説明

携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン 押さえ構造

【目的】簡単な構造且つ容易な操作で、携帯用電子機器の筐体間の開口部(当接面)における信頼度の高い防滴/防水性を得る。
【構成】ヒンジ機構3にて互いに開閉自在なアッパーケース1とロアケース2(以下、ケース1,2)にはフック7が着接する当接面を設け、その面の段付き部を傾斜面9とする。操作つまみ5に連動して回る偏心したカム6を備えたフック7の内側側面に、傾斜面9と同じ傾斜の傾斜面10を設ける。このフック7をスライドピン8を支点に回転且つ摺動自在にケース2に組立てる。ケース1,2の当接面にフック7を着接して掛け、操作つまみ5を回わすと、カム6の偏心作用でフック7自体がスライドピン8の軸方向に摺動し、傾斜面9,10が互いに喰い込み、ケース1,2間に設けたパッキン4を押さえつけて、機器の防滴/防水構造の信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造に関し、特に筐体間の当接面を密閉するパッキン押さえ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のパッキン押さえ構造では、図3に示す第1の例のように、筐体11間の当接面を密閉するパッキン12を押さえる為、その近傍に複数のねじ13を均等に配置して、このねじ13を均等に締めることによってパッキン12に全体に均一な押さえる力を発生させている。
【0003】また図4に示す第2の従来例においては、筐体14を一側面にてヒンジ構造で開閉自在に一体化させ、その反対側面で、フック16を筐体14間に掛ける事でパッキン15を押さえる力を発生させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図3に示すような従来の技術では、機器の操作者が機器の内部にある電池の着脱あるいは通信ケーブル、ICカード等の着脱をしようとする場合には、ねじ13を取り外す工具が必要となり、かつ取り外し工数も多くかかり、簡単には作業を実施出来ない。
【0005】また図4に示すような従来技術では、パッキン15全体に均一な押さえる力を発生させる為にはフック16を複数個設けなければならない。また、仮に単数個のフック16のみでパッキン15全体に均一に押さえる力を発生させたとしても、フック16自体が機器の側面より突出していれば機器の操作者の携帯性、手持ち性を損なう結果となる。また機能本位の形状を強いられるフック16は、機器全体のデザインをまとめる上で障害となっている。更に、上述のように機器の操作者が機器の開閉を行う場合には、比較的大きな操作力を必要とする。
【0006】本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、簡単な構造でかつ小さな操作力でパッキン全体を均一に押さえて高い信頼度の防滴/防水性を達成し、また外観デザイン的にも問題のない携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造は、蝶着手段により開閉自在にあい対して配置された第1及び第2の筐体と、この第1及び第2の筐体間の閉状態における当接面を密閉するパッキン材と、前記第1及び第2の少なくとも一方の筐体の前記当接面と垂直な一面に前記当接面がなす直線に対し傾斜をつけて形成された第1の段付き部と、前記第1及び第2の筐体の一方側に回動自在且つ摺動自在に支持され前記第1の段付き部に合致する傾斜をなす第2の段付き部を有して前記一面に着接する係着部材と、この係着部材の一端に設けられた偏心カムとを備えてなり;前記一面に着接した状態の前記係着部材が前記偏心カムの回転によって前記直線方向に摺動することにより前記第1及び第2の段付き部の傾斜部分が互いに喰い付いて前記第1及び第2の筐体間を密着すべくしたものである。
【0008】この携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造において、前記蝶着手段がヒンジ機構であり、前記偏心カムは操作つまみと連接している。
【0009】また前記偏心カムには回り止め手段が設けられており、さらに前記第1及び第2の段付き部には前記摺動したとき互いに噛み合う係合部材がそれぞれ設けられている。
【0010】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0011】図1は本発明の一実施例を示し、(a)は係着部材を外した状態、(b)は係着部材を掛けた状態をそれぞれ示す斜視図、図2は図1(b)における要部を示す断面図である。
【0012】図1に示す携帯用電子機器において、互いにあい対して設けられるアッパーケース1とロアケース2は、一側面にてヒンジ機構3により開閉自在に蝶着されて組立てられ、閉状態のときの当接面にパッキン4を挟み込み、アッパーケース1とロアケース2との開口部(当接面)の防滴/防水の効果を得るための主要部を形成している。このアッパーケース1とロアケース2の当接面に対し垂直な一面、即ちヒンジ機構3のある一側面とは反対側の面には、アッパーケース1,ロアケース2を密接させる方向に力を加え、その結果、パッキン4を密着させるための係着部材としてのフック7が係着する。
【0013】フック7は、ある厚みをもった長方形の板状をなし、一方の短辺の端部に偏心したカム6を有し、他方の短辺の隅部に圧入して設けたスライドピン8がロアケース2の下端部の穴に嵌合し、ここを支点としてアッパーケース1,ロアケース2の当接面方向に回転自在となり、アッパーケース1,ロアケース2の当接面に着接する。またスライドピン8は、嵌合したロアケース2の下端部の穴内を軸方向に摺動でき、従ってフック7はアッパーケース1,ロアケース2の当接面がなす直線方向に摺動しうる。またフック7のカム6が存在する側には、その長辺方向端部の板厚部側面に、カム6側からスライドピン8側に向って次第に広くなる傾斜面10が設けられる。なおカム6は、フック7の表面側にある操作つまみ5と連接している。
【0014】一方、フック7が着接するべきアッパーケース1,ロアケース2の当接面には、フック7の厚み分相当が切り欠かれた段付き部となり、その段付き部の面は、フック7の傾斜面10と合致する傾斜面9となって、アッパーケース1,ロアケース2の当接面がなす直線方向に対し傾斜している。このような傾斜面9を有する段付き部に、フック7が嵌まり込むように着接するので、フック7はアッパーケース1,ロアケース2の前面より突出することがなく、機器の外観デザイン上の配慮が施されている。
【0015】このような構成の本実施例において、フック7によってパッキン4に均一な力を加えて押さえつけ、防滴/防水のためにアッパーケース1,ロアケース2間の密着性を高める動作について以下に説明する。
【0016】図1(a)に示す状態では、アッパーケース1とロアケース2はヒンジ機構3を支点にして互いに当接し閉状態となっているが、それぞれの当接面がパッキン4を充分に押さえつける力は発生していない。この状態から、スライドピン8を支点にしてフック7を回転させて起こし、図1(b)に示すように、フック7をアッパーケース1,ロアケース2の当接面に掛けるように着接させる。次に、フック7の表面側にある操作つまみ5を回わすと、図2に示すように、操作つまみ5に連接されているカム6が回転する。
【0017】偏心したカム6が回転すると、アッパーケース1,ロアケース2及びパッキン4に当接したカム6の部分の偏心作用により、フック7は図2のようにスライドピン8の軸方向に摺動する。この摺動により、フック7の傾斜面10がアッパーケース1,ロアケース2の当接面の傾斜面9に次第に喰い込んで行く。フック7の摺動が進むにつれ、傾斜面9,10の喰い込みが強くなり、その結果、アッパーケース1,ロアケース2の当接面の密接度が増し、当接面に挟み込まれたパッキン4を均一にかつ充分に押さえつける力が発生し、パッキン4の密着度を高めることができ、当接面の防滴/防水性を向上することができる。
【0018】なお本実施例では、アッパーケース1,ロアケース2及びフック7において、傾斜面9及び傾斜面10を対照的に2組配置した場合を例示したが、傾斜面9と傾斜面10を片側のみの1組だけ設ける構成としても、上述したのとほぼ同様の作用・効果を得ることができる。
【0019】また、傾斜面9,10の喰い込み力が摩擦となって、カム6に対する回り止め作用を発揮するが、万一、操作つまみ5の誤操作などが発生した場合のカム6の回り止め対策として、クリック式のボールプランジャ及びラチェット機構などをカム6に併設してもよい。
【0020】さらに、傾斜面9,10には、フック7の摺動が進んだときに互いに噛み合うごとき係合部材(例えば、凹凸部など)をそれぞれ設け、フック7が誤ってスライドピン8を支点に開いてしまうのを防止するごとき構成としてもよい。このように、カム6の回り止め、或いはフック7の開き防止などの対策を施した構成を付加することにより、携帯用電子機器としての高い完成度を追及することができる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、機器筐体間の開口部(当接面)に設けられたパッキンを全体に均一に押さえる事が可能となり、その防滴/防水性の信頼度を向上させることができる。また、その操作力を比較的小さくする事ができ、容易な機器の開閉と信頼度の高い防滴/防水性を両立できる。
【0022】更に、フック(係着部材)自体を機器より突出させる事がなく、機器の操作者の携帯性、手持ち性を損なう事はなく、デザイン的にもまとめやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、(a)は係着部材を外した状態の斜視図、(b)は係着部材を掛けた状態の斜視図である。
【図2】図1(b)における要部を示す断面図である。
【図3】第1の従来例を示す斜視図である。
【図4】第2の従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 アッパーケース
2 ロアケース
3 ヒンジ機構
4 パッキン
5 操作つまみ
6 カム
7 フック
8 スライドピン
9,10 傾斜面
11,14 筐体
12,15 パッキン
13 ねじ
16 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蝶着手段により開閉自在にあい対して配置された第1及び第2の筐体と、この第1及び第2の筐体間の閉状態における当接面を密閉するパッキン材と、前記第1及び第2の少なくとも一方の筐体の前記当接面と垂直な一面に前記当接面がなす直線に対し傾斜をつけて形成された第1の段付き部と、前記第1及び第2の筐体の一方側に回動自在且つ摺動自在に支持され前記第1の段付き部に合致する傾斜をなす第2の段付き部を有して前記一面に着接する係着部材と、この係着部材の一端に設けられた偏心カムとを備えてなり;前記一面に着接した状態の前記係着部材が前記偏心カムの回転によって前記直線方向に摺動することにより前記第1及び第2の段付き部の傾斜部分が互いに喰い付いて前記第1及び第2の筐体間を密着すべくしたことを特徴とする携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造。
【請求項2】 前記蝶着手段がヒンジ機構である請求項1記載の携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造。
【請求項3】 前記偏心カムは操作つまみと連接している請求項1または2記載の携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造。
【請求項4】 前記偏心カムには回り止め手段が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造。
【請求項5】 前記第1及び第2の段付き部には前記摺動したとき互いに噛み合う係合部材がそれぞれ設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯用電子機器の開口部の防滴/防水用パッキン押さえ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−8473
【公開日】平成9年(1997)1月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−153159
【出願日】平成7年(1995)6月20日
【出願人】(000197366)静岡日本電気株式会社 (1,236)