説明

摩擦駆動の台車式搬送装置

【課題】自動車組立てラインにおいて自動車の車体を支持する搬送台車上に作業者が搭乗した状態で当該車体に対する組立て作業を行うのに好適な摩擦駆動の台車式搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送台車1が、その走行方向に直列する複数の台車単体2〜4から構成され、各台車単体2〜4は、直進姿勢にある搬送台車1の左右の一側辺部において走行方向と平行な一直線上に位置する垂直な関節軸心18b,19bの周りに水平屈曲自在に連結され、摩擦駆動用ロードバー11は、台車単体2〜4毎に分割して前記一直線上の位置で取り付けられた複数のロードバー単体12a〜12cで構成され、各ロードバー単体12a〜12cは、前記関節軸心18b,19bの周りに水平屈曲自在な構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行方向に沿って設けられた摩擦駆動用ロードバーを備えた搬送台車と、この搬送台車の走行経路側に配設され且つ前記ロードバーに圧接する摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段から成る摩擦駆動の台車式搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような構成の摩擦駆動の台車式搬送装置としては、例えば特許文献1に記載のように、走行方向に沿って直列する複数本のロードバー単体を垂直な関節軸心の周りに水平屈曲自在に連結して成る摩擦駆動用ロードバーの1つのロードバー単体(具体的には中央ロードバー単体)で被搬送物支持台を支持させ、前記摩擦駆動用ロードバーの長さ方向の両端と中間の関節軸心の位置とを支持するトロリーを走行経路に沿って敷設されたガイドレールに走行可能に支持させると共に、前記走行経路側に配設された摩擦駆動手段の摩擦駆動輪で前記摩擦駆動用ロードバーを摩擦駆動することにより、前記被搬送物支持台を前記走行経路に沿って走行させるように構成された搬送装置が知られている。この特許文献1に記載された搬送装置では、被搬送物支持台、この被搬送物支持台を支持する摩擦駆動用ロードバーの中央ロードバー単体、及びこの中央ロードバー単体を支持する前後2つのトロリーによって搬送台車が構成されているが、特許文献2に示すように、車輪を備えた搬送台車の左右の一側辺部に、上記特許文献1に記載されるような摩擦駆動用ロードバーの1つのロードバー単体(具体的には中央ロードバー単体)を取り付けて構成された摩擦駆動の台車式搬送装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−33009号公報
【特許文献2】特開2003−191839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2に記載された従来周知の摩擦駆動の台車式搬送装置では、中間に関節軸心を有する水平に屈曲自在な摩擦駆動用ロードバーが使用されているので、搬送台車自体を摩擦駆動手段の摩擦駆動輪とバックアップローラーとで挟み付ける摩擦駆動方式と比較して、搬送台車の強度を摩擦駆動のために高める必要がなく、又、ターンテーブルを利用して搬送台車の走行方向を転向させなくとも、走行経路中に水平カーブ経路部を設けて搬送台車の走行方向を変えることが出来るなどの効果は得られるが、摩擦駆動用ロードバーと搬送台車とから構成される搬送用走行体の全長は、搬送台車に搭載される被搬送物(例えば自動車の車体)の全長よりも長くして、この搬送用走行体が前後に隣接する最接近状態で走行するときに、各搬送台車上の被搬送物が互いに緩衝し合わないように構成する必要があるため、被搬送物の前後に張り出す作業床面部分を搬送台車の前後両端部に確保しようとすると、搬送台車の全長を摩擦駆動用ロードバーの全長と同一程度まで長くしなければならない。
【0005】
この結果、長大で大重量の一体型搬送台車が必要になり、トラック輸送のために分割したものを設置現場で組み立て可能に構成しなければならないことと相まって、搬送台車のコストが非常に高くなる。更に、水平方向に関して屈折自在な関節構造の摩擦駆動用ロードバーを水平カーブ経路部に沿って摩擦駆動するとき、搬送台車に取り付けられたロードバー単体の前後両端から前後両方向に突出する搬送台車の前後両端部が、水平カーブ経路部の摩擦駆動用ロードバーが屈折しながら移動するセンターラインから大きく外側に張り出すことになり、水平カーブ経路部での搬送台車の走行経路に必要な床面積が非常に大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる摩擦駆動の台車式搬送装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る摩擦駆動の台車式搬送装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、台車全長にわたって連続するように走行方向と平行に設けられた摩擦駆動用ロードバー(11)を備えた搬送台車(1)と、この搬送台車(1)の走行経路側に配設され且つ前記ロードバー(11)に圧接する摩擦駆動輪(26)を備えた摩擦駆動手段(25)から成る摩擦駆動の台車式搬送装置において、前記搬送台車(1)が、その走行方向に直列する複数の台車単体(2〜4)から構成され、各台車単体(2〜4)は、直進姿勢にある搬送台車(1)の左右の一側辺部において走行方向と平行な一直線上に位置する垂直な関節軸心(18b,19b)の周りに水平屈曲自在に連結され、前記摩擦駆動用ロードバー(11)は、台車単体(2〜4)毎に分割された複数のロードバー単体(12a〜12c)で構成され、各ロードバー単体(12a〜12c)は、前記一直線上の位置で各台車単体(2〜4)に取り付けられると共に、台車単体(2〜4)間の前記関節軸心(18b,19b)の周りに水平屈曲自在な構成になっている。
【0007】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記摩擦駆動用ロードバー(11)の各ロードバー単体(12a〜12c)は、台車単体(2〜4)間の前記関節軸心(18b,19b)と同心状の垂直支軸(18a,19a)によって水平屈曲自在に連結し、搬送台車(1)の各台車単体(2〜4)は、これら各台車単体(2〜4)に取り付けられたロードバー単体(12a〜12c)と前記垂直支軸(18a,19a)を介して水平屈曲自在に連結されるように構成することが出来る。
【0008】
又、請求項3に記載のように、搬送台車(1)の各台車単体(2〜4)に取り付けられたロードバー単体(12a〜12c)間の関節軸心(18b,19b)は、前後に隣接する台車単体(2〜4)間の位置よりも前後何れかの台車単体(2〜4)と重なる位置に配置することが出来る。
【0009】
又、請求項4に記載のように、前記摩擦駆動用ロードバー(11)には、その両端部と中間の前記関節軸心(18b,19b)位置に夫々垂直軸心の周りに回転自在なガイドローラー(16〜19)を軸支し、搬送台車(1)の走行経路側(例えば、少なくとも水平カーブ経路部)には、前記各ガイドローラー(16〜19)が係合するガイドレール(24)を配設することが出来る。
【0010】
又、請求項5に記載のように、搬送台車(1)は直列する3台の台車単体(2〜4)から構成し、中央台車単体(2)には被搬送物支持台(9a,9b)とこの被搬送物支持台(9a,9b)の昇降駆動手段(10)を設け、前後両台車単体(3,4)上には、前記被搬送物支持台(9a,9b)上に支持された被搬送物(W)の前後両端より前後に張り出す作業床面(3a,4a)を設け、前記昇降駆動手段(10)は、中央台車単体(2)に取り付けられたロードバー単体(12b)よりも台車中央側に離れた位置で当該中央台車単体(2)の下側に突設させることが出来る。
【0011】
又、請求項6に記載のように、搬送台車(1)に、前記摩擦駆動用ロードバー(11)が取り付けられている側辺部とは反対側の側辺部において第二の摩擦駆動用ロードバー(34)を設け、この第二の摩擦駆動用ロードバー(34)は、搬送台車(1)が直進姿勢にあるときに走行方向と平行な一直線上に直列するように各台車単体(2〜4)に分けて取り付けられたロードバー単体(35a〜35c)で構成し、搬送台車(1)の走行経路中の直線走行経路部には、前記摩擦駆動手段(25)とは別に、前記第二の摩擦駆動用ロードバー(34)に対して作用する第二の摩擦駆動手段(36)を配設することが出来る。
【0012】
更に、請求項7に記載のように、搬送台車(1)には、前記摩擦駆動用ロードバー(11)が取り付けられている側辺部とは反対側の側辺部において前後に隣接する台車単体(2〜4)どうしを互いに連結することが出来る連結離脱自在な連結手段(37a,37b)を設け、搬送台車(1)の走行経路中の少なくとも水平カーブ経路部(31A,31B)の手前には、前記連結手段(37a,37b)を離脱状態に切り換える操作手段(カムレール46)を配設することが出来る。この場合、請求項8に記載のように、前記連結手段(37a,37b)は、前後の台車単体(2〜4)が前記関節軸心(18b,19b)の周りに揺動した屈折姿勢から直進姿勢に復帰したときに自動的に連結状態に切り換わる自動連結手段とすると共に、連結状態から離脱状態に切り換えるための被操作部(カム従動ローラー45)を設けておき、搬送台車(1)の走行経路中の少なくとも直線走行経路部から水平カーブ経路部(31A,31B)への移行区間には、前記被操作部(カム従動ローラー45)を操作して前記自動連結手段(37a,37b)を連結状態から離脱状態に切り換えておくカムレール(46)を、前記操作手段として配設することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、自動車の組み立てラインに使用される搬送台車、即ち、搭載した車体の前後から前後に突出する作業床面を備えた長大な搬送台車を使用する場合であっても、その搬送台車はその走行方向に直列する複数の台車単体から構成することが出来るので、各台車単体は、そのままトラック輸送出来るサイズに抑えることが出来、しかも現場で各台車単体を剛結合して1台の搬送台車に一体化するのではなく、各台車単体を垂直な関節軸心の周りに水平方向に屈折自在に連結するだけであるから、全体として長大な搬送台車であっても比較的安価に実施することが出来る。特に、被搬送物支持台が設けられた中央台車単体の前後に、前記被搬送物支持台上に支持された被搬送物の前後両端より前後に張り出す作業床面を備えた前後両台車単体を関節軸心の周りに屈折自在に連結して、自動車組立てラインに使用する搬送台車を構成する場合、中央台車単体には、自動車車体を安全に支持搬送するのに必要な強度を持たせ、前後両台車単体は、中央台車単体よりも強度を低く設定して構成することが出来るので、搬送台車全体の軽量化を図り、延いてはコストダウンを図ることが出来る。
【0014】
しかも各台車単体は、その左右の一側辺部において垂直な関節軸心の周りに水平屈曲自在に連結されているので、左右両側巾方向の中央位置を通るセンターライン上で水平屈曲自在に連結されている場合と比較して、搬送台車の水平旋回方向は左右の片側に限定されるが、前後に隣接する台車単体間の水平屈曲運動を許容するための空間や重なりを前後に隣接する台車単体間に設ける必要はなく、主として作業ラインに使用される直線走行経路部上では、前後に隣接する台車単体間でその床面を左右の全巾にわたって面一に突き合わせることが出来、この搬送台車上での作業の安全性などに悪影響が及ぶ恐れがない。
【0015】
又、台車単体間の関節軸心が各台車単体の左右の一側辺部に配置される結果、当該関節軸心の周りに水平屈折自在な摩擦駆動用ロードバーが搬送台車の左右の一側辺部に配置されることになり、この結果、当該摩擦駆動用ロードバーと走行経路側の摩擦駆動手段とが、搬送台車の走行経路の左右の一側辺部に配置されることになるので、搬送台車の左右巾方向の中央位置に摩擦駆動用ロードバーと走行経路側の摩擦駆動手段とが配置される構成と比較して、当該摩擦駆動用ロードバー及び摩擦駆動手段に対するメンテナンスも容易になる。
【0016】
尚、各台車単体を前記関節軸心の周りで水平屈折自在に連結し、この各台車単体に、摩擦駆動用ロードバーを構成する各ロードバー単体を、前記関節軸心を通る一直線上に取り付けて構成することも可能であるが、請求項2に記載の構成によれば、中間に関節軸心を備えた水平屈折自在な摩擦駆動用ロードバーそのものが台車単体間の連結手段を兼用することになり、この摩擦駆動用ロードバーと搬送台車とから構成される搬送用走行体の組立てが容易になる。
【0017】
摩擦駆動用ロードバーを構成する各ロードバー単体は、各台車単体の左右の一側辺部の底面に取り付けるのが望ましいが、この場合、必然的に当該各ロードバー単体間の関節軸心の位置は、少なくともロードバー単体の左右横巾の半分の距離だけ台車単体の側辺より内側に入り込むことになる。その結果、前後に隣接する台車単体間(両台車単体の前後両側辺の隣接位置)に前記関節軸心が位置するときは、水平カーブ経路部において搬送台車が摩擦駆動用ロードバーのある側へ水平に旋回走行するとき、前後に隣接する台車単体の前後両側辺の角部が互いに干渉し合わないように、当該台車単体の前後両側辺の角部を小さな曲率の円弧形に切除しておかなければならない。しかしながら、請求項3に記載の構成によれば、関節軸心から台車単体の前後両側辺までの距離を大きくとることが出来るので、台車単体の前後両側辺間の遊び代の範囲内で上記の干渉を回避させたり、台車単体の前後両側辺の角部を切除する場合でも大きな曲率の円弧形で僅かに切除すれば済む。
【0018】
特に、搬送台車を直列する3台の台車単体から構成する場合で、中央台車単体上に被搬送物支持台などが設けられる関係で、前後の台車単体よりも中央台車単体が長くなる場合、この中央台車単体に取り付けられる摩擦駆動用ロードバーのロードバー単体が長くなると、水平カーブ経路部で搬送台車を走行通過させるための摩擦駆動手段の構造や配置に関して制約が大きくなるが、このようなときに、請求項3に記載の構成に従って、前後の台車単体に取り付けられるロードバー単体の長さを当該前後の台車単体の全長より長くすると共に、中央台車単体に取り付けられるロードバー単体の長さを当該中央台車単体の全長より短くすることにより、各ロードバー単体の長さの差を小さく抑えることが出来、好都合である。
【0019】
本発明の構成では、走行経路側に配設された摩擦駆動手段により搬送台車が摩擦駆動されて走行するのであるが、このときの搬送台車の走行方向を何らかの手段で規制しなければならない。例えば、搬送台車の車輪と係合する走行経路側ガイドレールによって搬送台車の走行方向を規制することが出来るが、請求項4に記載の構成によれば、摩擦駆動されて走行する搬送台車の走行方向を、摩擦駆動用ロードバーが備えるガイドローラーと走行経路側のガイドレールとで規制することが出来る。換言すれば、搬送台車の車輪と係合するガイドレールを床面上に敷設することが必須要件でなくなり、特に水平カーブ経路部での搬送台車の走行方向の規制が簡単になり、設備の実施が容易且つ安価に行える。尚、この請求項4に記載の構成は、直線走行経路部を含む搬送台車の走行経路の全域にわたって実施する必要はなく、特定の区間、例えば水平カーブ経路部などにのみ実施することが出来る。
【0020】
又、被搬送物支持台とこの被搬送物支持台の昇降駆動手段、及び前記被搬送物支持台上に支持された被搬送物の前後両端より前後に張り出す作業床面を必要とする自動車組立てライン用の摩擦駆動の台車式搬送装置として利用する場合、請求項5に記載の構成によれば、被搬送物支持台とこの被搬送物支持台の昇降駆動手段を備えた中央台車単体には、自動車車体を安全に支持搬送するのに必要な強度を持たせ、前後両台車単体は、中央台車単体よりも強度を低く設定して構成することが出来るだけでなく、中央台車単体に搭載される昇降駆動手段を、摩擦駆動用ロードバーに関係なく当該中央台車単体の下側に突出するように設けるのであるから、この中央台車単体の上に前記昇降駆動手段を設置しなければならない場合と比較して、中央台車単体の下側空間を有効活用し、搬送経路に必要な占有空間の床面上高さを低くすることが出来る。
【0021】
本発明の構成では、搬送台車の左右の一側辺部に摩擦駆動用ロードバーが配設されているので、この搬送台車を走行経路側の摩擦駆動手段により駆動して直線走行経路部で走行させるとき、当該搬送台車の直進性を、この搬送台車の車輪と係合するガイドレールや、請求項4に記載のように摩擦駆動用ロードバーのガイドローラーと係合するガイドレールによって確保する場合でも、これらガイドレールに対して左右横方向の大きな摩擦力が作用することになり、車輪、ガイドローラー、ガイドレールなどの耐用寿命が短くなるなどの悪影響を伴うことになる。しかしながら、請求項6に記載の構成によれば、直線走行経路部では搬送台車を、その左右両側辺部の夫々に配設された左右一対の摩擦駆動用ロードバーを介して摩擦駆動することが出来、摩擦駆動に伴って搬送台車側に左右横向きの力が働くことが無くなり、搬送台車をして円滑に直進走行させることが出来ると共に、上記のような車輪、ガイドローラー、ガイドレールなどの耐用寿命が短くなる恐れも解消する。
【0022】
更に、請求項7に記載の構成によれば、直線走行経路部では、前後に直列する複数の台車単体を連結手段により互いに連結して、屈折不能な一体型搬送台車とすることが出来るので、例えば直線走行経路部を横断する通路を設けなければならない場合、当該通路の前後に配設された摩擦駆動手段により、搬送台車をして当該通路を確実に通過させることが出来る程度に通路巾を制限することで、当該通路内には搬送台車を案内するガイドレールや摩擦駆動手段を配設する必要が無くなり、当該通路の安全性を高めることが出来る。勿論、搬送台車が水平カーブ経路部の手前に達したときには、前記連結手段が自動的に離脱状態に切り換えられるので、当該水平カーブ経路部においても所期通りに搬送台車をして摩擦駆動により走行させることが出来る。
【0023】
尚、上記請求項7に記載の構成を実施する場合、直線走行経路部中の特定区間だけ前記連結手段により各台車単体を連結させるように構成しても良いし、直線走行経路部の全域において前記連結手段により各台車単体を連結させるように構成しても良い。又、当該連結手段は、走行経路側の操作手段によって離脱状態に切り換えられるものであるが、この離脱状態に切り換えられた連結手段を再び連結状態に切り換えるのも、走行経路側に設けられた操作手段で行うものであっても良い。しかしながら、請求項8に記載の構成によれば、例えば直線走行経路部から水平カーブ経路部への移行区間に操作手段であるカムレールを配設しておくだけで、当該水平カーブ経路部へ移行する搬送台車の前記連結手段を離脱状態に自動的に切り換えて、搬送台車の各台車単体を屈折運動させて支障なく水平カーブ経路部を通過させ、この水平カーブ経路部から下手側の直線走行経路部内に移行する搬送台車の前記連結手段は、特別な操作手段を走行経路側に設けることなく、搬送台車の各台車単体が屈折姿勢から直進姿勢に切り換わる運動を利用して自動的に連結状態に復帰させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、一部切欠き平面図である。
【図2】図2は、走行経路側の摩擦駆動手段を除く正面図である。
【図3】図3は、摩擦駆動手段と搬送台車の要部を示す正面図である。
【図4】図4Aは、摩擦駆動用ロードバーの平面図であり、図4Bは、同摩擦駆動用ロードバーの側面図である。
【図5】図5は、搬送台車の走行経路中の水平カーブ経路部での搬送台車の走行状態の第一段階を示す平面図である。
【図6】図6は、同上第二段階を示す平面図である。
【図7】図7は、同上第三段階を示す平面図である。
【図8】図8は、同上第四段階を示す平面図である。
【図9】図9は、同上第五段階を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の第二実施例を示す一部切欠き平面図である。
【図11】図11は、本発明の第三実施例を示す一部切欠き平面図である。
【図12】図12は、同第三実施例の連結手段の連結状態を示す側面図である。
【図13】図13は、同第三実施例の連結手段の離脱状態を示す側面図である。
【図14】図14は、図13の横断平面図である。
【図15】図15は、同第三実施例の運用形態における搬送台車の走行状態の第一段階を示す平面図である。
【図16】図16は、同上第二段階を示す平面図である。
【図17】図17は、同上第三段階を示す平面図である。
【図18】図18は、同上第四段階を示す平面図である。
【図19】図19は、同上第五段階を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
搬送台車1は、図1〜図4に示すように、走行方向の中央に位置する中央台車単体2と、その前後に隣接する前部台車単体3及び後部台車単体4から構成されている。各台車単体2〜4には、走行経路に沿って敷設された左右一対のガイドレール5a,5b上を転動する左右一対前後二組の自在車輪6〜8が取り付けられ、中央台車単体2には、前後一対の被搬送物支持台9a,9bと、これら両被搬送物支持台9a,9bを平行昇降駆動する昇降駆動手段10が設けられている。
【0026】
この昇降駆動手段10は、各種構造のものが従来周知であるから構造の図示と説明は省くが、例えば、被搬送物支持台9a,9bを平行昇降自在に支持するパンタグラフリンク機構と、当該パンタグラフリンク機構を起伏駆動する流体圧シリンダーユニットやモーター駆動のスクリュー式ジャッキ、突き上げ引き下げ自在なチエンなどから成る昇降駆動装置から構成される。尚、被搬送物支持台9a,9bが中央台車単体2の作業床面2a上まで降下出来るように、昇降駆動手段7は中央台車単体2の下側に突出するように設けられている。
【0027】
前記被搬送物支持台9a,9b上に支持される被搬送物(例えば自動車の車体)Wは、平面視において中央台車単体2の前後両端から前後両台車単体3,4の上に重なるように突出するものであって、前後両台車単体3,4には、この前後両台車単体3,4上に突出している被搬送物Wの前後両端部に対する作業床面3a,4aが形成されている。勿論、この前後両台車単体3,4の作業床面3a,4aは、中央台車単体2の作業床面2aと面一に連続するように構成されている。
【0028】
上記搬送台車1の各台車単体2〜4は、その左右の一側辺部に沿って底面に取り付けられた摩擦駆動用ロードバー11により連結されている。この摩擦駆動用ロードバー11は、搬送台車1の全長とほぼ同一長さの全長を有するもので、各台車単体2〜4に分けて取り付けられる3本のロードバー単体12a〜12cから構成されている。前部台車単体3に取り付けられる前部ロードバー単体12aは、前部台車単体3の全長よりも長い長さを有するものであって、前部台車単体3の底面前端から当該前部台車単体3の一側辺に沿って中央台車単体2の下側に突出するように取り付けられ、後部台車単体4に取り付けられる後部ロードバー単体12cは、後部台車単体4の全長よりも長い長さを有するものであって、後部台車単体4の底面後端から当該後部台車単体4の一側辺に沿って中央台車単体2の下側に突出するように取り付けられ、中央台車単体2に取り付けられる中央ロードバー単体12bは、中央台車単体2の全長よりも短い長さを有するものであって、中央台車単体2の底面に、前後のロードバー単体12a,12c間を接続するように、当該中央台車単体2の一側辺に沿って取り付けられている。
【0029】
更に詳細に説明すると、図4に示すように、各ロードバー単体12a〜12cは、断面輪郭が四角形の棒状部材から構成されたもので、夫々の両端近傍の上面には、各台車単体2〜4の底面に対する取付け板13〜15が内側に突出するように固着され、前部ロードバー単体12aの前端と後部ロードバー単体12cの後端には、垂直軸心の周りに回転自在なガイドローラー16,17が下側に軸支された軸受け部材16a,17aが固着され、前部ロードバー単体12aの後端と中央ロードバー単体12bの前端、及び中央ロードバー単体12bの後端と後部ロードバー単体12cの前端には、互いに上下に重なると共にその重なり部が、下端にガイドローラー18,19が取り付けられた垂直支軸18b,19bの周りに水平に屈折自在に結合される連結部材20a,20b及び21a,21bが固着され、各ロードバー単体12a〜12cが一直線上にあるとき、軸受け部材16a,17a及び連結部材20a〜21bを含む各ロードバー単体12a〜12cの左右両側面が、摩擦駆動用ロードバー11の全長にわたって一直線上に連続する摩擦駆動面22a,22bを形成するように構成されている。
【0030】
上記構成の摩擦駆動用ロードバー11の各ロードバー単体12a〜12cが、取付け板13〜15を介して上記のように搬送台車1の各台車単体2〜4に取り付けられる結果、各台車単体2〜4が、その前後両側辺が互いに隣接して直列する直進姿勢にあるとき、摩擦駆動用ロードバー11の全体が搬送台車1の走行方向と平行な一直線上に位置すると共に、各ガイドローラー16〜19の軸心も搬送台車1の走行方向と平行な一直線上に位置している。そして各台車単体2〜4は、中央台車単体2の前後両端下側に重なる位置にあるガイドローラー18,19の垂直支軸18a,19aの軸心、即ち、関節軸心18b,19bの周りに水平方向に屈折自在に連結されていることになる。
【0031】
搬送台車1の走行経路には、先に説明した左右一対のガイドレール5a,5bと、摩擦駆動用ロードバー11の各ガイドローラー16〜19を左右両側から挟む左右一対のレール部材23a,23bから構成された走行方向規制用ガイドレール24が敷設されている。又、搬送台車1の走行経路中の所要箇所には、摩擦駆動手段25が配設されている。この摩擦駆動手段25は、モーター駆動の摩擦駆動輪26とバックアップローラー27とで搬送台車1側の摩擦駆動用ロードバー11を左右両側から挟み付ける構造のものであって、バックアップローラー27は定位置に垂直支軸の周りに回転自在に軸支され、垂直支軸の周りに回転自在な摩擦駆動輪26とこれを回転駆動するモーター26aとは、垂直支軸28の周りに水平揺動自在に軸支された可動体29に支持され、摩擦駆動輪26がバックアップローラー27側に接近移動する方向に前記可動体29を付勢する付勢手段30が設けられたものである。付勢手段30としては、スプリングや図示の流体圧シリンダーユニットなどが使用される。
【0032】
この種の摩擦駆動手段25は従来周知のものであって、搬送台車1の走行経路中の直線走行区間の内、各搬送台車1を後側の搬送台車1で後押しして走行させる後押し駆動区間では、当該後押し駆動区間の入り口と出口とに設けられ、搬送台車1を適当間隔おきに走行させる区間では、搬送台車1の全長、即ち、摩擦駆動用ロードバー11の全長より少し短い間隔で配置される。従って、搬送台車1の走行経路中の直線走行区間では、摩擦駆動手段25のモーター駆動されている摩擦駆動輪26とバックアップローラー27との間に摩擦駆動用ロードバー11の前端(前部ロードバー単体12aの前端)が進入した搬送台車1は、回転する摩擦駆動輪26と摩擦駆動用ロードバー11の摩擦駆動面22aとの間の摩擦力により前進方向の推力を受けて前進走行することになるが、当該摩擦駆動用ロードバー11よりも内側に離れた位置にある各自在車輪6〜8とガイドレール5a,5bとの間の抵抗により、摩擦駆動用ロードバー11と摩擦駆動輪26との間の接点を中心とする水平方向の回転力が搬送台車1に作用して、搬送台車1の直進性が損なわれるところであるが、摩擦駆動用ロードバー11の前後両端と中間の関節軸心位置にある各ガイドローラー16〜19が搬送台車1の走行方向に沿って敷設されている走行方向規制用ガイドレール24と係合していることにより、搬送台車1は、当該走行方向規制用ガイドレール24と平行に直進走行することになる。
【0033】
従って、搬送台車1の各自在車輪6〜8に対するガイドレール5a,5bは、単に各自在車輪6〜8を転動自在に支持する平坦な表面を備えたものであれば良い。勿論、摩擦駆動用ロードバー11の各ガイドローラー16〜19を介して搬送台車1の走行方向を規制する走行方向規制用ガイドレール24を敷設しているときは、ガイドレール5a,5bを使用せずに、各自在車輪6〜8が平坦な床面上を転動するように構成することも出来る。
【0034】
次に、図5〜図9に基づいて、搬送台車1の走行経路中に設けられた水平カーブ経路部31での搬送台車1の走行について説明すると、この水平カーブ経路部31は、上手側の直線走行経路部32と当該直線走行経路部32に対して直角向きの下手側の直線走行経路部33とを接続するものであって、搬送台車1を、摩擦駆動用ロードバー11のある側辺が旋回中心側になる向きに旋回走行させるものである。而して、水平カーブ経路部31の入り口側と出口側とに前記摩擦駆動手段25A,25Bが配設されている。又、水平カーブ経路部31におけるガイドレール5a,5bは、当該水平カーブ経路部31を走行する搬送台車1の各自在車輪6〜8の移動軌跡をカバー出来るように、水平カーブ経路部31の両端から中央位置に向かって徐々に巾が広くなる形状に構成しているが、水平カーブ経路部31には、ガイドレール5a,5bに代えて平坦な床板を張設することも出来る。
【0035】
図5及び図6に示すように、水平カーブ経路部31の入り口側の摩擦駆動手段25Aより1つ上手側の摩擦駆動手段25(又は後続の搬送台車1による後押し駆動)によって直線走行経路部32を水平カーブ経路部31に向かって走行する搬送台車1は、入り口側の摩擦駆動手段25Aに到達した後、当該摩擦駆動手段25Aによって水平カーブ経路部31内に送り込まれる。そしてこの搬送台車1が、その摩擦駆動用ロードバー11の後端、即ち、後部台車単体4に取り付けられている後部ロードバー単体12cの後端が前記摩擦駆動手段25Aから外れる位置に到達する少し前に、当該搬送台車1の摩擦駆動用ロードバー11の前端、即ち、前部台車単体3に取り付けられている前部ロードバー単体12aの前端が水平カーブ経路部31の出口側の摩擦駆動手段25Bに達しており、図7及び図8に示すように、当該搬送台車1は、摩擦駆動手段25Aによる駆動状態から摩擦駆動手段25Bによる駆動状態に途切れることなく切り換えられ、当該摩擦駆動手段25Bによって、前部台車単体3から中央台車単体2及び後部台車単体4の順に水平カーブ経路部31から下手側の直線走行経路部33へと送り出される。
【0036】
上記のように搬送台車1が、上手側の直線走行経路部32から水平カーブ経路部31を経由して下手側の直線走行経路部33へと走行するとき、前部台車単体3に取り付けられている前部ロードバー単体12aの前後両端に位置するガイドローラー16,18、中央台車単体2に取り付けられている中央ロードバー単体12bの前後両端に位置するガイドローラー18,19、及び後部台車単体4に取り付けられている後部ロードバー単体12cの前後両端に位置するガイドローラー19,17が、水平カーブ経路部31に沿って円弧形に敷設されている走行方向規制用ガイドレール24に沿って移動するのに伴って、各台車単体2〜4は、前部ロードバー単体12aと中央ロードバー単体12bとの間の関節軸心(垂直支軸18a)及び中央ロードバー単体12bと後部ロードバー単体12cとの間の関節軸心(垂直支軸19a)を支点に、水平カーブ経路部31の曲がり方向に水平に相対的に屈折しながら走行する。そして図9に示すように、後部台車単体4が水平カーブ経路部31から下手側の直線走行経路部33に移行し、再び各台車単体2〜4が直線走行経路部33と平行に直列する直進姿勢になった搬送台車1は、水平カーブ経路部31の出口側の摩擦駆動手段25Bによって下手側の直線走行経路部33へ送り出される。
【0037】
図10に示す本発明の他の実施例では、搬送台車1の前記摩擦駆動用ロードバー11のある側辺部とは反対側の側辺部に、第二の摩擦駆動用ロードバー34が設けられている。この第二の摩擦駆動用ロードバー34は、搬送台車1の前部台車単体3に取り付けられた前部ロードバー単体35a、中央台車単体2に取り付けられた中央ロードバー単体35b、及び後部台車単体4に取り付けられた後部ロードバー単体35cから構成されたもので、各ロードバー単体35a〜35cの長さは、取り付けられる各台車単体2〜4の全長とほぼ等しく、搬送台車1が、各台車単体2〜4が直列する直進姿勢にあるとき、摩擦駆動用ロードバー11と平行で一直線上に直列するものであり、摩擦駆動用ロードバー11の各ロードバー単体12a〜12cように互いに連結されていないし、ガイドローラー16〜19に相当するガイドローラーも設けられていない。
【0038】
この第二の摩擦駆動用ロードバー34を備えた搬送台車1の直線走行経路部には、摩擦駆動用ロードバー11に作用して搬送台車1を推進させる摩擦駆動手段25とは別に、第二の摩擦駆動用ロードバー34に作用して搬送台車1を推進させる第二の摩擦駆動手段36を、好ましくは前記摩擦駆動手段25と左右対称位置に並設することが出来る。この第二の摩擦駆動手段36は、前記摩擦駆動手段25と対称構造であるから、同一参照符号を付して説明は省略する。
【0039】
上記のように摩擦駆動手段25と第二の摩擦駆動手段36とが左右対称位置に並設された搬送台車1の直線走行経路部では、搬送台車1は、その左右両側辺の摩擦駆動用ロードバー11と第二の摩擦駆動用ロードバー34とを介して、摩擦駆動手段25と第二の摩擦駆動手段36とから同時に推進力を受けて走行駆動されるので、搬送台車1を強力に推進させることが出来るだけでなく、搬送台車1の直進性が確保されるので、摩擦駆動用ロードバー11の各ガイドローラー16〜19と走行方向規制用ガイドレール24との間の摩擦も少なくなる。勿論、第二の摩擦駆動用ロードバー34を構成する各ロードバー単体35a〜35cは互いに連結されていないので、この搬送台車1が先に説明した水平カーブ経路部31を走行するとき、各台車単体2〜4の水平方向の相対的な屈折運動に影響しない。
【0040】
図11〜図14に示す本発明の他の実施例では、搬送台車1の前記摩擦駆動用ロードバー11のある側辺部とは反対側の側辺部に、前後に隣接する台車単体2〜4どうしを連結する自動連結手段37a,37bが設けられている。この自動連結手段37a,37bは、位置固定のフック部材38と、左右水平支軸39の周りに上下揺動自在で先端に前記フック部材38に対して係脱自在な係合部40を備えた揺動アーム41、及びこの揺動アーム41を前記フック部材38に対する係合姿勢に付勢保持するスプリング42から構成されたものである。
【0041】
図示例では、フック部材38が下手側の台車単体2,4の前端下側に取り付けられ、揺動アーム41が上手側の台車単体3,2の後端下側に取り付けられている。更に詳述すれば、揺動アーム41は、台車単体側から垂下する垂直な軸受け板43を挟む状態で左右水平支軸39の周りに上下揺動自在に軸支された左右一対のアーム部材41a,41bから成り、この左右一対のアーム部材41a,41bの先端部間に左右水平支軸44によって自転可能に支持されたローラー40aによって前記係合部40が構成され、前記左右水平支軸44の一側方への延長端部に被操作部としてのカム従動ローラー45が支承されている。前記スプリング42は、前記左右一対のアーム部材41a,41bを互いに連結する連結板41cと、前記軸受け板43が下側に突設された取付け板43aとの間に掛張された引張コイルバネから成り、前記軸受け板43には、前記揺動アーム41をフック部材38に対する係合姿勢で受け止めるために、前記連結板41cに当接するストッパー部43bが設けられている。
【0042】
上記構成の自動連結手段37a,37bは、搬送台車1が図11に示すように各台車単体2〜4が直列する直進姿勢にあるとき、図12に示すように、揺動アーム41の係合部40(ローラー40a)の内側で左右一対のアーム部材41a,41b間にフック部材38の先端の逆止爪部38aが上向きに嵌合する連結状態にある。このとき揺動アーム41は、ほぼ水平姿勢で軸受け板43のストッパー部43bに支持されている。このように自動連結手段37a,37bが連結状態にあると、搬送台車1は、各台車単体2〜4間の屈折運動が不能な状態になる。
【0043】
搬送台車1の走行経路中に設定された、自動連結手段37a,37bを連結状態から離脱状態に切り換える操作地点には、図13及び図14に示すように、連結状態にある自動連結手段37a,37bの揺動アーム41のカム従動ローラー45を、搬送台車1の走行に伴って押し上げると共に必要経路長さにわたってその押上げ状態を維持させるためのカムレール46が敷設される。従って、カムレール46が敷設された地点を搬送台車1が走行通過するとき、連結状態にある自動連結手段37a,37bの揺動アーム41のカム従動ローラー45がカムレール46上に乗り上げて、揺動アーム41がスプリング42の付勢力に抗して左右水平支軸39の周りに上動し、その先端の係合部40(ローラー40a)が相手側台車単体のフック部材38の逆止爪部38aから上方に離脱して、自動連結手段37a,37bが連結状態から離脱状態に切り換えられる。
【0044】
自動連結手段37a,37bの離脱状態では、図13及び図14に示すように、当該動連結手段37a,37bで連結されていた前後両台車単体3,2及び2,4が互いに離間移動出来るので、台車単体2〜4の屈折運動が可能な状態になる。又、前後両台車単体3,2及び2,4が屈折運動により互いに離間している状態で自動連結手段37a,37bの揺動アーム41のカム従動ローラー45がカムレール46上から外れると、相手側の台車単体のフック部材38より前方に離れた位置で揺動アーム41がスプリング42の付勢力によって元の係合姿勢に復帰する。そしてこの状態で、互いに離間していた前後両台車単体3,2及び2,4が復帰方向の屈折運動により互いに接近移動すると、水平姿勢でストッパー部43bにより受け止められていた揺動アーム41の係合部40が、当該係合部40のローラー40aが相手側の台車単体のフック部材38の逆止爪部38aに乗り上げて通過することにより、自動的にフック部材38の逆止爪部38aの内側に嵌合して、自動連結手段37a,37bが自動的に元の連結状態に復帰することになる。
【0045】
上記のような自動連結手段37a,37bを備えた搬送台車1の利用方法の一例を、図15〜図19に示すように、例えば2つの水平カーブ経路部31A,31B間の直線走行経路部47に横断通路48が設けられているレイアウトにおいて説明すると、各水平カーブ経路部31A,31Bの入り口側に前記カムレール46が敷設される。又、水平カーブ経路部31A、直線走行経路部47、及び水平カーブ経路部31Bをこの順に経由して、各搬送台車1を個別に連続走行駆動できるように、搬送台車1の摩擦駆動用ロードバー11の全長より少し短い間隔で摩擦駆動手段25A〜25Dが併設される。図示例のレイアウトでは、直線走行経路部47の長さが短いので、水平カーブ経路部31Aの出口側の摩擦駆動手段25Bと水平カーブ経路部31Bの入り口側の摩擦駆動手段25Cが、直線走行経路部47において搬送台車1を走行駆動する手段を兼用している。尚、横断通路48には、搬送台車1の走行経路を形成するガイドレール5a,5bや走行方向規制用ガイドレール24は敷設されておらず、搬送台車1の各自在車輪6〜8は、横断通路48で分断されたガイドレール5a,5bの自在車輪の転動面と面一に形成された横断通路48の床面上を転動するように構成されている。
【0046】
上記構成において、搬送台車1が水平カーブ経路部31A及び31Bを、摩擦駆動手段25A,25B及び25C,25Dの駆動作用を受けて走行通過するときの動作は、図5〜図9に基づいて詳細に説明した通りであるが、搬送台車1が各水平カーブ経路部31A及び31Bに進入するとき、カムレール46が自動連結手段37a,37bを、各自動連結手段37a,37bが連結している前部台車単体3と中央台車単体2及び中央台車単体2と後部台車単体4が水平カーブ経路部31A,31Bに沿って屈折運動を開始する直前に、連結状態から離脱状態に切り換えるので、搬送台車1は、各台車単体2〜4の屈折運動を伴って各水平カーブ経路部31A及び31Bを問題なく走行通過することが出来る。そしてカムレール46から揺動アーム41のカム従動ローラー45が外れることにより、自動連結手段37a,37bは離脱状態から自動連結が可能な状態になり、この状態で搬送台車1が水平カーブ経路部31A,31Bを走行することになる。
【0047】
搬送台車1が水平カーブ経路部31A,31Bから下手側の直線走行経路部に進入することにより、搬送台車1は、その各台車単体2〜4が直列する直進姿勢に変化してゆくのであるが、屈折により離間状態にあった前後両台車単体3,2及び2,4が互いに接近隣接するとき、先に説明したように自動連結手段37a,37bが離脱状態から自動的に連結状態に切り換わり、当該自動連結手段37a,37bによって前後両台車単体3,2及び2,4が互いに連結され、一体化される。
【0048】
従って、水平カーブ経路部31Aから直線走行経路部47に摩擦駆動手段25Bにより直進姿勢で送り出された搬送台車1が、次の水平カーブ経路部31Bへ摩擦駆動手段25Cにより送り込まれる過程において、当該搬送台車1の各台車単体2〜4が横断通路48を順に走行通過するとき、前部台車単体3は、図17に示すように、後ろ側の摩擦駆動手段25Bによって駆動されている中央台車単体2又は後部台車単体4によって後押しされる状態で横断通路48を通過するが、図18に示すように、中央台車単体2や後部台車単体4には、後ろ側の摩擦駆動手段25Bからの後押し駆動力を受けないで、前側の摩擦駆動手段25Cによって駆動されている前部台車単体3に引っ張られる状態で、走行方向規制用ガイドレール24が設けられていない横断通路48を通過する状況が生じる。このような状況においても、当該中央台車単体2や後部台車単体4は自動連結手段37a,37bを介して前部台車単体3や中央台車単体2に連結された状態であるから、横断通路48上を前側の前部台車単体3や中央台車単体2によって牽引される中央台車単体2や後部台車単体4は、関節軸心18b,19bの周りでの水平揺動運動を伴うことなく、直進姿勢を保って問題なく横断通路48を走行通過することが出来るのである。
【0049】
尚、自動連結手段37a,37bにおける揺動アーム41を、例えば2位置切換え用スプリングを使用するなどして、水平連結姿勢と上動離脱姿勢とに択一的に保持出来るように構成し、水平連結姿勢から上動離脱姿勢に切り換えるカムレール46と、この逆に上動離脱姿勢から水平連結姿勢に切り換えるカムレールとを併用する連結手段とすることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の摩擦駆動の台車式搬送装置は、自動車組立てラインにおいて自動車の車体を支持する搬送台車上に作業者が搭乗した状態で当該車体に対する組立て作業を行うのに好適な摩擦駆動の台車式搬送装置として活用出来る。
【符号の説明】
【0051】
1 搬送台車
2 中央台車単体
3 前部台車単体
4 後部台車単体
5 ガイドレール
6〜8 自在車輪
9a,9b 被搬送物支持台
10 昇降駆動手段
11,34 摩擦駆動用ロードバー
12a〜12c,35a〜35c ロードバー単体
16〜19 ガイドローラー
18b,19b 関節軸心
24 走行方向規制用ガイドレール
25,25A〜25D,36 摩擦駆動手段
26 摩擦駆動輪
27 バックアップローラー
31,31A,31B 水平カーブ経路部
32,33,47 直線走行経路部
37a,37b 自動連結手段
38 フック部材
40 係合部
41 揺動アーム
42 スプリング
45 カム従動ローラー(被操作部)
46 カムレール(操作手段)
48 横断通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車全長にわたって連続するように走行方向と平行に設けられた摩擦駆動用ロードバーを備えた搬送台車と、この搬送台車の走行経路側に配設され且つ前記ロードバーに圧接する摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段から成る摩擦駆動の台車式搬送装置において、前記搬送台車が、その走行方向に直列する複数の台車単体から構成され、各台車単体は、直進姿勢にある搬送台車の左右の一側辺部において走行方向と平行な一直線上に位置する垂直な関節軸心の周りに水平屈曲自在に連結され、前記摩擦駆動用ロードバーは、台車単体毎に分割された複数のロードバー単体で構成され、各ロードバー単体は、前記一直線上の位置で各台車単体に取り付けられると共に、台車単体間の前記関節軸心の周りに水平屈曲自在に構成されている、摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項2】
前記摩擦駆動用ロードバーの各ロードバー単体が、台車単体間の前記関節軸心と同心状の垂直支軸によって水平屈曲自在に連結され、搬送台車の各台車単体は、これら各台車単体に取り付けられたロードバー単体と前記垂直支軸を介して水平屈曲自在に連結されている、請求項1に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項3】
搬送台車の各台車単体に取り付けられたロードバー単体間の関節軸心は、前後に隣接する台車単体間の位置よりも前後何れかの台車単体と重なる位置に配置している、請求項1又は2に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項4】
前記摩擦駆動用ロードバーには、その両端部と中間の前記関節軸心位置に夫々垂直軸心の周りに回転自在なガイドローラーが軸支され、搬送台車の走行経路側には、前記各ガイドローラーが係合するガイドレールが配設されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項5】
搬送台車は直列する3台の台車単体から構成され、中央台車単体には被搬送物支持台とこの被搬送物支持台の昇降駆動手段が設けられ、前後両台車単体上には、前記被搬送物支持台上に支持された被搬送物の前後両端より前後に張り出す作業床面が設けられ、前記昇降駆動手段は、中央台車単体に取り付けられたロードバー単体よりも台車中央側に離れた位置で当該中央台車単体の下側に突設されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項6】
搬送台車には、前記摩擦駆動用ロードバーが取り付けられている側辺部とは反対側の側辺部において第二の摩擦駆動用ロードバーが設けられ、この第二の摩擦駆動用ロードバーは、搬送台車が直進姿勢にあるときに走行方向と平行な一直線上に直列するように各台車単体に分けて取り付けられたロードバー単体で構成され、搬送台車の走行経路中の直線走行経路部には、前記摩擦駆動手段とは別に、前記第二の摩擦駆動用ロードバーに対して作用する第二の摩擦駆動手段が配設されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項7】
搬送台車には、前記摩擦駆動用ロードバーが取り付けられている側辺部とは反対側の側辺部において前後に隣接する台車単体どうしを互いに連結することが出来る連結離脱自在な連結手段が設けられ、搬送台車の走行経路中の少なくとも水平カーブ経路部の手前には、前記連結手段を離脱状態に切り換える操作手段が配設されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。
【請求項8】
前記連結手段は、前後の台車単体が前記関節軸心の周りに揺動した屈折姿勢から直進姿勢に復帰したときに自動的に連結状態に切り換わる自動連結手段であって、連結状態から離脱状態に切り換えるための被操作部を備え、搬送台車の走行経路中の少なくとも直線走行経路部から水平カーブ経路部への移行区間には、前記被操作部を操作して前記自動連結手段を連結状態から離脱状態に切り換えておくカムレールが配設されている、請求項7に記載の摩擦駆動の台車式搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−6495(P2013−6495A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140096(P2011−140096)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)