説明

撮像装置および光学機器

【課題】小型化を実現し得る撮像装置および光学機器を提供する。
【解決手段】光学系による像を撮像する光学部品(32)と、少なくとも一部が前記光学部品に近接して備えられる流路(46)と、前記流路(46)に備えられる帯電した流体(59)と、電圧を用いて前記流体(59)を駆動する駆動部(44)とを含む撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を用いるデジタルカメラ等の光学機器においては、撮像の際に撮像素子が発熱するため、撮像素子が高温になってしまう場合がある。撮像素子の温度が過剰に上昇した状態で撮影を行うと、撮像素子内に発生する暗電流(ノイズ)が増加してS/N比(シグナル/ノイズ比)を低下させ、撮像される画像の品質が劣化するという問題が発生している。
【0003】
特に、近年のデジタルカメラは、動画撮影機能を重視したものや、ライブビュー機能(被写体像をリアルタイムで撮像して液晶画面表示させる機能)を搭載したものなども多く、撮像素子の発熱負荷が増加する傾向にある。したがって、撮像素子の温度上昇を抑制し、S/N比の低下を防止することが、撮像される画像の品質劣化を防止する観点から、極めて重要となっている。
【0004】
光学機器における撮像素子の温度上昇を防止する従来技術としては、冷却液体を圧電素子駆動ポンプ装置によって循環させ、撮像素子を水冷するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、圧電素子駆動ポンプ装置を用いる従来技術では、ダイヤフラム(圧電素子板)の機械的な運動によるポンプ作用を利用して冷却液体を循環させているため、ポンプ装置を小型化することが困難である。したがって、従来技術に係るポンプ装置を搭載した場合、カメラ等の光学機器全体の小型化も難しくなるという問題が発生していた。
【特許文献1】特開平5−176210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小型化を実現し得る撮像装置および、光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置(30)は、
光学系による像を撮像する光学部品(32)と、
前記光学部品(32)に供給される帯電した流体(59)と、
前記流体(59)を駆動する駆動部(44)とを含む。
【0008】
また、本発明に係る撮像装置(30)は、
光学系による像を撮像する光学部品(32)と、
少なくとも一部が前記光学部品(32)に近接して備えられる流路(46)と、
前記流路(46)に備えられる帯電した流体(59)と、
電圧を用いて前記流体(59)を駆動する駆動部(44)とを含むものであってもよい。
【0009】
また、例えば、前記光学部品(32)は、前記光学系による像を撮像する撮像素子(32)であってもよい。
【0010】
また、例えば、前記駆動部(44)は、前記流路(46)に備えられた電極(50,52,66,68)を有し、
前記電極(50,52,66,68)に発生する電圧により前記流体(59)を駆動するものであってもよい。
【0011】
また、例えば、前記流体(59)は、絶縁性を有するものであってもよい。
【0012】
また、例えば、前記流路(46)の少なくとも一部(40)は、前記光学部品(32)の前記光学系が備えられていない側の面に備えられていてもよい。
【0013】
また、例えば、前記流体(59)は、導電率が1×10−5S/m(siemens/m)以下であってもよく、比誘電率が10以上であってもよい。
【0014】
また、例えば、前記駆動部(44)は、前記流体(59)を接触表面で帯電させることができる帯電化部材(58)を含むものであってもよい。
【0015】
また、例えば、前記帯電化部材(58)は、多孔質材料、繊維質材料、粒子状材料のうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0016】
また、例えば、前記多孔質材料は、多孔質シリカを含むものであってもよく、前記繊維質材料は、アクリル繊維を含むものであってもよい。
【0017】
本発明に係る光学機器は上記いずれかの撮像装置(30)を有する。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の第1および第2実施形態に係る撮像装置を備えたカメラの側方からの概略断面図、
図2は、図1に示したカメラの後方からの概略断面図、
図3は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置におけるポンプ機構の拡大模式図、
図4は、図3のポンプ機構の概略断面図、
図5は、図3のポンプ機構の駆動原理を説明した要部拡大図、
図6は、本発明の第2実施形態に係る撮像装置に備えられたポンプ機構の概略断面図である。
第1実施形態
【0020】
図1は、本発明の第1および第2実施形態に係る撮像装置が搭載された一眼レフカメラのカメラボディ4を示したものである。カメラボディ4の筐体6には開口部8が形成されており、開口部8の周辺にはレンズマウント10が形成されている。撮影時には、開口部8を覆うように交換レンズ(不図示)が設置され、交換レンズによって導かれた撮影光が、筐体6内部に導入される。
【0021】
筐体6内部には、クイックリターンミラー12,ファインダスクリーン14、ペンタプリズム16、接眼レンズ18、フォーカルプレーンシャッタ20および撮像部30等が具備してある。撮影の際には、クイックリターンミラー12がはねあがることにより撮影光の光路上から退避し、さらに、フォーカルプレーンシャッタ20を開くことによって、撮影光が撮像部30の撮像素子32に導かれる。
【0022】
なお、各部材の説明においては、撮影時において被写体光が入射する側の面を前面とし、前面と対向する面を背面とした。本実施形態では、本発明に係る撮像部30を、一眼レフカメラに適用した例によって説明するが、撮像部30を適用する光学機器としてはこれに限られず、電子ビューファインダカメラ、ビデオカメラ等の他の光学機器であってもよい。
【0023】
本実施形態における撮像部30は、光電変換を行う撮像素子32の前面に、偽色(色モアレ)の発生を防止する役割を有する光学ローパスフィルタ28が配置されている。さらに撮像素子32の背面および下方には冷却ユニット34が配置されている。冷却ユニット34は、吸熱部40、放熱部42、ポンプ機構44および冷却用流体59(図1〜図4では図示省略)が循環する流路46を有する。
【0024】
冷却ユニット34の吸熱部40は、撮像素子32の背面に接触して配置されている。図2に示すように、吸熱部40は、撮像素子32の背面を覆うように形成されており、好ましくは、吸熱部40における撮像素子32との接触面は、撮像素子32の背面と略同一の面積を有する。撮像装置の全体の大きさを抑えながら、撮像素子32を効率的に冷却するためである。
【0025】
撮像素子32の背面に配置された吸熱部40内部には、効率良く撮像素子32全体を冷却するため、吸熱流路46aが蛇行するように形成されている。吸熱流路46aの流路壁は、吸熱部40の接触面に形成された溝または撮像素子32の背面等によって構成されてもよく、また、吸熱部40の内部を蛇行するチューブ等であっても良い。吸熱部40を構成する材料としては、特に限定されないが、金属もしくは半導体等の熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。
【0026】
吸熱流路46aの一端は、ポンプ機構44の駆動流路46dに通じている第1接続流路46bと接続しており、吸熱流路46aの他の一端は、放熱部42の放熱流路46eに通じている第2接続流路46cに接続している。各接続流路の流壁は、リソグラフィとエッチングを組み合わせた手法、あるいはプレス成形などによって作製することができるが、冷却用流体59が流動できる流路を形成するものであれば、材質および製法は特に限定されない。
【0027】
図1に示すように、カメラボディ4の底部に配置された放熱部42は、筐体6から露出してカメラボディ4の外表面の一部を構成する放熱面42aを有している。放熱面42aを構成する場所としては特に限定されないが、撮影中において撮影者の体の一部が触れにくいカメラ底部等に形成することが、放熱効率および安全性の観点から好ましい。また、同様の理由から、放熱面42aは、放熱面42a周辺の筐体6表面に対して、筐体6内部方向へ後退させられて形成されていてもよい。また本実施形態における放熱面42aには、筐体6外部の空気との接触面積を増加させるための凹凸が形成されてもよい。
【0028】
放熱部42の内部には、放熱面42aに近接するように放熱流路46eが形成されている。放熱流路46eは、流路内の流体が効率よく放熱できるように、放熱部42内部を蛇行していてもよい。放熱部42を構成する材料としては、特に限定されないが、金属もしくは半金属等の熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。
【0029】
放熱流路46eの一端は、先に述べた吸熱流路46aに通じている第2接続流路46cと接続しており、放熱流路46eの他の一端は、ポンプ機構44の駆動流路46dに通じている第3接続流路46fと接続している。
【0030】
図2に示すように、吸熱部40の下方には、流路46の内部に備えられた冷却用流体59を流動させるポンプ機構44が配置されている。なお、本実施形態では、吸熱部40とポンプ機構44はそれぞれ独立して形成されているが、両者は一体に形成されていてもよい。
【0031】
第1実施形態に係るポンプ機構44は、図3に示すように、第1接続流路46bおよび第3接続流路46fが接続され、内部に駆動流路46dが形成されているケース部材48を有する。第1実施形態におけるケース部材48は、図4に示すように、略対称な第1ケース基板48aと、第2ケース基板48bとを接合して形成されており、内部に略長方形の断面形状の駆動流路46dが形成された矩形平板状の外形を有している。しかし、ケース部材48の形状としてはこれに限られず、円筒形状その他の形状であってもよい。
【0032】
ケース部材48の寸法としては、特に限定されないが、図3に示す横L1〜20mm,縦H0.5〜10mm,図4に示す厚さD0.5〜30mm程度とすることが好ましい。
【0033】
図3に示す駆動流路46d内には、第1接続流路46b近傍に第1電極50が配置されており、第3接続流路46f近傍に第2電極52が配置されている。第1電極50および第2電極52は、接点54aを介してケース部材48の外へ引き出されている配線54と導通しており、配線54は、カメラボディ4内に設置された電源56に接続されている。
【0034】
電極50,52には、図4に示すように、冷却用流体59をスムーズに流動させるための穴50a,52aが形成されていても良い。図3に示す電源56は、直流電源であることが好ましいが、連続的に所定の値の電圧を発生するものであっても、断続的に所定の値の電圧を発生するものであってもよく、あるいは遷移的に変動する電圧を発生するものであってもよい。電源56はカメラボディ4内の制御部(不図示)に接続されており、当該制御部によって、電極50,52間に印加される電圧が制御される。
【0035】
第1電極50と第2電極52に挟まれた駆動流路46dの中には、駆動流路46d内の冷却用流体59(図示省略)を帯電させる帯電化部材58が配置されている。帯電化部材58は、帯電化部材58の表面近傍の流体を帯電させることができるものであり、本実施形態では多孔質のシリカによって構成されている。帯電化部材58の形状としては、流体の流動圧力及び流量を確保する観点から、微小な径の流路を多数形成するものが好ましく、多孔質材料、繊維状材料、粒子状材料等を用いることができるが、これに限定されない。また、帯電化部材58の原材料としては、シリカ(SiO)、アクリル樹脂等を用いることができるが、これに限定されない。
【0036】
図5は、第1実施形態に係るポンプ機構44の駆動原理を示す概念図であり、冷却用流体59および帯電化部材58の一部を拡大した図である。なお、駆動原理は、第1実施形態に係る耐電化部材58および冷却用流体59を用いて説明を行うが、本発明に用いる帯電化部材58および冷却用流体59はこれに限定されず、流体を帯電させる帯電化部材58(例えば「電気浸透材」と呼ばれているものを含む)およびそれによって帯電する冷却用流体59の組合せであればなんでもよい。
【0037】
図5に示すように、帯電化部材58は、駆動流路46d内の冷却用流体59と接触すると、帯電化部材58の表面近傍が帯電する。例えば本実施形態において、冷却用流体59として純水(HO)を用いた場合、耐電化部材58である多孔性シリカの表面近傍では、シラノール基(Si−OH)が生成される。冷却用流体59が中性に近い純水の場合は、シラノール基がSi−Oとなり、表面近傍のシリカ58aは負に帯電する。
【0038】
それに対して、表面近傍のシリカ58aとの接触界面近傍の冷却用流体59には、表面近傍のシリカ58aの負電荷により正イオンが集まり、正電荷が過剰となるため、局所的に電荷中性が保たれず正に耐電した拡散層59aが形成される。
【0039】
このとき、第1電極50および第2電極52により、駆動流路46d内の冷却用流体59に対して電界を加えると、拡散層59aに存在する過剰電荷が電気力によって負極である第1電極50方向に引かれ、拡散層59a中の流体粒子が移動する。拡散層59a中の流体粒子が移動する結果、冷却用流体59の粘性によって流体全体を引きずられ、図4の矢印62で示す第2電極52から第1電極50に向かう方向の流れが、冷却用流体59全体に発生する。
【0040】
ここで、帯電化部材58の空隙によって形成される断面積Sの仮想流路を想定した場合、ポンプ機構44によって発生する流量Qは、電極50,52によって印加される電圧E、電極50,52間の距離W、冷却用流体59の粘性抵抗η、比誘電率ε、ゼータ電位ζ(シリカ58aとの接触界面近傍における冷却用流体59のすべり面における電位)および真空誘電率εを用いておおむね下記の式(1)で表される。
【0041】
Q=SεεζE/(ηW) (1)
【0042】
図5における電極間距離Wおよび、電極50,52への印加電圧Eは、要求される流量Qまたは撮像素子32の発熱量等に応じて適切な値に設定されるが、W=0.1〜50mm,E=1〜100V程度とすることが好ましい。
【0043】
第1実施形態に係る冷却ユニット34に用いる冷却用流体59としては、純水(HO)のほか、各種水溶液、アルコール類等の有機溶媒を用いることができる。冷却用流体59としては、絶縁性を有し、電解質で比誘電率が比較的大きい流体が好ましく、例えば導電率が1×10−5S/m以下であるか、または比誘電率が10以上の流体が好ましい。
【0044】
ポンプ機構44およびこれを含む冷却ユニット34の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下のようにして製造できる。図3に示す第2ケース基板48bに、帯電化部材58および電極50,52を取り付けた後、図4に示す第1ケース基板48aを、第2ケース基板48bに対して接着または溶着等により固定し、駆動流路46dを形成する。これを、図3に示すように、電極50,52と配線54との接触端子54aが形成されている所定位置にとりつける。
【0045】
さらに、ケース部材48に形成された取り付け口48cおよび48dに、それぞれ第3接続流路46fおよび第1接続流路46bを接続する。最後に、流路46に形成されている流体注入口(不図示)から冷却用流体59を流路46に充填した後、流体注入口を封止する。
【0046】
本実施形態に係る撮像部30を有するカメラでは、カメラの主電源がONになっている状態において常に、もしくは所定のタイミングで、ポンプ機構44によって流路46内の流体を流動させることができる。
【0047】
すなわち、カメラの主電源がONになる等の所定の条件において、図2のポンプ機構44に接続されている電源56は、カメラボディ4内の制御部(不図示)からの制御により、所定の電圧を発生する。発生した電圧は、電極50,52によって、冷却用流体59が充填されている駆動流路46dに印加される。
【0048】
帯電化部材58によって帯電している駆動流路46d内の冷却用流体59は、電極50,52によって電圧が印加されることによって流動する。したがって、駆動流路46d内に、第2電極52から第1電極50へ向かう冷却用流体59の流れが発生する。ポンプ機構44で発生した流れによって、図2の矢印で示すように、ポンプ機構44(駆動流路46d)→吸熱部40(吸熱流路46a)→放熱部42(放熱流路46e)→ポンプ機構44(駆動流路46d)の順に、冷却用流体59が流路46内を循環する。
【0049】
冷却用流体59は、撮像素子32の背面に形成された吸熱流路46a内において、撮像素子32の熱を吸熱して撮像素子32を冷却し、冷却用流体59自身の温度を上昇させながら流動する。
【0050】
吸熱流路46a内を通過して温度が上昇した冷却用流体59は、第2接続流路46cを通じて放熱部42の放熱流路46e内に流動する。放熱流路46e内において、冷却用流体59は、放熱部42の放熱面42aを介して、筐体6外の空気と熱交換を行うことによって放熱し、冷却用流体59自身の温度を下降させながら流動する。
【0051】
放熱流路46e内で温度が下降した冷却用流体59は、第3接続流路46f,駆動流路46dおよび第1接続流路46bを経て、再び吸熱流路46a内を流動し、連続的に撮像素子32を冷却することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、駆動流路46dと、吸熱流路46aおよび放熱流路46eを別々に形成したが、駆動流路46dの一部を、吸熱流路46aまたは放熱流路46eと重複させて形成してもよい。あるいは、吸熱流路46aまたは放熱流路46eの中に、電極50,52および帯電化部材58を配置することによって、吸熱流路46aまたは放熱流路46eの中に、駆動流路46dを形成することも可能である。駆動流路46dの一部又は全部を、吸熱流路46aまたは放熱流路46eと重複させて形成することによって、冷却ユニット34をコンパクトにできる。
【0053】
本実施形態に係る撮像部30は、ポンプ機構44を有する冷却ユニット34によって冷却用流体59を循環させ、撮像素子32を効率的に冷却することができる。したがって、撮像素子32の発熱負荷が増加した場合であっても、撮像素子32の温度上昇を効果的に抑制し、S/N比の低下を防止することができる。さらに、撮像素子32が発熱することによって生じる画像の品質劣化を効果的に防止できる。
【0054】
また、本実施形態に係るポンプ機構44は、冷却用流体59に電圧を付与することによって駆動するため、機械的稼働部を有しない。したがって、ポンプ機構44およびこれを有する冷却ユニット34を小型化することが可能であり、ポンプ機構44の配置に関する制約も少ない。これにより、撮像部30およびカメラ全体を小型化することが可能である。さらに、本実施形態に係るポンプ機構44は、機械的可動部を有しないため、作動音が静寂で、騒音が少ない。
【0055】
また、本実施形態に係る撮像部30に含まれる冷却ユニット34は、吸熱部40、放熱部42およびポンプ機構44を冷却用流体59が循環するための流路46を有する。従って、撮像素子32で発生した熱は、冷却用流体59によって放熱部42に運ばれ、カメラの筐体6の外部に効率的に放熱される。また、冷却用流体59は、冷却ユニット34を循環できるため、撮像素子32を連続的かつ効率的に冷却することができる。
第2実施形態
【0056】
図6に本発明の第2実施形態の撮像部30に係るポンプ機構44を示す。ポンプ機構44,駆動流路46d,および流路46に備えられる冷却用流体59(図6では図示省略)以外の構成は、第1実施形態の撮像部30と同様である。第2実施形態に係るポンプ機構44は、略円筒形状の外径を有しており、内部に筒状の駆動流路46dが形成されている。ポンプ機構44は、針部を有する第1管状電極66と、第1管状電極66に対して、絶縁部70を挟んで連結される第2管状電極68とを有する。
【0057】
第1管状電極66と、第2管状電極68は、それぞれ配線54を介して、電源56に接続されている。
【0058】
第2実施形態に係るポンプ機構44の外径としては、特に限定されないが、直径D2を1〜20mm、長さL2を5〜50mm程度とすることが好ましい。ポンプ機構44は、各管状電極66,68、絶縁部70および接合部72を接着等により接合することによって作製される。
【0059】
第2実施形態の冷却ユニット34の流路46には、冷却用流体59として、非対称電極間を流動できる流体(「電気感応媒体」と呼ばれるものを含む)が充填される。ここで第2実施形態に係る冷却用流体59には、実質的に絶縁であって、非対称電極による印加電圧に応じて発生するクーロン力によって流れを発生させる(EHD効果と呼ばれる)ことができる流体を含む。このような流体は、少なくとも機能的観点からは帯電している流体と考えることができ、本願の帯電した流体に含まれる。
【0060】
第2実施形態に使用させる冷却用流体59としては、非対称電極間を流動できる流体であれば特に限定されないが、たとえば、ジブチルアジペート、トリアセチレン、ハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0061】
第2実施形態のポンプ機構44では、カメラボディ4内の制御部(不図示)からの指令によって電源56を介して第1管状電極66および第2管状電極68に電圧が印加される。流路46内の冷却用流体59は、当該電圧の印加によって、第1管状電極66から第2管状電極68に向かって移動させられ、第3接続流路46f側から第1接続流路46b側に向かう流れが、駆動流路46d内に発生する。これによって冷却用流体59は、第1実施形態と同様に、流路46を循環することができる。
【0062】
したがって、第2実施形態に係る撮像部30においても、第1実施形態と同様に、所定のタイミングで、ポンプ機構44によって流路46内の冷却用流体59を流動させることができる。したがって、撮像素子32を効率的に冷却することができる。
【0063】
このときの印加電圧は、冷却用流体59の循環に必要な圧力および撮像素子32の冷却に必要な流量等に応じて適切な値に設定されるが、好ましくは1.0×10V〜1.0×10Vである。
【0064】
このように、第2実施形態に係る撮像部30は、第1実施形態と同様に、ポンプ機構44を有する冷却ユニット34によって冷却用流体59を循環させ、撮像素子32を効率的に冷却することができる。したがって、撮像素子32の発熱負荷が増加した場合であっても、撮像素子32の温度上昇を効果的に抑制し、S/N比の低下を防止することができる。さらに、撮像素子32が発熱することによって生じる画像の品質劣化を効果的に防止できる。
【0065】
また、第2実施形態に係るポンプ機構44は、帯電した流体に電圧を付与することによって冷却用流体59を駆動するため、機械的稼働部を有しない。したがって、ポンプ機構44を小型化することが可能であり、ポンプの配置に関する制約も少ない。これにより、撮像部30およびカメラ全体を小型化することが可能である。さらに、本実施形態に係るポンプ機構44は、機械的可動部を有しないため、作動音が極めて静寂で、騒音が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の第1および第2実施形態に係る撮像装置を備えたカメラの側方からの概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示したカメラの後方からの概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置におけるポンプ機構の拡大模式図である。
【図4】図4は、図3のポンプ機構の概略断面図である。
【図5】図5は、図3のポンプ機構の駆動原理を説明した要部拡大図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る撮像装置に備えられたポンプ機構の概略断面図である。
【符号の説明】
【0067】
6… 筐体
30… 撮像部
32… 撮像素子
34… 冷却ユニット
40… 吸熱部
42… 放熱部
44… ポンプ機構
46… 流路
50… 第1電極
52… 第2電極
58… 帯電化部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像を撮像する光学部品と、
前記光学部品に供給される帯電した流体と、
前記流体を駆動する駆動部とを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
光学系による像を撮像する光学部品と、
少なくとも一部が前記光学部品に近接して備えられる流路と、
前記流路に備えられる帯電した流体と、
電圧を用いて前記流体を駆動する駆動部とを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された撮像装置であって、
前記光学部品は、前記光学系による像を撮像する撮像素子であることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された撮像装置であって、
前記駆動部は、前記流路に備えられた電極を有し、
前記電極に発生する電圧により前記流体を駆動することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された撮像装置であって、前記流体は、絶縁性を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までの何れか1項に記載された撮像装置であって、
前記流路の少なくとも一部は、前記光学部品の前記光学系が備えられていない側の面に備えられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された撮像装置であって、
前記流体は、導電率が1×10−5S/m以下であることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載された撮像装置であって、
前記流体は、比誘電率が10以上であることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載された撮像装置であって、
前記駆動部は、前記流体を接触表面で帯電させることができる帯電化部材を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項9に記載された撮像装置であって、
前記帯電化部材は、多孔質材料、繊維質材料、粒子状材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項10に記載された撮像装置であって、
前記多孔質材料は、多孔質シリカを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載された撮像装置であって、
前記繊維質材料は、アクリル繊維を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載された撮像装置を有する光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−92862(P2009−92862A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262401(P2007−262401)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】