説明

播種機

【課題】 発芽や発根した種子を、その芽や根を損傷させることなく、正確に定量ずつ直播きすることのできる播種機を提供する。
【解決手段】 ホッパー10、ローラー20および案内部材30で構成する。ホッパーは、前壁12、後壁13および種子Sが投入される上端開口部11を備える。ローラーは、ホッパーの下端部に設け、ホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する本体部21の外周面に、軸方向に等間隔で、複数のガイド壁22を周設し、隣接するガイド壁の間にガイド溝23を形成する。各ガイド溝に、周方向に等間隔でずらした位置にガイドピン24を立設する。ガイド壁の外周面の後部を、ホッパーの前壁の下端に近接または摺接させる。案内部材は、後壁の直下に横設し、前端部に、ガイド壁とガイド溝の外周面に近接または摺接する凹部31と凸部32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽や発根した種籾などの種子を、芽や根を損傷させることなく、正確に定量ずつ、田圃に直播きすることのできる播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、未発芽や未発根の種子を田圃に直播きする播種機には、それらをホッパーに貯留し、ローラーを回転させて一定量ずつ送り出すようにしたものが一般的である。しかし、未発芽や未発根の種子を田圃に直播きした場合、発芽や発根するまでに長い時間を必要とし、例えば、気温が低い場合には発芽や発根せず、腐敗してしまい易い。また、その逆に気温が高い場合には、生育日数が不足してしまい易い。従って、いずれの場合にも、収穫量が低下してしまう。
【0003】
これに対し、予め発芽や発根させた種子を直播きすると、気温が低い場合でも生育し易く、また、気温が高い場合でも生育日数が足りるので、安定した収穫量を確保することができるといった利点がある。
【0004】
しかし、発芽や発根した種子を従来の播種機を使用して直播きすると、芽や根がホッパー内で詰まってしまい、安定して送り出すことができないといった問題や、送り出す際に芽や根が損傷し、直播き後に枯死したり、腐敗してしまい易いといった問題がある。
【0005】
こうした点に鑑み、本発明者は発芽や発根した種子を、芽や根を損傷させることなく直播きすることのできる播種機を開発し、先に出願した(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
これらの播種機は、いずれも、発芽や発根した種子を前側板部を備えるホッパーに投入し、その種子を回転するローラーに設けた複数の爪部によって送り出す際に、種子が前側板部とローラーとの間に挟まることがないように構成している。従って、種子の芽や根が損傷させることなく直播きすることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これら従来の播種機には、さらに改良すべき点がある。すなわち、種子を回転するローラーの爪部によって送り出す際に、その送り出される種子の量にバラツキが発生してしまう。従って、種子が田圃に不均等に播かれてしまうので、例えば、定量より多くの種子が播かれた箇所では間引き作業を必要とするなどの問題が発生する。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、発芽や発根した種籾などの種子を、その芽や根を損傷させることなく、正確に定量ずつ直播きすることのできる播種機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1乃至図4を参照して説明する。請求項1に記載の播種機1は、発芽や発根した種子Sを田圃に直播きする装置であって、少なくとも前壁12と後壁13を備え、前記種子Sが上端開口部11から投入されるホッパー10を備える。
【0010】
また、前記ホッパー10の下端部に設けられ、ホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する円筒状の本体部21の外周面に、軸方向に等間隔で、複数のガイド壁22を周設して、隣接する前記ガイド壁22の間にガイド溝23を形成すると共に、前記各ガイド溝23に周方向に等間隔でずらした位置にガイドピン24を立設し、前記ガイド壁22の外周面の後部を、前記ホッパー10の前壁12の下端に近接または摺接させたローラー20を備える。
【0011】
さらに、前記後壁13の直下に横設され、前端部に、その先端が、前記ガイド壁22とガイド溝23の外周面に近接または摺接する凹部31と凸部32を形成した案内部材30を備える。
【0012】
請求項2に記載の播種機1は、発芽や発根した種子Sを田圃に直播きする装置であって、少なくとも前壁12と後壁13を備え、前記種子Sが上端開口部11から投入されるホッパー10を備える。
【0013】
また、前記ホッパー10の下端部に設けられ、ホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する円筒状の本体部21の外周面に、軸方向に等間隔で、複数のガイド壁22を周設して、隣接する前記ガイド壁22の間にガイド溝23を形成し、前記各ガイド溝23に周方向に等間隔でずらした位置にガイドピン24を立設し、前記ガイド壁22の外周面の後部を、前記ホッパー10の前壁12の下端に近接または摺接させたローラー20を備える。
【0014】
さらに、前記後壁13の直下に横設され、前端部に、その先端が、前記ガイド壁22とガイド溝23の外周面に近接または摺接する凹部31と凸部32を形成した案内部材30を備える。
【0015】
そして、前記案内部材30をブラシまたは弾性材で形成し、さらに、前記ホッパー10の後壁13の下端部を弾性材製の送り壁13aとし、その送り壁13aに近接して設けたカム16によって前後方向に揺動自在としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明は、種子Sを、田圃に正確に定量ずつ送り出して直播きすることができる。すなわち、ホッパー10に投入された種子Sは、その自重によって複数のガイド溝23に送り込まれるが、これらのガイド溝23は、ローラー20の軸方向に等間隔で形成された複数のガイド壁22によって形成されたものであり、その幅が同一であるため、送り込まれる種子Sの量が一定化する。
【0017】
また、各ガイド溝23に送り込まれた種子Sは、それぞれのガイドピン24によって送り出されるが、これらのガイドピン24は周方向に所定間隔でずらした位置に設けているので、種子Sを、田圃の全体にわたって均等に直播きすることができる。
【0018】
なお、ホッパー10に投入された種子Sはガイド溝23に送り込まれるが、このガイド溝23を備えるローラー20はホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転するので、当該種子Sはガイド溝23と案内部材30との間に挟み込まれることがない(図2参照)。従って、種子Sの芽や根が損傷することもない。ちなみに、ローラー20をホッパー落下口に対して同面が下降する方向に回転させると、種子Sがガイド溝23と案内部材30との間に挟み込まれて損傷してしまうので好ましくない。
【0019】
請求項2に記載の播種機1は、請求項1に記載の発明と同様に、種子Sを定量ずつ田圃の全体にわたって正確に直播きすることができると共に、芽や根を損傷させることもない。
【0020】
また、案内部材30をブラシまたは弾性材で形成しているので、その先端がローラー20に摺接しても自在に弾性変形することができ、よって故障が少なく、性能にも優れる。さらに、案内部材30をブラシで形成すると、直播きと同時に、回転するローラー20の外周面に付着した汚れを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る播種機をトラクターに連結した状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る播種機を示す縦断面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】図2のY−Y線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る播種機1の実施形態を、図1乃至図4に示す。この播種機1は、発芽や発根した種子(種籾)Sを田圃に直播きする装置であって、ホッパー10、ローラー20および案内部材30を備える。また、この播種機1は、トラクターTに引かれながら種子Sを播くものであり、田圃の地ならしを行うフロートFと、種子Sを地中に埋没させる摺込み部材Gを備える。
【0023】
この播種機1を構成するホッパー10は、前壁12、後壁13、左壁14および右壁15と、種子Sが投入される上端開口部11を備える。前壁12と後壁13は、それぞれ下方に向かって内方に傾斜させた一般的な形状を有する。前壁12と後壁13のそれぞれの背面には、左壁14と右壁15に連続する外壁17を配している。また、下端部には、種子Sを集めた状態で送り出すために、送出口19を有する傾斜壁18を設けている。
【0024】
ローラー20は、ホッパー10の下端部に設けられ、駆動モーター(図示せず)によって回転軸を中心としてホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する円筒状(ドラム状)の本体部21と、その外周面に一体的に周設され、軸方向に等間隔で設けられた複数(五つ)のガイド壁22と、隣接するガイド壁22の間に形成された複数(四つ)のガイド溝23と、各ガイド溝23に周方向に等間隔でずらした位置に立設された複数(四本)のガイドピン24とを備える。
【0025】
このローラー20は、そのガイド壁22の外周面の後部を、ホッパー10の前壁12の下端に近接(または軽く摺接)させている。なお、ガイドピン24の横幅は、ガイド溝23の幅とほぼ等しく設定し、また、その高さはガイド溝23の深さとほぼ同じく設定している。こうすることによって、ガイド溝23に入り込んだ種子Sを確実に送り出すと共に、前壁12と大きく干渉するのを避けている。
【0026】
案内部材30は、後壁13の直下に横設され、前端部に、その先端が、ガイド壁22の外周面に近接(または軽く摺接)する凹部31と、ガイド溝23の外周面に近接(または軽く摺接)する凸部32を設けている。本実施形態における案内部材30は、ブラシで構成しているが、これに代えて、弾性変形自在な弾性材で構成することもできる。また、この案内部材30は、その後端部を支持部材33に着脱自在に固定している。これにより、取換え自在としている。
【0027】
また、本実施形態では、ホッパー10の後壁13の下端部を弾性材製の送り壁13aで構成して弾性変形自在とし、当該送り壁13aを、その後側に設けたカム16によって前後方向に揺動自在としている。送り壁13aを前後方向に揺動自在とすることで、案内部材30の上に溜まった種子Sを前方に押してガイド溝23に案内することができる。なお、カム16は、ローラー20を駆動するモーターによって回転させることができる。
【0028】
本実施形態に係る播種機1は、次のように作動する。まず、所定量の種子Sをホッパー10に投入する。投入された種子Sは、前壁12および後壁13の傾斜に沿って落下し、その一部が案内部材30の上に溜まると共に、ローラー20に形成された複数のガイド溝23のそれぞれに入り込む。このとき、各ガイド溝23の幅は、ガイド壁22によって一定に設定されているので、ガイド溝23には、常に一定量の種子Sが入り込む。
【0029】
ガイド溝23に入り込んだ溝は、当該ガイド溝23に立設され、ローラー20の回転と共に周回するガイドピン24によって掬い上げられ、そのまま回転移動してローラー20の前側に達し、そこから自重で落下する。こうした動作の連続により、ホッパー10内の種子Sは、順次、定量ずつ田圃に播かれる。
【0030】
なお、この際、ローラー20はホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転するので、当該種子Sはガイド溝23と案内部材30との間に挟み込まれることがない。従って、種子Sの芽や根が損傷することもない。
【0031】
また、各ガイド溝23に設けられた各ガイドピン24は、ローラー20の周方向に等間隔でずらした位置に立設されているので、種子Sが、異なるガイド溝23から同時に田圃に送り出されることがない。従って、種子Sを、田圃の全体にわたって均等に播くことができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る播種機1は、種子Sを、同一の幅を有する複数のガイド溝23を介して送り出すので、常に正確に定量ずつ送り出すことができる。また、案内部材30をブラシで形成しているので、その先端がローラー20に摺接しても自在に弾性変形することができ、よって故障が少なく、性能にも優れる。さらに、直播きと同時に、回転するローラー20の外周面に付着した汚れを除去することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 播種機
10 ホッパー
11 上端開口部
12 前壁
13 後壁
13a 送り壁
14 左壁
15 右壁
16 カム
17 外壁
18 傾斜壁
19 送出口
20 ローラー
21 本体部
22 ガイド壁
23 ガイド溝
24 ガイドピン
25 回転軸
30 案内部材
31 凹部
32 凸部
33 支持部材
F フロート
G 摺込み部材
S 種子
T トラクター
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平6−133606号公報
【特許文献2】特開平9−308320号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽や発根した種子(S)を田圃に直播きする播種機であって、少なくとも前壁(12)と後壁(13)を備え,前記種子が上端開口部(11)から投入されるホッパー(10)と、前記ホッパーの下端部に設けられ,ホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する円筒状の本体部(21)の外周面に,軸方向に等間隔で,複数のガイド壁(22)を周設して,隣接する前記ガイド壁の間にガイド溝(23)を形成し,前記各ガイド溝に周方向に等間隔でずらした位置にガイドピン(24)を立設し,前記ガイド壁の外周面の後部を,前記ホッパーの前壁の下端に近接または摺接させたローラー(20)と、前記後壁の直下に横設され,前端部に,その先端が,前記ガイド壁とガイド溝の外周面に近接または摺接する凹部(31)と凸部(32)を形成した案内部材(30)と、を備えることを特徴とする播種機。
【請求項2】
発芽や発根した種子(S)を田圃に直播きする播種機であって、少なくとも前壁(12)と後壁(13)を備え,前記種子が上端開口部(11)から投入されるホッパー(10)と、前記ホッパーの下端部に設けられ,ホッパー落下口に対して同面が上昇する方向に回転する円筒状の本体部(21)の外周面に,軸方向に等間隔で,複数のガイド壁(22)を周設して,隣接する前記ガイド壁の間にガイド溝(23)を形成し,前記各ガイド溝に周方向に等間隔でずらした位置にガイドピン(24)を立設し,前記ガイド壁の外周面の後部を,前記ホッパーの前壁の下端に近接または摺接させたローラー(20)と、前記後壁の直下に横設され,前端部に,その先端が,前記ガイド壁とガイド溝の外周面に近接または摺接する凹部(31)と凸部(32)を形成した案内部材(30)と、を備え、前記案内部材をブラシまたは弾性材で形成し、前記ホッパーの後壁の下端部を弾性材製の送り壁(13a)とし,該送り壁に近接して設けたカム(16)によって前後方向に揺動自在としたことを特徴とする播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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