説明

携帯端末用アンテナ及び携帯端末

【課題】薄肉の筒状アンテナエレメントで構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化することができ、耐久性を向上することができる携帯端末用アンテナを提供する。
【解決手段】第1の筒状アンテナエレメント21に第2の筒状アンテナエレメント22を出没可能に内装して構成されるアンテナエレメント部2と、アンテナエレメント部2を保持する保持部3と、保持部3の下側に設けられる接触導通部4とを備え、第2の筒状アンテナエレメント22の先端部周囲に設けられる接触バネ221の下側にスリーブ224が設けられ、接触バネ221とスリーブ224が第1の筒状アンテナエレメント21に常時内装される携帯端末用アンテナ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末用アンテナ及び携帯端末用アンテナを備える携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、携帯端末用アンテナは、複数の筒状アンテナエレメントと棒状アンテナエレメントが出没可能に設けられる直線状のアンテナエレメント部と、アンテナエレメント部を保持する保持部と、保持部の下側に設けられる接触導通部を有し、内側に接触バネを収容したホルダー部内に接触導通部が摺動可能に設けられる。アンテナの伸長時には接触導通部がホルダー部内の接触バネと接触し、給電部から給電されるホルダー部から接触バネ、接触導通部、保持部を介してアンテナエレメント部に給電される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−35067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の携帯端末の小型化、軽量化に伴い、携帯端末用アンテナには小径な細いものが求められており、アンテナエレメント部を構成する筒状アンテナエレメントも薄肉化したものが求められている。しかしながら、筒状アンテナエレメントを薄肉化した場合、筒状アンテナエレメントに曲げ荷重が負荷された場合に破損する可能性が高くなる。そのため、薄肉の筒状アンテナエレメントで構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化し、耐久性を向上できる携帯端末用アンテナが切望されている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、薄肉の筒状アンテナエレメントで構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化することができ、耐久性を向上することができる携帯端末用アンテナ及びその携帯端末用アンテナを備える携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯端末用アンテナは、一の筒状アンテナエレメントに別の筒状アンテナエレメントを出没可能に内装して構成されるアンテナエレメント部と、前記アンテナエレメント部を保持する保持部と、前記保持部の下側に設けられる接触導通部とを備え、前記別の筒状アンテナエレメントの先端部周囲に設けられる接触バネの下側にスリーブが設けられ、前記接触バネと前記スリーブが前記一の筒状アンテナエレメントに常時内装されることを特徴とする。
この構成によれば、大きな応力が加わりやすい一の筒状アンテナエレメントにおける別の筒状アンテナエレメントの出没箇所近傍について、スリーブで一の筒状アンテナエレメントを補強することが可能となる。従って、薄肉の筒状アンテナエレメントで構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化することができ、耐久性を向上することができる。
【0007】
本発明の携帯端末用アンテナは、前記接触バネの下側で外方に突出する凸部と前記一の筒状アンテナエレメントの下端の縮径部との間に、前記スリーブが遊嵌されていることを特徴とする。
この構成によれば、下端に縮径部が形成されている一の筒状アンテナエレメントに先端側からスリーブを挿入し、その後に、先端側から別の筒状アンテナエレメントを一の筒状アンテナエレメントに挿入する工程により、一の筒状アンテナエレメント内に簡単にスリーブを設けることができる。
【0008】
また、本発明の携帯端末は、本発明の携帯端末用アンテナを備えることを特徴とする。
この構成によれば、本発明の携帯端末用アンテナの効果を有する携帯端末を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯端末用アンテナの薄肉の筒状アンテナエレメントで構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化することができ、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による実施形態の携帯端末用アンテナの伸長状態における正面図。
【図2】(a)は図1のA部の拡大断面図、(b)は図1のB部の拡大図、(c)は図1のC部の拡大図。
【図3】実施例の携帯端末用アンテナに対する曲げ試験を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による実施形態の携帯端末用アンテナについて説明する。
【0012】
〔実施形態の携帯端末用アンテナ〕
実施形態の携帯端末用アンテナ1は、図1及び図2に示すように、地上デジタルテレビ放送を受信する等のために携帯電話等の携帯端末に設置されるものであり、伸縮可能なアンテナエレメント部2と、アンテナエレメント部2を保持する保持部3と、保持部3の下側に設けられる接触導通部4とを備え、携帯端末筐体内に取り付けられるホルダー部5の内側に接触導通部4が摺動可能に設けられている。
【0013】
ホルダー部5の内側には接触バネ51が設けられており、携帯端末筐体内の給電部からホルダー部5、接触バネ51に給電される。アンテナエレメント部2の伸長時には接触導通部4が接触バネ51に接触して電気的に接続され、接触導通部4、保持部3を介してアンテナエレメント部2に給電されるようになっており、アンテナエレメント部2の短縮時には、ホルダー部5の内側に短縮して収容されるアンテナエレメント部2の後述する第1の筒状アンテナエレメント21が接触バネ51に接触して電気的に接続され、アンテナエレメント部2に給電されるようになっている。
【0014】
アンテナエレメント部2は、一の筒状アンテナエレメントに相当する導通性の第1の筒状アンテナエレメント21と、第1の筒状アンテナエレメント21に対して出没可能な別の筒状アンテナエレメントに相当する導通性の第2の筒状アンテナエレメント22と、第2の筒状アンテナエレメント22に対して出没可能な導通性の棒状アンテナエレメント23とから構成される。
【0015】
第1の筒状アンテナエレメント21は、その上端側に樹脂製のキャップ211が嵌め込まれていると共に、その下端に径を絞って丸みを帯びて形成されている縮径部212を有する。第1の筒状アンテナエレメント21は、好適にはステンレスで形成され、その厚さは好ましくは後述する第2の筒状アンテナエレメント22の厚さよりも薄く形成され、0.175mmなど0.15〜0.2mm程度、その長さは30mm〜40mm程度、その内径は1.9〜2.7mm程度等で形成される。
【0016】
第2の筒状アンテナエレメント22は、その先端部の周囲に外側に膨出する接触バネ221が設けられており、接触バネ221の下側には外方に突出する凸部222が第2の筒状アンテナエレメント22の外周に沿って形成されている。第2の筒状アンテナエレメント22の下端には径を絞って丸みを帯びて形成されている縮径部223が形成されており、接触バネ221の下側に位置する凸部222と縮径部223との間にはスリーブ224が遊嵌されている。
【0017】
第2の筒状アンテナエレメント22は、好適にはステンレスで形成され、その厚さは好ましくは第1の筒状アンテナエレメント21の厚さよりも厚く形成され、0.245mmなど0.2〜0.3mm程度、その長さは30mm〜40mm、その内径は1.2〜2.5mm程度等で形成される。また、スリーブ224は、好適にはステンレスで形成され、その厚さは0.07mmなど0.045〜0.15mm程度、その長さは11.4mmなど5〜15mm程度、その外径は1.9〜2.7mm程度等で形成される。
【0018】
第2の筒状アンテナエレメント22は、第1の筒状アンテナエレメント21に出没可能に内装され、接触バネ221が第1アンテナエレメント21の内壁を長手方向に接触しながら摺動し、接触バネ221を介して第2の筒状アンテナエレメント22と第1の筒状アンテナエレメント21とが導通される。
【0019】
第1の筒状アンテナエレメント21を第2の筒状アンテナエレメント22から伸長した際には、縮径部212がスリーブ224に当接して伸長する長さが規制され、第2の筒状アンテナエレメント22の上端部、接触バネ221、スリーブ224は第1の筒状アンテナエレメント21内に常時存在する。また、第1の筒状アンテナエレメント21を第2の筒状アンテナエレメント22に対して短縮した際には、第2の筒状アンテナエレメント22は第1の筒状アンテナエレメント21内に大部分の長さが収納される。
【0020】
棒状アンテナエレメント23は、好適にはニッケル−チタン系合金で形成され、その上端に略球形の拡径部231が形成されており、拡径部231の下側における棒状アンテナエレメント23の上端近傍の周囲には外側に膨出する接触バネ232が設けられている。棒状アンテナエレメント23は第2の筒状アンテナエレメント22内に挿入され、接触バネ232が第2の筒状アンテナエレメント22の内壁を長手方向に接触しながら摺動し、接触バネ232を介して棒状アンテナエレメント23と第2の筒状アンテナエレメント22とが導通される。
【0021】
第2の筒状アンテナエレメント22を棒状アンテナエレメント23から伸長した際には、縮径部223が接触バネ232に当接して伸長する長さが規制され、棒状アンテナエレメント23の拡径部231及び接触バネ232は第2の筒状アンテナエレメント22内に常時存在する。また、第2の筒状アンテナエレメント22を棒状アンテナエレメント23に対して短縮した際には、棒状アンテナエレメント23は第2の筒状アンテナエレメント22内に下部を除いて収納される。
【0022】
保持部3は、略有底円筒形の基体31と、基体31に形成されている嵌込孔32と、その下端部に形成されている略弧状の板状部33とを有し、板状部33の下端面外周には傾斜面で形成される凹部と凸部で構成される係合溝331が複数形成されている。嵌込孔32には、アンテナエレメント部2の基端部に相当する棒状アンテナエレメント23の下端部233が嵌め込まれる。
【0023】
接触導通部4は、接触バネ51と接触する大径部が下部に設けられている略筒形の本体41を有し、本体41の上端部は二股に分かれた板状部42・42になっており、板状部42・42は保持部3の板状部33の両側にそれぞれ配置される。
【0024】
本体41の板状部42・42及び保持部3の板状部33の略中央には孔が形成され、前記孔にピン等を挿入することにより軸支部43とされており、軸支部43で保持部3が接触導通部4に軸支されている。保持部3は、軸支部43を中心に可動して接触導通部4に屈曲可能に支持されると共に、軸支部43で接触導通部4と保持部3及びこれに棒状アンテナエレメント23が嵌め込まれているアンテナエレメント部2とが導通される。
【0025】
また、接触導通部4の内部には、本体41内の上端近傍に配置される球体等である係止体44と、本体41内に配置されて係止体44を上方に付勢するコイルバネである弾性材45とが設けられている。係止体44は弾性材45で接触導通部4の先端方向である上方に付勢され、球体の球面など係止体44の係合面が係合溝331に係脱可能に係合される。
【0026】
この係止体44と係合溝331との係合により、アンテナエレメント部2を所定の方向で定置することが可能になっていると共に、アンテナエレメント部2を軸支部43を中心に回転し、係止体44を弾性材45の弾性力に抗して押し下げ係合溝331の係合から外してアンテナエレメント部2を所定の方向に調整し、調整後の方向に対応する係合溝331に係止体44を係合して定置することが可能になっている。
【0027】
本実施形態の携帯端末用アンテナ1は、大きな応力が加わりやすい第1の筒状アンテナエレメント21における第2の筒状アンテナエレメント22の出没箇所近傍について、スリーブ224で第1の筒状アンテナエレメント21を補強することが可能となる。従って、薄肉の筒状アンテナエレメント21、22で構成される部分の曲げ荷重に対する強度を強化することができ、耐久性を向上することができる。
【0028】
また、凸部222と第1の筒状アンテナエレメント21の下端の縮径部212との間にスリーブ224を遊嵌する構成により、第1の筒状アンテナエレメント21に先端側からスリーブ224を挿入し、その後に、先端側から第2の筒状アンテナエレメント22を第1の筒状アンテナエレメント21に挿入する工程により、第1の筒状アンテナエレメント21内に簡単にスリーブ224を設けることができる。
【0029】
〔実施形態の携帯端末用アンテナの強度試験結果〕
実施形態の携帯端末用アンテナ1の強度試験結果について説明する。
【0030】
本試験で用いられる実施例の携帯端末用アンテナ1は、アンテナエレメント部2の第1の筒状アンテナエレメント21と第2の筒状アンテナエレメント22をステンレス製とし、第1の筒状アンテナエレメント21の厚さを0.175mm、長さを34mm、内径を1.95mmとし、第2の筒状アンテナエレメント22の厚さを0.245mm、長さを39mm、内径を1.21mmとしている。また、スリーブ224の厚さを0.07mm、長さを11.4mm、外径を1.93mmとしている。比較例は、実施例の携帯端末用アンテナ1にスリーブ224を設けないものであり、その他の構成や設定寸法は同一である。
【0031】
この実施例の携帯端末用アンテナ1と比較例の携帯端末用アンテナに対し、図3に示す曲げ試験を行った。この曲げ試験は、アンテナエレメント部2を伸長して、第1の筒状アンテナエレメント21の上端と第2の筒状アンテナエレメント22の下端とをそれぞれ支持体6・6で支持して支点とし、伸長状態の第1の筒状アンテナエレメント21と第2の筒状アンテナエレメント22の中央に荷重Wを1分間加え、1分間耐えられる荷重値を確認するものである。支持体6の携帯端末用アンテナ1の長手方向の長さは10mmであり、その上面は平面状である。尚、比較例は、実施例の伸長状態と第1の筒状アンテナエレメントと第2の筒状アンテナエレメントの伸長状態が同一の長さとなるように設定して曲げ試験を行った。
【0032】
その結果、実施例の携帯端末用アンテナ1は5.0kgf(49N)の荷重に耐えられたのに対し、比較例の携帯端末用アンテナは2.9kgfの荷重にしか耐えることが出来なかった。即ち、本実施形態の携帯端末用アンテナ1の構成とすることにより、大幅に曲げ荷重に対する強度を強化し、耐久性を向上できることが分かる。
【0033】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明には、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば携帯電話等の携帯端末用アンテナとして利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…携帯端末用アンテナ 2…アンテナエレメント部 21…第1の筒状アンテナエレメント 211…キャップ 212…縮径部 22…第2の筒状アンテナエレメント 221…接触バネ 222…凸部 223…縮径部 224…スリーブ 23…棒状アンテナエレメント 231…拡径部 232…接触バネ 233…下端部 3…保持部 31…基体 32…嵌込孔 33…板状部 331…係合溝 4…接触導通部 41…本体 42…板状部 43…軸支部 44…係止体 45…弾性体 5…ホルダー部 51…接触バネ 6…支持体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の筒状アンテナエレメントに別の筒状アンテナエレメントを出没可能に内装して構成されるアンテナエレメント部と、
前記アンテナエレメント部を保持する保持部と、
前記保持部の下側に設けられる接触導通部とを備え、
前記別の筒状アンテナエレメントの先端部周囲に設けられる接触バネの下側にスリーブが設けられ、
前記接触バネと前記スリーブが前記一の筒状アンテナエレメントに常時内装されることを特徴とする携帯端末用アンテナ。
【請求項2】
前記接触バネの下側で外方に突出する凸部と前記一の筒状アンテナエレメントの下端の縮径部との間に、前記スリーブが遊嵌されていることを特徴とする請求項1記載の携帯端末用アンテナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末用アンテナを備えることを特徴とする携帯端末。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−129899(P2012−129899A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281309(P2010−281309)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(391023862)テーダブリュ電気株式会社 (16)
【Fターム(参考)】