説明

摩擦駆動トロリーコンベヤ

【課題】牽引用係合手段32を前後両端に備えた摩擦駆動用ロードバー5を備えた搬送用走行体1を使用する摩擦駆動トロリーコンベヤにおいて、大重量物の搬送時でも牽引駆動を無理なく確実に行えるようにする。
【解決手段】牽引用係合手段32が、ロードバー5の一端に形成された上下方向の切欠き部44内に左右水平方向に架設された被係合軸35、ロードバー5の他端で当該ロードバー5の上下高さの中間位置に上下揺動自在に軸支されて、隣接する搬送用走行体1のロードバー5の前記被係合軸35に対して係脱自在なフック部材33、及びこのフック部材33を係合姿勢と係合解除姿勢とに択一的に保持する保持手段から構成され、走行経路側には、フック部材33を係合姿勢から係合解除姿勢に切り換える第一切換え手段45と、フック部材33を係合解除姿勢から係合姿勢に切り換える第二切換え手段47が配設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトロリーとこれらトロリーに吊り下げられて当該トロリーを互いに連結する摩擦駆動用ロードバーとから成る搬送用走行体を利用する摩擦駆動トロリーコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の摩擦駆動トロリーコンベヤは、自動車ボディーなどの大型長尺物を吊り下げ搬送する手段として利用されるもので、特許文献1に記載されるように、搬送用走行体とこれに吊り下げられた被搬送物支持部(ハンガー)とから成り、搬送用走行体は、走行方向に直列配置された例えば4つのトロリーと、これらトロリーで吊り下げられ且つ各トロリーの回転垂直軸心と同心の折曲関節部を介して連結された複数本のロードバー単体で構成されたロードバーを備え、走行経路側には、前記ロードバーの側面に圧接して回転駆動される摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段が配設されたものである。而して、特許文献1に記載のものは、各搬送用走行体のロードバーの前後両端に設けられた連結手段を介して連結された後ろ側搬送用走行体を前記摩擦駆動手段で駆動される前側搬送用走行体により牽引する牽引駆動方式で各搬送用走行体を推進できるように構成されているが、この特許文献1に記載されるように、従来のこの種の摩擦駆動トロリーコンベヤでは、前後の搬送用走行体どうしを互いに連結する連結手段が、ロードバーの一端下側に設けられた被係合軸と、ロードバーの他端下側に設けられた上下揺動自在なフック部材とで構成されていた。
【特許文献1】特開2004−25904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載される構成では、連結手段による前後の搬送用走行体の連結箇所がロードバーの端部で下側に離れた位置となるため、この連結手段で連結された後ろ側搬送用走行体を前側搬送用走行体で牽引したとき、当該連結手段を構成する被係合軸を支持するためにロードバーの一端から下向きに突設されたブラケットや、フック部材を軸支するためにロードバーの他端から下向きに突設されたブラケットに大きな曲げ力が作用することになり、大重量の自動車ボディーなどを搬送するトロリーコンベヤとしては、活用することができなかった。又、台車形式と異なって、トロリーコンベヤのロードバーは、複数のトロリーで吊り下げられ且つ中間に水平方向折曲関節部を備えた、比較的細い棒状のものであるから、仮に前記ブラケットを十分に補強して曲げ剛性を高めても、ロードバーの端部領域そのものに曲げ変形が生じる恐れもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る摩擦駆動トロリーコンベヤを提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤは、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、搬送用走行体1とこれに吊り下げられた被搬送物支持部(ハンガー6)とから成り、搬送用走行体1は、被搬送物を支持するロードトロリー3a,3bと、このロードトロリー3a,3bの少なくとも前後何れか一方に位置するフリートロリー4a,4b、及びこれらトロリー3a〜4bに吊り下げられて当該トロリー3a〜4bを互いに連結するロードバー5から構成され、このロードバー5の前後両端には、搬送用走行体1のロードバー5の前後両端が互いに接近した状態において、互いに係脱自在に係合する牽引用係合手段32,50が設けられ、走行経路側には、前記ロードバー5の側面に圧接して回転駆動される摩擦駆動輪14を備えた摩擦駆動手段13が配設され、この摩擦駆動手段13で推進される搬送用走行体1が、各搬送用走行体1の前記牽引用係合手段32,50を介して連結された後続搬送用走行体1を牽引駆動できるように構成された摩擦駆動トロリーコンベヤであって、前記牽引用係合手段32,50が、ロードバー5の一端に形成された上下方向の切欠き部44,62、このロードバー5の上下高さの中間位置に位置するように前記切欠き部44,62に左右水平方向に架設された被係合軸35,53、ロードバー5の他端で当該ロードバー5の上下高さの中間位置に上下揺動自在に軸支されて、隣接する搬送用走行体1のロードバー5の前記被係合軸35,53に対して係脱自在なフック部材33,51、及びこのフック部材33,51を係合姿勢と係合解除姿勢とに択一的に保持する保持手段から構成され、走行経路側には、前記フック部材33,51を係合姿勢から係合解除姿勢に切り換える第一切換え手段45,65と、前記フック部材33,51を係合解除姿勢から係合姿勢に切り換える第二切換え手段47,63が配設された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記フック部材33は係合姿勢に付勢保持し、前記牽引用係合手段32の保持手段には、前記第一切換え手段45により係合姿勢から係合解除姿勢に切り換えられた前記フック部材33を係合解除姿勢に保持する係止部材34を設け、この係止部材34は、前記フック部材33を係合解除姿勢に保持する作用姿勢に付勢保持し、前記第二切換え手段47は、前記係止部材34を作用姿勢から非作用姿勢に切り換えるように構成することができる。この場合、請求項3に記載のように、前記フック部材33は、その軸支位置から延出する重錘部38によって係合姿勢に付勢保持すると共に、当該フック部材33に、ロードバー5の下側で左右の一側方に突出する切換え用被操作部39を設け、前記係止部材34は、ロードバー5の下側に上下揺動自在に軸支すると共に、前記フック部材33が係合解除姿勢にあるときのみ、当該フック部材33とロードバー5との間に嵌入して当該フック部材33を係合解除姿勢に保持する先端爪部41と、この係止部材34の軸支位置から前記先端爪部41のある側とは反対側に延出する重錘部42と、ロードバー5の下側で左右の他側方に突出する切換え用被操作部43を備えた構造とし、前記第一切換え手段45は、前記フック部材33の切換え用被操作部39に作用するカムレール46から構成し、前記第二切換え手段47は、前記係止部材34の切換え用被操作部43に作用するカムレール48から構成することができる。
【0006】
又、請求項4に記載のように、前記フック部材51の保持手段は、当該フック部材51の軸支位置の周囲に設けられた2つの被係合凹部57,58と、当該フック部材51が係合姿勢にあるときに前記2つの被係合凹部57,58の一方に嵌合すると共に当該フック部材51が係合解除姿勢にあるときに前記2つの被係合凹部57,58の他方に嵌合するバネ付勢の係止具52とから構成することもできる。この場合、請求項5に記載のように、前記フック部材51には、ロードバー5の下側で左右横方向に突出する切換え用被操作部56を設け、前記第一切換え手段65及び第二切換え手段63は、前記切換え用被操作部56に作用するカムレール64,66から構成することができる。
【0007】
更に、請求項6に記載のように、前記フック部材33,51が係合解除姿勢にあるとき、前後の搬送用走行体1のロードバー5が端面どうし互いに当接できるように構成することができる。
【0008】
又、請求項7に記載のように、前記ロードバー5の前後両端面5c,5dは、前記牽引用係合手段32,50を介して前側の搬送用走行体1により後ろ側の搬送用走行体1を牽引駆動させるときに前後両搬送用走行体1のロードバー5間に生じる隙間が、平面視において垂直上下方向に貫通しない形状に形成することができる。この場合、請求項8に記載のように、前記ロードバー5の前後両端面5c,5dは、同一方向に傾斜する傾斜面に形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明に係る摩擦駆動トロリーコンベヤによれば、ロードバーの前後両端に設けられた牽引用係合手段を介して、摩擦駆動される前側の搬送用走行体で後ろ側の搬送用走行体を牽引駆動するとき、当該牽引用係合手段の一方の被係合軸と、当該被係合軸に係合する他方のフック部材の軸支位置とが、何れもロードバーの上下高さの中間位置にあるため、前記被係合軸はロードバーに直接支承させると共に前記フック部材はロードバーに直接軸支させることができ、従来のようなブラケットをロードバーの端部下側に突設する必要がなくなり、部品点数が少なくなってコストダウンを図ることができると同時に、牽引駆動に際して曲げ力を受ける被係合軸支承ブラケットやフック部材軸支ブラケットが存在しないので、大きな牽引力が必要な場合でも安全且つ確実に牽引駆動することができ、大重量の自動車ボディーなどを搬送するトロリーコンベヤとしても活用することができる。又、間接的にロードバー先端部分に曲げ力が作用することもなくなるので、ロードバー自体も特に太くして曲げ剛性を高める必要がなくなり、搬送用走行体の軽量化、延いては摩擦駆動手段の小型化も図ることができる。
【0010】
尚、第一切換え手段と第二切換え手段を直接フック部材に作用させて、当該フック部材を係合姿勢と係合解除姿勢とに切り換える場合、第一切換え手段によるフック部材操作方向と第二切換え手段によるフック部材操作方向とが互いに逆向きになるので、第一切換え手段と第二切換え手段の内、何れか一方は、搬送用走行体の走行方向との関係で多少無理を伴う切換え操作となるところであるが、請求項2に記載の構成によれば、フック部材とは別に、係合解除姿勢に切り換えられたフック部材を係合解除姿勢に保持する係止部材を設け、第二切換え手段は、前記係止部材を作用姿勢から非作用姿勢に切り換えるように構成して、この係止部材が非作用姿勢に切り換えられることによりフック部材が付勢力で係合姿勢に切り換えられるように構成したので、結果的に第二切換え手段によるフック部材の係合姿勢への切り換えが容易且つ確実に行わせることができる。
【0011】
上記の請求項2に記載の構成を採用する場合、請求項3に記載の構成によれば、スプリングを全く使用しないで構成することも可能(重錘部との併用も可能であるが)になると共に、ロードバーの上側には突出物を設けないで構成することもでき、更に第一切換え手段及び第二切換え手段の何れもアクチュエーターを必要としないカムレールにより簡単に構成できるので、上記請求項2に記載の構成の実施が容易になる。
【0012】
又、請求項4に記載の構成によれば、上記請求項2に記載の構成と比較して、係止部材が不要になり、構造をシンプルにすることができる。この場合、請求項5に記載の構成によれば、第一切換え手段及び第二切換え手段の何れもアクチュエーターを必要としないカムレールにより簡単に構成できるので、上記請求項4に記載の構成の実施が容易になる。
【0013】
更に、請求項6に記載の構成によれば、フック部材を係合解除姿勢に切り換えておきさえすれば、後ろ側の搬送用走行体で前側の搬送用走行体を、それぞれのロードバーを介して突き押し駆動させることも可能であり、このときにロードバー前後両端の牽引用係合手段に無理な力を作用させないで済むので、牽引用係合手段が変形したりして正常な牽引駆動ができなくなる恐れや、当該牽引用係合手段の耐用寿命が短くなる恐れがなくなる。
【0014】
又、請求項7に記載の構成によれば、牽引駆動状態において前側のロードバーから後ろ側のロードバーに摩擦駆動輪が常に円滑に乗り移ることができ、牽引用係合手段による牽引駆動を確実良好に行わせることができる。この場合、請求項8に記載の構成によれば、ロードバーの前後両端部に設けられる牽引用係合手段のフック部材の支軸や被係合軸よりも前後に延出するロードバーの前後両端部の長さを短くすることができ、水平曲線経路部でのロードバー利用の突き押し駆動も支障なく行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1〜図3において、1は搬送用走行体であって、床上所定高さに水平に架設されたガイドレール2に走行可能に係合する4つのトロリー、即ち、中間の前後一対のロードトロリー3a,3bと前後両端のフリートロリー4a,4b、これら4つのトロリー3a〜4bに吊り下げられたロードバー5、及び被搬送物支持具としてのハンガー6から構成されている。ロードバー5は、4つの各トロリー3a〜4b間を連結する3本の中間ロードバー単体8a〜8cと、前後両端のフリートロリー4a,4bに結合されてこれら前後両端のフリートロリー4a,4bから前後に少し突出する短い前後両端ロードバー単体9a,9bから構成されている。
【0016】
ガイドレール2で構成されるハンガーの走行経路には、その長さ方向適当間隔おきの位置で床面上に門形フレーム10が据え付けられ、この門形フレーム10の上端レール吊り下げフレーム部11の中央下側に前記ガイドレール2が固定されて吊り下げられている。門形フレーム10として、水平のレール吊り下げフレーム部11の両端を支持する左右一対の支柱フレーム部12a,12bが下広がりに傾斜する台形状のものを例示しているが、左右一対の支柱フレーム部12a,12bが平行で垂直な倒立コ形のものであっても良いし、全体が曲線状のアーチ形のものであっても良い。又、各門形フレーム10は、ガイドレール2以外の連結フレームで互いに連結することができるし、当該連結フレームには、必要に応じて保守点検用の作業者搭乗可能な架台を付設することができる。
【0017】
ガイドレール2には、適当間隔おきに摩擦駆動手段13が併設される。この摩擦駆動手段13は従来周知のもので、ロードバー5の左右両垂直側面5a,5b(図6参照)の内、一方の側面5aに圧接する摩擦駆動輪14と、反対側の側面5bに当接するバックアップローラー15、及び摩擦駆動輪14を回転駆動するモーター16から成るもので、バックアップローラー15は、ガイドレール2に固定されたフレーム17に定位置で自転のみ可能に垂直支軸で軸支されているが、垂直な出力軸に摩擦駆動輪14が取り付けられたモーター16は、ロードバー5の側面5aに対して水平遠近方向移動自在に前記フレーム17に支持されると共に、スプリングによりロードバー5の側面5aに圧接する方向に付勢されている。
【0018】
以下、詳細に説明すると、前後一対のロードトロリー3a,3bは、図4、図5、及び図7Aに示すように、H形鋼利用のガイドレール2の中央垂直板部2aの下側辺から左右両側に張り出す左右一対の下側水平レール部2b上を転動する左右一対の主ホイール18と、この主ホイール18の前後両側で中央垂直板部2aを挟む左右一対前後2組の垂直軸ローラー19とを備えたもので、ガイドレール2の中央真下位置において、垂直下方に突出する垂直軸20が止めピン21により固着突設されている。前後両端のフリートロリー4a,4bは、図4、図5、及び図7Bに示すように、ガイドレール2の前記左右一対の下側水平レール部2bを上下両側から挟む上下一対の水平軸ローラー22a,22bが前後左右4箇所に設けられると共に、ガイドレール2の前記中央垂直板部2aを挟む左右一対前後2組の垂直軸ローラー23を備えたもので、ロードトロリー3a,3bと同様に、ガイドレール2の中央真下位置において、垂直下方に突出する垂直軸24が止めピン25により固着突設されている。
【0019】
ロードバー5の3本の中間ロードバー単体8a〜8cの内、ロードトロリー3a,3bと前後両端のフリートロリー4a,4bとを連結する中間ロードバー単体8b,8cには、その両端近傍位置に、水平支軸26の周りに上下垂直方向に折曲自在な上下方向折曲関節部27が設けられている。そして、各中間ロードバー単体8a〜8cと前後両端ロードバー単体9a,9bのロードバー長さ方向に隣接する端部どうしは、各トロリー3a〜4bから垂直下向きに突出している垂直軸20,24の周りに左右水平方向に折曲自在な水平方向折曲関節部28を介して互いに連結し、短い前後両端ロードバー単体9a,9bのみ、前後両端のフリートロリー4a,4bから垂直下向きに突出している垂直軸24にキー止めされて、当該前後両端ロードバー単体9a,9bと一体化されている。
【0020】
前後一対のロードトロリー3a,3bから垂直下向きに突出している垂直軸20は、図7Aにも示すように、下方に長く延出し、この垂直軸20の下端延出部20aに、当該垂直軸20の周りに回転可能にハンガー吊り下げ用ブラケット30が支持され、これら前後一対のハンガー吊り下げ用ブラケット30に前記ハンガー6の上部フレーム7が、ハンガーの走行方向と平行な前後方向水平支軸31を介して左右上下方向に揺動自在に吊り下げられている。
【0021】
以上のように構成された搬送用走行体1によれば、各トロリー3a〜4bは、主ホイール18及び上側水平軸ローラー22aによってガイドレール2の下側水平レール部2bに吊り下げられると共に、左右一対前後2組の垂直軸ローラー19,23によってガイドレール2の中央垂直板部2aと平行な向きに規制されており、更に前後一対のロードトロリー3a,3bは、吊り下げているハンガー6を含む荷重によりガイドレールの下側水平レール部2bに対する浮き上がりが防止され、前後両端のフリートロリー4a,4bは、下側水平軸ローラー22bによりガイドレールの下側水平レール部2bに対する浮き上がりが防止されている。勿論、前後一対のロードトロリー3a,3bにも、ガイドレールの下側水平レール部2bの下側に当接してこれらトロリー3a,3bの浮き上がりを防止する水平軸ローラーを設けても良い。
【0022】
又、各トロリー3a〜4bに吊り下げられて当該トロリー3a〜4bを連結するロードバー5には、上下方向折曲関節部27が上記のような位置に配設されているので、この搬送用走行体1の走行経路、即ち、ガイドレール2に上り下りの勾配経路部が存在している場合、各トロリー3a〜4bは、ロードバー5が備える上下方向折曲関節部27での水平支軸26の周りの上下方向の折曲運動を伴って、当該ガイドレール2の上り下りの勾配経路部に沿って走行することができる。又、ロードバー5には、水平方向折曲関節部28が上記のような位置に配設されているので、この搬送用走行体1の走行経路、即ち、ガイドレール2に水平曲線経路部が存在している場合、各トロリー3a〜4bは、ロードバー5が備える水平方向折曲関節部28での垂直軸20の周りの水平方向の折曲運動を伴って、当該ガイドレール2の水平曲線経路部に沿って走行することができる。
【0023】
尚、搬送用走行体1が水平曲線経路部に沿って走行するとき、そのロードバー5の前後両端ロードバー単体9a,9bは、上記のように前後両端のフリートロリー4a,4bと一体化されているので、水平曲線経路部の中心線に対し当該フリートロリー4a,4bの垂直軸24の軸心を通る接線方向に向きが規制され、しかもこれら前後両端ロードバー単体9a,9bは、フリートロリー4a,4bからの前後方向の突出長さが非常に短いので、これら前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面(ロードバー5の前後両端面)は、水平曲線経路部の中心線から外側に外れてしまうことはない。換言すれば、このような状態になるように、前後両端ロードバー単体9a,9bは、フリートロリー4a,4bからの前後方向の突出長さ、先端面の幅、水平曲線経路部の曲率半径が設定されている。
【0024】
而して、各搬送用走行体1は、摩擦駆動手段13の位置を通過するとき、当該摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14がロードバー5の側面5aに圧接するので、このとき当該摩擦駆動輪14をモーター16により所定の方向に所定速度で回転駆動すれば、当該搬送用走行体1が摩擦駆動輪14によって所定の方向に所定速度で推進される。従って、ロードバー5の全長と同じか又は少し短い間隔で摩擦駆動手段13を搬送用走行体1の走行経路に配設すれば、各搬送用走行体1は停止することなく所定速度で走行することができる。又、本発明では、搬送用走行体1の走行経路中に牽引駆動区間が設定される。
【0025】
上記牽引駆動区間での牽引駆動を可能にするため、本発明では、図1〜図6に示すように、ロードバー5の前後両端に牽引用係合手段32が設けられる。この牽引用係合手段32は、ロードバー5の前端に設けられたフック部材33と係止部材34、及びロードバー5の後端に設けられた被係合軸35によって構成されている。
【0026】
以下、図8〜図10に基づいて、牽引用係合手段32を詳細に説明すると、ロードバー5の前端ロードバー単体9aは、その先端面から切欠き凹部36が設けられて平面形状が二股状に形成され、この切欠き凹部36内に架設された左右水平支軸37により、全体が前記切欠き凹部36内に遊嵌する厚さの前記フック部材33が上下揺動自在に軸支されている。このフック部材33は、切欠き凹部36内から上方前方に延出して先端が下向きに折曲する下側開放のコ形状のものであって、支軸37による軸支位置から斜め前方下方に延出する下向き延出部33bを備え、この下向き延出部33bの下端部が拡大されて重錘部38を形成している。更に下向き延出部33bの中間位置には、ロードバー5の下側で左右の一側方に突出する切換え用被操作部(左右水平支軸の周りに自転可能なカム従動ローラー)39が設けられている。
【0027】
係止部材34は、フック部材33より後方で前端ロードバー単体9aの下側、具体的にはこの前端ロードバー単体9aが固定されている前端フリートロリー4aから垂下する固定の垂直軸24の下端部に、左右水平支軸40により上下揺動自在に軸支されたもので、当該支軸40による軸支位置から前方に延出する部分34aの先端から上向きに折曲連設された先端爪部41と、前記軸支位置から後方に延出する部分34bの後端部分を拡大させて形成した重錘部42、及び後方延出部分34bの中間位置から、ロードバー5の下側で左右の他側方、即ち、前記フック部材33側の切換え用被操作部39が突出する側とは反対側、に突出する切換え用被操作部(左右水平支軸の周りに自転可能なカム従動ローラー)43を備えている。
【0028】
ロードバー5の後端ロードバー単体9bは、その先端面から切欠き凹部44が設けられて平面形状が二股状に形成され、この切欠き凹部44内に前記被係合軸35が架設されている。この被係合軸35と、前記フック部材33を軸支する支軸37とは、同一レベルにあって、上記構造から明らかなように何れもロードバー5(前後両端ロードバー単体9a,9b)の上下高さの中間位置にある。又、ロードバー5の前端の切欠き凹部36とロードバー5の後端の切欠き凹部44とは同一幅であって、ロードバー5の後端の切欠き凹部44は、被係合軸35に対してフック部材33の先端垂直部33aが係合できる奥行きを有する。
【0029】
上記構成によれば、フック部材33は、重錘部38に作用する重力(下向き付勢力)で先端垂直部33aが下向きに回動する向きに付勢され、この付勢力により、図8Aに示すように、切欠き凹部36の後側面36aにフック部材33の後側面が当接し且つ先端垂直部33aがロードバー5の直前位置で垂直向きになる係合姿勢に保持される。一方、係止部材34も重錘部42に作用する重力(下向き付勢力)で先端爪部41が上向きに回動する向きに付勢されているが、その先端爪部41がフック部材33の下向き延出部33bの後側面に当接するので、フック部材33に対しては非作用状態に保持されている。この状態からフック部材33が、図8Bに示すように、先端垂直部33aが上方に回動して係合解除姿勢に切り換わると、当該フック部材33の後側面と切欠き凹部36の後側面36aとの間に係止部材34の先端爪部41が上向きに嵌入する空間が形成されるので、先端爪部41が上向きに移動する向きに付勢されている係止部材34が支軸40の周りで回動し、図示のように先端爪部41がフック部材33の後側面と切欠き凹部36の後側面36aとの間に自動的に嵌入し、フック部材33を係合解除姿勢に保持することになる。又、この状態から係止部材34が、先端爪部41が下向きに移動する向きに支軸40の周りで回動すると、先端爪部41がフック部材33の後側面と切欠き凹部36の後側面36aとの間から下方に脱出し、フック部材33が前記付勢力で先端垂直部33aが下向きに移動する向きに支軸37の周りで回動して係合解除姿勢から係合姿勢に切り換わり、当該係合姿勢に保持される。
【0030】
搬送用走行体1の走行経路中に設けられた牽引駆動区間内には、ロードバー5の全長の複数倍ごとに、若しくは牽引駆動区間が比較的短いときはその出口にのみ、前記摩擦駆動手段13が配設される。而して、この牽引駆動区間内では、図8A又は図10に示すように、前側の搬送用走行体1のロードバー5の後端が備える被係合軸35に、後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端にある係合姿勢のフック部材33の先端垂直部33aが係合して、前後に隣接する搬送用走行体1は、ロードバー5及び牽引用係合手段32を介して互いに連結されている。従って、この牽引駆動区間の出口又は中間位置に設けられた摩擦駆動手段13により搬送用走行体1を推進させることにより、当該搬送用走行体1とその後続の搬送用走行体1が数珠つなぎの状態で連なって牽引され、走行する。
【0031】
尚、上記のように牽引用係合手段32を介して互いに連結された各搬送用走行体1が牽引駆動されるとき、前後に隣接する搬送用走行体1のロードバー5間、即ち、前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面間には、図8Aに示すように若干の隙間が生じるが、摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14は、前側の搬送用走行体1のロードバー5の側面5aの後端から後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の側面5aの前端へ円滑に移行し、当該後ろ側の搬送用走行体1を同じように推進駆動するので、牽引駆動区間内の互いに連結されている全ての搬送用走行体1は確実に当該牽引駆動区間から送り出されることになる。勿論、牽引用係合手段32の前記支軸37,40は、その両端がロードバー5の側面5a,5bから突出しないように架設され、摩擦駆動手段13による摩擦駆動に影響しない構成となっている。
【0032】
牽引駆動区間から送り出される各搬送用走行体1を、後続の搬送用走行体1から切り離して高速で走行させる場合は、牽引駆動区間の外側に高速駆動用の摩擦駆動手段13が設けられるが、搬送用走行体1のロードバー5が当該高速駆動用の摩擦駆動手段13で駆動されるまでに、牽引用係合手段32による連結を解除して、当該搬送用走行体1のロードバー5を後続の搬送用走行体1のロードバー5から切り離しておく必要がある。このため、図8A及び図9に示すように、牽引用係合手段32による連結を解除する区間には、フック部材33を係合姿勢から係合解除姿勢に切り換える第一切換え手段45が設けられる。
【0033】
第一切換え手段45は、フック部材33の切換え用被操作部39に作用するカムレール46から構成されたもので、このカムレール46は、図8A及び図9に示すように、フック部材33をロードバー5の前端に備えた搬送用走行体1の走行に伴って、当該フック部材33の切換え用被操作部39を前方上方に押し上げる上り傾斜部分46aと、この上り傾斜部分46aに続く水平部分46bとを備えている。従って、係合姿勢にあるフック部材33の切換え用被操作部39が搬送用走行体1の走行に伴ってカムレール46の上り傾斜部分46aに乗り上げてゆくことにより、当該フック部材33が支軸37の周りで係合解除方向に回動し、その先端垂直部33aが直前の搬送用走行体1のロードバー5の後端が備える被係合軸35から上方に離脱し、係合解除姿勢に切り換えられる。このフック部材33の切換え用被操作部39がカムレール46の水平部分46b上を移動している間は、当該フック部材33は係合解除姿勢に保持されているので、この間に直前の搬送用走行体1を前記高速駆動用の摩擦駆動手段13で高速駆動し、フック部材33が係合解除姿勢に保持されている後ろ側の搬送用走行体1から前方に切り離すことができる。
【0034】
一方、カムレール46でフック部材33が係合解除姿勢に切り換えられると、当該フック部材33の後側面に先端爪部41が当接して非作用姿勢に保持されていた係止部材34が、先に説明した通り、自動的に作用姿勢に付勢力で切り換えられ、図9に示すように、先端爪部41がフック部材33を係合解除姿勢に保持するので、フック部材33の切換え用被操作部39がカムレール46の水平部分46bから外れても、当該フック部材33が再び係合姿勢に戻ってしまうことはない。
【0035】
1台ずつ個別に摩擦駆動手段13で駆動される搬送用走行体1を前記のように牽引用係合手段32で連結して牽引駆動できる状態にするためには、図8Bに示すように、フック部材33が係合解除姿勢にある搬送用走行体1で直前の搬送用走行体1を突き押し駆動できる連結区間を設ける。この連結区間の入り口には前記摩擦駆動手段13が配設される。この摩擦駆動手段13で連結区間内に送り込まれた搬送用走行体1は、そのロードバー5が当該摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14から外れた位置で停止する。この状態で、後続の搬送用走行体1が同様に摩擦駆動手段13で突き押し駆動区間内に送り込まれる結果、摩擦駆動手段13で送り込まれる搬送用走行体1が、そのロードバー5の前端で直前の停止していた搬送用走行体1のロードバー5の後端を突き押しし、前後2台の搬送用走行体1が連なって走行することになる。このとき、突き押しされる前側の搬送用走行体1がロードバー5の衝突時の慣性で後ろ側の搬送用走行体1から離れるように進んでしまうのを防止するため、前記摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14から外れて停止した搬送用走行体1のロードバー5に作用して当該搬送用走行体1に制動力を与える制動手段を併設することができる。
【0036】
上記の連結区間には第二切換え手段47が設けられている。この第二切換え手段47は、連結区間内に送り込まれて停止した前側の搬送用走行体1が、摩擦駆動手段13で当該突き押し駆動区間内に送り込まれる後ろ側の搬送用走行体1によって突き押し駆動されるとき、図8B及び図10に示すように、後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端が備える係合解除姿勢のフック部材33を係合姿勢に切り換えるものであって、直接的には、フック部材33を係合解除姿勢に保持する作用姿勢にある係止部材34を非作用姿勢に切り換えるために、当該係止部材34の切換え用被操作部43に作用するカムレール48から構成されている。
【0037】
前記第二切換え手段47のカムレール48は、フック部材33及び係止部材34をロードバー5の前端に備えた搬送用走行体1の走行に伴って、当該係止部材34の切換え用被操作部43を後方上方に押し上げる上り傾斜部分48aと、この上り傾斜部分48aに続く水平部分48bとを備えている。従って、作用姿勢にある係止部材34の切換え用被操作部43が搬送用走行体1の走行に伴ってカムレール48の上り傾斜部分48aに乗り上げてゆくことにより、当該係止部材34が支軸40の周りで、先端爪部41が下方に移動する方向に回動し、その先端爪部41が、係合解除姿勢にあるフック部材33の後側面と切欠き凹部36の後側面36aとの間から下方に脱出する。その結果、当該係合解除姿勢にあったフック部材33が付勢力で、先端垂直部33aが下向きに移動する方向に支軸37の周りで回動するので、直前の突き押し駆動される搬送用走行体1のロードバー5の後端が備える被係合軸35にフック部材33の先端垂直部33aが自動的に係合することになる。
【0038】
即ち、上記のように連結区間に送り込まれた搬送用走行体1が、直前で停止している搬送用走行体1を突き押し駆動するときは、図8Bに示すように、後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端が、直前で停止している搬送用走行体1のロードバー5の後端に当接する状態で、これら前後両搬送用走行体1のロードバー5を利用して後ろ側の搬送用走行体1で前側の搬送用走行体1を突き押し駆動できるように構成されている。換言すれば、係合解除姿勢に保持されているフック部材33をロードバー5の前端に備えた後ろ側の搬送用走行体1が、前側の停止している搬送用走行体1に接近したとき、当該前側の停止している搬送用走行体1のロードバー5の後端が備える被係合軸35と、後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端が備える係合解除姿勢のフック部材33とが互いに当接し、これら係合解除姿勢のフック部材33とこれに当接する被係合軸35を介して突き押し駆動が行われることがないように構成されているのである。
【0039】
而して、図10に示すように、上記のようにロードバー5どうしが互いに突き合う状態で、後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端が備えるフック部材33が、第二切換え手段47のカムレール48と係止部材34とを介して係合姿勢に切り換えられた後、係止部材34の切換え用被操作部43がカムレール48の水平部分48bから離れて、当該係止部材34が作用姿勢に付勢力で戻ろうとするが、図8Aに示すように、当該係止部材34の先端爪部41が、係合姿勢に切り換わったフック部材33の後側面に当接する状態で待機し、当該係合姿勢に切り換わったフック部材33は付勢力でその係合姿勢に保持されるので、フック部材33が元の係合解除姿勢に戻ってしまうことはない。
【0040】
上記作用の繰り返しにより、入り口側に摩擦駆動手段13と第二切換え手段47を備えた連結区間内に送り込まれる搬送用走行体1は、それぞれのロードバー5を介して後ろ側の搬送用走行体1により突き押し駆動される間に、前後に隣接する搬送用走行体1どうしが牽引用係合手段32により自動的に連結され、この連結区間から送り出されることになる。従って、この数珠つなぎの状態に連結されて連結区間から送り出される搬送用走行体1を先に説明した牽引駆動区間内に送り込むことにより、今度は、牽引用係合手段32とロードバー5とを利用して各搬送用走行体1を、先に説明したように牽引駆動することができる。
【0041】
牽引用係合手段は、図8〜図10に示す牽引用係合手段32に限定されない。例えば、図11〜図13に示す牽引用係合手段50であっても良い。この牽引用係合手段50は、ロードバー5の前端部、即ち、前端ロードバー単体9aに軸支されたフック部材51と、このフック部材51を係合姿勢と係合解除姿勢とに択一的に保持するバネ付勢の係止具52、及びロードバー5の後端部、即ち、後端ロードバー単体9に架設された被係合軸53から構成され、先の実施形態における係止部材34が省かれている。
【0042】
以下、この牽引用係合手段50を詳細に説明すると、ロードバー5の前端ロードバー単体9aは、その先端面から切欠き凹部54が設けられて平面形状が二股状に形成され、この切欠き凹部54内に架設された左右水平支軸55により、全体が前記切欠き凹部54内に遊嵌する厚さの前記フック部材51が上下揺動自在に軸支されている。このフック部材51は、切欠き凹部54内から上方前方に延出して先端が下向きに折曲する下側開放のコ形状のものであって、支軸55による軸支位置から斜め前方下方に延出する下向き延出部51bを備え、この下向き延出部51bの下端部には、ロードバー5の下側で左右の一側方に突出する切換え用被操作部(左右水平支軸の周りに自転可能なカム従動ローラー)56が設けられている。
【0043】
フック部材51の支軸55の上側の周面には、周方向に2つの被係合凹部57,58が設けられている。バネ付勢の係止具52は、フック部材51の支軸55の真上に配設されたもので、前端ロードバー単体9aの上側に支持されたケース59に、フック部材51の支軸55の軸心を通る垂直軸心と同心状態で昇降可能に支持されると共に、当該ケース59に内装の圧縮コイルバネ60により下向きに付勢され、下端には、前記フック部材51の2つの被係合凹部57,58に択一的に嵌合する水平軸ローラー61が軸支されている。
【0044】
ロードバー5の後端ロードバー単体9bは、その先端面から切欠き凹部62が設けられて平面形状が二股状に形成され、この切欠き凹部62内に前記被係合軸53が架設されている。この被係合軸53と、前記フック部材51を軸支する支軸55とは、同一レベルにあって、上記構造から明らかなように何れもロードバー5(前後両端ロードバー単体9a,9b)の上下高さの中間位置にある。又、ロードバー5の前端の切欠き凹部54とロードバー5の後端の切欠き凹部62とは同一幅であって、ロードバー5の後端の切欠き凹部62は、被係合軸53に対してフック部材51の先端垂直部51aが係合できる奥行きを有する。
【0045】
図11、図12、及び図14に示すように、フック部材51は、先端垂直部51aが上向きに移動する方向に支軸55の周りに回動させたとき、係止具52の下端部に当接してそれ以上の回動が制止される係合解除姿勢において、当該係止具52の下端水平軸ローラー61が被係合凹部57に圧縮コイルバネ60の付勢力で嵌合して保持される。係る状態からフック部材51を、先端垂直部51aが下向きに移動する方向に支軸55の周りに逆回動させたときは、図15及び図16に示すように、切欠き凹部54の後側面54aにフック部材51の後側面が当接し且つ先端垂直部51aがロードバー5の直前位置で垂直向きになる係合姿勢となり、このとき係合姿勢において、係止具52の下端水平軸ローラー61が被係合凹部58に圧縮コイルバネ60の付勢力で嵌合して保持される。
【0046】
上記構成の牽引用係合手段50が設けられるときは、この牽引用係合手段50により各搬送用走行体1のロードバー5を互いに連結するための前段階として、図11及び図14に示すように、フック部材51が係合解除姿勢に保持された搬送用走行体1を摩擦駆動で走行させて、当該搬送用走行体1のロードバー5の前端面5cを直前の搬送用走行体1のロードバー5の後端面5dに当接させて、直前の停止搬送用走行体1を突き押し駆動させることができる。係る状態で連なって走行する前後2台の搬送用走行体1の内、後ろ側搬送用走行体1のフック部材51を、図14に示す第二切換え手段63のカムレール64と当該搬送用走行体1の走行を利用して、当該フック部材51の切換え用被操作部56を押し下げることにより、被係合凹部57に対する係止具52の下端水平軸ローラー61の嵌合による係合解除姿勢保持力に抗して、支軸55の周りに係合姿勢に向けて強制回転駆動する。この結果、フック部材51は、図14に仮想線で示す係合姿勢に切り換えられると共に、被係合凹部58に対する係止具52の下端水平軸ローラー61の嵌合により、係る係合姿勢で保持される。従って、当該フック部材51の先端垂直部51aは、直前の突き押し駆動されている搬送用走行体1のロードバー5の後端が備える被係合軸53に対して係合し、前後2台の搬送用走行体1がロードバー5及び牽引用係合手段50を介して互いに連結される。
【0047】
上記のようにして所要台数の搬送用走行体1を数珠つなぎに連結したならば、先の実施形態において説明したように、先頭側の搬送用走行体1を摩擦駆動することにより、後続の各搬送用走行体1を、図15に示すように、前記牽引用係合手段50を介して牽引駆動させることができる。
【0048】
牽引用係合手段50による連結を解除して、前側の搬送用走行体1から高速駆動して前方に切り離してゆくときは、図16に示すように、第一切換え手段65のカムレール66と搬送用走行体1の走行を利用して、連結を解くべき牽引用係合手段50のフック部材51の切換え用被操作部56を押し上げることにより、被係合凹部58に対する係止具52の下端水平軸ローラー61の嵌合による係合姿勢保持力に抗して、当該フック部材51を支軸55の周りに係合解除姿勢に向けて強制回転駆動する。この結果、フック部材51は図16に仮想線で示す係合解除姿勢に切り換えられると共に、被係合凹部57に対する係止具52の下端水平軸ローラー61の嵌合により、係る係合解除姿勢で保持されるので、当該係合解除姿勢に切り換えられたフック部材51の直前に位置する前側搬送用走行体1を摩擦駆動して高速走行させ、前方に切り離すことができる。
【0049】
以上の実施形態では、フック部材33,51をロードバー5の前端に設け、被係合軸35,53をロードバー5の後端に設けたが、これを逆にして、ロードバー5の前端に被係合軸35,53を設け、ロードバー5の後端にフック部材33,51を設けることも可能である。又、上記実施形態では、4つのトロリー3a〜4bを使用し、中間の前後一対のロードトロリー3a,3bで被搬送物支持具であるハンガー6を吊り下げるように構成したが、搬送用走行体6を吊り下げる前後一対のロードトロリー3a,3bの何れか一方にのみフリートロリーをロードバーにより連結し、3つのトロリーで搬送用走行体を構成することもできる。更に、被搬送物の搬送方向の長さが短い場合、被搬送物支持具(ハンガー6)は1つのロードトロリーに吊り下げ、この1つのロードトロリーにロードバーを介して連結される少なくとも1つのフリートロリーを設けて、少なくとも2つのトロリーで搬送用走行体を構成することも可能である。何れの場合も、ハンガー6で支持する被搬送物が、搬送用走行体1の突き押し駆動の際に互いに衝突しないように、フリートロリーとロードトロリーとの間のロードバーの長さを設定すれば良い。勿論、この3つ又は2つのトロリーで搬送用走行体1を構成する場合も、ロードバーの前後両端には、前後両端に位置するトロリーから前後に少し突出する短い前後両端ロードバー単体9a,9bを、上記実施形態の要領で連結することが望ましい。
【0050】
尚、前後に隣接する搬送用走行体1どうしが牽引用係合手段32,50で連結状態にある状態で、前側の搬送用走行体1を、そのロードバー5の側面に対する摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14の圧接で推進させて、後ろ側の搬送用走行体1を前記牽引用係合手段32,50で牽引させる場合、前側の搬送用走行体1のロードバー5の後端と後ろ側の搬送用走行体1のロードバー5の前端との間には、図8や図15に示すようにロードバー長さ方向に関して隙間が生じる。この隙間が、図8に示されるように、平面視において垂直上下方向に貫通する場合、この隙間の存在で、前側のロードバー5から後ろ側のロードバー5に摩擦駆動輪14が円滑に乗り移ることができないし、場合によっては後ろ側のロードバー5に摩擦駆動輪14が乗り移らないで摩擦駆動が中断されてしまう恐れも考えられる。然るに、図11〜図16に示す実施形態で採用したように、ロードバー5の前後両端面5c,5dを同一方向に傾斜する傾斜面に形成し、上記の牽引駆動状態において前後のロードバー5間に形成される隙間が、図15に示すように側面視において斜め方向になり、平面視において垂直上下方向に貫通しないように構成すれば、牽引駆動状態において前側のロードバー5から後ろ側のロードバー5に摩擦駆動輪14が常に円滑に乗り移ることができ、牽引用係合手段32,50による牽引駆動を確実良好に行わせることができる。
【0051】
上記のように、牽引駆動状態において前後のロードバー5間に形成される隙間が平面視において垂直上下方向に貫通しないようにする方法としては、牽引駆動状態において前後のロードバー5の前端部と後端部とが上下に重なるように、ロードバー5の前後両端部を上下逆向きの階段状に形成することもできる。しかしこの方法では、ロードバー5の前後両端部(前後両端ロードバー単体9a,9b)を、牽引用係合手段32,50のフック部材33,51の支軸37,55や被係合軸35,53よりも長く前後に延出しなければならず、場合によっては、水平曲線経路部での突き押し駆動にも影響することが考えられるので、上記のようにロードバー5の前後両端面5c,5dを斜めに傾斜させて、所期の目的を達成するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】走行経路中の搬送用走行体と摩擦駆動手段を示す側面図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体を示す側面図である。
【図5】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体を示す平面図である。
【図6】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体のロードバーを示す平面図である。
【図7】A図は走行経路中の搬送用走行体のロードトロリー位置での縦断正面図であり、B図は走行経路中の搬送用走行体のフリートロリー位置での縦断正面図である。
【図8】A図は牽引駆動状態での牽引用係合手段を示す一部縦断側面図であり、B図は突き押し駆動状態での牽引用係合手段を連結状態に切り換える直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【図9】牽引用係合手段による連結を解除して前側の搬送用走行体を前方に切り離し走行させている状態での一部縦断側面図である。
【図10】突き押し駆動状態での牽引用係合手段を連結状態に切り換えた直後の状態を示す一部縦断側面図である。
【図11】別の実施形態に係る牽引用係合手段を連結解除状態で示す一部縦断側面図である。
【図12】同上牽引用係合手段のフック部材側の構造を示す一部縦断側面図である。
【図13】同上牽引用係合手段を連結解除状態で示す一部横断平面図である。
【図14】突き押し駆動状態での同上牽引用係合手段を連結状態に切り換える直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【図15】牽引駆動状態での同上牽引用係合手段を示す一部縦断側面図である。
【図16】牽引駆動状態での同上牽引用係合手段による連結を解除する直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送用走行体
2 ガイドレール
3a,3b ロードトロリー
4a,4b フリートロリー
5 ロードバー
6 ハンガー(被搬送物支持具)
8a〜8c 中間ロードバー単体
9a,9b 前後両端ロードバー単体
10 門形フレーム
13 摩擦駆動手段
14 摩擦駆動輪
15 バックアップローラー
16 モーター
23 フリートロリーの垂直軸ローラー
24 フリートロリーの垂直軸
27 上下方向折曲関節部
28 水平方向折曲関節部
30 ハンガー吊り下げ用ブラケット
32,50 牽引用係合手段
33,51 フック部材
33a,51a フック部材の先端垂直部
33b,51b フック部材の下向き延出部
34 係止部材
35,53 被係合軸
36,44,54,62 切欠き凹部
37,55 フック部材の支軸
38,42 重錘部
39,43,56 切換え用被操作部(カム従動ローラー)
41 係止部材の先端爪部
45,65 第一切換え手段
46,48,64,66 カムレール
47,63 第二切換え手段
52 バネ付勢の係止具
55c,55d ロードバーの前後両端面
57,58 被係合凹部
60 圧縮コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体とこれに吊り下げられた被搬送物支持部とから成り、搬送用走行体は、被搬送物を支持するロードトロリーと、このロードトロリーの少なくとも前後何れか一方に位置するフリートロリー、及びこれらトロリーに吊り下げられて当該トロリーを互いに連結するロードバーから構成され、このロードバーの前後両端には、搬送用走行体のロードバーの前後両端が互いに接近した状態において、互いに係脱自在に係合する牽引用係合手段が設けられ、走行経路側には、前記ロードバーの側面に圧接して回転駆動される摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段が配設され、この摩擦駆動手段で推進される搬送用走行体が、各搬送用走行体の前記牽引用係合手段を介して連結された後続搬送用走行体を牽引駆動できるように構成された摩擦駆動トロリーコンベヤであって、前記牽引用係合手段が、ロードバーの一端に形成された上下方向の切欠き部、このロードバーの上下高さの中間位置に位置するように前記切欠き部に左右水平方向に架設された被係合軸、ロードバーの他端で当該ロードバーの上下高さの中間位置に上下揺動自在に軸支されて、隣接する搬送用走行体のロードバーの前記被係合軸に対して係脱自在なフック部材、及びこのフック部材を係合姿勢と係合解除姿勢とに択一的に保持する保持手段から構成され、走行経路側には、前記フック部材を係合姿勢から係合解除姿勢に切り換える第一切換え手段と、前記フック部材を係合解除姿勢から係合姿勢に切り換える第二切換え手段が配設されている、摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項2】
前記フック部材は係合姿勢に付勢保持され、前記牽引用係合手段の保持手段は、前記第一切換え手段により係合姿勢から係合解除姿勢に切り換えられた前記フック部材を係合解除姿勢に保持する係止部材を備え、この係止部材は、前記フック部材を係合解除姿勢に保持する作用姿勢に付勢保持され、前記第二切換え手段は、前記係止部材を作用姿勢から非作用姿勢に切り換える、請求項1に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項3】
前記フック部材は、その軸支位置から延出する重錘部によって係合姿勢に付勢保持されると共に、ロードバーの下側で左右の一側方に突出する切換え用被操作部を備え、前記係止部材は、ロードバーの下側に上下揺動自在に軸支されたもので、前記フック部材が係合解除姿勢にあるときのみ、当該フック部材とロードバーとの間に嵌入して当該フック部材を係合解除姿勢に保持する先端爪部と、この係止部材の軸支位置から前記先端爪部のある側とは反対側に延出する重錘部と、ロードバーの下側で左右の他側方に突出する切換え用被操作部を備え、前記第一切換え手段は、前記フック部材の切換え用被操作部に作用するカムレールから構成され、前記第二切換え手段は、前記係止部材の切換え用被操作部に作用するカムレールから構成されている、請求項2に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項4】
前記フック部材の保持手段は、当該フック部材の軸支位置の周囲に設けられた2つの被係合凹部と、当該フック部材が係合姿勢にあるときに前記2つの被係合凹部の一方に嵌合すると共に当該フック部材が係合解除姿勢にあるときに前記2つの被係合凹部の他方に嵌合するバネ付勢の係止具とから構成されている、請求項1に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項5】
前記フック部材には、ロードバーの下側で左右横方向に突出する切換え用被操作部が設けられ、前記第一切換え手段及び第二切換え手段は、前記切換え用被操作部に作用するカムレールから構成されている、請求項4に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項6】
前記フック部材が係合解除姿勢にあるとき、前後の搬送用走行体のロードバーが端面どうし互いに当接できるように構成されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項7】
前記ロードバーの前後両端面は、前記牽引用係合手段を介して前側の搬送用走行体により後ろ側の搬送用走行体を牽引駆動させるときに前後両搬送用走行体のロードバー間に生じる隙間が、平面視において垂直上下方向に貫通しない形状に形成されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。
【請求項8】
前記ロードバーの前後両端面は、同一方向に傾斜する傾斜面に形成されている、請求項7に記載の摩擦駆動トロリーコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−184445(P2009−184445A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24689(P2008−24689)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)