説明

播種方法および播種装置

【課題】灌水量の増減に伴う薬剤濃度の変更による作業性の低下、時間当たりの播種能力の変更範囲が狭いこと。
【解決手段】移送台1により移送中の育苗容器Aの上方から床土供給装置3により床土を供給し、その後、種子供給装置75により種子を供給し、その後、覆土供給装置115により覆土を供給し、床土供給後覆土供給する前に、上方から、前後一対の灌水部45により灌水し、前後の灌水部45のいずれか一方の前側灌水装置45Aでは真水灌水とし、いずれか他方の後側薬剤散布用灌水装置45Bでは吸引式の薬剤散布するようにした播種方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗容器に供給した床土に灌水する灌水方法、および、その装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移送台により移送中の育苗容器の上方から床土供給装置により床土を供給し、その後、種子供給装置により種子を供給し、その後、覆土供給装置により覆土を供給し、床土供給後覆土供給する前に、上方から、灌水部により灌水および薬剤散布する播種方法の構成は、公知である(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−116362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、一カ所の灌水部により薬剤を吸引して灌水するため、床土の性状等に起因して、灌水の水量を増減させると、薬剤吸引量の増加割合は、水量の増加割合に対して比例しないので、一々、吸引する薬剤の濃度を変更しなければならず、設定が非常に面倒あるという課題がある。
即ち、例えば、育苗容器一箱あたり2000ミリリットル灌水する場合、仮に、吸引される薬剤が500ミリリットルとすると、水は残りの1500ミリリットルとなるが、これを、単に、2倍に増加させて育苗容器一箱あたり4000ミリリットル灌水するとすると、薬剤吸引量が2倍の1000ミリリットルとはならず、薬剤濃度が変化してしまう。
そのため、育苗容器一箱あたりの灌水量を増減させたい場合でも、一々、吸引する薬剤の濃度を変更しなければならず、設定が非常に面倒になるのである。
また、前記公知例では、薬剤吸引部を有する一カ所の灌水部により灌水するため、播種数量が少なく灌水の水量が少くないときには、隣接するノズル孔からの水が合わさって流下して均等に撒水できず、また、薬剤吸引部があるため灌水水量の増加には限界があり、灌水量の変更しうる範囲には限界があるという課題がある。
そのため、時間当たりの播種しうる育苗容器の数を増減変更可能に構成した播種装置では、最低可能箱数と最高可能箱数との差を大きくできないという課題がある。
本願は、前後一対の灌水部を設け、一方を薬剤散布用灌水装置専用とすることで、簡単に灌水できるようにすると共に、灌水量の変更しうる範囲を広くできるように工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、移送台1により移送中の育苗容器Aの上方から床土供給装置3により床土を供給し、その後、種子供給装置75により種子を供給し、その後、覆土供給装置115により覆土を供給し、床土供給後覆土供給する前に、上方から、前後一対の灌水部45により灌水し、前後の灌水部45のいずれか一方の前側灌水装置45Aでは真水灌水とし、いずれか他方の後側薬剤散布用灌水装置45Bでは吸引式の薬剤散布するようにした播種方法としたものである。
本発明は、育苗容器A一箱あたりの灌水量を増減する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bによる薬剤混合液の散布量は常時一定量とし、前側灌水装置45Aの灌水量を増減させるようにした播種方法としたものである。
本発明は、前記移送台1および床土供給装置3ならびに種子供給装置75等は、作業能力変更自在に構成して、時間当たりの播種しうる育苗容器Aの数を増減変更可能に構成し、育苗容器A一箱あたりの前側灌水装置45Aの灌水量を、時間当たり育苗容器Aの移送数に対応させて増減させると共に、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の濃度を、後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量の増減に伴う薬剤吸引量の変化に対応させて、予め薬剤吸引量に応じて、時間当たりL箱移送しているときにはX%の濃度に設定し、時間当たりM箱移送しているときにはY%の濃度に補正設定し、時間当たりN…箱移送しているときにはZ…%の濃度に、設定する播種方法としたものである。
本発明は、床土を供給する床土供給装置3と、種子を供給する種子供給装置75と、覆土を供給する覆土供給装置115を設け、前記移送台1の所定位置には、前後一対の灌水部45により構成した灌水装置Kを設け、前後の灌水部45のいずれか一方は薬剤吸引部56Aを有する吸引式の薬剤散布用灌水装置45Bとし、いずれか他方は前記薬剤散布薬剤吸引部56Aを有しない灌水装置45Aによる真水灌水とするように構成した播種装置としたものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、前側灌水装置45Aの水量だけを増減すればよく、簡単に灌水量を増減させることができ、操作性および作業性を向上させることができる。
請求項2の発明では、灌水装置45Aの水量だけを増減すればよく、薬剤散布用灌水装置45Bによる薬剤散布は同じ希釈濃度の薬剤を一定量散布すればよいので、操作性および作業性を頗る向上させることができる。
請求項3の発明では、薬剤は後側薬剤散布用灌水装置45Bで専用に散布するため、前側灌水装置45Aの灌水量および後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤散布量の変更しうる範囲の幅を大きくでき、その結果、時間当たりの播種しうる育苗容器の数の範囲を広くすることができ、作業効率を向上させることができ、また、薬剤濃度設定も、予め、専用の薬剤散布用灌水装置45Bの水量から吸引量を割り出せばよいので、容易にできる。
請求項4の発明では、二カ所の灌水部45により灌水し、薬剤は後側薬剤散布用灌水装置45Bで専用に散布するため、灌水量(薬剤量)の変更しうる範囲の幅を大きくでき、その結果、時間当たりの播種しうる育苗容器の数の範囲を広くすることができ、作業効率を向上させることができ、また、薬剤濃度設定も、予め、専用の後側薬剤散布用灌水装置45Bの水量から吸引量を割り出せばよいので、容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の方法を実施する播種装置Hの例を図面により説明すると、1は播種装置Hの育苗容器Aを移送する移送台であり、図示は省略するが、育苗容器Aを移送する移送ロール等の移送手段を設ける。3は移送台1に設けた床土供給装置であり、床土供給装置3は公知の構成であり、上部に床土供給ホッパー4を設け、床土供給ホッパー4の下方に床土繰出ベルト(図示省略)を設けて構成する。
床土供給装置3の移送方向下手側の前記移送台1には、床土均平装置6を設ける。床土均平装置6は前後一対の前側回転ブラシ7と後側回転ブラシ8とを設けて構成する。前後側回転ブラシ7、8は前記育苗容器Aに余分に供給した床土を所定量掻取りながら均平するものである。
前記前側(上手側)回転ブラシ7は、その前側ブラシ回転軸12の両端を左右一対の前側アーム13に軸装し、前側アーム13の基部は前側基部回転軸14により移送台1に回動自在に取付ける。同様に、後側(下手側)回転ブラシ8は、その後側ブラシ回転軸15の両端を左右一対の後側アーム16に軸装し、後側アーム16の基部は後側基部回転軸17により移送台1に回動自在に取付ける。
【0007】
前側回転ブラシ7および後側回転ブラシ8には、高さ調節装置20を設ける。
移送台1に設けた左右のフレーム側板21の挿通孔23に前記前側ブラシ回転軸12および後側ブラシ回転軸15を挿通する。フレーム側板21より側方に突出する前側回転ブラシ7の前側ブラシ回転軸12の両端には牽引支持部材24の下部を夫々取付け、各牽引支持部材24の上部には調節螺子軸25の下部を螺合させ、調節螺子軸25を回転させると、牽引支持部材24は調節螺子軸25に対して上下動する。
左右の調節螺子軸25の上部は左右方向の連結軸27に回転自在に取付け、調節螺子軸25の上端に設けたダイヤル28を持ち上げると、連結軸が上動し、前記フレーム側板21の上縁に設けた複数ある切替用係合段部32のうち何れかに選択係合させる。
【0008】
しかして、移送台1の所定位置には、灌水装置Kを設ける。灌水装置Kは、前後一対の灌水部45により構成し、前後の灌水部45のいずれか一方の灌水部45は真水灌水とし、いずれか他方の灌水部45は薬剤散布するように構成する。
この場合、灌水部45の前後は後述する種子供給装置75を基準に、種子を供給する前に行う灌水する前灌水と、種子の供給後に行う灌水を後灌水と当業者は呼んでおり、実施例では、前側回転ブラシ7の下手側の灌水部45を前側灌水装置45Aとし、種子供給装置75の下手側の灌水部45は後側薬剤散布用灌水装置45Bとしている。
前側灌水装置45Aと後側薬剤散布用灌水装置45Bの構成は任意であるが、前側灌水装置45Aは前後一対の灌水横筒部46に所定間隔を置いてノズル孔47を形成し、各灌水横筒部46の一端は栓48により閉塞し、他端は連結パイプ49に着脱および回転自在に取付け、後側薬剤散布用灌水装置45Bは一本の灌水横筒部46に所定間隔を置いてノズル孔47を形成し、灌水横筒部46の一端は栓48により閉塞し、他端は連結パイプ49に着脱および回転自在に取付けている。
【0009】
前側灌水装置45Aと後側薬剤散布用灌水装置45Bの夫々の連結パイプ49は、共に、前後中央位置に立ち上がり筒部50を連結し、立ち上がり筒部50には上側横筒部51の一端を接続する。上側横筒部51には、水量計(圧力計)52と調節バルブ53と自動開閉バルブ54とリリーフ弁55とホース接続部56を設けている。調節バルブ53はダイヤル53Aにより開閉して通水量を増減させる。自動開閉バルブ54は、所定の場合自動的にバルブ(図示省略)を閉鎖して灌水を停止させる。また、リリーフ弁55は通水圧力が所定以上になると自動的に通水圧力を減少させる。
ホース接続部56には水源(図示省略)に接続したホース63を接続する。
また、後側薬剤散布用灌水装置45Bの上側横筒部51には薬剤を入れたタンク63Aに接続したホース63Bを接続する薬剤吸引部56Aを設ける。薬剤吸引部56Aは、公知構成のベルヌーイの原理による吸引方式の構成であり、ノズル56Bと大径の負圧室56Cと小径部56Dを有して構成している。
【0010】
なお、前側灌水装置45Aでは薬剤を吸引させる必要がなく、かつ、通水量を多くするために、薬剤吸引部56Aを省略する(図3)。
前後の灌水部45は、灌水横筒部46と連結パイプ49と立ち上がり筒部50と上側横筒部51により灌水パイプ57を構成し、灌水パイプ57は前記移送台1に設けた灌水フレーム58に着脱自在に取付けて構成する。灌水フレーム58は、左右一対の板部材により形成した中央フレーム59の上面前後中間位置に、灌水パイプ57の上側横筒部51を支持する中央支持部60を設ける。中央フレーム59の前後両側にはアーム部61を設け、アーム部61には灌水パイプ57の灌水横筒部46を支持する灌水筒支持部62を設ける。
灌水パイプ57は、灌水パイプ57の各部を灌水フレーム58の中央支持部60と灌水筒支持部62に載置し、この灌水パイプ57の上方にカバー65を載置して、カバー65を灌水フレーム58に止着具66により固定して取付ける。
【0011】
したがって、灌水パイプ57を灌水フレーム58に載せてカバー65により押えるだけであるから、灌水パイプ57は灌水フレーム58とカバー65により上下に挟持されることになり、簡単な支持構成でありながら着脱が容易になる。
しかして、灌水装置Kの床土の性状等の起因する灌水量の変更は、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量を予め一定量とし、前側灌水装置45Aの灌水量を増減させて、所定の灌水量の水を灌水するように設定する。
即ち、前側灌水装置45Aの灌水量は、バルブの開閉により略比例的に変化するが、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤吸引量は安定して比例変化しないので、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は、予め一定量とし、前側灌水装置45Aの灌水量を増減させて対応する。
【0012】
例えば、育苗容器A一箱あたり2000ミリリットル灌水する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は常時500ミリリットルの一定量の設定とし、前側灌水装置45Aの灌水量を1500ミリリットルとする。
次に、育苗容器A一箱あたり3000ミリリットル灌水する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は常時500ミリリットルの一定量の設定とし変更せず、前側灌水装置45Aの灌水量を1000ミリリットル増加させて2500ミリリットルとする。
そのため、薬剤混合液の希釈倍率を、灌水量の増減の度に変更しないで済み、灌水および薬剤散布の設定を容易にする。
次に、前記播種装置Hは、例えば、時間当たり300〜900箱の育苗容器Aに播種しうるように構成しているため、前記移送台1および床土供給装置3ならびに種子供給装置75等は、インバータモータ(図示省略)により、回転数を変更して駆動させたり、あるいは、定格回転モータ(図示省略)の回転を伝達する歯車を交換してギヤ比を変更したりする等の任意の手段により、作業速度や供給量の変更が可能となるように構成しており、同様に、灌水部45も、播種する育苗容器Aの数により灌水量を変更する。
【0013】
この場合、灌水量の変更は、予め基準灌水量を設定しうえで、基準灌水量に対して前側灌水装置45Aの灌水量および後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量を増減させるように設定すると共に、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の濃度を変更して実質薬剤散布量に補正するように設定する構成にする。
即ち、前側灌水装置45Aの灌水量は、バルブの開閉により略比例的に変化するが、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤吸引量は安定して比例変化しないので、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は、散布用の通水量に対する所定濃度に変更して対応する。
例えば、育苗容器A一箱あたり2000ミリリットル灌水する場合、時間当たり300箱移送しているときには、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は500ミリリットルの一定量とし、前側灌水装置45Aの灌水量を1500ミリリットルと設定し、これを基準に、時間当たり600箱のときには、移送台1による育苗容器Aの移送速度は培速くなるので、育苗容器A一箱あたり500ミリリットルの薬剤混合液が入るように、後側薬剤散布用灌水装置45Bのノズル孔47からの薬剤混合液の散布量を1000ミリリットルとし、同様に、前側灌水装置45Aの灌水量を育苗容器A一箱あたり3000ミリリットルとすればよい。
【0014】
同様に、時間当たり900箱のときには、移送台1による育苗容器Aの移送速度は3培速くなるので、後側薬剤散布用灌水装置45Bのノズル孔47からの薬剤混合液の散布量は1500ミリリットルとし、前側灌水装置45Aのノズル孔47からの灌水量を4500ミリリットルとすればよい。
そして、後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量を増減させる場合、水の流量に対して薬剤吸引量は安定して比例変化しないので、予め薬剤吸引量に応じて吸引薬剤の濃度を設定し、例えば、時間当たりL箱(300箱)移送しているときにはX%の濃度に設定し、時間当たりM箱(600箱)移送しているときにはY%の濃度に補正設定し、時間当たりN…箱(900箱)移送しているときにはZ…%の濃度に夫々予め補正設定する。
そのため、薬剤混合液の濃度を変更するにしても、予め、設定濃度の薬剤を混合するだけであるので、容易に薬剤を用意できる。
【0015】
また、後側薬剤散布用灌水装置45Bは、薬剤混合液を専用に散布し、それも、灌水に対して一定量に設定して散布するので、単独の薬剤吸引部56Aにより吸引散布させられる。
即ち、従来のように、単独の灌水部45により薬剤散布する場合には、灌水量の増加と共に、吸引量を増加させ、仮に、1500ミリリットルから6000ミリリットルまで水と薬剤を薬剤吸引部56Aを通過させることになり、到底一種類の薬剤吸引部56Aでは限界を越えることになり、その結果、時間当たりの播種可能箱数の範囲も狭くなるが、本願の方法によれば、後側薬剤散布用灌水装置45Bでは薬剤混合液のみを散布すればよく、散布量は例えば500ミリリットルから1500ミリリットルの範囲でよいので、充分、単独の薬剤吸引部56Aで対応可能になる。
【0016】
しかして、灌水フレーム58は、左右一対の板部材により形成した中央フレーム59の上面前後中間位置に、灌水パイプ57の上側横筒部51を支持する中央支持部60を設ける。中央フレーム59の前後両側にはアーム部61を設け、アーム部61には灌水パイプ57の灌水横筒部46を支持する灌水筒支持部62を設ける。
灌水パイプ57は、灌水パイプ57の各部を灌水フレーム58の中央支持部60と灌水筒支持部62に載置し、この灌水パイプ57の上方にカバー65を載置して、カバー65を灌水フレーム58に止着具66により固定して取付ける。
したがって、灌水パイプ57を灌水フレーム58に載せてカバー65により押えるだけであるから、灌水パイプ57は灌水フレーム58とカバー65により上下に挟持されることになり、簡単な支持構成でありながら着脱が容易になる。
それゆえ、カバー65は、灌水パイプ57を上方から押えらることができる形状であればよく、上側横筒部51に当接する上部天板67と上部天板67に連設する灌水横筒部46の上面に当接するノズル当接部68と、前記水量計52等を回避する開口窓部69を有して構成していればよい。開口窓部69は水量計52を避けて上方に抜くように外せる大きさに形成する。70は灌水フレーム58に設けた止着具66が螺合するナットである。
72は育苗容器Aの前壁33の隅の床土を均平する前壁隅取り均平装置である。
【0017】
しかして、灌水装置45Aの下手側には、種子供給装置75を設ける。種子供給装置75は、前記移送台1の上方に上下自在に設けた側板77に、種子供給ホッパー78を着脱自在に取付ける。図示は省略するが、種子供給ホッパー78の上方に補助ホッパーを設けることもある。
種子供給ホッパー78の下部は漏斗状に後側誘導板79と前側誘導板80を設ける。後側誘導板79の下端は、前側誘導板80に対して所定間隔を置いて設けてホッパー供給口81を形成する。前記後側誘導板79の下面には前記ホッパー供給口81の開口量を調節する供給量調節板82を移動自在に取付ける。
前側誘導板80の先端近傍には、種子を繰出す軸心が左右方向の大径の横軸繰出ロール84を設ける。横軸繰出ロール84の外周面には、母線方向(左右方向)に平行な横条溝形状の繰出凹部85を所望の間隔をおいて全周に形成する。繰出凹部85は円周方向に種子が横向き1列または2列程度に嵌合する幅に形成される。横軸繰出ロール84の外周面には母線方向(左右方向)に一粒の種子の横向きの幅より短かい間隔をおいてスリット86を全周に設ける。スリット86の深さは繰出凹部85と略同じか若干深く形成し、各スリット86には掻出用ナイフ87を嵌合させる。
【0018】
前記横軸繰出ロール84の上方位置(正確には横軸繰出ロール84の真上よりも稍後側)には回転均平ブラシ88を設け、回転均平ブラシ88は任意の手段により駆動回転させて繰出凹部85に嵌合しないで横軸繰出ロール84と共回りする過剰種子を、前記供給口ホッパー供給口81側の種子溜り部89へ掃き戻す。
前記種子溜り部89には、開口部90を形成し、開口部90にはシャッタ91を設ける。シャッタ91は、横軸繰出ロール84に対して遠近調節自在で且つ着脱自在に取付ノブ92により前側誘導板80の下面に取付ける。
開口部90の下方には排出誘導体93を設ける。排出誘導体93は、排出誘導体93は、種子溜り部89に残留した残留種子を排出するときに、種子供給装置75の周囲に飛散するのを防止するために設けたものであり、板部材により形成し、種子供給装置75の左右の側板77の間の全幅一杯に取付ける。排出誘導体93は、上部には上方に至るに従い前側となるように前上りの上側傾斜部94を設け、上側傾斜部94の下部には横軸繰出ロール84の外周面に対して所定の間隔おいて位置する縦板部95を形成し、縦板部95と横軸繰出ロール84の外周面の間に誘導路96を形成する。縦板部95の下部は後下がりの下側傾斜部97に形成し、誘導路96から種子供給装置75の下方の移送台1に設けた種子回収容器98(箱)に種子の落下を誘導する。
【0019】
99は、前記横軸繰出ロール84の後面に設けられ、繰出凹部85に嵌合した種子を上方位置から下方位置まで傷めないように誘導する種子誘導カバーである。
しかして、種子供給装置75の下手側には種子落とし回転ブラシ105を設ける。種子落とし回転ブラシ105の下手側には覆土供給装置115を設ける。覆土供給装置115は公知の構成であり、上部に供給ホッパー116を設け、供給ホッパー116の下方に覆土繰出ベルト(図示省略)を設けて構成する。覆土供給装置115の下手側には覆土均平ブラシ118を設ける。
【0020】
(実施例の作用)
床土を供給した育苗容器Aを移送台1に供給すると、移送ロール2により移送されて、前側回転ブラシ7の下方を通過するとき、所定量掻き取られる。
次に、前側灌水装置45Aの下方に育苗容器Aが至ると、灌水され、種子供給装置75の下方に育苗容器Aが至ると、種子の供給を受け、後側薬剤散布用灌水装置45Bにより薬剤散布され、種子落とし回転ブラシ105により育苗容器Aの周壁上面の種子を落とし、覆土供給装置115の下方に育苗容器Aが至ると、覆土の供給を受け、播種作業が終了する。
この場合、移送台1の所定位置に設けた灌水装置Kは、前後一対の灌水部45により構成し、前後の灌水部45のいずれか一方は前側灌水装置45Aによる真水灌水とし、いずれか他方は後側薬剤散布用灌水装置45Bによる薬剤散布するように構成しているから、いずれか一方の前側灌水装置45Aで真水を灌水し、いずれか他方の後側薬剤散布用灌水装置45Bで薬剤散布することができ、灌水量の設定が容易になる。
【0021】
即ち、単独の灌水部45により灌水量を変更するために、単に開閉バルブを開閉させたのでは、薬剤吸引部56Aが通水させる水量と薬剤吸引量が比例して増加しないので、いちいち、薬剤濃度を設定しなければならず、非常に面倒であったが、本願では、灌水装置Kを、前後一対の灌水部45により構成し、通常の灌水量の変更する場合では、後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量は常時一定とし、前側灌水装置45Aの灌水量を増減させるだけで対応することができる。
したがって、排水性・保水性等の床土の性状や、育苗容器Aの床土の量等により起因する灌水量の設定は、単純に灌水量の設定だけで済み、頗る容易になる。
例えば、仮に、育苗容器A一箱あたり2000ミリリットル灌水する場合を基準として設定する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は常時500ミリリットルの一定量の設定とすると、前側灌水装置45Aの灌水量を1500ミリリットルとし、次に、育苗容器A一箱あたり3000ミリリットル灌水する場合では、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は常時500ミリリットルと変更せず、前側灌水装置45Aの灌水量を2500ミリリットルと真水1000ミリリットル増加させ、反対に、育苗容器A一箱あたり1500ミリリットル灌水する場合では、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は常時500ミリリットルで変更せず、前側灌水装置45Aの灌水量を1000ミリリットルとして真水を500ミリリットル減少させればよい。
【0022】
そのため、薬剤混合液の希釈倍率を、灌水量の増減の度に変更しないで済み、灌水および薬剤散布の設定を容易にする。
しかして、播種装置Hは、時間当たり例えば300〜900箱の育苗容器Aに播種しうるように構成しているため、前記移送台1および床土供給装置3ならびに種子供給装置75等は、インバータモータ(図示省略)によって回転数を変更して駆動させたり、あるいは、定格回転モータ(図示省略)の回転を伝達する歯車を交換してギヤ比を変更したりする等の任意の手段により、作業速度や供給量の変更が可能となるように構成しており、同様に、灌水部45も、播種する育苗容器Aの数により灌水量を変更するが、このときは、床土の性状や散布する薬剤の混合割合を予め前記のように設定したうえで、前側灌水装置45Aおよび後側薬剤散布用灌水装置45Bの灌水量を増減させて、所定の灌水量の水を灌水するように設定すると共に、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の濃度を変更して実質薬剤散布量を設定する。
【0023】
例えば、仮に、時間当たり300箱移送しているときに、育苗容器A一箱あたり2000ミリリットル灌水する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の散布量は500ミリリットルとし、前側灌水装置45Aの灌水量を1500ミリリットルと設定し、これを基準に、時間当たり600箱のときには、移送台1による育苗容器Aの移送速度は2培速くなるので、育苗容器A一箱あたり500ミリリットルの薬剤混合液を入れるために、後側薬剤散布用灌水装置45Bのノズル孔47からの薬剤混合液の散布量を500ミリリットル増加させて1000ミリリットル散布し、同様に、育苗容器A一箱あたり灌水量が1500ミリリットル入るように、ノズル孔47からの灌水量を2倍の3000ミリリットルとすればよい。
【0024】
同様に、時間当たり900箱のときには、移送台1による育苗容器Aの移送速度は3培速くなるので、後側薬剤散布用灌水装置45Bのノズル孔47からの薬剤混合液の散布量は基準の3倍の1500ミリリットルとし、前側灌水装置45Aのノズル孔47からの灌水量を基準の3倍の4500ミリリットルとすればよい。
そして、後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量を増減させる場合、水の流量に対して薬剤吸引量は安定して比例変化しないので、予め薬剤吸引量に応じて吸引薬剤の濃度を設定し、例えば、薬剤混合液のノズル孔47からの散布量が500ミリリットルの場合はX%濃度とし、薬剤混合液のノズル孔47の散布量が1000ミリリットルの場合はY%濃度とし、薬剤混合液のノズル孔47の散布量が1500ミリリットルの場合はZ%濃度とすればよい。
【0025】
このように、灌水するのに、単独の灌水部45による薬剤散布では、1500ミリリットルから6000ミリリットルまで水と薬剤を、ノズル56Bと小径部56Dを有する薬剤吸引部56Aを通過させなければならず、通水量の増加させるには限界があり、その結果、時間当たりの播種可能箱数の範囲も狭くなるが、本願の方法によれば、薬剤混合液の散布量は、前記したように、例えば500ミリリットルから1500ミリリットルの範囲でよいので、充分、単独の薬剤吸引部56Aで対応可能になり、しかも、前側灌水装置45Aでは薬剤吸引部56Aを省略できるので、通水量の増加は可能となって、時間当たりの播種可能箱数の範囲も広くできる。
【0026】
しかして、灌水部45による灌水は、種子を供給する前に灌水する前灌水と、種子を供給後に行う後灌水とがあり、作業者の経験等により種々選択して行う。
灌水部45は、灌水パイプ57を、その灌水横筒部46と上側横筒部51とを灌水フレーム58の中央支持部60と灌水筒支持部62に載置し、灌水パイプ57の上方からカバー65を載置して、カバー65を灌水フレーム58に止着具66により固定して取付けるから、灌水パイプ57の着脱は頗る容易にでき、前灌水と後灌水の作業を容易に選択できる。
また、灌水パイプ57は灌水フレーム58に載せてカバー65により押えるだけであるから、灌水パイプ57は灌水フレーム58とカバー65により上下に挟持されることになり、簡単な支持構成でありながら着脱が容易になる。
また、種子供給装置75の手前の前灌水を選択したときには、前側灌水装置45Aの直ぐ下手側の移送台1に後側薬剤散布用灌水装置45Bを続けて設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】播種装置全体側面図。
【図2】土均平装置の側面図。
【図3】灌水装置(前側灌水装置)の斜視図。
【図4】同側面図。
【図5】灌水装置(後側灌水装置)の斜視図。
【図6】吸引部の概略図。
【図7】吸引部の断面図。
【図8】種子供給装置の側面図。
【符号の説明】
【0028】
1…移送台、3…床土供給装置、4…床土供給ホッパー、6…土均平装置、8…後側回転ブラシ、7…前側回転ブラシ、15…後側ブラシ回転軸、16…後側アーム、17…後側基部回転軸、12…前側ブラシ回転軸、13…前側アーム、14…前側基部回転軸、20…高さ調節装置、21…フレーム側板、22…カバー、24…牽引支持部材、25…調節螺子軸、26…螺合用ナット、27…連結軸、28…ダイヤル、29…係合用ナット、30…ロック用ナット、31…バネ、33…前壁、35…連動杆、36…取付軸、37…長孔、38…螺子孔、39…ガイド、40…ブラシ歯車、41…ブラシ伝達用歯車、45…灌水部、45A…前側灌水装置、45B…後側薬剤散布用灌水装置、46…灌水横筒部、47…ノズル孔、48…栓、49…連結パイプ、50…立ち上がり筒部、51…上側横筒部、52…水量計(圧力計)、53…調節バルブ、54…自動開閉バルブ、55…リリーフ弁、56…ホース接続部、56A…薬剤吸引部、56B…ノズル、56C…負圧室、56D…小径部、57…灌水パイプ、58…灌水フレーム、59…中央フレーム、60…中央支持部、61…アーム部、62…灌水筒支持部、63…ホース、63A…タンク、63B…ホース、65…カバー、66…止着具、67…上部天板、68…ノズル当接部、69…開口窓部、70…ナット、72…前壁隅取り均平装置、75…種子供給装置、77…側板、78…種子供給ホッパー、79…後側誘導板、80…前側誘導板、81…ホッパー供給口、82…供給量調節板、83…調節ダイヤル、84…横軸繰出ロール、85…繰出凹部、86…スリット、87…掻出用ナイフ、89…種子溜り部、90…開口部、91…シャッタ、92…取付ノブ、93…排出誘導体、94…上側傾斜部、95…縦板部、96…誘導路、98…種子回収容器、99…種子誘導カバー、115…覆土供給装置、116…供給ホッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送台1により移送中の育苗容器Aの上方から床土供給装置3により床土を供給し、その後、種子供給装置75により種子を供給し、その後、覆土供給装置115により覆土を供給し、床土供給後覆土供給する前に、上方から、前後一対の灌水部45により灌水し、前後の灌水部45のいずれか一方の前側灌水装置45Aでは真水灌水とし、いずれか他方の後側薬剤散布用灌水装置45Bでは吸引式の薬剤散布するようにした播種方法。
【請求項2】
請求項1において、育苗容器A一箱あたりの灌水量を増減する場合、後側薬剤散布用灌水装置45Bによる薬剤混合液の散布量は常時一定量とし、前側灌水装置45Aの灌水量を増減させるようにした播種方法。
【請求項3】
請求項1において、前記移送台1および床土供給装置3ならびに種子供給装置75等は、作業能力変更自在に構成して、時間当たりの播種しうる育苗容器Aの数を増減変更可能に構成し、育苗容器A一箱あたりの前側灌水装置45Aの灌水量を、時間当たり育苗容器Aの移送数に対応させて増減させると共に、後側薬剤散布用灌水装置45Bの薬剤混合液の濃度を、後側薬剤散布用灌水装置45Bの散布量の増減に伴う薬剤吸引量の変化に対応させて、予め薬剤吸引量に応じて、時間当たりL箱移送しているときにはX%の濃度に設定し、時間当たりM箱移送しているときにはY%の濃度に補正設定し、時間当たりN…箱移送しているときにはZ…%の濃度に、設定する播種方法。
【請求項4】
育苗容器Aを移送する移送台1の上方に、
床土を供給する床土供給装置3と、種子を供給する種子供給装置75と、覆土を供給する覆土供給装置115を設け、前記移送台1の所定位置には、前後一対の灌水部45により構成した灌水装置Kを設け、前後の灌水部45のいずれか一方は薬剤吸引部56Aを有する吸引式の薬剤散布用灌水装置45Bとし、いずれか他方は前記薬剤散布薬剤吸引部56Aを有しない灌水装置45Aによる真水灌水とするように構成した播種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−95250(P2009−95250A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267299(P2007−267299)
【出願日】平成19年10月14日(2007.10.14)
【出願人】(000132219)株式会社スズテック (25)
【Fターム(参考)】