説明

携帯端末機器による服薬管理システム

【課題】 薬効、副作用などに関する問診が送信されることにより、患者が常に薬効や副作用の徴候に注意を向けるため、適正な薬剤の投与と重大な副作用の症状を見逃さない。
【解決手段】 薬局に設置され各患者についての処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用、各薬剤毎の服用してから副作用などが生じるまでの時刻等の薬剤情報が記憶されているサーバ2と、処方された薬剤を使用する患者が保有する前記サーバと互いに双方向通信が可能な携帯端末機器3とからなり、患者が前記携帯端末機器3からサーバ2に、薬剤を使用したことを送信することによって、サーバ2内で患者毎に管理される薬剤情報または患者情報の少なくとも一方による薬効に関する問診が前記各薬剤毎の服用してから薬効が生じる時刻に自動的にサーバ2から携帯端末機器3へ随時送信され、且つ患者が前記問診に基づいて判断した前記薬効などが生じる時刻における症状を携帯端末機器3から前記サーバ2へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処方薬剤を使用する患者に対して薬局が行う服薬管理に関するシステムであり、通常行われる投薬時の服薬指導のみではなく、服薬時毎に患者へ連絡する携帯端末による服薬管理システムである。
【背景技術】
【0002】
病院や診療所等の医療機関で診察を受けた患者は、医師によって薬剤を処方され、院内または院外の薬局で薬剤が与えられる。
【0003】
薬剤は、製品によって、それぞれ用法や用量が異なり、正しく使用しなければ、効果が期待できないばかりでなく、危険を伴う場合がある。
【0004】
また、薬剤には、通常、副作用があるため、医師または薬剤師は、処方薬剤の効能に加えて、起こりうる副作用の初期症状や対処等について、患者に適切な説明をしなければならない。
【0005】
そのために、従来より、薬剤の使用法や副作用、注意事項などの薬剤情報を患者に正しく認識させるために、薬剤情報を記載した服薬指導書を患者に渡すとともに口頭で服薬指導を行い、患者が自己監視しながら正しく服薬し、危険を回避できるようにすることが行われている。
【0006】
ところが、患者が入院中の場合には、薬剤の使用時刻毎に看護師等が患者に薬剤を与えたり使用を促したりして服薬管理が行えるうえ、医師が随時回診して、副作用発現の有無を確認することができるが、患者が多忙な日常生活の中で、殊に複数の薬剤を使用している場合には、薬剤毎の使用時刻や用量を間違えやすく、使用時刻が決められた薬剤であっても、忘れてしまったり使用時刻が大幅にずれてしまうことがあった。
【0007】
しかも、多くの患者は、投薬時に副作用、他の薬剤や食品などとの相互作用など注意事項に関する説明を聞いても、次第に忘れてしまううえ、全ての患者が服薬指導書に常に注意を払うとは限らないため、副作用発現の徴候を見逃したり、禁止事項を侵したりして重篤な症状を招いてしまうことがあった。また、薬剤は患者や症状に合わせて処方されるが、処方される薬剤が薬効の点で必ずしも適正でない場合もあり服用後の薬効の確認も必要なことであるが、薬効は、薬剤によってそれぞれ代謝する個所や代謝時間が異なることから薬効が出現する時間が薬剤毎に異なることから個別に薬効を確認するのはきわめて困難である。
【0008】
そこで、本出願人は先に処方薬剤を使用する患者に対して、時間や場所を問わず、常時服薬管理を行うことができるシステムとして、薬局に設置され各患者についての処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用、各薬剤毎の服用してから薬効(副作用などを含む)が生じるまでの時刻等の薬剤情報が記憶されているサーバと、処方された薬剤を使用する患者が保有する前記サーバと互いに双方向通信が可能な携帯端末機器とからなり、前記薬剤の使用時刻になると、前記サーバから前記携帯端末機器へ、音声または文字や画像によって、前記薬剤の使用を促す通知が自動的に送信されるとともに、患者が前記携帯端末機器から前記サーバへ、薬剤を使用したことを送信することによって、前記サーバ内で患者毎に管理される患者情報による薬効、副作用または相互作用発現に関する問診が前記各薬剤毎の服用してから薬効、副作用などが生じる時刻に自動的に前記サーバから前記携帯端末機器へ随時送信される携帯端末機器による服薬管理システムを提案した(特開2003−296454号公報)。
【0009】
前記公報に提示された携帯端末機器による服薬管理システムによれば、薬剤の使用時刻がくると、昼夜を問わず薬局から患者宛に連絡されるので、使用時刻を忘れたり間違えたりすることなく、患者に正しく薬剤を使用させて、確実な治療効果を上げさせることができる。しかも、携帯端末機器を利用することによって、患者は、どこにいてもサーバからの通知を受信することができる。
【0010】
また、各薬剤の注意事項、服用方法、副作用、相互作用などの重要な薬剤情報を患者に通知をすることにより、注意を促すことができ、特に、これらの重要な情報を通常の薬剤情報と区別して表示または表音することにより確実に患者に認識させることができる。
【0011】
更に、薬効、副作用などに関する問診が送信されることにより、患者が常に薬効や副作用の徴候に注意を向けるため、適切な薬剤の選択が可能となったり重大な副作用の症状を見逃すことがないなどの利点がある。
【特許文献1】特開2003−296454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記公報に提示された携帯端末機器による服薬管理システムの改良に係るものであり、一層、患者が救済される携帯端末機器による服薬管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明である携帯端末機器による服薬管理システムは、薬局に設置され各患者についての処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用、各薬剤毎の服用してから副作用などが生じるまでの時刻等の薬剤情報が記憶されているサーバと、処方された薬剤を使用する患者が保有する前記サーバと互いに双方向通信が可能な携帯端末機器とからなり、前記薬剤の使用時刻になると、前記サーバから前記携帯端末機器へ、音声または文字や画像によって、前記薬剤の使用を促す第1の通知が自動的に送信されるとともに、患者が前記携帯端末機器から前記サーバへ、薬剤を使用したことを送信することによって、前記サーバ内で患者毎に管理される薬剤情報または患者情報の少なくとも一方による薬効に関する問診が前記各薬剤毎の服用してから薬効が生じる時刻に自動的に前記サーバから前記携帯端末機器へ随時送信され、且つ患者が前記問診に基づいて判断した前記薬効などが生じる時刻における症状を携帯端末機器から前記サーバへ送信することを特徴とする。
【0014】
患者が常に携帯している携帯電話等の携帯端末機器に、薬剤の使用時刻毎に連絡が入ることにより、患者がどこにいても、使用時刻を忘れたり間違えたりせずに、薬剤を使用することができる。
【0015】
また、処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用等の薬剤情報を通知することにより注意を促すことができ、加えて、薬剤情報が記憶されているサーバから処方された薬剤を使用する患者に保有する投薬された薬剤の効果、副作用などに関する問診が患者の携帯端末機器へ送信されるようにすれば、薬効、副作用の徴候の有無について、患者自身が注意を向けるとともに、患者の携帯端末機器からサーバへ送信された症状が薬局側で正確に把握できるので薬効の確認や患者の安全性を図ることができる。
【0016】
特に、本発明において、副作用などが生じる時刻におけるサーバーからの問診に前記サーバへの返信機能が付設されている場合には、患者は問診画面を確認した状態でサーバへ症状を送信することができるのできわめて便利であるとともに確実にサーバへ症状を送信することができる。
【0017】
更に、本発明において、副作用などが生じる時刻における問診に各症状の程度に合わせて形成した段階表示がなされている場合には、患者は症状を段階別に表示された問診に基づいて容易且つ確実に把握できるので、正確な症状をサーバ(薬局)へ伝えることができ、例えば段階表示としてフェイススケールのように画像スケールにより表示すると更に患者は症状を間違いなく把握することができる。
【0018】
加えて、前記段階表示が例えばフェイススケールのような画像スケールにより表示される場合には医療知識のない患者であってもきわめて容易且つ正確に症状を把握して問診に対処することができ、前記サーバに、前記携帯端末機器から送信される副作用などが生じる時刻における症状の段階が予め定めた段階を越えている場合にその旨を告げる警報手段が設けられている場合には、薬局において患者に異常があることを正確に把握するとともに、サーバに、前記警報手段が作動したときに、発信先の携帯端末機器に接続可能な応答手段が具えられている場合には、即座に患者と連絡をとり処置を講じることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用等の薬剤情報を通知することにより注意を促すことができ、特に、これらの情報を通常の情報と区別して目立たせることにより注意を喚起することができる。加えて、薬剤情報が記憶されているサーバと、処方された薬剤を使用する患者が保有す投薬された薬剤の副作用に関する問診が患者の携帯端末機器へ送信されるようにするとともに、患者から、前記問診に基づいて判断した前記副作用などが生じる時刻における症状を携帯端末機器から前記サーバへ即座に送信することにより症状を確実にサーバ(薬局など)に伝えることにより、迅速な対応をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の概要を示し、薬局等に設置されるサーバ2と、個々の患者が保有する携帯電話等の携帯端末機器3とは、インターネットによって双方向に通信が可能とされている。尚、通信網は、インターネットに限らず、例えば携帯電話会社固有の通信網や、既存の電話回線等でも構わない。
【0022】
サーバ2には、薬剤情報21および患者情報22が記憶されている。薬剤情報21には、薬剤毎に、用法や用量などの服薬用法、注意事項、薬効、副作用、他の薬剤や健康食品を含む食品との相互作用の出現時期や初期症状等が登録され、患者情報22には、患者毎に、年齢や性別、病歴、薬歴、治療経過、携帯端末機器3の連絡先等が登録されている。
【0023】
患者は、自分のかかりつけ薬局のサーバ2に、自分が保有する携帯電話等の携帯端末機器3の電話番号やメールアドレス、および病歴や薬歴等、自分の患者情報22を登録する。そして、患者が医療機関を受診し、医師から処方箋が出されると、その薬局へ行って薬剤を受け取る。
【0024】
そして、薬局において、薬剤師等が、サーバ2に患者名および処方薬剤の名称等を入力すると、制御装置によって、薬剤の用法や用量が算出されるとともに、患者の過去の病歴や薬歴等を参照して、薬剤の安全性がチェックされる。安全が確認されると、患者に薬剤が与えられ、その薬剤の使用期間中、患者が保有する携帯端末機器3に、各種連絡が送信されるようになる。
【0025】
即ち、薬剤の使用時刻になると、薬局のサーバ2から患者の携帯端末機器3へ、電話回線を通じて音声で、或いは、例えば図2に示すように、電子メール等を通じて、文字および薬剤の写真を示す画像等が表示画面31に表示されて、使用する薬剤の種類および量が通知される。
【0026】
そこで、患者が、指示に従って薬剤を使用したことをサーバ2へ送信すると、サーバ2内の患者情報22に、当該患者の服薬歴が記録される。
【0027】
加えて、各薬剤の注意事項、服用方法、副作用、相互作用などの薬剤情報の患者への通知を前記通知と一緒に又は別に同様な手段によりサーバ2から通知をする、更に、その際に、例えばこれらの重要な情報を赤色で表示するとともに前記通常の薬剤情報を黒色で表示するなど、通常の薬剤情報と区別して表示または表音することにより患者に注意を促すことができる(図示せず)。
【0028】
また、薬効、副作用や相互作用が現れる時期は薬剤によっても異なるが、本発明によると、投薬された薬剤の効果や副作用が発現しやすい頃合いを見計らって、サーバ2から患者の携帯端末機器3へ、問診事項が送信される。
【0029】
図3は、電子メール等を通じて患者の携帯端末機器3の表示画面31に表示される問診事項の1つの実施の形態を示すものであり、この実施の形態では例えば副作用である痛みをその程度に合わせて例えば10段階に分けた画像スケールにより表示されている。そのため、患者は問診された副作用などが生じる時刻における自身の症状を前記画像スケールにしたがってきわめて容易に判断し、その結果を前記画面に表示された画像スケールを用いて例えばタッチパネルや入力キーなどを用いて選択し、その結果を双方向通信によりサーバ2へ送信する。
【0030】
そして、問診結果を送信されたサーバ2では前記携帯端末機器3から送信される副作用などが生じる時刻における症状の段階を照合手段23により判断し、が予め定めた段階を越えている場合にこれを照合手段により判断し、例えば表示灯や警告音発生などの警報手段25により知らせ、この知らせを受けた薬局ではサーバ2などの応答手段を用いて再度患者と連絡をとり、例えば薬剤師や医師と患者とが直接会話して問診したり問い合わせに応じたりすることができる。
【0031】
このようにして、患者が入院している場合と同様に服薬管理を行うことができるので、例えば一人暮らしの高齢者や多忙な日常生活を送っている患者、或いは在宅療養をしている患者等の服薬管理を確実に行うことができる。従って、入院期間の短縮や日帰り手術の普及を図ることも可能となり、特に、本実施の形態では、サーバ2によって自動的に行われることで、例えば深夜に服用しなければならない場合などでも、人手を煩わせることなく通知することができる。
【0032】
また、図4は、前記問診画面の異なる実施の形態を示すものであり、本実施の形態は、例えば痛みを有する症状に対して例えばモルヒネなどの痛みを和らげる薬効に対する問診画面31に表示された症状が例えばWong−Bakerによるフェイススケールのように患者の痛みの症状(本実施の形態では副作用が痛みの場合を示す)を模した画像スケールを用いて判断できるようになっている。従って、患者は症状を迅速且つ精度良く判断してサーバ2に送信することができるので、患者の状態や薬効などをリアルタイムで確認することができる。
【0033】
尚、前記図3および図4に示した実施の形態は、一例であって、患者が症状を確認するのに適した画像スケールであればよい。また、本実施の形態では、副作用などの症状として痛みが生じる場合や痛み止め効果を有する薬効についての場合などを示したが、これに限らず例えば吐き気、発疹など予め患者の個人情報や服用する薬剤に応じて予め適用が考慮される症状(複数も可)の画像スケールにより問診することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略図。
【図2】本発明の実施の形態による携帯端末機器の受信例を示す正面図。
【図3】本発明の実施の形態による携帯端末機器の異なる受信例を示す正面図。
【図4】本発明の実施の形態による携帯端末機器の更に異なる受信例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
2 サーバ、3 携帯端末機器、21 薬剤情報、22 患者情報、31 表示画面、4 警報手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬局に設置され各患者についての処方薬剤毎の服用方法、注意事項、副作用、相互作用、各薬剤毎の服用してから副作用などが生じるまでの時刻等の薬剤情報が記憶されているサーバと、処方された薬剤を使用する患者が保有する前記サーバと互いに双方向通信が可能な携帯端末機器とからなり、前記薬剤の使用時刻になると、前記サーバから前記携帯端末機器へ、音声または文字や画像によって、前記薬剤の使用を促す第1の通知が自動的に送信されるとともに、患者が前記携帯端末機器から前記サーバへ、薬剤を使用したことを送信することによって、前記サーバ内で患者毎に管理される薬剤情報または患者情報の少なくとも一方による薬効に関する問診が前記各薬剤毎の服用してから薬効が生じる時刻に自動的に前記サーバから前記携帯端末機器へ随時送信され、且つ患者が前記問診に基づいて判断した前記薬効などが生じる時刻における症状を携帯端末機器から前記サーバへ送信することを特徴とする携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項2】
前記薬効などが生じる時刻におけるサーバーからの問診に前記サーバへの返信機能が付設されている請求項1記載の携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項3】
前記薬効などが生じる時刻における問診に薬効や副作用などの各症状の程度に合わせて形成した段階表示がなされている請求項1又は2記載の携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項4】
前記段階表示が画像スケールにより表示される請求項3記載の携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項5】
前記画像スケールがフェイススケールである請求項4記載の携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項6】
前記サーバに、前記携帯端末機器から送信される薬効などが生じる時刻における症状の段階が予め定めた段階を越えている場合にその旨を告げる警報手段が設けられている請求項1,2,3,4または5記載の携帯端末機器による服薬管理システム。
【請求項7】
前記サーバに、前記警報手段が作動したときに、発信先の携帯端末機器に接続可能な応答手段が具えられている請求項6記載の携帯端末機器による服薬管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82125(P2010−82125A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253539(P2008−253539)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(596079138)東日本メディコム株式会社 (19)
【Fターム(参考)】