説明

播種方法及び播種装置

【課題】本発明の解決すべき課題は発芽、発根の効率がよく、しかも収穫物に異物が付着し難い播種方法を提供することにある。
【解決手段】
播種領域の土壌表面に通根性シート14を被覆し、その上に播種する播種方法であって、
前記シート14の一部をV字状に折り込むとともに、該部分を土壌中に埋め込み、該V字状折込部16に種子を挿入することを特徴とする播種方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は播種方法及び播種装置、特に播種領域にシートを被覆しつつその上に播種する方法及び装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より播種領域にシートを被覆し、該シートに設けられた開口に播種することにより、水分の蒸散を適度に抑制し、且つ雑草ないし害虫の被害を軽減する播種、生育方法が周知である。
しかしながら、前述したようにシートに存在する開口からは雑草が成育し、また害虫が侵入する場合もあり、シートの効果は限定的であった。
さらに、ケール、ほうれん草などの葉物野菜はその収穫時に土壌或いは雑草が混入すると著しく商品価値を下げる。
【0003】
この点について、シート自体をメッシュ状のものとし、その上に播種することでシートを介して根を成長させる手法も開発されている。
ところがこの手法では種子がシート上に載置されているのみであるため鳥害は避けえず、また種子が乾燥しやすいため発根するまでは極めて頻繁に散水を行う必要があった。
【特許文献1】特開2002−305914
【特許文献2】特開平9−293449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は発芽、発根の効率がよく、しかも収穫物に異物が付着し難い播種方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明にかかる播種方法は、播種領域の土壌表面に通根性シートを被覆し、その上に播種するものであって、
前記シートの一部をV字状に折り込むとともに、該部分を土壌中に埋め込み、該V字状折込部に種子を挿入することを特徴とする。
【0006】
また、前記方法において、
畝幅より広い通根性シートを畝上に配置するシート配置工程と、
前記畝上のシートに対し、畝の長手方向に平行に板状部材を押し込み、前記シートをV字状に折り込みつつ土壌中に埋め込むシート埋込工程と、
前記折込部口部に種子を播種する播種工程と、
前記折込部口部の種子を板状部材により折込部底部に押し込む押込工程と、
を備えることが好適である。
また、前記方法において、押込工程後に折込部口部両側をローラにより押圧しV字状口部幅を減少させることが好適である。
【0007】
また、本発明にかかる播種装置は、
畝幅より広い通根性シートを畝上に配置するシート配置手段と、
畝の長手方向に平行に配置され、前記シートをV字状に折り込みつつ土壌中に埋め込む、回動可能な折込用円板ブレードと、
前記折込用円板ブレードの後段に配置され、折込部口部に種子を播種する播種手段と、
前記折込部口部の種子を板状部材により折込部底部に押し込む、回動可能な押込用円板ブレードと押込工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
なお、本発明において、通根性シートは根の成長を阻害することのない不織布ないし編み目状の樹脂或いは繊維製シートであることが好ましく、メッシュである場合には孔径が0.3〜1.0mmであり、土壌中に残存する雑草の種子からの発芽、ないし害虫を通過させないことがより好ましい。
また、本発明は特に葉物野菜に好適に適用され、ケール、ほうれん草、小松菜、チンゲン菜、ベビーリーフなどの畑に適用することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明にかかる播種方法によれば、シートを介して土中に発根するため、シートに播種用の開口は存在せず、雑草或いは害虫の被害を著しく低減することができる。しかも種子はシートのV字状折込部の底部に位置し、これは土壌中であるため湿度が適度に保たれ発芽、発根に悪影響を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる播種方法により形成された畝を示している。
同図において、畑10には数条の畝12が形成されており、該畝12は通根性シート14で被覆されている。そして、シート14は、一畝3条となるように、その長手方向へV字状に土壌中に食い込むように折り込まれている。前記V字状折込部16には図示を省略した種子が挿入されている。
【0011】
図2は前記図1に示した畑10への播種工程を示している。
まず、図2(A)に示すように畝12上に、該畝12よりも大きい幅を有するシート14を配置する。シート幅は、後述する折込量及び折込本数を考慮して決定される。
次に図2(B)に示すように折込形成ローラ20によりシート14をV字状に折り込みつつ畝12中へ埋め込む。
そして、図2(C)に示すように種子22を折込部16口部に配置し、同図(D)に示すように種子押込ローラ24により種子22をV字状折込部16の底部に押し込む。
【0012】
この際、種子の埋込深さは種子に応じて適宜調整されるが、通常は5〜50mm程度である。
さらに、種子22が押し込まれたV字状折込部16の口部が開放したままであると鳥害或いは乾燥により種子22の発芽率が下がる可能性があるため、閉口ローラ26により口部周囲を押圧し、開口幅を縮小させることが好適である。
以上のようにして種子22は一般の畑等に播種されたときと同様、土壌中に埋め込まれ、好適な温度、湿度環境下で発芽、生育が行われる。
【0013】
そして、採取時には、図2(F)に示されるように、V字状折込部16の下で根切り(根切り線28)を行い、シート12上の野菜30を採取する。
この結果、野菜30にはほとんど土壌が付着せずに収穫することが可能となる。
【0014】
図3は本実施形態において用いられる播種装置の概略構成を示す上面図であり、図4は同装置の側面図である。
同図に示す播種装置40は、シートガイド42と、播種フレーム44を備え、シートガイド42は畝12よりもV字状折込部16相当分幅広のシート14をガイドする。また、播種フレーム44は折込用円板ブレード20と、押込用円板ブレード24と、閉口ローラ26とをそれぞれ回転自在に保持し、また前記折込用円板ブレード20と押込用円板ブレード24の間に、それぞれの折込部16に対応して播種手段46を配置している。
【0015】
そして、播種手段46は、折込用円板ブレード20により形成されたV字状折込部16の口部に一定間隔で播種し、口部の種子を押込用円板ブレード24により折込部底部に押し込み、さらに口部を閉口ローラ26により閉じるのである。
この操作は、播種装置40を畝12の長さ方向に移動させることにより連続的に行われる。
【0016】
なお、本発明には前記実施形態に限られることなく、例えば図5に示すように畝12の長手方向に対して直交するようにV字状折込部16を設けることも可能であり、さらに斜めに折込部を設けることもできる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる播種状態の説明図である。
【図2】本発明にかかる播種方法の工程説明図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる播種装置の概略構成を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる播種装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる播種状態の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10 畑
12 畝
14 シート
16 V字状折込部
20 折込形成円板ブレード
22 種子
24 種子押込用円板ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種領域の土壌表面に通根性シートを被覆し、その上に播種する播種方法であって、
前記シートの一部をV字状に折り込むとともに、該部分を土壌中に埋め込み、該V字状折込部に種子を挿入することを特徴とする播種方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、畝幅より広い通根性シートを畝上に配置するシート配置工程と、
前記畝上のシートに対し、畝の長手方向に平行に板状部材を押し込み、前記シートをV字状に折り込みつつ土壌中に埋め込むシート埋込工程と、
前記折込部口部に種子を播種する播種工程と、
前記折込部口部の種子を板状部材により折込部底部に押し込む押込工程と、
を備えたことを特徴とする播種方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、押込工程後に折込部口部両側をローラにより押圧しV字状口部幅を減少させることを特徴とする播種方法。
【請求項4】
畝幅より広い通根性シートを畝上に配置するシート配置手段と、
畝の長手方向に平行に配置され、前記シートをV字状に折り込みつつ土壌中に埋め込む、回動可能な折込用円板ブレードと、
前記折込用円板ブレードの後段に配置され、折込部口部に種子を播種する播種手段と、
前記折込部口部の種子を板状部材により折込部底部に押し込む、回動可能な押込用円板ブレードと押込工程と、
を備えたことを特徴とする播種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−118950(P2008−118950A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308580(P2006−308580)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(506383009)株式会社 ファームジャパン (2)
【Fターム(参考)】