説明

撮像装置

【課題】不具合画像データの撮影を防止する撮像装置を提供する。
【解決手段】 デジタルスチルカメラ10は通常撮影モード及びマクロ撮影モードを備える。マクロ撮影モードが選択されたデジタルスチルカメラ10を用いて、通常距離の被写体の撮影を行う。顔表示画素抽出部45は、撮影によって得られた画像データGD1の被写体の顔の幅を表す画素を顔表示画素数として抽出する。判定部47は、顔表示画素数と予めROM26に格納される参照顔表示画素数を比較することにより、デジタルスチルカメラ10と被写体間の距離が、マクロ撮影が可能な距離であるか否かを判定する。判定部47が、顔表示画素数を参照顔表示画素数よりも小さいと判定した場合は、警告手段を用いて撮影者に警告を行い、撮り直しを喚起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不具合画像データの撮影を防止する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置として、CCDなどの固体撮像素子で被写体光を撮像して得られた撮像信号をデジタルの画像データに変換し、この画像データをメモリカードなどの記憶媒体に記憶するデジタルスチルカメラやカメラ付き携帯電話が知られている。これらの撮像装置には、撮影に同期してストロボ発光を行い、不足する被写体輝度を補うストロボ装置や近距離の被写体の撮影に適したマクロ撮影モードを備えている。通常撮影モードは、被写体までの距離(以下、被写体間距離という。)が中、遠距離(例えば、1m〜無限遠)の撮影のための撮影モードであり、マクロ撮影モードは、被写体間距離が近距離(例えば、10cm〜1m)の撮影のための撮影モードである。このマクロ撮影モード下で通常撮影(中、遠距離の撮影)を行うと、目的の被写体にピントが合わず、良質の画像を得ることができない。そのため、デジタルスチルカメラに、被写体間距離を計測可能な測距センサを搭載し、選択した撮影モードに適さない被写体間距離である場合には、撮影者に事前に通知することが好ましい。
【0003】
特許文献1に開示されているカメラは、測距センサであるマルチオートフォーカス(以下、マルチAFという。)を用いて被写体光を読み取り、適正なストロボ発光量や露出量の制御を可能にする。このようなマルチAFは、対象物(被写体)に赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度により距離を検出する。
【特許文献1】特開平9−73116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被写体間距離を測定するための測距手段として特許文献1で開示されるマルチAFを用いた場合、温度変化に伴うレンズの変形に起因して、検出距離の誤差が生じる。このような検出距離の誤差により、被写体間距離が、選択した撮影モードに適さない場合、或いはストロボ光の到達可能範囲外にある場合ことを撮影者が気づかないまま撮影を行うと、ピントの合わない画像データや輝度の低い画像データといった不具合画像データとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、不具合画像データの撮影を防止する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通常距離の被写体の撮影を行う通常撮影モードと、近距離の前記被写体の撮影を行うマクロ撮影モードとから撮影モードを選択する撮影モード選択手段と、撮影レンズを通して得られる前記被写体からの被写体光を撮像信号として光電変換する撮像手段とを備え、前記撮像手段が、前記撮影レンズから得られた前記被写体光から前記撮像信号を生成し、前記撮像信号をデジタルの画像データとして記憶媒体に格納する撮像装置において、前記撮影モード選択手段がマクロ撮影モードを選択していることを検出するマクロ撮影モード検出手段と、前記画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、前記マクロ撮影モードで撮影可能な距離範囲内における最遠距離を第1最遠距離、この第1最遠距離における前記被写体についての前記顔表示画素数を第1参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第1参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第1判定手段と、撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、前記第1判定手段が、前記顔表示画素数を前記第1参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第1警告をすることを特徴とする。
【0007】
撮影時に前記被写体にストロボ光を発光するストロボ撮影モードを使用するか否かを選択するストロボ撮影モード選択手段と、前記ストロボ撮影モード選択手段が前記ストロボ撮影モードの使用を選択していることを検出するストロボ撮影モード検出手段と、前記ストロボ光が前記被写体に到達可能な距離範囲内における最遠距離を第2最遠距離、この第2最遠距離における前記被写体の前記顔表示画素数を第2参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第2参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第2判定手段とを備え、前記第2判定手段が、前記顔表示画素数を前記第2参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第2警告をすることが好ましい。
【0008】
前記第1または第2最遠距離、前記撮像装置の画面対角線長、及び前記撮影レンズの焦点距離から決定される前記第1または第2参照顔表示画素数を用いることが好ましい。
【0009】
前記第1及び第2参照顔表示画素数が、前記第1または第2最遠距離における前記被写体の顔の幅を表す画素数であることが好ましく、前記被写体の顔の幅の平均値を表す画素数であることがより好ましい。
【0010】
前記警告手段が、画像を表示する画像表示装置であることが好ましく、前記第1または第2警告として、撮り直しを促すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、撮影時に被写体にストロボ光を発光するストロボ撮影モードを使用するか否かを選択するストロボ撮影モード選択手段と、撮影レンズを通して得られる前記被写体からの被写体光を撮像信号として光電変換する撮像手段とを備え、前記撮像手段が、前記撮影レンズから得られた前記被写体光から前記撮像信号を生成し、前記撮像信号をデジタルの画像データとして記憶媒体に格納する撮像装置において、前記ストロボ撮影モード選択手段が前記ストロボ撮影モードの使用を選択していることを検出するストロボ撮影モード検出手段と、前記画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、前記ストロボ光が前記被写体に到達可能な距離範囲内における最遠距離を第2最遠距離、この第2最遠距離における前記被写体についての前記顔表示画素数を第2参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第2参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第2判定手段と、撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、前記第2判定手段が、前記顔表示画素数を前記第2参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第2警告をすることを特徴とする。
【0012】
前記第2最遠距離、前記撮像装置の画面対角線長、及び前記撮影レンズの焦点距離から決定される前記第2参照顔表示画素数を用いることが好ましい。
【0013】
前記第2参照顔表示画素数が、前記第2最遠距離における前記被写体の顔の幅を表す画素数であることが好ましく、前記被写体の顔の幅の平均値を表す画素数であることがより好ましい。
【0014】
前記警告手段が、画像を表示する画像表示装置であることが好ましく、前記第2警告として、撮り直しを促すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撮像装置によれば、撮影モード選択手段がマクロ撮影モードを選択していることを検出するマクロ撮影モード検出手段と、画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、マクロ撮影モードで撮影可能な距離範囲内における最遠距離を第1最遠距離、この第1最遠距離における被写体についての顔表示画素数を第1参照顔表示画素数とし、顔表示画素数及び第1参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第1判定手段と、撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、第1判定手段が、顔表示画素数を第1参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、警告手段を用いて第1警告をするため、誤ってマクロ撮影モードで撮影した旨を、撮影者へ撮影直後に通知可能になり、撮影機会の喪失を回避することができる。
【0016】
また、本発明の撮像装置によれば、ストロボ撮影モードがストロボ撮影モードの使用を選択することを検出するストロボ撮影モード検出手段と、画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、ストロボ光が被写体に到達可能な距離範囲内における最遠距離を第2最遠距離、この第2最遠距離における被写体についての顔表示画素数を第2参照顔表示画素数とし、顔表示画素数及び第2参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する判定手段と、撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、判定手段が、顔表示画素数を第2参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、警告手段を用いて第2警告をするため、ストロボ光が届かずに十分な被写体輝度が得られない旨を撮影者へ通知可能になり、撮影機会の喪失を回避することができる。
【0017】
第1または第2最遠距離、撮像装置の画面対角線長、及び撮影レンズの焦点距離から決定される第1または第2参照顔表示画素数を用いる。また、第1及び第2参照顔表示画素数が、第1または第2最遠距離における被写体の顔の幅を表す画素数であり、第1及び第2参照顔表示画素数が、第1或いは第2最遠距離における被写体の顔の幅の平均値を表す画素数であるため、判定手段による判定演算処理が簡易になる。
【0018】
警告手段が、画像を表示する画像表示装置であり、警告として、撮り直しを促すメッセージを画像表示装置に表示させる表示制御手段を備えるため、撮影者に撮り直しを喚起することが可能になり、結果的に、撮影機会の喪失を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1において、デジタルスチルカメラ10は、カメラボディ11の前面から突出したレンズ鏡胴12を備えている。レンズ鏡胴12には撮影レンズ13が保持されている。ストロボ発光部14は、ストロボ撮影モードの選択時に、撮影時の被写体輝度を補うためのストロボ光を発光する。
【0020】
デジタルスチルカメラ10の上面には、電源スイッチのオン/オフと、撮影モード/再生モード/設定モードの切り換えを行うときに操作される操作ダイヤル15と、レリーズボタン16が設けられている。レリーズボタン16は、半押し操作と全押し操作の二段階の押下操作が可能である。レリーズボタン16を半押し操作すると、選択された撮影モードにおける露出調整及びフォーカス調節が行われる。レリーズボタン16を半押し操作した状態からレリーズボタン16を押し込む全押し操作を行うと、露出調整及びフォーカス調節が施された一画面分の撮像信号が画像データに変換される。更に、この画像データは、後述する各種画像処理を施され、メモリカード18に記憶される。
【0021】
図2において、デジタルスチルカメラ10の後面には、液晶の表示パネル20が設けられている。表示パネル20は、撮影モードでは電子ビューファインダとして機能し、撮像されたスルー画及び撮影者に所定の情報を通知するための警告画面等を表示する。また、再生モードでは、画像データとして記憶された静止画を表示する。更に、設定モードでは、表示パネル20に各種設定画面を表示する。
【0022】
メモリカード18は、デジタルスチルカメラ10の側面に設けられたメモリカードスロット10aに着脱自在に装填される。撮影モードで得た画像データはこのメモリカード18に記憶される。
【0023】
カーソルボタン21は、各種の設定の切り換えや、表示パネル20に表示される各種処理確認画面上の操作に用いられる。決定ボタン22は、カーソルボタン21よって選択された処理を実行するためのボタンである。撮影モード選択ボタン23は、近距離の被写体を撮影するためのマクロ撮影モードと、通常距離の被写体の撮影するための通常撮影モードを切り替えるボタンである。ストロボボタン24は、撮影時に被写体にストロボ光を発光するストロボ撮影モードを使用するか否かを切り替えるボタンである。これらのボタン23、24の操作により、被写体の撮影に適する撮影モードを選択することができる。
【0024】
図3において、制御部25は、ROM26に記憶されたシーケンスプログラムをワークメモリであるRAM27に読み出して実行する。制御部25は、操作ダイヤル15、レリーズボタン16、カーソルボタン21、決定ボタン22、撮影モード選択ボタン23及びストロボボタン24の操作により発生する操作信号に従ってデジタルスチルカメラ10の各部を制御する。
【0025】
撮影モード選択ボタン23を押下することにより、撮影モード切替信号が制御部25に入力される。制御部25は、この撮影モード切替信号の入力の検出に応じて、通常撮影モード及びマクロ撮影モードのいずれかの撮影モードを排他的に選択する。このようにして、選択された撮影モードの情報は、RAM27に格納される。
【0026】
レンズ鏡胴12内には、ズームレンズ30、フォーカスレンズ31から構成される撮影レンズ13及び絞り機構32が組み込まれている。制御部25の制御の下、ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31は、ドライバ回路を備えたズームモータ30a及びフォーカスモータ31aによって光軸方向に沿って移動され、光学撮影倍率の変更と、焦点調整とが行われる。このズームレンズ30及びフォーカスレンズ31は、制御部25が選択する撮影モードに応じる移動可能範囲の中で移動自在となっている。また、絞り機構32は、ドライバ回路を備えたアクチュエータ32aによって駆動され、絞り径が切り換えられる。
【0027】
撮影レンズ13の背後には、CCDイメージセンサ33が配置されている。CCDイメージセンサ33は、周知のように、多数の受光素子をマトリックス状に配列された光電面を備えており、ズームレンズ30、フォーカスレンズ31及び絞り機構32を通過して光電面に結像した被写体光を撮像信号として光電変換する。
【0028】
CCDイメージセンサ33は、CCDドライバ33aによって駆動される。CCDイメージセンサ33の電荷蓄積時間(露出時間)は、CCDドライバ33aから供給される電子シャッタ駆動信号に応じて決められる。そして、CCDドライバ33aから供給される垂直転送クロック及び水平転送クロックに同期して、画素毎に蓄積された電荷が1ラインずつシリアルな撮像信号として出力される。
【0029】
CDS/AMP回路34は、相関二重サンプリング回路(CDS)と、増幅器(AMP)とからなる。CDSは、CCDイメージセンサ33が出力した撮像信号からR,G,Bのアナログ画像信号を生成する。AMPは、CDSによって生成されたR,G,Bのアナログ画像信号を増幅する。A/D変換器35は、CDS/AMP回路34から出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号である画像データに変換する。A/D変換器35によって、デジタル変換されたデジタルの画像データはSDRAM36に一旦格納される。
【0030】
画像信号処理回路37は、SDRAM36から読み出した画像データに対し、階調変換、ホワイトバランス補正、γ補正、YC変換処理、測距処理などの各画像処理を施す。VRAM38は、画像信号処理回路37で各種画像処理が施された画像データを表示用画像データとして一時的に記憶する。ビデオエンコーダ39は、VRAM38に書き込まれた表示用画像データ、または、ROM26に格納される警告画面データをコンポジット信号に変換し、スルー画または警告画面を表示パネル20に表示する。
【0031】
圧縮伸長処理回路41は、レリーズボタン16の全押し操作により撮影が実行されたときに、画像信号処理回路37で各種画像処理が施された画像データに対して、例えば、JPEG形式などの所定の圧縮形式で画像圧縮を施す。圧縮された画像データは、メディアコントローラ42を経由して、メモリカード18に記憶される。
【0032】
ストロボ発光部14は、制御部25からのストロボ発光コマンドを検出すると、ストロボ発光部14からストロボ光を発光する。このストロボ光を被写体に照射させて、撮影時の被写体輝度を補う。
【0033】
顔表示画素抽出部45は、顔表示画素判定条件に基づき、SDRAM36に格納された画像データから人の顔の幅を表す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出処理を行う。この顔表示画素判定条件は、人の顔や顔を構成する目、鼻及び口などの色、形状、配置などから構成され、予めROM26に格納される。顔表示画素抽出処理にて抽出された顔表示画素数は、SDRAM36に一旦格納される。
【0034】
判定部47は、顔表示画素抽出部45により画像データから抽出される顔表示画素数と参照顔表示画素数のうちいずれが小さいかを判定する。この参照顔表示画素数は、デジタルスチルカメラ10が有するCCDイメージセンサ33の画面対角線長、撮影レンズ13の焦点距離、及び被写体間距離から決定され、ROM26に予め格納される。
【0035】
次に、参照顔表示画素数の算出方法について図4〜図6を用いて説明する。以下に述べる3つの手順により、参照顔表示画素数を得ることができる。第1の手順では、画角の関係式を用いて、画像データGD1に収められる対角線距離X1を算出する。第2の手順では、対角線距離X1から画像データを構成する1画素当たりの距離Z1を得る。第3の手順では、1画素当たりの距離Z1及び顔の幅の平均値である基準幅寸法A1から参照顔表示画素数A0を得る。
【0036】
これら第1〜第3の各手順の詳細について説明する。はじめに、画像データGD1に収められる対角線距離X1を求める第1の手順について説明する。図4のように、焦点距離F1を有する撮影レンズ13と、画面対角線長G1を有するCCDイメージセンサ33を有するデジタルスチルカメラ10を用いて、撮影レンズ13から被写体間距離Y1だけ離れた被写体H1を撮像し、画像データに収めることができる実際の対角線距離X1は、画角の関係式より、tan(θ/2)=G1/(2・F1)のように表される。また、対角線距離X1、被写体間距離Y1及び画角θの関係は、tan(θ/2)=X1/(2・Y1)のように表される。この2式から、G1/(2・F1)=X1/(2・Y1)の式Aが導かれる。この式Aにおける焦点距離F1、画面対角線長G1は、撮影レンズ13、CCDイメージセンサ33によって決定される。すなわち、この式Aより、被写体間距離Y1における対角線距離X1を求めることができる。
【0037】
次に、対角線距離X1から画像データGD1を構成する1画素当たりの距離Z1を得る第2の手順の説明をする。図4において、CCDイメージセンサ33が生成する撮像信号から得られる画像データGD1を図5及び図6に示す。図5のように、この画像データGD1が示す実際の対角線距離、及び水平方向の距離は、それぞれX1、B1である。対角線距離X1は前述した式Aを用いて、また、水平方向の距離B1は、対角線距離X1及び画像データGD1のアスペクト比より求めることができる。次に、画像データGD1に収められる水平方向の距離B1を、CCDイメージセンサ33の水平方向の画素数B0(図6)で除算すると、画像データGD1が構成する1画素当たりの距離Z1を得ることができる。
【0038】
次に、1画素当たりの距離Z1及び顔の幅の平均値から参照顔表示画素数を得る第3の手順について説明する。予めROM26に格納される人の顔の幅の平均値を表す基準幅寸法A1を、1画素当たりの距離Z1で除算すると、平均的な人の顔の幅を表す参照顔表示画素数A0を得ることができる。このように被写体間距離Y1における被写体H0の参照顔表示画素数A0を、計算によって求めることができる。
【0039】
この被写体間距離Y1には、撮影モード選択ボタン23或いはストロボボタン24の操作によって選択された撮影モードに応じた第1或いは第2最遠距離が用いられる。この第1最遠距離は、デジタルスチルカメラ10が有するマクロ撮影モードにおけるズームレンズ30及びフォーカスレンズ31の移動可能範囲によって、第2最遠距離は、ストロボ発光部14が発光するストロボ光の到達距離により決定される。このような第1或いは第2最遠距離を被写体間距離Y1として、前述した第1〜第3の手順を行うことにより、第1或いは第2最遠距離における参照顔表示画素数を求めることができる。なお、マクロ撮影モード及びストロボ撮影モードが同時に選択される場合は、第1及び第2最遠距離のうち、いずれか小さいほうの最遠距離を被写体間距離Y1とすればよい。
【0040】
次に、本発明のデジタルスチルカメラ10の動作について、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、デジタルスチルカメラ10で被写体の撮影を行う際には、操作ダイヤル15を操作してデジタルスチルカメラ10の電源を投入し、撮影モードを選択する。
【0041】
撮影モード下において、撮影レンズ13を透過して形成される被写体光は、CCDイメージセンサ33により光電変換され撮像信号となる。この撮像信号は、CDS/AMP回路34を経由してアナログの画像データとなり、更に、A/D変換器35でデジタルの画像データに変換される。
【0042】
デジタル変換された画像データはSDRAM36に順次記録される。SDRAM36に記録された画像データは、画像信号処理回路37により、階調変換、ホワイトバランス補正、γ補正、YC変換処理などの各種画像処理を施された後、表示用画像データとなってVRAM38に格納される。VRAM38に格納された表示用画像データは、ビデオエンコーダ39を介して表示パネル20にスルー画として表示される。この状態でレリーズボタン16を半押し操作すると、露出調整及びフォーカス調整が行われ、撮影準備処理が施される。
【0043】
次に、撮影モード選択ボタン23、ストロボボタン24の操作によって撮影モードを選択する。マクロ撮影モードが選択された場合は、制御部25の制御の下、ズームモータ30a及びフォーカスモータ31aは、撮影レンズ13を構成するズームレンズ30及びフォーカスレンズ31をマクロ撮影モードに応じた位置に移動する。また、ストロボ撮影モードが選択された場合は、ストロボ発光部14は、ストロボ撮影に備え、所定の処理を行う(ステップS100)。ここで、制御部25は、選択した撮影モードの情報をRAM27に格納する。
【0044】
更に、制御部25は、RAM27に格納される撮影モードの情報を読み込み、有効となっている撮影モードに応じて参照顔表示画素数A0を設定する。マクロ撮影モードが選択される場合は、第1最遠距離に応じた参照顔表示画素数が参照顔表示画素数A0として設定される。一方、ストロボ撮影モードが有効となっている場合は、第2最遠距離に応じた参照顔表示画素数が参照顔表示画素数A0として設定される。なお、マクロ撮影モード及びストロボ撮影モードの両者が有効となっている場合は、第1或いは第2最遠距離に応じる参照顔表示画素数のうち、いずれか大きいほうの参照顔表示画素数が参照顔表示画素数A0として設定される(ステップS110)。
【0045】
レリーズボタン16が全押し操作され、制御部25がレリーズボタン16の全押し操作を検出すると、所定の処理を通して、1枚の画像データGD1を得る。この画像データGD1は、SDRAM36に一旦格納される。(ステップS120)。ストロボ撮影モードが有効である場合には、制御部25がレリーズボタン16の全押し操作を検出時に、ストロボ発光部14にストロボ光を発光させる。
【0046】
制御部25は、RAM27から撮影モードの情報を読み込み、マクロ撮影モードまたはストロボ撮影モードのいずれかが選択されたか否かを判定する(ステップS130)。マクロ撮影モードまたはストロボ撮影モードが選択されていない場合はステップS200へ、マクロ撮影モードまたはストロボ撮影モードが選択されている場合はステップS140へ、デジタルスチルカメラ10の動作状態は遷移する。
【0047】
顔表示画素抽出部45は、ROM26から顔表示画素判定条件を読み出し、この顔表示画素判定条件に基づいて、画像データGD1に顔表示画素抽出処理を施す。この顔表示画素抽出処理により、人の顔の幅を表す顔表示画素数を得る。この顔表示画素数は、SDRAM36に一旦格納される(ステップS140)。
【0048】
次に、判定部47は、顔表示画素抽出処理で得られた顔表示画素数が、参照顔表示画素数A0より小さいか否かを判定する(ステップS150、S160)。判定部47が、顔表示画素数を、参照顔表示画素数A0より大きいと判定する場合には、デジタルスチルカメラ10の動作状態はステップS200へ遷移する。一方、判定部47が、顔表示画素数が、参照顔表示画素数A0より小さいと判定する場合には、制御部25の制御の下で、ビデオエンコーダ39は、再撮影を促す警告メッセージを表示パネル20に表示する(図7ステップS170)。
【0049】
この警告メッセージは、判定部47で使用された判定条件に応じている。制御部25の制御の下、ビデオエンコーダ39は、この判定処理に、第1最遠距離に基づく参照顔表示画素数A0が用いられる場合は第1警告メッセージMS1(図8)、第2最遠距離に基づく参照顔表示画素数A0が用いられる場合は第2警告メッセージMS2(図9)を、表示パネル20に表示する。
【0050】
制御部25が、この第1或いは第2警告メッセージMS1、MS2の表示中に各ボタン21、22による操作信号を検出すると、制御部25の制御の下で、ビデオエンコーダ39は、表示パネル20に所定の選択画面を表示する(ステップS180)。この選択画面表示中のボタン21、22の操作によって、当該画像データGD1を破棄して再撮影を行うか否かを撮影者に選択させる。この選択画面表示中に、制御部25が再撮影の許可信号を検出すると、画像データGD1の保存処理を行わずに、デジタルスチルカメラ10の動作状態はステップS100に遷移する。一方、この選択画面表示中に、制御部25が再撮影の却下信号を検出すると、画像データGD1を保持したまま、デジタルスチルカメラ10の動作状態はステップS200に遷移する。
【0051】
ステップS200では、SDRAM36に格納される当該画像データGD1には所定の画像圧縮処理が施され、メディアコントローラ42は、圧縮処理が施された画像データGD1をメモリカード18に格納する。
【0052】
上記実施形態では、参照顔表示画素数A0を計算によって求めたが、これに限らず、実際の撮影を用いた結果を元に参照顔表示画素数A0を算出してもよい。例えば、図4のような被写体間距離Y1における被写体H1を撮影して得られる画像データに顔表示画素抽出処理を施して得られる顔表示画素数を、参照顔表示画素数A0とすることも可能である。
【0053】
上記実施形態では、人の顔の幅の平均値を基準幅寸法A1として用いて参照顔表示画素数A0を算出したが、これに限らず、被写体の顔の幅の実測寸法を基準幅寸法A1として、参照顔表示画素数A0を算出してもよい。
【0054】
上記実施形態ではデジタルスチルカメラ10について記載したが、これに限らず、カメラ付き携帯電話などその他の撮像装置に本発明を適用することにより同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のデジタルスチルカメラの前面側の斜視図である。
【図2】本発明のデジタルスチルカメラの背面側の斜視図である。
【図3】本発明のデジタルスチルカメラの内部構成を示すブロック図である。
【図4】焦点距離F1の撮像レンズと、画面対角線長G1のCCDイメージセンサを有するデジタルスチルカメラを用いて、撮像レンズから被写体間距離Y1だけ離れた被写体H1を撮像したときに、画像データとして収めることができる対角線距離X1の関係を示した説明図である。
【図5】図4における被写体H1を撮影して得られる画像データGD1、及び、画像データGD1に収めることのできる対角線距離X1を表す説明図である。
【図6】図4における被写体H1を撮影して得られる画像データGD1、及び、画面対角線長G1を表す説明図である。
【図7】本発明のデジタルスチルカメラの動作のフローチャートである。
【図8】表示パネルに第1警告メッセージMS1を表示した状態を示す説明図である。
【図9】表示パネルに第2警告メッセージMS2を表示した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 デジタルスチルカメラ
13 撮影レンズ
14 ストロボ発光部
15 操作ダイヤル
16 レリーズボタン
18 メモリカード
20 表示パネル
23 撮影モード選択ボタン
24 ストロボボタン
25 制御部
30 ズームレンズ
31 フォーカスレンズ
33 CCDイメージセンサ
39 ビデオエンコーダ
42 メディアコントローラ
45 顔表示画素抽出部
47 判定部
GD1 画像データ
A0 参照顔表示画素数
A1 基準幅寸法
F1 焦点距離
G1 画面対角線長
X1 対角線距離
Y1 被写体間距離
MS1 第1警告メッセージ
MS2 第2警告メッセージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常距離の被写体の撮影を行う通常撮影モードと、近距離の前記被写体の撮影を行うマクロ撮影モードとから撮影モードを選択する撮影モード選択手段と、
撮影レンズを通して得られる前記被写体からの被写体光を撮像信号として光電変換する撮像手段とを備え、
前記撮像手段が、前記撮影レンズから得られた前記被写体光から前記撮像信号を生成し、前記撮像信号をデジタルの画像データとして記憶媒体に格納する撮像装置において、
前記撮影モード選択手段がマクロ撮影モードを選択していることを検出するマクロ撮影モード検出手段と、
前記画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、
前記マクロ撮影モードで撮影可能な距離範囲内における最遠距離を第1最遠距離、この第1最遠距離における前記被写体についての前記顔表示画素数を第1参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第1参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第1判定手段と、
撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、
前記第1判定手段が、前記顔表示画素数を前記第1参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第1警告をすることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮影時に前記被写体にストロボ光を発光するストロボ撮影モードを使用するか否かを選択するストロボ撮影モード選択手段と、
前記ストロボ撮影モード選択手段が前記ストロボ撮影モードの使用を選択していることを検出するストロボ撮影モード検出手段と、
前記ストロボ光が前記被写体に到達可能な距離範囲内における最遠距離を第2最遠距離、この第2最遠距離における前記被写体の前記顔表示画素数を第2参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第2参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第2判定手段とを備え、
前記第2判定手段が、前記顔表示画素数を前記第2参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第2警告をすることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1または第2最遠距離、前記撮像装置の画面対角線長、及び前記撮影レンズの焦点距離から決定される前記第1または第2参照顔表示画素数を用いることを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1及び第2参照顔表示画素数が、前記第1または第2最遠距離における前記被写体の顔の幅を表す画素数であることを特徴とする請求項1ないし3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1及び第2参照顔表示画素数が、前記第1或いは第2最遠距離における前記被写体の顔の幅の平均値を表す画素数であることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記警告手段が、画像を表示する画像表示装置であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1または第2警告として、撮り直しを促すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
撮影時に被写体にストロボ光を発光するストロボ撮影モードを使用するか否かを選択するストロボ撮影モード選択手段と、
撮影レンズを通して得られる前記被写体からの被写体光を撮像信号として光電変換する撮像手段とを備え、
前記撮像手段が、前記撮影レンズから得られた前記被写体光から前記撮像信号を生成し、前記撮像信号をデジタルの画像データとして記憶媒体に格納する撮像装置において、
前記ストロボ撮影モード選択手段が前記ストロボ撮影モードの使用を選択していることを検出するストロボ撮影モード検出手段と、前記画像データから顔を示す画素の集合体を顔表示画素数として抽出する顔表示画素抽出手段と、
前記ストロボ光が前記被写体に到達可能な距離範囲内における最遠距離を第2最遠距離、この第2最遠距離における前記被写体についての前記顔表示画素数を第2参照顔表示画素数とし、前記顔表示画素数及び前記第2参照顔表示画素数のうちいずれかが小さいかを判定する第2判定手段と、
撮影者に撮り直しを警告する警告手段とを備え、
前記第2判定手段が、前記顔表示画素数を前記第2参照顔表示画素数よりも小さいと判定する場合、前記警告手段を用いて第2警告をすることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
前記第2最遠距離、前記撮像装置の画面対角線長、及び前記撮影レンズの焦点距離から決定される前記第2参照顔表示画素数を用いることを特徴とする請求項8記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第2参照顔表示画素数が、前記第2最遠距離における前記被写体の顔の幅を表す画素数であることを特徴とする請求項8または9記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第2参照顔表示画素数が、前記第2最遠距離における前記被写体の顔の幅の平均値を表す画素数であることを特徴とする請求項10記載の撮像装置。
【請求項12】
前記警告手段が、画像を表示する画像表示装置であることを特徴とする請求項8ないし11いずれか1項記載の撮像装置。
【請求項13】
前記第2警告として、撮り直しを促すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする請求項12記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−74364(P2007−74364A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259120(P2005−259120)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】