説明

撓み波パネルラウドスピーカ

1つの態様によれば本発明は、パネル(7)の平面に対してある角度で延びるようにレバー(12)をパネル端部又は周辺部分に固定連結する段階と、撓み波励振器をレバー(12)に連結してこれにより撓み波エネルギーがパネル(7)に結合され、励振器に信号が供給されたときに音響出力を提供する段階と、レバー(12)の外方に位置付けられたサスペンション上にパネル(7)を支持する段階とから構成される撓み波パネルラウドスピーカを形成する方法である。別の態様によれば本発明は、パネルの周辺部分(16)又は端部に固定連結されたレバー(12)と、レバーに連結され、パネル(7)に撓み波エネルギーを印加して音響出力を生成する振動励振器(9)と、レバーの外方に位置付けられたパネルサスペンション(17)とを有する撓み波パネル形状ラウドスピーカ(13)である。別の態様によれば本発明は、ディスプレイ画面(10)と、該ディスプレイ画面を覆う透明な保護カバー(7)とを有し、該透明な保護カバー(7)は、上述のラウドスピーカであることを特徴とする、例えば携帯電話(1)、PDAである小型電子装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撓み波パネル形状のラウドスピーカ・ダイアフラムに力を印加するための方法及び装置に関し、より詳細には、例えば国際特許出願WO97/09842に記載された分布モード・ラウドスピーカとして知られる種類の共振撓み波ラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には本発明は、限定ではないが、ディスプレイ画面区域を覆って透明なプラスチックカバー又はプロテクタを有する、携帯電話、PDA、又は同様のものなどの小型電子装置に適用可能な撓み波音響ダイアフラムに関し、ここでのダイアフラムは、このカバーの保護機能を撓み波ラウドスピーカの保護機能と組み合わせる上で有用である。
【0003】
本発明の目的は、ディスプレイ画面の可視領域を大きくすることである。
【0004】
励振器を用いて撓み波ラウドスピーカパネルの中心付近を駆動することにより面外の力を付与して有効な効率をもたらすことは公知であり、例えば本発明の出願人らによる国際特許出願WO97/09842を参照されたい。
【0005】
透明な撓み波ダイアフラムをディスプレイと組み合わせて、定められた境界条件でその外周近辺を駆動させることができる点も公知である。このような装置では、励振はパネルのダイアフラム平面に垂直すなわち面外である。この励振方法は、残念なことにパネル全体のある割合の面積を占有し、例えば、本発明の出願人らによる例えば国際特許出願WO00/02417を参照されたい。
【0006】
支点の原理を使用して駆動力が加えられる場合は、曲げモーメントによって撓み波パネルスピーカを駆動することができる点も公知であり、このような方法は、支点を備えた直角レバー又は該レバーの内方に位置付けられた単純な支持体の使用を含み、本発明の出願人らによる国際特許出願WO00/13464を参照されたい。
【0007】
【特許文献1】国際特許出願WO97/09842公報
【特許文献2】国際特許出願WO00/02417公報
【特許文献3】国際特許出願WO00/13464公報
【特許文献4】国際特許出願WO01/54450公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、単純なレバー連結を使用して撓み波パネルに対して撓み力を与えることができる方法及び手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様によれば、本発明は撓み波パネルラウドスピーカを形成する方法であって、パネルの平面に対してある角度で延びるようにレバーをパネル端部又は周辺部分に機械的に連結する段階と、振動励振器をレバーに連結してこれにより撓み波エネルギーがパネルに結合され、励振器に信号が供給されたときに音響出力を提供する段階と、レバーの外方に位置付けられたサスペンション上にパネルを支持する段階とから構成される。該方法は、弾性サスペンションを選択する段階を含むことができる。
【0010】
本方法は、パネル端部に沿って又はパネルの周辺部分に沿って延びるフランジの形態にレバーを配置する段階を含むことができる。
【0011】
本方法は、パネル端部又は周辺部分に沿って部分的に延び、又はパネル端部と同じ広がりを有するようにフランジを配置する段階を含むことができる。
【0012】
本方法は、パネルの一対の相対する端部又は周辺部分上にレバー又はフランジを配置する段階と、各レバー又はフランジを振動励振器に連結する段階とを含み、これにより撓み波パネルをステレオ装置として動作させることができる。本方法は、レバー又はフランジをパネルの隣接端部又は周辺部分上に配置する段階と、隣接端部又は周辺部分上のレバー又はフランジに振動励振器を連結して、追加のチャネル音響出力を提供する段階とを含むことができる。
【0013】
本方法は、関連付けられた振動励振器によってレバー又はフランジを駆動して共振させる段階を含むことができる。
【0014】
本方法は、振動励振器として共振又は分布モード装置を選択する段階を含むことができる。
【0015】
本方法は、レバー又はフランジの内方に励振器を位置付ける段階を含むことができる。
【0016】
本方法は、パネルのほぼ平面内で振動励振器を介してレバー又はフランジに力を印加する段階を含むことができる。
【0017】
本方法は、パネルの平面にほぼ垂直な励振器を介してレバー又はフランジに力を印加する段階を含むことができる。このようにして低周波の全体モードでパネルを動作させることもできる。
【0018】
本方法は、返しリップを備えたレバー又はフランジをパネルから離れた端部に設ける段階と、返しリップに振動励振器を連結する段階とを含むことができる。
【0019】
本方法は、励振器又は各励振器によって、又は2つより多くの励振器が設けられる場合に少なくとも1つの励振器によって撓み波パネルを駆動して共振させる段階を含むことができる。共振は分布モードのものとすることができる。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、パネルの周辺部分又は端部に機械的に連結されたレバーと、レバーに連結され、パネルに撓み波エネルギーを印加して音響出力を生成する振動励振器と、レバーの外方に位置付けられたパネルサスペンションとを有する撓み波パネル形状ラウドスピーカである。パネルサスペンションは、例えば可撓性プラスチックからなる柔軟性のあるものとすることができる。
【0021】
レバーは、パネル端部に沿って又はパネルの周辺部分に沿って延びるフランジの形状にすることができる。フランジは、パネル端部又は周辺部分に沿って部分的に延びることができ、又はパネル端部と同じ広がりを有することができる。
【0022】
レバー又はフランジは、パネルの一対の相対する端部又は周辺部分上に設けることができ、各レバー又はフランジを振動励振器に連結し、これによりラウドスピーカをステレオ装置として動作させることができる。
【0023】
レバー又はフランジは、パネルの隣接端部又は周辺部分上に設けることができ、隣接端部又は周辺部分上のレバー又はフランジを振動励振器に連結して、多チャネル音響出力を提供することができる。
【0024】
レバー又はフランジは、関連付けられた振動励振器によって駆動されて共振するように適合させることができる。
【0025】
振動励振器は、共振又は分布モード装置とすることができる。
【0026】
励振器は、レバー又はフランジの内方に配置することができる。
【0027】
振動励振器は、レバー又はフランジに対してその平面にほぼ垂直な力を印加するように適合することができ、又は代替として、振動励振器は、パネルのほぼ平面内でレバー又はフランジに力を印加するように適合することができる。後者の場合において、パネルは、低周波数で全体モードで動作することができ、レバー又はフランジは、パネルから離れたその端部に返しリップを備えることができ、振動励振器を返しリップに連結することができるようになる。
【0028】
撓み波パネルは、共振して音響出力を生成するように適合することができ、分布モードとすることができる。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、ディスプレイ画面と該ディスプレイ画面を覆う透明な保護カバーとを有し、該透明な保護カバーが上述のラウドスピーカである小型電子装置である。小型電子装置は携帯電話、PDA、又は同様のものとすることができる。
【0030】
従って、本発明の方法並びにラウドスピーカ又は電子装置を用いることで、撓み力がレバーを介して全体的にパネルに印加されるので、その周りでパネルが変形する支点又は単純な支持体を必要としない。更に本発明では、サスペンションは、上述の従来技術の場合のようにレバーの内方に配置されず、代わりにパネル下側及びパネル端部又はその付近の内方に配置される。加えて、サスペンションは、単純なサスペンション又は支点を提供するものである必要がなく、例えば弾性発泡プラスチックのような柔軟性のあるものとすることができる。どのような適切な電気力学的励振器を使用してもよい。特定の実施形態では、分布モードアクチュエータ、又は本発明の出願人らによるに記載され、ラウドスピーカ組立体に適合させることができるDMAを使用することができる。励振器は、スペースを節約するためにレバーカプラの内側に配置することができる。慣性励振器及び接地型励振器を使用することができる。
【0031】
撓み波パネルは、関連付けられたレバー又はフランジを有する1つ又は複数の端部に沿って自由に支持にすることができる。サスペンションは、特性を改善する境界条件を提供するように全体的又は局部的に適合させることができる。このような適合性は、モード密度を助長し及び/又はモード分布を調整することができる。レバーカプラは、連結されたシステムに有益なモードを追加するように選ばれた選択パラメータを有することができる。パネルは、単純な又は複雑な湾曲した輪郭を有することができる。曲率は、特性を改善するためにパネルの剛性と厚さに関連して選択することができる。
【0032】
励振器に対する取付スタブの機械的特性は、例えば減衰性及び/又はコンプライアンスの選択によって適合するように選択することができる。
【0033】
低いモード密度及び高い機械インピーダンスを補償する1つの方法は、レバー自体の機械的及び幾何学的パラメータの解析及び最適化に基づく。例えばDMAを使用するときに励振器自体にモード動作の可能性がある場合、連結レバーのモダリティを完全なモード系の一部にすることもできる。
【0034】
関連のレバーのパラメータには、面積密度、スチフネス、寸法、厚さ、材料の異方性、曲率、及びリブ強化が含まれる。
【0035】
レバーは、パネルと一体化するか、又は接着で取り付けることができる。両方の場合において、レバーとパネルとの間の角度は直角にすることができるが、曲げ又はねじりモーメントを放射パネルに伝えることができる他のどのような角度でもよい。
【0036】
レバーに対する励振器取付スタブの連結、取付スタブに対する励振器のDMA要素及びパネル上のレバーの位置、スタブ上のDMA要素、及びレバー上のスタブの自由度は全て、所望の連結に対し独立して又は相互に作用して選択することができる。
【0037】
小型電子装置ではスペースが限られており、スペース要件を低減し、機能をサブアセンブリに統合する技術的解決策が高く評価される。本発明の解決策は1つ以上の信号チャネルを考慮する。例えば、ステレオすなわち2チャネル再生はかなりの市場価値があり、再生音で知覚される立体感を増大させるために、良く知られた種々の信号処理システムによってこのような小型装置の性能を向上させることができる。1つより多い音声チャネル及び関連するチャネル励振器を用いて、例えばパネルの対向する端部上の相対する1対のレバーでパネルのダイアフラムを駆動することができる。チャネルは、共通の情報がある場合に低周波数で電気的に組み合わせて効率を高めることができる。そのように組み合わせたチャネルは、高い周波数でも分離したままとし、再生音の空間及び知覚チャネル分離効果を維持することができる。
【0038】
本発明は、携帯通信装置又はPDA上で可視領域を最大にする手段を提供し、ステレオ信号の再生を可能にする。100%の可視領域が目標とされる。同時に、利用可能なディスプレイ面積が1つより多い変換器の要件によって更に占有されることに起因して可視領域の予想損失が生じることなく、マルチチャネル信号の再生を可能にすることを目的とする。
【0039】
ステレオ音声出力には大きな需要があり、特に対象物が大きい場合に性能上の利点は明らかであるが、小型装置においても有用である。
【0040】
本発明の目的は、効果的なコストでステレオ方式を提供することである。これは、2つ又はそれ以上の信号チャネルを1つのラウドスピーカ組立体に統合することによって実現される。これのことは、コネクタが1つである利点を付加することができる。ラウドスピーカ組立体は、ディスプレイ・モジュールと更に統合することができ、組立時間及びコストが最小となる。
【0041】
更なる目的は、PDAにおいてスペースが著しく制限されている場合に、占有スペースが極めて少ない1つ又はそれ以上のチャネルのスピーカシステムを提供することである。
【0042】
この技術は、再生音場において予想外の程度の知覚される広がりを比類なく提供し、利用可能な実施の一部が小さなサイズであることが認められる。オーディオ産業で良く知られた拡張ステレオ効果をもたらすために信号処理が使用される場合には、このことは益々そうである。
【0043】
この効果が考慮される場合、3.5mの距離から聴いている小型ステレオTV上のステレオスピーカの対する角度と視聴距離が0.5mの場合の携帯型ステレオPDA/電話機との類似点を示すことができる。
【0044】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は添付図面において例証として概略的に示される。
【0045】
図1には、ハウジング(2)、キーボード(3)、マイクロフォン(4)、及びマイクロスピーカ(5)とその関連する音響放射開口(6)を備える従来技術の携帯電話機(1)が示されている。保護透明カバー(7)を通して見えるディスプレイ画面(10)もある。ディスプレイ画面・カバー(7)は、ハウジング(2)内の対応する開口によって定められたスクリーン(10)の可視領域よりも僅かに大きい。
【0046】
図2には、撓み波振動でカバーを駆動して音響を放射する電気力学的励振器(9)透明なディスプレイ画面・カバー(7)の周辺区域(8)に装着された従来技術の携帯電話機(1)が示されている。従って、カバーは、共振パネル形状スピーカとして作用する。そのような構成は、国際特許出願WO00/02417に記載されている。励振器(9)は、例えば国際特許出願WO001/54450に記載された種類のビーム型圧電モードアクチュエータとすることができる。
【0047】
図3は、広いディスプレイ画面領域(10)と、ここではステレオ音声出力用に構成された2つの音声再生チャネル(5)とを備えた従来技術による個人用データ装置であるPDA(11)を示している。
【0048】
図4は、以下により完全に説明されるラウドスピーカを作動させるためのレバー連結機構(12)を組み込んだ本発明による携帯電話(1)の実施形態を示す。振動励振器(図示せず)が上記図2で示されたような方法でカバーの平坦な(場合によっては平坦に見える)面に直接取り付けられていないため、ディスプレイ(10)の可視領域は、音響放射カバー(7)を励振するためのレバー連結機構(12)を用いて大幅に拡大される。どのような好適な電気力学的励振器を用いてもよいが、WO01/54450のDMA(分布モードアクチュエータ)形式は、外形形状が薄いため適切である。これにより、該励振器を図示のコンパクトなラウドスピーカ及びディスプレイ組立体に組み込むことが可能となる。スクリーンカバーは6.5cm×4.3cm、DMAビームは長さ3.6cm×幅0.7cmであり、厚さは無視することができる。
【0049】
図5は、本発明のPDA(11)の実施形態を示し、2チャネルのラウドスピーカ構成が、ディスプレイユニットを覆う透明カバー(7)と組み合わされた広いディスプレイ画面領域(10)をどのように拡大することができるかを表している。撓み波ラウドスピーカ・カバーの励振は、画面の相対する側面上に配置され、カバーの真下に位置付けられる2つのレバー連結機構を介して行われる。
【0050】
本発明は、携帯電話機、PDA、又は同様のものなどのスペースが限定された小型電子製品用の共振撓み波パネル形状ラウドスピーカを提供する上での問題、特に、ラウドスピーカパネルが視覚ディスプレイの前面でカバーを形成するために透明であり、従って振動励振器をパネルの端部に装着する必要がある状況における解決法を提案する。この解決法には、パネルに剛性固定され且つ該パネルにある角度(例えば直角で)で延びる部材(例えばフランジ状部材)に振動励振器を連結することを含む。従って、振動励振器は、パネルに連結されるレバーとして作動する部材に力を印加し、パネルを励振して共振させ、音響出力を生成する。
【0051】
図6a及び6bは、図4の携帯電話(1)又は図5のPDAにおける視覚ディスプレイ(18)を覆う矩形パネル形状音響放射体(14)(例えば透明カバー)を備えた撓み波パネルスピーカ(13)の2チャネルの実施形態を示し、該放射体は、2つの相対する側面に沿って延び、放射体パネル(14)に固定的に取り付けられてレバー連結機構(12)を形成する直立フランジ(15)と共に形成される。フランジ(15)は、パネル周縁(16)の僅かに内側に位置決めされ、携帯電話又は他の電子装置のハウジング(2)内の所定位置に放射体(14)を固定するためにサスペンション(17)を取り付けることができる区域を提供する。ハウジング(2)は装置の標準的電子機器回路を収容する。
【0052】
レバー連結フランジ(15)は、放射体(14)の側面のほぼ全長にわたって延び、ビーム励振器(19)が短いスタブ(20)を介してフランジの各々に固定される。励振器(19)は、図6a及び6bに示されるようにレバー連結(15)の外方に取り付けることができ、或いは、より多くのスペースを節約するために図6c及び6dに示されるように、レバー連結の内方に取り付けてもよい。
【0053】
図7の実施形態では、短いレバー連結フランジ(15)を使用していること以外は全体的に図6のものに類似した2チャネルのパネル形状撓み波ラウドスピーカ(13)の斜視図が示されている。従ってレバーは、これらが固定される撓み波パネル放射体(14)の長さに対して短い。
【0054】
図8は、音圧対周波数のグラフであり、図2に示された従来技術のスピーカの連続基準トレース、単一の短尺レバー連結のトレース1(長い波線)、及び例えば図7に示された個々の短尺レバー連結を介して駆動する2つの励振器を装着したラウドスピーカのダイアフラムのトレース2(短い波線)を示している。ここで駆動信号は共通であり、図7の実施形態に対応するエネルギー寄与の正の総和を示す。
【0055】
図9は、音圧対周波数のグラフであり、図2の従来技術の撓み波ラウドスピーカパネルの連続基準トレースを示す。同様に、単一のチャネルトレース1(長い波線)及び同期して動作する2つのチャネル(短い波線)における長尺レバー連結によって提供される音響出力が示され、長尺レバーは図6に示されたものである。実施形態の出力/ラウドネスと応答の均一性の両方で改善が見られる。デュアルレバー連結動作では良好な出力統合が認められる。
【0056】
図10は、本発明のスピーカパネル(14)の撓み波作用のワイヤメッシュ表現であり、これは、有用な音圧に寄与する3組の明確なモードを有している。撓み波音響パネルを使用しているより小型のオーディオ装置は、より大きな装置と比べて結果的にモード密度が低く且つ機械インピーダンスがより高い。従って、補正するために追加のモードの組を利用可能にするのが望ましい。第1のモードの組Aは、圧電DMAなどのモードアクチュエータの設計によって定めることができる。第2のモードの組Bは、レバー連結の一部として設計することができ、この場合、レバーは意図的に完全な剛体ではなく、すなわち実用上剛体ではない。第3のモードの組Cは、ラウドスピーカ放射パネル要素の意図された共振撓み波動作から得られる。各要素は、例えば振動解析ツールを用いて調整し、良好な音響成果を達成するように機能する有用な協調共振を可能にすることができる。
【0057】
図11は、電話(1)又はPDA(11)である小型電子装置の更に別の実施形態を示し、該装置は全体的に図6のものに類似して、視覚ディスプレイを覆って透明カバー(14)によって形成されるパネル形状のスピーカ(13)を組み込み、ここで2つ又はそれ以上の励振器(19)を修正レバー連結部材(15)と共に使用して、全体の要素又は低周波数領域で同期運動する要素を追加することができる。レバー連結フランジ(15)は、その自由端部で別の直角により取り込まれて返しフランジ(21)を形成する。これにより励振器(19)が放射体平面に対して垂直に動くことが可能となる。低い周波数においては、慣性反力により、及び/又は励振器がフレームセクションに接地される場合には、パネル(14)は、パネルの共振撓み波領域よりも低い周波数で全体として動く。これよりも高い周波数では、レバー連結が音響パネルの外周部で励振器の運動を撓み力に変換し始めると撓み波作用へ遷移する。高周波数では撓み波作用が支配的である。
【0058】
図12には、図7の実施形態と類似した、3つのレバー連結フランジ(15)を使用して装置をマルチチャネル用途にまで拡張する実施形態が示される。この実施例では、PDA用左右チャネルラウドスピーカ出力は、交差軸で励振により増加され、中心チャネルとなる。このことは、3つの主音響チャネルを備えた個人用ビデオプレーヤに好適であろう。必要に応じてより多くのレバー連結及び励振器を追加してもよく、撓み波スクリーンにより種々の寄与が有効に加えられる。
【0059】
図13は、レバー連結フランジ(15)が3次元で湾曲した図6とほぼ同様の実施形態である。
【0060】
図14は図6に基づく実施形態であり、本発明のスピーカが対称な構成に制約されないこと、及び、取付スタブ(20)上のDMA又は等価励振器(19)の中心を外れた位置によって付与された追加の自由度を用いて更なる改善を実施できること、スタブ(20)のオフセット及びレバー連結器に対する高さ、連結の位置高さ及び長さ、パネル端部に対するその外周位置、レバー連結器の形状及び厚さ、連結器が平面で湾曲した輪郭すなわち3次元であるかどうかを示している。これらの特徴は一般的にこの図で示されている。
【0061】
予期しない便益には、低周波数特性が改善されたこと、及びレバーが存在することで撓み物体全体をより大きくすることができf0の僅かな低下及び密度が増大することが含まれる。
【0062】
シミュレーションの結果は、新しいコンパクトなこの解決策が、従来の外方にある解決策に対して少なくとも同等の特性をもたらし、スペース要件を大幅に縮小して、設計自由度を付加することができることを示している。
【0063】
別の便益は、システムのモード密度が全体として増加したことによって音質が更に向上したことである。
【0064】
また、同じ専有面積内でステレオ用に第2のチャネルを追加することができる。
【0065】
中間周波帯(1kHz)から上では有用なチャネル分離が観測され、1kHzより下では効率の向上及び応答の改善の可能性が実証された。
【0066】
特に放射パネルとレバー構造体の組み合わせの基本撓みモード(f0)未満では、撓み波駆動に追加される低周波数領域のピストンの増加、すなわち全体の非ロッキング並進運動の可能性もある。このことは、パネルの平面に対してほぼ平行に延びる2次フランジ又は他の固定的に取付られた返し部材を備えたレバーを形成して励振器をそのフランジ又は同様のものに連結し、これにより、パネルの平面に対してほぼ垂直なレバーで励振器によって力が印加されることによって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来技術の携帯電話の斜視図である。
【図2】別の従来技術の携帯電話の斜視図である。
【図3】従来技術のいわゆるPDAすなわち携帯情報端末の斜視図である。
【図4】本発明の携帯電話の実施形態の斜視図である。
【図5】本発明のPDAの実施形態の斜視図である。
【図6a】本発明の撓み波パネルラウドスピーカの第1の実施形態の斜視図である。
【図6b】ハウジングに取り付けられた図6aのパネルスピーカの部分横断面図である。
【図6c】本発明の撓み波パネルラウドスピーカの第2の実施形態の斜視図である。
【図6d】ハウジングに取り付けられた図6cのパネルスピーカの部分横断面図である。
【図7】本発明の撓み波パネルラウドスピーカの第3の実施形態の斜視図である。
【図8】周波数に対する音圧をプロットしたグラフであり、本発明のラウドスピーカに対する図2の装置のラウドスピーカの出力を含む。
【図9】周波数に対する音圧をプロットしたグラフであり、図6のスピーカに対する図2の従来技術のスピーカの出力を含む。
【図10】動作時における本発明の撓み波パネルラウドスピーカの斜視グラフ表現である。
【図11】本発明の撓み波パネルスピーカを組み込んだ、例えば携帯電話又はPDAなどの小型電子装置の横断面図である。
【図12】本発明の撓み波パネルスピーカの更に別の実施形態の斜視図である。
【図13】本発明の撓み波パネルスピーカの別の実施形態の斜視図である。
【図14】本発明の撓み波パネルスピーカの更に別の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 携帯電話
2 ハウジング
3 キーボード
4 マイクロフォン
10 ディスプレイの可視領域
12 レバー連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの平面に対してある角度で延びるようにレバーをパネル端部又は周辺部分に固定的に連結する段階と、
撓み波励振器を前記レバーに連結して、これにより撓み波エネルギーが前記パネルに結合され、前記励振器に信号が供給されたときに音響出力を提供する段階と、
前記レバーの外方に位置付けられたサスペンション上に前記パネルを支持する段階と、
を含む撓み波パネルラウドスピーカを形成する方法。
【請求項2】
前記パネル端部に沿って又は前記パネルの周辺部分に沿って延びるフランジの形態に前記レバーを配置する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パネル端部又は周辺部分に沿って部分的に延び、又は前記パネル端部と同じ広がりを有するように前記フランジを配置する段階を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パネルの一対の相対する端部又は周辺部分にレバー又はフランジを配置する段階と、各レバー又はフランジを振動励振器に連結する段階とを含み、これにより前記撓み波パネルをステレオ装置として動作させることができることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
レバー又はフランジを前記パネルの隣接端部又は周辺部分上に配置する段階と、前記隣接端部又は周辺部分上の前記レバー又はフランジに振動励振器を配置する段階とを含み、複数チャネルの音響出力を提供することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
関連付けられた振動励振器によって前記レバー又はフランジを駆動して共振させる段階を含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
振動励振器として分布モード装置を選択する段階を含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記励振器を前記レバー又はフランジの内方に位置付ける段階を含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記パネルのほぼ平面内で前記振動励振器を介して前記レバー又はフランジに力を印加する段階を含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記パネルの平面にほぼ垂直な前記励振器を介して前記レバー又はフランジに力を印加する段階を含む請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
返しリップを備えた前記レバー又はフランジを前記パネルから離れた端部に設ける段階と、前記振動励振器を前記返しリップに連結する段階とを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記撓み波パネルは、前記又は各励振器によって駆動されて共振することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記共振は、前記分布モードのものである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
パネルの周辺部分又は端部に固定連結されたレバーと、前記レバーに連結され、前記パネルに撓み波エネルギーを印加して音響出力を生成する振動励振器と、前記レバーの外方に位置付けられたパネルサスペンションとを有することを特徴とする撓み波パネル形状ラウドスピーカ。
【請求項15】
前記レバーは、前記パネル端部に沿って又は前記パネルの周辺部分に沿って延びるフランジの形状であることを特徴とする請求項14に記載のラウドスピーカ。
【請求項16】
前記フランジは、前記パネル端部又は周辺部分に沿って部分的に延びるか又は前記パネル端部と同じ広がりを有することを特徴とする請求項15に記載のラウドスピーカ。
【請求項17】
レバー又はフランジが、前記パネルの一対の相対する端部又は周辺部分上に設けられ、各レバー又はフランジを振動励振器に連結し、これにより前記ラウドスピーカをステレオ装置として動作させることができることを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項18】
レバー又はフランジが、前記パネルの隣接端部又は周辺部分上に設けられ、前記隣接端部又は周辺部分上の前記レバー又はフランジを振動励振器に連結して、多チャネル音響出力を提供することを特徴とする請求項17に記載のラウドスピーカ。
【請求項19】
前記レバー又はフランジは、関連付けられた振動励振器によって駆動されて共振するように適合されることを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項20】
前記振動励振器は、分布モード装置であることを特徴とする請求項14から19のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項21】
前記励振器は、前記レバー又はフランジの内方に配置されることを特徴とする請求項14から20のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項22】
前記振動励振器は、前記レバー又はフランジに対してその平面にほぼ垂直な力を印加するように適合されることを特徴とする請求項14から21のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項23】
前記振動励振器は、前記レバー又はフランジに対して前記パネルのほぼ平面内で力を印加するように適合されることを特徴とする請求項14から21のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項24】
前記レバー又はフランジは、前記パネルから離れたその端部に返しリップを備え、前記励振器が前記返しリップに連結されることを特徴とする請求項23に記載のラウドスピーカ。
【請求項25】
前記撓み波パネルは、共振して音響出力を生成するように適合されることを特徴とする請求項14から24のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項26】
前記撓み波パネルは、前記分布モードのものであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ディスプレイ画面と、該ディスプレイ画面を覆う透明な保護カバーとを有し、前記透明な保護カバーが請求項14から26のいずれか1項に記載されたラウドスピーカであることを特徴とする小型電子装置。
【請求項28】
前記装置は、携帯電話、PDA又は同様のものであることを特徴とする請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−518331(P2007−518331A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548378(P2006−548378)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000020
【国際公開番号】WO2005/067344
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(505209670)ニュー トランスデューサーズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】