説明

撥油剤塗布具

【課題】各種精密機器や部品類等に塗布する撥油剤を管状の容器内に閉じ込めるとともに、該容器に軸受等に馴染みやすい塗布部材を備えることによって、目的箇所への撥油剤塗布作業を簡便にする。
【解決手段】内部に撥油剤を充填した細長筒状のケース先端に、浸出した撥油剤を塗布するための塗布部材を突出させてなる塗布具において、塗布部材が毛筆状であり、しかも該毛筆状の塗布部の少なくとも先端部が黒色若しくは濃暗色であるようにした。これにより撥油剤の有効成分濃度の変化がなく塗布後の撥油性が常に良好で、しかも入り組んだ狭隘部への撥油剤塗布作業が容易であり、また塗布部材への付着量が常時目視しやすいために、塗布部材への撥油剤不足による撥油剤塗布不足、あるいは塗布部材に対する撥油剤の過剰な圧し出しを無くす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として小型モータにおけるシャフトの軸受周り、あるいは小型モータ付近の各種精密機器や部品類等に撥油剤を塗布するのに好適な撥油剤塗布具に関し、特に入り組んだ箇所への塗布作業が容易であり、しかも塗布部材への撥油剤の浸出を容易に確認することができるようにしたことを特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやDVD機器その他の各種電子機器をはじめとした機器類にはスピンドルモータなど小型のモータの取り付けが不可欠であるが、これらの小型モータにおけるモータ軸はハウジングに囲まれた軸受材により支承されており、モータの回転に伴って軸受材に含浸させた潤滑油が浸出してモータ軸に沿ってハウジング開口から外部に飛散しやすい。
【0003】
さらにモータ軸から飛散すると、潤滑油不足により小型モータ自体の耐久性ならびに信頼性が損なわれるばかりでなく、モータ付近の各種精密部品の汚損や事故発生の原因にもなりやすい。
【0004】
そこで、これまではモータからの潤滑油飛散を防止するために、刷毛や綿棒の先に撥油撥水剤をしみ込ませて小型モータにおけるモータ軸の軸受周り、あるいはモータ付近の各種精密部品等に撥油撥水剤を塗布することがおこなわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、刷毛や綿棒を用いて撥油撥水剤を塗布する場合においては、作業者による塗布量のばらつきが大きく、また撥油剤は一般的に撥油成分の微粒子を揮発性の溶剤内に分散させた状態であるために、常温乾燥タイプの撥油剤では溶剤が蒸発しやすく、また撥油剤の容器の蓋を開けたまま作業をおこなうと有効成分の濃度が逐次変化してしまい、撥油性に悪影響を及ぼしやすい。
【0006】
また撥油剤を、より十分に被覆させる必要がある場合においては、ディッピングやスプレーなどの方法を用いる場合もあるが、これらの方法による場合においては、より複雑で入り組んだ形状・構造の部品類には適さず、しかも高価な撥油剤の使用量が増えて著しく不経済である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明にあっては、小型モータのモータ軸や、或は小型モータ周りの複雑で入り組んだ形状・構造の部品類等、とくに狭隘部における撥油剤塗布に適した撥油剤塗布具を開発し、しかも塗布に際してケース内の撥油剤を先端塗布部材に対して適量供給することができるようにしたものであって、具体的には内部に撥油剤を充填した細長筒状のケース先端に、浸出した撥油剤を塗布するための塗布部材を突出させてなる塗布具において、塗布部材が毛筆状であり、しかも該毛筆状の塗布部の少なくとも先端部が黒色若しくは濃暗色であることを特徴とした撥油剤塗布具に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記した通り、内部に撥油剤を充填した細長筒状のケース先端に、浸出した撥油剤を塗布するための塗布部材を突出させてなる塗布具であるために撥油剤の溶剤蒸発がないから撥油剤の有効成分濃度の変化がなく塗布後の撥油性が常に良好である。さらに上記の塗布具における塗布部材が毛筆状であるために、小型モータにおけるモータ軸の軸受周り、あるいはモータ付近の各種精密部品等に撥油撥水剤を塗布する場合において、ブラシや綿棒の先に撥油撥水剤を滲み込ませて塗布する在来の手段に比して、入り組んだ狭隘部への撥油剤塗布作業が容易で、しかも作業者による塗布量のばらつきが殆んどない。
【0009】
またケース先端に突出させた塗布部材が毛筆状であるところから弾力と柔軟性があり、軸受等の撥油剤被塗布部材の形状に倣って馴染みやすく作業性に優れる。さらに毛筆状の塗布部材の少なくとも先端部が黒色若しくは濃暗色であるところから、撥油剤が供給されない状態では白っぽく見える先端部が、撥油剤が供給されると、その供給量に比例して濡れて次第に著しく光沢を増して黒もしくは濃暗色の色調が、より一層濃く鮮明にあらわれる。
【0010】
すなわち塗布部材の少なくとも先端部が、ケース内より圧し出した撥油剤による湿潤の程度により著しく光沢の相違がある結果、塗布部材への付着量が常時目視しやすいために、塗布部材への撥油剤不足による撥油剤塗布不足、あるいは塗布部材に対する撥油剤の過剰な圧し出しによる高価な撥油剤の無駄なボタ落ちを無くし、経済性を良好にすることができ、さらに撥油剤の圧し出し手段がノック式であることとも相俟って、撥油剤の供給加減が容易となり、ノック不足あるいはノック過剰によって撥油剤の溢れによる液ダレを無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において本発明の具体的な内容を図1に示した実施例をもとに説明をすると、1は細長筒状のケース、3は該ケースの先端に取り付けられた弁装置、12は塗布部材、14はキャップをあらわしている。ケース1は内部を撥油剤Hを充填するための中空室1bとするとともに先端に外ネジが施され、また基部には約半周を切り欠いたノックカバー1aを有する。弁装置3は、取り付け基材10と一部に開口部3bを形成したカバー3aとからなり、内部に弁室4を形成するとともに、該弁室4内に弁体5を遊嵌させ、しかも該弁体5と一体の弁棒6を中空室1b内に突出させた状態にてケース1の先端に嵌め込まれている。
【0012】
さらに取り付け基材10の片側には保持部材11が取り付けられており、しかも該保持部材11には細長筒状のケース1の先端に、中空室1bから圧し出されて浸出した撥油剤Hを塗布するための塗布部材12が保持されている。塗布部材12は毛筆状であり、しかも該毛筆状の塗布部材12の全体、若しくは少なくとも先端部12aを黒色若しくは濃い紫・青・紺・茶などの濃暗色の素材を用い、あるいはそれらの着色を施すようにする。なお図において2は内周側に内ネジを施してケース1の先端外ネジ部に螺合させて弁装置3および塗布部材12を取り付けるための固定具をあらわしており、先端に塗布部材12を支えるホルダー部13を有している。
【0013】
一方既述した弁体5は弁室4内においてバネ9・9により弁室4における開口部3b寄りに位置したカバー3aの内側角部に圧接させるべく常時弾発付勢されており、この状態では中空室1bと弁室4とは遮断されて、中空室1b内の撥油剤が開口部3bから弁室4内に流入することはできない。さらにケース1のノックカバー1a側には内部の撥油剤Hを一定量だけ先端塗布部材12に供給するためのノック機構が施されている。
【0014】
すなわちケース1内には外周側に取り付けた適当なシール部材(図示省略)を介してケース1内を摺動移動可能なノック体8が遊嵌されており、しかもこのノック体8と既述した弁棒6との間には加圧棒7が介在され、ノック体8のノックヘッド8aを押圧することにより軸方向に移動する加圧棒7および弁棒6を介して弁体5がバネ9・9の付勢反発力に抗して弁室4内に移動する。
【0015】
これによって中空室1a内の撥油剤Hの一定量が開口部3bから弁室4内に流入し、流入した撥油剤は塗布部材12に吸引されて毛管現象により先端部12a方向へと供給され、先端部12aを常時湿潤状態に維持する。
【0016】
さらに塗布部材12の少なくとも先端部12aは黒色若しくは濃暗色であるために、撥油剤が供給されない状態では白っぽく見える先端部12aが、撥油剤が供給されると、その供給量に比例して濡れて湿潤状態となり、次第に著しく光沢を増して黒もしくは濃暗色の色調が、より一層濃く鮮明にあらわれる結果、撥油剤の供給量を確実に目視確認することができ、圧し出された撥油剤量を確認しながらノックヘッド8aの押圧回数を加減して撥油剤の供給を最適化することができることにより、撥油剤塗布具の使用に際して撥油剤の塗布不足、あるいは過剰な撥油剤供給による液ダレを無くして高価な撥油剤の無駄使いを防止し、また製品に対する過剰供給による使用不能などの障害を無くすことができる。
【0017】
またケース1内に充填される撥油剤Hとしては、一例を挙げればポーライト社製の商品名『オイルキーパーPOR−2』が用いられる。また撥油剤Hは揮発性が高いが常温では他の物質との反応性が殆どみられないので塗布部材12については毛筆状であれば、その材質については格別制限されるものではなく動物の毛や樹脂繊維などを束ねて使用することができる。またこの場合、毛筆状の塗布部材が、毛筆に似た形状と柔軟性を有する多孔質の樹脂材からなるものであってもよい。
【0018】
さらにこの塗布部材12は、繰り返し使用により、先端部12aの弾力性が次第に劣化するので、ケース1より固定具2を取り外して保持部11に保持されている塗布部材12のみを交換することもできる。 さらにキャップ14は、開口縁部をケース1の先端部分における保持部11の外周端縁に対応するショルダー部2aに着脱自在であって、キャップ14の装着時においてはショルダー部2aに密嵌して塗布部材12を完全に密閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である撥油剤塗布具の分解拡大縦断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 ケース
1a ノックカバー
1b 中空室
2 固定具
3 弁装置
3a カバー
3b 開口部
4 弁室
5 弁体
6 弁棒
7 加圧棒
8 ノック体
8a ノックヘッド
9 バネ
10 基材
11 保持部材
12 塗布部材
12a 先端部
13 ホルダー部
14 キャップ
H 撥油剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に撥油剤を充填した細長筒状のケース先端に、浸出した撥油剤を塗布するための塗布部材を突出させてなる塗布具において、塗布部材が毛筆状であり、しかも該毛筆状の塗布部の少なくとも先端部が黒色若しくは濃暗色であることを特徴とした撥油剤塗布具。
【請求項2】
ケース先端に突出させた毛筆状の塗布部材が、毛筆に似た形状と柔軟性を有する多孔質の樹脂材からなるものであるところの請求項1に記載の撥油剤塗布具。
【請求項3】
細長筒状のケースには、内部の撥油剤を一定量だけ先端塗布部材に供給するためのノック機構が施されているところの請求項1又は請求項2に記載の撥油剤塗布具。
【請求項4】
ケースの先端部には、突出した塗布部材を覆うキャップが着脱可能に取り付けられているところの請求項1〜3のいずれか1に記載の撥油剤鍍布具。

【図1】
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【公開番号】特開2007−296418(P2007−296418A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110678(P2006−110678)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(592128788)ポーライト株式会社 (16)
【Fターム(参考)】