説明

摘出物スライス補助具及び補助装置

【課題】複数の針が相互に平行な状態に維持され、長期間にわたって適切に摘出物をスライスできるようにする。
【解決手段】人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具10であって、ほぼ水平に延びるベース21と、ベース21の延びる方向に沿って隙間を隔ててベース21に対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針25と、複数の針25に対して設けられた針間隔規定具40とを有する。針間隔規定具40は、複数の針25に対応する複数の孔41を有し、その複数の孔41に対して複数の針25が各々挿通して、複数の針25の長さ方向に沿って移動可能である。針間隔規定具40には、隣接する針25同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、その隙間を特定する隙間識別標識43(自然数)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物から摘出した摘出物をスライスする際に使用される補助具等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の診断又は研究のために、病理検査が行われる。
病理検査とは、手術,生検等によって人体等から摘出された疾患を有する臓器,組織等の摘出物から病理標本を作成し、その病理標本について、顕微鏡等を用いて医学的見地から検査することをいう。
例えば、胃ガンの病理検査が行われる際には、胃(その全部又は一部)が摘出され、その摘出された胃(摘出物)から病理標本が作成され、その病理標本が検査される。
こうして、胃ガンの広がり(摘出物における断端の状態を含む),進行,良性・悪性の程度,脈管侵襲の有無等が診断される。
なお、ここで、「摘出物における断端」とは、切断されて摘出された摘出物の当該切断面であるが、その断端の状態を正確に診断するためには当該摘出物の内部の情報も重要であり、内部とともに当該断端の状態が正確に診断されると、胃ガンの広がり等がより明確に診断され得るのである。
【0003】
ある程度以上の大きさの摘出物から病理標本を作成する際の第1の段階として、摘出物を複数(多数)の薄肉状のものにスライス(薄切り)するという工程がある。
そして、最終的な病理標本を高精度のものとするためには、摘出物が均一にスライスされる必要がある。
すなわち、スライスされたもの(「スライス片」ということとする)の各々において、いずれの部位においても肉厚が同一である(これを広義の「均一」ということとする)必要がある。また、それに加えて、複数のスライス片の肉厚が同一である(これを狭義の「均一」ということとする)と、さらに好ましい。
【0004】
以前においては、そのスライスの作業は、次のようにされている。
すなわち、執刀者が、摘出物を自身の一方の手(例えば左手)で押さえて、その摘出物の位置を固定しつつ、他方の手(例えば右手)で、ナイフを用いて、各スライス片における各部位の厚みが同一(広義の均一)になることを目分量等で目指しつつ、さらには、すべてのスライス片の厚みが同一(狭義の均一)になることを同じく目分量等で目指しつつ、その摘出物をスライスするのである。
【0005】
しかしながら、上述の方法では、摘出物が均一にスライスされるか否かは、その執刀者の技量によるところとなり、特別に優れた技量を有する執刀者以外の者がスライスする場合は、摘出物は均一にはスライスされない。また、優れた技量を有する執刀者であっても、その個人によってスライス片の厚みが異なり、スライス片の厚みについて執刀者ごとにバラツキが生じる。
【0006】
そこで、人又は動物から摘出した摘出物をスライスする際に使用される補助具等として、特許文献1に開示されているものがある。
その摘出物スライス補助具は、水平方向成分を有する方向に延びるベースと、前記ベースの延びる方向に沿って整列状態で等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に(相互に平行に)延びる複数の針とを有している。
そして、摘出物が受け板に載置された状態で、一対の摘出物スライス補助具が摘出物の上方からその摘出物に向けて下降され、各摘出物スライス補助具の針が摘出物に対して突き刺され、摘出物を貫通し、受け板によって保持される。
そのように各摘出物スライス補助具がセットされた状態で、執刀者によって、一方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間と、他方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間とによって形成される空間(「一対隙間形成空間」ということとする)にナイフの刃が挿通され、その一対隙間形成空間に沿って(すなわち、その一対隙間形成空間を形成する2対の針にガイドされつつ)ナイフが下降されることによって、その摘出物が切断される。
上記の切断作業が他の複数の一対隙間形成空間においても行われることによって、摘出物が均一にスライスされ得る。すなわち、各スライス片のいずれの部位においても肉厚が同一となり得る(広義の均一になり得る)。
また、各摘出物スライス補助具が、複数の針が等間隔を隔てて設けられている態様の場合は、すべてのスライス片の肉厚が同一となり得る(狭義の均一になり得る)。
【0007】
しかしながら、上述の摘出物スライス補助具には、次のような改良の余地があることが判明した。
すなわち、その摘出物スライス補助具がセットされる(針が摘出物に対して突き刺される)際に、摘出物の抵抗や受け板による衝撃等によって針が多少曲がることもある。
そして、そのことが長期間(多数回)にわたって繰り返されることによって、徐々に複数の針が相互に平行な状態ではなくなる場合がある。すなわち、その基端部(ベースの側)から先端部に向かうにつれて、隣接する針の間隔が徐々に広がったり狭まったりする場合等がある。
そのようになった場合は、均一(広義の均一・狭義の均一とも)に摘出物をスライスすることが困難又は不可能になってしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−288169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数の針が相互に平行な状態に維持され、長期間にわたって適切に摘出物をスライスすることができる摘出物スライス補助具等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具であって、水平方向成分を有する方向に延びるベースと、前記ベースの延びる方向に沿って隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針と、前記複数の針に対して設けられた針間隔規定具とを有し、前記針間隔規定具は、前記複数の針に対応する複数の孔を有し、当該複数の孔に対して当該複数の針が各々挿通して、当該複数の針の長さ方向に沿って移動可能である、摘出物スライス補助具である。
【0011】
ここで、「摘出」とは、人体等の内部から内臓等を取り出す場合に限らず、皮膚等、人体等の外表面の一部を構成するものを当該人体等から切断し分離させる場合も含まれる。
「水平方向成分を有する方向に延びる…」「ほぼ鉛直下方に延びる…」とは、使用状態におけるものである。「ほぼ鉛直下方」には「鉛直下方」が含まれる。
【0012】
この発明を限定した態様として、「前記ベースの延びる方向に沿って隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」を「前記ベースの延びる方向に沿って等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」と置き換えたものが考えられる。
【0013】
この摘出物スライス補助具は一対の状態で使用され、次の作用効果が得られる。
すなわち、摘出物が受け板に載置された状態で、一対の摘出物スライス補助具が対向状態とされつつ、各摘出物スライス補助具が、摘出物の上方からその摘出物に向けて下降され、その各摘出物スライス補助具の針が、摘出物に対して突き刺され、その摘出物を貫通し、受け板に突き刺され、その受け板によって保持される(そのような受け板が使用される)。
このようにして、摘出物が受け板上において所定の位置に容易に固定されるとともに、各摘出物スライス補助具自身も所定の位置に固定される(これを摘出物スライス補助具のセットということとする)。
なお、両摘出物スライス補助具は、2つ同時にセットされてもよいし、1つずつ順次セットされてもよい。
【0014】
上記のように各摘出物スライス補助具がセットされた状態で、執刀者によって、一方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間と、他方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間とによって形成される空間(「一対隙間形成空間」ということとする)にナイフの刃が挿通され、その一対隙間形成空間に沿って(すなわち、その一対隙間形成空間を形成する2対の針にガイドされつつ)ナイフが下降されることによって、その摘出物が切断される。
上記の切断作業が他の複数の一対隙間形成空間においても行われることによって、摘出物が均一にスライスされ得る。すなわち、各スライス片のいずれの部位においても肉厚が同一となり得る(広義の均一になり得る)。
また、前述したように、この発明を限定した態様として「前記ベースの延びる方向に沿って隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」が「前記ベースの延びる方向に沿って等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」と置き換えられた発明の場合は、すべてのスライス片の肉厚が同一となり得る(狭義の均一になり得る)。
【0015】
そして、この発明の摘出物スライス補助具では、上述のようにセットされる際に、針間隔規定具が次のように使用され、次の作用効果が得られる。
すなわち、当初は、針間隔規定具は、摘出物スライス補助具の複数の針の先端部の近傍に維持される。
その状態で、上述のように針が摘出物に突き刺されることによって、針間隔規定具は摘出物に対して当接する。そして、さらに針が下降することに伴って、針間隔規定具は、摘出物によって相対的に上方に押圧され、針に対して相対的に上方に移動する(すなわち、針の基端部に向かって相対的に上昇する)。
このようにして、この摘出物スライス補助具がセットされる際に、針間隔規定具は、摘出物(そのうちの上部)の近傍(摘出物に当接する位置を含む)に位置する。すなわち、針間隔規定具は、針のうちの摘出物(そのうちの上部)の近傍に位置する。このため、摘出物スライス補助具がセットされる際に、複数の針のうちの摘出物の近傍は、針間隔規定具によって、相互の間隔が規定された状態にある。すなわち、複数の針のうちの摘出物の近傍は、針間隔規定具に形成された複数の孔の間隔に対応する間隔に規定される。
このため、摘出物スライス補助具がセットされる(複数の針が摘出物に対して突き刺される)際に、摘出物の抵抗や受け板による衝撃等によって針が曲がることが防止され、複数の針が相互に平行に延びる状態が維持される。
こうして、この発明の摘出物スライス補助具では、長期間にわたって摘出物を均一にスライスすることが可能となるのである。
【0016】
なお、上述のように針間隔規定具が摘出物スライス補助具の複数の針の先端部の近傍に維持されることについては、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置で維持する、という態様のほか、請求項2〜5に係る発明において述べる態様がある。
また、上述のように摘出物スライス補助具がセットされた後には、針間隔規定具は、摘出物よりも十分に高い位置に(すなわち、ナイフの刃が、針間隔規定具よりも低い高さ位置で、摘出物に対して干渉しない状態で、所定の各一対隙間形成空間に挿通され得る程度に、十分に高い位置に)維持される必要がある。それによって、前述したように執刀者がナイフで摘出物をスライスすることができるからである。
そのように針間隔規定具が高い位置に維持されることについても、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置で維持する、という態様のほか、請求項2〜5に係る発明において述べる態様がある。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具は、自重によっては下降しないものである、摘出物スライス補助具である。
【0018】
この発明の一態様として、「針間隔規定具の各孔の大きさが各針の太さとほぼ同一(わずかに大きい)で、摩擦力によって自重では下降しない」という態様がある。
【0019】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具がセットされる際のうちの当初(針が摘出物に突き刺される際)において、針間隔規定具は摘出物スライス補助具の複数の針の先端部の近傍に維持されるのであるが(このことは前述)、それは、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具を摘出物スライス補助具の複数の針の先端部の近傍に位置づけることによって足りることとなる。すなわち、別の位置にあった場合には、その位置まで移動されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、自重によっては、その位置から下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、この摘出物スライス補助具をセットする能率が向上する。
【0020】
同様に、この発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において執刀者が摘出物を執刀する際には、針間隔規定具は摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要があるのであるが(このことも前述)、それも、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具をその位置に位置づけることによって足りることとなる。すなわち、摘出物(そのうちの上部)に当接する位置からその位置まで移動されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、自重によっては、その位置から下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、摘出物をスライスする能率が向上する。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具は、本来的姿勢と非下降姿勢との間を変位可能であり、前記本来的姿勢においては自重によっては下降するが、非下降姿勢においては自重によっては下降しないものである、摘出物スライス補助具である。
【0022】
「非下降姿勢」の一態様として、「本来的姿勢から傾斜した姿勢」がある。その姿勢において、針間隔規定具の各孔と各針との間に十分な大きさの摩擦力が生じて、針間隔規定具が自重によっては下降しないのである。
【0023】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具がセットされる際のうちの当初(針が摘出物に突き刺される際)において、針間隔規定具は複数の針の先端部の近傍に維持されるのであるが(このことは前述)、それは、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具を複数の針の先端部の近傍に位置づけて非下降姿勢に変位させることによって足りることとなる。すなわち、別の位置にあった場合には、本来的姿勢等の状態でその位置まで移動され、その位置に到達した後に非下降姿勢に変位されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、非下降姿勢では、自重によっては、その位置から下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、この摘出物スライス補助具をセットする能率が向上する。
【0024】
同様に、この発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において執刀者が摘出物を執刀する際には、針間隔規定具は摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要があるのであるが(このことも前述)、それも、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具をその位置に位置づけて非下降姿勢に変位させることによって足りることとなる。すなわち、摘出物(そのうちの上部)に当接する位置から、本来的姿勢等の状態でその位置まで移動され、その位置に到達した後に非下降姿勢に変位されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、非下降姿勢では、自重によっては、その位置から下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、摘出物をスライスする能率が向上する。
【0025】
上述のことは請求項2に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果とほぼ同様のことであるが、この発明の摘出物スライス補助具では、さらに、次の作用効果が得られる。
すなわち、前述のようにして、針間隔規定具(非下降姿勢)が複数の針の先端部近傍に維持された状態で針が摘出物に突き刺されて針間隔規定具が摘出物に対して当接し、さらに摘出物によって相対的に上方に押圧されることによって、針間隔規定具は、一般的に、非下降姿勢から本来的姿勢に変位する。ここで、本来的姿勢は自重によって下降し得る姿勢であり(このことは前述)、針に沿って上昇する(針に対する相対的な上昇を含む)ことについても非下降姿勢の場合よりも一般的に抵抗が小さい。このため、さらに針が下降して針間隔規定具が摘出物によって相対的に上方に押圧されることによって、針間隔規定具は、円滑に(すなわち、針との間の摩擦力による大きな抵抗を受けることなく)、針に対して相対的に上昇する。
そして、この摘出物スライス補助具がセットされた後には、針間隔規定具は、摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要がある(前述)のであるが、その位置に移動される際にも、本来的姿勢のままで上方へ力が加えられることによって、円滑にその位置に移動(上昇)する。
また、この摘出物スライス補助具が使用された後であって、再度使用される際には、針間隔規定具は複数の針の先端部の近傍に再度移動される必要があるが、その際も、本来的姿勢の状態で下方へ力が加えられる(自重により態様を含む)ことによって、円滑にその位置に移動(下降)する。
このように、この発明の摘出物スライス補助具では、針間隔規定具が非下降姿勢と本来的姿勢との間を適宜切り換えられることによって、能率良く、摘出物をスライスするための準備が行われ得るのである。
【0026】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具は、紐材等の可撓性を有するものである可撓性材によって前記ベースと連結され、当該針間隔規定具が前記複数の針の下端部の近傍に位置することが可能であるとともに、当該針間隔規定具が最も下降した状態で前記複数の針から離脱しないものである、摘出物スライス補助具である。
【0027】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具がセットされる際のうちの当初(針が摘出物に突き刺される際)において、針間隔規定具は複数の針の先端部の近傍に維持されるのであるが(このことは前述)、それは、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具を複数の針の先端部の近傍に位置づけることによって足りることとなる。すなわち、別の位置にあった場合には、可撓性材を所定の状態(例えば直線状の状態)にしつつ、その位置まで移動されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、可撓性材によって、その位置から下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、この摘出物スライス補助具をセットする能率が向上する。
【0028】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具は、棒状をなし伸縮可能な伸縮可能棒材によって前記ベースと連結され、当該針間隔規定具が前記複数の針の先端部の近傍に位置することが可能であるとともに、当該針間隔規定具が自重によっては下降しないものである、摘出物スライス補助具である。
【0029】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具がセットされる際のうちの当初(針が摘出物に突き刺される際)において、針間隔規定具は複数の針の先端部の近傍に維持されるのであるが(このことは前述)、それは、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具を複数の針の先端部の近傍に位置づけることによって足りることとなる。すなわち、別の位置にあった場合には、伸縮可能棒材を伸縮させて(一般的には伸ばして)、その位置まで移動されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、伸縮可能棒材によって、その位置から自重によっては下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、この摘出物スライス補助具をセットする能率が向上する。
【0030】
また、上述のように摘出物スライス補助具がセットされた後には、針間隔規定具は、摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要があるが(このことも前述)、それも、執刀者又はその補助者が一旦針間隔規定具をその位置に位置づけることによって足りることとなる。すなわち、摘出物の近傍から、伸縮可能棒材を縮めつつ、その位置まで移動されることによって足りることとなる。針間隔規定具は、伸縮可能棒材によって、その位置から自重によっては下降しないからである。
このため、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置に維持したり、他の方法でその位置に維持したりする必要がなく、摘出物をスライスする能率が向上する。
【0031】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具には、前記複数の各孔を基準に各々同一方向に延び、当該複数の各孔と当該針間隔規定具の一縁部とをつないで当該複数の各孔を当該針間隔規定具の外部の二次元空間と連通させる連通部が形成されている、摘出物スライス補助具である。
【0032】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項5のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具では、複数の針に対する針間隔規定具の装着は、各針の先端部から当該各針を各孔に対して挿通するようにして行うのみでなく、針間隔規定具の各連通部を通して各針の中途長さ部分を各孔に導いて行うこともできる。
このように、この発明の摘出物スライス補助具では、複数の針(針間隔規定具が装着されていない状態)に対して、容易に針間隔規定具を装着することができる。
なお、「二次元空間」とは、孔の遠心方向に広がる二次元空間のことをいう。
【0033】
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具には、隣接する前記針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が設けられている、摘出物スライス補助具である。
【0034】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項6のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具においては、隣接する針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が針間隔規定具に設けられている。
このため、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が摘出物をスライスするために所定の一対隙間形成空間に対してナイフの刃を挿通しようとする際には、その各摘出物スライス補助具の隙間識別標識が目安とされることによって、その作業が、容易に行われ得ることとなる。すなわち、一方のスライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間にナイフの刃を挿通し、さらに、他方のスライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間であって前記一方のスライス補助具における隙間に対応する隙間に対してナイフの刃を挿通することが、容易に行われ得ることとなる。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助具においては、執刀者によってナイフの刃が複数の所定の一対隙間形成空間に容易に挿通され得ることとなり、摘出物がより容易に均一にスライスされることとなる。
【0035】
また、この発明の摘出物スライス補助具では隙間識別標識が針間隔規定具に設けられているため(このことは前述)、隙間識別標識がベースに設けられていて執刀者がそれを目安にする場合と比較して、次の作用効果も得られる。
すなわち、複数の針はベースに対してほぼ鉛直下方に延びるように設けられ、針間隔規定具は複数の針に対してその長さ方向に沿って移動可能に設けられている(このことも前述)。
このため、針間隔規定具(その隙間識別標識)は、必然的に、ベースよりも低い位置に位置し、摘出物に対してより近い位置に位置することとなる。このことから、ベースに設けられた隙間識別標識を目安にするよりも、より容易にナイフの刃が一対隙間形成空間に挿通され得ることとなり、摘出物がより容易に均一にスライスされることとなる。
【0036】
また、この発明の摘出物スライス補助具では針間隔規定具は複数の針の長さ方向に沿って移動可能であるため(このことも前述)、さらに次のことがいえる。
すなわち、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が所定の一対隙間形成空間に対してナイフの刃を挿通しようとする際には、針間隔規定具は摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要があるのであるが(このことも前述)、それは、ナイフの刃が、針間隔規定具よりも低い高さ位置で、摘出物に対して干渉しない状態で、当該所定の一対隙間形成空間に挿通され得る程度に、十分に高い位置に針間隔規定具が維持される必要がある、ということである(このことも前述)。
したがって、その条件を満たす範囲でできるだけ低い位置に針間隔規定具が維持されることによって、針間隔規定具は(その隙間識別標識)は、摘出物に対してさらに近い位置に位置することとなる。このことから、ベースに設けられた隙間識別標識を目安にするよりも、ナイフの刃がさらに容易に所定の一対隙間形成空間に挿通され得ることとなり、摘出物がさらに容易に均一にスライスされることとなるのである。
【0037】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記隙間識別標識は、前記針間隔規定具のうちの前記複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている、摘出物スライス補助具である。
【0038】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項7に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明のスライス補助具では、針間隔規定具のうちの複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、隙間識別標識が当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている。
このため、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が所定の一対隙間形成空間にナイフの刃を挿通しようとする際には、執刀者は、当該一対の摘出物スライス補助装置のうちの一方の側に位置し、各摘出物スライス補助具の針間隔規定具のうちの当該執刀者の側の隙間識別標識を目安とするとともに、執刀者の補助者は、当該一対の摘出物スライス補助装置のうちの他方の側(すなわち、一対のこの発明の摘出物スライス補助具を挟んで執刀者とは反対の側)に位置し、各摘出物スライス補助具の針間隔規定具のうちの当該補助者の側の隙間識別標識を目安とすることが可能である。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助具では、執刀者がナイフの刃を所定の一対隙間形成空間に挿通しようとする際には、一対の当該摘出物スライス補助具を挟んで位置する執刀者及び補助者が、その各針間隔規定具のうちの各々の側の隙間識別標識を目安とすることが可能である。こうして、補助者の補助とともに、執刀者によってその作業がさらに容易に行われ得ることとなり、摘出物がさらに容易に均一にスライスされることとなるのである。
【0039】
請求項9に係る発明は、人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助装置であって、一対の請求項1〜請求項8のいずれかに記載の摘出物スライス補助具と、その一対の摘出物スライス補助具を対向状態に維持しつつ、その一対の摘出物スライス補助具の間隔を調整可能に、その一対の摘出物スライス補助具を連結する連結材とを有する、摘出物スライス補助装置である。
【0040】
この発明に係る摘出物スライス補助装置では、一対の請求項1〜請求項8に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、一対の摘出物スライス補助具が対向状態で連結材によって連結されて1つの摘出物スライス補助装置が形成されている。
このため、その摘出物スライス補助装置全体が一括的に摘出物の上方からその摘出物に向けて下降されることによって、容易に、一対の摘出物スライス補助具が対向状態でセットされ得る。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助装置においては、摘出物をスライスするための準備が、より容易に行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1の摘出物スライス補助セットを示す斜視図である。摘出物スライス補助装置において両摘出物スライス補助具の間隔を広げた状態を示す。便宜的に、一方の摘出物スライス補助具において、針間隔規定具は複数の針のほぼ中央高さ位置に位置し、他方の摘出物スライス補助具において、針間隔規定具は複数の針の先端部の近傍に位置している。
【図2】本発明の実施例1の摘出物スライス補助具の要部を示す拡大図である。(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図3】本発明の実施例1の摘出物スライス補助装置を示す拡大斜視図である。
【図4A】本発明の実施例1の摘出物スライス補助具を示す縦断面図である。(a)は側方から見た図であり、(b)は正面から見た図である。(a)(b)のいずれにおいても、針間隔規定具は本来的姿勢の状態である。
【図4B】本発明の実施例1の摘出物スライス補助具を示す縦断面図である。(a)は側方から見た図であり、針間隔規定具は第1の非下降姿勢の状態である。(b)は正面から見た図であり、針間隔規定具は第2の非下降姿勢の状態である。
【図5A】本発明の実施例1の摘出物スライス補助具の作用(前半の3段階)を示す図である。
【図5B】本発明の実施例1の摘出物スライス補助具の作用(後半の3段階)を示す図である。
【図6A】本発明の実施例1の摘出物スライス補助装置の使用方法を示す斜視図である。
【図6B】本発明の実施例1の摘出物スライス補助装置の使用方法を示す拡大平面図(一部破断)である。
【図7】本発明の実施例2の摘出物スライス補助具を示す正面図である。(A)は、針間隔規定具が複数の針の先端部の近傍に位置する状態を示し、(B)は、針間隔規定具が複数の針の基端部の近傍に位置する状態を示す。
【図8】本発明の実施例3の摘出物スライス補助具を示す正面図である。(A)は、針間隔規定具が複数の針の先端部の近傍に位置する状態を示し、(B)は、針間隔規定具が複数の針の基端部の近傍に位置する状態を示す。
【図9】本発明の実施例4の摘出物スライス補助具の要部を示す拡大図である。(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1について、図1〜図6Bに基づいて説明する。
図1等に示すように、この摘出物スライス補助セットは、摘出物スライス補助装置10,受け板50を有している。図1〜図3等に示すように、摘出物スライス補助装置10は、一対の摘出物スライス補助具20,連結材30を有している。
図3,図6A,図6Bに示すように、この摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助セット)は、ナイフKとともに使用される。
【0043】
図1〜図3に示すように、各摘出物スライス補助具20は、ベース21,多数の針25,針間隔規定具40を有している。
ベース21は、一方向に延びる棒状をしている。使用時においては、ベース21は、ほぼ水平に延びる。
【0044】
多数の針25は、ベース21に対して設けられている。例えば、針25は、20〜100本設けられている。
各針25は、ベース21に対して垂直に延びている。すなわち、各針25は、相互に平行に延びている。使用時においては、各針25は、ベース21からほぼ鉛直下方に直線状に延びる。
各針25は、すべて、同一の形状,大きさを有している。各針25は、その全長にわたって、円形断面を有している。
各針25は、ベース21の長さ方向に沿って、均一の間隔を隔てて、一列に並んでいる。図3に示すように、各針25の間隔(正確には、隣接する針25同士の隙間の幅)は、ナイフKの刃Bの厚みに対応している。正確には、ナイフKの刃Bの厚みのうちの最大部分の当該厚みに対応している。すなわち、隣接する針25同士の各隙間は、刃Bのうち最も厚い部分の厚みとほぼ同一であり、それよりも若干大きな寸法の幅を有している。例えば、隣接する針25同士の各隙間は、2〜4mmである。
【0045】
図3に示すように、各ベース21には、針25の隙間(隣接する針25同士の隙間)又は針25に対応して、当該針25の隙間又は当該針25を特定するための識別標識が設けられている。針25の隙間を特定するための識別標識のことを「隙間識別標識」といい、針25を特定するための識別標識のことを「針識別標識」ということとする。
【0046】
この実施例においては、ベース21に隙間識別標識23が設けられている(これをベース隙間識別標識23ともいうこととする)。隙間識別標識23は「数字(自然数)」によって形成されており、各針25の隙間(すべての隙間)に付されている。すなわち、1番目の隙間(1番目の針25と2番目の針25との隙間)に対応して「1」の数字が付され、2番目の隙間(2番目の針25と3番目の針25との隙間)に対応して「2」の数字が付され、…とされている。
なお、それに限らず、偶数番目の隙間のみ、又は、5倍数番目の隙間のみ等、一部の隙間のみについて隙間識別標識(23)が付されていてもよい。
また、隙間識別標識(23)として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0047】
また、図示されてはいないが、ベース21には、上述の隙間識別標識23に代えて、又は、上述の隙間識別標識23とともに、針識別標識が付されていてもよい。
針識別標識の一例として、「数字(自然数)」がある。すなわち、1番目の針25に対応して「1」の数字が付され、2番目の針25に対応して「2」の数字が付され、…とされてもよい。
なお、それに限らず、偶数番目の針25のみ、又は、5倍数番目の針25のみ等、一部の針25のみについて針識別標識が付されていてもよい。
また、針識別標識として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0048】
図示されてはいないが、針25にも、自身を特定する識別標識(針自身識別標識)が付されている。
この実施例においては、具体的には、各針25には、針自身識別標識として、その全長にわたって、又は、その全長のうちの一部において、「色彩」が付されている。
すなわち、例えば、1番目の針25には赤色が付され、2番目の針25には黄色が付され、3番目の針25には緑色が付され、4番目の針25には青色が付され、5番目の針25には紫色が付されている。6番目以降の針25には、1番目〜5番目の針25と同様に、各種の色彩が循環的に付されている。
なお、それに限らず、偶数番目の針25のみ、又は、5倍数番目の針25のみ等、一部の針25にのみ針自身識別標識が付されていてもよい。
【0049】
図1〜図3等に示すように、針間隔規定具40は、合成樹脂等によって形成され、帯板状をしており、すべての針25に対応する長さを有している。
針間隔規定具40には、各針25に対応して、孔41が形成されている。各針25は円形断面を有しており(このことは前述)、各孔41も円形断面を有している。
そして、各針25は、各孔41に対して挿通している。こうして、針間隔規定具40は、複数の針25に対して設けられている。
針間隔規定具40は、基本的に、ベース21と平行に、すべての針25に対してほぼ垂直に延びている。すなわち、使用時においては、針間隔規定具40は、ほぼ水平に延びる。この姿勢のことを本来的姿勢ということとする。
【0050】
各孔41の径(大きさ)は、各針25の径(太さ)よりも若干大きい。このため、針間隔規定具40は、複数の針25に対してほぼ垂直な姿勢(本来的姿勢)の状態で、自重によって、複数の針25に沿って下降する。また、同じく本来的姿勢の状態で、上方へ力が加えられると、複数の針25に沿って円滑に上昇する。
このようにして、針間隔規定具40は、複数の針25の長さ方向に沿って移動可能である。
【0051】
一方、針間隔規定具40は、執刀者等の操作によって、複数の針25に対して垂直(水平)な姿勢から傾斜した姿勢にもなり得る。その姿勢として、図4B(a)に示すように、針間隔規定具40が、その幅方向において傾斜した姿勢や、図4B(b)に示すように、針間隔規定具40が、その長さ方向において傾斜した姿勢等がある。
いずれにおいても、そのような姿勢の場合は、針間隔規定具40の各孔41と各針25との間に大きな摩擦力が生じ、針間隔規定具40は自重によっては複数の針25に沿って下降しない。
このように針間隔規定具40が自重によっては下降しない姿勢のことを、非下降姿勢ということとする。図4B(a)に示された姿勢のことを第1の非下降姿勢といい、図4B(b)に示された姿勢のことを第2の非下降姿勢ということとする。
なお、針間隔規定具40は、非下降姿勢の状態でも、所定の力が加えられれば、複数の針25の長さ方向に沿って移動可能である。
【0052】
針間隔規定具40にも、針25の隙間(隣接する針25同士の隙間)又は針25に対応して、当該針25の隙間又は当該針25を特定するための識別標識が設けられている。針25の隙間を特定するための識別標識のことを「隙間識別標識」といい、針25を特定するための識別標識のことを「針識別標識」ということとする。
【0053】
この実施例においては、針間隔規定具40に隙間識別標識43が設けられている(これを針間隔規定具隙間識別標識43ともいうこととする)。すなわち、隙間識別標識43は「数字(自然数)」によって形成されており、各針25の隙間(すべての隙間)に付されている。すなわち、1番目の隙間(1番目の針25と2番目の針25との隙間)に対応して「1」の数字が付され、2番目の隙間(2番目の針25と3番目の針25との隙間)に対応して「2」の数字が付され、…とされている。
なお、それに限らず、偶数番目の隙間のみ、又は、5倍数番目の隙間のみ等、一部の隙間のみについて隙間識別標識(43)が付されていてもよい。
また、隙間識別標識(43)として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0054】
また、この実施例においては、隙間識別標識43は、針間隔規定具40のうちの複数の孔41(その列)を基準に、針間隔規定具40の幅方向における双方に設けられている。その各側の隙間識別標識43(自然数)は、複数の孔41(その列)の側を自身の上の側として各々設けられている。
【0055】
また、図示されてはいないが、針間隔規定具40においても、上述の隙間識別標識43に代えて、又は、上述の隙間識別標識43とともに、針識別標識が付されていてもよい。
針識別標識の一例として、「数字(自然数)」がある。すなわち、1番目の針25に対応して「1」の数字が付され、2番目の針25に対応して「2」の数字が付され、…とされてもよい。
なお、それに限らず、偶数番目の針25のみ、又は、5倍数番目の針25のみ等、一部の針25のみについて針識別標識が付されていてもよい。
また、針識別標識として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0056】
両摘出物スライス補助具20(そのベース21)は、次のように、連結材30によって連結されている。こうして、1つの摘出物スライス補助装置10が形成されている。
各摘出物スライス補助具20のベース21には、挿通孔22が形成されている。
連結材30は、直線状をなし、その長さ方向にわたって、均一な断面(形状・大きさ)を有している。例えば、長方形状をしている。
挿通孔22(形状・大きさ)は、連結材30の断面形状に対応している。例えば、長方形状をしている。
【0057】
連結材30は、両摘出物スライス補助具20(ベース21)の挿通孔22に対して、自身の長さ方向に沿って相対的に摺動可能に挿通されている。このようにして、両摘出物スライス補助具20は連結材30を介して連結され、摘出物スライス補助装置10が形成されている。
このため、連結材30に対して、各摘出物スライス補助具20が連結材30の長さ方向に適宜摺動されることによって、両摘出物スライス補助具20同士の間隔が調整される。
【0058】
なお、連結材30の両端部には、抜け止め部(各挿通孔22よりも大きなもの)が設けられていてもよい。また、連結材30には、目盛りが設けられていてもよい。これによって、両摘出物スライス補助具20(ベース21)の間隔が視認され得るとともに、当該間隔が容易に所定のものに調整され得る。
また、連結材30の数は、1本である必要はなく、複数本あってもよい。
【0059】
受け板50(図1)は、主としてコルク材によって形成されている。すなわち、コルク材のみによって形成されている場合のほか、下側の部分が他の材質によって形成され、上側の部分(おもて面の側の部分)のみがコルク材によって形成されている場合等がある。
受け板50が主としてコルク材によって形成されているために、針25(その先端部)が受け板50に対して突き刺された際に、針25が、その突き刺された状態で維持(保持)される。
【0060】
次に、この摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)の使用方法及び作用効果について説明する。
図6Aに示すように、まず、執刀者又はその補助者は、受け板50に対して摘出物Eを載置する(図5A(1)も参照)。
一方では、それと相前後して、摘出物スライス補助装置10において、その摘出物Eの大きさに応じて、両摘出物スライス補助具20の間隔を調整する。すなわち、摘出物Eが大きい場合は、両摘出物スライス補助具20の間隔を長くし、摘出物Eが小さい場合は、両摘出物スライス補助具20の間隔を短くする。
同じく、それらと相前後して、図5A(1)に示すように、各摘出物スライス補助具20において、針間隔規定具40を複数の針25の先端部の近傍に位置づけ、非下降姿勢とする。なお、その図5A(1)並びにその後の図5A(2)及び図5B(3)には、第1の非下降姿勢の状態(図4B(a))が示されているが、第2の非下降姿勢の状態(図4B(b))等でもよい。
【0061】
次に、同じく図6Aに示すように、執刀者又はその補助者は、両摘出物スライス補助具20の各針25を摘出物Eに対して突き刺し、摘出物Eを貫通させ、受け板50に対して突き刺す。それによって、各針25(その先端部)は、受け板50において、その突き刺された状態で維持される。
こうして、摘出物Eが受け板50に対して固定されるとともに、各摘出物スライス補助具20自身も、受け板50に対して固定される。
このようにして、摘出物スライス補助装置10(両摘出物スライス補助具20)がセットされ、摘出物Eをスライスするための準備が完了する。
【0062】
上述のように摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)がセットされる際に、詳細には次のようにされる。
すなわち、図5A(1)→(2)に示すように、摘出物スライス補助具20が下降され、針間隔規定具40が非下降姿勢の状態で各針25が摘出物Eに対して突き刺され、針間隔規定具40が摘出物E(その上端部)に到達(当接)する。
次に、図5A(2)→(3)に示すように、さらに摘出物スライス補助具が20が若干下降されることによって、針間隔規定具40は、摘出物Eによって相対的に上方に押圧され、針間隔規定具40は、非下降姿勢から本来的姿勢(図4A)に変位する(戻る)。
なお、針間隔規定具40が摘出物Eによって相対的に上方に押圧されても非下降姿勢から本来的姿勢に変位しなかった場合は、執刀者又はその補助者が針間隔規定具40を本来的姿勢に変位させることが望ましい。
【0063】
次に、図5A(3)→図5B(1)に示すように、さらに摘出物スライス補助具20が下降されることによって、各針25は、摘出物Eを貫通し、受け板50の中途厚さ位置まで到達し、受け板50によって維持されるのである。
なお、そのように各針25(摘出物スライス補助具20)がさらに下降する際に、針間隔規定具40は、摘出物Eによって下降することが阻止され、各針25に対して相対的に上昇する。その際、針間隔規定具40は本来的姿勢の状態であるため、円滑に相対的に上昇する。
【0064】
そして、次に、図5B(1)→(2)に示すように、執刀者又はその補助者は、針間隔規定具40を上昇させ、図5B(2)→(3)に示すように、その位置で針間隔規定具40を本来的姿勢から非下降姿勢に変位させる。
こうして、針間隔規定具40は、摘出物Eよりも十分高い位置に維持され、執刀者によるスライス作業(次述)の邪魔にはならない。
すなわち、図5B(3)及び図6Aに示すように、ナイフKの刃Bが、針間隔規定具40よりも低い高さ位置で、摘出物Eに対して干渉しない状態で、対応する両摘出物スライス補助具20の各針25の隙間に挿通され得る。針間隔規定具40は、そのような高さ位置に維持されるのである。
【0065】
次に、図5B(3),図6A,図6Bに示すように、執刀者は、ナイフKを用いて、次のように、摘出物Eをスライスする。
すなわち、まず、図5B(3),図6A,図6Bにおいて実線→1点鎖線で示すように、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20における各針25の隙間と、それに対応する他方の摘出物スライス補助具20における各針25の隙間にわたってナイフK(その刃B)を挿通させる。次に、図5B(3),図6Aにおいて、1点鎖線→2点鎖線で示すように、その挿通状態でナイフKを下降させて、摘出物Eを切断する。
この作業を両摘出物スライス補助具20のうちの一方の側の隙間から、順次、他方の側の隙間について行う。
こうして、摘出物Eが多数のスライス片にスライスされる。
【0066】
上述のスライス作業について詳細に述べると、次のとおりである。
すなわち、図3,図6A,図6Bに示すように、執刀者は、まず、一方の摘出物スライス補助具20における1番目の隙間(隣接する針25の間の隙間)と、他方の摘出物スライス補助具20における1番目の隙間とによって形成される空間(1番目の一対隙間形成空間)にわたって、ナイフKの刃Bを挿通させる。
その際、図6Bに示すように、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具40における執刀者の側の「1」の隙間識別標識43を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具40における執刀者の側の「1」の隙間識別標識43を目安とする。
同時に、執刀者の補助者は、この摘出物スライス補助装置を挟んで執刀者とは反対の側に位置し、一方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具40における補助者の側の「1」の隙間識別標識43を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具40における補助者の側の「1」の隙間識別標識43を目安とする。
また、図3に示すように、執刀者及びその補助者は、一方の摘出物スライス補助具20における1番目の針25の針自身識別標識としての「赤色」及び2番目の針25の針自身識別標識としての「黄色」を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20における1番目の針25の針自身識別標識としての「赤色」及び2番目の針25の針自身識別標識としての「黄色」を目安とする。
このように、執刀者は、補助者の補助とともに、針間隔規定具隙間識別標識43及び針自身識別標識を目安としつつ、その1番目の一対隙間形成空間にわたって、ナイフKの刃Bを挿通する。
なお、上述の際に、執刀者及び/又はその補助者は、針間隔規定具40に設けられた隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)43と併せて、又は、それに代えて、ベース21に設けられた隙間識別標識(ベース隙間識別標識)23(図3)を目安としてもよい。
【0067】
次に、図5B(3)及び図6Aに示すように、執刀者は、その挿通状態でナイフKを下降させて、摘出物Eを切断する。すなわち、その1番目の一対隙間形成空間を構成する2対の針25によってナイフKの刃Bがガイドされつつ、ナイフKを下降させて切断する。
【0068】
次に、上述と同様にして、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20における2番目の隙間と、他方の摘出物スライス補助具20における2番目の隙間とによって形成される空間(2番目の一対隙間形成空間)にわたって、ナイフKの刃Bを挿通させ、その挿通状態(ガイド状態)でナイフKを下降させて、摘出物Eを切断する。
次に、上述と同様にして、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20における3番目の隙間と、他方の摘出物スライス補助具20における3番目の隙間とによって形成される空間(3番目の一対隙間形成空間)にわたって、ナイフKの刃Bを挿通させ、その挿通状態(ガイド状態)でナイフKを下降させて、摘出物Eを切断する。
以上を繰り返すことによって、各針25の隙間に対応して、摘出物Eがスライスされるのである。
【0069】
なお、2番目の隙間,4番目の隙間,6番目の隙間,…のように、偶数番目の隙間のみにおいてスライスしたり(すなわち、1つおきの隙間においてスライスしたり)、3番目の隙間,6番目の隙間,9番目の隙間,…のように、3の倍数の隙間のみにおいてスライスしたり(すなわち、2つおきの隙間においてスライスしたり)してもよい。
【0070】
上述のように摘出物Eがスライスされた状態(すなわち、スライスされた直後の状態)においては、摘出物Eにはスライスされた切れ目が存在するものの、全体としては、スライスされる前の形状が保たれている。
このため、そのスライスされた直後の状態において、執刀者等は、各スライス片に対して番号を付する等、位置情報(摘出物Eがスライスされる前の状態において、各スライス片がどの位置にあったかという情報)を各スライス片に対して容易に付することができる。
このようにして、各スライス片に対して位置情報が付された上で、各スライス片は相互に分離され、各スライス片についてその後の処理がされ、各スライス片について分析がされる。そして、その分析結果が各スライス片の位置情報とともに総合されることによって、摘出物E全体について、病変の分布が明らかにされつつ、病理診断がされるのである。
【0071】
以上のように、この摘出物スライス補助セットでは、両摘出物スライス補助具20の複数の針25によって、摘出物E(スライスの対象物)を受け板50に対して容易に固定することができる。それとともに、各々の複数の針25によって、各摘出物スライス補助具20自身を受け板50に容易に固定(セット)することができる。
【0072】
そして、そのように摘出物E及び各摘出物スライス補助具20が受け板50に対して固定された状態で、所定の一対隙間形成空間にナイフKの刃Bを挿通させ、その2対の針25にガイドされつつ、ナイフKを下降することによって、摘出物Eをほぼ鉛直に(2対の針25の方向に沿って)、かつ、均一の間隔を隔てて切断することができる。
こうして、この摘出物スライス補助セットでは、摘出物Eを均一にスライスすることができる。すなわち、各スライス片においては、いずれの部位においても肉厚が同一であるとともに、すべてのスライス片の肉厚が同一である。
【0073】
また、この摘出物スライス補助装置10では、前述したように、両摘出物スライス補助具20の針間隔規定具40やベース21に隙間識別標識43,23(隣接する針25同士の隙間を特定する数字)が付されているとともに、両摘出物スライス補助具20の各針25には針自身識別標識(自身を特定するための色彩)が付されている。
このため、執刀者は、その隙間識別標識43,23、及び、針自身識別標識を目安とすることによって、容易に、両摘出物スライス補助具20間において対応する針25の隙間(一対隙間形成空間)にナイフKを挿通することができる。
こうして、この摘出物スライス補助装置10では、摘出物Eを容易に適切にスライスすることができる。
その際、針間隔規定具40の方がベース21よりの低い位置にあって摘出物Eに近いため、一般的に、ベース21に設けられた隙間識別標識(ベース隙間識別標識)23を目安とするよりも、針間隔規定具40に設けられた隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)43を目安とした方が便利である。また、針間隔規定具40を摘出物Eよりも十分に高い位置に維持させるのであるが、それも上述のスライス作業が円滑に行える範囲内で低い位置に維持させることによって、そのことがより一層いえるのである。
【0074】
また、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)では、すべての針25に対して針間隔規定具40が伴っており、各針25が各孔41の挿通した状態にあるため、次の作用効果が得られる。
すなわち、前述したように各針25が摘出物Eに対して突き刺される際に、各針25には抵抗や衝撃が加わる。
しかしながら、この摘出物スライス補助具20においては、すべての針25のうちの摘出物Eの近傍は、針間隔規定具40によって、相互の間隔が規定された状態にある。すなわち、すべての針25のうちの摘出物Eの近傍は、針間隔規定具40の孔41の間隔に対応する間隔に規定される。
このため、摘出物スライス補助具20がセットされる(複数の針25が摘出物Eに対して突き刺される)際に、その衝撃によって針25が曲がることが防止され、すべての針25が相互に平行に延びる状態が維持されるのである。
【0075】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について、図7に基づいて説明する。実施例2は実施例1の変形例であるため、実施例1との相違点を中心に説明するとともに、実施例1と同様の点については同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0076】
この摘出物スライス補助具120においては、ベース21の各端部と針間隔規定具40の各端部とは、紐材145(可撓性材)によって連結されている。紐材145は、可撓性を有している。
そして、図7(A)に示すように、各紐材145が直線状の状態において、針間隔規定具40は、各針25の下端部の近傍に位置する。なお、各紐材145が伸縮性を有するものの場合は、その自然状態(ベースと21と針間隔規定具40とを連結した状態における自然状態)において、針間隔規定具40は、各針25の下端部の近傍に位置する。
こうして、針間隔規定具40は、針25の下端部の近傍に位置し得るとともに、少なくとも通常時においては(各紐材145が伸縮性を有する場合において自然状態よりも伸ばされない場合には)各針25から離脱しない(各針25は、針間隔規定具40の各孔41から抜け出ない)。
【0077】
この摘出物スライス補助具120は、実施例1の摘出物スライス補助具20と同様にセットされる。
そして、そのようにしてセットされた状態で、図7(B)に示すように、針間隔規定具40が上昇され、必要に応じて、輪ゴム148等によってベース21と結合され、下降することが防止される。
【0078】
この摘出物スライス補助具120は、針間隔規定具40(針25の下端部の近傍に位置する状態)を本来的姿勢から傾斜させても自重によって下降する(又はそのおそれがある)場合に有効である。
【0079】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3について、図8に基づいて説明する。実施例3も実施例1の変形例であるため、実施例1との相違点を中心に説明するとともに、実施例1と同様の点については同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0080】
この摘出物スライス補助具220においては、ベース21の各端部と針間隔規定具40の各端部とは、伸縮可能棒材245によって連結されている。
伸縮可能棒材245は、複数本(図8では5本)の円筒(第1円筒245a〜第5円筒245e)を有し、各円筒(245a〜245e)は、第1円筒245aから第5円筒245eへと向かうにつれて徐々に小径とされており、いわゆる入れ子状態とされている。すなわち、平面視において、第1円筒245aの内側に第2円筒245bが位置し、第2円筒245bの内側に第3円筒245cが位置し、…という位置関係にされている。
そして、各々隣接する円筒(245a〜245e)間において、各円筒(245a〜245e)は、その長さ方向(そのうちの1方向)において、相互に所定の摩擦力を伴って変位可能であるとともに、各円筒(245a〜245e)は抜け止めされている。
こうして、伸縮可能棒材245は、伸縮可能なのである。
【0081】
そして、図8(A)に示すように、各伸縮可能棒材245が最も伸びた状態(又はその手前の状態)において、針間隔規定具40は、各針25の下端部の近傍に位置する。各伸縮可能棒材245が最も伸びた状態ではない場合においては、針間隔規定具40は各伸縮可能棒材245とともに自重によっては下降しない。
すなわち、針間隔規定具40は、針25の下端部の近傍に位置し得るとともに、各針25から離脱しない(各針25が針間隔規定具40の各孔41から抜け出ない)状態に維持され得る。
【0082】
この摘出物スライス補助具220は、実施例1の摘出物スライス補助具20と同様にセットされる。
そして、そのようにしてセットされた状態で、図8(B)に示すように、針間隔規定具40が上昇され、その位置に維持される。すなわち、針間隔規定具40は各伸縮可能棒材245とともに自重によっては下降しない。
【0083】
この摘出物スライス補助具220では、針間隔規定具40が、使用者の意に反して下降することが防止され、いずれの高さ位置にも容易に維持される。
【0084】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4について、図9に基づいて説明する。実施例4も実施例1の変形例であるため、実施例1との相違点を中心に説明するとともに、実施例1と同様の点については同一又は対応する符号を付して説明を適宜省略する。
【0085】
この摘出物スライス補助具320では、針間隔規定具340が、実施例1の針間隔規定具40と相違する。
すなわち、針間隔規定具340において、各孔341と、針間隔規定具340の一縁部とをつなぐ連通部342が形成されている。
各連通部342は、各孔341を基準に、針間隔規定具340の幅方向(ベース21の幅方向であり、複数の針25の整列方向とは垂直の方向)の2方向のうち同一の一方向に延びている。
こうして、各連通部342によって、各孔341は、針間隔規定具340の外部の二次元空間と連通している。
【0086】
各連通部342のうちの基端部の側(各孔341の側)の大半部分は、各孔341の径よりも幅細で、各針25の径とほぼ同一である。各連通部342の先端部(針間隔規定具340の縁部の側の端部)は、針間隔規定具340の縁部に向かうにつれて徐々に幅広になっている。
【0087】
この摘出物スライス補助具320では、次の特有な作用効果が得られる。
すなわち、この摘出物スライス補助具320では、各針25に対して針間隔規定具340を取り付ける際に、各針25をその先端部から各孔341に対して挿通させるようにする、という方法のみならず、各針25の中途長さ部分に対して、その側部から、針間隔規定具340を接近させ、各針25の中途高さ部分を各連通部342を通して各孔341に導く、という方法も可能である。
その際、各連通部342の先端部(針間隔規定具340の縁部の側の端部)が針間隔規定具340の縁部に向かうにつれて徐々に幅広になっているため、その作業がより容易である。
【0088】
なお、上記のものはあくまで本発明の数例の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0089】
例えば、ベース21及び針間隔規定具40のいずれかには、隙間識別標識(23,43)は設けられなくてもよい。
また、必ずしも、隙間識別標識(23,43)及び針自身識別標識の双方が設けられていなくてもよく、一方のみが設けられていてもよい。
【0090】
また、各針(25)の断面形状は、その全長にわたって円形である態様に限らず、他の形状であってもよい。例えば、正方形状であってもよい。
【0091】
また、一対の摘出物スライス補助具(20,120,220,320)については、連結材(30)によって連結されて1つの摘出物スライス補助装置(10)が形成されているのではなく、ともに独立した単体としての一対の摘出物スライス補助具(20)とされていてもよい。
その場合は、使用時においては、執刀者又はその補助者が、一対の摘出物スライス補助具(20)が対向状態となるようにして、両者をセットすることになる。
【符号の説明】
【0092】
10 摘出物スライス補助装置
20,120,220,320 摘出物スライス補助具
21 ベース
25 針
40,340 針間隔規定具
43,343 隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)
41,341 孔
342 連通部
145 紐材(可撓性材)
245 伸縮可能棒材
30 連結材
E 摘出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具であって、
水平方向成分を有する方向に延びるベースと、
前記ベースの延びる方向に沿って隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針と、
前記複数の針に対して設けられた針間隔規定具とを有し、
前記針間隔規定具は、前記複数の針に対応する複数の孔を有し、当該複数の孔に対して当該複数の針が各々挿通して、当該複数の針の長さ方向に沿って移動可能である、
摘出物スライス補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具は、自重によっては下降しないものである、
摘出物スライス補助具。
【請求項3】
請求項1に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具は、本来的姿勢と非下降姿勢との間を変位可能であり、前記本来的姿勢においては自重によっては下降するが、非下降姿勢においては自重によっては下降しないものである、
摘出物スライス補助具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具は、紐材等の可撓性を有するものである可撓性材によって前記ベースと連結され、当該針間隔規定具が前記複数の針の下端部の近傍に位置することが可能であるとともに、当該針間隔規定具が最も下降した状態で前記複数の針から離脱しないものである、
摘出物スライス補助具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具は、棒状をなし伸縮可能な伸縮可能棒材によって前記ベースと連結され、当該針間隔規定具が前記複数の針の先端部の近傍に位置することが可能であるとともに、当該針間隔規定具が自重によっては下降しないものである、
摘出物スライス補助具。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具には、前記複数の各孔を基準に各々同一方向に延び、当該複数の各孔と当該針間隔規定具の一縁部とをつないで当該複数の各孔を当該針間隔規定具の外部の二次元空間と連通させる連通部が形成されている、
摘出物スライス補助具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具には、隣接する前記針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が設けられている、
摘出物スライス補助具。
【請求項8】
請求項7に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記隙間識別標識は、前記針間隔規定具のうちの前記複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている、
摘出物スライス補助具。
【請求項9】
人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助装置であって、
一対の請求項1〜請求項8のいずれかに記載の摘出物スライス補助具と、
その一対の摘出物スライス補助具を対向状態に維持しつつ、その一対の摘出物スライス補助具の間隔を調整可能に、その一対の摘出物スライス補助具を連結する連結材と
を有する、摘出物スライス補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21818(P2012−21818A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158225(P2010−158225)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(500079850)
【Fターム(参考)】