説明

摺動式カートン

【課題】蓋の閉まり具合が堅牢であり、外箱スリーブと中箱の間に緩みがなく、しかも外箱スリーブと中箱との接合の自動化が容易な摺動式カートンを提供する。
【解決手段】外箱スリーブ10とその中を摺動可能な中箱20とからなり、外箱スリーブ10にはその一側面の上部に反り部分16を形成すべく左右に切込み線が形成されるとともにその一側面の上辺に牽引片16が設けられ、さらにその牽引片17の先端に貼着片が延設されており、中箱20にはその一側面の上部にある横方向の折線をヒンジとして開閉する蓋部分Lが区画されており、外箱スリーブ10の牽引片17が内側に屈曲した状態で貼着片が中箱20の蓋部分Lの側面上部に貼着されている。中箱20を押し上げると蓋部分Lが牽引片17を介して回動させられて開き、中箱20を引き下げると蓋部分Lが牽引片17を介して元に戻る方向に回動させられて閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙や合成紙(プラスチックシート)などからなるカートンの技術分野に属し、詳しくは、主にタバコや菓子類などを収納するために用いられる二重構造のカートンであって、外箱スリーブと中箱のスライド動作によってヒンジ蓋を開けるようにした摺動式カートンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の摺動式カートンとして、外箱スリーブに設けた延出片(舌片)と中箱に設けた折返し片(係止片)とを摺動時に係合させることにより、中箱に区画された蓋部分をヒンジを中心に回動させて開けるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案公報第3013076号公報
【特許文献2】特開2009−292518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の摺動式カートンは、外箱スリーブに設けた延出片(舌片)と中箱に設けた折返し片(係止片)の係合によりヒンジ式の蓋を開けるため、蓋を開くときは蓋に押上げの力が係合箇所を支点として伝わりしっかりと開くが、蓋を閉じるときは係合が離れるやいなや、力も断ち切れて蓋は半ば開いたままの状態になってしまう。その後は、中箱の蓋天面に設けられた突出部(ストッパー)に当たるまで引き下げて蓋を閉じるもので、その状態では蓋と外箱スリーブは一体でなく、蓋の閉まり具合も堅牢とは言えない。
【0005】
また、この摺動式カートンは、外箱スリーブと中箱の間に板紙3枚を挟み込む構造であるため、隙間が大きくなり緩みの大きいカートンになってしまう。しかも、外箱スリーブと中箱の取付けは、外箱スリーブに設けた延出片(舌片)と中箱に設けた折返し片(係止片)を折り曲げた状態で組み立てるという複雑な工程があるため、自動化を図ることができない。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓋の閉まり具合が堅牢であり、外箱スリーブと中箱の間に緩みがなく、しかも外箱スリーブと中箱との接合の自動化が容易な摺動式カートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の摺動式カートンは、外箱スリーブとその中を摺動可能な中箱とからなり、外箱スリーブにはその一側面の上部に反り部分を形成すべく左右に切込み線が形成されるとともにその一側面の上辺に牽引片が設けられ、さらにその牽引片の先端に貼着片が延設されており、中箱にはその一側面の上部にある横方向の折線をヒンジとして開閉する蓋部分が区画されており、外箱スリーブの牽引片が内側に屈曲した状態で貼着片が中箱の蓋部分の側面上部に貼着されており、中箱を押し上げると蓋部分が牽引片を介して回動させられて開き、中箱を引き下げると蓋部分が牽引片を介して元に戻る方向に回動させられて閉じるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の摺動式カートンは、外箱スリーブに設けられた牽引片の貼着片が中箱の蓋部分に付いていることにより、中箱の押上げ・引下げの力が途切れることなく蓋部分に伝えられ、蓋部分が大きく開くとともにしっかりと閉められた状態を維持することができる。また、外箱スリーブに設けられた牽引片と中箱の蓋部分とが貼着されているので、外箱スリーブと中箱の隙間が狭くなり、緩みのないカートンが仕上がる。また、外箱スリーブと中箱の一体化は、位置合わせによる貼着のみでよいため、標準機としてあるラップアラウンド方式や横型カートナー方式で対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る摺動式カートンの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す摺動式カートンをその蓋が開いた状態で示す斜視図である。
【図3】図1に示す摺動式カートンをその蓋が開いた状態で示す斜め下方からの斜視図である。
【図4】図1に示す摺動式カートンの外箱スリーブを形成するブランクの展開図である。
【図5】図1に示す摺動式カートンの中箱を形成するブランクの展開図である。
【図6】図1に示す摺動式カートンの変形例を図3に対応して示す斜視図である。
【図7】図1に示す摺動式カートンの中箱を形成する別形態のブランクの展開図である。
【図8】本発明に係る摺動式カートンの別の例をその蓋部分が開いた状態で示す斜め下方からの斜視図である。
【図9】図8に示す摺動式カートンの中箱を形成するブランクの展開図である。
【図10】本発明に係る摺動式カートンのさらに別の例をその蓋部分が開いた状態で示す斜め下方からの斜視図である。
【図11】図10に示す摺動式カートンの外箱スリーブを形成するブランクの展開図である。
【図12】図10に示す摺動式カートンの中箱を形成するブランクの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
「第1実施形態」
図1は本発明に係る摺動式カートンの一例を示すもので、この摺動式カートンC1 は角筒状の外箱スリーブ10とその中を摺動可能な中箱20とで構成されており、中箱20は外箱スリーブ10より上下方向に長く、図1に示すように、未開封状態では、中箱20が下方に突き出ている。このうち外箱スリーブ10は、紙器用の板紙を図4に示す形状に打ち抜いたスリーブ用ブランクB1 からなり、中箱20は、同様の板紙を図5に示す形状に打ち抜いた中箱用ブランクB2 からなる。
【0012】
スリーブ用ブランクB1 は、図4に示すように、広幅の側面パネル11、狭幅の側面パネル12、広幅の側面パネル13、狭幅の側面パネル14及び貼着用の糊代パネル15が縦方向の折線を介して順次連設されている。そして、側面パネル12の上部に反り部分16を形成すべく左右の折線と重なるように切込み線αが形成されるとともに、側面パネル12の上辺には折線を介して牽引片17が連設され、その牽引片17の先端には、押罫の途中に切込みのあるリード罫とした折線aを介して貼着片18が延設されている。なお、側面パネル12の上部は左右の切込み線αにより反り部分16を設けているが、左右2本の切込み線αの下端同士を繋ぐ折線を設けて、反り部分16が当該折線のところで曲がりやすくなるようにしてもよい。
【0013】
また、側面パネル12を除く3つの側面パネル11,13,14の上辺にそれぞれ補強用の裏板11a,13a,14aをそれぞれ折線を介して連設するとともに、全ての側面パネル11〜14の下辺にそれぞれ補強用の裏板11b〜14bをそれぞれ折線を介して連設してある。
【0014】
中箱用ブランクB2 は、図5に示すように、狭幅の側面パネル21、広幅の側面パネル22、狭幅の側面パネル23、広幅の側面パネル24及び貼着用の糊代パネル25が縦方向の折線を介して順次連設されている。さらに、側面パネル21,23の上辺にはそれぞれ折込み片21a,23aが折線を介して連設され、下辺にはそれぞれ折込み片21b,23bが折線を介して連設されており、側面パネル22,24の上辺にはそれぞれ天面外側パネル22a,天面内側パネル24aが折線を介して連設され、下辺にはそれぞれ底面外側パネル22b,底面内側パネル24bが折線を介して連設されている。また、底面外側パネル22bの右辺と底面内側パネル24bの右辺にはそれぞれ僅かに突き出る膨出部分が設けられている。
【0015】
そして、側面パネル23の上部寄りのところに横方向の折線bがリード罫により形成されており、側面パネル23に隣接する側面パネル22,24にはその折線bに繋がってそれぞれ横方向に僅かに延び、さらに45度程度の角度で斜め上方に向かう斜め切線がそれぞれ形成されており、天面外側パネル22aには側面パネル22の斜め切線に繋がって該パネル22aを横断する外向きの円弧状の切線が形成され、天面内側パネル24aには側面パネル24の斜め切線に繋がって該パネル24aを横断する内向きの円弧状の切線が形成されている。これらの円弧状の切線の中程には手で簡単に破断できるツナギが残されている。
【0016】
図4のスリーブ用ブランクB1 と図5の中箱用ブランクB2 を用いて図1の摺動式カートンC1 を組み立てるには、中箱用ブランクB2 を用いて製品が充填された中箱20を作成した後、その中箱20にスリーブ用ブランクB1 を取り付ける。
【0017】
製品が充填された中箱20の形成方法としては、サック貼り納入によるエンドロード方式、ブランク納入によるトップロード方式又はラップアラウンド方式があり、どの充填方式を採るかは製品形状や生産能力などに応じて適宜決めればよい。
【0018】
サック貼り納入によるエンドロード方式では、まず、中箱用ブランクB2 をサック貼り機にかけ、側面パネル21の裏側に糊代パネル25を貼り合わせてサック貼りしたものを納入する。納入先では、これを角筒状に起こしてから、折込み片21a,23aを内側に折り曲げ、天面内側パネル22aと天面外側パネル24aを重ね合わせて糊付けすることで上部を閉鎖する。そして、下部の開口から製品を投入した後、折込み片21b,23bを内側に折り曲げ、底面内側パネル22bと底面外側パネル24bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱20が得られる。
【0019】
ブランク納入によるトップロード方式では、中箱用ブランクB1 を裏返しで供給しながら、その広幅の側面パネル22,24の何れかの上に製品を載置し、その製品を各側面パネル21〜24で包むようにして糊代パネル25に側面パネル21の裏側を貼り合わせてから、折込み片21a,23aを内側に折り曲げ、天面内側パネル22aと天面外側パネル24aを重ね合わせて糊付けして上部を閉じるとともに、折込み片21b,23bを内側に折り曲げ、底面内側パネル22bと底面外側パネル24bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱20が得られる。
【0020】
ブランク納入によるラップアラウンド方式では、製品を供給しながら、その製品を各側面パネル21〜24で包むようにして糊代パネル25に側面パネル21の裏側を貼り合わせ、次いで、折込み片21a,23aを内側に折り曲げ、天面内側パネル22aと天面外側パネル24aを重ね合わせて糊付けして上部を閉じるとともに、折込み片21b,23bを内側に折り曲げ、底面内側パネル22bと底面外側パネル24bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱20が得られる。
【0021】
製品が充填された中箱20にスリーブ用ブランクB1 を取り付ける方法としては、ラップアラウンド方式と横型カートナー方式とがあり、この場合もいずれを採用するかは製品形状や生産能力などに応じて決めればよい。
【0022】
ラップアラウンド方式では、スリーブ用ブランクB1 における上下の裏板11a,13a,14a,11b〜14bをそれぞれ内側に折り返して貼着するとともに、牽引片17と貼着片18を内側に折り込んでおく。次いで、スリーブ用ブランクB1 の上辺と中箱20の上辺を一致させるようにして、製品が充填された中箱20の上にスリーブ用ブランクB1 を重ね合わせ、スリーブ用ブランクB1 の貼着片18を中箱20の折線bの上部領域に貼り合わせるとともに、スリーブ用ブランクB1 の糊代パネル15の上に側面パネル11を貼着する。これにより、図1に示す摺動式カートンC1 が形成される。
【0023】
横型カートナー方式では、スリーブ用ブランクB1 をサック貼りしておく。すなわち、サック貼り機により、スリーブ用ブランクB1 における側面パネル11の裏側に糊代パネル15を貼り合わせてサック貼り状態としておく。このとき、牽引片17と貼着片18は折り込まれていない。そして、サック貼り状態の外箱スリーブ10を角筒状に起こし、製品が充填された中箱20をその下部から挿入し、外箱スリーブ10の貼着片18が中箱20の折線bの上部領域と向かい合う位置まで中箱20を外箱スリーブ10の上部から突き出た状態とし、次いで、貼着片18を内側に折り込み、その折り込んだ貼着片18の表側を中箱20における折線bの上部領域の表側に糊等の接着剤を塗布して貼り合わせる。その後、中箱20を外箱スリーブ10に対して両者の上辺が一致するところまで引き戻す。このとき、牽引片17は外側スリーブ10の側面パネル12における反り部分16の内側に折り込まれる。これにより、図1に示す摺動式カートンC1 が形成される。
【0024】
このようにして組み立てられた摺動式カートンC1 は、外箱スリーブ10とその中を摺動可能な中箱20とからなり、外箱スリーブ10にはその狭幅の側面パネル12の上部に反り部分16を形成すべく左右に切込み線αが形成されるとともにその側面パネル12の上辺に牽引片17が設けられ、さらにその牽引片17の先端に貼着片18が延設されており、中箱20にはその狭幅の側面パネル23の上部にある横方向の折線bをヒンジとして開閉する蓋部分L1 が区画されており、外箱スリーブ10の牽引片17が内側に屈曲した状態で貼着片18が中箱20の蓋部分L1 の側面上部に貼着された形態になっている。
【0025】
図1の摺動式カートンC1 を開封するには、まず、蓋部分L1 の天面を指で押し、天面外側パネル22aと天面内側パネル24aの双方にそれぞれある円弧状の切線のツナギを破断する。このように蓋部分L1 をフリーにしてから、外箱スリーブ10に対して中箱20を押し上げると、図2及び図3に示すように蓋部分L1 が牽引片17を介して回動させられることで開く。このとき、中箱20の底面外側パネル22bと底面内側パネル24bにそれぞれ突き出るように設けられた膨出部分がストッパーの役目を果たし、中箱20は外箱スリーブ10に対して必要以上に押し上げられるようなことがない。
【0026】
また、図2及び図3に示す開封状態から外箱スリーブ10に対して中箱20を引き下げると、蓋部分L1 が牽引片17を介して元に戻る方向に回動させられて閉じる。すなわち、外箱スリーブ10における側面パネル12上部の反り部分16に牽引片17が連設するとともに、その牽引片17が蓋部分L1 の側面に貼着されているので、中箱20の押上げ・引下げの力が途切れることなく蓋部分L1 に伝わり、蓋部分L1 が大きく開くとともにしっかりと閉められた状態を維持することができる。また、蓋部分L1 を閉じるときに、先端の円弧状部分を対向する天面内側パネル24の円弧状部分の下側に差し込むようにすることでロック状態にすることもできる。
【0027】
なお、図1〜図3に示す摺動式カートンC1 では、外箱スリーブ10の牽引片17に連設する貼着片18は内側に折り込み、その折り込んだ貼着片18の表側を中箱20における折線bの上部領域の表側に貼り合わせているが、図6に示すように、貼着片18を折り込まずに、貼着片18の裏側を中箱20における折線bの上部領域の表側に貼り合わせるようにしてもよい。この場合、外箱スリーブ10と中箱20の隙間が多少膨らむが、蓋部分L1 がしっかりと開閉される点は全く同じである。
【0028】
<第1実施形態の変形例>
図1〜図3に示す摺動式カートンC1 の中箱20は、紙器用の板紙を図7に示す形状に打ち抜いた中箱用ブランクB3 でも形成することができる。
【0029】
中箱用ブランクB3 は、図7に示すように、広幅の側面パネル31、底面パネル32及び広幅の側面パネル33が横方向の折線を介して順次連設されており、側面パネル31の両サイドにはそれぞれ狭幅の側面外側パネル34,35が折線を介して連設され、側面パネル33の両サイドにはそれぞれ狭幅の側面内側パネル36,37が折線を介して連設されている。さらに、側面パネル31の上辺には天面外側パネル31aが折線を介して連設され、側面パネル33の下辺には天面内側パネル33aが折線を介して連設されており、側面内側パネル36,37の下辺にはそれぞれ折込み片36a,37aが折線を介して連設され、側面内側パネル36,37の上辺にはそれぞれ折込み片36b,37bが折線を介して連設されている。また、底面パネル32の左右にはそれぞれ僅かに突き出るように膨出部分が設けられている。
【0030】
そして、側面外側パネル34の上部寄りと側面内側パネル36の下部寄りのところに横方向の折線bがそれぞれリード罫により形成されており、側面外側パネル34に隣接する側面パネル31にはその折線bに繋がって横方向に僅かに延び、さらに斜め上方に向かう斜め切線が形成され、側面内側パネル36に隣接する側面パネル33にはその折線bに繋がって横方向に僅かに延び、さらに斜め下方に向かう斜め切線が形成されており、天面外側パネル31aには側面パネル31の斜め切線に繋がって該パネル31aを横断する内向きの円弧状の切線が形成され、天面内側パネル33aには側面パネル33の斜め切線に繋がって該パネル33aを横断する外向きの円弧状の切線が形成されている。これらの円弧状の切線の中程には手で簡単に破断できるツナギが残されている。
【0031】
この中箱用ブランクB3 を用いて製品が充填された中箱を作成するには、トップロード式の充填機を使用する。すなわち、ブランクB3 を裏返しで供給し、その広幅の側面パネル33の上に製品を載せた後、折込み片36a,37a,36b,37bを折り曲げた状態で側面内側パネル36,37を折り曲げ、さらに天面内側パネル33aを折り曲げてから、製品を覆うようにして底面パネル32と側面パネル31を順次折り曲げ、側面外側パネル34,35を側面内側パネル36,37と重ね合わせ、天面外側パネル31aを天面内側パネル33aと重ね合わせて糊付けすること貼り合わせる。これにより、製品が充填された中箱が得られる。
【0032】
なお、この中箱では、図5の中箱用ブランクB2 で作成した中箱20と比べると、天面外側パネル31aと天面内側パネル33aに形成した円弧状の切込みが逆向きになる。そして、この中箱用ブランクB3 で形成した中箱についても、上記したのと同様に、ラップアラウンド方式か横型カートナー方式によりスリーブ用ブランクB1 を取り付けることができる。また、開閉操作についても図1〜図3に示した摺動式カートンC1 と同様にして開封操作を行うことができる。
【0033】
「第2実施形態」
図8は本発明に係る摺動式カートンの別の例を示すもので、この摺動式カートンC2 は、第1実施形態で使用したのと同じ外箱スリーブ10と、図9の展開形状をした中箱用ブランクB4 で形成される箱20’とから構成されており、図1に示した摺動用カートンC1 と同じく中箱20’は外箱スリーブ10より上下方向に長く、未開封状態では、中箱20’が下方に突き出ている。
【0034】
中箱用ブランクB4 は、蓋部分L2 を形成する切線のパターンを除けば、図5の中箱用ブランクB2 と略同じ展開形状であるので、同じ符号を付して説明する。
【0035】
この中箱用ブランクB4 においても、側面パネル23の上部寄りのところに横方向の折線bがリード罫により形成されているが、側面パネル23に隣接する側面パネル22,24にはその折線bに繋がってそれぞれ横方向に僅かに延び、さらに緩やかな角度で斜め上方に向かって反対側の辺にまで至る斜め切線がそれぞれ形成されており、一方の側面パネル22に隣接する側面パネル21にはその斜め切線に繋がって該パネル22を横断する横方向の切線が形成されており、他方の側面パネ24に隣接する糊代パネル25はその斜め切線より上部が省略されている。
【0036】
この中箱用ブランクB4 により製品が充填された中箱20’を形成する手順は、図5の中箱用ブランクB2 で中箱20を形成する場合と同様であり、また、この中箱20’にスリーブ用ブランクB1 を取り付けて摺動式カートンC2 を組み立てるには、上記したラップアラウンド方式か横型カートナー方式によりスリーブ用ブランクB1 を取り付けるようにすればよい。
【0037】
また、外箱スリーブ10の牽引片17に連設する貼着片18は、内側に折り込だ貼着片18の表側を中箱20’における折線bの上部領域の表側に貼り合わせてもよく、或いは、貼着片18を折り込まずに、貼着片18の裏側を中箱20’における折線bの上部領域の表側に貼り合わせるようにしてもよい。
【0038】
この摺動式カートンC2 を開封するには、外箱スリーブ10に対して中箱20’を押し上げる。すると、図8に示すように蓋部分L2 が牽引片17を介して回動させられることで上部全体が大きく開く。このとき、中箱20の底面外側パネル22bと底面内側パネル24bにそれぞれ突き出るように設けられた膨出部分がストッパーの役目を果たし、中箱20は外箱スリーブ10に対して必要以上に押し上げられるようなことがない点は摺動式カートンC1 の場合と同じである。
【0039】
また、図8に示す開封状態から外箱スリーブ10に対して中箱20’を引き下げると、蓋部分L2 が牽引片17を介して元に戻る方向に回動させられて閉じる。すなわち、外箱スリーブ10における側面パネル12上部の反り部分16に牽引片17が連設するとともに、その牽引片17が蓋部分L2 の側面に貼着されているので、中箱20’の押上げ・引下げの力が途切れることなく蓋部分L2 に伝わり、蓋部分L2 が大きく開くとともにしっかりと閉められた状態を維持することができる。
【0040】
「第3実施形態」
図10は本発明に係る摺動式カートンのさらに別の例を示すもので、この摺動式カートンC3 は角筒状の外箱スリーブ50とその中を摺動可能な中箱60とで構成されており、中箱60は外箱スリーブ50より上下方向に長く、図1に示す摺動式カートンC1 と同様に、未開封状態では、中箱60が下方に突き出ている。このうち外箱スリーブ50は、紙器用の板紙を図11に示す形状に打ち抜いたスリーブ用ブランクB5 からなり、中箱60は、同様の板紙を図12に示す形状に打ち抜いた中箱用ブランクB6 からなる。
【0041】
スリーブ用ブランクB5 は、図11に示すように、狭幅の側面パネル51、広幅の側面パネル52、狭幅の側面パネル53、広幅の側面パネル54及び貼着用の糊代パネル55が縦方向の折線を介して順次連設されている。そして、側面パネル52の上部に反り部分56を区画すべく、左右の折線と重なるように切込み線αとそれらの下端同士を繋ぐ横方向のミシン目線βとが形成されるとともに、側面パネル52の上辺には折線を介して牽引片57が連設され、その牽引片57の先端には、押罫の途中に切込みのあるリード罫とした折線aを介して幅の狭い貼着片58が中央に延設されている。
【0042】
また、側面パネル22を除く3つの側面パネル51,53,54の上辺にそれぞれ補強用の裏板51a,53a,54aをそれぞれ折線を介して連設するとともに、全ての側面パネル51〜54の下辺にそれぞれ補強用の裏板51b〜54bをそれぞれ折線を介して連設してある。
【0043】
中箱用ブランクB6 は、図12に示すように、広幅の側面パネル61、狭幅の側面パネル62、広幅の側面パネル63、狭幅の側面パネル64及び貼着用の糊代パネル65が縦方向の折線を介して順次連設されている。さらに、側面パネル62,64の上辺にはそれぞれ折込み片62a,64aが折線を介して連設され、下辺にはそれぞれ折込み片62b,64bが折線を介して連設されており、側面パネル63の上辺には天面パネル63aが折線を介して連設され、側面パネル61,63の下辺にはそれぞれ底面外側パネル61b,底面内側パネル63bが折線を介して連設されている。また、天面パネル63aの先端には僅かに突き出る円弧状の膨出部分が設けられており、底面外側パネル61bの両側辺にはそれぞれ僅かに突き出る膨出部分が設けられている。
【0044】
そして、側面パネル63の上部寄りのところに横方向の折線bがリード罫により形成されており、側面パネル63に隣接する側面パネル62,64にはその折線bに繋がってそれぞれ横方向に僅かに延び、さらに45度程度の角度で斜め上方に向かってコーナーに至る斜め切線がそれぞれ形成されている。
【0045】
図11のスリーブ用ブランクB5 と図12の中箱用ブランクB6 を用いて図10の摺動式カートンC3 を組み立てるには、中箱用ブランクB6 を用いて製品が充填された中箱60を作成した後、その中箱60にスリーブ用ブランクB6 を取り付ける。
【0046】
製品が充填された中箱60の形成方法としては、サック貼り納入によるエンドロード方式、ブランク納入によるトップロード方式又はラップアラウンド方式があり、どの充填方式を採るかは製品形状や生産能力などに応じて適宜決めればよい。
【0047】
サック貼り納入によるエンドロード方式では、まず、中箱用ブランクB6 をサック貼り機にかけ、側面パネル61の裏側端部に糊代パネル65を貼り合わせてサック貼りする。納入先では、これを角筒状に起こしてから、折込み片62a,64aを内側に折り曲げ、天面パネル63aを重ねて糊付けすることで上部を閉鎖する。そして、下部の開口から製品を投入した後、折込み片62b,64bを内側に折り曲げ、底面内側パネル63bと底面外側パネル61bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱60が得られる。
【0048】
ブランク納入によるトップロード方式では、中箱用ブランクB6 を裏返しで供給しながら、その広幅の側面パネル61,63の何れかの上に製品を載置し、その製品を各側面パネル61〜64で包むようにして糊代パネル65に側面パネル61の裏側端部を貼り合わせてから、折込み片62a,64aを内側に折り曲げ、天面パネル63aを重ねて糊付けして上部を閉じるとともに、折込み片62b,64bを内側に折り曲げ、底面内側パネル63bと底面外側パネル61bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱60が得られる。
【0049】
ブランク納入によるラップアラウンド方式では、製品を供給しながら、その製品を各側面パネル61〜64で包むようにして糊代パネル65に側面パネル61の裏側端部を貼り合わせ、次いで、折込み片62a,64aを内側に折り曲げ、天面パネル63aを重ねて糊付けして上部を閉じるとともに、折込み片62b,64bを内側に折り曲げ、底面内側パネル63bと底面外側パネル61bを重ね合わせて糊付けすることで底部も閉鎖する。これにより、製品が充填された中箱60が得られる。
【0050】
製品が充填された中箱60にスリーブ用ブランクB5 を取り付ける方法としては、ラップアラウンド方式と横型カートナー方式とがあり、この場合もいずれを採用するかは製品形状や生産能力などに応じて決めればよい。
【0051】
ラップアラウンド方式では、スリーブ用ブランクB5 における上下の裏板51a,53a,54a,51b〜54bをそれぞれ内側に折り返して貼着するとともに、牽引片57と貼着片58をV字状にして内側に折り込んでおく。次いで、スリーブ用ブランクB5 の上辺と中箱60の上辺を一致させるようにして、製品が充填された中箱60の上にスリーブ用ブランクB5 を重ね合わせ、スリーブ用ブランクB5 の貼着片58を中箱60の折線bの上部領域に貼り合わせるとともに、スリーブ用ブランクB5 の糊代パネル55の上に側面パネル51を貼着する。これにより摺動式カートンC3 が形成される。
【0052】
横型カートナー方式では、スリーブ用ブランクB5 をサック貼りしておく。すなわち、サック貼り機により、スリーブ用ブランクB5 における側面パネル51の裏側に糊代パネル55を貼り合わせてサック貼り状態としておく。そして、サック貼り状態の外箱スリーブ50を角筒状に起こし、製品が充填された中箱60をその下部から挿入し、外箱スリーブ50の貼着片58が中箱60の折線bの上部領域と向かい合う位置まで中箱60を外箱スリーブ50の上部から突き出た状態とし、次いで、貼着片58の裏側を中箱60における折線bの上部領域の表側に糊等の接着剤を塗布して貼り合わせる。その後、中箱60を外箱スリーブ50に対して両者の上辺が一致するところまで引き戻す。このとき、牽引片57は外側スリーブ50の側面パネル52における反り部分56の内側に折り込まれる。これにより摺動式カートンC3 が形成される。
【0053】
このようにして組み立てられた摺動式カートンC3 は、外箱スリーブ50とその中を摺動可能な中箱60とからなり、外箱スリーブ50にはその広幅の側面パネル52の上部に反り部分56を形成すべく左右に切込み線αが形成されるとともにその側面パネル52の上辺に牽引片57が設けられ、さらにその牽引片57の先端に貼着片58が延設されており、中箱60にはその広幅の側面パネル63の上部にある横方向の折線bをヒンジとして開閉する蓋部分L3 が区画されており、外箱スリーブ50の牽引片57が内側に屈曲した状態で貼着片58が中箱60の蓋部分L3 の側面上部に貼着された形態になっている。
【0054】
この摺動式カートンC3 を開封するには、外箱スリーブ50に対して中箱60を押し上げる。すると、図10示すように蓋部分L3 が牽引片57を介して回動させられることで開く。このとき、中箱60の底面外側パネル61bの左右両辺にそれぞれ突き出るように設けられた膨出部分がストッパーの役目を果たし、中箱60は外箱スリーブ50に対して必要以上に押し上げられるようなことがない。
【0055】
また、図10に示す開封状態から外箱スリーブ50に対して中箱60を引き下げると、蓋部分L3 が牽引片57を介して元に戻る方向に回動させられて閉じる。すなわち、外箱スリーブ50における側面パネル52上部の反り部分56に牽引片57が連設するとともに、その牽引片57が蓋部分L3 の側面に貼着されているので、中箱60の押上げ・引下げの力が途切れることなく蓋部分L3 に伝わり、蓋部分L3 が大きく開くとともにしっかりと閉められた状態を維持することができる。また、蓋部分L3 を閉じるときに、天面パネル63a先端の円弧状部分がストッパーの役目を果たすので、中に落ち込むのが防止される。
【0056】
なお、図10に示す摺動式カートンC3 では、外箱スリーブ50の牽引片57に連設する貼着片58を折り込まずに、貼着片58の裏側を中箱60における折線bの上部領域の表側に貼り合わせるようにしたが、貼着片58を内側に折り込み、その折り込んだ貼着片58の表側を中箱60における折線bの上部領域の表側に貼り合わせるようにしてもよい。そのようにした方が、蓋部分L3 を閉じたときに外箱スリーブ50と中箱60の隙間が多少は小さくなる。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について詳細に説明してきたが、本発明による摺動式カートンは、上記の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0058】
例えば、上記の例では、紙器用の板紙を用いて摺動式カートンを形成した例を挙げて説明したが、用途やその他の事情により合成紙(プラスチックシート)や他の素材を用いて形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の摺動式カートンは、片手で簡単に蓋が開閉でき携帯性もよいため、板ガム、スティック包装の菓子類、バンドエイド、タバコ等、数回に分けて使用される商品を収納して販売するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1 ,B5 スリーブ用ブランク
2 ,B3 ,B4 ,B6 中箱用ブランク
1 〜C3 摺動式カートン
1 〜L3 蓋部分
10 外箱スリーブ
11〜14 側面パネル
11a,13a,14a,11b〜14b 裏板
15 糊代パネル
16 反り部分
17 牽引片
18 貼着片
20,20’ 中箱
21〜24 側面パネル
21a,21b 折込み片
22a 天面外側パネル
22b 底面外側パネル
23a,23b 折込み片
24a 天面内側パネル
24b 底面内側パネル
25 糊代パネル
26 反り部分
27 牽引片
28 貼着片
31 側面パネル
31a 天面外側パネル
32 底面パネル
33 側面パネル
33a 天面内側パネル
34,35 側面外側パネル
36,37 側面内側パネル
36a,36b,37a,37b 折込み片
50 外箱スリーブ
51〜54 側面パネル
51a,53a,54a,51b〜54b 裏板
55 糊代パネル
56 反り部分
57 牽引片
58 貼着片
60 中箱
61〜64 側面パネル
61b 底面外側パネル
62a,62b,64a,64b 折込み片
63a 天面パネル
63b 底面内側パネル
65 糊代パネル
66
a 折線
b 罫線
α 切込み線
β ミシン目線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱スリーブとその中を摺動可能な中箱とからなり、外箱スリーブにはその一側面の上部に反り部分を形成すべく左右に切込み線が形成されるとともにその一側面の上辺に牽引片が設けられ、さらにその牽引片の先端に貼着片が延設されており、中箱にはその一側面の上部にある横方向の折線をヒンジとして開閉する蓋部分が区画されており、外箱スリーブの牽引片が内側に屈曲した状態で貼着片が中箱の蓋部分の側面上部に貼着されており、中箱を押し上げると蓋部分が牽引片を介して回動させられて開き、中箱を引き下げると蓋部分が牽引片を介して元に戻る方向に回動させられて閉じるようになっていることを特徴とする摺動式カートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−30882(P2012−30882A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174111(P2010−174111)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】