても、該メンテナンス情報を確認することができる。
【0076】
上記の車両に装備される装置および機能情報の種類は一例であり、様々な所望の装備およびその特定の機能に本願発明を適用することができる。たとえば、テレビ受信機(テレビチューナ)を車両に設け、表示装置21をテレビ画面として用いることができるが、該テレビ受信機に対応づけて、所定の局からの放送を受信する機能を示す情報を保持した機能情報保持ユニット61を設ける。携帯機器10を、該ユニット61に近づけることにより、携帯機器10において、該所定の局の放送を受信するためのプログラムが起動される。該プログラムの起動後、携帯機器10と車載機器20との間に通信接続が確立され、結果として、携帯機器10と、車載機器20の装置通信部43を介してテレビ受信機との間に、通信接続が確立される。該プログラムは、該所定の局の放送の受信を要求するデータを、装置通信部43を介してテレビ受信機に送信することができる。テレビ受信機は、該要求に応じて、該所定の局からの放送の受信を開始し、該受信した放送のデータを、車両の表示装置21上に表示することができる。こうして、携帯機器10を対応する機能情報保持ユニット61に近づけるだけで、自動的に、所望の局の放送内容を表示させることができる。
【0077】
上記の実施形態では、1つの装置63に対し、1つの機能情報保持ユニット61を設けているが、代替的に、1つの装置63に対し、複数の機能情報保持ユニット61を設けてもよい。たとえば、オーディオ装置に対応づけて、前述したように、携帯機器からの曲を自動再生する機能を示す機能情報保持ユニット61と、該オーディオ装置に備えられているラジオを起動して所定の局を受信する機能を示す機能情報保持ユニット61と、を設けることができる。どちらのユニット61に携帯機器10を近づけるかに応じて、自動起動する機能を切り換えることができる。
【0078】
図5は、この発明の一実施形態に従う、アプリケーション自動起動プロセスのフローチャートを示す。該プロセスは、所定時間間隔で、携帯機器10のCPUによって実行されることができる。
【0079】
ステップS11において、携帯機器10の読み取り部41によって、いずれかの機能情報ユニット61の機能情報が読み取られたかどうかを判断する。この判断がNoであれば、アプリケーションの自動起動は行われないため、当該プロセスを抜ける。この判断がYesであれば、ステップS12に進む。
【0080】
ステップS12において、ステップS11で読み取った機能情報に対応するプログラムを記憶部15から読み出して実行する。ステップS13において、車載機器20と通信接続を確立し、該車載機器20を介して、該読み取った機能情報に対応する装置63と通信接続を確立する。ステップS14において、該プログラムに従って、携帯機器10は、該装置63と必要な情報のやりとりを行い、該読み取った機能情報が示す機能を実現する。
【0081】
前述したように、たとえば読み取った機能情報が、エアコン装置の温度および風量設定という機能を示すものであれば、携帯機器10とエアコン装置との間に、車載機器20を介して通信接続が確立され、エアコン装置から、現在設定されている温度および風量のデータが携帯機器10に送信されてユーザに表示されたり、ユーザが所定の変更画面で設定した温度および風量のデータがエアコン装置に送られて、該エアコン装置の温度および風量を変更することができる。こうして、少ない操作工数および短い操作時間で、ユーザは、エアコン装置の温度および風量の設定を行うことができる。
【0082】
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
10 携帯機器
11 ディスプレイ(タッチパネル)
12 スピーカ
13 入力操作部
20 車載機器
21 表示装置
23 入力装置
22 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、情報処理機能を備える携帯機器と通信する車載機器と、
前記車両に装備された装置が有する機能を特定するための機能情報を保持すると機能情報保持手段と、を備え、
前記携帯機器は、該装備された装置の前記機能情報保持手段により保持された該機能情報を読み取ることに応じて、該機能情報に対応するアプリケーションをユーザが利用可能なように、該アプリケーションに対応するプログラムを自動的に起動し、該起動した後、該装備された装置との接続を、前記車載機器を介して確立する、
システム。
【請求項2】
前記携帯機器は、前記確立された接続を介して、前記プログラムの実行に必要な該装備された装置に関する情報を、前記車載機器を介して、該装置と通信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記車両に装備された装置は、エアコン装置、ETC端末装置、カーオーディオ装置、テレビ受信機、カーナビゲーション装置、表示装置、車両を制御するための電子制御装置のうちの任意のものを含む、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記機能情報の読み取りは、該携帯機器と該機能情報保持手段との間で、ICタグによる通信、無線通信、赤外線通信のいずれかの通信を用いて行われる、
請求項1から3のいずれかに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−10287(P2012−10287A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146805(P2010−146805)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.JAVA
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】