説明

撮像装置

【課題】 チルト駆動部に接続されるチルトケーブルのコストを抑え、当該チルトケーブルの反力によるチルト回転時の負荷発生を防止するとともに、当該チルトケーブルの耐久性を向上させることができる。
【解決手段】 レンズユニット8と、レンズユニット8をチルト回転可能に支持するパンベース2と、レンズユニット8をチルト回転させるチルトモーター5と、レンズユニット8と一体的にチルト回転可能に設けられた撮像センサー基板9と、を備える撮像装置であって、チルトモーター5と撮像センサー基板9とに接続されたチルトケーブル12をさらに備え、撮像センサー基板9は、チルトモーター5を制御するチルト制御信号を出力し、チルトケーブル12は、撮像センサー基板9から出力されたチルト制御信号を伝達し、チルトモーター5は、レンズユニット8と一体的にチルト回転可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト回転可能なレンズユニットを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パン軸、チルト軸およびローテーション軸それぞれの軸回りにレンズユニットが回転するように、レンズユニットを電動駆動させることができるカメラが知られている。
【0003】
特許文献1には、モーターの駆動により、レンズユニットをその光軸回りに回転させることができる撮像装置と、この撮像装置をパン回転およびチルト回転可能に支持する雲台と、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−114503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パン軸、チルト軸およびローテーション軸それぞれの軸回りにレンズユニットを電動で回転させることができるカメラは、パン機構、チルト機構およびローテーション機構がそれぞれ独立して駆動できるように構成されている。このため、パン機構、チルト機構およびローテーション機構のそれぞれのアクチュエータへの配線が必要となる。
ここで、図5を参照して、パン軸、チルト軸およびローテーション軸それぞれの軸回りにレンズユニットを電動で回転させることができるカメラの一例について説明する。
【0006】
図5におけるカメラ50は、メインベース51、パンベース52、チルトベース54、ローテーションベース56およびレンズユニット58などを備えている。
【0007】
メインベース51には、後述のパンモーター53、チルトモーター55およびローテーションモーター57の駆動を制御するメイン基板60が固定されている。また、パンベース52は、メインベース51に備えられたパンモーター53の駆動により、パン軸(図5におけるP軸)回りに回転する。
【0008】
チルトベース54は、パンベース52に備えられたチルトモーター55の駆動により、チルト軸(図5におけるT軸)回りに回転する。また、ローテーションベース56は、ローテーションベース56に備えられたローテーションモーター57の駆動により、ローテーション軸(図5におけるR軸)回りに回転する。
【0009】
レンズユニット58は、ローテーションベース56に取り付けられており、ローテーションベース56と一体的にローテーション軸回りに回転する。また、レンズユニット58の結像面の位置には、撮像センサー基板59が取り付けられている。この撮像センサー基板59は、CCDやC−MOSなどの撮像素子が実装されている。
【0010】
メイン基板60とパンモーター53との間には、メイン基板60からパンモーター53に制御信号を伝達するためのパンケーブル61が接続されている。また、メイン基板60とチルトモーター55との間には、メイン基板60からチルトモーター55に制御信号を伝達するためのチルトケーブル62が接続されている。さらに、メイン基板60とローテーションモーター57との間には、メイン基板60からローテーションモーター57に制御信号を伝達するためのローテーションケーブル63が接続されている。
【0011】
メイン基板60と撮像センサー基板59との間には、ビデオケーブル64が接続されている。メイン基板60は、ビデオケーブル64および撮像センサー基板59を介して、レンズユニット58に制御信号を送信する。また、撮像センサー基板59は、撮像素子から出力された画像信号を、ビデオケーブル64を介してメイン基板60に送信する。
【0012】
このように構成されるカメラ50において、パン駆動に伴って動くケーブルは、チルトケーブル62、ローテーションケーブル63およびビデオケーブル64の3系統(3本)である。また、チルト駆動に伴って動くケーブルは、ローテーションケーブル63およびビデオケーブル64の2系統(2本)である。そして、ローテーション駆動に伴って動くケーブルは、ローテーションケーブル63およびビデオケーブル64の2系統(2本)である。
【0013】
上述のようなカメラ50では、メイン基板60からパン機構、チルト機構およびローテーション機構それぞれのアクチュエータまでのケーブルが長くなってしまい、コストが増大してしまうという問題があった。
【0014】
また、各ケーブルの長さが長いと各ケーブルのひねりや曲げが多くなってしまうため、ケーブルの反力が大きくなり、パン駆動、チルト駆動およびローテーション駆動における駆動負荷が増大してしまうという問題がある。このとき、パン駆動、チルト駆動に伴って動くケーブルが多いことも、駆動負荷が増大する一因である。
【0015】
さらには、ケーブルは反力に抗して動かされるために、ケーブル自体の耐久性が低下してしまうという問題もある。
【0016】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものである。即ち、レンズユニットをチルト回転させるチルト駆動部に接続されるチルトケーブルのコストを抑えることができ、当該チルトケーブルの反力によるチルト回転時の負荷の発生を防止するとともに、当該チルトケーブルの耐久性を向上させることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮像光学系を含むレンズユニットと、前記レンズユニットをチルト回転可能に支持する支持部と、前記レンズユニットをチルト回転させるチルト駆動部と、前記レンズユニットと一体的にチルト回転可能に設けられた第1の基板と、を備える撮像装置であって、前記チルト駆動部と前記第1の基板とに接続されたチルトケーブルをさらに備え、前記第1の基板は、前記チルト駆動部を制御するためのチルト制御信号を出力し、前記チルトケーブルは、前記第1の基板から出力されたチルト制御信号を前記チルト駆動部に伝達し、前記チルト駆動部は、前記レンズユニットと一体的にチルト回転可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レンズユニットをチルト回転させるチルト駆動部に接続されるチルトケーブルのコストを抑えることができ、当該チルトケーブルの反力によるチルト回転時の負荷の発生を防止するとともに、当該チルトケーブルの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係るドームカメラ100の外観斜視図である。
【図2】実施例1に係るドームカメラ100の構成を示す図である。
【図3】実施例2に係るドームカメラ200の構成を示す図である。
【図4】実施例3に係るドームカメラ300の構成を示す図である。
【図5】パン軸、チルト軸およびローテーション軸それぞれの軸回りにレンズユニットを回転させることができるカメラの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1)
図1は、本実施例に係る撮像装置としてのドームカメラ100の外観斜視図である。図1において、21は、透明または半透明のプラスチック製のドームであり、半球形状に形成されている。このドーム21は、後述するレンズユニット8(図1では不図示)を覆う。
【0021】
22は、円筒状の上ケースであり、例えば、耐衝撃性を高めるために、金属製、より詳細には、アルミニウム合金製の外装部品である。23は、有底円筒状の下ケースである。この下ケース23の底部を、例えば、天井などの設置位置(設置面)に取り付けることで、ドームカメラ100が設置位置に固定される。
【0022】
続いて、図2は、本発明の実施形態に係る撮像装置としてのドームカメラ100の構成を示す図である。ここで、図2(a)は、ドームカメラ100の側面図であり、図2(b)は、ドームカメラ100の断面図である。なお、図2では、ドーム21および上ケース22および下ケース23を省略して示しており、図2(a)では、メイン基板10などを透過的に示している。
【0023】
図2におけるメインベース1は、円筒状に形成されており、下ケース23に対して固定される。また、メインベース1は、後述のパンベース2を、パン軸(図2におけるP軸)回りに回転自在に支持する。
【0024】
パンベース2は、メインベース1によりパン回転可能に支持されており、環状の基板部2aおよび基板部2aからそれぞれ立設される支持部2bおよび支持部2cを備える。また、支持部2bには、チルト軸(図2におけるT軸)を略中心とした円形の軸穴2dが設けられており、一方、支持部2cには、チルト軸を略中心とした円形の軸穴2eが設けられている。
【0025】
そして、軸穴2dおよび軸穴2eそれぞれにより、後述のチルトベース4の一対の突起部4aを軸支する。これにより、パンベース2は、チルトベース4をチルト軸回りに回転自在に支持する。
【0026】
さらに、支持部2bには、チルト軸を略中心とした円弧形状の穴部2fが形成されている。この穴部2fは、チルト軸よりもメインベース1側(固定台部側)に設けられており、この穴部2fの内周面の一部には、後述するチルトモーター5の出力軸に軸着された平歯車5aと噛み合う内歯車2gが形成されている。
【0027】
パンモーター3は、メインベース1に設けられており、メインベース1に対し、パンベース2をパン方向に回転させる。より詳細には、環状の基板部2aの内周面には、パンモーター3の出力軸に軸着された平歯車3aと噛み合う内歯車2hが形成されているので、パンモーター3が駆動することによりパンベース2はパン回転する。
【0028】
なお、本実施例では、パンモーター3としてステッピングモーターを用いるものとする。
【0029】
チルトベース4は、その両側に一対の突起部4aを備え、パンベース2によってチルト方向に回転可能に支持される。また、チルトベース4は、円筒状に形成されており、後述のローテーションベース6と嵌合し、レンズユニット8の光軸(図2におけるR軸)回りに回転摺動可能にローテーションベース6を支持する。
【0030】
チルト駆動部としてのチルトモーター5は、チルトベース4に設けられ(固定され)ており、パンベース2に対し、チルトベース4をチルト方向に回転させる。より詳細には、チルトモーター5の出力軸に軸着された平歯車5aは、穴部2fに挿入された状態で、穴部2fに形成された内歯車2gと噛み合うので、チルトモーター5が駆動することにより、チルトベース4はチルト回転する。
【0031】
なお、本実施例では、撮像センサー基板9が光軸回りに回転した場合に撮像センサー基板9とチルトモーター5とが干渉することがないように、チルトモーター5はチルトベース4に配置されているものとする。そして、本実施例では、チルトモーター5は、支持部2bと支持部2cとの間に配置され、且つ、支持部2b側(支持部2b近傍)に配置されているものとする。また、本実施例では、チルトモーター5としてステッピングモーターを用いるものとする。そして、本実施例における平歯車5aは、チルトモーター5の駆動力を伝達する駆動ギアに相当する。
【0032】
ローテーションベース6は、円筒状に形成されており、その中央でレンズユニット8を保持する。また、ローテーションベース6は、チルトベース4によって光軸回転可能に支持される。
【0033】
光軸回転駆動部としてのローテーションモーター7は、チルトベース4に設けられ(固定され)ており、チルトベース4に対し、ローテーションベース6をレンズユニット8の光軸回りに回転(光軸回転)させる。より詳細には、ローテーションベース6の外周には、ローテーションモーター7の出力軸に軸着された平歯車7aと噛み合う外歯車6aが形成されているので、ローテーションモーター7が駆動することにより、ローテーションベース6は光軸回転する。
【0034】
なお、本実施例では、ローテーションモーター7は、支持部2bと支持部2cとの間に配置され、且つ、支持部2b側(支持部2b近傍)に配置されているものとする。また、本実施例では、ローテーションモーター7としてステッピングモーターを用いるものとする。
【0035】
レンズユニット8は、円柱状に形成され、複数のレンズから構成される撮像光学系を含み、ローテーションベース6により支持される。また、レンズユニット8は、ローテーションベース6に対し、レンズユニット8の光軸とローテーション軸とが略一致するように取り付けられている。さらに、レンズユニット8の後端であって、レンズユニット8の撮像光学系の結像面には、第1の基板としての撮像センサー基板9が取り付けられる。
【0036】
撮像センサー基板9は、CCDやCMOSなどの撮像素子が実装された基板であり、レンズユニット8の撮像光学系の結像面に撮像素子が配置されるよう、レンズユニット8に取り付けられる。すなわち、撮像センサー基板9は、レンズユニット8の撮像光学系により結像された被写体像を画像信号に変換する撮像素子が実装された基板である。なお、本実施例における撮像センサー基板9は、撮像基板に相当する。
【0037】
さらに、撮像センサー基板9には、メイン基板10から出力されたチルトモーター5を制御するためのチルト制御信号を、チルトモーター5を駆動するためのパルス信号に変換する駆動回路(不図示)が実装されている。また、この駆動回路は、メイン基板10から出力されたローテーションモーター7を制御するための光軸回転制御信号を、ローテーションモーター7を駆動するためのパルス信号に変換する。
【0038】
第2の基板としてのメイン基板10は、メインベース1の内部に設けられおり、且つ、下ケース23に固定されている。したがって、レンズユニット8がパン回転またはチルト回転または光軸回転しても、設置位置に対するメイン基板の位置は変わらない。
【0039】
このメイン基板10は、レンズユニット8を制御するための制御信号を出力し、撮像センサー基板9に実装された撮像素子により変換された画像信号を受信する。また、メイン基板10は、パンモーター3を制御するためのパン制御信号と、チルト制御信号と、光軸回転制御信号とを出力する。
【0040】
続いて、図2を用いて、本実施例のドームカメラ100における、各モーターに制御信号を伝達するためのケーブルについて説明する。
【0041】
パンケーブル11は、パンモーター3とメイン基板10との間に接続され、メイン基板10から出力されたパン制御信号をパンモーター3に伝達する。つまり、メイン基板10は、パンケーブル11を介して、パンモーター3にパン制御信号を送信する。
【0042】
ビデオケーブル14は、撮像センサー基板9とメイン基板10との間に接続され、メイン基板10から出力されたチルト制御信号を撮像センサー基板9へ伝達し、また、メイン基板10から出力された光軸回転制御信号を撮像センサー基板9へと伝達する。さらに、ビデオケーブル14は、撮像センサー基板9に実装された撮像素子により変換された画像信号をメイン基板10へ伝達する。なお、本実施例におけるビデオケーブル14は、メインケーブルに相当する。
【0043】
チルトケーブル12は、チルトモーター5と撮像センサー基板9との間に接続され、撮像センサー基板9から出力されたチルト制御信号をチルトモーター5に伝達する。
【0044】
つまり、撮像センサー基板9に実装された駆動回路は、ビデオケーブル14を介して、メイン基板10から出力されたチルト制御信号を受信し、受信したチルト制御信号をパルス信号に変換する。そして、この駆動回路は、変換したパルス信号を、チルトケーブル12を介して、チルトモーター5に送信する。
【0045】
光軸回転ケーブルとしてのローテーションケーブル13は、ローテーションモーター7と撮像センサー基板9との間に接続され、撮像センサー基板9から出力された光軸回転制御信号をローテーションモーター7に伝達する。
【0046】
つまり、撮像センサー基板9に実装された駆動回路は、ビデオケーブル14を介して、メイン基板10から出力された光軸回転制御信号を受信し、受信した光軸回転制御信号をパルス信号に変換する。そして、この駆動回路は、変換したパルス信号を、ローテーションケーブル13を介して、ローテーションモーター7に送信する。
【0047】
続いて、レンズユニット8がパン回転する場合、レンズユニット8がチルト回転する場合およびレンズユニット8が光軸回転する場合それぞれの場合について、パンケーブル11などの動きについて説明する。
【0048】
まず、レンズユニット8がパン回転する場合について説明する。この場合、パンケーブル11により、メイン基板10から出力されたパン制御信号がパンモーター3に伝達される。
【0049】
そして、パンケーブル11により伝達されたパン制御信号にしたがってパンモーター3が駆動することにより、チルトモーター5およびローテーションモーター7およびレンズユニット8および撮像センサー基板9は、パンベース2と一体的にパン回転する。このため、レンズユニット8のパン回転に伴って動くケーブルは、ビデオケーブル14の一系統(1本)のみである。
【0050】
次に、レンズユニット8がチルト回転する場合について説明する。この場合、ビデオケーブル14により、メイン基板10から出力されたチルト制御信号が撮像センサー基板9に伝達される。また、撮像センサー基板9に実装された駆動回路は、ビデオケーブル14により伝達されたチルト制御信号をパルス信号に変換し、変換されたパルス信号は、チルトケーブル12によりチルトモーター5に伝達される。
【0051】
そして、チルトケーブル12により伝達されたチルト制御信号にしたがってチルトモーター5が駆動すると、チルトモーター5およびローテーションモーター7および撮像センサー基板9は、レンズユニット8と一体的にチルト回転する。このため、レンズユニット8のチルト回転に伴って動くケーブルは、ビデオケーブル14の一系統(1本)のみである。
【0052】
最後に、レンズユニット8が光軸回転する場合について説明する。この場合、ビデオケーブル14により、メイン基板10から出力された光軸回転制御信号が撮像センサー基板9に伝達される。また、撮像センサー基板9に実装された駆動回路は、ビデオケーブル14により伝達された光軸回転制御信号をパルス信号に変換し、変換されたパルス信号は、ローテーションケーブル13によりローテーションモーター7に伝達される。
【0053】
そして、ローテーションケーブル13により伝達された光軸回転制御信号にしたがってローテーションモーター7が駆動すると、撮像センサー基板9は、レンズユニット8と一体的に光軸回転する。一方、チルトモーター5およびローテーションモーター7は、チルトベース4に固定されているので、ローテーションモーター7が駆動しても、光軸回転することはない。
【0054】
このため、レンズユニット8の光軸回転に伴って動くケーブルは、チルトケーブル12およびローテーションケーブル13およびビデオケーブル14の3系統(3本)である。
【0055】
以上のように、本実施例では、レンズユニット8と一体的にチルト回転可能に設けられた撮像センサー基板9は、チルトモーター5を制御するためのチルト制御信号を出力する。なおかつ、チルトモーター5もレンズユニット8と一体的にチルト回転可能に設けられており、チルトケーブル12は、チルトモーター5と撮像センサー基板9とに接続され、撮像センサー基板9から出力されたチルト制御信号を伝達する。
【0056】
これにより、メイン基板10とチルトモーター5との間にチルトケーブルを接続する場合と比べて、チルトモーター5に接続されるチルトケーブル12の長さを短くすることができる。その上、レンズユニット8がチルト回転する場合でも、チルトモーター5と撮像センサー基板9との相対的な位置関係が変わらないので、チルトケーブル12にひねりや曲げが発生することを防止し得る。
【0057】
この結果、チルトケーブル12のコストを抑えることができ、チルトケーブル12の反力によるチルト回転時の負荷の発生を防止することができるとともに、チルトケーブル12の耐久性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施例では、チルトモーター5は、レンズユニット8のチルト回転軸よりもレンズユニット8の光軸後方に設けられている。(換言すれば、チルトモーター5は、ローテーションベース6およびチルトベース4よりもレンズユニット8の光軸方向において後方側になるように、チルトベース4に固定されている。)
また、ドームカメラ100を設置する際におけるレンズユニット8の撮像方向の調整作業では、ユーザは、まず、レンズユニット8をパン方向、チルト方向に回転させることを試行錯誤的に繰り返す。
【0059】
そして、レンズユニット8のパン方向、チルト方向が決まった後、ユーザは、レンズユニット8を光軸回りに回転させ、ドームカメラ100により撮像された映像の傾きを微調整するが、このとき試行錯誤が発生することは少ない。したがって、パン方向の回転頻度またはチルト方向の回転頻度に比べ、光軸回りの回転頻度は少ない。
【0060】
そこで、本実施例では、レンズユニットと一体的にチルト回転可能且つパン回転可能に設けられた撮像センサー基板9が、チルト制御信号と光軸回転制御信号とを出力するようにした。なおかつ、チルトモーター5およびローテーションモーター7もレンズユニット8と一体的にパン回転可能かつチルト回転可能に設けられている。
【0061】
さらには、チルトケーブル12は、チルトモーター5と撮像センサー基板9とに接続され、撮像センサー基板9から出力されたチルト制御信号を伝達する。その上、ローテーションケーブル13は、ローテーションモーター7と撮像センサー基板9とに接続され、撮像センサー基板9から出力されたローテーション制御信号を伝達する。
【0062】
これにより、回転頻度の多いパン回転またはチルト回転に伴って動くケーブルは、チルトモーター5とローテーションモーター7と撮像センサー基板9との相対的な位置関係が変わらないので、ビデオケーブル14の1本のみとなる。一方、回転頻度の少ない光軸回転に伴って動くケーブルは、チルトケーブル12およびローテーションケーブル13およびビデオケーブル14となる。
【0063】
この結果、パン回転、チルト回転および光軸回転それぞれの回転頻度を考慮した、各ケーブルの長寿命化を実現することができる。
【0064】
また、本実施例では、チルトモーター5およびローテーションモーター7が、レンズユニット8の光軸方向において、チルト軸を挟んで対向するように配置(対向配置)されている。これにより、チルト軸まわりの前後の重量バランスを取ってチルト回転時の慣性モーメントを小さくすることができ、チルトモーター5を小型化することができる。
【0065】
また、画像信号を伝達するビデオケーブル14を用いて、チルトモーター5またはローテーションモーター7を駆動するための高周波のパルス信号を伝達してしまうと、ビデオケーブル14により伝達される画像信号にノイズの影響を与えてしまうおそれがある。
【0066】
そこで、本実施例におけるメイン基板10は、画像信号を伝達するビデオケーブル14を用いて、ステッピングモーターを駆動するためのパルス信号よりも周波数の低い、チルト制御信号および光軸回転制御信号を撮像センサー基板9に伝達する。
【0067】
なおかつ、撮像センサー基板9に設けられた駆動回路は、ビデオケーブル14により伝達されたチルト制御信号からチルトモーター5を駆動するためのパルス信号を生成し、チルトケーブル12を用いて、生成したパルス信号をチルトモーター5に伝達する。
【0068】
さらには、撮像センサー基板9に設けられた駆動回路は、ビデオケーブル14により伝達された光軸回転制御信号からローテーションモーター7を駆動するためのパルス信号を生成する。そして、撮像センサー基板9の駆動回路は、ローテーションケーブル13を用いて、生成したパルス信号をローテーションモーター7に伝達する。
【0069】
これにより、メイン基板10は、画像信号が伝達されるビデオケーブル14を介して、高周波のパルス信号を送信することなく、チルトモーター5およびローテーションモーター7を制御することができる。この結果、画像信号の送信とチルトモーター5の制御とローテーションモーター7の制御とを1本のビデオケーブル14で実現しつつも、ビデオケーブル14により伝達される画像信号に対するノイズの影響を軽減することができる。
【0070】
また、本実施例では、チルトケーブル12とローテーションケーブル13との接続元を撮像センサー基板9とする場合について説明したが、この場合に限られない。ローテーションベース6またはレンズユニット8と一体的に動く基板であれば、撮像センサー基板9とは別の基板であっても良い。
【0071】
また、本実施例では、穴部2fの内周面であってドーム21側(メインベース1とは反対側)の面の一部に、平歯車5aと噛み合う内歯車2gが形成されているが、これに限るものではない。穴部2fの内周面であってメインベース1側(ドーム21とは反対側)の面の一部に、平歯車5aと噛み合う内歯車が形成されていても良い。
【0072】
(実施例2)
続いて、図3を用いて、チルトモーター5の配置を実施例1のドームカメラ100とは異ならせた、本実施例のドームカメラ200について説明する。ここで、図3は、本実施例に係る撮像装置としてのドームカメラ200の構成を示す図であり、図3(a)は、ドームカメラ200の断面図であり、図3(b)は、ドームカメラ200の側面図である。
【0073】
なお、図4では、ドーム21および上ケース22および下ケース23を省略して示しており、図4(b)では、メイン基板10などを透過的に示している。また、本実施例では、上述した実施例1に対応するものと同一の要素には同一符合を付し、その説明を省略する。
【0074】
図3におけるパンベース202は、メインベース1によりパン回転可能に支持されており、環状の基板部202aおよび基板部202aからそれぞれ立設される支持部202bおよび支持部202cを備える。この基板部202aの内周面には、パンモーター3の出力軸に軸着された平歯車3aと噛み合う内歯車202hが形成されているので、パンモーター3が駆動することにより、パンベース202はパン回転する。
【0075】
また、支持部202bには、チルト軸(図3におけるT軸)を略中心とした円形の軸穴202dが設けられており、一方、支持部202cには、チルト軸を略中心とした円形の軸穴202eが設けられている。
【0076】
そして、軸穴202dおよび軸穴202eそれぞれにより、チルトベース204の突起部204aを軸支する。これにより、パンベース202は、チルトベース204をチルト軸回りに回転自在に支持する。
【0077】
さらに、支持部202cのドーム21側(メインベース1とは反対側)の先端部202fは、チルト軸を略中心とした円弧状に形成されている。この先端部202fの外周の一部には、チルトモーター5の出力軸に軸着された平歯車5aと噛み合う外歯車が形成されている。
【0078】
チルトベース204は、その両側に一対の突起部204aを備え、パンベース202によりチルト方向に回転可能に支持される。また、チルトベース204は、円筒状に形成されており、ローテーションベース6と嵌合し、レンズユニット8の光軸(図3におけるR軸)回りに回転摺動可能にローテーションベース6を支持する。
【0079】
また、チルトベース204は、チルトモーター5およびローテーションモーター7がローテーションベース6およびチルトベース304よりもレンズユニット8の光軸方向において前方側になるように、チルトモーター5およびローテーションモーター7を固定する。
【0080】
本実施例におけるチルトモーター5は、チルトベース204に設けられており、パンベース202に対し、チルトベース204をチルト方向に回転させる。より詳細には、チルトモーター5の出力軸に軸着された平歯車5aは、先端部202fの外周の一部に形成された外歯車と噛み合うので、チルトモーター5が駆動することにより、チルトベース204はチルト回転する。
【0081】
なお、本実施例では、チルトモーター5は、支持部202bと支持部202cとの間に配置され、且つ、支持部202c側に配置されているものとする。
【0082】
ローテーションベース6は、実施例1と同様、円筒状に形成されており、その中央でレンズユニット8を保持する。また、ローテーションベース6は、チルトベース204によって光軸回転可能に支持される。また、ローテーションモーター7は、チルトベース204に設けられており、チルトベース204に対し、ローテーションベース6をレンズユニット8の光軸回りに回転させる。
【0083】
以上のように、本実施例では、チルトモーター5が、レンズユニット8のチルト回転軸よりもレンズユニット8の光軸前方に設けられている。これにより、撮像センサー基板9の下部(撮像センサー基板9とメインベース1との間の部分)に、空きスペースを形成することができ、この空きスペースを有効利用することで、ドームカメラ200の小型化が可能となる。
【0084】
また、本実施例では、チルトモーター5およびローテーションモーター7が、チルト軸方向において、レンズユニット8の光軸を挟んで対向するように配置(対向配置)されている。これにより、レンズユニット8の光軸まわりの重量バランスをとって、光軸回転時の慣性モーメントを小さくすることができ、ローテーションモーター7を小型化することができ、ドームカメラ200をさらに小型化することが可能となる。
【0085】
(実施例3)
続いて、図4を用いて、ローテーションモーター7の配置を実施例1のドームカメラ100とは異ならせた、本実施例のドームカメラ300について説明する。ここで、図4は、本実施例に係る撮像装置としてのドームカメラ300の構成を示す図であり、図4(a)は、ドームカメラ300の側面図であり、図4(b)は、ドームカメラ300の断面図である。
【0086】
なお、図4では、ドーム21および上ケース22および下ケース23を省略して示しており、図4(a)では、メイン基板10などを透過的に示している。また、本実施例では上述した実施例1に対応するものと同一の要素には同一符合を付し、その説明を省略する。
【0087】
図4におけるチルトベース304は、その両側に一対の突起部304aを備え、パンベース2によってチルト方向に支持される。このチルトベース304は、円筒状に形成されており、ローテーションベース6と嵌合し、レンズユニット8の光軸(図4におけるR軸)回りに回転摺動可能にローテーションベース6を支持する。
【0088】
ローテーションモーター7は、チルトベース304に設けられており、チルトベース304に対し、ローテーションベース6をレンズユニット8の光軸回りに回転(光軸回転)させる。より詳細には、ローテーションモーター7の出力軸に軸着された平歯車7aは、ローテーションベース6の外周に形成された外歯車6aと噛み合うので、ローテーションモーター7が駆動することにより、ローテーションベース6は光軸回転する。
【0089】
また、ローテーションモーター7は、レンズユニット8のチルト回転軸よりもレンズユニット8の光軸後方に設けられている。(換言すれば、ローテーションモーター7は、ローテーションベース6およびチルトベース304よりもレンズユニット8の光軸方向において後方側になるように、チルトベース304に固定されている。)
なお、本実施例では、撮像センサー基板9が光軸回転した場合に撮像センサー基板9とローテーションモーター7とが干渉することがないよう、ローテーションモーター7はチルトベース304に配置されているものとする。また、本実施例では、ローテーションモーター7は、支持部2bと支持部2cとの間に配置され、且つ、支持部2c側に配置されているものとする。
【0090】
以上のように、本実施例では、チルトモーター5およびローテーションモーター7が、レンズユニット8のチルト回転軸よりもレンズユニット8の光軸後方に設けられている。これにより、チルトベース304の下部(チルトベース304とメインベース1との間の部分)の空きスペースに、チルトモーター5およびローテーションモーター7を配置することができる。この結果、チルトベース304下部の空きスペースを有効利用することができ、ドームカメラ300の小型化が可能となる。
【0091】
また、本実施例では、チルトモーター5およびローテーションモーター7が、レンズユニット8のチルト軸方向において、レンズユニット8の光軸を挟んで対向するように配置(対向配置)されている。これにより、レンズユニット8の光軸まわりの重量バランスをとって、光軸回転時の慣性モーメントを小さくすることができ、ローテーションモーター7を小型化することができるので、ドームカメラ300をさらに小型化することが可能となる。
【0092】
以上、本発明を種種の実施例と共に説明したが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0093】
2 パンベース
5 チルトモーター
8 レンズユニット
9 撮像センサー基板
12 チルトケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を含むレンズユニットと、
前記レンズユニットをチルト回転可能に支持する支持部と、
前記レンズユニットをチルト回転させるチルト駆動部と、
前記レンズユニットと一体的にチルト回転可能に設けられた第1の基板と、
を備える撮像装置であって、
前記チルト駆動部と前記第1の基板とに接続されたチルトケーブルをさらに備え、
前記第1の基板は、前記チルト駆動部を制御するためのチルト制御信号を出力し、
前記チルトケーブルは、前記第1の基板から出力されたチルト制御信号を前記チルト駆動部に伝達し、
前記チルト駆動部は、前記レンズユニットと一体的にチルト回転可能に設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記レンズユニットを当該レンズユニットの光軸回りに回転させる光軸回転駆動部と、
前記光軸回転駆動部と前記第1の基板とに接続された光軸回転ケーブルと、
をさらに備え、
前記支持部は、前記レンズユニットを前記光軸回りに回転可能に支持し、
前記第1の基板は、前記レンズユニットと一体的に光軸回りに回転可能に設けられ、前記光軸回転駆動部を制御するための光軸回転制御信号を出力し、
前記光軸回転ケーブルは、前記第1の基板から出力された光軸回転制御信号を前記光軸回転駆動部に伝達し、
前記光軸回転駆動部は、前記レンズユニットと一体的にチルト回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記支持部に固定され、前記チルト駆動部を制御するためのチルト制御信号と前記光軸回転駆動部を制御するための光軸回転制御信号とを出力する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とに接続され、前記第2の基板から出力されたチルト制御信号と前記第2の基板から出力された光軸回転制御信号とを前記第1の基板に伝達するメインケーブルと、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像光学系により結像された被写体像を画像信号に変換する撮像素子をさらに備え、
前記メインケーブルは、前記撮像素子により変換された画像信号を前記第2の基板に伝達し、
前記第1の基板は、前記第2の基板から出力された前記チルト制御信号または前記第2の基板から出力された光軸回転制御信号を前記チルト駆動部または前記光軸回転駆動部を駆動するためのパルス信号に変換することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記レンズユニットをパン回転可能に支持し、
前記第1の基板および前記チルト駆動部および前記光軸回転駆動部それぞれは、前記レンズユニットと一体的にパン回転可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の基板は、前記撮像素子が実装された撮像基板であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記チルト駆動部は、前記レンズユニットのチルト回転軸よりも前記レンズユニットの光軸後方に設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記チルト駆動部は、前記レンズユニットのチルト回転軸よりも前記レンズユニットの光軸前方に設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記チルト駆動部および前記光軸回転駆動部は、前記レンズユニットのチルト回転軸よりも前記レンズユニットの光軸後方に設けられたことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−9107(P2013−9107A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139706(P2011−139706)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】