搾乳器
【課題】搾乳時に拡径された搾乳部から母乳が漏れたり、リークによる負圧の損失を生じることを有効に防止できる搾乳器を提供すること。
【解決手段】母乳を貯めるための収容容器11と、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部22と、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部70とを有し、前記緩衝部は、使用者の乳輪部に当接する当接部や乳房部に密着する密着部等を有する。
【解決手段】母乳を貯めるための収容容器11と、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部22と、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部70とを有し、前記緩衝部は、使用者の乳輪部に当接する当接部や乳房部に密着する密着部等を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搾乳のために負圧を生成して使用者の母乳を吸引する搾乳器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母親の乳房に当接されるラッパ状に拡径した搾乳部すなわち搾乳拡径部を備えた搾乳器が広く使用されている。
特に搾乳に際して負圧によりミスト状となった母乳が、外部に漏れ出たりすることがないように、搾乳器本体の上端等に凹所を設け、この凹所内にダイヤフラムなどの変形される部材を収容した構成が知られている。
【0003】
すなわち、上記ダイヤフラムにハンドル等の操作部を連結し、ハンドルの往復動によりダイヤフラムを繰り返し引き上げることで負圧を形成する手動搾乳器が知られおり、このような手動搾乳器としては、本出願人が提案した特許第4413231号に係る搾乳器がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の搾乳器は、洗浄のための分解、組立が容易でありながら、操作の際には、操作部が容易に外れることがないようにしたものである。
このため、この搾乳器には、ラッパ状の搾乳拡径部22の内側に、弾性体でなる緩衝部28が着脱可能に取付けられている。
この緩衝部28は搾乳時に搾乳拡径部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4413231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の緩衝部は、ラッパ状の搾乳拡径部が硬質の合成樹脂等により形成されていることから、搾乳時に使用者の乳房との間に介在して、不快な刺激や痛みを与えることを防止以上の積極的役割をほとんど果たし得ないものであった。
【0007】
ここで、搾乳器の使用者は、後述するように、人により乳房の大きさや形状が様々である。
このため、乳房の形状により搾乳時に母乳が搾乳部から漏れてしまう問題がある。
また、搾乳部本体で生成した負圧による吸引以外の物理的作用の工夫が殆どなされていないので、搾乳効率においてもより向上が望まれるものであった。
【0008】
ここで、図13に示すような構成も考えられる。
図13において、符号Bは乳房の本体部分(房部分)であり、符号Kは乳首を示している。図示の場合、大きな乳房を持った使用者が搾乳器を使用する場合を示している。
図13では、乳房Bは、ラッパ状の搾乳拡径部1に受容され、搾乳時には搾乳拡径部1内の負圧により母乳が吸引されるようになっている。
特に図示の場合、上述した問題、すなわち搾乳拡径部1が硬質の合成樹脂等により形成されていて、使用者の乳房に不快な刺激や痛みを与えることを防止するため、該搾乳拡径部1の開口部から内面全体にかけて、広い範囲で、軟質合成樹脂やゴム材料などによる緩衝カバー2を設けている。
この緩衝カバー2の中心には貫通孔5が設けられていて、乳首Kが貫通孔5に入り込み、母乳が搾乳拡径部1の内部に導かれ、図示しない貯留部であるボトル等に送られるようになっている。
【0009】
このような構成では、緩衝部2は、図示するように、中央部において、搾乳拡径部1に使用者の乳房本体Bを当接させた状態で、使用者の乳輪部から乳房本体Bの領域に連続して符号3に示すように広い範囲もしくは領域で密着している。このため、搾乳時に作用する負圧に作用により、乳首Kだけでなく、その周囲の乳輪と、乳房本体Bの皮膚が、矢印6に示すように、強く吸引され、痛みを伴う上に、大きな負圧を作っても、その割に搾乳効率が良好にならないという欠点がある。
【0010】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、特に、搾乳時に拡径された搾乳部から母乳が漏れたり、リークによる負圧の損失を生じることを有効に防止でき、使用者に不快な刺激や痛みを与えないようにした搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して着脱され、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、該搾乳器本体に設けられ、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部とを有しており、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部が、前記搾乳拡径部に着脱自在に配置されていて、前記緩衝部は、中央部において、前記搾乳拡径部に使用者の乳房を当接させた状態で、乳首を露出させるための貫通孔と、前記貫通孔に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部に当接する乳輪当接部と、該乳輪当接部よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、搾乳時に使用者が自己の乳房を搾乳拡径部に当接させると、突出した乳房は、前記緩衝部内に受容される。この状態で、乳房の先端にある乳輪部には、乳輪当接部が当たり、負圧による吸引力で母乳が吸い出されることに加えて、乳輪当接部がこの乳輪部を効果的に押すことにより、母乳の出やすくする。
この状態で、乳房部、すなわち、乳房の乳輪以外の乳輪より外側に位置する領域には、前記乳房密着部が密接に面状に当接して、シールすることにより、負圧のリークを防止するとともに、母乳の外部への漏れを効果的に防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記緩衝部が、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、使用者の乳房が比較的大きな乳房である場合には、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0013】
好ましくは、前記緩衝部には、少なくとも、その下側外縁部に沿って外側に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、搾乳時の母乳漏れは乳房の下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多いので、カバー部を設ける場合は、少なくとも当該領域を覆うように、緩衝部の下側外縁部に沿って延長されたカバー部とすると効果的である。
【0014】
好ましくは、前記緩衝部には、その外縁部に沿ってリング状に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部を緩衝部の外縁に沿って全周にわたってリング状に形成することにより、より広い範囲で乳房を覆うことができるから、搾乳時の母乳漏れがより確実に防止できる。
【0015】
好ましくは、前記乳輪当接部が、前記貫通孔に近接してその外側において、使用者の乳輪の複数個所に当接する突起でなることを特徴とする。
上記構成によれば、前記乳輪当接部は、前記貫通孔に近接してその外側にリング状に突出するのではなく、複数個所において突出する突起とすることで、搾乳時に、使用者の乳輪部を複数個所で確実に押圧することができるので、母乳の出を良くするための刺激を効果的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態が係る搾乳器の概略断面図。
【図2】図1の搾乳器の上部の構造を示す分解斜視図。
【図3】図1の搾乳器の各乳拡径部に着脱される緩衝部の第1の実施形態を示す側面図。
【図4】搾乳時における図3の緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図5】図3の緩衝部の概略正面図。
【図6】図3の緩衝部の第2の実施形態を示す概略正面図。
【図7】搾乳器を使用する者の乳房の大きさと形状の類型を概略的に示す図。
【図8】図3の緩衝部について、搾乳時における緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図9】使用者の乳房の大きさおよび形状に対応して、第2の実施形態を利用する様子を示す拡大縦断面図。
【図10】使用者の乳房の大きさおよび形状に対応して、第2の実施形態を利用する様子を示す拡大縦断面図。
【図11】図3の緩衝部の第3の実施形態を示す概略斜視図。
【図12】図11に示す第3の実施形態について、搾乳時における緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図13】搾乳拡径部に設けた緩衝カバーが使用者に好ましくない影響を与える場合の形態の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1と図2は、本発明の各実施形態に共通した全体の概略構成を示しており、図1は実施形態の概略断面図、図2はその十部の分解斜視図である。なお、これらの図においては緩衝部の構造は参考程度に示しており、他の図において詳細に示すものである。
図1及び図2において、搾乳器20は、搾乳器本体21(以下、「本体」という)と、操作手段であるハンドル61と、搾乳した母乳を貯留するための収容容器としてのボトル11を備えている。ハンドル61は搾乳器本体21と着脱できるようになっている。
また、図1に示されているように、本体21の負圧発生部材30を装着した上部には、略ドーム状のフード15が着脱されるようになっている。
図1を参照して理解されるように、フード15はハンドル61の箇所が切りかかれており、該ハンドル61を避けて装着されることで、負圧発生部材30などをカバーして保護することができるようになっている。なお、このフード15が無い構成としてもよい。
また、この実施形態では、手動で負圧を形成する構成としたが、広く実施されているように、電動モータ等を用いて負圧を形成するものでもよい。
【0019】
本体21は、全体が、比較的軽く、丈夫な合成樹脂材料により成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン等により形成されている。
【0020】
本体21は、上記ボトル11と着脱する着脱部25を備えている。着脱部25は、例えば、図1に示されているように、偏平な筒状部分であって、内側に雌ネジ部25aを備えており、ボトル11の瓶口の周囲に形成された雄ネジ部と螺合されるようになっている。
尚、ボトル11は、搾乳器20の専用品でもよいし、着脱部25に適合した哺乳瓶等を利用してもよく、また、成形された容器ではなく、袋状とされていてもよい。
【0021】
本体21の着脱部25の上部には、斜めに傾斜した状態で、先端が拡径して開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳拡径部22が設けられている。搾乳拡径部22の開口側には、弾性体でなる緩衝部70が着脱可能に取付けられている。
緩衝部70は搾乳時に搾乳拡径部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。緩衝部70の構造は、図1と異なる方が好ましいので、後で詳しく説明する。
【0022】
搾乳拡径部22の搾乳部通気路23は、通気及び搾乳した母乳の通路とされ、下方に曲折してボトル11側に向かうようにされている。また、搾乳拡径部22の搾乳部通気路23の開口は、本体21とボトル11との着脱部25の内側であり、小室26が装着されている。また、搾乳部通気路23の下方に向かう部分23aと隣接して、隔壁24を介してもうひとつの通気路27が設けられている。通気路27の下端開口は、図示されているように小室26内で搾乳部通気路の下方に向かう部分23aと連通している。
通気路27の上端は、図2に示すように、開口43となり、該開口43を囲むようにほぼ円形に拡がる装着部41となっている。装着部41は負圧発生部材30を装着する部分である。負圧発生部材30については、後で詳しく説明する。
この装着部41の上面は上記開口43に向かって僅かに下降するように傾斜する傾斜面42とされている。
【0023】
上記小室26は、図1に示されているように、全体がシリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の弾性体で形成された中空状のキャップ状の形態であり、下端側の両側壁26b、26cは薄肉とされて下端に向けて互いに幅が徐々に接近するように形成された弾性体の傾斜壁でなる弁体となっている。両側壁26b、26cの接近した下端には、スリット26dが設けられており、搾乳した母乳が小室26の中空内に所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、スリット26dが開いて、母乳はボトル11内に落とされるようになっている。また、傾斜壁の下端にスリット26dを形成したことにより、負圧時にボトル11内の空気が小室26に入ることを防ぐようになっている。
さらに、搾乳器本体21の着脱部25に隣接した箇所には、ボトル11内に母乳が溜まった際における圧力を逃がすよう、外気とボトル11内を連通する小さな通気孔29が形成されている。
【0024】
負圧発生部材30は、全体として比較的扁平な有底の円筒体に近い形態である。
具体的には、図1に示すように、負圧発生部材30は、外側で起立して、その外径を保持する程度の剛性を備える第1の壁部31と、その上端部が一体に内側に折り返され、該折り返しより先の部分を肉薄に形成して設けた内側壁部としての第2の壁部32とを有している。この第2の壁部32は変形部であり、その下端は円筒形状の下部を塞ぐように一体に延長して設けた比較的広い内側底部である底面部33とされている。
すなわち、第1の壁部31も第2の壁部32も同じ材料で形成されているが、その材料の厚みを異ならせることにより異なる剛性が付与されており、これにより、第1の壁部31は変形しないが、第2の壁部32は変形できるようにされていて、後述するように一定量の負圧を確保するよう第1の壁部31に沿うように配置されている。
【0025】
負圧発生部材30は、後述するようにハンドル61が操作されることにより、変形部である第2の壁部32が変形し、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積を変更することで、該内部空間Sと空気通路27、小室26を介して連通された搾乳部通気路23(図1参照)内の空気を吸引し、負圧を形成することができるようにされている。
この際、壁部すなわち、第1の壁部31は殆ど変形せず、装着部41に対する装着状態を保持できるようになっている。
好ましくは、図2に示すように、第1の壁部31の外面には、縦方向に延びる補強リブ52が形成され、さらにその形状を保持する機能が強化されている。
また、図1に示すように、変形部である第2の壁部32と第1の壁部31の対向面には、これらの間に介在するよう縦方向に延びる縦長のリブ51が設けられている。ここでは第1の壁部31の内面側に縦長のリブ51が形成されている。これにより、変形部である第2の壁部32が繰り返し変形され、元の形状に復帰する際の該復帰の時に、第2の壁部32と第1の壁部31の対向面が互いに当たり合って操作音を発生し、それが不快な音となることが有効に防止されるようになっている。
【0026】
変形部である第2の壁部32を変形させるため、結合部(材)35が設けられている。
結合部(材)35は、変形部である第2の壁部32とは異なる硬い材料で形成されている。結合部(材)35は、例えば、全体がポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等の比較的硬質の合成樹脂で形成されており、基端部が広く拡径された平たい円盤状のベース部36を有している。さらに、図1において、結合部(材)35は、該ベース部36と一体にその上に形成され、強度を持たせるために十分大きな外径を備えた低く起立するボス部37と、該ボス37から比較的細く延びる延長部37aを備え、しかも延長部37aの先端には断面円または楕円もしくは長円状などの膨出部あるいは拡径部でなる係合部38を有している。
【0027】
底面部33の中央部には貫通孔もしくは通し孔34が形成されている。
すなわち、負圧発生部材30と結合部材35を別体に形成する場合には、符号34は通し孔となり、ボス部37の外径よりも、通し孔34が僅かに小さい内径とされて底面部33の裏面からボス部37を挿通することにより、確実に密閉を保ちつつ、きわめて容易に装着されることになる。この場合には、洗浄などに際して、着脱がしやすい。
これに対して、底面部33や貫通孔34に対して、結合部35を一体に結合するように、二色成形やインサート成形により一体成形することもできる。この場合には、製造コストはその分高くなるが、負圧発生部材30全体が一体の部品になり、取り扱いが容易になる。
【0028】
以上の構成でなる負圧発生部材30は、図1に示すように、その略円形状とされた着脱部53によって、搾乳器本体21の略円形状とされて着脱部53よりも僅かに大きな径とされた装着部41の周縁部に対して、着脱される。
図1および図2において、負圧発生部材30の着脱部53は、第1の壁部31が下方に延長され、かつ内側に曲折されることにより、その下端には内方に突出する負圧発生側フランジ部である内向きフランジ53aと、その上側であって内側に形成された負圧発生側溝部である内溝53bを有しており、全体として所定のゴム状の弾性を備えている。
これに対して、装着部41の周縁部には、外向きの二重となったフランジが形成されている。すなわち、装着部41の上端であって、外方に突出した本体側フランジ部である第1のフランジ44と、第1のフランジ44の下方であって、着脱部53の下端及び該第1のフランジ44よりも大きな外径を備えた位置決め手段である第2のフランジ45を備えるとともに、第1のフランジ44と第2のフランジ45との間が縮径されることで内側に入り込んだ本体側溝部である外溝46が形成されている。
【0029】
かくして、使用者が負圧発生部材30の第1の壁部31と第2の壁部32からなる壁面を把持し、把持した位置と逆側に位置する着脱部53の下端である内向きフランジ53aの外面を、位置決め手段である第2のフランジ45の上向き段部に当接させる。そして、その内向きフランジ53aを外溝46内に係止させた状態で、把持していない側の指で係止させた位置を軽く抑えながら把持した側の手で負圧発生部材30を引っ張る。これにより、係止した位置以外の内向きフランジ53aが変形しながら第1のフランジ44を乗り越えて本体側溝部46に入り込む。そうすると、全体的に着脱部53が周縁部に装着されて、第1のフランジ44が内溝53bに入り込むと共に、内向きフランジ53aが外溝46に入り込んで、密閉を保った状態で装着される。
これにより、負圧発生部材30は、きわめて簡単に装着される。つまり、第2のフランジ45は、内向きフランジ53aの厚さよりも僅かに第1のフランジ44から離間した位置に形成されており、装着時に内向きフランジ53aが外溝46を乗り越えないように突出したリブとされている。
また、これとは逆に負圧発生部材30を取り外す際には、第1の壁部31を手で保持して外方に拡げるだけで、その内向きフランジ53aが、外溝46から外れて第1のフランジ44を乗り越えるので、きわめて簡単に取り外すことができる。
なお、本実施の形態において、第2のフランジ45を第1のフランジ44の相似形状としているが、部分的に第1のフランジ44よりも突出した部分が形成されていれば良く、例えば側縁側に切り欠きを形成して、他方の指で押さえやすくするよう構成してもよい。
【0030】
ここで、負圧発生部材30の第1の壁部31、第2の壁部32、底面部33は、好ましくは、全体が比較的弾性に富んだ柔軟な材料、すなわち、JIS−K6253(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度がHS30〜70程度の合成樹脂、例えばシリコーンゴムやイソプレンゴム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)等のエラストマー等により一体に形成されている。
また、好ましくは、第1の壁部31の部分を構成する材料の厚みが1.5mm〜3.0mmとされ、第2の壁部32を構成する材料の厚みが1.0mm〜2.5mmとされる。
【0031】
負圧発生部材30の硬度が30より小さいと第1の壁部31に変形がおよび、生成される負圧が小さくなる。硬度が60を超えると後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第2の壁部32の厚みが1.0mmより小さいと変形の際のゴム弾性による延び変形が大きくなり、生成される負圧は小さくなってしまう。厚みが2.5mmを超えると、後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第1の壁部31の厚みが1.5mmより小さいと、負圧形成に際して、該壁部が座屈してしまう。つまり不要な変形を生じ、十分な負圧生成ができない。第1の壁部31の厚みが3.0mmを超えると、搾乳器本体21への装着に際に該壁部があまり変形してくれないので、装着しにくくなる。
【0032】
図1および図2に示すように、本体21の上部において、搾乳部22が延びる位置と反対の位置には、ハンドル61を取り付けるためのアーム48が延びている。該アーム48はその先端が負圧発生部材30に隣接した位置で、該負圧発生部材30の上端を超える箇所に位置している。この実施形態には、アーム48の該先端には、水平に配された円筒状の支軸部49が設けられている。
【0033】
ハンドル61は、全体として、比較的丈夫で軽量な合成樹脂により一体に成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等で成形された成形品である。
すなわち、ハンドル61は図1に示されているように、長尺の部材であり、上端が水平に二股になった切り込みからなる被係合部62を有しており、図2に示すように、結合部(材)35の係合部38に対する被係合部62と簡単に着脱できるようになっている。ハンドル61の他端63は下方に位置してやや外側に張り出しており、全体としてレバー状の外観を示している。
【0034】
ハンドル61は、本体21に対して着脱されるようになっており、図1の固定状態では、ハンドル61の一端寄りの位置に設けた軸受け部64にて、アーム48先端の支軸49に対して回動可能に装着されている。
ハンドル61の他端の外側には、二色成形などにより滑り止め部63aが設けられており、この箇所に操作者が手を当てて操作することで図2の矢印Aに示すように、ボトル11に対して近接/離間するよう往復動されるようになっている。なお、滑り止め部63aは、別材料で形成しなくても、ハンドル61の対応箇所の表面にシボ加工やリブを設ける等の凹凸を設けることによって、滑りにくくなるように摩擦力を高める処理を施してもよい。
【0035】
これに応じて、ハンドル61の先端となる被係合部62は、支軸部49を中心に回動することで矢印Bに示すように上下に往復動するようになっている。使用者がハンドル61をボトル11に近接するよう操作することで、矢印B2方向に移動した時、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1の下側に向かう状態から上側に向かうよう変形させられる。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が増大すると、この内部空間Sに空気が引かれた分、搾乳部通気路23の空気が引かれ、搾乳部22の拡径した先端に使用者の乳房が当接されていると、密閉空間となっているため、該搾乳通気路23が負圧となる。
この負圧によって、搾乳された母乳は、搾乳部通気路の下方に向かう部分23aから小室26に入り込む。該小室26にある程度母乳が溜まる。この時、両側壁26b、26cは薄肉状とされているため、負圧に伴って近接する方向に若干変形して、スリット26dが確実に密閉された状態とされているため、母乳が漏れ出ることはない。
【0036】
使用者がハンドル61を操作し、ボトル11に最も近接した状態とされると、上端62が上限位置Cに移動することとなり、ハンドル61の内側の端部が対向する位置決め部45の外縁に当接し、それ以上移動しない状態となる。その状態では、変形部である第2の壁部32は、中間までめくり上げられた状態でとどまることとなり、元の形状である図1に示す下側に向かう方向に戻ろうとする。
その状態で使用者がハンドル61にかけていた力を緩めると、第2の壁部32が復元しようとする力により、上端62が矢印B1方向に移動し、ハンドル61がボトル11から離間する方向に移動して、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1に示されている状態に復元される。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が減少し、負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、さらに、溜まった母乳の重量に起因して、両側壁26b,26cの先端側が開き、スリット26dが開き、母乳はボトル11内に落とされる。
以上の動作を繰り返すことで、ハンドル61の操作に伴い、負圧発生部材30の動作に基づき、負圧が脈動するように与えられ、搾乳が行われる。
【0037】
以上説明したように搾乳器20によれば、上記説明より理解されるように、搾乳に重要な役割を果たす負圧発生部材30は、搾乳器本体21装着部41に対して着脱される着脱部53、外形を保持し得る程度の剛性を備えた第1の壁部31、変形部である第2の壁部32が弾性を備えた樹脂にて、全て一体に形成されている。
このため、この負圧発生部材30を搾乳器本体21から外すと、該本体21側には、従来の搾乳器のように、変形部、すなわちダイヤフラムなどを収容するための成形により作られた凹部もしくは凹所が存在しない。
【0038】
このため、洗いにくい該凹所などに母乳の残滓等がこびりつき、不潔な器具となることがない。そして、負圧発生分部材30は、全体に弾性を有する柔軟な材料で形成されているから、搾乳器本体21から取り外して洗浄する際には、作業者が着脱部53付近に指を当てて、外側に軽く変形させるようにしれば、簡単に取り外すことができ、取り外した負圧発生部材30は、全体が柔軟な材料であるから、隅々まで容易に洗浄できる。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係る緩衝部70の側面図である。
図に置いて、緩衝部70は弾性体、例えば、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の容易に変形し、搾乳時に使用者の乳房に密着し易い材料で一体に成形されている。例えば、シリコーンゴムを使用した場合には、JIS硬度20ないし80程度のもが使用できる
この緩衝部70は、図4のその断面形状が示され、図5にその拡径した開口正面から見た状態が示されている。なお図5は図3と各部の縮尺が異なっているが、図5は緩衝部の正面から見た形状、構造を模式的に表すものであり、異なる構造を示したものではない。
これらの図において、緩衝部70は、搾乳拡径部22の開口側において、図示のようにその開口部の形状に沿ったラッパ状とされて、該搾乳開口部の内側に入り込むようにして装着されている。
【0040】
すなわち、緩衝部70は、一方向に開いた扁平なラッパ状でなり、図3をあわせて参照することにより理解されるように、全体としては扁平なロート状をしている。
具体的には、緩衝部70は、図4に示されているように、中央部において、搾乳拡径部22に使用者の乳房(本体B)を当接させた状態で、乳首Kを搾乳通路内に露出させるための貫通孔71と、この貫通孔71に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部Nに当接する乳輪当接部72と、この乳輪当接部72よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部73とを備えている。この緩衝部70の開口した外縁部である取付け部74は、狭い溝になっており、ラッパ状に開いた搾乳拡径部22の外縁が嵌入されることにより装着されるようになっている。
逆に、この取付け部74を、手指にて外方にめくるようにして、緩衝部70を搾乳拡径部70から取り外すことができるようになっている。
【0041】
すなわち、図1で説明した搾乳器20に図3の緩衝部70を取付けると、搾乳時に使用者が自己の乳房(本体B)を搾乳拡径部22に当接させると(図4参照)、突出した乳房は、緩衝部70内に受容される。この状態で、乳房本体Bの先端にある乳輪部Nには、乳輪当接部72が当たり、負圧による吸引力で母乳が吸い出されることに加えて、乳輪当接部72がこの乳輪部Nを効果的に押すことにより、母乳の出を良くする。
この状態で、乳房部、すなわち、乳房の乳輪以外の乳輪より外側に位置する領域B1には、乳房密着部73が密接に面状に当接して、シールすることにより、負圧の外部へのリークを防止するとともに、母乳の外部への漏れを効果的に防止することができる。
【0042】
ここで、図5に示すように、乳輪当接部72も、乳房密着部73も、ともに貫通孔71と同心円状に、リング状に突出する形態とされているが、このような形態に限らず、乳輪当接部72が、貫通孔71に近接してその外側において、使用者の乳輪Nの複数個所に当接する突起72−1となるように構成してもよい。
この場合乳輪当接部72−1は、貫通孔71に近接してその外側にリング状に突出するのではなく、複数個所において突出する突起とすることで、搾乳時に、使用者の乳輪部Nを複数個所で確実に押圧することができるので、母乳の出を良くするための刺激を効果的に付与することができる。
【0043】
図6は、第2の実施形態であり、緩衝部全体を縦長に形成した形状を示している。
すなわち、緩衝部80は、全体として、横寸法Wよりも縦寸法tが大きくなるようにされている。
好ましくは、貫通孔71を真円とし、また、乳輪当接部72も真円リング状とし、少なくとも乳房当接部83は縦に長い楕円状の突出部とする。なお、ここで「縦」とは使用状態において、使用者の身長に沿った方向であり、「横」とは身体の幅に沿った方向を言う。
【0044】
図6の第2の実施形態のように、緩衝部80が、搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていると、使用者の乳房の本体部分である、乳房本体B(房部分)が比較的大きい場合には、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0045】
以下、この点について乳房の大きさ(特に乳房本体Bの大きさ)と乳房の形状との関係において詳しく説明する。
図7は、根津八紘著「乳房管理学」からの引用である。
図7の左端部には、女性の身体Hが模式的に示されており、乳房の乳首の頂点をTとする。また、身体の前側で乳房の上端部(乳房のはじまる箇所)をSとし、Tを通る水平な仮想線C1とSを通る垂直な仮想線S1を想定する。二つの仮想線C1とS1とにより分割される乳房の領域に関し、上側を「a」下側を「b」として、図7の下側の表が作成されている。この表が乳房の大きさと形状に関する分類を示したものである。
【0046】
図7の下側の表に示された乳房の4つの形態(断面形状)では左側から順にI型、IIa型、IIb型、III型と呼んでいる。これらの乳房の形態においては、左に行くほどb領域が大きく、右へ行くほどa領域が大きい。
この図に示された乳房の類型に関して、右端部に破線で囲んだIIb型と、III型の乳房は、乳房が大きく、かつ下垂があり、乳首が下方を向いている。
【0047】
このような乳房では、搾乳時に、図8に示すような不都合が見られる。
図8で符号Mにより示されているように、大きく膨らんだ乳房本体Bでは、搾乳時に緩衝部70の乳房密着部73の密着が不十分である場合等を原因とする母乳漏れは、緩衝部70の外縁から下方に垂れて、乳房の下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多い。
【0048】
そこで、図9や図10に示すように、図6で説明した第2の実施形態に係る緩衝部80を使用することが好ましい。図9は、IIb型の乳房、図10はIII型の乳房に緩衝部80を使用した状態を示している。
すなわち、緩衝部80は寸法tの方向に長い縦楕円形の緩衝部であり、乳房密着部83が縦方向に長いものである。
これらの例に示すように、使用者の乳房が比較的大きな乳房である場合には、緩衝部80は、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0049】
図11の緩衝部100は第3の実施形態に係るものである。
図において、搾乳拡径部22に取付けられた緩衝部100には、その外縁部である取付け部74よりも外側に、周方向に沿ってリング状に一体に拡径するように延長した外縁カバー部101が設けられている。
【0050】
ここで重要なのは、搾乳拡径部22のラッパ状拡径部分22aが、少なくとも乳房本体Bの先端側部分である紡錘状の箇所を十分に受容できる大きさを有していて、さらのその外側に緩衝部100の外縁カバー部101が形成されることである。このような構造をとることにより、外縁カバー部101以下のような作用効果を発揮できる。
図11を参照して容易に理解されるように、外縁カバー部101を緩衝部100の外縁に沿って全周にわたってリング状に形成することにより、より広い範囲で乳房本体Bを覆うことができる。このため、以下の作用効果を発揮できる。
(1)乳房本体の外面にリング状に面接触して、シールできるので、気密性が向上し、搾乳時の負圧を効率よく利用できる。
(2)乳房本体Bを覆うので、図8で説明したような母乳漏れを有効に防止することができる。
(3)乳房本体Bに、リング状に面接触するから、搾乳時の負圧による乳房本体Bに対する負担をリング状に分散することができ、図13の構成と比較して、使用者の乳房本体B全体を搾乳拡径部22内に引きこむことがなく、不快な感触や痛みを与えることがない。
【0051】
ここで、カバー部100は、必ずしても図示したように、外縁部の全周にわたってリング状に設けなくてもよい。図12に示すように、緩衝部100の下縁にのみ、例えば、舌片状のカバー部101aとして形成してもよい。
すなわち、図8で説明したように、搾乳時の母乳漏れは乳房本体Bの下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多いので、外縁カバー部101を設ける場合は、少なくとも当該領域を覆うように、緩衝部の下側外縁部に沿って延長された舌片状のカバー部101aとすると母乳漏れを防止する上で効果的である。
また、舌片状のカバー部101aはラッパ状の搾乳拡径部22の開口外縁に着脱可能なように、搾乳拡径部22と別体に形成し、使用者の乳房の大きさや形状、好みに合わせて使用することができるようにしてもよい。
【0052】
本発明は上述の各実施形態に限定されない。
例えば、操作手段61は手で操作するためのハンドルとしているが、結合部(材)35に連結可能な電動による駆動装置とされていてもよい。
更に、装着部41は上方に面するよう水平方向に形成されているが、通気路23に沿って斜めに傾斜するよう配置してもよく、この時、負圧発生部材30側の通気路27は装着部41の一方に寄った位置に形成し、母乳が流れ落ちるよう構成することが好ましい。
また、各実施形態の個々の構成は全てが必ず必要とされるものではなく、その一部を省略することができるし、この場合、図示しない他の構成と組み合わせて異なる構成の組み合わせのもとで実施されてもよく、各実施形態の構成を組み合せて使用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
11・・・収容容器、20・・・搾乳器、21・・・(搾乳器)本体、22・・・搾乳拡径部、30・・・負圧発生部材、31・・・(第1の)壁部、32・・・変形部(第2の壁部)、33・・・底面部、35・・・結合部(材)、61・・・操作部(ハンドル)、70,80,90,100・・・緩衝部
【技術分野】
【0001】
この発明は、搾乳のために負圧を生成して使用者の母乳を吸引する搾乳器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母親の乳房に当接されるラッパ状に拡径した搾乳部すなわち搾乳拡径部を備えた搾乳器が広く使用されている。
特に搾乳に際して負圧によりミスト状となった母乳が、外部に漏れ出たりすることがないように、搾乳器本体の上端等に凹所を設け、この凹所内にダイヤフラムなどの変形される部材を収容した構成が知られている。
【0003】
すなわち、上記ダイヤフラムにハンドル等の操作部を連結し、ハンドルの往復動によりダイヤフラムを繰り返し引き上げることで負圧を形成する手動搾乳器が知られおり、このような手動搾乳器としては、本出願人が提案した特許第4413231号に係る搾乳器がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の搾乳器は、洗浄のための分解、組立が容易でありながら、操作の際には、操作部が容易に外れることがないようにしたものである。
このため、この搾乳器には、ラッパ状の搾乳拡径部22の内側に、弾性体でなる緩衝部28が着脱可能に取付けられている。
この緩衝部28は搾乳時に搾乳拡径部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4413231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の緩衝部は、ラッパ状の搾乳拡径部が硬質の合成樹脂等により形成されていることから、搾乳時に使用者の乳房との間に介在して、不快な刺激や痛みを与えることを防止以上の積極的役割をほとんど果たし得ないものであった。
【0007】
ここで、搾乳器の使用者は、後述するように、人により乳房の大きさや形状が様々である。
このため、乳房の形状により搾乳時に母乳が搾乳部から漏れてしまう問題がある。
また、搾乳部本体で生成した負圧による吸引以外の物理的作用の工夫が殆どなされていないので、搾乳効率においてもより向上が望まれるものであった。
【0008】
ここで、図13に示すような構成も考えられる。
図13において、符号Bは乳房の本体部分(房部分)であり、符号Kは乳首を示している。図示の場合、大きな乳房を持った使用者が搾乳器を使用する場合を示している。
図13では、乳房Bは、ラッパ状の搾乳拡径部1に受容され、搾乳時には搾乳拡径部1内の負圧により母乳が吸引されるようになっている。
特に図示の場合、上述した問題、すなわち搾乳拡径部1が硬質の合成樹脂等により形成されていて、使用者の乳房に不快な刺激や痛みを与えることを防止するため、該搾乳拡径部1の開口部から内面全体にかけて、広い範囲で、軟質合成樹脂やゴム材料などによる緩衝カバー2を設けている。
この緩衝カバー2の中心には貫通孔5が設けられていて、乳首Kが貫通孔5に入り込み、母乳が搾乳拡径部1の内部に導かれ、図示しない貯留部であるボトル等に送られるようになっている。
【0009】
このような構成では、緩衝部2は、図示するように、中央部において、搾乳拡径部1に使用者の乳房本体Bを当接させた状態で、使用者の乳輪部から乳房本体Bの領域に連続して符号3に示すように広い範囲もしくは領域で密着している。このため、搾乳時に作用する負圧に作用により、乳首Kだけでなく、その周囲の乳輪と、乳房本体Bの皮膚が、矢印6に示すように、強く吸引され、痛みを伴う上に、大きな負圧を作っても、その割に搾乳効率が良好にならないという欠点がある。
【0010】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、特に、搾乳時に拡径された搾乳部から母乳が漏れたり、リークによる負圧の損失を生じることを有効に防止でき、使用者に不快な刺激や痛みを与えないようにした搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して着脱され、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、該搾乳器本体に設けられ、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部とを有しており、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部が、前記搾乳拡径部に着脱自在に配置されていて、前記緩衝部は、中央部において、前記搾乳拡径部に使用者の乳房を当接させた状態で、乳首を露出させるための貫通孔と、前記貫通孔に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部に当接する乳輪当接部と、該乳輪当接部よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、搾乳時に使用者が自己の乳房を搾乳拡径部に当接させると、突出した乳房は、前記緩衝部内に受容される。この状態で、乳房の先端にある乳輪部には、乳輪当接部が当たり、負圧による吸引力で母乳が吸い出されることに加えて、乳輪当接部がこの乳輪部を効果的に押すことにより、母乳の出やすくする。
この状態で、乳房部、すなわち、乳房の乳輪以外の乳輪より外側に位置する領域には、前記乳房密着部が密接に面状に当接して、シールすることにより、負圧のリークを防止するとともに、母乳の外部への漏れを効果的に防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記緩衝部が、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、使用者の乳房が比較的大きな乳房である場合には、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0013】
好ましくは、前記緩衝部には、少なくとも、その下側外縁部に沿って外側に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、搾乳時の母乳漏れは乳房の下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多いので、カバー部を設ける場合は、少なくとも当該領域を覆うように、緩衝部の下側外縁部に沿って延長されたカバー部とすると効果的である。
【0014】
好ましくは、前記緩衝部には、その外縁部に沿ってリング状に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部を緩衝部の外縁に沿って全周にわたってリング状に形成することにより、より広い範囲で乳房を覆うことができるから、搾乳時の母乳漏れがより確実に防止できる。
【0015】
好ましくは、前記乳輪当接部が、前記貫通孔に近接してその外側において、使用者の乳輪の複数個所に当接する突起でなることを特徴とする。
上記構成によれば、前記乳輪当接部は、前記貫通孔に近接してその外側にリング状に突出するのではなく、複数個所において突出する突起とすることで、搾乳時に、使用者の乳輪部を複数個所で確実に押圧することができるので、母乳の出を良くするための刺激を効果的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態が係る搾乳器の概略断面図。
【図2】図1の搾乳器の上部の構造を示す分解斜視図。
【図3】図1の搾乳器の各乳拡径部に着脱される緩衝部の第1の実施形態を示す側面図。
【図4】搾乳時における図3の緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図5】図3の緩衝部の概略正面図。
【図6】図3の緩衝部の第2の実施形態を示す概略正面図。
【図7】搾乳器を使用する者の乳房の大きさと形状の類型を概略的に示す図。
【図8】図3の緩衝部について、搾乳時における緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図9】使用者の乳房の大きさおよび形状に対応して、第2の実施形態を利用する様子を示す拡大縦断面図。
【図10】使用者の乳房の大きさおよび形状に対応して、第2の実施形態を利用する様子を示す拡大縦断面図。
【図11】図3の緩衝部の第3の実施形態を示す概略斜視図。
【図12】図11に示す第3の実施形態について、搾乳時における緩衝部と使用者の乳房及び乳輪部近傍の関係を示す拡大縦断面図。
【図13】搾乳拡径部に設けた緩衝カバーが使用者に好ましくない影響を与える場合の形態の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1と図2は、本発明の各実施形態に共通した全体の概略構成を示しており、図1は実施形態の概略断面図、図2はその十部の分解斜視図である。なお、これらの図においては緩衝部の構造は参考程度に示しており、他の図において詳細に示すものである。
図1及び図2において、搾乳器20は、搾乳器本体21(以下、「本体」という)と、操作手段であるハンドル61と、搾乳した母乳を貯留するための収容容器としてのボトル11を備えている。ハンドル61は搾乳器本体21と着脱できるようになっている。
また、図1に示されているように、本体21の負圧発生部材30を装着した上部には、略ドーム状のフード15が着脱されるようになっている。
図1を参照して理解されるように、フード15はハンドル61の箇所が切りかかれており、該ハンドル61を避けて装着されることで、負圧発生部材30などをカバーして保護することができるようになっている。なお、このフード15が無い構成としてもよい。
また、この実施形態では、手動で負圧を形成する構成としたが、広く実施されているように、電動モータ等を用いて負圧を形成するものでもよい。
【0019】
本体21は、全体が、比較的軽く、丈夫な合成樹脂材料により成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン等により形成されている。
【0020】
本体21は、上記ボトル11と着脱する着脱部25を備えている。着脱部25は、例えば、図1に示されているように、偏平な筒状部分であって、内側に雌ネジ部25aを備えており、ボトル11の瓶口の周囲に形成された雄ネジ部と螺合されるようになっている。
尚、ボトル11は、搾乳器20の専用品でもよいし、着脱部25に適合した哺乳瓶等を利用してもよく、また、成形された容器ではなく、袋状とされていてもよい。
【0021】
本体21の着脱部25の上部には、斜めに傾斜した状態で、先端が拡径して開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳拡径部22が設けられている。搾乳拡径部22の開口側には、弾性体でなる緩衝部70が着脱可能に取付けられている。
緩衝部70は搾乳時に搾乳拡径部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。緩衝部70の構造は、図1と異なる方が好ましいので、後で詳しく説明する。
【0022】
搾乳拡径部22の搾乳部通気路23は、通気及び搾乳した母乳の通路とされ、下方に曲折してボトル11側に向かうようにされている。また、搾乳拡径部22の搾乳部通気路23の開口は、本体21とボトル11との着脱部25の内側であり、小室26が装着されている。また、搾乳部通気路23の下方に向かう部分23aと隣接して、隔壁24を介してもうひとつの通気路27が設けられている。通気路27の下端開口は、図示されているように小室26内で搾乳部通気路の下方に向かう部分23aと連通している。
通気路27の上端は、図2に示すように、開口43となり、該開口43を囲むようにほぼ円形に拡がる装着部41となっている。装着部41は負圧発生部材30を装着する部分である。負圧発生部材30については、後で詳しく説明する。
この装着部41の上面は上記開口43に向かって僅かに下降するように傾斜する傾斜面42とされている。
【0023】
上記小室26は、図1に示されているように、全体がシリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の弾性体で形成された中空状のキャップ状の形態であり、下端側の両側壁26b、26cは薄肉とされて下端に向けて互いに幅が徐々に接近するように形成された弾性体の傾斜壁でなる弁体となっている。両側壁26b、26cの接近した下端には、スリット26dが設けられており、搾乳した母乳が小室26の中空内に所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、スリット26dが開いて、母乳はボトル11内に落とされるようになっている。また、傾斜壁の下端にスリット26dを形成したことにより、負圧時にボトル11内の空気が小室26に入ることを防ぐようになっている。
さらに、搾乳器本体21の着脱部25に隣接した箇所には、ボトル11内に母乳が溜まった際における圧力を逃がすよう、外気とボトル11内を連通する小さな通気孔29が形成されている。
【0024】
負圧発生部材30は、全体として比較的扁平な有底の円筒体に近い形態である。
具体的には、図1に示すように、負圧発生部材30は、外側で起立して、その外径を保持する程度の剛性を備える第1の壁部31と、その上端部が一体に内側に折り返され、該折り返しより先の部分を肉薄に形成して設けた内側壁部としての第2の壁部32とを有している。この第2の壁部32は変形部であり、その下端は円筒形状の下部を塞ぐように一体に延長して設けた比較的広い内側底部である底面部33とされている。
すなわち、第1の壁部31も第2の壁部32も同じ材料で形成されているが、その材料の厚みを異ならせることにより異なる剛性が付与されており、これにより、第1の壁部31は変形しないが、第2の壁部32は変形できるようにされていて、後述するように一定量の負圧を確保するよう第1の壁部31に沿うように配置されている。
【0025】
負圧発生部材30は、後述するようにハンドル61が操作されることにより、変形部である第2の壁部32が変形し、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積を変更することで、該内部空間Sと空気通路27、小室26を介して連通された搾乳部通気路23(図1参照)内の空気を吸引し、負圧を形成することができるようにされている。
この際、壁部すなわち、第1の壁部31は殆ど変形せず、装着部41に対する装着状態を保持できるようになっている。
好ましくは、図2に示すように、第1の壁部31の外面には、縦方向に延びる補強リブ52が形成され、さらにその形状を保持する機能が強化されている。
また、図1に示すように、変形部である第2の壁部32と第1の壁部31の対向面には、これらの間に介在するよう縦方向に延びる縦長のリブ51が設けられている。ここでは第1の壁部31の内面側に縦長のリブ51が形成されている。これにより、変形部である第2の壁部32が繰り返し変形され、元の形状に復帰する際の該復帰の時に、第2の壁部32と第1の壁部31の対向面が互いに当たり合って操作音を発生し、それが不快な音となることが有効に防止されるようになっている。
【0026】
変形部である第2の壁部32を変形させるため、結合部(材)35が設けられている。
結合部(材)35は、変形部である第2の壁部32とは異なる硬い材料で形成されている。結合部(材)35は、例えば、全体がポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等の比較的硬質の合成樹脂で形成されており、基端部が広く拡径された平たい円盤状のベース部36を有している。さらに、図1において、結合部(材)35は、該ベース部36と一体にその上に形成され、強度を持たせるために十分大きな外径を備えた低く起立するボス部37と、該ボス37から比較的細く延びる延長部37aを備え、しかも延長部37aの先端には断面円または楕円もしくは長円状などの膨出部あるいは拡径部でなる係合部38を有している。
【0027】
底面部33の中央部には貫通孔もしくは通し孔34が形成されている。
すなわち、負圧発生部材30と結合部材35を別体に形成する場合には、符号34は通し孔となり、ボス部37の外径よりも、通し孔34が僅かに小さい内径とされて底面部33の裏面からボス部37を挿通することにより、確実に密閉を保ちつつ、きわめて容易に装着されることになる。この場合には、洗浄などに際して、着脱がしやすい。
これに対して、底面部33や貫通孔34に対して、結合部35を一体に結合するように、二色成形やインサート成形により一体成形することもできる。この場合には、製造コストはその分高くなるが、負圧発生部材30全体が一体の部品になり、取り扱いが容易になる。
【0028】
以上の構成でなる負圧発生部材30は、図1に示すように、その略円形状とされた着脱部53によって、搾乳器本体21の略円形状とされて着脱部53よりも僅かに大きな径とされた装着部41の周縁部に対して、着脱される。
図1および図2において、負圧発生部材30の着脱部53は、第1の壁部31が下方に延長され、かつ内側に曲折されることにより、その下端には内方に突出する負圧発生側フランジ部である内向きフランジ53aと、その上側であって内側に形成された負圧発生側溝部である内溝53bを有しており、全体として所定のゴム状の弾性を備えている。
これに対して、装着部41の周縁部には、外向きの二重となったフランジが形成されている。すなわち、装着部41の上端であって、外方に突出した本体側フランジ部である第1のフランジ44と、第1のフランジ44の下方であって、着脱部53の下端及び該第1のフランジ44よりも大きな外径を備えた位置決め手段である第2のフランジ45を備えるとともに、第1のフランジ44と第2のフランジ45との間が縮径されることで内側に入り込んだ本体側溝部である外溝46が形成されている。
【0029】
かくして、使用者が負圧発生部材30の第1の壁部31と第2の壁部32からなる壁面を把持し、把持した位置と逆側に位置する着脱部53の下端である内向きフランジ53aの外面を、位置決め手段である第2のフランジ45の上向き段部に当接させる。そして、その内向きフランジ53aを外溝46内に係止させた状態で、把持していない側の指で係止させた位置を軽く抑えながら把持した側の手で負圧発生部材30を引っ張る。これにより、係止した位置以外の内向きフランジ53aが変形しながら第1のフランジ44を乗り越えて本体側溝部46に入り込む。そうすると、全体的に着脱部53が周縁部に装着されて、第1のフランジ44が内溝53bに入り込むと共に、内向きフランジ53aが外溝46に入り込んで、密閉を保った状態で装着される。
これにより、負圧発生部材30は、きわめて簡単に装着される。つまり、第2のフランジ45は、内向きフランジ53aの厚さよりも僅かに第1のフランジ44から離間した位置に形成されており、装着時に内向きフランジ53aが外溝46を乗り越えないように突出したリブとされている。
また、これとは逆に負圧発生部材30を取り外す際には、第1の壁部31を手で保持して外方に拡げるだけで、その内向きフランジ53aが、外溝46から外れて第1のフランジ44を乗り越えるので、きわめて簡単に取り外すことができる。
なお、本実施の形態において、第2のフランジ45を第1のフランジ44の相似形状としているが、部分的に第1のフランジ44よりも突出した部分が形成されていれば良く、例えば側縁側に切り欠きを形成して、他方の指で押さえやすくするよう構成してもよい。
【0030】
ここで、負圧発生部材30の第1の壁部31、第2の壁部32、底面部33は、好ましくは、全体が比較的弾性に富んだ柔軟な材料、すなわち、JIS−K6253(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度がHS30〜70程度の合成樹脂、例えばシリコーンゴムやイソプレンゴム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)等のエラストマー等により一体に形成されている。
また、好ましくは、第1の壁部31の部分を構成する材料の厚みが1.5mm〜3.0mmとされ、第2の壁部32を構成する材料の厚みが1.0mm〜2.5mmとされる。
【0031】
負圧発生部材30の硬度が30より小さいと第1の壁部31に変形がおよび、生成される負圧が小さくなる。硬度が60を超えると後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第2の壁部32の厚みが1.0mmより小さいと変形の際のゴム弾性による延び変形が大きくなり、生成される負圧は小さくなってしまう。厚みが2.5mmを超えると、後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第1の壁部31の厚みが1.5mmより小さいと、負圧形成に際して、該壁部が座屈してしまう。つまり不要な変形を生じ、十分な負圧生成ができない。第1の壁部31の厚みが3.0mmを超えると、搾乳器本体21への装着に際に該壁部があまり変形してくれないので、装着しにくくなる。
【0032】
図1および図2に示すように、本体21の上部において、搾乳部22が延びる位置と反対の位置には、ハンドル61を取り付けるためのアーム48が延びている。該アーム48はその先端が負圧発生部材30に隣接した位置で、該負圧発生部材30の上端を超える箇所に位置している。この実施形態には、アーム48の該先端には、水平に配された円筒状の支軸部49が設けられている。
【0033】
ハンドル61は、全体として、比較的丈夫で軽量な合成樹脂により一体に成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等で成形された成形品である。
すなわち、ハンドル61は図1に示されているように、長尺の部材であり、上端が水平に二股になった切り込みからなる被係合部62を有しており、図2に示すように、結合部(材)35の係合部38に対する被係合部62と簡単に着脱できるようになっている。ハンドル61の他端63は下方に位置してやや外側に張り出しており、全体としてレバー状の外観を示している。
【0034】
ハンドル61は、本体21に対して着脱されるようになっており、図1の固定状態では、ハンドル61の一端寄りの位置に設けた軸受け部64にて、アーム48先端の支軸49に対して回動可能に装着されている。
ハンドル61の他端の外側には、二色成形などにより滑り止め部63aが設けられており、この箇所に操作者が手を当てて操作することで図2の矢印Aに示すように、ボトル11に対して近接/離間するよう往復動されるようになっている。なお、滑り止め部63aは、別材料で形成しなくても、ハンドル61の対応箇所の表面にシボ加工やリブを設ける等の凹凸を設けることによって、滑りにくくなるように摩擦力を高める処理を施してもよい。
【0035】
これに応じて、ハンドル61の先端となる被係合部62は、支軸部49を中心に回動することで矢印Bに示すように上下に往復動するようになっている。使用者がハンドル61をボトル11に近接するよう操作することで、矢印B2方向に移動した時、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1の下側に向かう状態から上側に向かうよう変形させられる。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が増大すると、この内部空間Sに空気が引かれた分、搾乳部通気路23の空気が引かれ、搾乳部22の拡径した先端に使用者の乳房が当接されていると、密閉空間となっているため、該搾乳通気路23が負圧となる。
この負圧によって、搾乳された母乳は、搾乳部通気路の下方に向かう部分23aから小室26に入り込む。該小室26にある程度母乳が溜まる。この時、両側壁26b、26cは薄肉状とされているため、負圧に伴って近接する方向に若干変形して、スリット26dが確実に密閉された状態とされているため、母乳が漏れ出ることはない。
【0036】
使用者がハンドル61を操作し、ボトル11に最も近接した状態とされると、上端62が上限位置Cに移動することとなり、ハンドル61の内側の端部が対向する位置決め部45の外縁に当接し、それ以上移動しない状態となる。その状態では、変形部である第2の壁部32は、中間までめくり上げられた状態でとどまることとなり、元の形状である図1に示す下側に向かう方向に戻ろうとする。
その状態で使用者がハンドル61にかけていた力を緩めると、第2の壁部32が復元しようとする力により、上端62が矢印B1方向に移動し、ハンドル61がボトル11から離間する方向に移動して、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1に示されている状態に復元される。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が減少し、負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、さらに、溜まった母乳の重量に起因して、両側壁26b,26cの先端側が開き、スリット26dが開き、母乳はボトル11内に落とされる。
以上の動作を繰り返すことで、ハンドル61の操作に伴い、負圧発生部材30の動作に基づき、負圧が脈動するように与えられ、搾乳が行われる。
【0037】
以上説明したように搾乳器20によれば、上記説明より理解されるように、搾乳に重要な役割を果たす負圧発生部材30は、搾乳器本体21装着部41に対して着脱される着脱部53、外形を保持し得る程度の剛性を備えた第1の壁部31、変形部である第2の壁部32が弾性を備えた樹脂にて、全て一体に形成されている。
このため、この負圧発生部材30を搾乳器本体21から外すと、該本体21側には、従来の搾乳器のように、変形部、すなわちダイヤフラムなどを収容するための成形により作られた凹部もしくは凹所が存在しない。
【0038】
このため、洗いにくい該凹所などに母乳の残滓等がこびりつき、不潔な器具となることがない。そして、負圧発生分部材30は、全体に弾性を有する柔軟な材料で形成されているから、搾乳器本体21から取り外して洗浄する際には、作業者が着脱部53付近に指を当てて、外側に軽く変形させるようにしれば、簡単に取り外すことができ、取り外した負圧発生部材30は、全体が柔軟な材料であるから、隅々まで容易に洗浄できる。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係る緩衝部70の側面図である。
図に置いて、緩衝部70は弾性体、例えば、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の容易に変形し、搾乳時に使用者の乳房に密着し易い材料で一体に成形されている。例えば、シリコーンゴムを使用した場合には、JIS硬度20ないし80程度のもが使用できる
この緩衝部70は、図4のその断面形状が示され、図5にその拡径した開口正面から見た状態が示されている。なお図5は図3と各部の縮尺が異なっているが、図5は緩衝部の正面から見た形状、構造を模式的に表すものであり、異なる構造を示したものではない。
これらの図において、緩衝部70は、搾乳拡径部22の開口側において、図示のようにその開口部の形状に沿ったラッパ状とされて、該搾乳開口部の内側に入り込むようにして装着されている。
【0040】
すなわち、緩衝部70は、一方向に開いた扁平なラッパ状でなり、図3をあわせて参照することにより理解されるように、全体としては扁平なロート状をしている。
具体的には、緩衝部70は、図4に示されているように、中央部において、搾乳拡径部22に使用者の乳房(本体B)を当接させた状態で、乳首Kを搾乳通路内に露出させるための貫通孔71と、この貫通孔71に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部Nに当接する乳輪当接部72と、この乳輪当接部72よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部73とを備えている。この緩衝部70の開口した外縁部である取付け部74は、狭い溝になっており、ラッパ状に開いた搾乳拡径部22の外縁が嵌入されることにより装着されるようになっている。
逆に、この取付け部74を、手指にて外方にめくるようにして、緩衝部70を搾乳拡径部70から取り外すことができるようになっている。
【0041】
すなわち、図1で説明した搾乳器20に図3の緩衝部70を取付けると、搾乳時に使用者が自己の乳房(本体B)を搾乳拡径部22に当接させると(図4参照)、突出した乳房は、緩衝部70内に受容される。この状態で、乳房本体Bの先端にある乳輪部Nには、乳輪当接部72が当たり、負圧による吸引力で母乳が吸い出されることに加えて、乳輪当接部72がこの乳輪部Nを効果的に押すことにより、母乳の出を良くする。
この状態で、乳房部、すなわち、乳房の乳輪以外の乳輪より外側に位置する領域B1には、乳房密着部73が密接に面状に当接して、シールすることにより、負圧の外部へのリークを防止するとともに、母乳の外部への漏れを効果的に防止することができる。
【0042】
ここで、図5に示すように、乳輪当接部72も、乳房密着部73も、ともに貫通孔71と同心円状に、リング状に突出する形態とされているが、このような形態に限らず、乳輪当接部72が、貫通孔71に近接してその外側において、使用者の乳輪Nの複数個所に当接する突起72−1となるように構成してもよい。
この場合乳輪当接部72−1は、貫通孔71に近接してその外側にリング状に突出するのではなく、複数個所において突出する突起とすることで、搾乳時に、使用者の乳輪部Nを複数個所で確実に押圧することができるので、母乳の出を良くするための刺激を効果的に付与することができる。
【0043】
図6は、第2の実施形態であり、緩衝部全体を縦長に形成した形状を示している。
すなわち、緩衝部80は、全体として、横寸法Wよりも縦寸法tが大きくなるようにされている。
好ましくは、貫通孔71を真円とし、また、乳輪当接部72も真円リング状とし、少なくとも乳房当接部83は縦に長い楕円状の突出部とする。なお、ここで「縦」とは使用状態において、使用者の身長に沿った方向であり、「横」とは身体の幅に沿った方向を言う。
【0044】
図6の第2の実施形態のように、緩衝部80が、搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていると、使用者の乳房の本体部分である、乳房本体B(房部分)が比較的大きい場合には、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0045】
以下、この点について乳房の大きさ(特に乳房本体Bの大きさ)と乳房の形状との関係において詳しく説明する。
図7は、根津八紘著「乳房管理学」からの引用である。
図7の左端部には、女性の身体Hが模式的に示されており、乳房の乳首の頂点をTとする。また、身体の前側で乳房の上端部(乳房のはじまる箇所)をSとし、Tを通る水平な仮想線C1とSを通る垂直な仮想線S1を想定する。二つの仮想線C1とS1とにより分割される乳房の領域に関し、上側を「a」下側を「b」として、図7の下側の表が作成されている。この表が乳房の大きさと形状に関する分類を示したものである。
【0046】
図7の下側の表に示された乳房の4つの形態(断面形状)では左側から順にI型、IIa型、IIb型、III型と呼んでいる。これらの乳房の形態においては、左に行くほどb領域が大きく、右へ行くほどa領域が大きい。
この図に示された乳房の類型に関して、右端部に破線で囲んだIIb型と、III型の乳房は、乳房が大きく、かつ下垂があり、乳首が下方を向いている。
【0047】
このような乳房では、搾乳時に、図8に示すような不都合が見られる。
図8で符号Mにより示されているように、大きく膨らんだ乳房本体Bでは、搾乳時に緩衝部70の乳房密着部73の密着が不十分である場合等を原因とする母乳漏れは、緩衝部70の外縁から下方に垂れて、乳房の下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多い。
【0048】
そこで、図9や図10に示すように、図6で説明した第2の実施形態に係る緩衝部80を使用することが好ましい。図9は、IIb型の乳房、図10はIII型の乳房に緩衝部80を使用した状態を示している。
すなわち、緩衝部80は寸法tの方向に長い縦楕円形の緩衝部であり、乳房密着部83が縦方向に長いものである。
これらの例に示すように、使用者の乳房が比較的大きな乳房である場合には、緩衝部80は、縦方向に沿って密着する面積が大きくなるので、密着度が向上し、母乳の漏れを有効に防止できる。
【0049】
図11の緩衝部100は第3の実施形態に係るものである。
図において、搾乳拡径部22に取付けられた緩衝部100には、その外縁部である取付け部74よりも外側に、周方向に沿ってリング状に一体に拡径するように延長した外縁カバー部101が設けられている。
【0050】
ここで重要なのは、搾乳拡径部22のラッパ状拡径部分22aが、少なくとも乳房本体Bの先端側部分である紡錘状の箇所を十分に受容できる大きさを有していて、さらのその外側に緩衝部100の外縁カバー部101が形成されることである。このような構造をとることにより、外縁カバー部101以下のような作用効果を発揮できる。
図11を参照して容易に理解されるように、外縁カバー部101を緩衝部100の外縁に沿って全周にわたってリング状に形成することにより、より広い範囲で乳房本体Bを覆うことができる。このため、以下の作用効果を発揮できる。
(1)乳房本体の外面にリング状に面接触して、シールできるので、気密性が向上し、搾乳時の負圧を効率よく利用できる。
(2)乳房本体Bを覆うので、図8で説明したような母乳漏れを有効に防止することができる。
(3)乳房本体Bに、リング状に面接触するから、搾乳時の負圧による乳房本体Bに対する負担をリング状に分散することができ、図13の構成と比較して、使用者の乳房本体B全体を搾乳拡径部22内に引きこむことがなく、不快な感触や痛みを与えることがない。
【0051】
ここで、カバー部100は、必ずしても図示したように、外縁部の全周にわたってリング状に設けなくてもよい。図12に示すように、緩衝部100の下縁にのみ、例えば、舌片状のカバー部101aとして形成してもよい。
すなわち、図8で説明したように、搾乳時の母乳漏れは乳房本体Bの下縁もしくは下側に回り込んで漏れることが多いので、外縁カバー部101を設ける場合は、少なくとも当該領域を覆うように、緩衝部の下側外縁部に沿って延長された舌片状のカバー部101aとすると母乳漏れを防止する上で効果的である。
また、舌片状のカバー部101aはラッパ状の搾乳拡径部22の開口外縁に着脱可能なように、搾乳拡径部22と別体に形成し、使用者の乳房の大きさや形状、好みに合わせて使用することができるようにしてもよい。
【0052】
本発明は上述の各実施形態に限定されない。
例えば、操作手段61は手で操作するためのハンドルとしているが、結合部(材)35に連結可能な電動による駆動装置とされていてもよい。
更に、装着部41は上方に面するよう水平方向に形成されているが、通気路23に沿って斜めに傾斜するよう配置してもよく、この時、負圧発生部材30側の通気路27は装着部41の一方に寄った位置に形成し、母乳が流れ落ちるよう構成することが好ましい。
また、各実施形態の個々の構成は全てが必ず必要とされるものではなく、その一部を省略することができるし、この場合、図示しない他の構成と組み合わせて異なる構成の組み合わせのもとで実施されてもよく、各実施形態の構成を組み合せて使用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
11・・・収容容器、20・・・搾乳器、21・・・(搾乳器)本体、22・・・搾乳拡径部、30・・・負圧発生部材、31・・・(第1の)壁部、32・・・変形部(第2の壁部)、33・・・底面部、35・・・結合部(材)、61・・・操作部(ハンドル)、70,80,90,100・・・緩衝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母乳を貯めるための収容容器と、
該収容容器に対して着脱され、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、
該搾乳器本体に設けられ、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部と
を有しており、
前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部が、前記搾乳拡径部に着脱自在に配置されていて、
前記緩衝部は、
中央部において、前記搾乳拡径部に使用者の乳房を当接させた状態で、乳首を露出させるための貫通孔と、
前記貫通孔に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部に当接する乳輪当接部と、
該乳輪当接部よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部と
を備えることを特徴とする搾乳器。
【請求項2】
前記緩衝部が、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の搾乳器。
【請求項3】
前記緩衝部には、少なくとも、その下側外縁部に沿って外側に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の搾乳器。
【請求項4】
前記緩衝部には、その外縁部に沿ってリング状に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搾乳器。
【請求項5】
前記乳輪当接部が、前記貫通孔に近接してその外側において、使用者の乳輪の複数個所に当接する突起でなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搾乳器。
【請求項1】
母乳を貯めるための収容容器と、
該収容容器に対して着脱され、搾乳のための負圧を生成する搾乳器本体と、
該搾乳器本体に設けられ、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部と
を有しており、
前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ円形のラッパ形状とされることにより、使用者の乳房に少なくとも一部が当接するようにされた緩衝部が、前記搾乳拡径部に着脱自在に配置されていて、
前記緩衝部は、
中央部において、前記搾乳拡径部に使用者の乳房を当接させた状態で、乳首を露出させるための貫通孔と、
前記貫通孔に近接してその外側の位置に設けた突起もしくは同心円状の突出部であって、使用者の乳輪部に当接する乳輪当接部と、
該乳輪当接部よりも外側の位置に設けた同心円状の突出部であって、使用者の乳房に密着する乳房密着部と
を備えることを特徴とする搾乳器。
【請求項2】
前記緩衝部が、前記搾乳拡径部の開口部に沿ったほぼ縦楕円形のラッパ形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の搾乳器。
【請求項3】
前記緩衝部には、少なくとも、その下側外縁部に沿って外側に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の搾乳器。
【請求項4】
前記緩衝部には、その外縁部に沿ってリング状に延長されたカバー部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搾乳器。
【請求項5】
前記乳輪当接部が、前記貫通孔に近接してその外側において、使用者の乳輪の複数個所に当接する突起でなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搾乳器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−231904(P2012−231904A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101832(P2011−101832)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
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