撚糸織物
【課題】優れた形態安定性を有し、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れ、適度なハリ感を有し、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有し、快適な着用感と高級感に優れた撚糸織物を提供する。
【解決手段】公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸、好ましくはセルロースアセテート繊維フラメント糸からなる撚係数１００００〜２００００の撚りを有する撚糸を、経糸及び又は緯糸として用い、セルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であるように、織物を構成する。
【解決手段】公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸、好ましくはセルロースアセテート繊維フラメント糸からなる撚係数１００００〜２００００の撚りを有する撚糸を、経糸及び又は緯糸として用い、セルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であるように、織物を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、撚糸織物に係わり、さらに詳しくは清涼感に優れ快適な着用感と高級感のある撚糸織物に関する。
【背景技術】
【０００２】
ポリエステルフィラメント糸を用いた撚糸織物は、イージーケアー性に優れ、またファッション性にも優れているが、一方では高ヤング率からくる硬い風合い、石油由来のワキシイな風合い、低吸湿性からくるムレ感や静電気発生、高い屈折率からくる金属感のある光沢があり、鮮明な発色性に欠ける等の問題がある。また、ポリエステルフィラメント糸を用いた撚糸織物における風合いを改善するためにアルカリ減量加工も行われているが、アルカリ減量加工により、風合いにソフトさは得られるものの、ハリ感が損なわれたものとなり、また、皺加工によっても、繊維の硬さからナチュラルな細かい皺表現を付与は困難である。
【０００３】
上記問題を解決するためには、レーヨンフィラメント糸の撚糸を用いて織物を構成することが考えられるが、通常のレーヨンでは水膨潤性による収縮が問題となり、洗濯における形態安定性、湿潤堅牢度等の問題や保水性が高く乾燥速度が遅い等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、優れた形態安定性を有し、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れ、適度なハリ感を有し、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有し、快適な着用感と高級感に優れた撚糸織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明の要旨は、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸からなる撚係数が１００００〜２００００の撚りを有する撚糸にて織物が構成され、織物におけるセルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であることを特徴とする撚糸織物、にある。
【発明の効果】
【０００６】
本発明によれば、形態安定性に優れ、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れた、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有する、快適な着用感と高級感に優れた衣料用として好適な撚糸織物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
本発明における公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸とは、セルロースを原料とした再生繊維或いは半合成繊維のフィラメント糸であり、再生繊維としては例えばビスコースレーヨン、リヨセル等が挙げられ、また半合成繊維としては例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類を特に限定するものではない。
【０００８】
特に本発明においては、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸として、セルロースジアセテート繊維フィラメント糸やセルローストリアセテート繊維フィラメント糸のセルロースアセテート繊維フィラメント糸が好ましく用いられる。
【０００９】
セルロースジアセテート繊維フィラメント糸は、その公定水分率が６．５％、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸は、その公定水分率が３．５％であり、これらのセルロースアセテート繊維フィラメント糸は、低屈折率による優れた発色性、高級感のある光沢、セルロース系繊維由来のソフトで清涼感に優れた風合い、更には分散染料可染性、熱セット性等を有するとともに、その公定水分率から、適度な吸湿性と速乾性を有し、特に風合いや光沢の高級感の点から、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸がより好ましく用いられる。
【００１０】
また、本発明におけるセルロース系繊維フィラメント糸は、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１１】
セルロース系繊維フィラメント糸の公定水分率が８％を超えると、水膨潤性が大きくなり、洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度等の問題や保水性が高く乾燥速度が遅い等の問題が生じる。
【００１２】
本発明の撚糸織物は、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸の撚糸にて、より具体的には織物の経糸又は緯糸、或いは経糸及び緯糸として構成される。セルロース系繊維フィラメント糸の撚糸は、セルロース系繊維フィラメント糸のみから撚糸であってもよいし、また異種又は同種のセルロース系繊維フィラメント糸、或いはポリエステル繊維フィラメント糸等の他の繊維フィラメント糸との合撚糸であってもよい。
【００１３】
さらに本発明におけるセルロース系繊維フィラメント糸の撚糸は、その撚係数が１０，０００〜２０，０００での撚りを有することが好ましく、撚係数が１０，０００未満では、撚糸織物としてのドライ感、清涼感、ドレープ感、光沢感等が得られ難く、また撚係数が２０，０００を超えると、撚糸織物における風合いが硬く、高級感が損なわれる
。
【００１４】
本発明における撚糸織物は、セルロース系繊維フィラメント糸以外の他の繊維フィラメント糸が経糸又は緯糸の一部として含まれていてもよいが、セルロース系繊維フィラメント糸の有する清涼感、絹様な高級感のある光沢と風合い等を充分に発揮させるためには、撚糸織物における公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸の含有率は重量比で８０％以上であることが必要である。ポリエステルフィラメント糸の撚糸織物との比較であれば、セルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％未満でも良好なものは得られるが、セルロース系繊維フィラメント糸と混用される他の繊維フィラメント糸の影響が顕在化するため、本発明の目的とするセルロース系繊維フィラメント糸の特長を充分に発揮させるうえでは好ましくない。
【００１５】
本発明における織物の組織や密度、目付け等は特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【実施例】
【００１６】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例における洗濯収縮率の測定は、ＪＩＳ Ｌ−１０４２ Ｆ−１法に拠った。また、本発明における撚係数は下記の計算式にて求めた。
Ｋ＝Ｔ×√Ｄ
（Ｋ：撚係数、Ｔ：撚り数（回／ｍ）、Ｄ：糸繊度（ｄｔｅｘ））
【００１７】
（実施例１）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／６４フィラメント（ｆ）、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数３００回／ｍのＳ撚りの撚りを加え、サイジングした撚糸を用い、緯糸には、経糸に使用したと同じセルローストリアセテート繊維フィラメント糸に撚り数１８００回／ｍ（撚係数１８８７９）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用いて、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、平織組織に製織した。
【００１８】
この生機を常法により精練、皺加工を行い、染色仕上加工にて、緑色に染色し、経糸密度１１７本／吋、緯糸密度８２本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで膨らみ感が有り、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、皺加工によるナチュラルな細かい凹凸がみられ、優雅な光沢と深みのある発色性に優れた緑色を呈し、さらに、適度なハリがある為、肌離れが良く、適度な吸湿性と相俟って快適な着用感のあるものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率は、タテ−０．５％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００１９】
（比較例１）
実施例１において、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸を、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／４８ｆ、単糸三角断面）に代えた以外は、実施例１におけると同様にして、染色仕上げが施された撚糸織物を作成した。得られた撚糸織物は、実施例１における織物に比べて風合いが硬くワキシイで光沢の強い高級感に欠け、緑色の鮮明性、発色性や爽やかさに欠けるものであった。また得られた織物は、皺加工による凹凸は荒くナチュラル感のない高級感に欠けるものであり、さらに、アルカリ減量加工した織物は、ドレープ性が増し、肌離れが悪く、ベタツキ感のあるものとなった。
【００２０】
（実施例２）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数１６００回／ｍ（撚係数１４６６４）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用い、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように配列した。緯糸には、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト４０ｄｔｅｘ／９ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）１本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）１本とを合わせ撚り数２５００回／ｍ（撚係数１９６８５）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ方向のものとＺ方向のものとを作成し、合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、平織組織に製織した。
【００２１】
この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は８６％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、黒色に染色し、経糸密度は１０５本／吋、緯糸密度は８４本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、優雅な光沢と深みのある発色性に優れた黒色を呈し、肌離れの良い快適な着用感のものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率はタテ−０．５％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００２２】
（実施例３）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数１６００回／ｍ（撚係数１４６６４）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用い、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように配列した。緯糸にはセルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５０ｄｔｅｘ／３４ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）１本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）１本とを合わせ撚り数２０００回／ｍ（撚係数１６９７１）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ撚りのものとＺ撚りのものとを作成し、合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、１２０×１２０の梨地組織に製織した。この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は８８％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、白色に染色し、経糸密度１４３本／吋、緯糸密度９６本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、優雅な絹様光沢を有し、肌離れの良い快適な着用感のものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率は、タテ−０．８％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００２３】
（比較例２）
実施例１において、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸を、ビスコースレーヨンフィラメント糸（エンカ社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／４８ｆ）に代えた以外は、実施例１におけると同様にして、染色仕上げが施された撚糸織物を作成した。得られた撚糸織物は、実施例１における織物に比べてドライ感がやや劣るものの、ほぼ近い風合いや外観、発色性が得られたが、その洗濯収縮率がタテ８％、ヨコ９％であり、形態安定性に欠けるものであった。
【００２４】
（比較例３）
経糸及び緯糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５０ｄｔｅｘ／３４ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）1本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル３３ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）1本とを合わせ撚り数１８００回／ｍ（撚係数１６８８５）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ撚りのものとＺ撚りのものとを作成し、この合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが２本交互になるように配列し、一般にシホンと呼ばれる平織組織に製織した。この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は６０％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、白色に染色し、経糸密度１００本／吋、緯糸密度７２本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、強撚糸特有の硬い風合いとなり、シャリ感やドライ感にも劣り清涼感に乏しい織物であった。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明の撚糸織物は、形態安定性に優れ、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れた、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有する、快適な着用感と高級感に優れたものであり、かかる機能を備える衣料用の繊維製品の素材として好適に使用され、広く衣料用素材として有用なるものである。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、撚糸織物に係わり、さらに詳しくは清涼感に優れ快適な着用感と高級感のある撚糸織物に関する。
【背景技術】
【０００２】
ポリエステルフィラメント糸を用いた撚糸織物は、イージーケアー性に優れ、またファッション性にも優れているが、一方では高ヤング率からくる硬い風合い、石油由来のワキシイな風合い、低吸湿性からくるムレ感や静電気発生、高い屈折率からくる金属感のある光沢があり、鮮明な発色性に欠ける等の問題がある。また、ポリエステルフィラメント糸を用いた撚糸織物における風合いを改善するためにアルカリ減量加工も行われているが、アルカリ減量加工により、風合いにソフトさは得られるものの、ハリ感が損なわれたものとなり、また、皺加工によっても、繊維の硬さからナチュラルな細かい皺表現を付与は困難である。
【０００３】
上記問題を解決するためには、レーヨンフィラメント糸の撚糸を用いて織物を構成することが考えられるが、通常のレーヨンでは水膨潤性による収縮が問題となり、洗濯における形態安定性、湿潤堅牢度等の問題や保水性が高く乾燥速度が遅い等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、優れた形態安定性を有し、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れ、適度なハリ感を有し、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有し、快適な着用感と高級感に優れた撚糸織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明の要旨は、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸からなる撚係数が１００００〜２００００の撚りを有する撚糸にて織物が構成され、織物におけるセルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であることを特徴とする撚糸織物、にある。
【発明の効果】
【０００６】
本発明によれば、形態安定性に優れ、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れた、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有する、快適な着用感と高級感に優れた衣料用として好適な撚糸織物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
本発明における公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸とは、セルロースを原料とした再生繊維或いは半合成繊維のフィラメント糸であり、再生繊維としては例えばビスコースレーヨン、リヨセル等が挙げられ、また半合成繊維としては例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類を特に限定するものではない。
【０００８】
特に本発明においては、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸として、セルロースジアセテート繊維フィラメント糸やセルローストリアセテート繊維フィラメント糸のセルロースアセテート繊維フィラメント糸が好ましく用いられる。
【０００９】
セルロースジアセテート繊維フィラメント糸は、その公定水分率が６．５％、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸は、その公定水分率が３．５％であり、これらのセルロースアセテート繊維フィラメント糸は、低屈折率による優れた発色性、高級感のある光沢、セルロース系繊維由来のソフトで清涼感に優れた風合い、更には分散染料可染性、熱セット性等を有するとともに、その公定水分率から、適度な吸湿性と速乾性を有し、特に風合いや光沢の高級感の点から、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸がより好ましく用いられる。
【００１０】
また、本発明におけるセルロース系繊維フィラメント糸は、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１１】
セルロース系繊維フィラメント糸の公定水分率が８％を超えると、水膨潤性が大きくなり、洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度等の問題や保水性が高く乾燥速度が遅い等の問題が生じる。
【００１２】
本発明の撚糸織物は、公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸の撚糸にて、より具体的には織物の経糸又は緯糸、或いは経糸及び緯糸として構成される。セルロース系繊維フィラメント糸の撚糸は、セルロース系繊維フィラメント糸のみから撚糸であってもよいし、また異種又は同種のセルロース系繊維フィラメント糸、或いはポリエステル繊維フィラメント糸等の他の繊維フィラメント糸との合撚糸であってもよい。
【００１３】
さらに本発明におけるセルロース系繊維フィラメント糸の撚糸は、その撚係数が１０，０００〜２０，０００での撚りを有することが好ましく、撚係数が１０，０００未満では、撚糸織物としてのドライ感、清涼感、ドレープ感、光沢感等が得られ難く、また撚係数が２０，０００を超えると、撚糸織物における風合いが硬く、高級感が損なわれる
。
【００１４】
本発明における撚糸織物は、セルロース系繊維フィラメント糸以外の他の繊維フィラメント糸が経糸又は緯糸の一部として含まれていてもよいが、セルロース系繊維フィラメント糸の有する清涼感、絹様な高級感のある光沢と風合い等を充分に発揮させるためには、撚糸織物における公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸の含有率は重量比で８０％以上であることが必要である。ポリエステルフィラメント糸の撚糸織物との比較であれば、セルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％未満でも良好なものは得られるが、セルロース系繊維フィラメント糸と混用される他の繊維フィラメント糸の影響が顕在化するため、本発明の目的とするセルロース系繊維フィラメント糸の特長を充分に発揮させるうえでは好ましくない。
【００１５】
本発明における織物の組織や密度、目付け等は特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【実施例】
【００１６】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例における洗濯収縮率の測定は、ＪＩＳ Ｌ−１０４２ Ｆ−１法に拠った。また、本発明における撚係数は下記の計算式にて求めた。
Ｋ＝Ｔ×√Ｄ
（Ｋ：撚係数、Ｔ：撚り数（回／ｍ）、Ｄ：糸繊度（ｄｔｅｘ））
【００１７】
（実施例１）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／６４フィラメント（ｆ）、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数３００回／ｍのＳ撚りの撚りを加え、サイジングした撚糸を用い、緯糸には、経糸に使用したと同じセルローストリアセテート繊維フィラメント糸に撚り数１８００回／ｍ（撚係数１８８７９）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用いて、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、平織組織に製織した。
【００１８】
この生機を常法により精練、皺加工を行い、染色仕上加工にて、緑色に染色し、経糸密度１１７本／吋、緯糸密度８２本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで膨らみ感が有り、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、皺加工によるナチュラルな細かい凹凸がみられ、優雅な光沢と深みのある発色性に優れた緑色を呈し、さらに、適度なハリがある為、肌離れが良く、適度な吸湿性と相俟って快適な着用感のあるものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率は、タテ−０．５％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００１９】
（比較例１）
実施例１において、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸を、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／４８ｆ、単糸三角断面）に代えた以外は、実施例１におけると同様にして、染色仕上げが施された撚糸織物を作成した。得られた撚糸織物は、実施例１における織物に比べて風合いが硬くワキシイで光沢の強い高級感に欠け、緑色の鮮明性、発色性や爽やかさに欠けるものであった。また得られた織物は、皺加工による凹凸は荒くナチュラル感のない高級感に欠けるものであり、さらに、アルカリ減量加工した織物は、ドレープ性が増し、肌離れが悪く、ベタツキ感のあるものとなった。
【００２０】
（実施例２）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数１６００回／ｍ（撚係数１４６６４）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用い、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように配列した。緯糸には、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト４０ｄｔｅｘ／９ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）１本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）１本とを合わせ撚り数２５００回／ｍ（撚係数１９６８５）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ方向のものとＺ方向のものとを作成し、合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、平織組織に製織した。
【００２１】
この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は８６％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、黒色に染色し、経糸密度は１０５本／吋、緯糸密度は８４本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、優雅な光沢と深みのある発色性に優れた黒色を呈し、肌離れの良い快適な着用感のものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率はタテ−０．５％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００２２】
（実施例３）
経糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）に撚り数１６００回／ｍ（撚係数１４６６４）の撚り方向がＳ撚りとＺ撚りの撚りをそれぞれ加えて作成した撚糸を用い、この撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように配列した。緯糸にはセルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５０ｄｔｅｘ／３４ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）１本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）１本とを合わせ撚り数２０００回／ｍ（撚係数１６９７１）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ撚りのものとＺ撚りのものとを作成し、合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが１本交互になるように打ち込み、１２０×１２０の梨地組織に製織した。この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は８８％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、白色に染色し、経糸密度１４３本／吋、緯糸密度９６本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、その風合いがソフトで、適度なハリ感とドライ感、シャリ感の有る清涼感を有し、セルロース系繊維由来の爽やかな心地の良いものであった。また得られた撚糸織物は、優雅な絹様光沢を有し、肌離れの良い快適な着用感のものであった。なお、得られた撚糸織物の洗濯収縮率は、タテ−０．８％、ヨコ−０．５％であり、洗濯における形態安定性に問題の無い水準であった。
【００２３】
（比較例２）
実施例１において、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸を、ビスコースレーヨンフィラメント糸（エンカ社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ／４８ｆ）に代えた以外は、実施例１におけると同様にして、染色仕上げが施された撚糸織物を作成した。得られた撚糸織物は、実施例１における織物に比べてドライ感がやや劣るものの、ほぼ近い風合いや外観、発色性が得られたが、その洗濯収縮率がタテ８％、ヨコ９％であり、形態安定性に欠けるものであった。
【００２４】
（比較例３）
経糸及び緯糸として、セルローストリアセテート繊維フィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５０ｄｔｅｘ／３４ｆ、単糸菊型断面、公定水分率３．５％）1本と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル３３ｄｔｅｘ／１２ｆ、単糸丸断面）1本とを合わせ撚り数１８００回／ｍ（撚係数１６８８５）の撚りを加えて作成した合撚糸を用いた。そして合撚糸は、その撚り方向がＳ撚りのものとＺ撚りのものとを作成し、この合撚糸をＳ撚りとＺ撚りが２本交互になるように配列し、一般にシホンと呼ばれる平織組織に製織した。この織物におけるセルローストリアセテート繊維フィラメント糸の含有率は６０％であった。この生機を常法により精練し、染色仕上げ加工にて、白色に染色し、経糸密度１００本／吋、緯糸密度７２本／吋の織物に仕上げた。得られた撚糸織物は、強撚糸特有の硬い風合いとなり、シャリ感やドライ感にも劣り清涼感に乏しい織物であった。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明の撚糸織物は、形態安定性に優れ、ムレ感や静電気の発生の少ないソフトで清涼感に優れた、高級感のある光沢と鮮明な発色性を有する、快適な着用感と高級感に優れたものであり、かかる機能を備える衣料用の繊維製品の素材として好適に使用され、広く衣料用素材として有用なるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸からなる撚係数が１００００〜２００００の撚りを有する撚糸にて織物が構成され、織物におけるセルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であることを特徴とする撚糸織物。
【請求項２】
公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸が、セルロースアセテート繊維フラメント糸である請求項１に記載の撚糸織物。
【請求項１】
公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸からなる撚係数が１００００〜２００００の撚りを有する撚糸にて織物が構成され、織物におけるセルロース系繊維フィラメント糸の含有率が８０％以上であることを特徴とする撚糸織物。
【請求項２】
公定水分率が８％以下のセルロース系繊維フィラメント糸が、セルロースアセテート繊維フラメント糸である請求項１に記載の撚糸織物。
【公開番号】特開２０１０−１３３０５１（Ｐ２０１０−１３３０５１Ａ）
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３０９６１２（Ｐ２００８−３０９６１２）
【出願日】平成２０年１２月４日（２００８．１２．４）
【出願人】（３０１０６７４１６）三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１２月４日（２００８．１２．４）
【出願人】（３０１０６７４１６）三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Ｆターム（参考）】
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