説明

撮像装置および撮像方法

【課題】光学像を画像データとして記録するための撮像装置および撮像方法において、解像度やサイズを犠牲にすることなく、撮像時の傾きが補正された画像データを得る。
【解決手段】光学像を受光する受光面を有し、該受光面に入射した光学像に対応する電気信号を出力する撮像手段と、受光面のうちその周縁部を除く中央部分を有効画像領域として、該有効画像領域内に入射した光学像に対応する画像データを、撮像手段から出力される電気信号に基づき作成する画像データ作成手段と、受光面の法線周りの受光面のローリング傾き角度を検出する傾き検出手段とを備え、画像データ作成手段は、有効画像領域の受光面に対する法線周りの傾き角度を、傾き検出手段の検出結果に応じて設定することを特徴とする撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学像を画像データとして記録するための撮像装置および撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど、光学像を画像データとして記録する撮像装置の技術分野においては、カメラの傾きを自動的に検出して画像データを補正するように構成されたものがある。例えば特許文献1に記載の技術においては、撮像素子たるCCD(Charge Coupled Device)により撮像しデジタルデータとして記録する際に、撮像時のカメラ本体の傾きをジャイロセンサー等で検出し、その傾き量を画像データと共に記録している。そして、画像データの出力時には、画像データに対しカメラの傾き量をキャンセルするような回転処理を施して出力することにより、画像の傾きを補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−129391号公報(例えば、図15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術では、記録された画像の周縁部をトリミングすることによって見かけ上の画像の傾きを補正しているため、補正後の画像が原画像よりも小さくなってしまったり、周縁部の画像情報が欠落するという問題があった。また、特許文献1では補正後の画像を補間により拡大処理することで原画像サイズに復元する点についても言及されているが、このような補間処理によっても、画像情報の欠落に起因する解像度や画像品質の低下を回避することはできなかった。
【0005】
この発明にかかるいくつかの態様は、光学像を画像データとして記録するための撮像装置および撮像方法において、上記課題を解決し、解像度やサイズを犠牲にすることなく、撮像時の傾きが補正された画像データを得ることのできる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一の態様である撮像装置は、上記課題を解決するため、光学像を受光する受光面を有し、該受光面に入射した光学像に対応する電気信号を出力する撮像手段と、前記受光面のうちその周縁部を除く中央部分を有効画像領域として、該有効画像領域内に入射した光学像に対応する画像データを、前記撮像手段から出力される電気信号に基づき作成する画像データ作成手段と、前記受光面の法線周りの前記受光面のローリング傾き角度を検出する傾き検出手段とを備え、前記画像データ作成手段は、前記有効画像領域の前記受光面に対する法線周りの傾き角度を、前記傾き検出手段の検出結果に応じて設定することを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、撮像手段の受光面に入射する光学像の全体ではなく、そのうち周縁部を除いた有効画像領域内の光学像に対応した画像データが作成される。そして、受光面内における有効画像領域は固定的に設定されておらず、傾き検出手段によって検出された、受光面の法線周りの受光面のローリング傾き角度に応じて動的に設定される。このような構成によれば、撮像手段の受光面がその法線周りに傾いた状態で撮像が行われたとしても、受光面内における有効画像領域の取り方を調整することでその傾き分をキャンセルすることが可能である。このとき、有効画像領域が受光面内に設定される限りにおいて、画像情報が欠落することはない。このため、本発明によれば、画像の解像度やサイズを犠牲にすることなく、撮像時の傾きが補正された画像データを得ることが可能となる。
【0008】
ここで、例えば、受光面の法線方向が略水平方向となるように撮像手段が配置され、画像データ作成手段は、受光面内における有効画像領域の上下方向が鉛直方向と一致するように、有効画像領域を設定するようにしてもよい。こうすることで、受光面の傾きがあっても被写体の上下方向と撮像された画像の上下方向とを一致させることができ、受光面の傾きがない場合と同等の画像データを得ることができる。
【0009】
また、例えば、受光面に入射した光学像の全体に対応する画像を一時的に保持する画像保持手段を備え、画像データ作成手段は、画像保持手段に保持された画像と、傾き検出手段の検出結果とに基づいて、有効画像領域内に入射した光学像に対応する画像データを作成するようにしてもよい。傾き検出手段の検出結果に基づく有効画像領域の設定およびそれに対応する画像データの作成には相応の処理時間が必要であることから、まず受光面に入射した光学像の全体を一時的に保持した上で、当該画像から有効画像領域に対応する部分の画像データを作成することで、画像のブレや、ユーザーが指定した撮像タイミングとは異なるタイミングの画像が記録されるといった問題を未然に防止することができる。
【0010】
また、例えば、撮像手段の受光面に入射した光学像のうち有効画像領域と同一サイズの領域内の光学像を表示する表示手段を備えるようにしてもよい。このような表示手段は撮像装置においてファインダーまたはモニターとしての機能を果たすことができるが、撮像手段の受光面に入射した光学像の全てを表示するのではなく、有効画像領域と同一サイズの領域に対応する画像のみを表示する。こうすることにより、表示手段に表示される画像と、画像データとして記録された画像との間でサイズが同じになるので、撮像時にファインダーに収めた筈の画像の周縁部が画像データに記録されていないことに起因する違和感をユーザーに与えることが防止される。
【0011】
また、例えば、画像データ作成手段は、傾き検出手段の検出結果に基づいて設定した有効画像領域内の光学像に対応する画像データを作成する傾き補正モードと、傾き検出手段の検出結果によらず予め設定された有効画像領域内の光学像に対応する画像データを作成する補正なしモードとを切り替え実行可能であってもよい。傾き補正モードでは画像の傾きが補正される一方、補正なしモードでは傾きが補正されないので、これらを切り替え可能とすることで、ユーザーの要求に応じた、またはユーザーの撮影技術に応じた多様な撮像が可能となり、より多様なニーズに応えることができる。
【0012】
この場合において、傾き補正モードと補正なしモードとの間では有効画像領域のサイズが同一であることがより好ましい。こうすることで、モードの切り替えによって画像のサイズが変化することでユーザーに違和感を与えるという問題を回避することができる。
【0013】
さらにこの場合において、画像データ作成手段は、傾き検出手段により検出された受光面のローリング傾き角度の大きさに応じて、傾き補正モードと補正なしモードとを切り替えるようにしてもよい。この発明では、実際に画像データが作成される有効画像領域よりも大き目の受光面を有する撮像手段を用いることになる。ここで、受光面が大きく傾いている場合でもこれを補正できるようにするためには、有効画像領域のサイズよりも十分に大きな受光面を有する撮像手段が必要となり、コストおよび性能の点で不利となる。また、何らかの効果を狙ってユーザーが意図的に受光面を傾けて撮像を行う場合もあり、このような場合に傾き補正を行うことはユーザーの希望に反することになる。そこで、例えば傾きの大きさがある範囲にあるときには傾き補正モードを実行して傾きを補正する一方、大きな傾きの場合には補正を行わない補正なしモードを実行する、というように、傾きの大きさに応じてモードを切り替えるようにすることで、このような問題に対応することが可能となる。
【0014】
また、この発明の他の態様は、撮像手段の受光面に入射した光学像を画像データとして記録する撮像方法であって、上記課題を解決するため、前記受光面の法線周りの前記受光面のローリング傾き角度を検出し、前記受光面のうちその周縁部を除く中央部分に、検出された前記受光面のローリング傾き角度に応じた有効画像領域を設定し、前記有効画像領域に入射した光学像に対応する前記画像データを、前記撮像手段から出力される電気信号に基づき作成し記録することを特徴としている。
【0015】
このように構成された発明では、上記した撮像装置の発明と同様に、画像の解像度やサイズを犠牲にすることなく、撮像時の傾きが補正された画像データを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態であるデジタルカメラの構成を示すブロック図。
【図2】このデジタルカメラの主要な内部構造を模式的に示す図。
【図3】被写体画像の一例を示す図。
【図4】カメラが傾いた状態で撮像された画像の例を示す図。
【図5】この実施形態における傾き補正の原理を説明するための第1の図。
【図6】この実施形態における傾き補正の原理を説明するための第2の図。
【図7】この実施形態における撮像動作の第1の態様を示すフローチャート。
【図8】傾き補正処理により得られる画像データを模式的に示す図。
【図9】この実施形態における撮像動作の第2の態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1はこの発明にかかる撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。また、図2はこのデジタルカメラの主要な内部構造を模式的に示す図である。なお、図2においては本発明を説明するのに必要な構成のみを図示している。このデジタルカメラ1では、カメラ筐体10の内部に、当該カメラの主たる動作を司るプロセッサー部100、光学像を受光して電気信号に変換する撮像部200、および、ユーザーインターフェースを司るインターフェース部300を備えている。
【0018】
プロセッサー部100は、所定の制御プログラムを実行することでカメラ1の各部を制御して撮像やそれに伴う画像データの作成・記録など種々の機能を実現するCPU(Central processing unit)101と、撮像データを一時的に保存記憶するワークメモリ102と、撮像データに種々の処理の施して画像データを作成するDSP(Digital signal Processor)103と、こうして作成された画像データを保存記憶しておく画像メモリ104とを備えている。これらの機能については後に詳述する。さらに、CPU101には重力方向、すなわち鉛直下向き方向を基準としてカメラ筐体10の姿勢を検出する例えばジャイロセンサーからなる姿勢センサー40が接続されている。
【0019】
また、撮像部200は、複数のレンズおよびアクチュエータを有し被写体の光学像を結像させる光学系201と、光学系201の光軸に対し垂直な所定サイズの矩形形状である受光面202aを有し、該受光面202aに入射した光学像を電気信号に変換して出力する撮像素子、例えばCCD(Charge Coupled Device)202と、CCD202から出力される電気信号をデジタル信号に変換するAD変換器(A/D)203とを備えている。このような構成により、光学系201に入射した光学像に対応するデジタル信号が生成されて、該デジタル信号はプロセッサー部100に与えられる。
【0020】
CCD202の走査方向に直交する方向を当該CCD202の上下方向としたとき、図2(a)の斜視図に示すように、カメラ筐体10が正立状態に保持されたときにCCD202の上下方向が鉛直方向と一致し、かつ受光面202aの法線が水平方向となるように、CCD202はカメラ筐体10に取り付けられている。また、姿勢センサー40もカメラ筐体10に固定されている。したがって、カメラ筐体10の姿勢変化に応じてCCD202と姿勢センサー40とは一体的に動き、これにより姿勢センサー40は、重力方向に対するCCD202の受光面202aの姿勢を検出することが可能となっている。
【0021】
この実施形態では、図2(b)の正面図に示すように、カメラ筐体10が任意の姿勢で保持されたときの、鉛直方向に対するCCD202の上下方向の角度の差異、すなわち受光面202aの法線周りにおける受光面202aのローリング傾き角度Dを検出するために、姿勢センサー40の検出出力が用いられる。
【0022】
また、インターフェース部300は、CCD202に入射した画像や画像メモリ104に記憶された画像等を表示するための表示部、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)301と、ユーザーからの操作入力を受け付けるシャッターボタン302aを含む操作ボタン302と、画像データ等を外部装置と受け渡しする際の外部記録媒体、例えばメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等を装着可能なメディアスロット303と、これらとCPU101との間のデータ授受を司るインターフェース(I/F)304とを備えている。
【0023】
上記のように構成されたデジタルカメラ1では、CCD202に入射した光学像をそのまま画像データとして記録する撮像モード(補正なしモード)と、カメラ筐体10が傾いた状態で保持されることに起因する、水平面に対する画像の傾きを補正した上で画像データとして記録する撮像モード(傾き補正モード)とを実行可能となっている。以下、その原理および具体的な動作について説明する。
【0024】
図3は被写体画像の一例を示す図である。ここでは傾き補正についての理解を容易にするために、図3に示すような水平線Hを含む被写体画像を例として用いる。光学系201によってCCD202の受光面202aに集光される被写体の光学像Ioptは、図3に示すように、受光面202aの全体を覆うように結像する。CCD202は、光学像Ioptのうち受光面202a内に結像した像に対応する電気信号を出力する。まず、カメラ筐体10が傾いた状態で、かつ傾き補正なしで撮像が行われた場合を考える。
【0025】
図4はカメラが傾いた状態で撮像された画像の例を示す図である。図4(a)に示すように、光学系201に設けられたレンズ群により結像される光学像Iopt自体は、カメラ筐体10が傾いていてもその方向は不変である。一方、カメラ筐体10が鉛直方向に対して角度Dだけ傾いた状態では、CCD202の受光面202aの上下方向は光学像Ioptの上下方向(鉛直方向)に対して相対的に傾いた状態となる。このため、この状態で撮像された画像データは、図4(b)に示すように、CCD202の受光面202aの上下方向を基準として見たときには傾いた画像Ibを表すこととなってしまう。
【0026】
図5および図6はこの実施形態における傾き補正の原理を説明するための図である。図5(a)および図5(b)に示すように、この実施形態では、光学像IoptのうちCCD202の受光面202aに対応する部分を全て画像データに含めるのではなく、受光面202aのうちその周縁部を除いた矩形の中央領域CRに対応する部分を切り出して、この部分のみを画像データとして記録する。
【0027】
この場合において、受光面202aに対して中央領域CRが占める位置は一定ではない。より具体的には、矩形の形状およびサイズを維持しながら、受光面202aに垂直な(望ましくは受光面202aの中心を通る)法線周りにおいて中央領域CRが受光面202aに対して有する傾き角度を、姿勢センサー40の出力に応じて調整可能となっている。
【0028】
そのため、図6(a)に示すように、カメラ筐体10の傾きに起因して光学像Ioptの上下方向に対し受光面202aが傾いた状態であっても、中央領域CRをその上下方向が光学像Ioptの上下方向と一致するように設定すれば、図6(b)に示すように、カメラの傾きが補正された状態の画像Icに対応する画像データを作成することが可能となる。以下では、この実施形態に適用可能な、傾き補正を含む撮像動作の2つの態様について順に説明する。
【0029】
図7はこの実施形態における撮像動作の第1の態様を示すフローチャートである。この撮像動作では、光学系201を介して入射した被写体の光学像をCCD202により受光して電気信号に変換する(ステップS101)。受光した画像についてはリアルタイムでLCD301に表示させることで、LCD301をファインダーとして機能させる。このとき、CCD202の受光面202aに入射した光学像の全体を表示させるのではなく、図5(a)に示すように、周縁部を除いた中央領域CRの画像のみを表示させる(ステップS102)。このようにする理由は次の通りである。
【0030】
先に原理を説明したように、この実施形態では、CCD202の受光面202aに入射した光学像のうち周縁部を除外した中央領域CRに対応する部分のみを画像データとして記録する。このとき、ファインダーとしてのLCD301に周縁部も含めた画像を表示させると、ユーザーは、ファインダーに表示された画像全体が記録されるものと期待して構図を決定するであろう。それにもかかわらず、画像データには中央領域CRのみが記録され周縁部が欠落することになると、ユーザーが期待した結果を得られないこととなってしまう。
【0031】
この問題を解消するために、この実施形態における撮像動作の第1の態様においては、ファインダーとしてのLCD301にも中央領域CRに対応する画像のみを表示させるようにする。こうすることで、ファインダーを見ながらユーザーが決定した構図のまま画像を記録することが可能となる。
【0032】
なお、このときLCD301に表示させる画像は、図5(a)および図5(b)に示すように、CCD202の受光面202aの中央に固定した中央領域CRに対応するものである。したがってこのときの表示画像は、後で説明する傾き補正の有無にかかわらずカメラの傾きがそのまま反映されたものである。ファインダーとしてのLCD301に傾き補正後の画像を表示させる場合の動作については本実施形態における撮像動作の第2の態様として後に説明するが、補正処理には所定の処理時間を要するため、CCD202に入射した光学像が補正後の画像として表示されるまでにはある程度の時間遅れが避けられない。ここで説明する第1の態様では、この時間遅れを最小とし、かつユーザーが画像の傾きからカメラが傾いていることを把握しやすくするために、ファインダーとしてのLCD301に表示させる画像には補正処理を施さない。
【0033】
ユーザーにより構図が決定されシャッターボタン302aが押されるまでの間、上記動作を繰り返して実行する(ステップS103)。ユーザーによりシャッターボタン302aが押されると、その時点でCCD202に入射している光学像がCCD202により電気信号に変換されてAD変換器203を介して撮像データとしてCPU101に入力され、CPU101が該撮像データをワークメモリ102に記憶させる(ステップS104)。ワークメモリ102に記憶される撮像データは、CCD202の受光面202a全体に入射した光学像に対応するものである。また、この時点では傾きに対する補正はなされていない。
【0034】
続いて、姿勢センサー40から、シャッターボタン302aが押されたときのカメラ筐体10の傾き角度Dを取得する(ステップS105)。続いて、ユーザーによって選択されているカメラの撮像モードが、補正なしモード、傾き補正モードのいずれであるかを判定する(ステップS106)。この撮像モードについては、ユーザー操作によって予め設定されていてもよく、また撮像後に撮像データに対応する画像をLCD301に一時的に表示しユーザーに補正の要否を選択させるようにしてもよい。
【0035】
傾き補正処理の必要な傾き補正モードが選択されていた場合には、続いてカメラの傾き角度Dの絶対値が所定の閾値Dth以下であるかどうかを判断する(ステップS107)。原理的には、傾き角度Dが360度(または±180度)どの値であっても補正可能なようにすることはできる。しかしながら、このようにするには、実際に画像データとして記録される中央領域CRよりも十分に大きな受光面202aを有するCCD202が必要となり、またそのようにしてもCCD202の撮像能力の大部分が画像データに反映されないこととなり現実的でない。さらには、カメラ筐体10が極端に大きく傾いた状態で撮像がなされるケースとしては、ユーザーが意図的にそのようにしている場合もある。
【0036】
そこで、この実施形態では、カメラの傾き角度Dが所定の閾値Dth以下であるときには補正の対象とする一方、これより大きく傾いている場合には補正を行わないようにする。これにより、上記のような問題を解消することができる。補正の要否判断の基準となる閾値Dthについては任意に定めることができるが、ユーザーが水平に保持することを意図した場合の傾き量の最大値として、例えば10度程度とすることができる。
【0037】
姿勢センサー40により検出されたカメラ傾き角度Dがその閾値Dth以下であった場合には、傾き補正処理を行う。すなわち、ワークメモリ102に記憶された撮像データは各種画像処理を実行するDSP103に送られ、DSP103は、画像の傾きをキャンセルするため、撮像データが表す画像に対して角度(−D)の回転処理を施す(ステップS108)。傾き補正モードが選択されていない、またはカメラ傾き角度Dが閾値Dthを超えていた場合には、DSP103はこの処理をスキップし、ワークメモリ102に記憶された撮像データをそのまま保持する。
【0038】
続いてDSP103は、こうして必要に応じ補正された撮像データに基づき、中央領域CRに対応する部分について画像データを作成する(ステップS109)。中央領域CRの矩形サイズは、補正の有無および傾きの大きさに関わらず一定とする。画像データは標準規格として規格化された記録方式、例えばJPEG(Joint Photographic Expert Group)形式で作成されることが望ましい。こうして作成された画像データに対し、CPU101は、撮影日時や撮影条件などの付帯情報を付して画像ファイルを作成し、画像メモリ104に保存記憶する。画像メモリ104に記憶された画像ファイルについては、必要に応じインターフェース304を介してメディアスロット303に送ることで、メディアスロット303に装着されたメモリカード等の外部記録媒体に書き出すことができる。
【0039】
図8は傾き補正処理により得られる画像データを模式的に示す図である。同図において、破線で囲まれた正方形の1つ1つは、補正前の撮像データにおける画素を示している。カメラ筐体10が重力方向(鉛直下方)に対して角度Dだけ傾いた状態で撮像が行われたとき、CCD202の受光面202a全体で受光された画像Irも、傾いた画像としてその撮像データがワークメモリ102に記憶されている。一方、画像メモリ104に記憶すべき画像データは、傾いた画像Ir内の中央領域CRに相当する部分の撮像データに基づいて、しかも重力方向に直交する方向(水平方向)に沿って作成される。斜線を付した正方形の1つ1つは、補正後の画像データにおける画素を示している。
【0040】
このとき、補正後の画像データにおける画素と補正前の撮像データにおける画素とがほぼ一致する場合には、撮像データにおける画素の値を補正後の画像データにおける画素の値とすることができる。一方、補正後の画像データにおける画素が補正前の撮像データにおける複数の画素にまたがる場合には、それらの複数画素の値を面積比に応じて加重平均することで、補正後の画像データにおける画素の値を求めることができる。このように画素単位の演算により傾き補正を行うことで、補正後の画素数は補正前の画素数とほぼ同じになり、傾き補正による解像度の低下や画像品質の劣化を防止することができる。
【0041】
傾き補正が実行されない、またはカメラの傾き角度がゼロであった場合には、画像Irの上下方向と中央領域CRの上下方向は当然に一致することとなる。
【0042】
図9はこの実施形態における撮像動作の第2の態様を示すフローチャートである。前記したように、この態様の動作では、ファインダーとして機能するLCD301に傾き補正後の画像を表示させることが可能である。撮像動作の基本的な処理内容は第1の態様と共通しているので、共通部分については説明を省略する。
【0043】
この態様では、CCD202に入射した光学像を電気信号に変換し、撮像データを順次ワークメモリ102に記憶する(ステップS201、S202)。そして、姿勢センサー40からカメラ筐体10の傾き角度Dを取得し(ステップS203)、傾き補正を必要とする条件が充足されるとき、すなわち傾き補正モードが選択され(ステップS204)、傾き角度Dが所定の閾値Dth以下であるとき(ステップS205)には、DSP103により撮像データの回転処理を実行する(ステップS206)。そして、必要に応じて回転処理された撮像データのうち中央領域CRに対応する画像がLCD301に表示される(ステップS207)。これにより、この態様によれば、傾き補正後の画像をファインダーとしてのLCD301に表示させることができる。また、LCD301に表示された画像と同一の画像をデータとして記録することができる。
【0044】
上記動作を繰り返す間にユーザーによりシャッターボタンが押されると(ステップS208)、その時点における撮像データに必要に応じて回転処理が加えられたものに基づいて、中央領域CRに対応する画像データが作成されて(ステップS209)、画像ファイルとして画像メモリ104に記憶される(ステップS210)。こうして作成された画像データは、前記した第1の態様と同様に、カメラの傾きに起因する画像の傾きが補正されたものであり、しかも元の画像と同等の解像度や画像品質が維持されたものである。
【0045】
以上のように、この実施形態では、CCD202の受光面202aに入射した光学像のうち、周縁部を除外した中央領域CRに対応する部分のみを画像データとして記録する。このとき、中央領域CRは固定的に設定されるのではなく、姿勢センサー40により検出されるカメラ筐体10の傾き、ひいては受光面202aの傾きに応じて動的に設定される。より具体的には、カメラ筐体10が重力方向に対し傾き角度Dを有しているとき、CCD202の受光面202aに対する中央領域CRの傾きが(−D)となるように、中央領域CRが設定される。
【0046】
こうすることで、補正の有無によらず、また傾き角度の大小によらず、得られる画像データの解像度や画像品質をほぼ一定に保つことができる。また、受光面202a自体は中央領域CRよりも広い領域で光学像を受光しているため、傾き補正を行うに際して画像周縁部の画像情報が欠落するという問題が生じない。また、欠落した部分を補間拡大する従来技術のように画像品質が劣化することもない。
【0047】
また、撮像時のファインダーとして機能するLCD301は、CCD202が受光した画像の全体を表示するのではなく、そのうちの中央領域CRと同サイズの画像のみを表示する。そのため、ユーザーが撮像時にファインダーで確認した範囲とほぼ同じ範囲の画像を、その傾きのみを補正した状態で記録することが可能である。また、ユーザーから見れば、ファインダーで確認した画像の周縁部が欠落した状態で画像データが記録されるという違和感が解消される。
【0048】
以上説明したように、この実施形態においては、撮像部200、特にCCD202が本発明の「撮像手段」として機能している。また、CPU101およびDSP103が一体として本発明の「画像データ作成手段」として機能している。また、姿勢センサー40が本発明の「傾き検出手段」として機能している。さらに、この実施形態では、ワークメモリ102およびLCD301がそれぞれ本発明の「画像保持手段」および「表示手段」として機能している。また、この実施形態では、CCDの受光面202aにおける中央領域CRが、本発明の「有効画像領域」に相当している。
【0049】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、1画面分の撮像データをワークメモリ102に記憶させてから傾き補正を行っているが、図8からわかるように、画像の傾きが小さければ補正に必要なCCD202の走査ライン数は少なくて済む。このことから、ワークメモリ102は1画面分の撮像データの一部のみを一時的に保持し、DSP103が順次傾き補正を行って画像データを作成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ユーザー設定に応じて、またはカメラの傾き角度の大きさに応じて補正の要否を決定しているが、例えば次のようにしてもよい。この種のカメラにおいては、ユーザーの利便性を高めるために、撮影対象物に応じて撮像条件を予め設定した複数の撮影モードを有したものがある。このような撮影モードとしては、例えば人物を撮影する場合に適合させたポートレートモードや、風景を撮影する場合に適合させた風景モードなどがある。このような撮影モードに応じて、補正を行うか否かを決定するようにしてもよい。すなわち、例えば、風景モードが選択されているときには傾き補正処理を実行可能とする一方、ポートレートモードでは傾き補正を実行しない、というようにすることができる。こうすることでユーザーは、風景については水平が保たれた画像を得ることができる一方、人物を主とする画像については任意の構図で撮像を行うことができる。
【0051】
また、上記実施形態ではデジタルカメラ1が傾き補正を施した画像データを作成して画像ファイルとして保存するようにしているが、本発明にかかる傾き補正は、デジタルカメラから画像ファイルを受け取ったパーソナルコンピューターやプリンターなどの外部装置で実行することも可能である。この場合、CCD202に入射した光学像全体に対応する撮像データおよび姿勢センサー40から取得したカメラの傾き量を画像ファイルに保存しておき、画像ファイルを受け取った外部装置側で、これらの情報に基づき、画像全体から中央領域部分を切り出して有効な画像データとすればよい。
【符号の説明】
【0052】
40…姿勢センサー(傾き検出手段)、 101…CPU(画像データ作成手段)、 102…ワークメモリ(画像保持手段)、 103…DSP(画像データ作成手段)、 200…撮像部(撮像手段)、 202…CCD(撮像手段)、 301…LCD(表示手段)、 CR…中央領域(有効画像領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学像を受光する受光面を有し、該受光面に入射した光学像に対応する電気信号を出力する撮像手段と、
前記受光面のうちその周縁部を除く中央部分を有効画像領域として、該有効画像領域内に入射した光学像に対応する画像データを、前記撮像手段から出力される電気信号に基づき作成する画像データ作成手段と、
前記受光面の法線周りの前記受光面のローリング傾き角度を検出する傾き検出手段と
を備え、
前記画像データ作成手段は、前記受光面に設定する前記有効画像領域の前記受光面に対する法線周りの傾き角度を、前記傾き検出手段の検出結果に応じて設定する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記受光面の法線方向が略水平方向となるように配置され、
前記画像データ作成手段は、前記受光面内における前記有効画像領域の上下方向が鉛直方向と一致するように、前記有効画像領域を設定する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記受光面に入射した光学像の全体に対応する画像を一時的に保持する画像保持手段を備え、
前記画像データ作成手段は、前記画像保持手段に記憶された画像と、前記傾き検出手段の検出結果とに基づいて、前記有効画像領域内に入射した光学像に対応する前記画像データを作成する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像手段の前記受光面に入射した光学像のうち、前記有効画像領域と同一サイズの領域内の光学像を表示する表示手段を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像データ作成手段は、前記傾き検出手段の検出結果に基づいて設定した前記有効画像領域内の光学像に対応する前記画像データを作成する傾き補正モードと、前記傾き検出手段の検出結果によらず予め設定された前記有効画像領域内の光学像に対応する前記画像データを作成する補正なしモードとを切り替え実行可能な請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記傾き補正モードと前記補正なしモードとの間で前記有効画像領域のサイズが同一である請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像データ作成手段は、前記傾き検出手段により検出された前記受光面のローリング傾き角度の大きさに応じて、前記傾き補正モードと前記補正なしモードとを切り替える請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像手段の受光面に入射した光学像を画像データとして記録する撮像方法において、
前記受光面の法線周りの前記受光面のローリング傾き角度を検出し、
前記受光面のうちその周縁部を除く中央部分に、検出された前記受光面のローリング傾き角度に応じた有効画像領域を設定し、
前記有効画像領域に入射した光学像に対応する前記画像データを、前記撮像手段から出力される電気信号に基づき作成し記録する
ことを特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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