説明

播種方法

【課題】本発明の課題は、セルの中央に播種しなくても育苗される苗の隣接苗との間隔が保てるように播種する方法を提供することである。
【解決手段】セルトレイ7内に縦横に複数配置されたセル6に播種する際に、各セル6内において種子の発芽位置が平面視でセル6内の同じ方向に偏位した位置となるように播種する播種方法である。
こうして、例えば人手で播種する場合等、セル6の端面を基準に種子の発芽位置を決定して播種でき、播種作業の容易化が図れる。また、育苗される苗は隣接苗との間隔を保つことができると共に、種子の大小に拘わらずセル6内における種子の発芽位置を所望の位置に容易に揃えることができ、育苗後の苗の取り扱いが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル内に播種する播種方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来の接木苗製造装置は、略左右対称に配した台木搬送機構および穂木搬送機構と、機体中央の接木位置に配した接着機構と、その下方の苗配送機構を備えて構成され、台木と穂木を接ぎ木して接木苗を製造する接木ロボットである。
また、従来接木用の苗を播種して生育するために平面が矩形のセル6に充填した土中の中央部に播種している。その自動給苗装置の例を特許文献2に示す。
【特許文献1】特許第3010775号公報
【特許文献2】特開2000−262112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の自動給苗装置および接木、挿し木、鉢上げ等の各自動ロボットは、セル6のセンターに苗基準をおき、設計されていた。
【0004】
図22(a)に示すように小種の品種はセル6の中央に播種しても、種子が小さいのでセル6の中央から発芽する。しかし図22(b)に示す瓜、キュウリ、カボチャなどの大種品種の種子をセル6の中央に播種しても、セル6の端の方から発芽することが多い。無理にセル6の中央からの出芽にこだわると、播種に時間がかかり、図22(c)に示すように、大きな種子ではセル6に収らないことがある。
【0005】
このようにカボチャ等の大種種子は、セル6の面積の約半分もの大きさがあり、種子をセル6の中央に播種しても、発芽はセル6の端になっていた。そのため、接ぎ木ロボットで苗を自動で把持する際に、苗把持位置がセル6毎に異なることになり、自動化に支障を来すことがあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、セルの中央に播種しなくても育苗される苗の隣接苗との間隔が保てるように播種する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
本発明は、セルトレイ(7)内に縦横に複数配置されたセル(6)に播種する播種方法において、各セル(6)内において種子の発芽位置が平面視でセル(6)内の同じ方向に偏位した位置となるように播種する播種方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の播種方法により、例えば人手で播種する場合等、セル(6)の端面を基準に種子の発芽位置を決定して播種でき、播種作業の容易化が図れる。また、育苗される苗は隣接苗との間隔を保つことができると共に、種子の大小に拘わらずセル(6)内における種子の発芽位置を所望の位置に容易に揃えることができ、育苗後の苗の取り扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例について図面と共に説明する。
従来の自動給苗装置および接木、挿し木、鉢上げ等の各自動ロボットは、セル6のセンターに苗基準をおき、設計されていたので、図22で説明したように、大種品種の種子をセル6の中央に播種しても、セル6の端の方から発芽することが多く、無理にセル6の中央からの出芽にこだわると、播種に時間がかかり、大きな種子ではセル6に収らないことがある。
【0010】
そこで、本実施例では、セルトレイ7の縦横に整列配置される複数のセル6に播種する播種方法において、図1に示すように、各セル6内において種子の発芽位置が平面視でセル6内の同じ方向に偏位した位置に播種する。種子の出芽位置を図1に示すように特定の位置に播種すると、予め決められた位置で種子が発芽する。こうして、セル6の中央に播種しなくても育苗された苗の発芽位置は、隣接するセル6内の苗の発芽位置とほぼ同じとなり、全ての苗が互いに均等な間隔を保つことができる。
【0011】
このような播種方法により、例えば人手で播種する場合等、セル6の端面を基準に種子の発芽位置を決定して播種でき、播種作業の容易化が図れる。また、育苗される苗の発芽位置を所望の位置に容易に揃えることができるので、各セル6内の育苗後の苗を多数並べたままで、多数のセル6を配置したセルトレイ7を接木ロボットの苗の受渡し箇所に搬送した後の取り扱いが容易になる。
【0012】
このように、複数のセル6を収納したセルトレイ7を用いて育苗した苗を使う接木苗自動給苗装置において、セル6で播種する基準をセル6の中央ではなくセル6の端面にすることで、苗の発芽位置をセル6の端面に予め設定できる。こうして、接木苗自動給苗装置ではセルトレイ7からの苗の取り出し位置が容易に調整でき、葉の方向、葉の高さ制御も容易に行うことができる。
【0013】
図2及び図3は、接木苗製造装置10の要部を示す側面図と平面図である。
接木苗製造装置10は、台木と穂木を接ぎ木する接木ロボット本体10aを中心にその左側に台木取込部1、同右側に穂木取込部2が配置され、接木ロボット本体10aには、その前面の左右に台木取込部1と穂木取込部2から台木と穂木としての苗をそれぞれ受ける台木前処理部3と穂木前処理部4が配置され、中央には台木前処理部3と穂木前処理部4からそれぞれ受けた台木と穂木を接着する接着処理部5が配置され、さらにこの接着された接木苗を下方から送出する接木苗送出部8を配置している。図2及び図3の台木取込部1と穂木取込部2が前記接木苗自動給苗装置に相当する。
【0014】
このように接木苗製造装置10は台木側と穂木側で左右を略対称に構成し、また、台木取込部1および穂木取込部2の手前側にはそれぞれ操作パネルlp,2pを設けている。なお台木取込部1及び穂木取込部2は互いに左右対称で同様の構成であるので、以下は、穂木取込部2について主に図4の平面図、図5の要部拡大図により説明する。
【0015】
穂木取込部2は、接木ロボット本体10aの側方でセル6内で育成した多数の穂木苗(苗)Wを格子配列したセルトレイ7を順次搬入移送する苗搬入機構11と、この苗搬入機構11上の穂木苗W(図5)に対して進退させるエアシリンダからなる進退機構12bにより進退動作可能に穂木苗Wを穂木として個々に把持しつつ胚軸をカットして把持動作する把持ハンド12と、この把持ハンド12を苗搬入機構11の前進方向に直交する方向(以後、左右方向ということがある)に横移動可能に支持する電動スライダからなる移送機構13と、その移送行程上に配した整列ガイド14等から構成する。また、穂木取込部2と穂木前処理部4との間の穂木受渡し位置(受渡し位置)R(図5)には、穂木取込部2から移送された穂木苗Wを一時的に保持する受渡保持機構15を設ける。
【0016】
上記苗搬入機構11は、接木ロボット本体10aの側方に沿って移送動作するべルトコンベヤ等により構成され、セルトレイ7内で横一列に並んだセル6内の穂木苗Wが取り出される度にセルトレイ7の配列ピッチで順次矢印A方向(図2、図3)に移送動作することにより、穂木苗Wを移送機構13の把持ハンド12で把持できる所定位置に搬入する。
【0017】
本実施例の接木苗製造装置10の穂木取込部2における苗搬入機構(苗搬送ベルト)11の高さを調整可能にすることによって苗の切断、把持基準を変更可能にする。図6に接木苗製造装置10の穂木取込部2側から見た側面図を示すが、穂木取込部2の苗搬送ベルト11の支持フレーム30をパンタグラフ式の上下位置調整装置31を用いてハンドル31aの操作で上下動可能にしている。
【0018】
従来の接木苗製造装置10の穂木取込部2では、セル6の上面より約2mmの高さにある苗の切断位置を基準に苗の取り出しを行っていたが、苗が徒長などにより大きく(高く)なった場合、セル6の上面を基準に取り出した場合、苗の搬送時にバランスが悪く、苗が揺れて苗の方向制御、高さ制御が正しく行われない場合が多く発生していた。そこで前記図6に示すパンタグラフ式の上下位置調整装置31により穂木取込部2そのものの高さを調整することで、苗の大きさに適応して苗の切断高さなどを容易に調整できる。
【0019】
また、苗搬送ベルト11とその搬送動作のON/OFF制御を行うセル6の位置検出用の光電センサー32a,32b(図5)を別構成とし、前記光電センサー32a,32bを苗搬送ベルト11と共に前記上下動可能なフレーム30上に設け、該コンベア11をフレーム30の上下動と同期させる。
【0020】
従来技術では苗搬送ベルトの支持フレームは上下動させることは不可能であった。また光電センサーは苗搬送ベルトに取り付けられていた。このような構成では苗の接木作業を行う上で、苗の形状によって苗搬送ベルトを上下動させる必要性があり、そのため光電センサーを苗搬送ベルト上に設置していると、セルトレイ7の停止位置、苗の把持位置等にズレが生じ、苗の形状に応じて、その都度の調整が必要になっていた。
【0021】
しかし、本実施例では光電センサー32a,32bを苗搬送ベルト11と共に前記上下動可能なフレーム30上に設け、該コンベア11をフレーム30の上下動と同期させる構成を採用することで、苗の形状が変わって苗搬送ベルト11が動いても、苗に対する光電センサー32a,32bの配置位置(コンベア停止位置)は変化しないので、接木苗製造装置10の適応性が従来より向上し、光電センサー32a,32bと苗搬送ベルト11との前記上下動の調整が不要となる。
【0022】
なお、本実施例では苗を把持した把持ハンド12をベルトコンベア11の搬送方向に移動するエアシリンダ12bと該ベルトコンベア11の搬送方向に直交する方向に移動する電動スライダからなる移送装置13の動作を同期させることにより結局図5の矢印D方向に斜め移動させ、苗の把持ハンド12などへの絡みを防ぐようにする。
【0023】
従来は図5の点線A、B、Cに示すように、苗の把持、切断を行う把持ハンド12およびカッタ機構23の搬送方向を苗搬送ベルト11の搬送方向(図5の矢印A方向)又はその反対方向にエアシリンダ12bで伸縮させ、その後移送装置13により左右方向(図5の矢印B方向)に移送して、さらに受渡保持機構15の受渡し位置Rに向けて(図5の矢印C方向)苗の移送を行っていたので、苗の搬送は「コ」字状の軌跡上を移動していた。
【0024】
しかし本実施例では、苗の把持、切断を行う把持ハンド12およびカッタ機構23の搬送方向を苗搬送ベルト11の搬送方向又はその反対方向に把持ハンド12およびカッタ機構23のエアシリンダ12bで伸縮させて行うと同時に移送装置13の電動スライダを左右方向に移動させることで苗の移送方向を斜め向き(図5の矢印D方向)に移動させることができる。
【0025】
こうして把持ハンド12などへの絡み苗の発生が無くなり、同時に苗の接木の1サイクル時間が短縮できる。
なお、把持ハンド12が次の苗を把持するべく受渡保持機構15の受渡し位置R(図5)から苗搬送ベルト11上のセルトレイ7側へ移動する戻り行程では、通常の速い移送速度で把持ハンド12が横移動する。把持ハンド12の左右外側に設けられ、苗把持時に上動する持上げ具24は、移送機構13の移送速度が移送終端部で減速されるまでの間、持上げ状態に上昇したままであり、苗の移送で他の苗と干渉する等して該苗の姿勢が悪化するようなことを防止している。また、前記持上げ具24は移送機構13の移送速度が減速するのと同時にカッタ機構23より下位に下降し、苗受渡し行程において邪魔にならないようにしている。
【0026】
また、移送機構13は、苗搬送ベルト11上のセルトレイ7の一列分のセル6内の苗を接木苗製造装置10の片側位置で苗搬送ベルト11を横断して受渡保持機構15までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能な構成とし、セルトレイ7の横一列のセル6内の苗において受渡保持機構15側から苗を取り出すべく、把持ハンド12が受渡保持機構15へ苗を供給した後に次に取り出す苗(苗があるセル6)の左右位置に順次左右移動する構成となっている。
【0027】
この移送機構13による苗の移送行程に干渉するように、整列ガイド14を下垂状に配置する(図7参照)。この整列ガイド14は、移送機構13の左右移送経路の終端の直前位置で、受渡保持機構15に対向する位置より若干苗搬送ベルト11側に配置されている。また整列ガイド14の手前に縦軸ローラ17を配置している。また、整列ガイド14に対向する部位に配置される整列部材16は鉛直方向に板平面を配置した水平断面が三角形の板材からなる。
【0028】
このように受渡保持機構15には、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを保持した際にその子葉展開方向を規制する整列部材16を設けていて、これら受渡保持機構15と整列部材16とにより整列保持手段を形成する。
【0029】
従来は板材だけからなる整列ガイド14を用いていたが、この場合は葉が大きく胚軸長も長い苗が整列ガイド14のある領域に供給された場合に高い位置で大きな葉が整列ガイド14で回転して葉が揺れて苗の整列が妨げられていた。
【0030】
しかし、本実施例では葉の大きな苗であっても、図5に示すように、先ずローラ17により整列方向に苗を回転させ、その後、整列ガイド14で苗の回転を止めて整列させることができる。
【0031】
また、図7の把持ハンド12が整列ガイド14と受渡保持機構15へ進行した部分の側面図に示すように整列ガイド14は、下面が広い水平断面が三角形の鉛直方向に板平面を配置した板材14aと該板材14aの上方に設けた鉛直方向に配置した棒状ガイド14bからなる。そのため、本実施例では葉の大きな苗であっても、板材14aの上方にある棒状ガイド14bに葉が当たり、葉の回転を適切に誘導することができ、受渡保持機構15への苗の受渡しが首尾良く行われる。
【0032】
また、図8に本発明の別実施例の接木苗製造装置10の把持ハンド12と苗移送機構13と部分の側面図に示すように、整列ガイド14を天井部から持ち上げ自在に吊り下げた構成からなる。
この構成では接木苗製造装置10への苗の受け渡し直前で整列ガイド14に苗を当て子葉方向を制御する際に、シリンダー18により整列ガイド14を上下動可能にしているので、苗の大きさや強さ(やわらかさ)によって整列ガイド14との干渉によって、苗への損傷や子葉方向のズレなどが発生することなく、最短、最速での苗の搬送、受け渡しができ、苗に対する適応性の高い接木苗製造装置10が得られる。
【0033】
次に、図2、図3に示す接木苗製造装置10の穂木取込部2の把持ハンド12について図10のシリンダーの要部側面図、図11のハンド部分の平面図と図12のカッタ機構の平面図などにより説明する。
把持ハンド12は、穂木苗Wの胚軸Aの上段部と中段部を把持する上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびその下方に開閉動作により穂木苗Wの胚軸Aの下段部を切断するカッタ機構23を三段重ねに進退機構12bにより一体に進退動作可能に配置し、その側方に独立して上下動作可能に持上げ具24を備えている。また、把持した胚軸Aの近傍で子葉Lと干渉しうる位置に回り止め用の棒状のストッパ25(図6参照)をカッタ機構23から立設する。
【0034】
上段のハンド機構21は、穂木苗の把持状態の平面図を示す図11(a)のように、左右の開閉アーム21a,21aの先端の把持位置に穂木苗の胚軸Aの径寸法より大きく左右方向の切欠Bを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成し、その隙間限度設定用の調節ボルト21bを設ける。中段のハンド機構22は、その把持状態の平面図を示す図11(b)のように、左右の開閉アーム22a,22aのその先端の把持位置に穂木苗の胚軸Aの径寸法より大きく前後方向の切欠Cを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成する。これら両ハンド機構21,22により、穂木苗の把持位置精度を確保しつつ、穂木苗がその胚軸線で回動可能に把持する。
【0035】
図12にカッタ機構23の作動状態平面図(図12(a))とそのB−B線断面図(図12(b))を示すように左右の開閉アーム23a,23aの先端部に穂木苗の胚軸Aを切断する刃23bを形成し、かつ、切断後の胚軸Aの移動を拘束するように外周縁を高く形成する。
【0036】
上記の両ハンド機構21,22とカッタ機構23は、穂木苗を穂木としてその根側を切断しつつその胚軸を回動可能に緩く把持する遊嵌把持機構を形成する。
また、図13の平面図と図14の側面図と図15の起立動作の正面図、図16の持上げ具の平面図に示す持上げ具24は、第1の持上げ具41と第2の持上げ具42とを備えて構成される。前記第1の持上げ具41は、穂木苗Wの根元位置まで前下がりに傾斜するとともに、受渡保持機構15側すなわち苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動してくる側となる同穂木苗Wの側方から背後に達するように先端部41tを屈曲したロッドにより形成される。先端部41tとその基部に屈曲して延びる側部41sを略直角に設定することにより、図15の起立動作の正面図に示すように、第1の持上げ具41の上行動作により倒れた胚軸Aを起立することができる。第1の持上げ具41の支持部41bは、穂木苗に対する位置関係に合わせて前後位置と高さ位置を調節可能に構成する。
【0037】
また、穂木苗Wに対して前記第1の持上げ具41と左右反対側に第2の持上げ具42を設けている。この第2の持上げ具42は、受渡保持機構15とは反対側で苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動する側となる苗の側方に位置するべく屈曲したロッドにより形成され、前後移動シリンダ43により進退動作可能に設けられている。苗の側方に位置する第2の持上げ具42の先端部42aは、前記第1の持上げ具41の先端部41tと同様に水平で、第1の持上げ具41の先端部41tより若干高位で且つ前後移動シリンダ43により突出させた状態で平面視で交差するように設けられている。
【0038】
従って、第1の持上げ具41の上行動作で第2の持上げ具42が共に上動し、苗の左右両側方及び後方の三方から苗を持ち上げて直立させることができ、把持ハンド12による穂木苗の把持を適正に行える。特に、セル6のピッチが狭いセルトレイ7において、第2の持上げ具42により把持ハンド12が左右移動した側の隣接苗側に苗が傾いたまま把持ハンド12で把持して移送するようなことを防止でき、苗が隣接苗と絡んだまま把持ハンド12で移送されて苗の把持姿勢が不適正になるようなことを防止できる。
【0039】
また、一方の第1の持上げ具41の上下動機構で他方の持上げ具42も上下動させる構成としたので、この上下動機構の簡素化が図れる。また、第2の持上げ具42を平面視で中途部が把持ハンド12側(隣接苗から離れる側)に突出するように屈曲させた構成としているので、該第2の持上げ具42に干渉しないように把持ハンド12の開閉量を所定に維持できると共に、第2の持上げ具42が隣接苗と干渉しにくくなり、苗取り出しの円滑化が図れる。
【0040】
上記の第2の持上げ具24では三方から苗を持ち上げる構成であるので、残りの一方側(把持ハンド12側)に倒れる苗を直立させることはできない。そこで図9の穂木取込部2の平面図に示すように苗搬送ベルト11上のセルトレイ7の上方には、該セルトレイ7の左右幅にわたってV字構を有するバネ効果のある薄板からなる倒れ規制具44を設けても良い。
【0041】
この倒れ規制具44の両端を苗搬送ベルト11の支持プレート30の両側支持壁部30a,30bに固定すると、該倒れ規制具44にセル6内の苗が当たってセル6内の培土を荒らしたり苗搬送ベルト11によるセルトレイ7の搬送抵抗になったする。それを防ぐために支持プレート30の一方の支持壁部30aにだけ固定し、他方を支持壁部30bに固定しないで、フリーにして苗が倒れ規制具44をくぐり抜けることを可能にしている。
倒れ規制具44の片方端部を支持壁部30bに固定しないでフリーにすることで、苗の切断跡が硬くて大きい場合でもくぐり抜けることができ、作業の中断が発生しない。
【0042】
上記構成の把持ハンド12による穂木苗の取込動作は、図17の動作手順図に従って行う。
まず、後退位置で上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23を開状態に準備(S1)した上で、接木苗製造装置10の外側方向への移送機構13の横移動により、苗搬入機構11上の穂木苗Wの側方から第1の持上げ具41の先端部41tを穂木苗Wの背面位置に挿し入れ、その後前後移動シリンダ43を伸長し、第2の持上げ具42を前側に突出させて平面視で先端部が苗の側方に位置させると共に第1の持上げ具41の先端部41tと交差させ、第1の持上げ具41及び第2の持上げ具42の上行動作(S2)により穂木苗Wの倒れを修正する。
【0043】
なお、持上げ具24は、上行動作(S2)前において、カッタ機構23の略同じ高さに位置する。これにより、カッタ機構23をセル6の上面に近づけることができて該カッタ機構23が苗の根元を切断でき、冬期に育苗されるような胚軸が短い苗でもハンド機構21,22で苗を適正に取り出すことができる。
【0044】
次いで、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を前進(S3)した上で両ハンド機構21,22を閉じる(S4)ことによりハンド機構21,22の先端の切欠B、Cに穂木苗Wの胚軸Aが遊嵌保持され、その後にカッタ機構23を閉じる(S5)ことにより、胚軸Aの下段部が切断されて穂木苗Wは回動可能に同カッタ機構23により下端が支持される。
【0045】
ここで、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を後退(S6)した上で接木苗製造装置10の中心方向に横移動(S7)することにより、苗搬入機構11から穂木苗を個別に取り込むことができる。なお、S6におけるハンド機構21,22およびカッタ機構23の後退距離すなわち進退機構12bによる進退作動ストロークは、S6の行程によりセルトレイ7から取り出すべく把持する苗が隣接苗と完全に干渉しない長さに設定されている。
【0046】
本実施例では、図18(a)の穂木取込部2の要部側面図に示すように前工程での苗の切れ残りを避けるために苗搬送ベルト11はその前進方向(矢印B方向)側が水平より低くなるように勾配を設ける。一方、図18(b)の従来の穂木取込部2の要部側面図に示すように、従来の苗搬送ベルト11はベルト面が水平面hと平行になるように設けられている。この場合は、前工程での苗切断跡(切った苗の残り)がカッタ機構23やサイドローラに巻き込まれて、機械のメカロックを発生させていた。
【0047】
本実施例では苗搬送ベルト11の前進方向側を水平面hより低くなるように苗搬送ベルト11に勾配をつけたので、苗の巻き込みが防止できる。
また、移送機構13による図5の矢印D方向への移送行程においては、図5の方向修正動作の平面図に示すように、穂木苗を把持した把持ハンド12が把持位置(O)(図5の把持位置(Q)’は進退機構12bにより後退した位置を示す)から受渡し位置(R)まで横移動する際に、その移送行程に干渉するように配置した整列ガイド14(図7)の近傍を通過することにより、穂木苗Wの子葉展開方向が移送方向に対して大きく傾斜していると子葉が整列ガイド14と干渉することにより子葉展開方向が略移送方向に揃うように穂木苗Wが回動される。
【0048】
このとき、穂木苗Wが過大に回動されても、受渡保持機構15と対向する位置に設けた山形で平板状に構成される整列部材となる整列ガイド14の棒状部材14b(図7)に苗の子葉が当たってその回動範囲が規制される。移送機構13で移送されてくる苗の胚軸Aや子葉が棒状部材14bに直接当たることで苗の姿勢又は子葉展開方向がかえって不適正にならないようにでき、苗の大きさや種類に応じて位置調節できる。
【0049】
前記移送装置13は、電動スライダにより移動させる構成であり、前記電動スライダの図示しないストロークセンサにより把持ハンド12が苗搬入機構11のセルトレイ7の上方から離れて整列ガイド14の直前位置まで到達したことを検出すると、電動スライダが減速され、移送終端部での移送速度が低速となる構成となっている。この移送速度が減速される位置は、取り出す苗(苗があるセル6)の左右位置となる移送始端位置に拘らず同じ位置に設定されている。
【0050】
次に、受渡し位置Rに構成される受渡保持機構15と整列部材とによる整列保持手段について説明する。
受渡保持機構15は把持ハンド12の進出位置で穂木苗を受けるべく、進出動作する把持ハンド12に対向して配置される。
【0051】
その構成は、図19の要部平面図と図20の要部側面図(図20(a))とそのB−B線断面図(図20(b))に示すように、受けた穂木苗の胚軸Aの上段部を把持する上段ハンド機構35と、その下方で胚軸Aの中段部を把持する中段ハンド機構36と、両ハンド機構35、36の中間高さ位置で胚軸Aの過大な進入を規制するストッパ37と、これらを一体に高さ位置を調節する昇降機構38とを受渡し位置Rに備える。
【0052】
受渡保持機構15の上方で穂木苗の子葉を受ける位置に整列部材となる主整列部材16を配置する。主整列部材16は、双葉状の子葉展開方向を規制する平板状の部材であり、その中心位置に上下に延びる突条によるガイド部16a(図5参照)を形成する。このガイド部16aは受けた穂木苗Wの子葉を左右に振り分けるために、断面形状が山形でその表面を平滑に低摩擦に形成する。
【0053】
上記構成の整列保持手段16における受渡し動作は、把持ハンド12の進出動作によって受渡保持機構15に穂木苗Wを渡す際に、穂木苗Wの子葉L,Lが主整列部材16に押し付けられるとともに、ガイド部16aにより一対の子葉L,Lが左右に振り分けられて子葉展開軸線が主整列部材16に沿うように整列される。
【0054】
上記受渡し動作を図21の動作手順図に従って詳細に説明すると、苗搬入機構11から穂木苗を取り込み、その胚軸を把持した把持ハンド12を受渡保持機構15の正面に位置を合わせた後、まず、カッタ機構23を含めて把持ハンド12を閉じた状態、すなわち、胚軸Aの下端をカッタ機構23上に受けつつ中段のハンド機構22の把持を緩めた状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S11)ことにより主整列部材16を介して子葉展開方向が整列される。
【0055】
次いで、カッタ機構23を開く(S12)ことにより把持ハンド12のハンド機構21に子葉を受けて穂木苗Wの高さ位置を合わせる。この状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S13)ことにより、主整列部材16に子葉が当たって子葉展開方向が整列される。
【0056】
上記のように進退機構12bの進退動作で把持ハンド12が往復すると、把持ハンド12の進出位置の主整列部材16と合わせて把持ハンド12側となる後退位置にも同様の整列ガイド14の棒状部材14bを対向配置しているので、把持ハンド12の一往復につき苗の子葉が整列部材に2回接当することになり、進退動作により能率の良い整列動作が可能となる。
【0057】
なお、前記進退機構12bには、進退用シリンダと、把持ハンド12で把持された苗が主整列部材16に当たる位置に前記進退用シリンダが伸長したことを検出する伸長位置センサと、把持ハンド12で把持された苗が棒状部材14bに当たる位置すなわち移送機構13で苗を移送するとき等の通常位置に前記進退用シリンダが収縮したことを検出する収縮位置センサとを備えている。従って、前記伸長位置センサと収縮位置センサとが交互に検出するべく進退用シリンダの伸縮作動を繰り返すことにより、把持ハンド12が往復作動する。
【0058】
この整列動作の後、把持ハンド12を受渡保持機構15まで進出(S14)した上でカッタ機構23を閉じる(S15)ことにより、胚軸Aが所定位置で切断されて長さが揃えられる。この時、胚軸Aの曲がりがあっても、両ハンド機構35、36の中間高さ位置のストッパ37が胚軸Aの過大な進入を規制することから、胚軸Aを確実に切断することができる。
【0059】
胚軸Aの切断の後にカッタ機構23を開くとともに穂木苗Wを受けた受渡保持機構15の両ハンド機構35、36を閉じ(S16)、次いで、把持ハンド12の上下のハンド機構21,22を開くとともに受側の受渡保持機構15の中段ハンド機構36の下動により苗を引き下げて所定の保持高さに合わせ(S17)、その後、把持ハンド12を後退(S18)する。
【0060】
このようにして受渡しの終了後に、把持ハンド12を苗搬入機構11側に戻すことにより、次の穂木苗についての取込みが可能となる。この一連の動作の繰返しにより、苗搬入機構11から穂木苗を順次取込んで接木ロボット本体10aにより接木処理することができる。なお、苗受渡し行程において、持上げ具24は、苗の受け渡しの邪魔にならないようにカッタ機構23より下位に下降している。
【産業上の利用可能性】
【0061】
接木ロボットなどの自動的に接木苗を製造する装置に苗を供給する場合に利用できる播種する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のセル内での種子の出芽位置を説明する図である。
【図2】本発明の実施例の接木苗製造装置の要部を示す側面図である。
【図3】図2の接木苗製造装置の全体構造を示す平面図である。
【図4】図2の接木苗製造装置の一部省略した取込部を示す平面図である。
【図5】図2の接木苗製造装置の要部拡大による平面図である。
【図6】図2の接木苗製造装置の穂木取込部側から見た全体構造を示す側面図である。
【図7】図2の穂木取込部側から見た接木苗製造装置の要部側面図である。
【図8】本発明の接木苗製造装置の他の実施例の穂木取込部の正面図である。
【図9】図2の接木苗製造装置の接木苗製造装置の穂木取込部側から見た全体構造を示す平面図である。
【図10】図2の接木苗製造装置の要部拡大による側面図である。
【図11】図2の接木苗製造装置の把持ハンド上段と中段の把持状態のハンド機構の作動前と後の平面図(図11(a)、図11(b))である。
【図12】図2の接木苗製造装置の把持ハンドのカッタ機構の作動状態平面図(図12(a))とそのB−B線断面図(図12(b))である。
【図13】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの第1の持上げ具の動作平面図である。
【図14】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの第1の持上げ具の動作側面図である。
【図15】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの第1の持上げ具の起立動作の正面図である。
【図16】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの第1及び第2の持上げ具を示す平面図である。
【図17】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの穂木苗の取込動作の動作手順図である。
【図18】図2の接木苗製造装置の把持ハンドの穂木取込部の要部側面図(a)と従来の穂木取込部の要部側面図(b)である。
【図19】図2の接木苗製造装置の整列保持手段の要部平面図である。
【図20】図2の接木苗製造装置の整列保持手段の要部側面図(図20(a))とそのB−B線断面図(図20(b))である。
【図21】図2の接木苗製造装置の穂木苗の受渡し動作の動作手順図である。
【図22】従来方法のセル内での種子の出芽位置を説明する図である。
【符号の説明】
【0063】
1 台木取込部 1p,2p 操作パネル
2 穂木取込部 3 台木前処理部
4 穂木前処理部 5 接着処理部
6 セル 7 セルトレイ
8 接木苗送出部 10 接木苗製造装置
10a 接木ロボット本体
11 苗搬入機構 (苗搬送ベルト)
12 把持ハンド 12b 進退機構(エアシリンダ)
13 苗移送機構 14 整列ガイド
14a 板材 14b 棒状ガイド
15 受渡保持機構 16 整列部材
16a ガイド部 17 縦軸ローラ
18 シリンダー 21,22 ハンド機構
21a 開閉アーム 21b 調節ボルト
22a 開閉アーム 23 カッタ機構
23a 開閉アーム 23b 刃
24 持上げ具 25 ストッパ(図にない)
30 支持フレーム(支持プレート)
30a,30b 支持壁部
31 上下位置調整装置
31a ハンドル 32a,32b 光電センサー
35,36 ハンド機構 36a ハンド
37 ストッパ 38 昇降機構
41,42 持上げ具 41t 先端部
41s 側部 41b 支持部
42a 先端部 43 前後移動シリンダ
44 倒れ規制具
R 穂木受渡し位置 W 穂木苗(苗)
A 胚軸 B,C 切欠
L 子葉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルトレイ(7)内に縦横に複数配置されたセル(6)に播種する播種方法において、各セル(6)内において種子の発芽位置が平面視でセル(6)内の同じ方向に偏位した位置となるように播種する播種方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−300867(P2007−300867A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133329(P2006−133329)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】